周期外乱抑制装置
【課題】周期外乱オブザーバによるトルクリプル抑制制御では、経年変化によるプラントの変動や、プラント特性の変動等を考慮する必要があるため、同定モデル誤差に対するロバスト性の向上が求められている。
【解決手段】周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度を算出して閾値と比較しながらゲイン補正量を算出するゲイン補正量演算部と、位相補正量とゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を設けたものである。
【解決手段】周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度を算出して閾値と比較しながらゲイン補正量を算出するゲイン補正量演算部と、位相補正量とゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象物で発生する周期性の外乱を抑制する周期外乱抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学習機能を有する制御装置やモータ制御装置のように、制御対象物から周期性の外乱が発生する場合がある。
周期性の外乱が発生する制御対象物として、例えば、モータの場合には原理的にトルクリプルと呼ばれる脈動を発生して、振動、騒音、乗り心地の劣化、及び機械共振等の種々の問題を引き起こす。特に、近年普及が進んでいる埋込磁石同期モータ(以下PMモータという)では、コギングトルクリプルとリラクタンストルクリプルが複合的に発生する。その対策として、脈動を打ち消す補償信号を電気的に与えてトルクリプルを抑制する方式が知られている。
その方式を大別すると、主にトルクリプルに近似式や電磁界解析結果に基づいて補償するフィードフォワード補償方式と、フィードバック方式に大別される。
【0003】
フィードバック方式には、トルクメータを用いての学習する方式、モータ電流リプルからトルクリプルを推定して抑制する方式、電流・回転数検出値に基づくトルクリプル外乱オブザーバ方式等が知られている。これらフィードバック方式は、リプル特性変化にもオンラインで対応できるが、電流リプルからトルクリプル推定値への近似誤差、高周波帯域における外乱オブザーバフィルタの帯域制限などがある。
【0004】
また、トルクリプルはモータの回転次数で発生する周期性外乱であり、その高次成分は低速回転であっても機械共振周波数に一致しやすい傾向にある。したがって、共振系の可変速駆動システムに学習制御を適用する場合、振幅急変や位相反転による不安定現象への対応策が不可欠となっており、これらは一般に複雑な高次モデルや適切な制御調整が必要であり、トルクリプルのような周期性外乱を効果的に抑制することは困難となっている。この周期性外乱を抑制するものとして特許文献1が公知になっている。
【0005】
特許文献1では、図12で示すように、トルク指令Trefは指令値変換部1に入力されてモータの回転に同期した回転座標(交直dq軸)上のd軸、q軸の電流指令id*,iq*を生成し、その電流指令をベクトル制御されるインバータ2に与える。インバータ2は、電流指令id*,iq*に基づいて出力を発生し、シャフトを介して負荷を連結したPMモータ3を制御する。シャフトに取り付けられたトルク検出器によって検出された軸トルク検出値Tdetと位置検出器によって検出された回転子位相角θはオブザーバ部4に入力される。
【0006】
オブザーバ部4では、フーリエ変換の周波数成分抽出手段によってPMモータの周期的な脈動を直流として検出し、その周波数成分上の周期性外乱を周期外乱オブザーバ補償部4aによって推定し、この周期性外乱を抑圧するように電流指令に加算するように構成したものである。
【0007】
周期外乱オブザーバ部4aは周期性の外乱を抑制するために制御手法の一つであるが、制御の基本構成は一般的な外乱オブザーバと同様であり、周期外乱成分を個別に制御対象とする。周波数成分毎に複素ベクトルで表現ししたシステム同定モデルを外乱オブザーバの逆システムモデルに用いることで、制御対象とする周波数の外乱を直接的に推定して補償する。これにより、比較的単純な制御構成でありながら、対象とした周波数に対しては次数に関係なく高い制御効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2010/24195A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図13は特許文献1に開示されている周期外乱オブザーバの制御構成図で、n次成分について簡略して示したものである。
図中の各記号の定義は下記のとおりである。
【0010】
Pn:プラント、P^n:システム同定モデル
rn:制御指令
dn:周期外乱、d^n:周期外乱推定値
yn:制御対象出力
添字のnはn次成分であることを示す。
【0011】
※上記変数はいずれもXn=XAn+jXBnと表される複素ベクトルである。
【0012】
GF(s):低域通過フィルタ
controlled object:制御対象
PDO:周期外乱オブザーバ(Periodic Disturbance Observer)
先ず、制御対象のプラントPnに対して予めシステム同定を行い、1次元複素ベクトルの形で(1)式として表現する。
P^n=P^AN+jP^Bn (1)
ただし、P^An:同定結果のn次成分実部、P^Bn:同定結果のn次成分虚部。
【0013】
例えば、1〜1000Hzまでのシステム同定結果を1Hz毎に複素ベクトルで表現した場合、1000個の1次元複素ベクトルの要素からなるテーブルを構築することができる。同定結果を近似数式で表現することも可能である。いずれの手法でも、常に簡素な1次元複素ベクトルでシステムモデルを表現することが可能となる。
【0014】
なお、上記システム同定モデルに限らず、以下の明細書中のP^n、rn、
dn、d^n、ynもXn=XAn+jXBnと表される複素ベクトルである。
【0015】
制御手法として、プラント出力(制御対象出力yn)にフーリエ変換を簡易化した低域通過フィルタGF(s)を通すことで、周期外乱の制御対象とする周波数成分を抽出する。これに上記の抽出したシステム同定モデルの逆数
P^n-1で表現される逆システムを乗算し、上位の制御器より発生した制御指令値rnとの差分を加算器A1で取ることにより周期外乱dnを推定する。推定した周期外乱d^nを補償指令値として、加算器A2において制御指令値rnから差し引き、これによって加算器A3に加算される周期外乱dnを抑制する。以上の流れが周期外乱オブザーバによる周期外乱を抑制する制御手法である。
【0016】
この制御手法においては、制御の根幹を成して制御性能を左右するものはシステム同定モデルの真値に対する精度である。周期外乱の抑制能力向上のためには、より精度の高いシステム同定が求められる。
【0017】
しかしながら、同定モデルの高精度な取得は難しく、経年変化などによるプラントの変動や、頻繁なプラント特性の変動に対する追従などといった事象についても考慮する必要がある。真値との誤差は抑制完了までの収束時間の増大や、最悪の場合では位相誤差により抑制制御自身が外乱成分となり、制御を不安定にする可能性もある。このため、同定モデル誤差に対するロバスト性の向上が求められる。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その目的とするところは、システム同定モデル誤差を補正することができる周期外乱抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1は、上位に制御指令値を発生する制御器を持ち、周期性外乱が発生する制御対象の出力における、抑制制御対象とする周期外乱の周波数成分にシステム同定モデルの逆数で表現される逆システムを乗算して周期外乱を推定する周期外乱オブザーバを有し、周期外乱オブザーバで推定された周期外乱を補償指令値として前記制御指令値から差し引いて周期外乱を抑制するオブザーバ部と、
オブザーバ部による周期外乱抑制制御中における、前記周期外乱の各周波数成分が複素ベクトル平面に描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記制御対象の出力を入力して制御対象出力のゲインを補正するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴としたものである。
【0020】
本発明の請求項2は、前記制御対象物をモータとし、モータ出力を入力してモータにおける周期性の外乱発生の抑制量を周期外乱オブザーバ部で推定し、推定量をトルク指令から差引いて回転座標上のd,q軸の電流指令を生成し、インバータを介してモータを制御するものにおいて、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度を算出して閾値と比較し、この算出,比較を複数回繰り返してゲイン補正量を演算するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴としたものである。
【0021】
本発明の請求項3は、前記位相補正量演算部における位相補正量θrefnは、重みaとベクトルの回転角度θの積に前回算出の位相補正量θrefn-1を加算して求めることを特徴としたものである。
【0022】
本発明の請求項4は、前記回転ベクトル演算部の出力側に学習機能部を設け、回転ベクトル演算部により求めたシステム同定モデル補正値を学習機能部で記憶し、システム同定モデル誤差に対する補正量の学習を実行し、学習値を前記周期外乱オブザーバ部に入力して前記同定モデル補正値に乗算して新たな同定モデル補正値とすることを特徴としたものである。
【0023】
本発明の請求項5は、前記学習機能部に同定モデル補正機能部を設け、この同定モデル補正機能部によりシステム同定モデル補正値の記憶時の動作点を移動変更しながら繰返し行い、動作点移動完了時に周期外乱の抑制制御をオン状態とし、抑制制御完了時にシステム同定モデル補正値を記憶して周期外乱の抑制制御をオフ状態とすることを特徴としたものである。
【0024】
本発明の請求項6は、前記学習機能部に補間補正手段を設け、学習後のシステム同定モデル補正値に対して任意の周波数幅を持たせることを特徴としたものである。
【0025】
本発明の請求項7は、前記位相補正量演算部とゲイン補正量演算部及び回転ベクトル算出部を有する同定モデル補正手段は、周期外乱の周波数成分の次数n個分を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、周期外乱オブザーバに使用するシステム同定モデルの誤差を適応的に補正することができ、同定モデル誤差に対するロバスト性の向上を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す同定モデル補正部の構成図。
【図2】ゲイン補正決定時のフロー図。
【図3】本発明の他の実施例を示す同定モデル補正部の構成図。
【図4】複素ベクトル平面軌跡図。
【図5】シミュレーション時のシステム同定図。
【図6】学習機能なし時のシミュレーション結果図。
【図7】学習機能あり時のシミュレーション結果図。
【図8】変動モデル時のシミュレーション結果図。
【図9】誤学習防止処理フロー図。
【図10】複数次数同時検出の構成図。
【図11】補間処理説明図。
【図12】従来の外乱抑圧装置の構成図。
【図13】周期外乱オブザーバ制御構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、位相補正量演算部、ゲイン補正量演算部、及び回転ベクトル算出部を有する同定モデルの補正手段に設け、制御対象出力を入力して位相補正演算部では補正位相を算出し、ゲイン補正量演算部では補正ゲインを算出し、これら各補正量に基づいて、回転ベクトル算出部では回転ベクトルを決定することでシステム同定モデル誤差の補正を行うものである。以下図に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0029】
本発明の説明に先立って、システム同定モデル誤差に対する補正方式について説明する。
制御対象出力として、例えばトルクリプルの各周波数成分について、n次トルク脈動抽出成分(余弦係数)TAnを実軸、n次トルク脈動抽出成分(正弦係数)TBnを虚軸とした複素ベクトル平面内に描く軌跡に着目する。
【0030】
図4は複素ベクトル平面軌跡図を示したもので、100nは抑制開始からの経過時刻[t=tn]における位置(現在の検出位置)を示し、100n-1は抑制開始からの経過時刻[t=tn-1]における位置(1周期前の検出位置)を示している。
【0031】
システム同定モデルに真値と誤差がなければ、抑制開始点から原点、つまりトルクリプル(周期外乱)がない状態では直線かつ、最適な応答時間で向かう。この軌跡は誤差の存在する状態では、曲線や円軌道を描き、最悪は発散して無限遠方向に向かう。
【0032】
本実施例においてn次補償電流指令値をゼロとしてトルクリプル(図13の周期外乱dn)を打ち消すことを前提とするが、前記指令値をゼロ以外とする場合では補償電流指令のベクトル平面上での位置が原点に相当する。
【0033】
本発明では、抑制制御中に逐次、前記軌跡情報から下記(2)式におけるゲインGrefと位相θrefの回転ベクトルPnrefを決定し、(3)式のとおり同定モデルP^nに乗算することで同定モデルを補正して新たにP’nの同定モデルを得る。これを周期外乱オブザーバPDOにて用いる逆システムの同定モデルにP’nを適用する。
Pnref=Gref・(cosθref+jsinθref) (2)
P’n=P^n・Pnref (3)
図1に前記(2)、(3)式を実現する実施例1の制御ブロック図を示す。図1は図13の構成を周波数成分について簡略化して表しており、図13と同一部分には同一符号を付している。
【0034】
図1で示すシステム同定モデルの補正手段の構成図において、10は実プラント、11は位相補正量演算部で、実プラント10の制御対象出力ynから、周期外乱の各周波数成分が描くベクトル軌跡の位相(回転角度)θを算出すると共に、後述のように補正量θrefを算出する。12はゲイン補正量演算部で、制御対象出力ynから、周期外乱の各周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度(ゲインの現在値)|v|を算出し、図2に基づいて補正する。
【0035】
13は回転ベクトル算出部で、(2)式に基づき位相θrefとゲインGrefを乗算して回転ベクトルPnref(システム同定モデルに対する補正指令値)を算出し、この回転ベクトルPnrefによって周期外乱オブザーバ部14のシステム同定モデルを補正する。周期外乱オブザーバ部14には、制御対象出力ynと制御指令が入力されており、図13で示す演算を実行して周期外乱推定値d^nを求め、その周期外乱推定値d^nは加算器A2において制御指令rnから差し引かれ、加算器A3で加算される周期外乱dnを抑制する。
【0036】
(2)式に基づく位相補正量θrefは以下のようにして決定される。
図4で示すように、抑制開始からの経過時刻[t=tn]の位置(TAn,TBn)の原点方向のベクトルをPtとし、時刻[t=tn-1]から時刻[t=tn]へのベクトルをvとおく。Ptから見たvの回転角度をθとする。モデル誤差がなければθは常にゼロとなる。検出した位相θに対して逆向きに位相補正量θrefを決定すればシステム同定モデルの誤差を補正することができる。
θ=tan-1(Pt×v/Pt・v) (4)
(4)式において、[×]記号は外積を表し、[・]記号は内積を表す。
【0037】
補正を行わなくても抑制可能な小程度のモデル誤差であれば周期外乱オブザーバ部によりθ=0となる方向に補償指令が生成される。モデル誤差が存在する場合には、θを同定モデルの位相誤差と近似的に見て補正量の決定を行う。位相誤差を近似したことによる影響を低減するために、本発明における位相補正量演算部11は(5)式で示すように、位相補正量θrefは重みaとθの積に前回の位相補正量θrefn-1を加算する演算を実行することでθrefを求める。
なお、位相補正量θrefnの初期値はゼロである。このようにすることにより、突発的な変動に対してもθrefが適応的に調整されることで柔軟に対応でき、θがゼロとなる方向へモデルが補正される。
θrefn=θrefn-1−a・θ (5)
次に、ゲイン補正量演算部12は、図2で示すフローチャートに基づいて補正ゲインGrefを決定する。位相誤差が小さくともゲイン誤差が大きい場合には目標点を中心とした振動的挙動、もしくは収束時間が非常に長くなる可能性がある。位相補正に加えゲイン補正を行うことで、モデル誤差に対するロバスト性の高い補正制御を確立することができる。
【0038】
補正ゲインGref は、図4の位置ベクトルPtおよび速度ベクトルvから、図2に示すフローチャートに基づいて決定する。StartからEndまでを抑制制御と並行して周期的に繰り返し、ゲイン補正量を逐次決定する。なお補正量の調整方向として、補正ゲインGref の増加/減少は移動速度の減少/増加に相当する。補正ゲインGref の初期値は1とする。
【0039】
以下に図2の(A)〜(E)の処理手順について説明する。
(A)位置ベクトルの絶対値| r |が閾値rth以下のときには、収束状態と判定して調整しない。
(B)発散的挙動を防ぐため比較的早い周期(例えば数+[msec]毎)で移動速度の抑制を行う。速度ベクトルから進行速度| v 1|を算出し、判定閾値を| r |に比例としてk・| r |に決定する。進行速度| v 1|が閾値以上ならゲイン不足と判定して、補正ゲインGref をa1[%]増加させる。ここで、a1、kは任意設定のパラメータである。
(C)補正制御周期をN回に分周し、この周期(例えば数[sec]毎)での進行速度| v 2|を算出する。
(D)| v 2|が閾値vth以下ならゲイン過大と判定しGref をa2[%]減少させる。これによりゲイン過大による収束遅延状態を防ぎ、移動速度を増加させる。vth、a2は任意設定のパラメータである。
(E)補正ゲインGref をリミットして最終値をメモリーに保存する。
以上により、(YAN,YBN)のベクトル軌跡を利用して上記で示した位相およびゲイン補正手法を用いて、(3)式により同定モデルの補正を行う。
【0040】
したがって、この実施例によれば、周期外乱オブザーバに使用するシステム同定モデル誤差を適応的に補正することができ、システム同定モデル誤差に対するロバスト性の向上を図ることができるものである。
【実施例2】
【0041】
実施例1では、ある周波数において周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを適応的に補正する手段を示した。実施例2では、求められた最終補正値Pnrefを記録するためのメモリーを設けて学習(記憶)機能を付加したものである。
図3は、この学習機能を有する制御ブロック図を示したものである。15はメモリーで、回転ベクトル算出部13の出力Prefnをスイッチ16を通して入力すると共に、PMモータの回転角速度nωが入力される。なお、このメモリー15とスイッチ16などによって学習機能部が構成される。
【0042】
スイッチ16は、最終補正された回転ベクトルPrefnを取り込んでメモリー15に保存するタイミングでオン・オフし、その保存タイミングは、同定モデルの補正処理が行われて十分に周期外乱が抑制された時点とする。そのときにおける回転ベクトルPnrefをメモリーに保存することで、当該PrefnをPmemnとして周期外乱オブザーバ14に出力する。周期外乱オブザーバ14は、(3)式の演算に対して(6)式で示すように、さらにPmemnを乗算して補正された同定モデルPn´が決定される。
P´n=P^n・Prefn・Pmemn (6)
図5〜8は、学習機能を用いた本実施例と学習機能を用いない場合のシミュレーション結果を示したものである。シミュレーションにおいては、回転数・トルク一定条件状態(42[Hz])、(極数4)、(30[Nm])とし、補正周期を20[ms]としたものである。トルクリプルの条件として、電気的周波数1,2次周波数成分(1f,2f)に一定量を与えた。図5(a),(b)で示すゲインと位相の両図において、それぞれ線aはノミナル、線bは変動モデル1、線cは変動モデル2である。
【0043】
システム同定モデルの誤差条件として、図5で示すモデルを逆モデルのノミナルな同定モデルに設定し、実プラントを変動モデル1として誤差設定してシミュレーションを行った。図6は学習機能を無効とした場合、図7は学習機能を有効とした場合を示し、各図において、(a)は学習機能を無効とした場合のベクトル軌跡図、(b)図は(Tan),(Tbn)の原点から距離|r|の時間応答、(c)図は軸トルクの時間応答をそれぞれ示す。図7から明らかなように、抑制開始直後から位相誤差、及び発散方向に向かう速度を制御するようなノミナル同定モデルを補正するため、1f,2fの場合においても、それぞれ抑制制御が発散することなくトルクリプルを抑制できていることが確認できる。
【0044】
図8は、システム急変、及び外乱変動についての検証結果である。図5で示す変動モデル1で抑制が完了ししている状態で、変動モデル2にシステムを急変させ、同時にトルクリプルを2倍に変動させた。図8で明らかなように、システム急変、外乱変動に対しても同定モデルを逐次補正することにより発散動作を防ぎ、トルクリプルが抑制されることが確認できる。
【0045】
したがって、この実施例によれば、実施例1の効果に加えて、更に、ある周波数における同定モデル誤差に対する補正量の学習(記憶)が可能となるので、再度の同周波数での動作において補正完了までの学習時間を短縮、もしくは学習を不必要とすることが可能となるものである。
【実施例3】
【0046】
なお、図3で示す同定モデル補正量の学習のために、補正量をメモリーへ保存する。その保存を装置が動作する範囲の全て、若しくは一定量の範囲で動作点を変更して繰り返して実施するが、その際、誤学習の虞が生じる。
実施例3では、この動作点移動時には移動中の誤学習を防ぐために抑制制御をオン・オフするものである。
【0047】
図9はそのための処理シーケンスで、ステップS1で動作点を移動させ、移動が完了(S2)したらS3で抑制制御をオンする。S4で抑制制御完了したらメモリーに保存(S5)し、S6で抑制制御をオフする。最終的には、S7の全動作点が完了するまで実行して補正した全周波数範囲での同定モデルを完成させる。一定量の動作点で行った場合は間欠点を任意の方式により補間する。
【0048】
これにより、システム同定に誤差を含んでいる場合でも、モデル補正機能により抑制制御を完了させ、同時に新しい同定モデルを得ることが可能となるものである。
【実施例4】
【0049】
上記した各実施例では、ある特定の周波数成分について同定モデル誤差を推定して補正を可能にしたことを示した。実施例3では、図10に示すように、n個(周期外乱の周波数成分の次数n個)の同定モデル補正手段付きオブザーバ部201〜20Nを設け、図1、図3の制御系を抑制する各次数に対する同定モデル誤差の推定、補正を並列・同時に実施するように構成したものである。
【0050】
同定モデル補正手段付きオブザーバ部201〜20Nは、図1、図3に示す周期外乱オブザーバ部14、位相補正演算部11、ゲイン補正演算部12及び回転ベクトル算出部13などの各機能を備えており、n次の制御指令r1〜rNに対して、同定モデル誤差を推定し、その誤差によってシステム同定モデルを補正した結果の周期外乱推定値d^1〜d^Nを各々出力するものである。
【0051】
この実施例によれば、実施例1,2の効果に加えて、抑制およびシステム同定モデル誤差を推定すべき周期外乱周波数成分が複数、同時に存在する場合においても、対応することができるものである。
【実施例5】
【0052】
第2以降の各実施例では、学習機能を付加したものであるが、その学習点が1ポイント周波数についてのものである。
すなわち、初期状態でのシステム同定モデルとして、図11(a)のようなPA(PB)に関する周波数応答グラフを有するものとする。上記各実施例において、同定モデル誤差を学習した結果は図11(b)のように、周期外乱の抑制制御は、ある特定した周波数a点、若しくはモデル変動に伴うb点のみの実施となるため、モデル誤差を学習可能なポイントも或る特定の周波数のみとなる。このため、学習した周波数から僅かでも移行した場合、直近の周波数で学習した結果値を適用することができない。制御対象がモータ等の可変速用途である場合、微小な周波数変動でも再学習が要求されることになる。
【0053】
この実施例は同定モデル補正手段内に補間手段を設け、図11(c)で示すように学習点a,b周囲の周波数領域に対して、補間手段による補間処理を施してピンポイントに対して任意の周波数幅を持たせたものである。
したがって、この実施例によれば、ある特定の周波数での学習結果を周辺周波数にまで影響させることで、周波数の変動に際しても抑制制御の安定性や学習に必要な時間の短縮が可能となるものである。
【符号の説明】
【0054】
1… 指令値変換部
2… インバータ
3… PMモータ
4… オブザーバ部
10… 実プラント(制御対象)
11… 位相補正量演算部
12… ゲイン補正量演算部
13… 回転ベクトル算出部
14… 周期外乱オブザーバ部
15… メモリー
16… スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象物で発生する周期性の外乱を抑制する周期外乱抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学習機能を有する制御装置やモータ制御装置のように、制御対象物から周期性の外乱が発生する場合がある。
周期性の外乱が発生する制御対象物として、例えば、モータの場合には原理的にトルクリプルと呼ばれる脈動を発生して、振動、騒音、乗り心地の劣化、及び機械共振等の種々の問題を引き起こす。特に、近年普及が進んでいる埋込磁石同期モータ(以下PMモータという)では、コギングトルクリプルとリラクタンストルクリプルが複合的に発生する。その対策として、脈動を打ち消す補償信号を電気的に与えてトルクリプルを抑制する方式が知られている。
その方式を大別すると、主にトルクリプルに近似式や電磁界解析結果に基づいて補償するフィードフォワード補償方式と、フィードバック方式に大別される。
【0003】
フィードバック方式には、トルクメータを用いての学習する方式、モータ電流リプルからトルクリプルを推定して抑制する方式、電流・回転数検出値に基づくトルクリプル外乱オブザーバ方式等が知られている。これらフィードバック方式は、リプル特性変化にもオンラインで対応できるが、電流リプルからトルクリプル推定値への近似誤差、高周波帯域における外乱オブザーバフィルタの帯域制限などがある。
【0004】
また、トルクリプルはモータの回転次数で発生する周期性外乱であり、その高次成分は低速回転であっても機械共振周波数に一致しやすい傾向にある。したがって、共振系の可変速駆動システムに学習制御を適用する場合、振幅急変や位相反転による不安定現象への対応策が不可欠となっており、これらは一般に複雑な高次モデルや適切な制御調整が必要であり、トルクリプルのような周期性外乱を効果的に抑制することは困難となっている。この周期性外乱を抑制するものとして特許文献1が公知になっている。
【0005】
特許文献1では、図12で示すように、トルク指令Trefは指令値変換部1に入力されてモータの回転に同期した回転座標(交直dq軸)上のd軸、q軸の電流指令id*,iq*を生成し、その電流指令をベクトル制御されるインバータ2に与える。インバータ2は、電流指令id*,iq*に基づいて出力を発生し、シャフトを介して負荷を連結したPMモータ3を制御する。シャフトに取り付けられたトルク検出器によって検出された軸トルク検出値Tdetと位置検出器によって検出された回転子位相角θはオブザーバ部4に入力される。
【0006】
オブザーバ部4では、フーリエ変換の周波数成分抽出手段によってPMモータの周期的な脈動を直流として検出し、その周波数成分上の周期性外乱を周期外乱オブザーバ補償部4aによって推定し、この周期性外乱を抑圧するように電流指令に加算するように構成したものである。
【0007】
周期外乱オブザーバ部4aは周期性の外乱を抑制するために制御手法の一つであるが、制御の基本構成は一般的な外乱オブザーバと同様であり、周期外乱成分を個別に制御対象とする。周波数成分毎に複素ベクトルで表現ししたシステム同定モデルを外乱オブザーバの逆システムモデルに用いることで、制御対象とする周波数の外乱を直接的に推定して補償する。これにより、比較的単純な制御構成でありながら、対象とした周波数に対しては次数に関係なく高い制御効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2010/24195A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図13は特許文献1に開示されている周期外乱オブザーバの制御構成図で、n次成分について簡略して示したものである。
図中の各記号の定義は下記のとおりである。
【0010】
Pn:プラント、P^n:システム同定モデル
rn:制御指令
dn:周期外乱、d^n:周期外乱推定値
yn:制御対象出力
添字のnはn次成分であることを示す。
【0011】
※上記変数はいずれもXn=XAn+jXBnと表される複素ベクトルである。
【0012】
GF(s):低域通過フィルタ
controlled object:制御対象
PDO:周期外乱オブザーバ(Periodic Disturbance Observer)
先ず、制御対象のプラントPnに対して予めシステム同定を行い、1次元複素ベクトルの形で(1)式として表現する。
P^n=P^AN+jP^Bn (1)
ただし、P^An:同定結果のn次成分実部、P^Bn:同定結果のn次成分虚部。
【0013】
例えば、1〜1000Hzまでのシステム同定結果を1Hz毎に複素ベクトルで表現した場合、1000個の1次元複素ベクトルの要素からなるテーブルを構築することができる。同定結果を近似数式で表現することも可能である。いずれの手法でも、常に簡素な1次元複素ベクトルでシステムモデルを表現することが可能となる。
【0014】
なお、上記システム同定モデルに限らず、以下の明細書中のP^n、rn、
dn、d^n、ynもXn=XAn+jXBnと表される複素ベクトルである。
【0015】
制御手法として、プラント出力(制御対象出力yn)にフーリエ変換を簡易化した低域通過フィルタGF(s)を通すことで、周期外乱の制御対象とする周波数成分を抽出する。これに上記の抽出したシステム同定モデルの逆数
P^n-1で表現される逆システムを乗算し、上位の制御器より発生した制御指令値rnとの差分を加算器A1で取ることにより周期外乱dnを推定する。推定した周期外乱d^nを補償指令値として、加算器A2において制御指令値rnから差し引き、これによって加算器A3に加算される周期外乱dnを抑制する。以上の流れが周期外乱オブザーバによる周期外乱を抑制する制御手法である。
【0016】
この制御手法においては、制御の根幹を成して制御性能を左右するものはシステム同定モデルの真値に対する精度である。周期外乱の抑制能力向上のためには、より精度の高いシステム同定が求められる。
【0017】
しかしながら、同定モデルの高精度な取得は難しく、経年変化などによるプラントの変動や、頻繁なプラント特性の変動に対する追従などといった事象についても考慮する必要がある。真値との誤差は抑制完了までの収束時間の増大や、最悪の場合では位相誤差により抑制制御自身が外乱成分となり、制御を不安定にする可能性もある。このため、同定モデル誤差に対するロバスト性の向上が求められる。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その目的とするところは、システム同定モデル誤差を補正することができる周期外乱抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1は、上位に制御指令値を発生する制御器を持ち、周期性外乱が発生する制御対象の出力における、抑制制御対象とする周期外乱の周波数成分にシステム同定モデルの逆数で表現される逆システムを乗算して周期外乱を推定する周期外乱オブザーバを有し、周期外乱オブザーバで推定された周期外乱を補償指令値として前記制御指令値から差し引いて周期外乱を抑制するオブザーバ部と、
オブザーバ部による周期外乱抑制制御中における、前記周期外乱の各周波数成分が複素ベクトル平面に描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記制御対象の出力を入力して制御対象出力のゲインを補正するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴としたものである。
【0020】
本発明の請求項2は、前記制御対象物をモータとし、モータ出力を入力してモータにおける周期性の外乱発生の抑制量を周期外乱オブザーバ部で推定し、推定量をトルク指令から差引いて回転座標上のd,q軸の電流指令を生成し、インバータを介してモータを制御するものにおいて、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度を算出して閾値と比較し、この算出,比較を複数回繰り返してゲイン補正量を演算するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴としたものである。
【0021】
本発明の請求項3は、前記位相補正量演算部における位相補正量θrefnは、重みaとベクトルの回転角度θの積に前回算出の位相補正量θrefn-1を加算して求めることを特徴としたものである。
【0022】
本発明の請求項4は、前記回転ベクトル演算部の出力側に学習機能部を設け、回転ベクトル演算部により求めたシステム同定モデル補正値を学習機能部で記憶し、システム同定モデル誤差に対する補正量の学習を実行し、学習値を前記周期外乱オブザーバ部に入力して前記同定モデル補正値に乗算して新たな同定モデル補正値とすることを特徴としたものである。
【0023】
本発明の請求項5は、前記学習機能部に同定モデル補正機能部を設け、この同定モデル補正機能部によりシステム同定モデル補正値の記憶時の動作点を移動変更しながら繰返し行い、動作点移動完了時に周期外乱の抑制制御をオン状態とし、抑制制御完了時にシステム同定モデル補正値を記憶して周期外乱の抑制制御をオフ状態とすることを特徴としたものである。
【0024】
本発明の請求項6は、前記学習機能部に補間補正手段を設け、学習後のシステム同定モデル補正値に対して任意の周波数幅を持たせることを特徴としたものである。
【0025】
本発明の請求項7は、前記位相補正量演算部とゲイン補正量演算部及び回転ベクトル算出部を有する同定モデル補正手段は、周期外乱の周波数成分の次数n個分を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によれば、周期外乱オブザーバに使用するシステム同定モデルの誤差を適応的に補正することができ、同定モデル誤差に対するロバスト性の向上を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す同定モデル補正部の構成図。
【図2】ゲイン補正決定時のフロー図。
【図3】本発明の他の実施例を示す同定モデル補正部の構成図。
【図4】複素ベクトル平面軌跡図。
【図5】シミュレーション時のシステム同定図。
【図6】学習機能なし時のシミュレーション結果図。
【図7】学習機能あり時のシミュレーション結果図。
【図8】変動モデル時のシミュレーション結果図。
【図9】誤学習防止処理フロー図。
【図10】複数次数同時検出の構成図。
【図11】補間処理説明図。
【図12】従来の外乱抑圧装置の構成図。
【図13】周期外乱オブザーバ制御構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、位相補正量演算部、ゲイン補正量演算部、及び回転ベクトル算出部を有する同定モデルの補正手段に設け、制御対象出力を入力して位相補正演算部では補正位相を算出し、ゲイン補正量演算部では補正ゲインを算出し、これら各補正量に基づいて、回転ベクトル算出部では回転ベクトルを決定することでシステム同定モデル誤差の補正を行うものである。以下図に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0029】
本発明の説明に先立って、システム同定モデル誤差に対する補正方式について説明する。
制御対象出力として、例えばトルクリプルの各周波数成分について、n次トルク脈動抽出成分(余弦係数)TAnを実軸、n次トルク脈動抽出成分(正弦係数)TBnを虚軸とした複素ベクトル平面内に描く軌跡に着目する。
【0030】
図4は複素ベクトル平面軌跡図を示したもので、100nは抑制開始からの経過時刻[t=tn]における位置(現在の検出位置)を示し、100n-1は抑制開始からの経過時刻[t=tn-1]における位置(1周期前の検出位置)を示している。
【0031】
システム同定モデルに真値と誤差がなければ、抑制開始点から原点、つまりトルクリプル(周期外乱)がない状態では直線かつ、最適な応答時間で向かう。この軌跡は誤差の存在する状態では、曲線や円軌道を描き、最悪は発散して無限遠方向に向かう。
【0032】
本実施例においてn次補償電流指令値をゼロとしてトルクリプル(図13の周期外乱dn)を打ち消すことを前提とするが、前記指令値をゼロ以外とする場合では補償電流指令のベクトル平面上での位置が原点に相当する。
【0033】
本発明では、抑制制御中に逐次、前記軌跡情報から下記(2)式におけるゲインGrefと位相θrefの回転ベクトルPnrefを決定し、(3)式のとおり同定モデルP^nに乗算することで同定モデルを補正して新たにP’nの同定モデルを得る。これを周期外乱オブザーバPDOにて用いる逆システムの同定モデルにP’nを適用する。
Pnref=Gref・(cosθref+jsinθref) (2)
P’n=P^n・Pnref (3)
図1に前記(2)、(3)式を実現する実施例1の制御ブロック図を示す。図1は図13の構成を周波数成分について簡略化して表しており、図13と同一部分には同一符号を付している。
【0034】
図1で示すシステム同定モデルの補正手段の構成図において、10は実プラント、11は位相補正量演算部で、実プラント10の制御対象出力ynから、周期外乱の各周波数成分が描くベクトル軌跡の位相(回転角度)θを算出すると共に、後述のように補正量θrefを算出する。12はゲイン補正量演算部で、制御対象出力ynから、周期外乱の各周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度(ゲインの現在値)|v|を算出し、図2に基づいて補正する。
【0035】
13は回転ベクトル算出部で、(2)式に基づき位相θrefとゲインGrefを乗算して回転ベクトルPnref(システム同定モデルに対する補正指令値)を算出し、この回転ベクトルPnrefによって周期外乱オブザーバ部14のシステム同定モデルを補正する。周期外乱オブザーバ部14には、制御対象出力ynと制御指令が入力されており、図13で示す演算を実行して周期外乱推定値d^nを求め、その周期外乱推定値d^nは加算器A2において制御指令rnから差し引かれ、加算器A3で加算される周期外乱dnを抑制する。
【0036】
(2)式に基づく位相補正量θrefは以下のようにして決定される。
図4で示すように、抑制開始からの経過時刻[t=tn]の位置(TAn,TBn)の原点方向のベクトルをPtとし、時刻[t=tn-1]から時刻[t=tn]へのベクトルをvとおく。Ptから見たvの回転角度をθとする。モデル誤差がなければθは常にゼロとなる。検出した位相θに対して逆向きに位相補正量θrefを決定すればシステム同定モデルの誤差を補正することができる。
θ=tan-1(Pt×v/Pt・v) (4)
(4)式において、[×]記号は外積を表し、[・]記号は内積を表す。
【0037】
補正を行わなくても抑制可能な小程度のモデル誤差であれば周期外乱オブザーバ部によりθ=0となる方向に補償指令が生成される。モデル誤差が存在する場合には、θを同定モデルの位相誤差と近似的に見て補正量の決定を行う。位相誤差を近似したことによる影響を低減するために、本発明における位相補正量演算部11は(5)式で示すように、位相補正量θrefは重みaとθの積に前回の位相補正量θrefn-1を加算する演算を実行することでθrefを求める。
なお、位相補正量θrefnの初期値はゼロである。このようにすることにより、突発的な変動に対してもθrefが適応的に調整されることで柔軟に対応でき、θがゼロとなる方向へモデルが補正される。
θrefn=θrefn-1−a・θ (5)
次に、ゲイン補正量演算部12は、図2で示すフローチャートに基づいて補正ゲインGrefを決定する。位相誤差が小さくともゲイン誤差が大きい場合には目標点を中心とした振動的挙動、もしくは収束時間が非常に長くなる可能性がある。位相補正に加えゲイン補正を行うことで、モデル誤差に対するロバスト性の高い補正制御を確立することができる。
【0038】
補正ゲインGref は、図4の位置ベクトルPtおよび速度ベクトルvから、図2に示すフローチャートに基づいて決定する。StartからEndまでを抑制制御と並行して周期的に繰り返し、ゲイン補正量を逐次決定する。なお補正量の調整方向として、補正ゲインGref の増加/減少は移動速度の減少/増加に相当する。補正ゲインGref の初期値は1とする。
【0039】
以下に図2の(A)〜(E)の処理手順について説明する。
(A)位置ベクトルの絶対値| r |が閾値rth以下のときには、収束状態と判定して調整しない。
(B)発散的挙動を防ぐため比較的早い周期(例えば数+[msec]毎)で移動速度の抑制を行う。速度ベクトルから進行速度| v 1|を算出し、判定閾値を| r |に比例としてk・| r |に決定する。進行速度| v 1|が閾値以上ならゲイン不足と判定して、補正ゲインGref をa1[%]増加させる。ここで、a1、kは任意設定のパラメータである。
(C)補正制御周期をN回に分周し、この周期(例えば数[sec]毎)での進行速度| v 2|を算出する。
(D)| v 2|が閾値vth以下ならゲイン過大と判定しGref をa2[%]減少させる。これによりゲイン過大による収束遅延状態を防ぎ、移動速度を増加させる。vth、a2は任意設定のパラメータである。
(E)補正ゲインGref をリミットして最終値をメモリーに保存する。
以上により、(YAN,YBN)のベクトル軌跡を利用して上記で示した位相およびゲイン補正手法を用いて、(3)式により同定モデルの補正を行う。
【0040】
したがって、この実施例によれば、周期外乱オブザーバに使用するシステム同定モデル誤差を適応的に補正することができ、システム同定モデル誤差に対するロバスト性の向上を図ることができるものである。
【実施例2】
【0041】
実施例1では、ある周波数において周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを適応的に補正する手段を示した。実施例2では、求められた最終補正値Pnrefを記録するためのメモリーを設けて学習(記憶)機能を付加したものである。
図3は、この学習機能を有する制御ブロック図を示したものである。15はメモリーで、回転ベクトル算出部13の出力Prefnをスイッチ16を通して入力すると共に、PMモータの回転角速度nωが入力される。なお、このメモリー15とスイッチ16などによって学習機能部が構成される。
【0042】
スイッチ16は、最終補正された回転ベクトルPrefnを取り込んでメモリー15に保存するタイミングでオン・オフし、その保存タイミングは、同定モデルの補正処理が行われて十分に周期外乱が抑制された時点とする。そのときにおける回転ベクトルPnrefをメモリーに保存することで、当該PrefnをPmemnとして周期外乱オブザーバ14に出力する。周期外乱オブザーバ14は、(3)式の演算に対して(6)式で示すように、さらにPmemnを乗算して補正された同定モデルPn´が決定される。
P´n=P^n・Prefn・Pmemn (6)
図5〜8は、学習機能を用いた本実施例と学習機能を用いない場合のシミュレーション結果を示したものである。シミュレーションにおいては、回転数・トルク一定条件状態(42[Hz])、(極数4)、(30[Nm])とし、補正周期を20[ms]としたものである。トルクリプルの条件として、電気的周波数1,2次周波数成分(1f,2f)に一定量を与えた。図5(a),(b)で示すゲインと位相の両図において、それぞれ線aはノミナル、線bは変動モデル1、線cは変動モデル2である。
【0043】
システム同定モデルの誤差条件として、図5で示すモデルを逆モデルのノミナルな同定モデルに設定し、実プラントを変動モデル1として誤差設定してシミュレーションを行った。図6は学習機能を無効とした場合、図7は学習機能を有効とした場合を示し、各図において、(a)は学習機能を無効とした場合のベクトル軌跡図、(b)図は(Tan),(Tbn)の原点から距離|r|の時間応答、(c)図は軸トルクの時間応答をそれぞれ示す。図7から明らかなように、抑制開始直後から位相誤差、及び発散方向に向かう速度を制御するようなノミナル同定モデルを補正するため、1f,2fの場合においても、それぞれ抑制制御が発散することなくトルクリプルを抑制できていることが確認できる。
【0044】
図8は、システム急変、及び外乱変動についての検証結果である。図5で示す変動モデル1で抑制が完了ししている状態で、変動モデル2にシステムを急変させ、同時にトルクリプルを2倍に変動させた。図8で明らかなように、システム急変、外乱変動に対しても同定モデルを逐次補正することにより発散動作を防ぎ、トルクリプルが抑制されることが確認できる。
【0045】
したがって、この実施例によれば、実施例1の効果に加えて、更に、ある周波数における同定モデル誤差に対する補正量の学習(記憶)が可能となるので、再度の同周波数での動作において補正完了までの学習時間を短縮、もしくは学習を不必要とすることが可能となるものである。
【実施例3】
【0046】
なお、図3で示す同定モデル補正量の学習のために、補正量をメモリーへ保存する。その保存を装置が動作する範囲の全て、若しくは一定量の範囲で動作点を変更して繰り返して実施するが、その際、誤学習の虞が生じる。
実施例3では、この動作点移動時には移動中の誤学習を防ぐために抑制制御をオン・オフするものである。
【0047】
図9はそのための処理シーケンスで、ステップS1で動作点を移動させ、移動が完了(S2)したらS3で抑制制御をオンする。S4で抑制制御完了したらメモリーに保存(S5)し、S6で抑制制御をオフする。最終的には、S7の全動作点が完了するまで実行して補正した全周波数範囲での同定モデルを完成させる。一定量の動作点で行った場合は間欠点を任意の方式により補間する。
【0048】
これにより、システム同定に誤差を含んでいる場合でも、モデル補正機能により抑制制御を完了させ、同時に新しい同定モデルを得ることが可能となるものである。
【実施例4】
【0049】
上記した各実施例では、ある特定の周波数成分について同定モデル誤差を推定して補正を可能にしたことを示した。実施例3では、図10に示すように、n個(周期外乱の周波数成分の次数n個)の同定モデル補正手段付きオブザーバ部201〜20Nを設け、図1、図3の制御系を抑制する各次数に対する同定モデル誤差の推定、補正を並列・同時に実施するように構成したものである。
【0050】
同定モデル補正手段付きオブザーバ部201〜20Nは、図1、図3に示す周期外乱オブザーバ部14、位相補正演算部11、ゲイン補正演算部12及び回転ベクトル算出部13などの各機能を備えており、n次の制御指令r1〜rNに対して、同定モデル誤差を推定し、その誤差によってシステム同定モデルを補正した結果の周期外乱推定値d^1〜d^Nを各々出力するものである。
【0051】
この実施例によれば、実施例1,2の効果に加えて、抑制およびシステム同定モデル誤差を推定すべき周期外乱周波数成分が複数、同時に存在する場合においても、対応することができるものである。
【実施例5】
【0052】
第2以降の各実施例では、学習機能を付加したものであるが、その学習点が1ポイント周波数についてのものである。
すなわち、初期状態でのシステム同定モデルとして、図11(a)のようなPA(PB)に関する周波数応答グラフを有するものとする。上記各実施例において、同定モデル誤差を学習した結果は図11(b)のように、周期外乱の抑制制御は、ある特定した周波数a点、若しくはモデル変動に伴うb点のみの実施となるため、モデル誤差を学習可能なポイントも或る特定の周波数のみとなる。このため、学習した周波数から僅かでも移行した場合、直近の周波数で学習した結果値を適用することができない。制御対象がモータ等の可変速用途である場合、微小な周波数変動でも再学習が要求されることになる。
【0053】
この実施例は同定モデル補正手段内に補間手段を設け、図11(c)で示すように学習点a,b周囲の周波数領域に対して、補間手段による補間処理を施してピンポイントに対して任意の周波数幅を持たせたものである。
したがって、この実施例によれば、ある特定の周波数での学習結果を周辺周波数にまで影響させることで、周波数の変動に際しても抑制制御の安定性や学習に必要な時間の短縮が可能となるものである。
【符号の説明】
【0054】
1… 指令値変換部
2… インバータ
3… PMモータ
4… オブザーバ部
10… 実プラント(制御対象)
11… 位相補正量演算部
12… ゲイン補正量演算部
13… 回転ベクトル算出部
14… 周期外乱オブザーバ部
15… メモリー
16… スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位に制御指令値を発生する制御器を持ち、周期性外乱が発生する制御対象の出力における、抑制制御対象とする周期外乱の周波数成分にシステム同定モデルの逆数で表現される逆システムを乗算して周期外乱を推定する周期外乱オブザーバを有し、周期外乱オブザーバで推定された周期外乱を補償指令値として前記制御指令値から差し引いて周期外乱を抑制するオブザーバ部と、
オブザーバ部による周期外乱抑制制御中における、前記周期外乱の各周波数成分が複素ベクトル平面に描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記制御対象の出力を入力して制御対象出力のゲインを補正するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴とする周期外乱抑制装置。
【請求項2】
前記制御対象物をモータとし、モータ出力を入力してモータにおける周期性の外乱発生の抑制量を周期外乱オブザーバ部で推定し、推定量をトルク指令から差引いて回転座標上のd,q軸の電流指令を生成し、インバータを介してモータを制御するものにおいて、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度を算出して閾値と比較し、この算出,比較を複数回繰り返してゲイン補正量を演算するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴とする請求項1記載の周期外乱抑制装置。
【請求項3】
前記位相補正量演算部における位相補正量θrefnは、重みaとベクトルの回転角度θの積に前回算出の位相補正量θrefn-1を加算して求めることを特徴とする請求項1又は2記載の周期外乱抑制装置。
【請求項4】
前記回転ベクトル演算部の出力側に学習機能部を設け、回転ベクトル演算部により求めたシステム同定モデル補正値を学習機能部で記憶し、システム同定モデル誤差に対する補正量の学習を実行し、学習値を前記周期外乱オブザーバ部に入力して前記同定モデル補正値に乗算して新たな同定モデル補正値とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の周期外乱抑制装置。
【請求項5】
前記学習機能部に同定モデル補正機能部を設け、この同定モデル補正機能部によりシステム同定モデル補正値の記憶時の動作点を移動変更しながら繰返し行い、動作点移動完了時に周期外乱の抑制制御をオン状態とし、抑制制御完了時にシステム同定モデル補正値を記憶して周期外乱の抑制制御をオフ状態とすることを特徴とする請求項4記載の周期外乱抑制装置。
【請求項6】
前記学習機能部に補間補正手段を設け、学習後のシステム同定モデル補正値に対して任意の周波数幅を持たせることを特徴とする請求項4又は5記載の周期外乱抑制装置。
【請求項7】
前記位相補正量演算部とゲイン補正量演算部及び回転ベクトル算出部を有する同定モデル補正手段は、周期外乱の周波数成分の次数n個分を備えたことを特徴とする請求項1乃至6記載の何れかである周期外乱抑制装置。
【請求項1】
上位に制御指令値を発生する制御器を持ち、周期性外乱が発生する制御対象の出力における、抑制制御対象とする周期外乱の周波数成分にシステム同定モデルの逆数で表現される逆システムを乗算して周期外乱を推定する周期外乱オブザーバを有し、周期外乱オブザーバで推定された周期外乱を補償指令値として前記制御指令値から差し引いて周期外乱を抑制するオブザーバ部と、
オブザーバ部による周期外乱抑制制御中における、前記周期外乱の各周波数成分が複素ベクトル平面に描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記制御対象の出力を入力して制御対象出力のゲインを補正するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴とする周期外乱抑制装置。
【請求項2】
前記制御対象物をモータとし、モータ出力を入力してモータにおける周期性の外乱発生の抑制量を周期外乱オブザーバ部で推定し、推定量をトルク指令から差引いて回転座標上のd,q軸の電流指令を生成し、インバータを介してモータを制御するものにおいて、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の位相を演算して位相補正量を演算する位相補正量演算部と、
前記モータ出力を入力して周期外乱の周波数成分が描くベクトル軌跡の進行速度を算出して閾値と比較し、この算出,比較を複数回繰り返してゲイン補正量を演算するゲイン補正量演算部と、
前記位相補正量演算部からの位相補正量とゲイン補正量演算部からのゲイン補正量を乗算してシステム同定モデル補正値を算出し、この補正値に基づいて前記周期外乱オブザーバ部のシステム同定モデルを補正する回転ベクトル算出部を備えたことを特徴とする請求項1記載の周期外乱抑制装置。
【請求項3】
前記位相補正量演算部における位相補正量θrefnは、重みaとベクトルの回転角度θの積に前回算出の位相補正量θrefn-1を加算して求めることを特徴とする請求項1又は2記載の周期外乱抑制装置。
【請求項4】
前記回転ベクトル演算部の出力側に学習機能部を設け、回転ベクトル演算部により求めたシステム同定モデル補正値を学習機能部で記憶し、システム同定モデル誤差に対する補正量の学習を実行し、学習値を前記周期外乱オブザーバ部に入力して前記同定モデル補正値に乗算して新たな同定モデル補正値とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の周期外乱抑制装置。
【請求項5】
前記学習機能部に同定モデル補正機能部を設け、この同定モデル補正機能部によりシステム同定モデル補正値の記憶時の動作点を移動変更しながら繰返し行い、動作点移動完了時に周期外乱の抑制制御をオン状態とし、抑制制御完了時にシステム同定モデル補正値を記憶して周期外乱の抑制制御をオフ状態とすることを特徴とする請求項4記載の周期外乱抑制装置。
【請求項6】
前記学習機能部に補間補正手段を設け、学習後のシステム同定モデル補正値に対して任意の周波数幅を持たせることを特徴とする請求項4又は5記載の周期外乱抑制装置。
【請求項7】
前記位相補正量演算部とゲイン補正量演算部及び回転ベクトル算出部を有する同定モデル補正手段は、周期外乱の周波数成分の次数n個分を備えたことを特徴とする請求項1乃至6記載の何れかである周期外乱抑制装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−47868(P2013−47868A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185551(P2011−185551)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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