説明

周波数変換装置

【課題】ユーザーの要求にフレキシブルに対応できるようにして低コスト化する。
【解決手段】信号分波部21に入力された入力信号x(t)を、その信号帯域より狭い幅の複数の隣接する帯域信号に分波して周波数変換・合波処理部25に与える。周波数変換・合波処理部25は、帯域信号入力端子31a、周波数変換回路32、A/D変換器33、補正処理回路34、合波信号入力端子31d、合波回路35および合波信号出力端子31eを備えて一体化された複数のモジュール31と、複数のモジュール31を着脱可能な状態で装置内に保持するモジュール保持手段40と、保持されたモジュール31と信号分波部21の間を接続する帯域信号接続手段41と、保持された異なるモジュール31間で合波信号出力端子31eと合波信号入力端子31dとの間を順に接続して最終段のモジュール31から全帯域分の合波信号を出力させる合波信号接続手段43とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動体通信で用いられる高周波で且つ広帯域なアナログ信号の波形解析やスペクトラム解析を、デジタル型解析装置で行う際に用いる周波数変換装置において、広帯域な信号の瞬時パワーによる歪を低減させ、広帯域で且つ高いダイナミックレンジを実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動体通信で用いられる無線信号は、数GHz以上の高周波帯でかつ数10MHz以上の広帯域な変調波である。このような高周波帯で且つ広帯域な信号の解析、例えばスペクトラム解析を行うための装置として従来からアナログ方式のスペクトラムアナライザが用いられている。
【0003】
アナログ方式のスペクトラムアナライザとしては、測定対象のアナログ信号をミキサに入力してローカル信号と混合し、その差周波数成分を狭帯域なフィルタにより抽出する構成をもち、ローカル信号の周波数を広帯域に掃引して、入力アナログ信号に含まれる各周波数成分のレベルを検出するのが一般的である。
【0004】
しかし、測定対象のアナログ信号が前記したような広帯域な変調波の場合、その尖頭電力対平均電力比が非常に大きくなり、その全ての電力がミキサに入力されることになり、ミキサの適正な動作範囲を越え、混変調歪を発生させ、測定結果にエラーを生じさせる。
【0005】
これを防ぐために、通常はミキサの前段に減衰器を設けて、入力信号の尖頭電力が適正範囲となるように減衰させているが、この減衰器によって平均電力レベルも低下し、結果的に信号のS/Nが低下して、測定ダイナミックレンジが狭くなるという問題がある。
【0006】
また、上記問題を解決する方法として、ミキサの前段に、帯域が異なる複数のフィルタを選択可能に設け、ミキサへのローカル信号の周波数に応じて前段のフィルタを選択するフィルタ選択方式や、一つの周波数可変型のフィルタをミキサの前段に設け、そのフィルタの周波数をローカル信号の周波数に追従変化させるトラッキング方式がある。
【0007】
しかし、いずれの方式でもローカル信号の掃引により入力信号のスペクトラム情報を得る方式であるため、原理的に実時間測定ができない。
【0008】
この問題を解決するための有効な技術として、高周波帯の広帯域な入力信号を複数の帯域の信号に分波し、それら各帯域の信号に対して中間周波数帯への周波数変換処理を行い、その中間周波数帯に変換された信号をそれぞれA/D変換してデジタルの信号列に変換し、さらに各帯域についての信号経路の僅かな差やA/D変換の僅かなサンプリングタイミングのずれ等によって生じる帯域間誤差を補正してから合波処理することで、高周波帯の広帯域な入力信号の実時間のスペクトラム情報を、デジタル処理しやすいより低い周波数帯へ高いダイナミックレンジで変換するものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−246956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記構成の周波数変換装置を実際に構成する場合に、従来では、入力信号を複数の帯域信号に分波する信号分波ユニット、複数系列に分けられた帯域信号を中間周波数帯に変換してA/D変換する周波数変換ユニット、補正処理を行う補正処理ユニットおよび合波処理ユニットを設け、それらのユニット間を順に信号が通過していくように構築していた。
【0011】
しかしながら、このように、処理の種類単位で回路をユニット化してその間を接続して装置を構成した場合、次のような問題が生じる。
【0012】
対象信号の帯域幅が広くなると分波数も多くなり、信号分波ユニットだけでなく、それに続く、すべてのユニットを変更しなくてはならず、結局、解析される可能性のある信号のうちの最も広帯域な信号の帯域幅に合わせて、各ユニットを構成しておかなければならず、狭い帯域の信号のみを対象とするユーザーにとって無用な回路を含み、コスト高なものとなってしまう。
【0013】
また、特定の帯域の信号処理に関して異常が発生している場合であっても、その異常箇所のユニット全体の交換で修理を行うことになり、分波数が多い場合、ユニット毎の部品代も高額となり、ユーザーに必要以上の損害を与えることになる。
【0014】
本発明は、この問題を解決し、ユーザーの要求にフレキシブルに対応できて無駄なコストを省き、修理等のメンテナンスの際もユーザーに必要以上の損害を与えないで済む周波数変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の周波数変換装置は、
高周波帯の入力信号を、該入力信号の帯域より狭い幅の複数の隣接する帯域信号に分波し、該各帯域信号を複数の出力端子(24)からそれぞれ出力する信号分波部(21)と、
前記各帯域信号に対してそれぞれ中間周波数帯への周波数変換処理を行い、該中間周波数帯に変換された信号をそれぞれA/D変換し、さらに帯域分波したことによって生じる誤差の補正処理を行ってから合波する周波数変換・合波処理部(25)とを有し、前記入力信号をより低い周波数帯の信号に変換する周波数変換装置において、
前記周波数変換・合波処理部は、
前記帯域信号を入力するための帯域信号入力端子(31a)、該帯域信号入力端子に入力された帯域信号を所定中間周波数帯へ周波数変換する周波数変換回路(32)、該周波数変換回路の出力信号をサンプリングしてデジタル信号列に変換するA/D変換器(33)、該A/D変換器から出力されるデジタル信号列に対して、帯域分波に伴って生じる誤差の補正処理を行う補正処理回路(34)、合波信号を入力するための合波信号入力端子(31d)、前記補正処理回路で補正された信号と前記合波信号入力端子に入力された信号とを合波する合波回路(35)および該合波回路で合波された合波信号を出力するための合波信号出力端子(31e)とを備えて一体化された複数の周波数変換・合波処理モジュール(31)と、
前記複数の周波数変換・合波処理モジュールを、着脱可能な状態で装置内に保持するモジュール保持手段(40)と、
前記モジュール保持手段に保持された前記複数の周波数変換・合波処理モジュールの各帯域信号入力端子と前記信号分波部の各出力端子との間をコネクタ接続して、前記各帯域信号を前記各周波数変換・合波処理モジュールに与える帯域信号接続手段(41)と、
前記モジュール保持手段に保持された前記複数の周波数変換・合波処理モジュールについて、異なるモジュール間で前記合波信号出力端子と前記合波信号入力端子との間を順にコネクタ接続して、最終段の周波数変換・合波処理モジュールの前記合波回路の合波信号出力端子から、全帯域分の合波信号を出力させる合波信号接続手段(43)とを備えていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項2の周波数変換装置は、請求項1記載の周波数変換装置において、
前記各周波数変換・合波処理モジュールの周波数変換回路が用いるローカル信号の周波数が等しく、それぞれの中間周波数帯の中心が前記信号分波部の複数の隣接する帯域の中心周波数の差分と等しい差を有していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項3の周波数変換装置は、請求項1記載の周波数変換装置において、
前記各周波数変換・合波処理モジュールの前記周波数変換回路が用いるローカル信号の周波数が、前記信号分波部の複数の隣接する帯域の中心周波数の差分と等しい差を有しており、前記各帯域信号を共通の中間周波数帯に変換させるとともに、
前記各周波数変換・合波処理モジュールの前記合波回路に入力される信号に対して、それぞれ前記信号分波部の複数の隣接する帯域の中心周波数の差と等しい差を付与する周波数シフト回路(38)と、
前記各周波数変換・合波処理モジュールの前記周波数変換回路が用いるローカル信号の周波数が異なることによって生じる帯域間の位相誤差を前記周波数シフト回路のローカル信号の位相補正により補償する同期回路(39)を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように構成したため、本発明の周波数変換装置は、装置内にユーザが必要とする帯域幅分の周波数変換・合波処理モジュールを装着して信号分波部との間および各モジュール間をコネクタ接続することで、無駄なコストをかけずに装置の構築ができる。
【0019】
また、各周波数変換・合波処理モジュールのハードウエア構成は同等でよいから、設計コストが抑えられ、しかも、周波数変換処理を行うモジュールが帯域毎に独立しているので、特定帯域に異常がある場合には、その帯域のモジュールのみを正常なものに交換すればよく、帯域が多い場合にその修理コストが小さくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の全体構成図
【図2】実施形態の帯域分波と合波の動作を説明するためのスペクトラム図
【図3】実施形態の周波数変換回路の構成例を示す図
【図4】合波前の遅延処理を説明するための図
【図5】装置の構造例を示す図
【図6】本発明の別の実施形態の構成図
【図7】別の実施形態の帯域分波と合波の動作を説明するためのスペクトラム図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した周波数変換装置20の全体構成図である。
【0022】
この周波数変換装置20は、信号分波部21、周波数変換・合成処理部25および制御部50を有している。
【0023】
信号分波部21は、高周波帯の広帯域な入力信号x(t)を入力端子22で受け、その入力信号x(t)の帯域より狭い幅の複数Mの隣接する帯域幅のバンドパスフィルタ(BPF)23〜23に入力して帯域信号x(t)〜x(t)に分波し、複数の帯域信号出力端子24〜24からそれぞれ出力する。
【0024】
バンドパスフィルタ23〜23は、図2の(a)に示すように、変換対象の信号が存在する可能性のある所定周波数領域f〜f+fBW(例えばf=2GHz、fBW=100MHz)を、M個の等しい周波数幅f=fBW/M(例えばM=10の場合、100/10=10MHz)の帯域に分割し、分割した各帯域の信号x(t)〜x(t)をそれぞれ選択的に抽出して出力する。ここで複数Mは任意で、後述する周波数変換の処理能力やユーザーの要望などに応じて決定すればよい。
【0025】
ここで、バンドパスフィルタ23〜23の中心周波数をfc〜fcとすると、上記関係から各バンドパスフィルタ23〜23の通過帯域は、それぞれ、fc±f/2、fc±f/2、…、fc±f/2となる。
【0026】
この信号分波部21の構成は、図示のように通過帯域が異なる複数のバンドパスフィルタを単純に並列に接続した構造に限定されるものではなく、前記特許文献1(特開2009−246956号公報)の図7〜図12に示された種々の構成が採用できる。
【0027】
周波数変換・合成処理部25は、信号発生部26、複数の周波数変換・合波処理モジュール(以下、単にモジュールと記す)31〜31、モジュール保持手段40、帯域信号接続手段41、変換用信号接続手段42および合波信号接続手段43により構成されている。
【0028】
信号発生部26は、所定周波数(例えば、10MHz、1MHz、100kHz等)の基準信号Rに位相同期したローカル信号Lを発生してローカル信号出力端子26aから出力するローカル信号発生器27と、基準信号Rに位相同期したサンプリング用のクロック信号Cを発生してクロック信号出力端子26bから出力するクロック信号発生器28とにより構成されている。
【0029】
また、各モジュール31は、帯域信号入力端子31a、ローカル信号入力端子31b、クロック信号入力端子31c、合波信号入力端子31d、合波信号出力端子31e、帯域信号入力端子31aに入力された帯域信号をローカル信号入力端子31bに入力されたローカル信号Lとの混合処理により所定の中間周波数帯へ周波数変換(ヘテロダイン変換)する周波数変換回路32、周波数変換回路32の出力信号yをクロック信号入力端子31cに入力されたクロック信号Cに同期してサンプリングしてデジタル信号列に変換するA/D変換器33、A/D変換器33から出力されるデジタル信号列Yに対して、帯域分波に伴って生じる誤差の補正処理を行う補正処理回路34、補正処理回路34で補正された信号Yhと合波信号入力端子31dに入力された信号とを合波して、合波信号出力端子31eから出力する合波回路35とを備えてそれぞれ一体化されている(添え字省略)。
【0030】
各周波数変換回路32〜32は、例えば図3に示すように、各帯域信号とローカル信号Lとを混合するミキサ32aと、その混合成分から差のヘテロダイン成分(中間周波数帯)を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)32bとで構成されている。ここで、各周波数変換回路32〜32のバンドパスフィルタ32bの帯域は、図2の(b1)〜(bM)のように、ローカル信号Lの周波数をfとすれば、それぞれ、
|f−fc|±f/2
|f−fc|±f/2
………
|f−fc|±f/2
に設定され、分波された時の互いの周波数間隔を保持した状態で中心周波数がそれぞれ異なる中間周波数帯に変換されて、クロック信号Cに同期したタイミングでサンプリングされてデジタルの信号列に変換される。
【0031】
補正処理回路34は、広帯域な入力信号を複数の帯域の信号に分波し、それぞれに対して周波数変換処理とA/D変換処理を行うことによって、帯域間に生じる信号の位相と振幅の誤差を補正するためのものであり、その補正処理は、例えば所定数の入力データに対する積和演算を行うFIR型のデジタルフィルタで行われる。
【0032】
このデジタルフィルタによる補正を行うために必要な補正係数(積の係数)は、予め無変調の基準信号を入力して、その周波数を掃引することで得られたデータに基づいて、帯域内の振幅・位相特性が所定の基準特性となるように決定したものであり、モジュール毎に予め記憶設定されているものとする。
【0033】
このようにして、帯域分波による補正処理がなされた信号列Yhは、合波回路35に入力される。合波回路35では、合波信号入力端子31dから入力された合波信号と、補正処理された信号とが合波されるが、補正処理信号Yhについては、基本的に各モジュール間でタイミングずれは生じないが、合波処理の遅延(例えば1クロック分)が必ず生じるので、同一タイミングで各合波回路に入力される補正処理信号の総和が最終段から正しく出力されるためには、初段から最終段までの遅延量を見込んでおく必要がある。
【0034】
即ち、図4に示すように、仮に4つのモジュールを接続した場合で、各モジュールの合波回路35〜35に同一処理タイミングT1に入力された補正処理信号YhがそれぞれA1、B1、C1、D1とすると、初段の合波回路35は、次の処理タイミングT2にA1+0(入力無し)を合波信号として出力し、それに合わせるために、次段の合波回路35は、補正処理信号B1を内部で1処理タイミング分遅らせてから、次の処理タイミングT3に合波信号A1と補正処理信号B1とを合波して、信号A1+B1を出力する。
【0035】
以下同様に、3段目の合波回路35は、補正処理信号C1を内部で2処理タイミング分遅らせてから、次の処理タイミングT4に合波信号A1+B1と補正処理信号C1とを合波して信号A1+B1+C1を出力し、最終段の合波回路35は、補正処理信号D1を内部で3処理タイミング分遅らせてから、次の処理タイミングT5に合波信号A1+B1+C1と補正処理信号D1とを合波して信号A1+B1+C1+D1を出力する。
【0036】
つまり、各合波回路は、モジュールの接続順に応じた処理時間分だけ、入力する補正処理信号に対する遅延を行ってから合波信号と合波する機能を有している。合波回路のこの遅延処理段数は外部(後述する制御部50)から任意に設定できるようになっているものとする。
【0037】
これらの複数のモジュール31は、モジュール保持手段40により装置内に着脱可能な状態で保持される。
【0038】
ここで、モジュール保持手段40の形態はモジュールの構造に対応したものであれば任意である。例えばモジュールがプリント基板上に形成され、そのプリント基板にエッジコネクタが設けられている場合には、モジュール保持手段40としてマザーボードの一面側に、モジュールのエッジコネクタを受け入れるコネクタを並べて、複数のモジュールをマザーボード上に並べ立てた状態で保持する構造が考えられる。この場合、モジュール保持手段40は、機械的な保持機能だけでなく、電気的な接続機能も兼ねることになる。また、単純に機械的な保持機能だけであってもよい。
【0039】
帯域信号接続手段41は、モジュール保持手段40に保持された各モジュール31の帯域信号入力端子31aと信号分波部21の各帯域信号出力端子24との間をコネクタ接続して、各帯域信号をモジュール31に与える。
【0040】
この帯域信号接続手段41は、信号分波部24の帯域信号出力端子24とモジュール31の帯域信号入力端子31aの形態に応じて設けられる。
【0041】
例えば、単純な構造として、帯域信号出力端子24が高周波用の同軸コネクタであれば、帯域信号入力端子31aも同様の同軸コネクタとしてその間を、両端に同軸コネクタが設けられた同軸ケーブルで接続する。
【0042】
また、帯域信号接続手段41を、前記したマザーボードの一面側にコネクタが固定された構造のモジュール保持手段40で兼用することもできる。その場合、マザーボード上に信号分波部21の回路を形成し、その各帯域信号出力端子24とマザーボード上の複数のコネクタの特定のピンとの間をそれぞれパターン接続し、各コネクタに装着されるモジュールのエッジコネクタの特定ピンに対応する接点を帯域信号入力端子31aとする。ただしこの場合には、高周波信号をロスなく伝達させる伝送線路(マイクロストリップ線路等)をパターン形成する必要がある。このようにモジュール保持手段40を兼用すれば、モジュールを装着することで接続も行われる。
【0043】
変換用信号接続手段42は、モジュール保持手段40に保持された各モジュール31のローカル信号入力端子31b、クロック信号入力端子31cと、信号発生部26のローカル信号出力端子26a、クロック信号出力端子26bの間を接続するものであり、前記帯域信号接続手段41と同様に同軸ケーブル接続やマザーボード上のコネクタに装着して接続する方法のいずれも採用可能である。この場合、信号発生部26も各モジュール31と同様に装置に着脱自在なモジュールとしてもよいし、マザーボード上に固定された状態で設けてもよい。
【0044】
また、合波信号接続手段43は、モジュール保持手段40に保持された複数のモジュール31について、異なるモジュール31、31i+1間で合波信号出力端子31eと合波信号入力端子31di+1との間を順にコネクタ接続して、最終段のモジュールの合波信号出力端子31eから、全帯域分合波した信号Xを出力させる。
【0045】
この合波信号接続手段43として、デジタルの複数ビットパラレルのデータ信号を扱う場合には前記したマザーボードの一面側にコネクタが固定された構造のモジュール保持手段40にエッジコネクタを装着する方式が有利であり、各モジュールのエッジコネクタに合波信号入力端子31dと合波信号出力端子31eとを設け、モジュール装着によりモジュール保持と同時に、隣り合うモジュール間での合波信号出力端子31eと合波信号入力端子31dとの間の接続が同時に行われるようにする。
【0046】
制御部50は、信号発生部26および各モジュール31の制御、例えば、ローカル信号の周波数設定処理や、クロック信号Cに同期して、各モジュール31のサンプリングを開始するようにしている。また、モジュール保持手段40に保持されたモジュールを検知して、前記した遅延量の設定等を含むパラメータの設定処理等を行う。その制御のための接続は任意であるが、前記したマザーボードのコネクタに装着されたエッジコネクタを介して行う方式が有利であり、また、各モジュール毎の合波信号に対する解析処理や信号発生部26への制御も行えるように、ここでは合波信号接続手段43を兼用して各モジュール31および信号発生部26に接続される構造となっている(制御部50の入出力用の端子は省略している)。なお、制御部50と、各モジュール31および信号発生部26との間は、それぞれ専用の接続手段により接続してもよい。
【0047】
このように構成された周波数変換装置20では、変換対象の入力信号が複数の隣接する帯域の信号に分波され、着脱自在に保持される各モジュール31によって中間周波数帯に変換され、帯域分波によって生じる誤差が補正されて順次合波され、図2の(c)ように、元の入力信号の情報を保存したより低い中間周波数帯のデジタルの信号列に変換している。
【0048】
このため、装置内にユーザが必要とする帯域幅分のモジュール31を装着して信号分波部21との間および各モジュール間をコネクタ接続することで、無駄なコストをかけずに装置の構築ができる。例えば図2の例のように変換対象信号が3つの帯域内に収まる場合には、3つのモジュールだけ装着すればよい。
【0049】
また、各モジュール31のハードウエア構成は同等でよいから、設計コストが抑えられ、しかも、周波数変換処理を行うモジュールが帯域毎に独立しているので、特定帯域に異常がある場合には、その帯域のモジュールのみを正常なものに交換すればよく、帯域が多い場合にその修理コストが小さくて済む。
【0050】
なお、装置の機械的な構造は任意であるが、例えば、図5のように、フレーム100の開口された前面側から信号分波部21、信号発生部26、各モジュール31を着脱自在に装着できるようにし、フレーム100の背面側のマザーボード(図示せず)にコネクタ接続する構造例を示す。
【0051】
この場合、マザーボード上に制御部50を設けたり、制御部50をパーソナルコンピュータで構成し、フレーム100との間で通信できるようにしてもよい。なお、図5において、符号40aは、モジュール化された信号分波部21、信号発生部26および各モジュール31を固定するためのネジ、符号40bはそのネジ穴、符号40cは、各モジュールを内部に挿入する際のガイド用の切欠である。
【0052】
前記実施形態では、各モジュール31の周波数変換回路32に共通のローカル信号Lを与えて、ぞれぞれ中心周波数が異なる中間周波数帯に変換しているので、補正処理後の信号をそのまま加算処理することで、元の信号の周波数関係を保持した信号Xを出力させていたが、図6に示すように、モジュール31毎にローカル信号発生器27をそれぞれ設け、入力する帯域信号の中心周波数にそれぞれ応じた周波数のローカル信号L〜Lを周波数変換回路32に与えることで、図7の(a)の各帯域信号を、同図(b1)〜(bM)のように、中心周波数(fi)および帯域幅fwが同一の中間周波帯に変換することもできる。
【0053】
ただし、このまま合波すると、全帯域信号が幅fの中に重なった信号になってしまうため、図6に示しているように周波数シフト回路38を設けて、各補正処理後の信号Yhに対して、図7の(c1)〜(cM)のように、元の帯域信号の周波数間隔(fBW/M=Δf)と等しい周波数差が付与されるようにし、その周波数シフトされた信号Yhsをそれぞれ合波器35に入力する。この周波数シフト回路38は、周波波間隔Δfの差をもつ周波数fs1〜fsMのオフセットローカル信号Ls1〜LsMを出力するオフセットローカル信号発生器38aと周波数変換回路38b(これらはデジタル値に対する数値演算処理で実現できる)によって構成する。
【0054】
なお、上記のように各ローカル信号L〜Lの周波数が異なるので、各A/D変換器33のサンプリングタイミングが共通であるとき、中間周波数帯に変換された信号に関して各帯域間に各ローカル信号の位相差に応じた位相誤差が生じる。この位相誤差は、周波数シフト回路38のオフセットローカル信号Ls1〜LsMの初期位相を同期回路39によって調整することで補償することができる。
【0055】
このようにして周波数シフトおよび位相補償された信号Yhsを前記同等に合波することで、図7の(d)のように、元の信号をより低い周波数帯域に変換したデジタルの信号列を得ることができる。
【0056】
なお、上記実施例では、各モジュール31にローカル信号発生器27をそれぞれ設けていたが、信号発生部26に各モジュール用のローカル信号発生器を設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
20……周波数変換装置、21……信号分波部、22……入力端子、23……バンドパスフィルタ、24……帯域信号出力端子、25……周波数変換・合成処理部、26……信号発生部、27……ローカル信号発生器、28……クロック信号発生器、31……周波数変換・合波処理モジュール、31a……帯域信号入力端子、31b……ローカル信号入力端子、31c……クロック信号入力端子、31d……合波信号入力端子、31e……合波信号出力端子、32……周波数変換回路、33……A/D変換器、34……補正処理回路、35……合波回路、38……周波数シフト回路、39……同期回路、40……モジュール保持手段、41……帯域信号接続手段、42……変換用信号接続手段、43……合波信号接続手段、50……制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波帯の入力信号を、該入力信号の帯域より狭い幅の複数の隣接する帯域信号に分波し、該各帯域信号を複数の出力端子(24)からそれぞれ出力する信号分波部(21)と、
前記各帯域信号に対してそれぞれ中間周波数帯への周波数変換処理を行い、該中間周波数帯に変換された信号をそれぞれA/D変換し、さらに帯域分波したことによって生じる誤差の補正処理を行ってから合波する周波数変換・合波処理部(25)とを有し、前記入力信号をより低い周波数帯の信号に変換する周波数変換装置において、
前記周波数変換・合波処理部は、
前記帯域信号を入力するための帯域信号入力端子(31a)、該帯域信号入力端子に入力された帯域信号を所定中間周波数帯へ周波数変換する周波数変換回路(32)、該周波数変換回路の出力信号をサンプリングしてデジタル信号列に変換するA/D変換器(33)、該A/D変換器から出力されるデジタル信号列に対して、帯域分波に伴って生じる誤差の補正処理を行う補正処理回路(34)、合波信号を入力するための合波信号入力端子(31d)、前記補正処理回路で補正された信号と前記合波信号入力端子に入力された信号とを合波する合波回路(35)および該合波回路で合波された合波信号を出力するための合波信号出力端子(31e)とを備えて一体化された複数の周波数変換・合波処理モジュール(31)と、
前記複数の周波数変換・合波処理モジュールを、着脱可能な状態で装置内に保持するモジュール保持手段(40)と、
前記モジュール保持手段に保持された前記複数の周波数変換・合波処理モジュールの各帯域信号入力端子と前記信号分波部の各出力端子との間をコネクタ接続して、前記各帯域信号を前記各周波数変換・合波処理モジュールに与える帯域信号接続手段(41)と、
前記モジュール保持手段に保持された前記複数の周波数変換・合波処理モジュールについて、異なるモジュール間で前記合波信号出力端子と前記合波信号入力端子との間を順にコネクタ接続して、最終段の周波数変換・合波処理モジュールの前記合波回路の合波信号出力端子から、全帯域分の合波信号を出力させる合波信号接続手段(43)とを備えていることを特徴とする周波数変換装置。
【請求項2】
前記各周波数変換・合波処理モジュールの周波数変換回路が用いるローカル信号の周波数が等しく、それぞれの中間周波数帯の中心が前記信号分波部の複数の隣接する帯域の中心周波数の差分と等しい差を有していることを特徴とする請求項1記載の周波数変換装置。
【請求項3】
前記各周波数変換・合波処理モジュールの前記周波数変換回路が用いるローカル信号の周波数が、前記信号分波部の複数の隣接する帯域の中心周波数の差分と等しい差を有しており、前記各帯域信号を共通の中間周波数帯に変換させるとともに、
前記各周波数変換・合波処理モジュールの前記合波回路に入力される信号に対して、それぞれ前記信号分波部の複数の隣接する帯域の中心周波数の差と等しい差を付与する周波数シフト回路(38)と、
前記各周波数変換・合波処理モジュールの前記周波数変換回路が用いるローカル信号の周波数が異なることによって生じる帯域間の位相誤差を前記周波数シフト回路のローカル信号の位相補正により補償する同期回路(39)を設けたことを特徴とする請求項1記載の周波数変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−209667(P2012−209667A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72265(P2011−72265)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、電波資源拡大のための委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)