説明

呈色プライマー組成物およびこれを用いて形成したプライマー層の検査方法

【課題】プライマー塗布後のプライマー(層)の有無を容易に視認して検査する方法およびそれに用いる呈色プライマー組成物を提供する。特に、シーリング材や防水材の施工後に発生した剥離箇所において、剥離箇所にプライマーが塗布されていたのか否かを容易に視認して判別する検査方法を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂(A)と、水素イオンとの化学的作用によって呈色性を示す呈色性化合物(B)とを含有する呈色プライマー組成物である。また、下地にこの呈色プライマー組成物からなるプライマー層を設け、その上にシーリング材層または防水材層を設けたシーリング構造または防水構造においてその特定箇所に呈色化剤(C)を塗布し呈色性化合物(B)を呈色させて、プライマー層の有無を視認するプライマー層の検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材や防水材の施工時に使用される呈色プライマー組成物、およびこれを用いて形成したプライマー層の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、土木、自動車、産業機械などの分野において、気密や水密を目的としてシーリング材や防水材(塗料)の施工が広く行われている。シーリング材や防水材を施工する場合に、コンクリート、アルミニウムサッシ、ガラスなどの各種下地部材に対する接着性や密着性をより高めるために、被着体となる下地部材に前処理としてプライマーを塗布することが行われている。特に、シーリング材や防水材自体の接着性や密着性が良くても、コンクリート、アルミニウムサッシ、ガラスなどの各種下地部材が、切りくず、ほこり、油脂などで汚れている場合もあり、プライマー処理を行わずにシーリング材を打設したり、防水材を塗布したりしてしまうと、シーリング材または防水材と下地部材との間で接着不良が生じ、シーリング材や防水材が下地部材と容易に剥離してしまう。その防止のためにも刷毛やローラーなどを用いてプライマーを塗布することにより、下地部材表面の汚れを取り除き、シーリング材や防水材と下地部材との間に接着性や密着性に優れたプライマー層を設けることが重要である。
しかしながら、プライマーは一般的に無色透明の液体であることが多いため、下地部材に対してプライマーが確実に塗布されているか否かを目視で容易に判別することは困難である。もしもプライマーの塗りむらや塗り忘れがあるまま、シーリング材や防水材を施工してしまうと接着性が十分に確保できず、シーリング材や防水材が下地部材と剥離し、ひいては雨水などの進入により漏水事故等の不具合が生じてしまう。
このため、プライマーの塗りむらや塗り忘れを防止する目的で、プライマーに着色剤を配合した着色プライマーが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この着色プライマーは、プライマーが有色化されているため、プライマー塗布の状態を容易に視認することができ、プライマーの塗りむらや塗り忘れを未然に防止することができるとされている。
【0003】
これらの方法は、プライマーを被着面以外の不要な箇所に塗布した場合でもその箇所が太陽光により退色し無色化するため意匠上の問題を解決できる。しかし、シーリング材や防水材と下地部材との間で剥離が発生した場合、剥離箇所(被着面)が露出するため太陽光によって数日後には無色化してしまい、プライマーが塗布されていたのか否かを視認することが出来なくなる。
シーリング材や防水材の剥離事故においてその要因がプライマー未塗布によるものか(施工要因)、あるいはプライマーの性能によるものか(材料要因)を特定しなければ再発防止策を講じることができない。また、剥離箇所の補修に伴う費用負担を巡って業者間でトラブルになることも多く、費用負担の判断材料として剥離箇所でのプライマー(層)の存在の有無を判別する必要性が高い。
このため、プライマーに予め蛍光染料を配合し、剥離した箇所に紫外線を照射することで蛍光染料を発光させプライマーの存在を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、蛍光染料を発光させる方法は、夜間であればその発光を容易に視認できるが、日中は太陽光の照度が高く発光を視認することが難しい。また、蛍光染料を発光させるためには紫外線照射機器等を必要とするが、一般にシーリング施工業者や防水施工業者はそのような特殊機器を持ち合わせていない。シーリング材や防水材の剥離が発見された場合には、施工業者が個別にそれらの機器を購入し点検・調査するか、あるいは施工時の材料が特定されていれば材料メーカーが点検・調査するが、いずれにしても日中の確認作業が難しく、更に特殊機器の購入によって高額な費用が発生してしまう。
このため、シーリング材や防水材の施工後、特に下地部材との剥離が発生した場合において、日中の作業でプライマー(層)の存在の有無を誰でも容易に判別できる方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−306283号公報
【特許文献2】特開2010−195850号公報
【特許文献3】特開2009−114832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、プライマー塗布後のプライマー(層)の有無を容易に視認して検査する方法およびそれに用いる呈色プライマー組成物を提供することである。特に、シーリング材や防水材の施工後に発生した剥離箇所などにおいて、その箇所にプライマーが塗布されていたのか否かを容易に視認して判別する検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み鋭意検討した結果、バインダー樹脂(A)と特定の呈色性化合物(B)とを含有した呈色プライマー組成物を用いて下地上にプライマー層を設け、その上にシーリング材層や防水材層を設けたシーリング構造や防水構造において、シーリング材または防水材と下地部材との間で剥離、亀裂などの不具合が生じた場合、その不具合箇所(プライマーの塗布面)に呈色化剤(C)を塗布することにより、プライマー層を呈色させてその有無を容易に視認できるプライマー層の検査方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(6)に示すものである。
(1)バインダー樹脂(A)と呈色性化合物(B)とを含有する呈色プライマー組成物であって、前記呈色性化合物(B)が水素イオンとの化学的作用によって呈色性を示す化合物であること、を特徴とする前記呈色プライマー組成物。
(2)前記バインダー樹脂(A)がイソシアネート基含有化合物(A−1)および/または加水分解性シリル基含有化合物(A−2)である、前記(1)の呈色プライマー組成物。
(3)前記イソシアネート基含有化合物(A−1)がイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであり、前記加水分解性シリル基含有化合物(A−2)がシランカップリング剤類である、前記(2)の呈色プライマー組成物。
(4)下地上に、前記(1)〜(3)のいずれかの呈色プライマー組成物からなるプライマー層を設け、その上にシーリング材層を設けたシーリング構造におけるプライマー層の検査方法であって、シーリング材層の剥離、破断箇所に、または、剥離、破断が推定される箇所のシーリング材層を剥離させた下地上および/またはシーリング材層の剥離面に、呈色化剤(C)を塗布し呈色性化合物(B)を呈色させて、プライマー層の有無を視認すること、を特徴とする前記方法。
(5)下地上に、前記(1)〜(3)のいずれかの呈色プライマー組成物からなるプライマー層を設け、その上に防水材層を設けた防水構造におけるプライマー層の検査方法であって、防水材層の剥離、破断箇所に、または、剥離、破断が推定される箇所の防水材層を剥離させた下地上および/または防水材層の剥離面に、呈色化剤(C)を塗布し呈色性化合物(B)を呈色させて、プライマー層の有無を視認すること、を特徴とする前記方法。
(6)前記呈色化剤(C)が酸性化合物または塩基性化合物と有機溶媒とを含有する呈色化剤である、前記(4)または(5)のプライマー層の検査方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、プライマー塗布後のプライマー(層)の有無を日中作業で容易に視認し判別することができる。詳しくは、プライマー塗布面に呈色化剤を塗布することで、該塗布面が呈色しプライマー(層)の存在の有無を容易に視認できることである。従来は、プライマー層の有無の識別を夜間に行ったり、高額な機器を購入しなければならないところ、本発明によってその作業を日中に行うことができ、作業者の負担が軽減される。また、高額な機器を購入する必要がなく、経済的負担が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の呈色プライマー組成物は、バインダー樹脂(A)と呈色性化合物(B)とを含有する。
まず、バインダー樹脂(A)について説明する。
本発明においてバインダー樹脂(A)とは、溶媒が揮散し、および/または反応硬化してプライマー層を形成する(塗膜を形成する)ものであれば如何なる樹脂でも使用できる。中でもシーリング材や防水材、下地部材および上塗り塗料との接着性や密着性が良好な反応性官能基を有する樹脂が好ましい。
なお、本発明においてプライマー層とは、シーリング材、防水材などの施工において予め下地部材表面にプライマーを塗布し形成する(樹脂)層である。シーリング材や防水材とそれらの表面に上塗り塗料を設ける場合に使用されるバリアプライマーも含まれる。プライマー層を設けることにより、シーリング材や防水材と下地部材との良好な接着性を確保することができる。また、シーリング材や防水材あるいは下地部材からの可塑剤等の低分子物質の移行を防止することもできる。
【0010】
反応性官能基を有する樹脂としては、空気中の水分との反応により架橋、硬化して塗膜を形成するもの、ラジカル発生剤などの混合や紫外線により硬化して塗膜を形成するもの、主剤と硬化剤との架橋反応などにより架橋、高分子化して硬化するものなどが挙げられる。具体的には、イソシアネート基含有化合物(A−1)、加水分解性シリル基含有化合物(A−2)、ポリサルファイド化合物、不飽和ポリエステル化合物、アルキッド化合物などが挙げられる。
これらのうち、作業性や硬化性が優れており、下地部材、シーリング材や防水材との接着性や密着性が良好な、イソシアネート基含有化合物(A−1)および/または加水分解性シリル基含有化合物(A−2)が好ましい。
【0011】
イソシアネート基含有化合物(A−1)は、水分と反応して尿素結合を形成し架橋、硬化するイソシアネート基を分子中に1個以上有する化合物である。具体的には、有機モノイソシアネートおよび/または有機ポリイソシアネートを挙げることができる。更に、有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物と、後述する活性水素基含有化合物とをイソシアネート基過剰で反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを好適に挙げることができる。
【0012】
有機モノイソシアネートは、その化合物中に1個のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−ヘキサデシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネート、p−イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p−ベンジルオキシフェニルモノイソシアネート等が挙げられる。
有機ポリイソシアネートは、その化合物中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート(TDI)類、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート類、2,4,6−トリメチルフェニル−1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル−1,3−ジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート類、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート類などの芳香脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートや、更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネートなどのポリメリックイソシアネートが挙げられる。また、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合などを1つ以上含有する変性イソシアネートが挙げられる。
これらは、いずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらのうち、耐熱性、耐水性、下地部材との接着性や密着性が優れていることから、有機ポリイソシアネートが好ましく、更に有機ポリイソシアネートを変性して得られるイソシアヌレート結合を有する変性イソシアネートが好ましい。
【0013】
有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物との反応に用いることができる活性水素基含有化合物としては、ポリオール、ポリアミン、ポリウレアなど公知の活性水素基含有化合物を挙げることができる。活性水素基含有化合物の数平均分子量は、100〜10,000、更に100〜5,000、特に100〜3,000が好ましい。活性水素基含有化合物の数平均分子量が100未満では得られるイソシアネート基含有化合物の塗膜形成性や伸びが悪化し、10,000を超えるとプライマー組成物の粘度が高くなり、塗料の貯蔵安定性や塗布作業性が悪化するため好ましくない。
【0014】
ポリオールとしては、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオールなどが挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらのうち、呈色プライマー組成物の耐熱性、接着性、溶解性が優れている点でポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオールが好ましく、更に耐水性、耐候性が優れている点でポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオールが好ましい。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。
また、低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールなども挙げることができる
これらはいずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール類、低分子アミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、これらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのモノアルコール類(開始剤)に前記プロピレンオキサイドなどを開環重合させたポリオキシアルキレンモノオールなども挙げることができる。
これらはいずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらのうち、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。
【0017】
アクリルポリオールとしては、具体的には、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基を含有したアクリル酸系化合物のモノマー及び/又は水酸基を含有したメタクリル酸系化合物のモノマーと、これら以外のエチレン性不飽和化合物の1種以上とを、ラジカル重合開始剤の存在下又は不存在下に、そして溶剤の存在下又は不存在下にバッチ式重合又は連続重合等の公知のラジカル重合の方法により反応させて得られるものが挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
ポリカーボネートポリオールとしては、具体的には、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール類とホスゲンとの脱塩酸反応、或いは前記低分子アルコール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
ポリオレフィンポリオールとしては、具体的には、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0020】
動植物系ポリオールとしては、具体的には、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロインなどが挙げられる。
【0021】
上述のポリオール以外に、他の活性水素基を有する化合物としては、例えば、ダイマー酸系ジオール、水素添加ダイマー酸系ジオール、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂類を挙げることができる。
【0022】
有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物と活性水素基含有化合物とをイソシアネート基過剰で反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、一括仕込み反応法、多段階仕込み反応法のいずれでも合成できる。また、有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物のイソシアネート基と活性水素基含有化合物の活性水素基とのイソシアネート基/活性水素基の当量比は1.1〜5.0が好ましく、更に1.3〜2.0が好ましい。
【0023】
このように反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は、0.1〜15.0質量%が好ましく、更に0.3〜10.0質量%が好ましく、特に0.5〜10.0質量%が好ましい。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量が0.1質量%未満の場合は、分子量が大きくなりすぎてプライマーの粘度が大きくなり塗布作業性や溶解性が低下し、またイソシアネート基含有量が15.0質量%を超える場合は、分子量が小さすぎて、塗膜形成性が悪化し、また大気中の水分(湿分)とイソシアネート基との反応によって生じる炭酸ガスによって塗布部が発泡してしまい好ましくない。
【0024】
有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物と活性水素基含有化合物の合成には、必要に応じて、亜鉛、錫、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属とオクチル酸、ナフテン酸等の有機酸との塩、テトラ−n−ブトキシチタン、ブチルジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属と有機酸との塩、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、DBU、DBE等の有機アミンやその塩などの公知のウレタン化触媒を用いることができる。
また、有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物と活性水素基含有化合物の合成の際には更に公知の有機溶媒を使用することもできる。
【0025】
加水分解性シリル基含有化合物(A−2)は、水分と反応してシラノール(Si−OH)を生成した後、シラノール同士が縮合してシロキサン結合(−Si−O−Si−)を形成して架橋、硬化する加水分解性(架橋性)シリル基を有する化合物である。
【0026】
加水分解性シリル基は、プライマーの硬化性や硬化後の物性等の点から、分子内に0.5〜5個有するのが好ましい。
更に加水分解性シリル基含有化合物(A−2)の加水分解性シリル基は、加水分解し、架橋しやすく製造しやすい次の一般式(1)で示されるものが好ましい。
【化1】

(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Xで示される反応性基はハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基およびアミノオキシ基より選ばれる基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が最も好ましい。aは0、1又は2の整数であり、0又は1が最も好ましい。)
【0027】
このような加水分解性シリル基含有化合物(A−2)としては、シランカップリング剤類が好適であり、具体的には、シランカップリング剤(A−2−a)、イソシアネート基含有化合物とシランカップリング剤との反応物(A−2−b)、シランカップリング剤の部分加水分解縮合物(A−2−c)が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
シランカップリング剤(A−2−a)は、加水分解性シリル基と有機官能基を分子中にそれぞれ1個以上有する化合物である。
有機官能基の種類により、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤などの活性水素基含有シランカップリング剤やこれら以外のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0029】
アミノシランカップリング剤としては、具体的には、アミノメチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)メチルトリブトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノイソブチルトリメトキシシラン、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
メルカプトシランカップリング剤としては、具体的には、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0031】
これら以外のシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する不飽和炭化水素シランカップリング剤、およびメチルシリケート、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等の炭化水素シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシランカップリング剤、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシランカップリング剤などが挙げられる。
【0032】
これらのシランカップリング剤はそれぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち下地部材との接着性や密着性が良好な点で、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤のいずれか一種または2種以上の混合物が好ましい。
【0033】
イソシアネート基含有化合物と活性水素基含有シランカップリング剤との反応物(A−2−b)とは、具体的には、前記イソシアネート基含有化合物(A−1)と同様のイソシアネート基含有化合物と前記シランカップリング剤(A−2−a)として挙げたアミノシランカップリング剤やメルカプトアミノシランカップリング剤等の活性水素基含有シランカップリング剤との反応によって得られる化合物である。更には、イソシアネート基含有化合物(A−1)のイソシアネート基と活性水素基含有シランカップリング剤の活性水素基とを反応させて得られる化合物であり、その反応物中にはイソシアネート基および/または加水分解性シリル基を有している。
【0034】
イソシアネート基含有化合物と活性水素基含有シランカップリング剤との反応物(A−2−b)を合成する際のイソシアネート基と活性水素基の反応当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、0.1/1以上が好ましく、更に0.5〜10/1が好ましい。0.1/1を下回ると耐水接着性が劣り、10/1を超えると反応生成物中の加水分解性シリル基の含有量が少なくなり、特に下地部材が無機質系の材料の場合に密着性や接着性が低下する。
この反応の際には、トルエン、酢酸エチル等の公知の有機溶剤、後述する硬化触媒として挙げたものと同様の金属と有機酸との塩、有機金属キレート化合物、有機金属と有機酸との塩などの有機金属化合物、有機アミンやその塩等の公知のウレタン化触媒を用いることができる。
【0035】
シランカップリング剤の部分加水分解縮合物(A−2−c)としては、前記シランカップリング剤(A−2−a)の部分加水分解縮合物であり、その数平均分子量が250〜2,500のものを好適に挙げることができる。このような部分加水分解縮合物はシランカップリング剤を単独または2種以上混合し、必要量の水を加えるか、あるいは必要に応じて縮合触媒を少量加え、常温〜100℃で、生成するアルコールを除去しながら縮合を進めることにより得ることができる。
具体的には、メチルシリケートの部分加水分解縮合物でメトキシシリル基を含有する化合物として、日本コルコート社のメチルシリケート47、メチルシリケート51、メチルシリケート55、メチルシリケート58、メチルシリケート60が挙げられ、またメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の部分加水分解縮合物でメトキシシリル基を含有する化合物としては信越化学工業社製のAFP−1、AFP−6、KR213、KR217、KR9218;東芝シリコーン社のTRS165、TR3357;日本ユニカー社のY−1587、FZ−3701、FZ−370が挙げられる。
また、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリアルコキシシランとジメチルジアルコキシシランとの部分加水分解縮合物として日本ユニカー社のC1−031−07、3−アミノプロピルトリアルコキシシランとの部分加水分解縮合物として日本ユニカー社のC1−031−09などが挙げられる。これらのうち、接着性や密着性が良好な点で、アミノシランカップリング剤とアルキルアルコキシシランとの部分加水分解縮合物が好ましい。
【0036】
次に、呈色性化合物(B)ついて説明する。
本発明における呈色性化合物(B)は、バインダー樹脂(A)との反応性が低く、呈色(発色)性を示す化合物である。具体的には、ある特定の濃度範囲にある水素イオンとの化学的作用によって呈色性を示す水素イオン濃度指示薬(PH指示薬、酸塩基指示薬)などの化合物である。
呈色プライマー組成物のPH(水素イオン濃度指数)は中性の範囲(PH=6〜8)であることが多く、PHが中性の範囲で無色透明な水素イオン濃度指示薬を用いれば、被着面以外の不要な箇所に呈色プライマー組成物を塗布した場合でもその箇所が目立たないため好ましい。
【0037】
このような水素イオン濃度指示薬としては、具体的にはフェノールフタレイン、チモールフタレインを挙げることができる。更にバインダー樹脂(A)との反応性が低く、呈色プライマー組成物の貯蔵安定性が良好なチモールフタレインが好ましい。
また、呈色性化合物(B)の含有量は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部、更に0.1〜15質量部、特に0.5〜15質量部の範囲が好ましい。呈色性化合物(B)の含有量がバインダー樹脂(A)100質量部に対して20質量部を超えると特に呈色プライマー組成物の貯蔵安定性が悪くなり、また0.1質量部未満であると、後述する呈色化剤(C)による呈色度合い(色合い)が悪くプライマー(層)の視認が難しくなる。
【0038】
本発明の呈色プライマー組成物には、上記成分のほかに、有機溶剤や添加剤を使用することができる。
有機溶剤は、上述したバインダー樹脂(A)、呈色性化合物(B)および後述する添加剤を溶解、希釈し、本発明の呈色プライマー組成物を塗布作業性に適した粘度に調整するために使用する。また、有機溶剤は、バインダー樹脂(A)、呈色性化合物(B)および後述する添加剤に対して不活性で反応性を示さないものであれば特に制限されない。更に、呈色プライマー組成物の塗布後のオープンタイム(通常は常温で10分〜1時間程度)を確保するのに支障を及ぼさない程度に、適度な揮発性を有するものが好ましい。
【0039】
このような有機溶剤は、極性溶剤として、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ステアリン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、マロン酸ジエチルなどのエステル系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤:エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテートなどのアセテート系溶剤などが挙げられる。また、ジメチルスルホキシド、石油ナフサ、コールタールナフサ、ソルベントナフサなどやこれらの混合物も挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
更に、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素系溶剤;キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ビフェニルなどの芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルスルホキシド、ミネラルスピリット、石油ナフサ、コールタールナフサ、ソルベントナフサ、リグロインなどやこれらの混合物を前記極性溶剤と併用してもよい。
【0040】
有機溶剤は、バインダー樹脂(A)および呈色性化合物(B)、後述する添加剤の総量100質量部に対し、10〜20,000質量部、更に50〜5,000質量部、特に100〜5,000質量部の範囲で配合するのが好ましい。20,000質量部を超えるとプライマー層が十分に確保できず、下地部材、シーリング材や防水材との接着性や密着性が低下する場合がある。
【0041】
本発明における添加剤としては、具体的には、接着性付与剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、耐候安定剤、硬化触媒などを挙げることができる。これらの添加剤は、呈色プライマー組成物の目的と用途によって適宜組み合わせて任意に添加することができる。
【0042】
接着性向上剤は、呈色プライマー組成物の硬化後の接着性、密着性、耐熱性、耐水性を向上させるために使用するものであり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
【0043】
貯蔵安定性改良剤(脱水剤)は、呈色プライマー組成物中の水分と反応あるいは吸着させて脱水することにより貯蔵安定性を改良する目的で使用される。具体的には、パラトルエンスルフォニルイソシアネート(PTSI)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ゼオライトなどが挙げられる。
【0044】
耐候安定剤は、呈色プライマー組成物の硬化後の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐熱性を向上させるために使用する。具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、光硬化性化合物などが挙げられる。
【0045】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
【0046】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。また、三共社製の商品名サノールLS−292などや、旭電化工業社製の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1,000未満の低分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤、同じくLA−63P、LA−68LDあるいはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1,000以上の高分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤なども挙げられる。
【0047】
光硬化性化合物としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等の光によって反応硬化する基を分子内に1 個以上含有する化合物が挙げられ、具体的には、イソシアネート基含有ウレタン樹脂に水酸基含有アクリレート化合物や水酸基含有メタクリレート化合物を反応させたウレタンアクリレートやウレタンメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレート等のエステルアクリレートやエステルメタクリレート、ポリエチレンアジペートポリオールのアクリレートやメタクリレート等のポリエステルアクリレートやポリエステルメタクリレート、ポリエーテルポリオールのアクリレートやメタクリレート等のポリエーテルアクリレートやポリエーテルメタクリレート、或いはポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂などが挙げられ、分子量10,000以下、更に分子量5,000以下の単量体、オリゴマーが好ましく、特にアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を1分子当たり平均して2個以上含有する物が好ましい。
【0048】
硬化触媒は、バインダー樹脂(A)と水分との反応を促進させる触媒であり、また、バインダー樹脂(A)の架橋を促進し皮膜形成を高める目的で使用される。
【0049】
硬化触媒としては、具体的には、有機金属化合物、アミン類等が挙げられる。例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTARC−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物、オクチル酸鉛やオクチル酸ジルコニウム等のマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、鉛等の金属とオクチル酸、ナフテン酸等の有機酸との金属有機酸塩、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、ビスマスバーサテイト等の有機ビスマス化合物、ブチルアミン、オクチルアミン等の第1級アミン類、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等の第2級アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1級、第2級アミン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルフォリン、DBU、DBE等の第3級アミン類、またはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。
これらのうち、硬化促進効果が高い点で有機錫化合物、金属キレート化合物、有機ビスマス化合物が好ましく、更に錫系キレート化合物、有機ビスマス化合物が好ましい。硬化触媒は、貯蔵安定性や適度な硬化促進性を確保する点から、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部、更に0.01〜2質量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0050】
なお、本発明の呈色プライマー組成物は前述の各添加剤成分を要求性能に応じてそれぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
本発明において、呈色プライマー組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、ステンレス製、鉄製、ガラス製などの反応装置、攪拌、混合装置を用いて製造することが出来る。これらの装置に乾燥した窒素ガスを流し湿気を極力除いた状態で、前記の各成分を仕込み混合、溶解、分散して製造する。
また、有機ポリイソシアネートまたは有機モノイソシアネートと有機ポリイソシアネートの混合物と活性水素基含有化合物との反応物であるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、シランカップリング剤類などを使用する場合、予め反応して得られたものをそれ以外の成分と混合、分散して製造してもよい(この場合他の成分は反応時に存在させてもよいし、反応後に添加混合してもよい。)。これらの反応物は従来公知の方法で製造することが出来る。
【0052】
更に、本発明におけるシーリング構造または防水構造の形成について説明する。
具体的には例えば、本発明の呈色プライマー組成物の塗布、およびシーリング材または防水材の施工によるシーリング構造または防水構造の形成は、後述する各種下地部材に、シーリング材または防水材の施工に先立って、本発明の呈色プライマー組成物を刷毛、ローラー、スプレーなどで所定量塗布した後、所定の時間(オープンタイム:通常は常温で10分〜1時間程度)放置乾燥、硬化させ塗膜(プライマー層)を形成させることにより好適に行うことができる。
呈色プライマー組成物の塗布量は、呈色プライマー組成物の固形分(不揮発分)換算で0.5〜200g/m、特に1〜150g/mであることが好ましい。呈色プライマー組成物の塗布量が固形分(不揮発分)換算で0.5g/m未満であると下地部材とシーリング材や防水材との密着性や接着性が向上せず、200g/mを超えると塗膜が厚くプライマー層が固くなり、コストも高くなる。
所定の時間を過ぎてもプライマー塗布部に水、塵や埃など接着性を阻害させる物質が付着していなければそのまま使用することができる。水、塵や埃などが付着していた場合は、刷毛やウエスを用いてそれらを極力取り除き、刷毛、ローラー、スプレーなどで、再度、該塗布部に塗布し、所定の時間放置し乾燥硬化させる。
次いで、プライマー塗布部を目視で観察して呈色プライマー組成物の塗布むらや塗布もれがないことを確認する。万が一、呈色プライマー組成物の塗りむらや塗り忘れにより、呈色プライマー組成物未塗布の箇所が見つかった場合は、その箇所に呈色プライマー組成物を塗布し所定の時間放置乾燥、硬化させる。そして、予め用意しておいたシーリング材を該塗布部に打設し、または防水材を該塗布部に塗布し、へらやコテなどを用いて美観を損ねないよう表面をならして所望の形状や厚さに仕上げる。
【0053】
シーリング材および防水材は特に限定されないが、具体的には、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、ポリサルファイド系、変性ポリサルファイド系、ブチルゴム系、アクリル系、エポキシ系などの各種のシーリング材や防水材が挙げられる。
これらのうち、硬化後のゴム物性が良好な点とコスト的に優位である点で、ポリウレタン系、変成シリコーン系、アクリルウレタン系のシーリング材や防水材が好ましい。
シーリング材、防水材は、主剤と硬化剤とを施工時に混合して使用する2成分形と、空気中の水分(湿気)と反応し硬化する1成分形に大別することができるが、混合の手間や混合不良による不具合がなく施工作業のし易い点で1成分形湿気硬化型のシーリング材や防水材が好ましい。
【0054】
本発明の呈色プライマー組成物が使用できる下地部材としては、特に制限されることなく、公知のあらゆる下地部材に適用できる。例えば、無垢材、合板等、集成材などの木質系材料、鉄、銅、ステンレス、ガルバニウム鋼板、トタン、アルミニウム、チタン等の各種金属系材料、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ABS、FRP等の各種合成樹脂系材料、瓦、ガラス、レンガ、タイル、モルタル、コンクリート、スレート、ALC、サイデイング、磁器、陶器等の無機系材料、大理石、御影石等の岩石系材料、あるいはこれらの表面を塗料等でコーティングしたものなどが挙げられる。
【0055】
本発明の呈色プライマー組成物は、シーリング材や防水材と、これらの表面の仕上げ材として用いられる上塗り塗料との、密着性向上剤(バリアプライマー)としても使用することができる。この場合、シーリング材や防水材の施工後、その表面が十分に硬化したのち、本発明の呈色プライマー組成物を該表面に刷毛やローラー、スプレーなどで所定量塗布する。次いで、プライマーが乾燥、硬化したのを確認した後で、上塗り塗料を塗装すればよい。
このように、シーリング材や防水材と上塗り塗料との間にプライマー層を設けることで密着性が向上し、上塗り塗料のハジケや割れを防止することができる。
このようにすることで、シーリング材や防水材に含まれる可塑剤等の移行物質が上塗り塗料へ移行を抑制し、それによって生じる上塗り塗料表面のベタツキがなくなり、塗料表面に付着する塵や埃などの汚れを低減することができる。
【0056】
次に、本発明の呈色プライマー組成物を用いたプライマー層の検査方法について説明する。
発明の呈色プライマー組成物を下地に塗布した後、該塗布面にシーリング材を打設しまたは防水材を塗布した施工箇所が、その施工後何らかの要因により、シーリング材または防水材と下地部材との間で剥離、破断(亀裂)などの不具合が生じた場合、その不具合箇所(プライマーの塗布面)すなわちシーリング材層や防水材層の剥離、破断箇所に、または、剥離、破断が推定される箇所のシーリング材層や防水材層を剥離させた下地上および/またはシーリング材層や防水材層の剥離面に呈色化剤(C)を塗布し、呈色性化合物(B)を呈色させて、形成したプライマー層があるか否かを視認することで判別する。
呈色化剤(C)の塗布方法は、刷毛、ローラー、スプレーなど、公知のあらゆる方法で行うことができ特に制限はない。
呈色化剤(C)は、酸性化合物または塩基性化合物と、有機溶媒とを含有する組成物である。酸性化合物または塩基性化合物は、有機溶媒に溶解した後の水素イオン濃度が、呈色化合物(C)を呈色させる水素イオン濃度指数領域(PH領域)となるように勘案して適宜選択し、呈色化剤(C)を酸性領域〜中性領域〜塩基性領域に調整する。
【0057】
水素イオン濃度指数が酸性〜中性領域となるように用いられる酸性化合物は、その酸性化合物が水素イオンを発生あるいは放出または水酸イオンと何らかの結合をするなどして酸性を示す成分であれば特に制限はないが、具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプリル酸、オレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、乳酸、クエン酸、フタル酸、安息香酸、フェノール、クレゾール、キシレノール酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、タウリンなどの有機酸やこれら有機酸の酸性示す誘導体、塩酸、リン酸、炭酸(水)、硝酸、硫酸、などの無機酸などが挙げられる。これらはそれぞれ単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
水素イオン濃度指数が中性〜アルカリ領域となるように用いられる塩基性化合物は、その塩基性化合物が水酸イオンを発生あるいは放出または水素イオンと何らかの結合をするなどして塩基性を示す成分であれば特に制限はないが、具体的には、アンモニア(水溶液)、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0059】
有機溶媒としては、酸性化合物または塩基性化合物を溶解させるものであれば特に制限なく使用することができる。また、水と併用することも可能である。有機溶媒としては、具体的には、脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素、アルコール系、エステル系、ケトン系、カーボネート系、アミド系、ハロゲン系、アセテート系などの溶媒が挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0060】
脂肪族系炭化水素としては、具体的には、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカンなどが挙げられ、芳香族系炭化水素としては、具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ビフェニル、石油ナフサ、コールタールナフサ、ソルベントナフサなどが挙げられ、アルコール系としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコールなどが挙げられ、エステル系としては、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ステアリン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、マロン酸ジエチルなどが挙げられ、ケトン系としては、具体的には、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどが挙げられ、カーボネート系としては、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられ、アミド系としては、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられ、ハロゲン系としては、具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどが挙げられる。
また、ジメチルスルホキシド、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタートなども挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0061】
これらの有機溶媒のうち、乾燥、硬化後のバインダー樹脂との親和性が高いアルコール系、エーテル系、ケトン系、脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素、ハロゲン系の溶媒が好ましい。バインダー樹脂(A)との親和性が高いと有機溶媒や酸性化合物または塩基性化合物がプライマー層の内部に浸透しやすいため、呈色性化合物(B)による呈色度合い(色合い)が強くなり、視認しやすくなる。
【0062】
前述の通り、本発明の呈色プライマー組成物の塗布部に所定の水素イオン濃度指数(PH領域)に調整した呈色化剤(C)を塗布することによって、該塗布部が呈色し、プライマー(層)の有無を容易に視認することができる。
呈色化剤(C)を塗布しプライマー(層)の有無を視認した後は、そのまま放置してもよいが、呈色化剤(C)の水素イオン濃度指数がPH=5以下またはPH=9以上の場合は、呈色化剤(C)によって塗布部が経時的に変色したり劣化するのを防ぐため、該塗布部をウエスなどで拭いたり、散水などをして呈色化剤(C)を洗い流しておくことが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について実施例等により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定して解釈されるものではない。
【0064】
[調製例1]
攪拌機、温度計、冷却管及び乾燥窒素導入管付きの反応器に、窒素気流下で、酢酸エチル572.8g、分子量300のポリオキシプロピレントリオール122.1gを仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート257.4gを仕込んだ。更に、ジブチル錫ジラウレート0.4gを仕込んだ後に、発熱に注意しながら70℃まで徐々に加熱し、イソシアネート基含有量が4.6質量%になるまでウレタン化反応を行ない、理論不揮発分40質量%のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(P−1)を得た。
【0065】
[調製例2]
攪拌機、温度計、冷却管及び乾燥窒素導入管付きの反応器に、窒素気流下で、酢酸エチルを550g、HDIとTDIとの混合イソシアヌレート三量体(変性イソシアネート)であるデスモジュールHL(住化バイエルウレタン社製、60質量%酢酸ブチル溶液)を350g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403)を47.2gそれぞれ加え、攪拌・混合し、理論不揮発分27質量%の変性イソシアネートとシランカップリング剤との混合物(P−2)を得た。
【0066】
[調製例3]
攪拌機付きの混合容器に、メタノールを98g、キシロールを98g、水酸化ナトリウム4gをそれぞれ加え攪拌混合した。水酸化ナトリウムが完全に溶解したのを確認し、呈色化剤を得た。
【0067】
実施例1
攪拌機、乾燥窒素導入管付きの混合容器に、窒素気流下で、調製例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(P−1)を100g、チモールフタレインを1.6gそれぞれ仕込み、攪拌・混合し、呈色プライマー組成物を調製した。
【0068】
実施例2
攪拌機、乾燥窒素導入管付きの混合容器に、窒素気流下で、調製例2で得た変性イソシアネートとシランカップリング剤との混合物(P−2)を100g、チモールフタレインを1.1gそれぞれ仕込み、攪拌・混合し、呈色プライマー組成物を調製した。
【0069】
実施例3
攪拌機、乾燥窒素導入管付きの混合容器に、窒素気流下で、アミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBP−41、有効樹脂分12%)を100g、チモールフタレインを0.5gそれぞれ加え、攪拌・混合し、呈色プライマー組成物を調製した。
【0070】
比較例1
調製例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(P−1)を用いた。
【0071】
比較例2
調製例2で得た変性イソシアネートとシランカップリング剤との混合物(P−2)を用いた。
【0072】
比較例3
アミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBP−41、有効樹脂分12%)を用いた。
【0073】
評価方法
実施例1〜3で調製した呈色プライマー組成物および比較例1〜3のプライマー(バインダー樹脂)を用いて、下記に示す評価を行った。
[引張試験]
50mm×50mm×8mmのスレート板の被着面に刷毛を用いて実施例1〜3で調製した呈色プライマー組成物、比較例1〜3のプライマーをそれぞれ140g/mの塗布量で刷毛塗りした後、そのまま室温に30分間放置し、プライマーを乾燥、硬化させた。
次いで、スレート板のプライマー塗布面がシーリング材の被着面となるようにして、JIS A1439:2010(建築用シーリング材の試験方法)の5.17.2で規定するH型試験体を作製し、温度23℃、湿度50%RHの条件で28日間養生して硬化させた。
養生後のH型試験体を引張試験機を用いて50mm/minの速度で引張り、最大引張応力および最大荷重時の伸び率を測定した。なお、シーリング材は一液湿気硬化型ウレタン系シーリング材であるオートンイクシード15+(オート化学工業株式会社製)を使用した。
[プライマー層の視認1]
引張試験を行った後のH型試験体の剥離箇所に調製例3で得た呈色化剤を刷毛塗りし、剥離箇所(プライマー層)が青く呈色し視認できた場合を○と評価し、呈色せず視認できなかった場合を×と評価した。
[プライマー層の視認2]
10mm角のポリプロピレンシートの上に実施例1〜3で調製した呈色プライマー組成物、比較例1〜3のプライマーをそれぞれ140g/mの塗布量で刷毛塗りし、そのまま室温に30分間放置して、プライマーを乾燥、硬化させた。
次いで、一液湿気硬化型ウレタン系防水材であるオートンプルーフNC(オート化学工業株式会社製)をプライマー被着面に厚さ2mmとなるようにコテ塗りし、温度23℃、湿度50%RHの条件で7日間養生し硬化させた。
剥離箇所が生じるようにするため、養生後の防水材をポリプロピレンシートから手で引き剥がした。引き剥がした防水材の被着面に調製例3で得た呈色化剤を刷毛塗りした。プライマー層が呈色化剤によって青く呈色し視認できた場合を○と評価し、呈色せず視認できなかった場合を×と評価した。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜3の結果から本発明の呈色プライマー組成物を乾燥、硬化した後、形成したプライマー層は呈色化剤によって呈色し、プライマーが被着面に塗られていたことを容易に視認することができた。また、引張試験結果から、シーリング材の最大引張応力、最大荷重時の伸び率は良好であり、下地部材(スレート板)とシーリング材との密着性、接着性は高いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)と呈色性化合物(B)とを含有する呈色プライマー組成物であって、
前記呈色性化合物(B)が水素イオンとの化学的作用によって呈色性を示す化合物であること、を特徴とする前記呈色プライマー組成物。
【請求項2】
前記バインダー樹脂(A)がイソシアネート基含有化合物(A−1)および/または加水分解性シリル基含有化合物(A−2)である、請求項1に記載の呈色プライマー組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート基含有化合物(A−1)がイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであり、前記加水分解性シリル基含有化合物(A−2)がシランカップリング剤類である、請求項2に記載の呈色プライマー組成物。
【請求項4】
下地上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の呈色プライマー組成物からなるプライマー層を設け、その上にシーリング材層を設けたシーリング構造におけるプライマー層の検査方法であって、
シーリング材層の剥離、破断箇所に、または、剥離、破断が推定される箇所のシーリング材層を剥離させた下地上および/またはシーリング材層の剥離面に、呈色化剤(C)を塗布し呈色性化合物(B)を呈色させて、プライマー層の有無を視認すること、を特徴とする前記方法。
【請求項5】
下地上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の呈色プライマー組成物からなるプライマー層を設け、その上に防水材層を設けた防水構造におけるプライマー層の検査方法であって、
防水材層の剥離、破断箇所に、または、剥離、破断が推定される箇所の防水材層を剥離させた下地上および/または防水材層の剥離面に、呈色化剤(C)を塗布し呈色性化合物(B)を呈色させて、プライマー層の有無を視認すること、を特徴とする前記方法。
【請求項6】
前記呈色化剤(C)が酸性化合物または塩基性化合物と有機溶媒とを含有する呈色化剤である、請求項4または5に記載のプライマー層の検査方法。


【公開番号】特開2012−184627(P2012−184627A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49953(P2011−49953)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)