説明

噛合チェーン式進退作動装置

【課題】装置組み立て、回転位相の調整および保守メンテナンスの作業負担増大を回避するとともに被駆動体を円滑に進退動作させ、噛合チェーンの脈動などを回避する噛合チェーン式進退作動装置を提供すること。
【解決手段】チェーンガイド溝131が、チェーン係合仮想平面S内で相互に対向する一対の連結ピン110、110の間に存在する係合時ピン間距離D1と一対の連結ピン113、113の間に存在する剛直状態ピン間距離D2とを相互に揃えるように形成されている噛合チェーン式進退作動装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いてワークなどの被駆動体を設置面に対して平行に進退動させる駆動装置であって、特に、噛合チェーンを進退動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式進退作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置として、相互に噛み合って一体的に昇降する一対の昇降駆動用噛合チェーンを用いて重量物などのワークを昇降移動させる噛合チェーン式昇降装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の噛合チェーン式昇降装置に用いられる一対の昇降駆動用噛合チェーンは、一対の昇降駆動用噛合チェーンの両方に対してそれぞれ対向配置された一対の昇降用スプロケットによりそれぞれ駆動されるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255997号公報(特許請求の範囲、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の噛合チェーン式昇降装置800では、図8に示すように、一対の昇降用スプロケット820間で回転位相の同期を図って一対の昇降駆動用噛合チェーン810をタイミング良く相互に噛み合せるため、回転位相の調整作業に過分な作業負担を要するという装置組立および保守メンテナンス上の問題点があった。
【0006】
また、従来の噛合チェーン式昇降装置800は、一対の昇降駆動用噛合チェーン810を相互に噛み合わせて同一方向に進退動させるために相互に隣接配置された一対の昇降駆動用噛合チェーン810の左右両側に昇降用スプロケット820をそれぞれ設置した状態で一対の昇降用スプロケット820を相互に反対方向に回転させるように設計されているため、電気モータ等の単一の駆動源(図示しない)により装置全体を駆動する場合、一対の昇降用スプロケット820の回転軸821を相互に連動させるギア群564を設置する作業負担を増大させるとともに装置構成が複雑になり、しかも装置組立および保守メンテナンスの作業負担を過分に必要とするという装置組立および保守メンテナンス上の問題点があった。
【0007】
また、従来の噛合チェーン式昇降装置800では、前述したギア群853を一対の昇降用スプロケット820の各回転軸821に取り付けられた一対のギア553aから構成する場合、図8に示すように、一対の昇降用スプロケット820の相互間に一対の昇降駆動用噛合チェーン810を配置している分だけギア853aの径が昇降用スプロケット820の径より不可避的に大きくなるため、昇降用スプロケット820より大径なギア群853が噛合チェーン式昇降装置800の設置面付近でワークなどの被駆動体の進退動作を阻害するという装置駆動上の問題点があった。
【0008】
また、昇降用スプロケット820により昇降駆動用噛合チェーン810がチェーン分岐方向からチェーン噛合方向へ偏向駆動される領域、すなわち、昇降駆動用噛合チェーン810を昇降用スプロケット820に巻き掛けた領域において、周知であるコーダルアクション(多角形運動)が昇降駆動用噛合チェーン810に生じるため、昇降駆動用噛合チェーン810に脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動を生じさせてしまうという装置駆動上の問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、装置組み立て、回転位相の調整および保守メンテナンスの作業負担増大を回避するとともに設置面付近において被駆動体を円滑に進退動作させ、しかも噛合チェーンの脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を回避する噛合チェーン式進退作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本請求項1に係る発明は、チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートと前記チェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、前記一対の噛合チェーンの側方位置から前記一対の噛合チェーンの一方の噛合チェーンに係合して前記一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、前記一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部によって前記一方の噛合チェーンに他方の噛合チェーンを位置決め噛み合わせて従動させるチェーンガイド溝を有するチェーンガイドとを備えた噛合チェーン式進退作動装置であって、前記チェーンガイド溝が、前記一方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうち前記チェーン剛直化部分の駆動方向に直交して前記駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面内で前記一方の噛合チェーンを前記駆動用スプロケットのスプロケット歯に係合させた状態で前記駆動用スプロケット側に位置する一方の連結ピンと前記他方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って一方の連結ピンに対向する他方の連結ピンとの間に存在する係合時ピン間距離と前記チェーン剛直化部分に含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在する剛直状態ピン間距離とを相互に揃えるように形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記チェーン位置決めガイド部が、前記チェーン剛直化部分の中空領域に直線状に延びていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記チェーン位置決めガイド部のうち前記チェーン係合仮想平面から前記中空領域に延びている直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離以上であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離の2倍以上であることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートと前記チェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、前記一対の噛合チェーンの側方位置から前記一対の噛合チェーンの一方の噛合チェーンに係合して前記一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、前記一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部によって前記一方の噛合チェーンに他方の噛合チェーンを位置決め噛み合わせて従動させるチェーンガイド溝を有するチェーンガイドとを備えていることにより、一対の噛合チェーンの進退動作に応じて被駆動体を進退動させることができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、前記チェーンガイド溝が、前記一方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうち前記チェーン剛直化部分の駆動方向に直交して前記駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面内で前記一方の噛合チェーンを前記駆動用スプロケットのスプロケット歯に係合させた状態で前記駆動用スプロケット側に位置する一方の連結ピンと前記他方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って一方の連結ピンに対向する他方の連結ピンとの間に存在する係合時ピン間距離と前記チェーン剛直化部分に含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在する剛直状態ピン間距離とを相互に揃えるように形成されていることにより、一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットで一対の噛合チェーンを駆動してフック状内歯プレート同士およびフック状外歯プレート同士をそれぞれ相互に噛み合わせるとともに一対の噛合チェーンをチェーン剛直化方向にそのまま駆動してフック状内歯プレート同士およびフック状外歯プレート同士の噛合動作を円滑に完了するため、装置組み立て、回転位相の調整および保守メンテナンスの作業負担増大を回避するとともに設置面付近において被駆動体を円滑に進退動作させ、しかも噛合チェーンの脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を回避することができる。
【0016】
そして、本請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーン位置決めガイド部が、前記チェーン剛直化部分の中空領域に直線状に延びていることにより、一対の噛合チェーンを相互に噛み外して分岐させたチェーン噛み外れ部分だけでなく、一対の噛合チェーンを相互に噛み合せて剛直化させたチェーン剛直化部分を支持するため、一対の噛合チェーンを相互に噛み外した状態から剛直化させた状態に至るまで一対の噛合チェーンをガイドして噛合チェーンの脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生をより確実に回避することができる。
【0017】
そして、本請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーン位置決めガイド部のうち前記チェーン係合仮想平面から前記中空領域に延びている直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離以上であることにより、直線状延長部分が前後一対の連結ピンのピン間距離の範囲内でチェーン剛直化部分をガイドするため、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせるまでの範囲内でのみ一対の噛合チェーンをガイドする場合に比べてより円滑に噛合チェーンを駆動して噛合チェーンの脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生をより確実に回避することができる。
【0018】
そして、本請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離の2倍以上であることにより、チェーン剛直化方向に沿って3本以上の連結ピンに直線状延長部分の側面を対向させてこれら連結ピンを直接的にまたはブシュ或いはローラを介して間接的に支持するため、より確実に円滑に噛合チェーンを駆動して噛合チェーンの脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生をより一層確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の全体斜視図。
【図2】図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図。
【図3】噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【図4】図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図。
【図5】図4に対応した変形例1に係る一部拡大図。
【図6】図4に対応した変形例2に係る一部拡大図。
【図7】図4に対応した変形例3に係る一部拡大図。
【図8】従来の噛合チェーン式昇降装置の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る噛合チェーン式進退作動装置は、チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートとチェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、一対の噛合チェーンの側方位置から一対の噛合チェーンの一方の噛合チェーンに係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部によって一方の噛合チェーンに他方の噛合チェーンを位置決め噛み合わせて従動させるチェーンガイド溝を有するチェーンガイドとを備え、チェーンガイド溝が、一方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうちチェーン剛直化部分の駆動方向に直交して駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面内で一方の噛合チェーンを駆動用スプロケットのスプロケット歯に係合させた状態で駆動用スプロケット側に位置する一方の連結ピンと他方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って一方の連結ピンに対向する他方の連結ピンとの間に存在する係合時ピン間距離とチェーン剛直化部分に含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在する剛直状態ピン間距離とを相互に揃えるように形成されていることにより、装置組み立て、回転位相の調整および保守メンテナンスの作業負担増大を回避するとともに設置面付近において被駆動体を円滑に進退動作させ、しかも噛合チェーンの脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を回避するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであってもよい。
【0021】
例えば、本発明の噛合チェーン式進退作動装置で用いられる一対の噛合チェーンは、相互に噛み合わせて一体化するとともに相互に噛み外れて分岐するものであればその具体的なチェーン形態は如何なるものであってもよく、例えば、チェーン幅方向に1列の単列であるもの、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものなど何れであっても構わないが、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものを採用する場合には、一対の噛合チェーンの一方を構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートが、これに対向する他方の噛合チェーンを構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うため、噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現できるので、より好ましい。
【0022】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動装置で用いられる一対の噛合チェーンは、ローラを有していないもの、すなわち、ブシュのみを有するもの、ローラを有するものなど何れであっても構わないが、ブシュのみを有するものを採用する場合には、チェーン部品点数が低減して、チェーン重量の軽量化を図ることができる。
【0023】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動装置で用いられるチェーンガイドは、噛合チェーンを円滑に誘導案内するものであれば、左右一対の噛合チェーンを左右非対称な軌道で進退走行させるように形成されたものであってもよいが、駆動用スプロケットの歯底円と同径のチェーン誘導面を備えている場合には、一対の噛合チェーンが左右対称な軌道で進退走行するため、一対の噛合チェーン間における円滑な噛み合い噛み外れ動作を達成できる。
【0024】
そして、本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても昇降動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した昇降動作に相当する進退動作に何ら支障はない。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例である噛合チェーン式進退作動装置を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置の全体斜視図であり、図2は、図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図であり、図3は、噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、図4は、図1に示す駆動用スプロケットおよび噛合チェーン近傍の一部拡大図であり、図5は、図4に対応した変形例1に係る一部拡大図であり、図6は、図4に対応した変形例2に係る一部拡大図であり、図7は、図4に対応した変形例3に係る一部拡大図である。
【0026】
まず、本発明の一実施例である噛合チェーン式進退作動装置100は、図1に示すように、ワークとしての重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブルなど被駆動体Tを設置面Gに対して平行に昇降させるものである。
【0027】
そして、本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、図1乃至図3に示すように、チェーン幅方向Wに沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレート111とチェーン幅方向Wに沿って一対のフック状内歯プレート111の外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレート112とを前後一対の連結ピン113によってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化してチェーン剛直化部分110Gを形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーン110、110と、一対の噛合チェーン110、110の側方位置から一対の噛合チェーン110、110の一方の噛合チェーン110に係合して一対の噛合チェーン110、110を進退自在に駆動する駆動用スプロケット120と、一対の噛合チェーン110、110の股間領域R1に設けられたチェーン位置決めガイド部132によって一方の噛合チェーン110に他方の噛合チェーン110を位置決め噛み合わせて従動させるチェーンガイド溝131、131を有するチェーンガイド130とを備え、ベースプレート140上で一対の噛合チェーン110、110の進退動作に応じて被駆動体Tを進退動させるようになっている。
【0028】
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、駆動用スプロケット120を回転させる従動側スプロケット152に動力を伝達する動力伝達チェーン151と、この動力伝達チェーン151を駆動する駆動源としての駆動モータ150とを備え、ワークを搭載した被駆動体Tを一対の噛合チェーン110、110で直接的に支持して押し上げることで駆動モータ160のモータトルクを無駄なく伝達するようになっている。
また、駆動用スプロケット120は、噛合チェーン110を構成するブシュ114に噛み合うように設計されている。
【0029】
また、噛合チェーン式進退作動装置100で用いた一対の噛合チェーン110、110は、図3に示すように、チェーン幅方向Wに沿って一対で離間配置されるフック状内歯プレート111、111に前後一対のブシュ114を圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向Wの最も外側に配置されたフック状外歯プレート112の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン113によりチェーン長手方向に多数連結されたものである。
【0030】
次に、前述した本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100が最も特徴とする構成の具体的な形態について、図1乃至図4に基づいてより詳しく説明する。
噛合チェーン式進退作動装置100は、図1乃至図4に示すように、チェーンガイド溝131が、一方の噛合チェーン110に含まれる複数の連結ピン113のうちチェーン剛直化部分110Gの駆動方向Aに直交して駆動用スプロケット120の駆動軸121を含むチェーン係合仮想平面S内で一方の噛合チェーン110を駆動用スプロケット120のスプロケット歯に係合させた状態で駆動用スプロケット120側に位置する一方の連結ピン110と他方の噛合チェーン110に含まれる複数の連結ピン113のうちチェーン係合仮想平面Sに沿って一方の連結ピン113に対向する他方の連結ピン113との間に存在する係合時ピン間距離D1とチェーン剛直化部分110Gに含まれる複数の連結ピン113のうちチェーン係合仮想平面Sに沿って相互に対向する一対の連結ピン113、113の間に存在する剛直状態ピン間距離D2とを相互に揃えるように形成されていることにより、一方の噛合チェーン110に係合する駆動用スプロケット120で一対の噛合チェーン110、110を駆動してフック状内歯プレート111同士およびフック状外歯プレート112同士をそれぞれ相互に噛み合わせるとともに一対の噛合チェーン110、110をチェーン剛直化方向Aにそのまま駆動してフック状内歯プレート111同士およびフック状外歯プレート111同士の噛合動作を円滑に完了するため、装置組み立て、回転位相の調整および保守メンテナンスの作業負担増大を回避するとともに設置面付近において被駆動体Tを円滑に進退動作させ、しかも噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を回避するようになっている。
【0031】
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン位置決めガイド部132が、チェーン剛直化部分110Gの中空領域R2に直線状に延びていることにより、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み外して分岐させたチェーン噛み外れ部分だけでなく、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合せて剛直化させたチェーン剛直化部分110Gを支持するため、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み外した状態から剛直化させた状態に至るまで一対の噛合チェーン110、110をガイドして噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生をより確実に回避するようになっている。
【0032】
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン位置決めガイド部132のうちチェーン係合仮想平面Sから中空領域R2に延びている直線状延長部分132Aの長さLが、前後一対の連結ピン113のピン間距離D以上であることにより、直線状延長部分132Aが前後一対の連結ピン113のピン間距離Dの範囲内でチェーン剛直化部分110Gをガイドするため、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わせるまでの範囲内でのみ一対の噛合チェーン110、110をガイドする場合に比べてより円滑に噛合チェーン110を駆動して噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生をより確実に回避するようになっている。
【0033】
このように得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110、110が、一方の噛合チェーン110に含まれる複数の連結ピン113のうちチェーン剛直化部分110Gの駆動方向Aに直交して駆動用スプロケット120の駆動軸121を含むチェーン係合仮想平面S内で一方の噛合チェーン110を駆動用スプロケット120のスプロケット歯に係合させた状態で駆動用スプロケット120側に位置する一方の連結ピン110と他方の噛合チェーン110に含まれる複数の連結ピン113のうちチェーン係合仮想平面Sに沿って一方の連結ピン113に対向する他方の連結ピン113との間に存在する係合時ピン間距離D1とチェーン剛直化部分110Gに含まれる複数の連結ピン113のうちチェーン係合仮想平面Sに沿って相互に対向する一対の連結ピン113、113の間に存在する剛直状態ピン間距離D2とを相互に揃えるように形成されていることにより、装置組み立て、回転位相の調整および保守メンテナンスの作業負担増大を回避するとともに設置面付近において被駆動体Tを円滑に進退動作させ、しかも噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を回避することができるなど、その効果は甚大である。
【0034】
次に、図5乃至図7を参照しながら、上述した噛合チェーン式進退作動装置100の変形例を説明する。
なお、以下の変形例1乃至変形例3では、上述した噛合チェーン式進退作動装置100と共通する部分に共通の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
図5に示すように、変形例1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、直線状延長部分132Aの長さL1が、前後一対の連結ピン113のピン間距離Dの2倍以上であることにより、チェーン剛直化方向Aに沿って3本以上の連結ピン113に直線状延長部分132Aの側面を対向させてこれら連結ピン113を直接的にまたはブシュ114或いはローラを介して間接的に支持するため、より確実に円滑に噛合チェーン110を駆動して噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生をより一層確実に回避するようになっている。
また、直線状延長部分132Aの側面すなわちブシュ114に臨む面に部分的に設けられた窪みや溝などの凹部に潤滑剤を溜めてチェーン駆動時の騒音を低減してもよいし、ブシュの耐摩耗性を向上させてもよい。
【0036】
また、図6に示すように、変形例2に係る噛合チェーン式進退作動装置は、一対の噛合チェーン110、110が、係合時ピン間距離D1及び剛直状態ピン間距離D2を相互に揃えるように形成されていることにより、駆動用スプロケット120と駆動用スプロケット120の反対側で噛合チェーン110に対向する側壁を形成したチェーンガイド230とでチェーン剛直化部分110Gを噛み分かれさせないでチェーン剛直化方向Aに駆動するため、一対の噛合チェーン110、110を円滑に駆動して噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を確実に回避するようになっている。
【0037】
また、図7に示すように、変形例3に係る噛合チェーン式進退作動装置は、一対の噛合チェーン110、110が、係合時ピン間距離D1及び剛直状態ピン間距離D2を相互に揃えるように形成されていることにより、駆動用スプロケット120と駆動用スプロケット120の反対側で噛合チェーン110に対向する側壁を形成するとともに直線状延長部分332Aの先端に開口縁333の高さを揃えたチェーンガイド溝331とで両側から一対の噛合チェーン110、110をガイドするため、一対の噛合チェーン110、110を円滑に駆動して噛合チェーン110の脈動(上下動)、振動、騒音および速度変動の発生を確実に回避するようになっている。
【符号の説明】
【0038】
100 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
110、810 ・・・ 噛合チェーン
110G ・・・ チェーン剛直化部分
111 ・・・フック状内歯プレート
112 ・・・ フック状外歯プレート
113 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ ブシュ
120 ・・・ 駆動用スプロケット
121 ・・・ 駆動軸
130、230、330 ・・ チェーンガイド
131、231、331 ・・・ チェーンガイド溝
132、232、332 ・・・ チェーン位置決めガイド部
132A、332A ・・・ 直線状延長部分
140 ・・・ ベースプレート
150 ・・・ 駆動モータ
151 ・・・ 動力伝達チェーン
152 ・・・ 従動側スプロケット
800 ・・・ 噛合チェーン式昇降装置
A ・・・ チェーン剛直化方向
D ・・・ 前後一対の連結ピンのピン間距離
D1 ・・・ 係合時ピン間距離
D2 ・・・ 剛直状態ピン間距離
G ・・・ 設置面
L、L1、L3 ・・・ 直線状延長部分の長さ
R1 ・・・ 一対の噛合チェーンの股間領域
R2 ・・・ チェーン剛直化部分の中空領域
S ・・・ チェーン係合仮想平面
T ・・・ 被駆動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーン幅方向に沿って相互に離間配置された一対のフック状内歯プレートと前記チェーン幅方向に沿って一対のフック状内歯プレートの外側にそれぞれ隣接配置された一対のフック状外歯プレートとを前後一対の連結ピンによってチェーン長手方向に多数連結して構成することにより相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化してチェーン剛直化部分を形成するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンと、前記一対の噛合チェーンの側方位置から前記一対の噛合チェーンの一方の噛合チェーンに係合して前記一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、前記一対の噛合チェーンの股間領域に設けられたチェーン位置決めガイド部によって前記一方の噛合チェーンに他方の噛合チェーンを位置決め噛み合わせて従動させるチェーンガイド溝を有するチェーンガイドとを備えた噛合チェーン式進退作動装置であって、
前記チェーンガイド溝が、前記一方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうち前記チェーン剛直化部分の駆動方向に直交して前記駆動用スプロケットの駆動軸を含むチェーン係合仮想平面内で前記一方の噛合チェーンを前記駆動用スプロケットのスプロケット歯に係合させた状態で前記駆動用スプロケット側に位置する一方の連結ピンと前記他方の噛合チェーンに含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って一方の連結ピンに対向する他方の連結ピンとの間に存在する係合時ピン間距離と前記チェーン剛直化部分に含まれる複数の連結ピンのうちチェーン係合仮想平面に沿って相互に対向する一対の連結ピンの間に存在する剛直状態ピン間距離とを相互に揃えるように形成されていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項2】
前記チェーン位置決めガイド部が、前記チェーン剛直化部分の中空領域に直線状に延びていることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項3】
前記チェーン位置決めガイド部のうち前記チェーン係合仮想平面から前記中空領域に延びている直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離以上であることを特徴とする請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項4】
前記直線状延長部分の長さが、前記前後一対の連結ピンのピン間距離の2倍以上であることを特徴とする請求項3に記載の噛合チェーン式進退作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−153498(P2012−153498A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15066(P2011−15066)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【特許番号】特許第4897093号(P4897093)
【特許公報発行日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)