説明

噛合チェーン式進退作動装置

【課題】駆動エネルギーの損失回避、円滑なチェーン駆動及びスペースの有効利用を実現する噛合チェーン式進退作動装置を提供すること。
【解決手段】一対のチェーン巻き取り駆動ドラム120、120が離間配置され、一方の噛合チェーン110に係合する駆動用スプロケット130が一方の噛合チェーン110の側方位置に設けられ、チェーン剛直化部分110Bからチェーン噛み外れ部分110Aにかけて他方の噛合チェーン110の側方位置からガイドするチェーンガイド部材140が一対の噛合チェーン110、110からみて駆動用スプロケット130を配置した配置側の反対側に配置されている噛合チェーン式進退作動装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、噛合チェーン式進退作動装置としては、相互に噛み合って一体的に駆動される一対の噛合チェーン、所謂、チャックチェーンを用いて被駆動体を移動させるとともにチェーンガイド溝に沿って走行させた噛合チェーンを巻き取って収納する噛合チェーン式昇降装置がある(例えば、特許文献1参照)。
また、巻取輪の外周にチェーン等の帯体を螺旋状に巻き掛ける巻取装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
また、鎖リンクを螺旋状に巻き取る用途に用いられる圧力および/または引っ張り負荷の移動方法(例えば、特許文献3参照。)やチェーンなどの帯体を進退動させる帯体の伸張繰出装置がある(例えば、特許文献4参照。)。
また、噛合チェーンの傾きを防止するとともにローラ案内用スリット内へ噛合チェーンのローラの進入を円滑にする昇降装置もある(例えば、特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1377号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【特許文献2】特開平8−324984号公報(特許請求の範囲、図2参照。)
【特許文献3】特表2002−511374号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【特許文献4】特開平8−169693号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【特許文献5】特開1999−278797号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の噛合チェーン式昇降装置では、一対の噛合チェーンを相互に噛み外してからチェーン収納ボックスに収納するまでの間で直線状収納レールおよび噛合チェーンの間に摺接抵抗を発生させてしまうため、噛合チェーンを駆動する駆動力を増大させて駆動エネルギーの損失を生じさせてしまうとともに円滑なチェーン駆動を困難にさせてしまうというチェーン駆動上の問題点があった。
また、上述の噛合チェーン式昇降装置では、一対の噛合チェーンの股間領域に設けられて噛合チェーンの走行を規制するチェーン誘導プレートなどのガイドで噛合チェーンの惰性走行や噛み外れ後のチェーン噛み外れ部分の垂れ下がりを回避するため、噛合チェーン及びチェーン誘導プレート間の摺接抵抗を回避して駆動エネルギーの損失を低減するとともに円滑にチェーンを駆動させることを困難にさせてしまうという問題点があった。
加えて、チェーン噛み外れ部分の緩みすなわちチェーン張力の不足状態に応じてチェーン蛇行や部分的なチェーン折れを生じさせて噛合チェーンと上述の直線状収納レールなどのチェーンガイド部分との間の接触頻度や接触領域を増大させた状態で摺接抵抗を増大させてしまうため、噛合チェーン及びチェーン誘導プレート間の摺接抵抗を回避して駆動エネルギーの損失を低減するとともに円滑にチェーンを駆動させることをさらに困難にさせてしまうという問題点があった。
また、上述の特許文献2では、チェーンの両側に配置された一対の駆動輪を同期ギアで相互に同期させて一対の巻取輪を駆動させるため、装置構成を煩雑化させて駆動輪周辺領域のスペースを有効利用することを困難にさせてしまうという問題点があった。
また、一般的に無端状チェーンにおいては、駆動用スプロケットによりチェーンに与えられた張力が従動スプロケットを経由してチェーン全体に付与されるとともに必要に応じてチェーンに張力を与えるための張力付与機構を設けることで、チェーンの緩みを防止していた。
しかしながら、噛合チェーンは端部を有して往復挙動するため、張力付与装置で張力を付与することが困難であり、噛合チェーンのチェーン屈曲領域について一対の噛合チェーンの両側にチェーンガイドを設ける必要があった。
また、駆動用スプロケットのチェーン噛み外れ側において、駆動用スプロケットに係合した噛合チェーンの駆動用スプロケットとの噛み外れを容易にするために特許文献5に記載のガイドエッジを設けた場合、上述の特許文献2に開示された巻取装置と同様に装置構成を煩雑化させて駆動用スプロケット駆動輪周辺領域のスペースを有効利用することを困難にさせてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、駆動エネルギーの損失を回避するとともに円滑にチェーンを駆動し、しかも駆動用スプロケット周辺領域のスペースを有効利用することを実現する噛合チェーン式進退作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンを備えている噛合チェーン式進退作動装置であって、前記一対の噛合チェーンを周方向に沿ってそれぞれ巻き取って収容する一対のチェーン巻き取り駆動ドラムが離間配置され、前記一対の噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、前記一方の噛合チェーンの側方位置に設けられ、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて一体にさせたチェーン剛直化部分から前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外したチェーン噛み外れ部分にかけて前記一対の噛合チェーンの他方の噛合チェーンの側方位置から該他方の噛合チェーンをガイドするチェーンガイド部材が、前記一対の噛合チェーンからみて前記駆動用スプロケットを配置した配置側の反対側に配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記駆動用スプロケット及びチェーンガイド部材と前記一対のチェーン巻き取り駆動ドラムとが、チェーン無摺動領域を隔ててそれぞれ離間配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0008】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記駆動用スプロケット及びチェーンガイド部材が、チェーン屈曲領域で相互に対向した状態で配置されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0009】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記駆動用スプロケットが、前記チェーン剛直化部分でのみ前記一方の噛合チェーンに係合していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
そして、本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに係る噛合チェーン式進退作動装置において、前記チェーン巻き取り駆動ドラムの回転軸に沿って螺旋状に形成されたチェーン巻き取り溝が、前記チェーン巻き取り駆動ドラムの周面に沿って形成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンを備えていることにより、テーブルなどの被駆動体を一対の噛合チェーンの進退動作に応じて駆動することができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0012】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置は、前記一対の噛合チェーンを周方向に沿ってそれぞれ巻き取って収容する一対のチェーン巻き取り駆動ドラムが離間配置され、前記一対の噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、前記一方の噛合チェーンの側方位置に設けられ、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて一体にさせたチェーン剛直化部分から前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外したチェーン噛み外れ部分にかけて前記一対の噛合チェーンの他方の噛合チェーンの側方位置から該他方の噛合チェーンをガイドするチェーンガイド部材が、前記一対の噛合チェーンからみて前記駆動用スプロケットを配置した配置側の反対側に配置されていることにより、一対の噛合チェーンの両側にそれぞれ駆動用スプロケットを設置しない構成すなわち一つの駆動用スプロケットを配置した構成で一対の噛合チェーンを駆動するとともにバネなどの弾性体を用いてチェーン巻き取り駆動ドラムを常時噛合チェーンを巻き取る方向すなわち周方向に付勢して噛合チェーンに張力を作用させた状態でチェーン噛み外れ部分をチェーン巻き取り駆動ドラムに巻き付けて噛合チェーンとチェーン巻き取り駆動ドラムとの間の摺接摩擦を回避し、しかもチェーン噛み外れ部分に張力を作用させた状態で噛合チェーンのガタツキ、振動および騒音をなくしてチェーン巻き取り駆動ドラムに噛合チェーンを巻き付けて誘導するとともに一対の噛合チェーンの股間領域に設置すべきガイド部材をなくした状態でこのガイド部材とチェーン噛み外れ部分との間の摺接摩擦を回避するため、駆動エネルギーの損失を回避するとともに円滑に噛合チェーンを駆動し、しかも一対の噛合チェーンの噛み外れ位置を低く設定して被駆動体の最下降位置を低くした状態で駆動用スプロケットと噛合チェーンとの間に確保すべき部品設置スペースの制限を回避するとともにチェーン巻き取り駆動ドラムの設置位置の自由度を広げて駆動用スプロケット周辺領域のスペースを有効利用することを実現することができる。
加えて、駆動用スプロケットで噛合チェーンを駆動するとともにチェーン巻き取り駆動ドラムを常にチェーン巻き取り方向に付勢して噛合チェーンに常時張力を付与しているため、チェーン屈曲領域におけるガイドを一部省略し、チェーン無摺動領域を設けることが可能となる。
また、チェーン巻き取り駆動ドラムから噛合チェーンに張力が付与されていることで、一対の噛合チェーンを相互に噛み外す際のチェーン噛み外れ方向に沿った噛合チェーンの駆動時に起こりがちだった噛合チェーンの脈動を大幅に低減することが可能である。
さらに、噛合チェーンと駆動用スプロケットとの噛み外れを補助するガイドエッジを設けなくても円滑に噛合チェーンと駆動用スプロケットとを噛み外すことが可能となる。
【0013】
そして、本請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記駆動用スプロケット及びチェーンガイド部材と前記一対のチェーン巻き取り駆動ドラムとが、チェーン無摺動領域を隔ててそれぞれ離間配置されていることにより、チェーン無摺動領域で噛合チェーンと他の部材との間で摺接摩擦を全く発生させないため、チェーン駆動時に発生する噛合チェーンの振動及び騒音をより一層低減するとともに摺接摩擦に起因する駆動エネルギー損失をより一層回避し、しかも円滑なチェーン駆動を実現することができる。
【0014】
そして、本請求項3に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記駆動用スプロケット及びチェーンガイド部材が、チェーン屈曲領域で相互に対向した状態で配置されていることにより、チェーン剛直化部分からチェーン噛み外れ部分にかけて一対の噛合チェーンをガイドするため、チェーン巻き取り駆動ドラムで噛合チェーンを引っ張った状態で駆動するとともに一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせてからチェーン巻き取り駆動ドラムに噛合チェーンを巻き取って収納するまで噛合チェーンの走行軌道を規制してより円滑に噛合チェーンを駆動することができる。
【0015】
そして、本請求項4に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記駆動用スプロケットが、前記チェーン剛直化部分でのみ前記一方の噛合チェーンに係合していることにより、チェーン噛み外れ時のチェーン状態を駆動用スプロケットのスプロケット歯の歯数すなわちスプロケット歯のピッチに合わせたチェーン屈曲状態に制限しないため、一対の噛合チェーンの噛み外れ位置の周辺において利用可能なスペースの自由度を高めることができる。
【0016】
そして、本請求項5に係る噛合チェーン式進退作動装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに係る噛合チェーン式進退作動装置が奏する効果に加えて、前記チェーン巻き取り駆動ドラムの回転軸に沿って螺旋状に形成されたチェーン巻き取り溝が、前記チェーン巻き取り駆動ドラムの周面に沿って形成されていることにより、チェーン巻取り駆動ドラムに巻き取られた噛合チェーンをチェーン巻き取り駆動ドラムの回転軸に沿って相互に接触させないため、巻き取られた噛合チェーン同士の引っ掛かりをなくして円滑なチェーン駆動を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置の斜視図。
【図2】噛合チェーンの分解組み立て状態を示す組立斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置の正面図。
【図4】本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置の拡大図。
【図5】噛合チェーンの巻き取り状態を示す断面図。
【図6】噛合チェーンの他の巻き取り状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンを備え、一対の噛合チェーンを周方向に沿ってそれぞれ巻き取って収容する一対のチェーン巻き取り駆動ドラムが離間配置され、一対の噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、一方の噛合チェーンの側方位置に設けられ、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて一体にさせたチェーン剛直化部分から一対の噛合チェーンを相互に噛み外したチェーン噛み外れ部分にかけて一対の噛合チェーンの他方の噛合チェーンの側方位置からこの他方の噛合チェーンをガイドするチェーンガイド部材が、一対の噛合チェーンからみて駆動用スプロケットを配置した配置側の反対側に配置されているものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0019】
噛合チェーンの具体的な構成については、相互に対向するプレート同士をそれぞれ噛み合せて一体とするとともにそれぞれ噛み外して分岐するものであれば如何なる形状を呈するものであってもよい。
例えば、チェーン幅方向に沿って相互に対向する一対のプレート間に設けられたブシュに連結ピンを遊嵌させた状態で複数のプレートをチェーン長手方向に連結して噛合チェーンを構成するとともに駆動用スプロケットのスプロケット歯をブシュに係合させて噛合チェーンを駆動してもよい。
また、チェーン巻き取り駆動ドラムの周面に形成されたチェーン巻き取り溝内に噛合チェーン全体を収納した状態で噛合チェーンを巻き取ってもよいし、複数のプレートを部分的にチェーン巻き取り溝に収納するとともにプレート面から突出した連結ピンの先端をチェーン巻き取り溝の縁に接触させるとともにチェーン巻き取り駆動ドラムの周面で連結ピンの先端を摺動させることなく噛合チェーンを巻き取ることにより、プレート端面とチェーン巻き取り溝の溝底面との間に隙間を形成するため、プレート及びチェーン巻き取り溝の間の摺接抵抗をなくしてプレート端面の摩耗を回避してもよい。
また、駆動用スプロケットの駆動軸を含むとともに装置設置面に平行な仮想平面までチェーンの噛み外れ部分をガイドするガイド面をチェーンガイド部材に形成して一対の噛合チェーンの両側からチェーンガイド部材及び駆動用スプロケットで一対の噛合チェーンをガイドすることにより、一対の噛合チェーンをより一層確実に噛み合わせてもよい。
【0020】
また、本発明の噛合チェーン式進退作動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した進退動作に何ら支障はない。
また、チェーンガイド部材は、チェーン噛合挙動を摺動ガイドするものでもよいし、従動スプロケットでも構わない。
[実施例]
【0021】
以下、本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100を図1乃至図6に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100の斜視図であり、図2は、噛合チェーン110の分解組み立て状態を示す組立斜視図であり、図3は、本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100の正面図であり、図4は、本発明の実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100の拡大図であり、図5は、噛合チェーン110の巻き取り状態を示す断面図であり、図6は、噛合チェーン110の他の巻き取り状態を示す断面図である。
【0022】
図1乃至図3に示すように、本実施例に係る噛合チェーン式進退作動装置100は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーン110、110を備え、設置面Gに設置されて重量物などの被搬送物(図示しない)を搭載するテーブルなどの被駆動体Tを設置面Gに対して平行に進退動させるものである。
また、噛合チェーン110は、前後一対の連結ピン112によってチェーン長手方向に沿ってそれぞれ連結された状態でプレート端面歯111Sを駆動用スプロケット130のスプロケット歯に係合させる複数のプレート111A、111Bから形成されている。
【0023】
次に、前述した本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100が最も特徴とする構成の具体的な形態について、図1乃至図6に基づいて詳しく説明する。
なお、以下では、一対のチェーン巻き取り駆動ドラム120、120が、一対の噛合いチェーン110、110の股間領域R1の両側に設けられている場合を説明するが、一対のチェーン巻き取り駆動ドラム120、120の配置状態は本実施例に限定されるものではない。
図1乃至図4に示すように、本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110、110を周方向に沿ってそれぞれ巻き取って収容する一対のチェーン巻き取り駆動ドラム120、120が離間配置され、一対の噛合チェーン110、110のうち一方の噛合チェーン110に係合する駆動用スプロケット130が、一方の噛合チェーン110の側方位置に設けられ、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わせて一体にさせたチェーン剛直化部分110Bから一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み外したチェーン噛み外れ部分110Aにかけて一対の噛合チェーン110、110の他方の噛合チェーン110の側方位置からこの他方の噛合チェーン110をガイドするチェーンガイド部材140が、一対の噛合チェーン110、110からみて駆動用スプロケット130を配置した配置側の反対側に配置されていることにより、一対の噛合チェーン110、110の両側にそれぞれ駆動用スプロケット130を設置しない構成すなわち一つの駆動用スプロケット130を配置した構成で一対の噛合チェーン110、110を駆動するとともにバネなどの弾性体を用いてチェーン巻き取り駆動ドラム120を常時噛合チェーン110に巻き取る方向すなわち周方向に付勢して噛合チェーン110に張力を作用させた状態でチェーン噛み外れ部分110A、110Aをチェーン巻き取り駆動ドラム120に巻き付けて噛合チェーン110とチェーン巻き取り駆動ドラム120との間の摺接摩擦を回避し、しかもチェーン噛み外れ部分110Aに張力を作用させた状態で噛合チェーン110のガタツキ、振動および騒音をなくしてチェーン巻き取り駆動ドラム120に噛合チェーン110を誘導するとともに一対の噛合チェーン110、110の股間領域R1に設置すべきガイド部材をなくした状態でこのガイド部材とチェーン噛み外れ部分110Aとの間の摺接摩擦を回避するため、駆動エネルギーの損失を回避するとともに円滑に噛合チェーン110を駆動し、しかも一対の噛合チェーン110、110の噛み外れ位置を低く設定して被駆動体Tの最下降位置を低くした状態で駆動用スプロケット130と噛合チェーン110との間に確保すべき部品設置スペースの制限を回避するとともにチェーン巻き取り駆動ドラム120の設置位置の自由度を広げて駆動用スプロケット周辺領域のスペースを有効利用することを実現するようになっている。
加えて、駆動用スプロケット130で噛合チェーン110を駆動するとともにチェーン巻き取り駆動ドラム120を常にチェーン巻き取り方向に付勢して噛合チェーン110に常時張力を付与しているため、噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン屈曲領域R2におけるガイドを一部省略し、チェーン無摺動領域R3を設けるようになっている。
また、チェーン巻き取り駆動ドラム120から噛合チェーン110に張力が付与されていることにより、噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み外す際のチェーン噛み外れ方向に沿った噛合チェーン110の駆動時に起こりがちだった噛合チェーン110の脈動を大幅に低減するようになっている。
さらに、噛合チェーン式進退作動装置100は、噛合チェーン110と駆動用スプロケット130との噛み外れを補助するガイドエッジを設けなくても円滑に噛合チェーン110と駆動用スプロケット130とを噛み外すようになっている。
【0024】
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、駆動用スプロケット130及びチェーンガイド部材140と一対のチェーン巻き取り駆動ドラム120とが、チェーン無摺動領域R3を隔ててそれぞれ離間配置されていることにより、チェーン無摺動領域R3で噛合チェーン110と他の部材との間で摺接摩擦を全く発生させないため、チェーン駆動時に発生する噛合チェーンの振動及び騒音をより一層低減するとともに摺接摩擦に起因する駆動エネルギー損失をより一層回避し、しかも円滑なチェーン駆動を実現するようになっている。
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーンずれ防止プレート150、160が、チェーン幅方向Wに沿って一対の噛合チェーン110、110の両側に設けられていることにより、チェーン幅方向Wに沿った噛合チェーン110の位置ずれを回避するため、被駆動体Tの位置ずれを回避するとともに一対の噛合チェーン110、110の円滑な噛合を実現するようになっている。
【0025】
また、噛合チェーン式進退作動装置100は、駆動用スプロケット130及びチェーンガイド部材140が、チェーン屈曲領域R2で相互に対向した状態で配置されていることにより、チェーン剛直化部分110Bからチェーン噛み外れ部分110Aにかけて一対の噛合チェーン110、110をガイドするため、チェーン巻き取り駆動ドラム120で噛合チェーン110を引っ張った状態で駆動するとともに一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わせてからチェーン巻き取り駆動ドラム120に噛合チェーン110を巻き取って収納するまで噛合チェーン110の走行軌道を規制してより円滑に噛合チェーン110を駆動するようになっている。
【0026】
また、噛合チェーン式進退作動装置100では、駆動用スプロケット130が、チェーン剛直化部分110Bでのみ一方の噛合チェーン110に係合していてもよい。
これにより、噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン噛み外れ時のチェーン状態を駆動用スプロケット130のスプロケット歯の歯数すなわちスプロケット歯のピッチに合わせたチェーン屈曲状態に制限しないため、一対の噛合チェーン110、110の噛み外れ位置の周辺において利用可能なスペースの自由度を高めるようになっている。
【0027】
また、図1、図3、図4及び図5に示すように、噛合チェーン式進退作動装置100は、チェーン巻き取り駆動ドラム120の回転軸120Aに沿って螺旋状に形成されたチェーン巻き取り溝121が、チェーン巻き取り駆動ドラム120の周面に沿って形成されていることにより、チェーン巻取り駆動ドラム120に巻き取られた噛合チェーン110をチェーン巻き取り駆動ドラム120の回転軸120Aに沿って相互に接触させないため、巻き取られた噛合チェーン110同士の引っ掛かりをなくして円滑なチェーン駆動を確実に実現するようになっている。
【0028】
また、図1、図3、図4及び図6に示すように、噛合チェーン式進退作動装置100は、複数のプレート111A、111Bを部分的にチェーン巻き取り溝121Aに収納するとともにプレート面から突出した連結ピン112の先端をチェーン巻き取り溝121Aの縁に接触させるとともにチェーン巻き取り駆動ドラム120の周面で連結ピン112の先端を摺動させることなく噛合チェーン110を巻き取ることにより、プレート端面とチェーン巻き取り溝121Aの溝底面との間に隙間を形成するため、プレート111A、111B及びチェーン巻き取り溝121Aの間の摺接抵抗をなくしてプレート端面の摩耗を回避するようになっている。
【0029】
なお、チェーン巻き取り駆動ドラム120は、ゼンマイバネで駆動されてもよいし、回転角を概ね360°以下に抑えたねじりコイルバネやモータなどの電動手段を用いてチェーン巻き取り方向に回転駆動されてもよい。
また、チェーン巻き取り駆動ドラム120を駆動する駆動手段は、本実施例に例示したゼンマイバネなどの駆動手段に限定されず、回転駆動可能なものであればいかなるものでもよい。
【0030】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式進退作動装置100は、一対の噛合チェーン110、110を周方向に沿ってそれぞれ巻き取って収容する一対のチェーン巻き取り駆動ドラム120、120が離間配置され、一対の噛合チェーン110、110のうち一方の噛合チェーン110に係合する駆動用スプロケット130が、一方の噛合チェーン110の側方位置に設けられ、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わせて一体にさせたチェーン剛直化部分110Bから一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み外したチェーン噛み外れ部分110Aにかけて一対の噛合チェーン110、110の他方の噛合チェーン110の側方位置からこの他方の噛合チェーン110をガイドするチェーンガイド部材140が、一対の噛合チェーン110、110からみて駆動用スプロケット130を配置した配置側の反対側に配置されていることにより、駆動エネルギーの損失を回避するとともに円滑に噛合チェーン110を駆動し、しかも駆動用スプロケット130と噛合チェーン110との間に確保すべき部品設置スペースの制限を回避するとともにチェーン巻き取り駆動ドラム120の設置位置の自由度を広げて駆動用スプロケット周辺領域のスペースを有効利用することを実現することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0031】
100 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
110 ・・・ 噛合チェーン
111A、111B ・・・ プレート
111S ・・・ プレート端面歯
112 ・・・ 連結ピン
120 ・・・ チェーン巻き取り駆動ドラム
120A ・・・ チェーン巻き取り駆動ドラムの回転軸
121、121A ・・・ チェーン巻き取り溝
130 ・・・ 駆動用スプロケット
140 ・・・ チェーンガイド部材
150、160 ・・・ チェーンずれ防止プレート
G ・・・ 設置面
R1 ・・・ 一対の噛合チェーンの股間領域
R2 ・・・ 噛合チェーンのチェーン屈曲領域
R3 ・・・ チェーン無摺動領域
T ・・・ 被駆動体
W ・・・ チェーン幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となる一対の噛合チェーンを備えている噛合チェーン式進退作動装置であって、
前記一対の噛合チェーンを周方向に沿ってそれぞれ巻き取って収容する一対のチェーン巻き取り駆動ドラムが離間配置され、
前記一対の噛合チェーンのうち一方の噛合チェーンに係合する駆動用スプロケットが、前記一方の噛合チェーンの側方位置に設けられ、
前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせて一体にさせたチェーン剛直化部分から前記一対の噛合チェーンを相互に噛み外したチェーン噛み外れ部分にかけて前記一対の噛合チェーンの他方の噛合チェーンの側方位置から該他方の噛合チェーンをガイドするチェーンガイド部材が、前記一対の噛合チェーンからみて前記駆動用スプロケットを配置した配置側の反対側に配置されていることを特徴とする噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項2】
前記駆動用スプロケット及びチェーンガイド部材と前記一対のチェーン巻き取り駆動ドラムとが、チェーン無摺動領域を隔ててそれぞれ離間配置されていることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項3】
前記駆動用スプロケット及びチェーンガイド部材が、チェーン屈曲領域で相互に対向した状態で配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項4】
前記駆動用スプロケットが、前記チェーン剛直化部分でのみ前記一方の噛合チェーンに係合していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーン式進退作動装置。
【請求項5】
前記チェーン巻き取り駆動ドラムの回転軸に沿って螺旋状に形成されたチェーン巻き取り溝が、前記チェーン巻き取り駆動ドラムの周面に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の噛合チェーン式進退作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197128(P2012−197128A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60813(P2011−60813)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)