説明

問題定式化およびデータベースからの解決策取得の方法

問題解析ツールが、問題ステートメントを、知識検索ツールを介してデータベースに自動的に送信される自然言語またはブールクエリに自動的に再定式化し、データベースからのこのクエリへの応答が自動的に提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
組織内革新のプロセスでは、自動化による効率改善に向かう一般的傾向の影響がほとんど及ばない状況のままである。革新的な考えを刺激する従来のモデルは、ブレインストーミングなどの心理学的技法の適用によるものである。これらの技法はこのプロセスに対して限定された改善しかもたらさない。
【0002】
最近では、装置、プロセス、またはその他のシステムの作成または改善を考察する研究者や設計者によって適用され得るいくつかのコンピュータベースの技術が出現している。これらの技術は問題解析ツールとして定義され得る。
【0003】
問題解析ツールは、ユーザを支援して、ユーザが複雑なシステムを考察し、対処すべき個々の問題を特定(識別)できるようにする。これらのツールは、それだけに限らないが、原因解析、TRIZ、価値工学、機能解析、システムベンチマーキングを含む、よく知られている問題解析の方法の適用に役立つコンピュータベースのインターフェースを提供することによりこれを実現する。そのようなツールの一例は、TechOptimizerといい、マサチューセッツ州ボストン所在のInvention Machine Corporationによって販売されている。TechOptimizerで問題解析の支援に使用される技術の一部は、米国特許第6,056,428号および米国特許第6,202,043号に記載されている。これらの2つの特許で開示されているシステムについては、マサチューセッツ州ボストン所在、Invention Machine CorporationのTechOptimizerユーザガイド、バージョン4.0に詳細に記載されている。
【0004】
TechOptimizerソフトウェアスイートは、ユーザが、設計および/または技術プロセスの機能モデルを構築し、設計および/または技術プロセスの価値診断を行い、設計および/または技術プロセスのより良い(例えば、より価値の高い)構成を特定し、この新しい構成を実施するためにはどのような問題を解決する必要があるか特定することを可能にするモジュールを含む。
【0005】
問題解析ツールの欠点は、これらが、対処すべき具体的な問題の特定には大いに役立つが、特定された問題への解決策を提供しないことである。これは、以下の説明例を考察すれば理解され得る。ソープディスペンサの設計を簡素化しようとする技術者について考える。図1に、あるスクラブ材料を含むソープディスペンサの機能モデル図を示す。図2に、スクラブ材料は除くが、スクラブ機能を液状石けんに委ねることによってその機能を保持する、容器の設計への意図する変更を反映したソープディスペンサモデルの変更バージョンを示す。この代替の設計は、この設計が実現可能であること、すなわち、液状石けんがどのようにしてスクラブ機能を果たし得るのかを実証するために解決されなければならない新たな技術的問題を含む。図3に、問題解析ツールが、技術者のためにその問題をどのように登録し、特定し得るかを示す。
【0006】
問題が特定されると、ユーザは、有用な情報を見出すのに利用可能などんな手段でも使って独自の研究を行わなければならない。これらの手段には、書籍、公開インターネット検索エンジン、専用データ購読サービス、社内企業ポータル、またはその他の関連技術情報ソースの使用が含まれ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンピュータベースのシステムを使って、自動化された知識検索機能を問題解析機能と併せて提供する方法およびシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の原理によれば、一実施形態においては、データベース用の知識検索機能を含めることによって、問題が特定されたときに、それが自動的にデータベースに対する自然言語またはブールクエリとして再定式化され、データベースからのこのクエリへの応答が自動的に提供されるように、問題解析ツールが増強される。上記実施形態では、問題解析構成要素によって生成される問題ステートメントのマシン表現(machine representation)は、利用可能な知識検索技術に適するクエリに変換される。問題解析ツールが異なれば異なる特有のマシン表現を生成し、同様に、その対象クエリ形式も、適用される知識検索技術によって異なることになる。例えば、自然言語クエリは意味アルゴリズムを使用する検索エンジンに適し、キーワードクエリはより性能の低いエンジンに適する。特定のマシン表現から所望のクエリへのマッピングを行うのに使用され得るいくつかの具体的な技法があり、そのような技法は、問題ステートメントのマシン表現からキーとなる要素を抽出するステップと、その後でそれらの抽出された要素を、適切な形のクエリを形成するように再定式化するステップからなる。
【0009】
機能解析(functional analysis)を使用するツールの特定の実施形態では、問題ステートメントは、機能関係を自然言語クエリに変換することによって再定式化される。原因解析(root cause analysis)を使用するツールの別の実施形態では、問題ステートメントは、ノードステートメントを自然言語クエリに変換することによって再定式化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前述の図1、2および3で示す例に戻って、本発明のシステムを用いると、問題解析ツールは、図4に示すように、特定(識別)された問題に対する可能な解決策(ソリューション)を自動的に提案するように増強される。そのような実施形態は、図5に示すような、問題解析ツール12と、問題ステートメントのマシン表現(machine representation)14と、クエリ定式化および送信16と、選択された1つまたは複数の知識検索エンジン18と、検索可能なデータベース20とを備えるハイレベルアーキテクチャを持ち得る。このシステムは、システムの解析を行い、解決すべき問題を特定するステップ24と、問題が特定されると、それを(例えば意味的に索引付けされた)データベースへの自然言語またはブールクエリとして自動的に再定式化するステップ26と、再定式化されたクエリを、データベースの検索を実施する知識検索エンジンに送信するステップ28と、図4の「解決策(Solutions)」ウィンドウに示すように、データベースからのこのクエリへの応答を自動的に提供するステップ30とを含む、図6に示す機能使用モデル22を円滑に行わせるはずである。
【0011】
本発明の一実施形態は、米国特許第6,056,428号および米国特許第6,202,043号に記載の技術を使用して問題解析機能を提供する。別の実施形態では他の問題解析ツールも使用され得るはずである。これには、例えば、原因解析(root cause analysis)ツールなどが含まれる。
【0012】
本発明の原理によれば、一実施形態は、問題解析ツールに2つの要素を導入する。
【0013】
これらの要素の1つは知識検索ツールである。知識検索ツール(一般に、検索エンジンまたはデータベースクエリツールともいう)は、コンピュータベースのデータベースシステムに格納された情報への効率的アクセスを円滑に行わせる。該当する場合、本明細書では、知識検索ツールおよびこれによって検索されるデータベースを知識ベースと定義する。ユーザは、適切な形(例えば、自然言語またはブール式など)で適切に構築されたクエリを、データベースを検索し、結果を取得する知識検索ツールに提示することによって、関連情報を探し出すことができる。知識検索ツールは、入力されたクエリに応答して、知識検索ツールによって適用される関連性基準を満たす情報の一覧を含む結果セットを構築する。そのような知識検索ツールの一例が、マサチューセッツ州ボストン所在のInvention Machine Corporationが販売する、ゴールドファイアインテリジェンス(Goldfire Intelligence)というコンピュータベースのシステムである。このツールで使用される技術の一部は、米国特許第6,167,370号に記載されている。その内容は、参照により、本明細書に組み込まれるものである。
【0014】
本発明の一実施形態は、知識検索を実行するために、米国特許第6,167,370号に記載の意味的索引付けおよび検索技術を使用する。別の実施形態においては任意の他の知識検索ツールも使用され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0015】
問題解析ツールに導入される第2の要素はクエリ定式化プログラムである。一実施形態では、機能モデルのマシン表現(machine representation)がクエリを構築するためのキー要素のソースとして使用される。例えば、図2において、「液状石けん(liquid soap)」とラベル付けされたシステム構成要素を、「手(hand)」とラベル付けされたシステム構成要素に接続する「スクラブ(scrub)」とラベル付けされた矢印は、手をスクラブ洗浄する(ごしごし洗う)ことを目的とする液状石けんを作るための機構を探し出す必要を表す。図8を参照すると、この例において、一実施形態では、接続矢印は所望の動作(scrub)であると解釈され、「手(hand)」とラベル付けされたシステム構成要素は、所望の動作の目的であると解釈される(これらは、「問題の記述(Problem Description)」のところに表示されている)。問題の記述のグラフ表示と共に、画面上の「問題および解決策(Problems & Solutions)」の部分は、問題解決の提案手法を提供する。システムは、この機能関係を使い、この機能関係を自然言語クエリに変換することによる自動再定式化によって、知識検索ツールに送信されるクエリとして、クエリ「どのようにして手をスクラブ洗浄するか(How to scrub the hand?)」を構築する。このクエリは、画面上の「解決策(Solutions)」部分に示されており、ここには、ユーザが利用可能な数種類の知識ベースも示されている。これらの知識ベースは3つの可能性のある場所に存在する。1つはユーザ自身のコンピュータメモリ上、またはユーザの場所においてアクセスされ得るCDなどの携帯用メモリ機器上にある。もう1つは企業知識と呼ばれ、通常、企業などの組織内にあり、またはそこのユーザが専用にアクセス可能な1つまたは複数のサーバ上にある。もう1つは、Google(検索エンジン)や米国特許商標庁特許コレクション(検索可能データベース)など、公然とアクセス可能な検索エンジンおよびデータベースである。一実施形態では、「問題および解決策(Problem & Solutions)」ウィンドウ中のエントリが自動的に選択され(またはユーザに選択させるようにプログラムすることもできる)、同様に、データベースの3つのカテゴリの検索を自動的に開始する。このソフトウェアは、ユーザによる、例えば、クエリを書き換えたり、検索を制限したりするための構成を許容する。図8には、3つのカテゴリすべての自動(またはユーザ選択による)検索が進行中である(右側の「検索中(searching)」参照)ことが示されている。図9には、検索が完了し、企業知識(Corporate Knowledge)データベースに3つの関連結果があり、その他のデータベースには結果がないことが示されている。図10には、提示された検索結果が、それらの結果にアクセスするために必要なリンクと共に示されている。
【0016】
別の実施形態においては、所与の問題解析ツールのマシン表現からのキークエリ要素の抽出のための具体的な機構は、自動的に形成されるクエリの構築のための機構が異なるため、そのツールによって異なることが、当業者には明らかであろう。例えば、図10には、原因解析(root cause analysis)のプロセスを自動化した問題解析ツール使用の結果に対応するグラフ表現が示されている。この状況において、原因解析の結果は、グラフの各ノードa、b、cが問題ステートメントを表し、グラフの(各ノードを接続する矢印として示される)各エッジが原因/結果関係を表す有向グラフであるマシン表現を有する。この場合、各問題ステートメントのマシン表現は、適切に形成された自然言語断片を含む。よって、ユーザが、エンジンが不安定に動作するという問題に対処しようとする場合、ユーザは、特定された問題を防止するという推定目標を持つため、ノードa「エンジンが不安定に動作する(engine runs rough)」を選択することによって、ユーザは、プログラムに、プログラムが「どのようにしてエンジンが不安定に動作するのを防止するか(How to prevent engine runs rough?)」という形のステートメントを生成することによって行うクエリの定式を作成する指定を行い、そこでノードがクエリステートメントに変換される。
【0017】
問題解析ツールの使用によって特定された問題に対する関連する解決策は、しばしば、知識検索ツールを介してアクセス可能な知識本体に存在することがあるため、これら2つの新しい要素の問題ステートメントツールへの追加は、ユーザにとって直接の説得力のある利益をもたらす。問題解析と適用される研究の操作がもはや互いに独立の活動ではない新しい使用モデルが可能になる。今や、ユーザが、問題が特定される際に問題に対する潜在的解決策を動的に見出すことを可能にする単一の処理が利用可能になる。これは、問題特定と、解決概念の実現性実際性解析の間の従来の待ち時間が無くなるため、結果としてより大きな生産性をもたらすことになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】技術問題を解決するための市販のシステムにおける説明画面を示す図である。
【図2】技術問題を解決するための市販のシステムにおける説明画面を示す図である。
【図3】技術問題を解決するための市販のシステムにおける説明画面を示す図である。
【図4】本発明の原理によるシステムにおける問題特定、検索クエリ、および検索応答の説明画面を示す図である。
【図5】本発明の原理によるシステムの一実施形態を示すハイレベルアーキテクチャ図である。
【図6】本発明の原理によるシステムを示す流れ図である。
【図7】原因解析(root cause analysis)のための問題解析ツールを示す説明画面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
問題の解決案を取得する方法であって、(1)問題特定のステップと、(2)自然言語またはブールクエリとしての自動的問題再定式化のステップと、(3)前記クエリのデータベースへの自動送信のステップと、を含む方法。
【請求項2】
問題の解決案を取得するシステムであって、問題特定の手段と、問題を自然言語またはブールクエリとして定式化する手段と、データベースと、問題の前記クエリを前記データベースに送信する手段と、をそれぞれ含むシステム。
【請求項3】
問題の解決案を取得するシステムであって、コンピュータ可読記憶媒体上に具現化されたプログラムと、出力装置、中央処理装置、1つまたは複数の知識検索エンジンおよびデータベース(知識検索エンジンおよびデータベースが知識ベースを定義する)との通信手段を有するコンピュータとを備え、前記プログラムは、
ユーザ入力に応答して問題の識別を生成する1つまたは複数の部分と、
前記問題の識別から、前記問題の自動再定式化を自然言語クエリとして生成する1つまたは複数の部分と、
前記クエリを少なくとも1つの知識ベースに自動的に送信する1つまたは複数の部分と、
前記出力装置を介して前記少なくとも1つの知識ベースからの応答を提供する1つまたは複数の部分と、
を備えるシステム。
【請求項4】
さらに、前記自然言語クエリとしての問題再定式化は、機能関係を意味関係に変換する前記プログラムの1つまたは複数の部分によってなされる請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
さらに、前記問題の再定式化を生成する前記プログラムの前記1つまたは複数の部分は、前記問題の再定式化を、自然言語クエリとして、または、ブールクエリとして生成する請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
さらに、前記少なくとも1つの知識ベースは、意味解析知識ベースである請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記知識ベースは前記コンピュータと同じ場所に位置する記憶媒体上にある請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記知識ベースは企業サーバ上にある請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記知識ベースはリモートでアクセスされる請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記知識ベースはリモートでアクセスされる特許コレクションである請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
前記プログラムは、
前記コンピュータと同じ場所に位置する記憶媒体上にある少なくとも1つの知識ベースと、
企業サーバ上の少なくとも1つの知識ベースと、
インターネットリンクによってアクセスされる少なくとも1つの知識ベースと、
から選択される複数の知識ベースにアクセスする1つまたは複数の部分を有する請求項3に記載のシステム。
【請求項12】
前記クエリは、ユーザによる介入なしに前記少なくとも1つの知識ベースに送信される請求項3に記載のシステム。
【請求項13】
前記問題の識別は、考慮中の構成要素間の機能関係の解析によってなされ、前記クエリとしての自動再定式化は、機能関係を自然言語クエリに変換することによってなされる請求項3に記載のシステム。
【請求項14】
前記問題の識別は、考慮中のイベント間に1つまたは複数のノードを設ける原因解析(root cause analysis)によってなされ、前記自動再定式化はノードを自然言語クエリに変換する請求項3に記載のシステム。
【請求項15】
前記知識ベースの少なくとも1つは意味解析知識ベースである請求項11に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−513416(P2007−513416A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541735(P2006−541735)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039649
【国際公開番号】WO2005/055000
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(301044587)インベンション・マシーン・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】