説明

喫食用容器入り冷凍麺

【課題】本格的な具材、スープ付きの冷凍麺であって、かつ、喫食にあたって手間がかからない製品を提供する。
【解決手段】 喫食用容器の底から順に、冷凍濃縮スープ、熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シート、冷凍茹で麺、具材を収納したことを特徴とする、水又は湯を加え、電子レンジ加熱するだけで、おいしく喫食できる喫食用容器入り具材付き冷凍麺である。熱溶解性可食シートは寒天シートが好ましく、冷凍茹で麺の形状は底面中心部付近が凸状態で凍結されているものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水または湯を加え、電子レンジ加熱するだけで、そのまま喫食することができる喫食用容器入り冷凍麺に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類は日常的に広く喫食されている食品であるため、種々のタイプの製品が販売されている。常温品である即席麺、カップ麺、コンビニエンスストアなどで多く販売されているチルド品の喫食用容器入り麺類、冷凍食品としては、冷凍麺単独、あるいは、調味液の冷凍品とセットになった商品などが販売されている。これらの商品については、味はより本格的であることが求められる一方、手間はできるだけかからない簡便なものが嗜好されている。
鍋やコンロを必要としない、電子レンジで加熱するタイプが広く普及している。丼物やカレーライス、パスタなどにおいて、特に電子レンジ加熱商品が多く開発されてきた。
特許文献1〜5には、容器の中に米飯等と具材、調味液を中蓋で仕切って載置し、電子レンジで加熱する冷凍食品が記載されている。
特許文献6には、冷凍麺と具材をそれぞれ別の加熱用袋に収容し、それらをセットにして外装により包装した冷凍食品が記載されている。
米飯や麺類と調味液等を接触の仕方を工夫したものとしては、特許文献7〜11がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−125755号
【特許文献2】特開平6−125756号
【特許文献3】特開平7−31441号
【特許文献4】特開平7−31442号
【特許文献5】特開平8−228740号
【特許文献6】登録実用新案3047522号
【特許文献7】特開2006−61113号
【特許文献8】特開2006−20630号
【特許文献9】特開平11−332492号
【特許文献10】特開昭62−143662号
【特許文献11】特開平10−66525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既存の商品より、さらに本格的な具材、スープ付きの麺であって、かつ、喫食にあたって手間がかからない製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、利用者により望まれる商品を検討する中で、鍋や食器を用意する必要がないだけでなく、調味料や具を容器から出したり、開封して入れたりするような手間さえかけることなく、水を入れて、電子レンジ加熱するだけで、本格的な味、具材付きの麺類を提供すること、さらに、容器も冷凍庫中で嵩張ることなく、コンパクトであり、価格も高くならないことを課題として本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(8)の喫食用容器入り冷凍麺を要旨とする。
(1)喫食用容器の底から順に、冷凍濃縮スープ、熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シート、冷凍茹で麺を収納したことを特徴とする、水又は湯を加え、電子レンジ加熱するだけで喫食できる、喫食用容器入り冷凍麺。
(2)さらに冷凍茹で麺の上に具材を収納したことを特徴とする(1)の喫食用容器入り冷凍麺。
(3)1.5〜15倍濃縮の濃縮スープを用いることを特徴とする(1)又は(2)の喫食用容器入り冷凍麺。
(4)冷凍茹で麺の形状が、底面の中心部付近が凸状態で凍結されていることを特徴とする(1)ないし(3)いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
(5)具材が、各素材を加熱殺菌処理後、粘度付与剤と必要であれば水分を添加して加熱混合されたものである(2)ないし(4)いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
(6)具材が野菜を含むものであることを特徴とする(2)ないし(5)いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
(7)具材が野菜を含有する具材であって、その具材の重量が茹で麺の重量100重量部に対して、30〜200重量部である(2)ないし(6)いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
(8)熱溶解性可食シートが寒天シートである(1)ないし(7)いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷凍麺は、コンパクトな喫食用容器の中に、麺類及び調味液、あるいは、具材、麺類及び調味液が配置されているので、そのまま、水を入れて、電子レンジ加熱するだけで、麺類、具材、調味液共に適温に加熱することができる。熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シートは、スープ中で加熱されて、溶けてなくなるため、違和感をもたらすことはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の電子レンジ調理用容器入り具材付き冷凍麺の一態様を示す模式図である。
【図2】本発明に用いる麺を凍結するのに用いる型の一態様を示す模式図である。麺塊の底面の中央部付近を凸状に凍結することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の喫食用容器入り冷凍麺とは、ラーメン、ちゃんぽん、うどん、そばなど、温かいスープやかけ汁をかけて食する麺類であって、1人前の分量の麺とスープと具材が紙あるいは樹脂性の容器中に収納されており、その容器のまま、加熱及び喫食を行うことができるものである。
その容器は、耐熱性、耐水性、耐冷凍性等を有すれば素材は何でもよいが、加熱後、熱くなっても手で保持しやすく、形態を保持するように加工されたものが好ましい。具体的には、紙製やポリプロピレン製の容器などを用いることができる。その大きさも1人前の麺類を喫食するのに適した大きさであればよいが、冷凍庫への保存の点からはコンパクトなものが好まれる。200〜1000mL程度、好ましくは300〜800mLの容量の容器が好ましい。容器の形状は、麺類を喫食する容器としては、丼に似た形状である円柱状〜円錐台形状等が適しているが、四角柱、多角柱や四角錘台、多角錘台などの形状でも構わない。
麺の種類は問わない。熱いスープやかけ汁をかけて食するタイプの麺であれば何でもよい。電子レンジ解凍するので、レンジ解凍に適した配合の麺が好ましい。具体的には、高タンパク質で粒度が均一な小麦粉を用いた麺が好ましい。その他、レンジ耐性があるといわれている配合の麺を用いることができる。具体的には卵白が添加された麺などを用いることができる。麺は茹でた後、1食分ごとに凍結する。
【0010】
スープ、かけ汁は、麺の種類に応じて、どのような味付けのスープでもよい。塩味、しょうゆ味、味噌味、豚骨味など、なんでも問題ない。本発明では濃縮タイプを用いる。濃縮の程度は、濃縮するほど、体積、重量が減少するので、コンパクトという観点からは好ましいが、凍結する観点からは、塩分濃度が高くなると、凍結しにくくなるため好ましくない。したがって、1.5〜15倍、好ましくは、2.5〜10倍に濃縮したスープが適する。また、商品は店舗に保存中、あるいは、購買者が自宅へ運ぶ最中などに、温度が上昇し、表面が溶けることがありうる。その場合に濃縮スープが麺や具材に付着すると好ましくないので、多少溶けても、水滴とならないように、粘度付与剤を加えておくのが好ましい。粘度付与剤としては、生澱粉、ゼラチン、あるいは、化工澱粉、キサンタン等の増粘剤を0.01〜15重量%程度用いるのが適当である。スープの粘度は例えば、C型デジタル粘度計(リオン株式会社製ビスコテスターVT-04F等、3号ローター使用)等で測定して、1〜100Pa・s程度になるように調整するのが好ましい。特に好ましくは10〜60Pa・sである。Brixは例えば、アタゴ社製HAND
REFRACTOMETERなどで測定して、10〜50%程度が好ましい。
【0011】
具材はあったほうが、食品としての完成度が高く、好ましいが、無しでもよい。
具材は、麺の種類に応じて、何でもよいが、本格的な調理品とするには、野菜、肉、魚介類などをたっぷり用いた具材が好ましい。具材の素材、特に野菜は複数種類を用いるのが好ましい。野菜としては、キャベツ、もやし、小松菜、ねぎ、ニンジン、絹さや、コーン、などが例示される。肉類としては牛、豚、鶏、魚介類、海老、イカ等が例示される。その他、きくらげ、練製品なども例示される。調味は、献立に応じて、シンプルな炒めもの風、あんかけ風などなんでもよい。また、麺類の具材としてよく用いられる、チャーシュー、ねぎ、コーン、シナチク、海藻、竹輪、天ぷら、掻揚、などを凍結したものを用いてもよい。本発明では、具材が最上部にあるため、調理時にスープに浸からず過加熱となりにくいので、広い範囲の具材を用いることができる。具材の成形性を高め、乾燥を防ぐためには、具材に水分を加え、多糖類等の粘度付与剤を添加して凍結するのが好ましい。
具材は、素材ごとに加熱しすぎにならないように最低限の加熱殺菌が行える時間加熱(達温80〜85℃)し、その後、混合するのが好ましい。この際に、素材由来水分、あるいは、適量の水分と共に粘度付与剤を加えて粘度を付与する。これにより、成型、凍結などの操作性が高まるだけでなく、素材が乾燥したり、形がくずれたり、素材がばらけたりしなくなる。粘度付与剤としては、生澱粉、ゼラチン、あるいは、化工澱粉、キサンタン等の増粘剤を0.01〜15重量%程度用いるのが適当である。
具材の分量は自由に設定することができるが、例えば、野菜を含有する具材の場合、麺の100重両部に対して30〜200重量部の具材を用いるのが適当である。
【0012】
熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シートは、保存中に麺塊と濃縮スープが接触しないために挿入する。素材は熱溶解性であり、可食性であり、味に影響しないものであればなんでもよい。本発明では、たっぷりのスープが存在し、高温まで加熱するので、これによって、溶けてしまうような成分であれば、何でもよい。寒天、ゼラチン、プルラン等ゲル化剤を原料とし乾燥させた薄いシートが利用できる。大きさは上述のとおり、麺とスープが接触しない大きさであれば良いが、容器の断面積±30%の面積、好ましくは±20%、さらに好ましくは±10%を占める大きさが好ましい。多少大きくても薄いシートの場合、問題にならない。容器のサイズによるが、直径5〜15cmの円形、あるいは一辺が5〜15cmの四角形が適当である。薄さは麺とスープの間に挟んで、流通させて破けない程度の厚さがあれば、薄いほどよい。冷凍増粘剤水溶液シートとは、乾燥させたシートでなくても、液状のものを薄く凍結させたものを意味する。単なる水の薄片でも構わないが、濃縮スープの説明で述べたとおり、溶けたときに水滴がでないように、増粘剤の水溶液を凍結して用いるのが好ましい。この水溶液を薄いスープやだし汁で製造してもよい。これらシートは、スープから麺への色移り、麺の食感劣化およびスープの垂れ防止などの効果を有する。
冷凍増粘剤水溶液シートは、凍結した濃縮スープの周辺に増粘剤含有水溶液を付着させて凍結したのでもよい。
【0013】
本発明の製品は上述のような冷凍濃縮スープ、熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シート、冷凍茹で麺、具材を喫食用容器の底から順に収納して製造する。この順序が重要であり、順番を変えてしまうと、それぞれが適切に解凍・加熱されにくくなる。
熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シートは濃縮スープが麺塊と接触しないように挿入するので、容器の大きさに合わせたサイズにするのが適当であるが、びったりのサイズに成型し、収納するのは手間がかかるので、ほぼ、濃縮ゲルを覆うサイズにするとともに、麺塊の底面の中央部を凸状に成型して、シートの上にのせると、周辺部がシートからはみ出したとしても、濃縮スープに接触することがないので、好ましい。この麺塊の底の形状をお椀型にすることにより、調理時に濃縮スープと水が混ざりやすく、かつシートの大きさを小さめにすることもできる。麺塊の底面の中央部付近が凸状であるとは、ちょうど中心が凸状でなくても、麺塊の周辺部が持ち上がる形状であればなんでもよく、中心と周辺の中間部が凸状になっている形態等も含む。
本発明では、スープとして濃縮スープを用いたことにより、ストレートタイプのスープを用いるよりもレンジ時間を短縮させることができる。時間短縮だけでなく、よりコンパクトになるとともに、過加熱にならないため、麺・具材の食感をよくすることができる。
【0014】
本発明の喫食用容器入り具材付き冷凍麺は、1人前の麺、1.5〜15倍濃縮の冷凍濃縮スープ、麺100重量部に対して30〜200重量部の具材、及び、スープと麺の間の熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シートを喫食容器に収納することにより、水を添加しただけで、そのままおいしく喫食できる冷凍食品である。
本発明の製品は、濃縮スープの濃縮度に応じて、水または湯を添加し、電子レンジで過熱することにより、喫食可能となる。電子レンジによる加熱時間は500〜1000ワットで15分以内、好ましくは10分以内に収まるように全体のボリュームを設計するのが適当である。
本発明の製品は一体となっているのが特徴ではあるが、のりや薬味など、一緒に加熱しないほうがよい具材を別添することを排除するものではない。
【0015】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
スープの調製
表1の配合のうち油脂類以外と水60kgをよく混合した後、蒸気を入れて撹拌しながら、90℃になるまで加熱した。水を添加して総量を476kgに調整した後、油脂類を添加して、あんかけスープを製造した。スープの粘度はC型デジタル粘度計(リオン株式会社製ビスコテスターVT-04F(3号ローター使用))にて測定したところ、43Pa・sであった。Brixは24%であった(測定機器:アタゴ社製HAND REFRACTOMETER)。増粘剤にはゼラチン、澱粉、キサンタンガムを使用した。
スープを1人前70gとし、喫食用容器の最下部に注入し、凍結した。
【0017】
【表1】

【0018】
具材の調製
それぞれ、炒めたり、ボイルするなどの前処理をした、表2の具材を煮汁と混合して凍結し、1食分あたり、135g(直径115mm×高さ20mm)の凍結具材を調製した。煮汁には0.26重量%のキサンタンガムを含む。
【0019】
【表2】

【0020】
茹で麺の調製
表3の配合の麺を茹で、1人前120g(約80mm×90mm×30mm)ずつ図2に示す容器に入れて、凍結することにより、麺塊の底面の中央部が凸状に凍結した形状の凍結麺を製造した。
【0021】
【表3】

【0022】
喫食用容器入り具材付き冷凍麺の製造
容器:底面径約120mm口外径約140mm、高さ約65mm、容量700mlのポリエチレン加工紙二重断熱容器
寒天シート:伊那食品工業株式会社製の約100mm四方の寒天シート(約0.5g/枚)
上記の容器に、図1のように底面から、凍結スープ、寒天シート、凍結麺、凍結具材を載置し、全体をストレッチシュリンクフィムル(ポリエステル、ポリプロピレン)にてシュリンク包装し、外装で包んで最終商品とした。
冷凍庫に保管した上記最終商品を取りだし、包装を除去し、室温の水を200mL加え、500ワットの電子レンジで8分間加熱した。スープが均一になるよう撹拌したところ、具材、麺、スープ共にほどよく加熱され、具材がたっぷり入ったあんかけラーメンが完成した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の冷凍麺は、本格的な具材を有する本格的な麺であり、包装袋から取り出し、水を加えて電子レンジ加熱するだけで、その容器のまま、おいしく喫食することができるという簡便性を備えているため、消費者ニーズに沿った商品を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 具材
2 冷凍麺
3 熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シート
4 濃縮スープ
5 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫食用容器の底から順に、冷凍濃縮スープ、熱溶解性可食シート又は冷凍増粘剤水溶液シート、冷凍茹で麺を収納したことを特徴とする、水又は湯を加え、電子レンジ加熱するだけで喫食できる、喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項2】
さらに冷凍茹で麺の上に具材を収納したことを特徴とする請求項1の喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項3】
1.5〜15倍濃縮の濃縮スープを用いることを特徴とする請求項1又は2の喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項4】
冷凍茹で麺の形状が、底面の中心部付近が凸状態で凍結されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項5】
具材が、各素材を加熱殺菌処理後、粘度付与剤と必要であれば水分を添加して加熱混合されたものである請求項2ないし4いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項6】
具材が野菜を含むものであることを特徴とする請求項2ないし5いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項7】
具材が野菜を含有する具材であって、その具材の重量が茹で麺の重量100重量部に対して、30〜200重量部である請求項2ないし6いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。
【請求項8】
熱溶解性可食シートが寒天シートである請求項1ないし7いずれかの喫食用容器入り冷凍麺。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−90637(P2013−90637A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2013−15046(P2013−15046)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】