説明

器官への物質の効果を判定するための装置及び方法

器官潅流装置及び方法は、器官の生存力を維持し及び/又は回復し、格納及び/又は運搬のために保存する。他の装置は、器官運搬装置、器官カセット及び器官診断デバイスを含む。方法は、好ましくは器官運搬及び/又は格納のための低体温の器官洗い流しの後に、低体温度及び/又は正常体温度で器官を潅流することを含む。方法では、器官の静的な若しくは潅流の低体温のさらしが、予め為されてもよいし後で為されてもよい。器官の生存力は、正常体温にて、酸素化され交差結合されたヘモグロビン基底の重炭酸塩医療用流体などの、医療用流体で器官を潅流することによって、高エネルギヌクレオチド(例えば、ATP)レベルを回復させることにより、回復される。器官が保存され及び/又は維持される期間では、種々の薬の研究開発が器官に関して及び/又は器官により実施され得る。器官、物質、及び物質と器官の相互作用を得るために、器官は試験物質などの物質を含む流体で潅流されるのは好ましい。データは、新薬のための規制上の出願のサポートにおいて、物質のききめに関して情報を与えるのに最終的に利用され得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、1998年9月29日出願の米国特許出願09/162128の一部継続出願である2000年3月29日出願の米国特許出願09/537180の、一部継続出願である2000年8月25日出願の米国特許出願09/645525の分割出願の、2003年7月11日出願の米国特許出願10/617130の一部継続出願である。これらの内容の全体は参照の上本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一つ又はそれ以上の器官に潅注して器官の生存をモニタし、維持し及び/又は回復するための、及び/又は、器官を運び及び/又は格納するための装置及び方法に関する。本発明は更に、器官が移植のための生存候補であるか否かを決定することに関する。特に、器官が生存移植候補で無いならば、本発明は更に、器官を流体で潅注し器官及び/又は流体に係るデータを収集することに関する。
【0003】
2.関連技術の内容
機械的潅流による器官の保存は、晶質潅流を用いて酸素を送り込むことなく、コンピュータ制御により若しくはよらずに、低体温により実施され得る。例えば、米国特許第5149321号、第5395614号、第5584804号、第5709654号、及び、クラッツらによる米国特許出願08/484601を参照されたい。これらの内容は本明細書に参照されて援用される。低体温は、器官代謝を減少させ、エネルギ要求を低下し、高エネルギ燐酸塩保存の涸渇及び乳酸の蓄積を遅らせ、血液供給の破壊に係る形態的及び機能的劣化を遅らせる。酸素は、エネルギを生成するには約20°以下ではミトコンドリアにより有効に利用され得ず、低体温におけるカタラーゼ/スーパーオキシドジスムターゼ生成の減少、及び、アスコルビル及びグルタチオン再生により、高度なフリーラジカルの形成が、可能になる。低体温機械潅流の間に潅流から酸素を除去することは、研究者による器官移植結果を改善するのに、有用となる。
【0004】
潜在的な酸素損傷を減少させることは、潅流に対して抗酸化物質を付加することによっても実現される。特に、長い高温の虚血時間の後に酸素損傷を減少させるのに有用である。多数の他の潅流付加物が、機械的潅流の成果を改善するものとして報告されている。
【0005】
理想的な器官は、高温の虚血時間を殆どゼロに限定するようにすれば、獲得され得る。不運なことに現実には、特に心臓の鼓動のないドナーからの器官の多くは、拡張された高温の虚血期間(即ち、45分以上)の後で、獲得される。低体温でのこれらの器官の機械的潅流は、大きな改善を示している(Transpl Int 1996 Daemen)。更に、先行技術は、制御された圧力で潅流を供給するローラ若しくは膜ポンプにより、低圧で低体温機械的潅流を行うことが好ましいことを示している(Transpl Int 1996 Yland)。多数の制御回路及びポンプ構成は、この目的を達成するために、一般的な機械潅流の器官に対して利用されている。例えば、サドリによる米国特許第533622号及び第5494822号、バウアらによる米国特許第4745759号、ファーヒらによる米国特許第5217860号及び第5472876号、マーチンデールらによる米国特許第5051352号、クラークらによる米国第3995444号、グルーエンベルグによる米国特許第4629686号、トルネらによる米国特許第3738914号及び第3892628号、バッチらによる米国特許第5285657号及び第5476763号、マックギーらによる米国特許第5157930号、及び、スギマチらによる米国特許第5141847号を、参照されたい。しかしながら、ある情況では、万一、器官潅流装置がうまく作動しないならば、器官の機械潅流のためのそのようなポンプの利用は、器官の過圧の危険を増大してしまう。(例えば、約60mmHg以上の)高圧の潅流は、とりわけ、高圧下で脈管構造を広げることにより自身を保護する神経の若しくは内分泌の接続を器官が有さない低体温では、器官の内皮ライニングを洗い流し、一般的に器官組織を損傷してしまう。
【0006】
更に、これらの機械潅流される器官の生存力の評価に利用される技術は、器官をより多くの利用から限定してしまう危険な因子となっている。機械潅流の際の器官の抵抗(即ち、圧力/流れ)の計測を増やすことは、有用な指標となるが、それらは最悪の情況のみ示すものに過ぎない。
【0007】
高温虚血時間により若しくは機械潅流そのものにより損傷された器官の低体温機械潅流の間には、器官は、膜組成物と共に、細胞内組成物及び内皮組成物を溶出してしまう。近年、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)及びアルカリホスファターゼなどの種々のユビキタスの細胞内酵素が登場し、潅水内で器官損傷のバイオマーカとして利用されている。最近では、低体温機械潅流内のアルファグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(a−GST)及びPiグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(p−GST)の存在の判定が、移植前の心臓の鼓動のないドナーの腎臓移植組織の機能的結果を予測するのに十分な指標となっている(Transpl 1997 Daemen)。
【0008】
先行技術は、低体温での拡張期間保存した後の器官の生理的機能を回復する若しくは維持する要求を扱う。特に、ウイックマン−コフェルトによる米国特許第5066578号は、大量のピルビン酸塩を含む器官保存溶液を開示する。ウイックマン−コフェルトは、ピルビン酸塩による器官の潅水、即ち、ピルビン酸塩を生成するアデノシン三リン酸(ATP)を利用する細胞エネルギサイクルのステップが、グルコースをバイパスし、ピルビン酸が、ATPを生成する酸化ホスホリラーゼのためのミトコンドリアに対して利用可能であることを開示する。ウイックマン−コフェルトは、血液若しくは器官の管の他の残骸を除去するためにピルビン酸塩を含む第1の保存溶液により高温で器官を潅注若しくは洗浄し、血管拡張し、流れを増加し、きれいな基質、即ちピルビン酸塩の形態でのエネルギ供給を細胞に搭載することを、開示する。ウイックマン−コフェルトは、ピルビン酸塩が、細胞膜を跨る活動電位を保存する助けとなるだけでなく、浮腫、虚血、カルシウム過多及びアシドーシスを防ぐことを開示する。器官が活動するのを停止し、十分な血流を生じるように血管を拡張し、細胞にピルビン酸塩を搭載し続け、器官のエネルギ状態を保存するために、器官は続いて、ピルビン酸塩と数パーセントのエタノールを含む第2の潅流溶液を潅流される。最後に、器官は、4°Cと10°Cの間の温度で24時間若しくはそれ以上大量の第1の溶液内に格納される。
【0009】
しかしながら、ミトコンドリアは、細胞内のエネルギ源であり、十分な量の酸素が機能する必要がある。器官は本来十分なピルビン酸塩レベルを有しており、ミトコンドリアに、機能するための十分な酸素が与えられなければ、器官に追加的にピルビン酸塩を与えても器官の完全な生理的機能を回復及び/又は維持する助けにはならない。更に、一時的にピルビン酸塩を器官に潅注しても、実際には器官の管内皮ライニングの裂傷を促進しかねない。
【0010】
ブラジーレらによる米国特許第5599659号も、組織、外植辺、器官及び内皮細胞の高温保存のための保存溶液を開示する。ブラジーレらは、低体温の器官保管の不利点を開示し、対案として高温保存技術を提案する。ブラジーレらは、解決策が、組織の管内皮の培養のための媒体として、及び、高温保存技術を利用する器官移植のための策として、役立つ拡張された能力を有することを開示する。というのは、プロテイン及びコロイドの源として血清アルブミン、生存力及び細胞機能を増す痕跡元素、酸化燐酸化支持体のためのアデノシンピルビン酸塩、接合因子としてのトランスフェリン、非透過体の源のみならず毒性フリーラジカルを除去する代謝支持体及びグルタチオンのためのインスリン及び糖質、非透過体の源・スカベンジャ・及び細胞付着性及び増殖因子の増強体としてのシクロデキストリン、微細血管代謝支持体のための高度濃度のMg++、増殖因子増強作用及び止血のための第一コンドロイチンサルフェート及びヘパリンサルフェートを含むムコ多糖体、及び、コロイドの非透過性の特定管増殖プロンプタの源としてのENDO GRO(登録商標)が、補われるからである。ブラジーレらは更に、30°Cで12時間まで器官を高温潅流すること、若しくは単に、保存溶液内で25°Cで器官を保管することを開示する。
【0011】
しかしながら、器官にそのような薬品を潅流することは、ミトコンドリアがエネルギを生成するように機能するには十分な酸素が与えられていない虚血損傷を抑える若しくは回復するのには十分ではない。20°C以上では器官の酸素要求は重要であり、適切な流れでは単なる晶質は適合し得ない。更に、器官の生存力の評価は、どのタイプの溶液の利用が有利であるか決定する前に、必要である。
【0012】
オーウエンによるWO88/05261は、潅流システムを介して移送される乳濁流体若しくは生理電解液を供給される器官チャンバを含む器官潅流システムを開示する。チャンバは、器官を保持する合成糖類を含む。潅流は、動脈に挿入されるカテーテルを介して器官に入る。潅流は、2つの独立の流体源により与えられ、流体源の夫々は2つの貯蔵部を含む。
【0013】
[発明の概要]
本発明は、器官の生存力をモニタし、維持し及び/又は回復し、格納、運搬、移植若しくは他の利用のために器官を保存しつつ、潅流の間に器官への損傷を回避することに関する。本発明は、器官の生存力をモニタし維持し及び/又は回復するために器官を潅流し、及び/又は、運搬し及び/又は格納し及び/又は器官を利用する装置及び方法に関する。特に、本発明に係る器官潅流装置及び方法は、好ましくは、低体温洗い流しなどの器官の洗い流しがあり、器官の運搬及び/又は格納のための低体温での静的器官格納及び/又は器官潅流が続いた後に、正常体温度(正常体温潅流モード)及び/又は低体温度(低体温潅流モード)で器官を潅流することにより、器官の生存力をモニタし維持し及び/又は回復する。
【0014】
器官の生存力の回復は、高温の虚血時間及び/又は低酸素により引き下げられた気管内の高エネルギヌクレオチド(例えば、アデノシン三リン酸(ATP))レベル及び酵素レベルを、正常体温若しくは正常体温近傍温度にて、酸素化され交差結合されたヘモグロビン基底の重炭酸塩医療用流体などの酸素化医療用流体で器官を潅流することによって、回復させることにより、成し遂げられ得る。器官は、酸素化医療用流体での潅流の前に、医療用流体で洗い流されてもよい。そのような潅流は正常体温度で為されても低体温度で為されてもよいが、正常体温度で為されるのが好ましい。正常体温の洗い流し、静的格納及び低体温潅流に対して、医療用流体は殆ど酸素を含まないのが好ましく、分子(例えば、2アスコルビン酸トコフェノール)と酵素(例えば、カタラーゼ及びスーパーオキドジスミュターゼ)の両方の抗酸素剤を含むのが好ましい。正常体温及び/又は低体温潅流、好ましくは低体温潅流は、生体外で為されても生体内で為されてもよい。そのような潅流は、器官の運搬、格納及び/又は移植の準備において、虚血性の損傷を抑える。
【0015】
正常体温処置は、器官が、静的に及び/又は潅流下で低体温度にさらされた後に、利用されるのが好ましい。そのような初期の低体温のさらしは、例えば、取り入れの後器官の運搬及び/又は格納の間に、生じうる。処置は、最終的に低体温状況で格納され及び/又は運搬される器官に対して適切である。換言すれば、処置は低温の格納及び/又は運搬の前に、器官に為されてもよい。
【0016】
正常体温潅流モードでは、全体の器官潅流圧力は、器官内に位置するチューブの端部に配置されるセンサに対して応答して制御される空気式加圧医療用流体貯蔵部により加えられるのが好ましい。該貯蔵部は、テッピングモータ/カムバルブ若しくは、潅流圧力を良好に調整し超過圧力を防ぎ及び/又は緊急の流れ停止を行うピンチバルブと、組み合わせて利用されてもよい。一方で、器官は、適切なポンプ制御及び/又は十分なフェールセーフのコントローラによりローラポンプや蠕動ポンプなどのポンプから直接に潅流され、特にシステム機能不全の結果としての器官の超過圧力を防ぐようであってもよい。超過圧力を実質的に除去することにより、一般的に、管内皮ライニング及び器官組織への損傷を防ぐ及び/又は減少できる。器官の生存力は、好ましくは、器官抵抗(圧力/流れ)及び/又はpH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、ラクタート、グルコース、器官を介して潅流され収集された医療用流体内の塩基過剰及び/又はイオン化カルシウムレベルをモニタすることにより、正常体温潅流モードで好ましくは自動的にモニタされ得る。
【0017】
正常体温潅流は、低体温潅流の後でも先でもよい。低体温モードでは、器官は、酸素を含まないが断続的に若しくは遅い連続流速で抗酸化物を増やされるのが好ましい晶質溶液のみを含む医療用流体で潅流される。低体温潅流は、ドナーから器官を外す前に生体外で為されてもよく生体内でなされてもよい。低体温潅流は器官の代謝率を下げ、これにより、器官は拡張された器官保存され得る。医療用流体は、器官の超過圧力が回避される低い圧力ヘッドを有する中間タンクから、圧力により器官の中に供給されるのが好ましい。一方で、実施の形態では、できるならば、中間タンクから器官の中に医療用流体を供給するのに、重力が利用されてもよい。一方で、器官は、適切なポンプ制御及び/又は十分なフェールセーフのコントローラによりローラポンプや蠕動ポンプなどのポンプから直接に潅流され、特にシステム機能不全の結果としての器官の超過圧力を防ぐようであってもよい。超過圧力を実質的に除去することにより、特に器官が管圧縮により自身を保護することができない低体温度の場合に、一般的に管内皮ライニング及び器官組織への損傷を防ぐ及び/又は減少できる。器官の生存力は、好ましくは、器官抵抗(圧力/流れ)及び/又はpH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、ラクタート、グルコース、器官を介して潅流され収集された医療用流体内の塩基過剰及び/又はイオン化カルシウムレベルをモニタすることにより、正常体温潅流モードで好ましくは自動的にモニタされ得る。
【0018】
器官診断装置は、器官生存力指標などの診断データを生成するように設けられてもよい。器官診断システムは、カセットインタフェースフィーチャに加えてセンサや温度コントローラなどの器官潅流装置のフィーチャを含み、器官と潅流システム内のインプット及びアウトプット流体の分析を行う。通常、器官診断装置は、単一通過のインライン潅流の診断データを与える簡素な潅流装置である。
【0019】
器官生存力指標は、管抵抗、pHなど上述の種々の計測ファクタを考慮して、与えられる。指標は器官特有でもよく、種々の器官に適用可能なものでもよい。指標は、モニタされるパラメータを診断概要に集め、その診断概要は、器官治療判断を為し器官を移植するか否かを判定するために利用され得る。指標は自動的に生成され医師に与えられることが可能である。
【0020】
本発明の実施形態は、潅流モード及び制御パラメータの間で選択することにより、一つ又は複数の器官の潅流を自動的に制御するための制御システムを含む。自動的潅流は、システム内で感知された状況若しくは手動入力されたパラメータを基礎にしてもより。システムは、予めプログラムされていてもよく、利用中にプログラムされてもよい。デフォルト値及び生存力チェックが利用される。
【0021】
潅流装置は、腎臓、心臓、及び肺など種々の器官に対して利用され、例えば、肝動脈及び門脈の脈管構造などの、多数の脈管構造を有する肝臓などのより複雑な器官も調整され得る。
【0022】
本発明は、器官を潅流し、格納し、分析し及び/又は運搬するための装置間で簡易に且つ安全に、器官を移動できる器官カセットも、提供する。器官カセットは、干渉のない滅菌された状況を設け、更に、運搬装置、潅流装置及び器官診断装置の間での移転を含めて、運搬、回復、分析及び格納の間に、実効的な熱移転を果たすように、構成されているのが好ましい。
【0023】
本発明は、長距離において器官を移送できる器官運搬装置も提示する。器官運搬装置は、腎臓など種々の器官に対して利用され、例えば、肝臓の肝動脈及び門脈の脈管構造などの、多数の脈管構造を有する肝臓などのより複雑な器官も調整され得る。器官運搬装置は、カセットインタフェースフィーチャに加えて、センサ及び温度コントローラなどの、器官潅流装置のフィーチャを含む。
【0024】
本発明は、器官の生存力をモニタし、維持し及び/又は回復し、格納及び/又は運搬及び/又は移植及び/又は他の利用のために器官を保存しつつ、潅流の間に器官への損傷を回避することに関する。種々の理由のために、器官が移植されないとも決定され得る。ドナーから器官を取得しその生存力を回復することが困難であっても、器官は完全には放棄されないのが好ましい。従って、本発明の更なる実施形態では、器官が移植には適切ではなくとも、その同じ器官は、薬学研究などのために生物活性剤で器官をスクリーニングするというような、別の目的に利用され得る。
【0025】
本発明の例示の実施形態では、本発明の潅流、診断及び運搬装置は、上記の技術及び方法と組み合わせてもよく、及び/又は、器官若しくは組織で研究を行うという更なる技術及び方法と組み合わせてもよい。器官が保存され及び/又は維持される間には、種々の薬の研究開発活動が、器官に関して及び/又は器官により実施され得る。医療用流体及び/又は物質及び器官の相互作用に関するデータを取得するために、薬若しくは他の生体活性剤又は他の試験物質などの物質を含み得る医療用流体で、器官は潅流されてもよい。データは、例えば、新薬若しくはその新しい利用のための規制上の出願のサポートにおいて、物質のききめ、毒性若しくは他の特性に関して情報を与えるのに、利用され得る。
【0026】
潅流、診断及び/又は運搬装置は、器官及び器官流出をモニタし、器官の状況を分析して及び/又は、医療用流体及び/又は薬若しくは他の生体活性剤など物質の注入から器官への効果を判定しつつ、器官を介して医療用流体を潅流するように利用され得る。
【0027】
器官、医療用流体及びそれらの間の相互作用のデータが、収集され得る。更に、器官データ指標は、器官の潅流から生成されるデータを格納するために利用されるように為されるのが好ましい。データにより、器官及び医療用流体を即座に研究でき、情報は、器官状況をモニタする潅流、診断若しくは運搬装置もから直接に回復され得る。種々のタイプのデータ及び情報は、副次レコード若しくは副次ディレクトリにグループ化されデータマネジメント及び転送に加わるようにしてもよい。全ての副次レコードは、結合されて全体の器官スクリーニングレコードを生成し、この全体のレコードは、医師、科学者若しくは研究目的の他の組織に、分散されたり、検索されたりしてもよい。
【0028】
潅流装置、運搬装置、カセット、及び器官診断装置は、器官、即ち格納され若しくは運搬される器官の、位置及び治療及び診断パラメータの遠隔管理、追跡及びモニタを可能にするように、ネットワーク化されてもよい。情報システムは、器官運搬及び格納の履歴データを集め、ドナーとレシピエントに関する病院と全米臓器配分ネットワーク(UNOS)によるクロスリファレンスを提供するように、利用され得る。システムは、潅流パラメータ及び移植結果の迅速なリサーチを可能にする結果データを提供してもよい。
【0029】
本発明の上述の及び他の形態及び利点は、添付の図面と組み合わせた実施形態の以下の詳細な説明から、明確となる。
【0030】
[好適な実施形態の詳細な説明]
本発明の特徴の全般的な理解のために、図面が参照される。図面では、同一の符号は同一の要素を示すように利用されている。
【0031】
図1は、本発明に係る器官潅流装置を示す。図2は、図1の装置の系統図である。装置1は、マイクロプロセッサ制御であり空気圧で作動するのが好ましい。装置1の、センサ、バルブ、熱電気ユニット及びポンプに対するマイクロプロセッサ150の接続は、図3に概略示される。マイクロプロセッサ150及び装置1は、例えばLANやインタネットにてデータをシェアリングするコンピュータネットワークに接続するように構成されてもよく、更に接続できるのが好ましい。
【0032】
器官潅流装置1は、正常温度及び低体温(以下、正常温度潅流モード、及び低体温潅流モードという。)の両方で、一つ又はそれ以上の器官を同時に潅流できる。医療流体接触表面の全ては、利用されている医療用流体と互換性のある部材で、好ましくは非血栓形成作用部材で、形成される若しくは被膜されるのが好ましい。図1に示すように、装置1は、半透明が好ましいフロントカバー4を含むハウジング2と、貯蔵部アクセスドア3を含む。装置は、潅流をモニタし制御するための一つ又はそれ以上の制御及び表示エリア5a、5b、5c、5dを有するのが好ましい。
【0033】
図2に概略示すように、ハウジング2内部には、3つの貯蔵タンク15a、15b、17を含むのが好ましい貯蔵部10を備える。貯蔵タンク15a、15bの2つは、各々圧力カフ16a、16bを備える標準的1リットル注入バッグであるのが好ましい。圧力源20は空気式が好ましく、図2に示すように、気体カフ26、26a、26bを経由して少なくとも10LPMの外部カフ機動を供給するオンボードコンプレッサユニット21であってもよい。しかしながら、どの適切な圧力源が用いられてもよいので、本発明はオンボードコンプレッサユニットを利用することに限定されない。適切な圧力源は、例えば、内部加圧のための100psi若しくはそれ以上の圧力の、1.5リットルの容積を伴う圧縮気体(例えば、空気、二酸化炭素、窒素など)タンク(図示せず)であってもよい。一方、内部加圧貯蔵タンク(図示せず)が用いられてもよい。実施形態では、貯蔵タンク15a、15b、17は、びんでも、重力により潅流を供給できる若しくは圧縮気体により加圧される他の適切な堅固な貯蔵部でもよい。
【0034】
気体バルブ22−23は気体チューブ26に設けられ、これによりオンボードコンプレッサユニット21による圧力制御が可能になる。逆流防止バルブ24a、24bは、気体チューブ26a、26bに夫々設けられ得る。圧力センサP5、P6は気体チューブ26a、26bに夫々設けられ、図3に示すように、内部の情況をマイクロプロセッサ150に中継する。潅流、診断及び/又は運搬装置にはセンサが設けられ、潅流流体圧力をモニタし、特に、器官の維持に適切なレベルを超える圧力などの、特定装置内の障害を検出する特定装置内の流れをモニタする。気体バルブGV1、GV2は、カフ16a、16bからの圧力を解放するために設けられ得る。気体バルブGV1、GV2の一方若しくは両方は、大気に排出されるものであればよい。チューブ18a、18bを介して貯蔵タンク15a、15bに繋がる気体バルブGV4は、チューブ18を介して貯蔵タンク15a、15bから空気に排出するように為されればよい。チューブ18、18a、18b、26、26a及び/又は26bは、フィルタ及び/又はチェックバルブが設けられ、これにより、生理部材がチューブに入り込むこと、若しくは流体経路に沿って更に進むことを防ぐことが好ましい。チェックバルブ及び/又はフィルタは、多重器官潅流構成において、生理部材が一つの器官の潅流チューブセットを離れ後続の器官のチューブセットに移送されることを防ぐために、設けられてもよい。チェックバルブ及び/又はフィルタは、バクテリアやウイルスなどの生理部材が使用後の潅流装置内に残留する場合に、潅流装置の後続の利用において、器官から器官へ移送されてしまうことを防ぐためにも設けられてもよい。チェックバルブ及び/又はフィルタは、気体及び/又は排出ライン内の逆流と関連する汚濁問題を防ぐ。例えば、バルブは逆流を防ぐ逆流防止バルブとして構成されてもよい。第3の貯蔵タンク17は、気体バルブGV2を介して圧力カフの一つから解放される圧力により圧せられるのが好ましい。
【0035】
医療用流体は、血液でも人造流体でもよく、例えば、混合物でない晶質溶液でもよく、適切な酸素坦体を増加されてもよい。酸素坦体は、例えば、洗浄され安定化された赤血球、交差結合されたヘモグロビン、ペゴレート(pegolate)されたヘモグロビン、若しくは過フッ化炭化水素基底のエマルジョンでもよい。医療用流体は、生理的環境で過酸化、即ちフリーラジカル損傷を減少することで知られる抗酸化物質や、組織保護を助けることで知られる特定の薬剤を含んでもよい。以下に詳細に示すように、酸化(例えば、交差結合されたヘモグロビン基底の重炭酸塩)溶液は正常体温モードに対して好ましく、非酸化(例えば、抗酸化物質を増加されるのが好ましい混合物でない晶質溶液)溶液は低体温モードに対して好ましい。正常体温及び低体温モードで利用される特定の医療用流体は、器官の管内皮ライニングの洗い流し若しくは損傷を、減少する若しくは防止するように為されている。流水及び/又は静的貯蔵に対してだけでなく、低体温潅流モードに対して、好ましい溶液が2000年7月28日出願の米国特許出願第09/628311号で開示されている溶液である。該出願の全開示内容は、本明細書に参照の上援用される。本発明のための潅流溶液内で利用され得る付加物の例は、ハッサナインによる米国特許第6046046号にも開示され、その全開示内容は、本明細書に参照の上援用される。勿論、公知である他の適切な溶液及び部材が用いられてもよい。
【0036】
潅流溶液は、潅流溶液キット内に、例えば、図2で示す箱10が好ましい、正常体温潅流のための第1の潅流溶液を保持する少なくとも一つの第1の容器と、低体温潅流のための第2の別の潅流溶液を保持する少なくとも一つの第2の容器を含むのが好ましい商業入手可能なパッケージ内に、設けられてもよい。第1の潅流溶液は、少なくとも一つの酸素坦体や酸化物でもよく、及び/又は交差結合されたヘモグロビン及び安定化された赤血球からなるグループから選択されてもよい。第2の潅流溶液は、非酸化物でもよく、少なくとも一つの酸化防止物を含んでもよく、及び/又は少なくとも一つの血管拡張神経薬を含んでもよい。更に、溶液は5mM以下の溶存ピルビン酸塩を含んでもよい。また、第1の容器及び第2の容器は、潅流機械の潅流コンジットと流体連絡する潅流流体貯蔵部として、潅流機械に操作自在に接続するように構成されてもよい。更に、第1と第2の容器のうちの一つは圧縮可能で内部の潅流溶液に圧力を加えられるのがよい。更に、第1と第2の容器のうちの少なくとも一つは、容器から出て行く含有される潅流溶液の通過のための第1の開口と、容器内に入る圧縮気体の通過のための第2の開口を含んでもよい。パッケージが、潅流機械と操作自在に接続するように構成されるカセットであり、これにより潅流コンジット若しくは潅流機械のチューブと流体連絡する潅流機械内部の第1と第2の容器と接続してもよい。
【0037】
別の実施形態では、潅流溶液キットは、第1の温度の低体温潅流のための第1の潅流溶液を保持する少なくとも一つの第1の容器と、第1の温度より低い第2の温度の低体温潅流のための第2の別の潅流溶液を保持する少なくとも一つの第2の容器を含んでもよい。キット内では、第1の潅流溶液は少なくとも晶質を含んでもよく、更に少なくとも一つの血管拡張神経薬を含んでもよい。第2の潅流溶液は、増強された酸素坦体でもよい。ここで酸素坦体はヘモグロビンと安定化赤血球からなるグループから選択される。更に、第2の潅流溶液は、少なくとも一つの酸化防止物若しくはフリーラジカルスカベンジャを含んでもよい。第2の溶液は5mM以下の溶存ピルビン酸塩を含んでもよい。上記のように、第1の容器及び第2の容器は、潅流機械の潅流コンジットと流体連絡する潅流流体貯蔵部として、潅流機械に操作自在に接続するように構成されてもよい。更に、第1と第2の容器のうちの一つは圧縮可能で内部の潅流溶液に圧力を加えられるのがよい。更に、第1と第2の容器のうちの少なくとも一つは、容器から出て行く含有される潅流溶液の通過のための第1の開口と、容器内に入る圧縮気体の通過のための第2の開口を含んでもよい。パッケージが、潅流機械と操作自在に接続するように構成されるカセットであり、これにより潅流コンジット若しくは潅流機械のチューブと流体連絡する潅流機械内部の第1と第2の容器と接続してもよい。
【0038】
貯蔵部10内部の医療用流体は、貯蔵部10と熱移送連絡する第1の熱電気ユニット30aにより所与の温度にまで引き上げられるのが好ましい。温度センサT3は、貯蔵部10内部の温度をマイクロプロセッサ150に中継する。マイクロプロセッサ150は、貯蔵部10内部の所与の温度を維持するように熱電気ユニット30aを調整し、及び/又は、手動調整のために制御及び表示エリア5a上に温度を表示する。一方、又は更に、器官潅流デバイスが移送される場合に、低体温潅流流体貯蔵部内部の医療用流体は、同時継続出願の第09/039443号に開示される極低温流体熱交換装置を利用して冷却され得る。該出願の内容は、本明細書に参照の上援用される。
【0039】
図2に示すようにカセット65を支持し潅流される器官を保持する、又は、図12に示すように相互に近接して配置されるのが好ましい複数のカセット65、65、65を支持する器官チャンバ40が設けられる。カセット65の種々の形態は、図11A〜図11Dに示される。カセット65は、持ち運びが非常に楽なように軽いが耐久性のある部材で形成されるのが好ましい。部材は、器官を眼で検査できるように透明であってもよい。
【0040】
カセット65は、側壁67a、底壁67b及び器官支持面66を含み、該器官支持面66は流体が通過するように多孔性若しくはメッシュ部材で形成されるのが好ましい。過接地65は、頂部67dも含んでもよく、チューブのための開口部63が設けられてもよい(例えば、図11D参照)。開口部63はシール63a(例えば、隔壁シールやオーリングシール)を含んでもよく、器官の汚濁を防ぎ殺菌環境を維持するためのプラグ(図示せず)が設けられてもよい。また、カセット65は閉鎖自在の空気ベント61(例えば、図11D参照)が設けられてもよい。カセット65、特に、器官支持体、開口部、チューブ及び/又は接続部は、還流されるべき器官のタイプ及び/又は器官のサイズに特別に調整されてもよい。側支持壁67aの外部縁67cは、器官チャンバ40内に配置されるカセット65を支持するように利用されてもよい。カセット65は更に、例えば図11C及び図11Dに示すように、カセット65を容易に操作できるハンドル部位68を含んでもよい。個々のカセット65には、以下で詳細に述べるように、(例えば、図11Cに示すハンドル部位68に)内部に配置される器官60の中に潅流される医療用流体の圧力を適切に調整するためのそれ自身のステッピングモータ/カムバルブ75が設けられてもよい。一方、圧力は、個々の器官のための個別の空気式チャンバ(図示せず)などの、空気式チャンバにより、若しくは、ロータリスクリュバルブやヘリカルスクリュバルブなどの適切な種々のバルブにより、制御されてもよい。
【0041】
図17は、カセット65の別の形態を示す。図17では、カセット65は、コンジット一つ又はそれ以上の−部セット400と共に示される。チューブセット400は、潅流装置1、又は器官運搬装置若しくは器官診断装置に接続可能であり、これにより、カセット65の内部の滅菌を損なうことなくカセット65を種々の装置間で移動可能にする。カセット65は、穿通の厳しいインパクトに耐えられるような十分に耐久性のある部材で作られるのが好ましい。カセット65は蓋が備わり、内蓋410と外蓋420の2つのふたが備わるのが好ましい。蓋410と420は、取り外し自在でも、ヒンジされていてもよく、カセット65のボディ部に繋がっていてもよい。留め具405には、更なる安全性と安定性をもたらすロックが更に設けられてもよい。生検ポート430が、内蓋410内に、又は、内蓋410及び外蓋420の両方に追加して設けられてもよい。生検ポート430は、器官への接触手段を設けるのであり、これにより器官への最小限の擾乱により器官の追加的診断が可能になる。カセット65は、(図17Aに示す)オーバフロートラフ440を有してもよい。オーバフロートラフ440は、カセット65の頂部に存するチャネルである。蓋410及び420がカセット65に固定されると、オーバフロートラフ440は、内部のシールが漏れているか判定するのを容易にチェックする領域を設ける。潅流は、カセット65の中へそしてカセット65から流れ、コックの栓若しくは取り外し自在のプラグを介してカセット65から排出され得る。
【0042】
カセット65及び/又は両方の蓋410、420は、光学的に透明な部材で構成されてもよく、これにより、カセット65の内部の視察や器官のモニタが可能になり、器官のビデオ画像や写真を撮ることが可能になる。潅流装置1若しくはカセット65は、配線され、デジタルやその他のビデオカメラや写真カメラが取り付けられ、器官の経緯や状態が記録されてもよい。取られた画像は、更なるデータ解析やリモートモニタを行うためのローカルエリアネットワークやインタネットなどのコンピュータネットワークで利用可能とされてもよい。カセット65には、バーコード、磁気、無線周波数、若しくは他の手段を介して、カセットの配置、カセットが装置内に存すること、及び/又は潅流装置若しくは運搬装置に対する器官の識別子につき信号で送るタグが設けられてもよい。カセット65は、滅菌パッケージでもよく、及び/又は、ピールオープンパウチ内などの使い捨てカセットとしてパッケージされても、即ち販売されてもよい。カセット65を含む使い捨てパッケージはコンジット一つ又はそれ以上の−部セット400を含んでもよい。
【0043】
カセット65は、図18及び図18Aに示す器官チェア1800が更に備わってもよい。器官チェア1800は取り外し自在であり、カセット65内部に器官のための支持表面を設ける。取り外し自在の器官チェア1800を利用することにより、カセット65の中に配置される前に器官がドナーから再生された場合に、器官を冷却状況下でカニューレ挿入して固定できる。器官チェア1800は再利用可能でも使い捨てでもよい。器官チェア1800は、腎臓、心臓若しくは肝臓など、器官の夫々のタイプに特に対応して、構成されてもよい。器官チェア1800は、器官サイズの人体計測範囲にのみ適合するように、器官に形状合致して設計されるのが好ましい。
【0044】
器官チェア1800は、少なくとも一部孔をあけられ流体を通すようにされているのが好ましい。器官チェア1800の孔は、器官くずを捕らえるサイズであればよく、即ち、追加のフィルタ層であればよく、布、繊維、ナイロン、プラスチックなどで構成されればよく、その場合少なくとも直径15ミクロンの器官くずを捕らえる。更に、単独のフィルタが、潅流溶液から直接に流体を取り込むチューブ上で用いられ、例えば少なくとも直径10〜15ミクロンの所定サイズの器官くずが潅流チューブに入り込むのを防ぐようにしてもよい。
【0045】
器官チェア1800は、静脈流出サンプラ1810も設けられてもよい。器官チェア1800は、静脈流出を静脈流出サンプラ1810の中に集中させる。静脈流出サンプラ1810は、器官の静脈流出を捕まえるための即座に利用可能な源となる。このように静脈流出を捕まえることにより、静脈にカニューレ挿入することなく器官から出る潅流の分析が可能になり、器官に流入及び流出する潅流を区別して分析することにより高い程度の感度で器官の生存力を測ることができる。一方、静脈流出は静脈にカニューレ挿入することにより直接に捕獲され得るが、この方法は静脈や器官を損傷してしまう危険が増加する。器官チェアは、カセット65内部でも上げ下げ可能であり、このことにより静脈流出サンプラ1810からのサンプリングを促進する。一方、十分な量の器官溶液をカセット65から流出させ、静脈流出サンプラ1810に到達するようにしてもよく、若しくは、気管溶液内の残りの潅流と静脈流出が混合する前に静脈流出を捕獲するようにしてもよい。
【0046】
器官チェア1810は更に、腎臓動脈などの潅流動脈に付随するカニューラ1820が設けられるのが好ましい。カニューラ1820は再利用可能でもよく、使い捨てに適するものでもよく、カセット65、器官チェア1800及びチューブセット400と共に滅菌パッケージ内に設けられるのが好ましい。カニューラ1820には、カニューラクランプ1830が設けられ、潅流動脈の周囲でカニューラ1820を固定し更に好ましくは潅流の漏れを無くするようにする。直線進入フランジ式カニューラも利用され得るが、動脈の周囲のクランプが、傷つきやすい動脈の内側面との接触を避けるのには好ましい。カニューラ1820は、副動脈のための追加の分岐接続が構成されてもよい。多数のカニューラ及びカニューラサイズが種々の動脈サイズに適応するように利用されてもよいし、調整可能なカニューラ及びカニューラクランプが種々のサイズの動脈に適応するように利用されてもよい。カニューラクランプ1830は2枚貝構成であってもよいし、2点設計であってもよい。カニューラクランプ1830には、カニューラクランプ1830を適切な圧力に締めて漏れのない潅流を実現するための統合的手段若しくは分離手段が、構成されてもよい。更に、カニューラ1820は、カニューラ1820の閉鎖を保持するスナップ1840が設けられてもよい。カニューラ1820は、カニューラ1820から気泡を除去するベント1850が設けられてもよい。
【0047】
器官チェア1800は、カニューラ1820の突起部1870に対応する戻り止め領域1860を有するのが好ましい。器官チェア1800上のそのような戻り止め、トラック若しくは溝により、カニューラ1820は種々の位置に配置可能となり潅流される動脈に
種々の張力を与える。このことにより、理想的な最小限の張力が個々の動脈に対して設定され得ることになる。カニューラクランプ1830は、潅流チューブを潅流される動脈に固定する。カニューラ1820は調整自在に器官チェア1800に固定され、器官サイズ及び動脈長さの変動に適応するように潅流される動脈を配置し、動脈の伸び、ねじれ、たるみ、若しくはよじれを防ぐ。器官チェア1800、カニューラ1820、及び、添付の紐若しくは幅広のベルトの組み合わせにより、確固たるプラットフォームが、器官を輸送し更にカセットと手術野との間で器官を移動させることになる。
【0048】
器官チェア1800、カニューラ1820及び/又はカニューラクランプ1830は、光学的に透明な部材で構成され、これにより、器官と潅流の状況のモニタが促進される。
【0049】
カセット65は、器官潅流装置1から取り外され、例えば同時に出願された同時係属出願第09/161919号、若しくはファーヒによる米国特許第5586438号に開示される従来技術の冷却器若しくは携帯用容器などの、携帯用輸送装置内で別の器官潅流装置に輸送されるように、構成される。上記特許は参照されて本明細書に援用される。
【0050】
実施の形態では、輸送時に、器官は器官支持面66上に配置され、カセット65は例えば図11Aに示すように好適な滅菌バッグ69内に封入されるのが好ましい。器官が医療用流体で潅流されるとき、流れ出る医療用流体はバッグ69内で集められ器官溶液となる。一方、カセット65には、流れ出る医療用流体が集まる流体漏れの生じない下方部位が形成されてもよく、流れ出る医療用流体が器官チャンバ40内に集まり器官溶液となってもよい。更に別の場合には、バッグ69は、カセットを器官チャンバ40の中に挿入する前に取り外されてもよい。更に、複数の器官が潅流される場合、器官チャンバは個々の器官に対して設けられてもよい。一方、カセット65は、図17の二重蓋のカセット内で輸送され更に携帯用器官運搬装置内部で運ばれてもよい。
【0051】
図19は、本発明の運搬装置1900の実施形態の外観を示す。図19の運搬装置1900は、直立姿勢を促進する安定底を有し、持ち運びのためのハンドル1910を有する。運搬装置1900は、持ち運びの助けとなる肩紐、及び/又は、ホイールが備わってもよい。制御パネル1920が設けられるのも好ましい。制御パネル1920は、注入圧力、電源オン/オフ、エラー若しくはフォールト状況、流速、流れ抵抗、注入温度、溶液温度、ポンプ時間、バッテリチャージ、温度プロファイル(最大と最小)、カバーの開閉、ログ若しくグラフの履歴、及び更なる状況の記述とメッセージなどの特性を表示するが、特性はこれらに限定されない。そして、これら特性は、データ格納及び/又は分析のために遠隔位置に更に転送可能であることが好ましい。運搬装置1900内の流れ及び圧力センサ若しくは変換器は、ポンプ圧力及び器官の管抵抗を含む種々の器官特性を計算するのに利用され得る。これら器官特性はコンピュータメモリに格納され、高圧などの装置内の短所を検出するだけでなく、例えば管抵抗履歴の分析を可能なものにする。
【0052】
運搬装置1900は、利用者の開けるための動作を要求するラッチ1930を備え、これにより、輸送中に運搬装置1900が不注意で開く可能性を回避する。ラッチ1930は、運搬装置1930の適所に頂部1940を保持する。頂部1940若しくはその一部は、カセット及び器官の潅流状況を観察せしめる光学的に透明な部材で構成されてもよい。運搬装置1900は、カバーが開いているか閉じているかモニタし表示するカバーオープン検出器が設けられてもよい。運搬装置1900は、種々の輸送範囲及び距離に対して利用者が運搬装置1900を構成できる種々の厚さの防護外面で構成してもよい。実施の形態では、コンパートメント1950は、チャート、検査供給、追加のバッテリ、ハンドヘルドコンピュータ装置、及び/又は、運搬装置1900と利用する他のアクセサリに関する、患者及び器官のデータを保持するようにされていてもよい。運搬装置1900は、UNOSラベル及び/又は識別子を表示し発送先情報を答える手段が備わってもよい。
【0053】
図20は、運搬装置1900の断面図を示す。運搬装置1900は、カセット65及びポンプ2010を含む。カセット65は、カセット65からチューブセット400を外すことなく、輸送装置1900への取り付け及び取り外しをすることが可能であり、このことにより器官の滅菌が維持される。運搬装置1900内のセンサは運搬装置1900内のカセット65の存在を検知でき、センサに依存するが、カセット65に統合されているバーコード若しくは無線周波数若しくは他のスマートタグから器官の識別を読み取れる。このことにより、器官の自動識別及び追跡が可能になり、保護のチェーンをモニタし制御することが助けられる。衛星利用測位システムが運搬装置1900及び/又はカセット65加えられ器官の追跡を促進するようにしてもよい。運搬装置1900は、ローカルエリアネットワークへのハードウエア接続により、若しくは輸送中の無線通信により、コンピュータネットワークに結合してもよい。この結合(インタフェース)により、潅流のパラメータ、管抵抗、並びに、器官識別と運搬装置とカセットの位置が、リアルタイムで、若しくは、将来の分析のために捕捉されて、追跡され表示され得るものとなる。
【0054】
運搬装置1900は、潅流から直径0.05〜15ミクロン若しくはそれ以上のサイズの範囲が好ましい沈殿物及び他の粒状物質を除去し、装置若しくは器官の目詰まりを防ぐフィルタ2020を含むのが好ましい。運搬装置1900はバッテリ2030も含み、該バッテリ2030は、運搬装置1900の底部に、若しくはポンプ2010の真下に、又はバッテリ2030交換し易い場所なら何処でも、配置されてもよい。バッテリ2030は、運搬装置1900の外部で若しくは運搬装置1900内で手を触れずに、再充電可能なものであってもよく、及び/又は、一度にホットスワップ可能なものであってもよい。バッテリ2030は、迅速に、完全放電することなく、再充填されるのが好ましい。運搬装置1900は、運搬装置1900の底部に、電源コード、バッテリ及び他の付属品のための追加の格納スペース2040を設けてもよい。運搬装置1900は、自動車や飛行機などの乗物に対するDC接続のための、及び/又は、AC接続のための電源ポートを含んでもよい。
【0055】
図21は、運搬装置1900のブロック図を示す。図21の運搬装置1900は、一次的な低体温潅流を与えることを意図しており、例えば、−25〜60°Cの範囲で、約0〜8°Cで、好ましくは約4°Cで、どの温度でも操作し得る。温度は、運搬の時間長などの特定の運搬条件に対して利用され適合される特定の流体を基にして、調節され得る。運搬装置1900は、冷却剤2110により冷却されるが、冷却剤2110は、氷と水でも、低体温材料でもよい。低体温材料を利用する実施形態では、器官の凝固が回避される設計で有るべきである。器官の周囲の潅流溶液の温度は、温度変換器2115によりモニタされる。運搬装置1900も、潅流から直径0.05〜15ミクロン若しくはそれ以上のサイズの範囲が好ましい沈殿物及び粒状物質を除去し、装置若しくは器官の目詰まりを防ぐフィルタ2020を含むのが好ましい。ポンプ2010の下流でフィルタ2020を利用することで、不注意なポンプくずを捕捉でき、ポンプ2010からの圧力スパイクを弱める。
【0056】
運搬装置1900内部の潅流は、ポンプ2010により制御されるが、該ポンプ2010は蠕動若しくはローラポンプであるのが好ましい。ポンプ2010は、滅菌の維持の助けとなるために潅流に接しないのが好ましい。更に、チューブセット400は、チューブ回路を開けないでポンプ2010に接続してもよい。ポンプ2010は、コンピュータ若しくはマイクロコントローラにより制御される。コンピュータは、ポンプ2010の角速度を積極的に調節し低レベルまでポンプ2010の自然パルス動作を下げることができ、このことにより、非拍動流にまでしてしまう。更にコンピュータ制御は、シヌソイドの、若しくは生理的な、又は別の合成圧力パルスプロファイルを課することができる。平均流速及び圧力は、合成圧力パルスのパルス幅調整により若しくは振幅調整により、パルス繰り返し率から独立して、形成され得る。パルスパラメータの一部又は全部に関する制御は、制御パネル1920を介して若しくはネットワークにより利用者に利用可能となり得る。パルス制御は器官特有となり得る。肝臓の場合、単体ポンプは、例えば毎分1〜3リットルで門脈に連続流を与え、例えば毎分100〜300mリットルで肝動脈に拍動性流を与える。入換えバルブをポンプコントローラに同期させることによって、2つの流れの独立圧力調整が可能になる。
【0057】
器官への潅流は流れセンサ2125によりモニタされる。圧力変換器2120は、潅流がチューブ上に配置する圧力をモニタするように置かれるのが好ましい。圧力変換器2120は、ポンプ圧力及び/又は注入圧力をモニタするのに利用され得る。圧力変換器2120は、器官注入圧力をモニタするために器官の直ぐ上流に置かれるのが好ましい。運搬装置1900は、潅流が泡トラップ2130に入る前に泡を検出する泡検出器2125が設けられてもよい。泡検出器2125のような泡検出装置は、例えば、注入ライン及び/又はポンプ出力ラインの泡を検出するのに利用され得る。泡トラップ2130は、潅流から気泡を取り除き洗浄チューブの中にバブルを排出する。バブルトラップ2130は使い捨てでもよく、チューブセット400に統合して構成されてもよい。排出潅流の泡トラップ2130は、注入バルブ2140を通過して若しくは洗浄バルブ2150を通過して連続し得る。洗浄バルブ2150は通常開いており、注入バルブは通常閉じている。洗浄バルブ2150と注入バルブ2140は、一方のバルブが開けばもう一方が閉じるというように、オン/オフで依存して動作するのが好ましい。注入バルブ2140は通常閉じているが、センサ及びモニタが全て運搬装置1900内に存在する適切な潅流パラメータを通知するならば、注入バルブ2140は開けられて器官潅流を受け入れ得ることになる。器官の適切レベルを超える潅流の高圧などの障害の発生時には、注入バルブ2140は閉鎖状態にスイッチバックし洗浄バルブ2150は開き器官の周囲の潅流溶液内に流体を流す。このことにより、電源障害やコンピュータや回路の不調の場合に、潅流を自動的に入れ換えて器官潅流を回避するフェールセーフ機構がもたらされる。P2が付されている圧力変換器2120は、コンピュータ及びソフトウエア制御に対して冗長となるように、洗浄バルブ2150及び注入バルブ2140に結線されており、このことにより圧力不調の場合に障害のメッセージをバルブに素早く伝え得る。実施の形態では、迂回される流体は、別の容器若しくはコンパートメント内に分離して集められてもよい。
【0058】
図22は、運搬装置1900の操作状態を示す。例えば、制御パネル1920に設けられた制御を利用して、利用者は潅流、アイドル、洗浄及びプライムなどの操作を選択できる。図22は、運搬装置1900の現状に依存する種々の状態を示す。ラベルのアイドル、プライム、洗浄、潅流及びエラー処理は、対応する操作の間に制御パネル1920に示されるのが好ましい運搬装置1900の状態を示す。例えば、運搬装置1900が洗浄操作にあるときは、制御パネル1920はLED表示などの洗浄操作インジケータを表示する。運搬装置1900の種々の操作に繋がる矢印は、操作状態間にて移転する運搬装置1900に生じ得る手動及び自動動作を示す。手動動作では、利用者は、例えば、ボタンを押したりノブやダイヤルを回したりすることで動作する必要がある。図22は、ボタンや他のインジケータを押すことを例として挙げており、例えば、ストップボタンを押すことにより(ストップ押下)潅流操作からアイドル操作へ移行する。アイドル操作から潅流操作へ直接移行するには、利用者は潅流を押す(潅流押下)。
【0059】
自動操作は、時間経過により、及び/又は、運搬装置1900内部の内部モニタにより、制御され得る。このような自動操作は図22に示されており、例えば、プライム操作をアイドル操作に繋げるものがそうである。洗浄ボタンが押下される前に、プライム操作が内部運搬装置プログラムパラメータに従って完了すると、運搬装置1900はアイドル操作に戻る。器官の過圧力などの障害やエラーが発生すると、別の自動操作が潅流操作の間に生じる。エラーや障害が生じると、運搬装置1900はエラー処理操作に移行し障害又はエラーの範囲や程度を判定することが可能になる。障害又はエラーが小さい、若しくは訂正可能なエラーであると判定されると、運搬装置1900は洗浄操作に移行する。運搬装置1900がシステムパラメータを調整し障害又はエラーを処理できれば、運搬装置1900は潅流に戻る(エラーリカバリ)。運搬装置1900がシステムパラメータを調整し障害又はエラーを処理できなければ、運搬装置1900はアイドル操作に戻る。検出されたエラーや障害が重大なものであると判定されれば、運搬装置1900は直接アイドル操作に移行してもよい。
【0060】
図23は、運搬装置1900の別の断面図を示す。運搬装置1900は、金属、好ましくはプラスチック、又は、貫通や衝撃に耐える程十分に強い合成樹脂で構成される外部封入2310を有してもよい。運搬装置1900は、例えばガラスウールや発泡ポリスチレンで形成される、遮断材2320、好ましくは断熱材を含む。遮断材2320は、約2インチ厚さなどの、1〜3インチが好ましいのであるが、0.5〜5インチ又はそれ以上の厚さの範囲の種々の厚さとなり得る。運搬装置1900は、冷却剤2110により冷却され、冷却剤2110は、氷と水でも、低体温材料でもよい。低体温材料を利用する実施形態では、器官の凝固が回避される設計で有るべきである。氷と水の混合物は、約1対1の初期混合であるのが好ましいが、しかしながら、実施形態では、氷と水溶液は凝固固体となってもよい。運搬装置1900は、種々の量の冷却剤を保持するように構成され、その量は10〜21リットルまでが好ましい。氷と水溶液は廉価であり、器官を凍らせる程冷たくはならないので、好ましい。冷却剤2110は、交換しないで、最短でも6〜21時間継続するのが好ましく、最短で30〜50時間継続するのがより好ましい。冷却剤2110のレベルは、運搬装置1900の透明領域を介して確認されてもよく、センサにより自動的に検出してモニタされてもよい。冷却剤2110は、潅流を停止することなく、若しくは、運搬装置1900からカセット65を取り外すことなく、交換され得る。冷却剤2110は、運搬装置1900の防水コンパートメント2115内で維持される。コンパートメント2115は、運搬装置1900が傾いたり返されたりしたときに、冷却剤2110の損失を防ぐ。熱は潅流貯蔵部及びカセット65の壁から冷却剤2110の中に伝導するが、所望の温度範囲内に制御され得る。電源の損失や電気やコンピュータの不調の場合に運搬装置1900は自動的に冷却保存に戻るのだから、冷却剤2110はフェールセーフの冷却機構といえる。運搬装置1900は、潅流の温度を上げるヒータが設けられてもよい。
【0061】
運搬装置1900は、バッテリにより、若しくはプラグ2330を介して与えられる電力により、動力を得ることができる。電子モジュール2355は、運搬装置1900内に設けられる。電子モジュール2355は、排出される空気の対流2370により冷却され、更にファンにより冷却されてもよい。電子モジュール2355は潅流チューブから離れて配置されるのが好ましく、このことにより、潅流が電子モジュール2355を濡らすことが防がれ、電子モジュール2355からの余熱が潅流に加えられることが回避される。運搬装置1900は、潅流2340を器官2350に供給するために圧力を潅流チューブ2360に供給するポンプ2010を有する。運搬装置1900は、腎臓、心臓、小腸及び肺などの種々の器官を潅流するのに利用され得る。運搬装置1900及びカセット65は、例えば3〜5リットルまでの、種々の量の潅流を収容し得る。低体温潅流の約1リットルが、器官2350を潅流するのに利用されるのが好ましい。器官2350は、腎臓、心臓、小腸及び肺などを含む種々の器官であってよく、これらに限定されるものではない。
【0062】
カセット65及び運搬装置1900は、効率的な熱移動が可能なように、適合し結び合うように構成されるのが好ましい。カセット65お酔い運搬装置1900の形状的要素は、カセット65が運搬装置1900内部に配置されると各要素が輸送にむけて安定したものになるというように構成されるのが好ましい。
【0063】
図24は、全体のコミュニケーションで助力することが促進され得る種々のデータ構造及び情報連絡と、器官移植の前、最中及び後に有用なデータ移動を示す。潅流装置、運搬装置、カセット、及び器官診断装置は、器官、即ち保存され若しくは運搬される器官の、位置及び治療及び診断パラメータの遠隔管理、追跡及びモニタを可能にするように、ネットワーク化されてもよい。情報システムは、器官運搬及び保存の履歴データを集め、ドナーとレシピエントに関する病院とUNOSによるクロスリファレンス、及び/又は移植が何故不適切であるかに関する情報を提供するように、利用され得る。システムは、潅流パラメータ及び移植結果の迅速なリサーチを可能にする結果データを提供してもよい。例えば、ドナーに係る情報は、器官がドナーから再生された地点で入力されてもよい。情報は、器官の状態及び位置をモニタする診断若しくは運搬装置から、直接に再生されてもよい。種々のタイプの情報は、副次レコード若しくは下位ディレクトリにグループ化されデータ管理及び転送での助けとなる。全ての副次レコードは、組み合わされて全体の移植レコードを形成し、追跡及びモニタの目的のために医者、科学者若しくはそれ以上の他の機関に散布されて検索され得るものとなる。
【0064】
運搬装置1900の好適な実施形態は、潅流プロセスデータ及び運搬装置1900の出来事の多く若しくは全てを、内部データベースの中に自動的に記録できる。個々のカセット65のための無線周波数若しくはバーコードラベルタグ等により、運搬装置1900は個々の器官特有のデータを参照できる。運搬装置1900がドックポートに到達すると、運搬装置1900はLANを介してメインデータベースコンピュータにデータをアップロードできる。運搬装置1900は、運搬装置1900がLANに接続するときはいつも、リアルタイムの状況も提供できる。運搬装置1900は、運搬の間にリアルタイムデータ転送を提供する無線通信セットアップが設けられてもよい。潅流装置1はLANに接続でき、潅流装置は一般的に静止しているので、データアップロードが連続的に且つリアルタイムで発生する。データはUNOSデータと相互参照され、このことにより、器官識別、ドナー状況、ドナーロジスティックス、レシピエントロジスティックス、及びレシピエント結果に関するUNOSデータを利用することになる。データはインタネットで表示・アクセスされ、このことにより、どの位置からもモニタを促進することになる。
【0065】
潅流、診断及び/又は運搬装置内部では、器官溶液は、図2に示すような、器官チャンバ40と熱転送連絡する第2の熱電ユニットにより、所定の温度まで冷却されるのが好ましい。一方で、器官潅流デバイスが運搬される場合、貯蔵部10内部の医療用流体が、氷と水溶液、又は、同時係属出願第09/039443号に開示される低体温流体熱交換装置を利用して、冷却され得る。該出願の内容は参照の上で本明細書に援用される。器官チャンバ内部の温度センサT2は器官の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、マイクロプロセッサ150は熱電ユニット30bを調整して所望の器官温度を維持し、及び/又は、手動調節のために制御及び表示エリア5cに温度を表示する。
【0066】
医療用流体は、チューブ50a、50b、50cを介してバッグ15aから、器官チャンバ40内に配置される器官60に直接、又は、開口バルブLV4若しくはLV3夫々によりチューブ50d、50e、50fを介してバッグ15bから、供給され得る。従来の医療用流体バッグ及びチューブが利用されてもよい。全てのチューブは、使い捨てであり、交換容易であり、取り替え可能であるのが好ましい。更に、全てのチューブは、好ましくは利用される医療用流体と適合性のある物質で、より好ましくは非トロンボゲン部材で、形成される、若しくはコートされる。チューブ50cの端は、器官60内に挿入される。チューブは、従来の方法、例えば縫合で、器官と繋がれてもよい。チューブは器官への接続を促進するリップを含んでもよい。一方、上述のカニューラ1820は、器官チェア1800と繋がって利用されてもよいし、繋がらずに利用されてもよい。しかしながら、特定の方法及び接続は、潅流される器官のタイプに依存する。
【0067】
マイクロプロセッサ150は、圧力センサP1からの信号に応じて圧力源20を制御し、器官60内に供給される医療用流体の圧力を制御する。マイクロプロセッサ150は、好ましくは手動調整のために、制御及び表示エリア5aに圧力を表示してもよい。流体流モニタF1がチューブ50c上に設けられ、器官60に入る医療用流体の流れをモニタし、例えば器官にリークが存するか否かを示すようにしてもよい。
【0068】
一方、医療用流体は、貯蔵タンク17からチューブ51を介して、約5〜40mmHgの圧力ヘッドを有するのが好ましい中間タンク70に供給され得る。そのあと医療用流体は、バルブLV6を動かすことにより、チューブ50cに沿って中間タンク70から器官60へ、重力により、好ましくは圧力により、供給される。レベルセンサ71が、圧力ヘッドを維持するために、中間タンク70内に設けられてもよい。複数の器官チャンバ40及び器官60が与えられると、器官60は、図2に示すものの2倍の適切なチューブを利用して、並列して貯蔵部10に接続される。例えば、図21を参照されたい。システム障害の場合でも過圧力を回避するように構成された空気式加圧及び重力供給流体ポンプを利用することによって、器官の一般的な組織損傷、及び器官の管内皮ライニングの洗い流し若しくは損傷を、減少又は回避することになる。従って、例えば、蠕動(ローラ)ポンプから器官へ流れを注入することにより、低体温潅流(重力、若しくは圧力供給流)若しくは蠕動潅流で、このシステムの器官潅流が実施され得る。
【0069】
泡検出システムが潅流内で泡を検知するのに利用される。空気センサ及びセンサボードが利用されるのが好ましい。センサの出力が、オープンソレノイドバルブなどの、デバブラシステムを動作し、器官注入の前に潅流から泡を除く。このシステムのセンサ及び検出器の全てに関して、泡検出器は、特定のパラメータ若しくはシステムの特性に実効的に基づくポイントならどこでもシステム内に配置されてもよい。例えば、泡検出器及びデバブラシステム(BD)は、図1に示すように、カムバルブ205と圧力センサPIの間に配置されてもよい。
【0070】
ステッピングモータ/カムバルブ205、若しくはロータリスクリュバルブ等の他の適切な種々のバルブが、器官60に対して医療用流体を脈動性的に供給するためにチューブ50c上に設けられ、このことにより、器官60内へ供給される医療用流体の圧力を減少させ、及び/又は、潅流圧力が所定量を超えた場合に器官60内への医療用流体の流れを停止させる。一方、例えば、バルブ、若しくは一連のバルブを開け閉めすることにより、過剰圧力などの障害の発生時に流体流が迂回する流れ迂回器若しくは入れ換えラインが、潅流装置内に設けられてもよい。ステッピングモータ/カムバルブの特定の実施形態は、図13A〜図13B、図14A〜図14Fに示される。図13A〜図13Bは、ステッピングモータ/回転タイプのカムバルブを示す。
【0071】
図13Aは、装置の頂面図である。チューブ、例えば、チューブ50cは、支持体203と200の間に挟まれる。カム200は、ロッド201によりステッピングモータ202に接続する。図13Bは装置の側面図である。点線はカム200の回転スパンを示す。図13Bでは、カム200は、非閉塞位置にある。180°回転すると、カム200は、間の閉塞角度を変更して、チューブ50cを全体的に閉塞する。このステッピングモータ/カムバルブは、例えば、図14A−図14Fに示す実施形態において、比較的速いものである。しかしながら、強いステッピングモータを必要とする。
【0072】
図14A〜図14Fは、本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブ210を開示する。図14Aは装置の側面図であり、図14Cは帳面図である。チューブ、例えば、チューブ50cは、カム220と支持体223の間に挟まれる。カム200は、支持体221a−221d及びヘリカルスクリュ225により、ステッピングモータ202に接続し、支持体221a−221d及びヘリカルスクリュ225はプレート222aを介してステッピングモータ222に接続する。図14Bは前面図の支持体221aとプレート222aを示す。図14Dに示すように、支持体221dがヘリカルスクリュ224の中心の左にある場合、チューブ50cは閉鎖されない。しかしながら、ヘリカルスクリュ225はステッピングモータ222により回転するので、支持体221dは(図14D〜図14Fにおいて)左に移動し、カム220がチューブ50cを部分的に若しくは全体的に閉塞する位置に向かう。かような装置は図13A〜図13Bの装置よりもより遅いが、よりエネルギ効率がよい。
【0073】
器官60から放出されバッグ69の底部(カセット65若しくは器官チャンバ40)に集まる医療用流体は、ポンプ80によりチューブ81を介してポンプアウトされ、濾過のためフィルタユニット82を通過し器官溶液に戻されるか、若しくは、ポンプ90によりポンプアウトされ、チューブ91を介して循環する。ポンプ80、90は従来のローラポンプ若しくは蠕動ポンプが好ましい。しかしながら、他のタイプのポンプも適切である。
【0074】
図25は、ポンプとパルスコントローラ2500、及び、図1に示すような潅流装置を伴うポンプとパルスコントローラの相互作用の、簡略化された概要図を示す。ポンプとパルスコントローラ2500は、圧力センサPからの圧力センサデータインプット2510と、タコメータデータインプット2520を受ける。タコメータは、能動波の位相角度を設定するのに利用される。ポンプとパルスコントローラ2500は、この情報をモータ駆動出力2530に変換し、このモータ駆動出力はポンプ2540を動かす。図25Aは、ポンプとパルスコントローラ2500が供給できる種々の操作モードと、ポンプとパルスコントローラ2500が潅流からの圧力パルス波をいかに除去するかと、ポンプとパルスコントローラ2500が一定の圧力パルス率を維持しつつ潅流率をいかに調整するかを、示す。
【0075】
一定速度で駆動される蠕動ポンプは、接続するチューブに一定の圧力波を与える。図25Aは、第1の操作モードにおいて、蠕動ポンプに加えられる一定の駆動速度から生じる波形を示す。能動連続と称する、第2の操作モードは、圧力パルス波が、ポンプの圧力波と対向するモータ駆動波を加えることによって、どのように消去されるか、若しくは相殺されるかを示す。能動波形振幅調整と称する、第3の操作モードでは、ポンプ圧力パルス波は、モータ駆動波によりキャンセルされ、選択された波が、もとの圧力パルス波振幅と比べて新しい振幅で加えられる。能動波形パルス幅調整と称する第4の操作モードでは、ポンプ圧力パルス波は、モータ駆動波によりキャンセルされ、選択された波が、もとの圧力パルス波幅と比べて新しいパルス幅で加えられる。更なる操作モードでは、新しい周波数波をキャンセルされた波に加えることによって、周波数が調整され得る。
【0076】
マイクロプロセッサ150と連絡するレベルセンサL2(図3参照)は、流出する医療用流体の所定のレベルが器官チャンバ40内部で維持されることを保証する。図2に示すように、チューブ91内に配置される温度センサT1は、チューブ91に沿って器官溶液からポンプアウトされる医療用流体の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、マイクロプロセッサ150は同じものをモニタする。チューブ91に沿って配置される圧力センサP2は、内部圧力をマイクロプロセッサ150に中継し、該マイクロプロセッサ150は、チューブ91内の流体圧力が所定の限界を超えるとシステムをシャットダウンし、若しくは、例えばフィルタなどをきれいにするためにシステムがシャットダウンされるべきであることをオペレータに通知するためにアラームを作動する。
【0077】
医療用流体がチューブ91に沿ってポンプ送りされる際、フィルタユニット95(例えば、25μ、8μ、2μ、0.8μ、0.2μ及び/又は0.1μフィルタ)を通過するのが好ましい。フィルタユニットは、COスクラバ/O膜100及び、例えば、JOSTRA(登録商標)人工肺などの人工肺110である。COスクラバ/O膜100は、親水性(例えば、Hypol)コートを封入した疎水性多孔性膜であるのが好ましい。真空源(図示せず)は、バルブVV1の作動によって、親水性コートに対向する側面に低真空を加えるのに利用される。約100mmHgの静水圧が、膜を十分に通過させるには好ましい。機械的レリーフバルブ(図示せず)により、圧力差がこのレベルに達するのが、防がれる。固定化されペゴレート(pegolated)された炭化アンヒドラーゼは親水性コート内に含まれ得る。このことにより、重炭酸塩は二酸化炭素に変化され真空排出により取り除かれる。しかしながら、重炭酸塩を排除できる腎臓などの器官では、特殊な場合の他は、このことは不必要である。
【0078】
人工肺110は、親水性にコートされた低有孔酸素浸透膜を含むのが好ましい2段階の人工肺であるのが好ましい。医療用流体の一部は、生存力センサV1が中に配置されるチューブ111沿いに人工肺の回りを迂回し、該センサは、器官抵抗(圧力/流れ)、pH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、ラクタート、グルコース、塩基過剰、及び、器官生存力を示すイオン化カルシウムレベルなどの、流体特性を感知する。生存力センサV1はマイクロプロセッサ150と繋がり、自動的に若しくは手動により器官の生存力を評価させる。2つの気体、好ましくは、100%酸素と95%/5%酸素/二酸化炭素のうちの、一つが、迂回する医療用流体のpHレベルに依存して膜の対向側面に配置される。一方、器官チャンバ40から、溶液に戻る前に生存力センサを通過させるように流出医療用流体をポンプアウトする別のポンプ(図示せず)を設けてもよく、生存力センサがポンプ80を利用するチューブ81に配置されてもよい。実施の形態では、流体特性は、図28〜31に示される独立の診断装置及び/又はアナライザ内で、分析され得る。
【0079】
器官抵抗(圧力/流れ)、pH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、ラクタート、グルコース、塩基過剰、及び、イオン化カルシウムレベルなどの、感知された流体特性は、器官の生存力、及び/又は、加えられた対生物作用若しくは他の試験物質の効果を分析し判定するのに利用される。特性は個別に分析され得、複数の特性は種々のファクタの効果を判定するために分析され得る。特性は器官の静脈流出を捕捉しその化学特性を潅流流入と比較することにより、計測され得る。静脈流出が直接捕捉されて計測され得るか、若しくは、器官溶液が計測されて周期的比較のための流体特性の概略を提供し得る。
【0080】
実施の形態では、器官の生存力の指標は、管抵抗、pHなどの上述の種々の計測されるファクタを考慮に入れて、設けられる。指標は器官特有のものでもよいし、種々の器官に適用可能なものでもよい。指標は、モニタされるパラメータを診断概要に集め、その診断概要は、器官治療判断を為し器官を移植するか若しくはそれを別途利用するかを判定するために利用され得る。指標は自動的に生成され医師に与えられることが可能である。指標は、潅流装置、運搬装置、カセット及び/又は器官診断装置への接続を介してコンピュータ生成されることが好ましい。ドナー特有の情報などの更なる情報は、潅流装置、運搬装置、カセット及び/又は器官診断装置などのサイトで単一のコンピュータに入力されてもよいし、リモートコンピュータ内に入力され潅流装置にリンクされてもよい。実施の形態では、指標は、迅速な比較、リモート分析及びデータ格納のために、LANやインタネットなどのコンピュータネットワークにおいて利用可能であってもよい。
【0081】
器官の生存力の指標は、管抵抗、並びに、pH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、ラクタート、グルコース、塩基過剰、及び、イオン化カルシウムレベルに基づく潅流化学特性などの個々の特性に対する、計測値及び通常範囲となる。例えば、約5°Cでは、通常のpHは7.00〜8.00であればよく、7.25〜7.75が好ましく、更に好ましくは7.50〜7.60であり、塩基過剰は、−10〜−40であればよく、−15〜−30が好ましく、更に好ましくは−20〜−25である。通常範囲外の計測値は、例えばアスタリスクや他の表示で視覚上指示可能であってもよく、聴覚上指示可能であってもよく、若しくは機械的認識信号により指示可能であってもよい。代謝の安定性、グルコースの消費、ラクトースの創造及び酸素消費などの、器官の代謝の特性により、医師の病識は実効的なものになる。
【0082】
指標は、年齢、性別、血液型及び他の特徴などの識別情報、器官収集データ・時間、高温虚血時間、低体温虚血時間及び管抵抗などの器官情報、流速、ポンプの操作された経過時間及び圧力などの装置情報、並びに、UNOS番号及び担当医師などの他の識別子も、与えることができる。指標は更に、所望されれば温度訂正も為し得る。
【0083】
図2、及び、潅流装置内の医療用流体、即ち潅流の流れ、及び/又は処理に戻り、ポンプ90、フィルタユニット95、COスクラバ/O膜100、及び/又は人工肺110に代わりとして、モジュラ結合ポンプ、濾過、酸素化及び/又はデバブラ装置が、同時出願された同時係属出願第09/039318号で詳細に説明されているように、利用されてもよい。該出願は参照の上本明細書に援用される。図4〜図10に示すように、装置5001は、積み重ね自在のモジュールで形成される。装置5001は、流体を酸素化し、濾過し、及び/又はデバブルするのみならず、システムを経由して流体をポンプすることができる。モジュールは夫々、複数の積み重ね自在の支持部材で形成され、所望の部品を含むコンパクトな装置を形成するように容易に組み合わせられ得る。濾過、酸素化、及び/又は、ガス抜きする膜は支持部材の間に配置される。
【0084】
図4〜図8は、図9〜図10で示される結合されたポンプ、濾過、酸素化及びデバブラ装置5001などの、結合されたポンプ、濾過、酸素化及び/又はデバブラ装置を形成するように積み重ねられ得る種々のモジュールを示す。これらの図面に示すように、結合されたポンプ、濾過、酸素化及びデバブラ装置5001は、一つ又は複数のモジュールを形成すべくグループ化自在の複数の積み重ね自在の支持部材で形成されるのが好ましい。
【0085】
特定の利用者の要求に依存して、濾過、酸素化、及び/又はガス抜き膜は、複数の富重ね自在の支持部材の間に挟まれる。濾過、酸素化、及び/又はガス抜き膜は、例えば、エトキシル化などの商業的に知られた方法で親水的に移植された、商業的に入手可能なマクロ細網疎水性膜であるのが好ましい。該膜は、タンパク質の欠乏を防ぎ、例えば血液との生体適合性を高め、凝固傾向を減少させるものである。濾過膜は、ずっと親水的に移植されるものであるのが好ましく、好ましくは流体の細胞若しくは分子要素を取り除かずに、流体内のくずを濾過するように、15〜35μ、より好ましくは20〜30μの範囲内の有孔性(孔サイズ)を有するのが好ましい。ガス抜き膜及び酸素化膜は、液体−気体境界を維持するように処理される親水性面である。ガス抜き膜及び酸素化膜は、好ましくは15μ以下の有孔性、より好ましくは10μ以下の有孔性を有する。
【0086】
モジュールは、図4の分解図に示す第1のポンプモジュール5010、図5の分解図に示す濾過モジュール5020、図6の分解図に示す酸素化モジュール5030、図7の分解図に示すデバブラモジュール5040、及び、図8の分解図に示す第2のポンプモジュール5050を、含み得る。ポンプモジュールは夫々ポンプ流体源に接続し、手動で若しくはマイクロプロセッサにより作動される。支持部材は同様の形状であるのが好ましい。例えば、支持部材は夫々プレート形状でもよい。しかしながら、他の形状も適切であり得る。図10に示すように、支持部材は、ねじ若しくはボルト5065により、取り外し自在に接続されるのが好ましい。しかしながら、装置を組み立てる他の留め具であってもよい。
【0087】
第1のポンプモジュール5010は、第1の(端部)支持部材5011、カットアウト中央エリア5012を伴う第2の支持部材5012、隔膜5013及び第3の支持部材5014を含むのが好ましい。このモジュールの、及び、他のモジュールの各々の、支持部材は、薄く平坦(プレート状)であるのが好ましく、十分な堅固さと好ましくは生体適合性とを備える適切な材料で形成されてもよい。例えば、種々の樹脂や金属であってもよい。アクリル/ポリカーボネイト樹脂は、好適な材料である。
【0088】
第1の(端部)支持部材5011は、個体でありポンプモジュール5010を支持することが好ましい。第1の(端部)支持部材5011は、空気などのポンプ流体を受けるためのドーム状のキャビティを含むことが好ましい。チューブ5011tは、ポンプ流体がポンプモジュール5010に入れるように、設けられる。隔膜5013は、適度に弾力があり好ましくは生体適合性のある材料、好ましくはポリウレタンで形成されてもよい。第3の支持部材5014は、ドーム状の流体キャビティ5014d、及び、例えば、血液若しくは人工の潅流をポンプ5010のキャビティ5014dの中に受けるためのチューブ5014tを、含む。第1のポンプモジュール、若しくは、他のモジュールのどれでも、センサなどのためのポート5014pを有してもよい。血液適合性のある逆流防止バルブは、ポンプモジュール5010を通過して一方向に流れを為すように機能する。
【0089】
濾過モジュール5020は、キャビティ5014dの境界を形成する濾過膜5021m、カットアウト中央エリア5022cを伴う第1の支持部材5022、ガス抜き膜5022m、及び第2と第3の支持部材5023、5024を含むのが好ましい。濾過膜5021mは、例えば血液との生体適合性を高め、凝固傾向を減少させるように変更された25μマクロ細網濾過膜であるのが好ましい。ガス抜き膜5022mは、生体適合性を高めるように変更された、CO除去面のための、少なくとも100mmHgの逆流水圧差を伴う0.2μ〜3μのマクロ細網ガス抜き膜であるのが好ましい。
【0090】
第1の支持部材5022は、流体が濾過膜5021を通過しガス抜き膜5022mを通った後に、流体を酸素化モジュール30、若しくは可能であれば別の隣接のモジュールの中に進めるためのチューブ5022tを含む。濾過モジュール5020の第2の支持膜5023は、ドーム状のキャビティ5023dと、真空をキャビティ5023dにもたらしガス抜き膜5022mを介して流体から気体を抜き出すためのチューブ5023tを含む。第4の支持部材5024は固体であり、濾過膜5020のための支持をなすのが好ましい。第3の支持部材は、真空が利用され以下に説明するように酸素化モジュール5030のガス抜き膜5031mを介して流体から気体を抜き出すためのチューブ5024tを含んでもよい。濾過モジュール5020、若しくは他のどのモジュールも、センサなどのためのポート5023pを有してもよい。
【0091】
酸素化モジュール5030は、ガス抜き膜5031m、第1の支持部材5032、濾過膜5033m、酸素化膜5034m、カットアウト中央エリア5034cを伴う第2の支持部材5034、及び第3と第4の支持部材5035、5036を含む。ガス抜き膜5031mは、生体適合性を高めるように変更された、少なくとも100mmHg面の逆流水圧差を伴う0.2μ〜3μのマクロ細網ガス抜き膜であるのが好ましい。
【0092】
第1の支持部材5032は、ドーム状の流体キャビティ5023dを含む。ドーム状の流体キャビティ5023dの表面は、流体の酸素化及びガス抜きを高める、流体のための曲がりくねった経路を形成するのが好ましい。濾過膜5033mは、生体適合性を高めるように変更された、25μマクロ細網濾過膜であるのが好ましい。酸素化膜5034mは、生体適合性を高めるように変更された、少なくとも100mmHg面の逆流水圧差を伴う0.2μ〜1μのマクロ細網酸素化膜であるのが好ましい。
【0093】
第2の支持部材5034は、酸素化モジュール5030の流体をデバブラモジュール5040、若しくは可能であれば別の隣接のモジュールの中に進めるためのチューブ5034tを含む。第3の支持部材5035は、ドーム状のキャビティ5035dと、外部源からの酸素を受けるためのチューブ5035tを含む。第4の支持部材5036は、個体であり酸素化モジュール5030のための支持をなすのが好ましい。
【0094】
デバブラモジュール5040は、第1の支持部材5041、濾過膜5042m、ガス抜き膜5043m、カットアウト中央エリア5043cを伴う第2の支持部材5043、及び第3の支持部材5044を含む。第1の支持部材5041は、ドーム状の流体キャビティ5041dを有する。
【0095】
濾過膜5042mは、生体適合性を高めるように変更された25μのマクロ細網濾過膜であるのが好ましい。ガス抜き膜5043mは、生体適合性を高めるように変更された、少なくとも100mmHg面の逆流水圧差を伴う0.2μ〜3μのマクロ細網ガス抜き膜であるのが好ましい。第2の支持部材5043は、デバブラモジュール5040の流体をポンプモジュール5050、若しくは可能であれば別の隣接のモジュールの中に進めるためのチューブ5043tを含む。第3の支持部材5044は、ドーム状のキャビティ5044dと、真空が利用されガス抜き膜5043mを介して流体から気体を抜き出すためのチューブ5044tを含んでもよい。
【0096】
第2のポンプモジュール5050は、第1のポンプモジュール5010に対応し得る。第2のポンプモジュール5050は、第1の支持部材5051、カットアウト中央エリア5053cを伴う第2の支持部材5053、及び第3の(端部)支持部材5054を含むのが好ましい。第1の支持部材5051は、ドーム状のキャビティ5051dと、流体をポンプモジュールから出て行かせるチューブ5051tを含んでもよい。隔膜5052はポリウレタン嚢であるのが好ましい。
【0097】
第3の(端部)支持片部材5054は固定であり、ポンプモジュール5050のための支持を為すのが好ましい。支持部材5054は、ポンプ流体を受けるためのドーム状のキャビティ(図示せず。)を含むのが好ましい。チューブ5054aは、空気などのポンプ流体がポンプモジュール5050の中に入れるように設けられている。好ましくは、血液適合性のある逆流防止バルブが、ポンプモジュール5050を通過して一方向に流れを為すように機能する。
【0098】
操作時には、血液及び/又は他の医療用流体は、チューブ5014tを通過して第1のポンプモジュール5010に入り込み、濾過膜5021mを介してガス抜き膜5022mに沿って通る。弱い真空が、チューブ5023tを介して加えられ、ガス抜き膜5022mを介して気体を抜き出す。次に、血液及び/又は医療用流体は、内部チューブ5022tを介して酸素化モジュール5030の中に移動し、ガス抜き膜5031mに沿い、濾過膜5033mを介して酸素化膜5034mに沿って通る。酸素は、チューブ5035tを介して酸素化モジュール5030の第3の支持部材のドーム状のキャビティ5035dの中に受けられ、血液及び/又は他の医療用流体が酸素化膜5034mの面に沿って移動する際に、酸素化膜5034mを介して血液及び/又は他の医療用流体の中に通りゆく。
【0099】
酸素化モジュール5030により酸素化された後、血液及び/又は他の医療用流体は、内部チューブ5034tを介してデバブラモジュール5040の中に移動する。血液及び/又は他の医療用流体は、濾過膜5042mを介してガス抜き膜5043mに沿って通りゆく。弱い真空が、チューブ5044tを介して加えられ、ガス抜き膜5043mを介して血液及び/又は他の医療用流体から気体を抜き出す。ガス抜きモジュール5040を力通過した後、血液及び/又は他の医療用流体は、チューブ5041tを介して第2のポンプモジュール5050の中に移動し、チューブ5051tを介して第2のポンプモジュール5050から出て行く。
【0100】
人工肺110を通過した後、又は、結合されたポンプ、酸素化、濾過及び/又はガス抜き装置5001を通過すると、再循環の医療用流体は、チューブ92a若しくは92b上の夫々のバルブLV2及びLV5を作動することによりチューブ92a若しくは92bの夫々に沿って利用中ではない貯蔵部15a若しくは15bに向けられるか、又は、バルブLV1を作動することによって器官溶液を補うために器官チャンバ40の中に向けられる。圧力センサP3、P4は、利用中ではないバッグ15a若しくは15bに戻される医療用流体の圧力をモニタする。機械的安全バルブMV2は、流れの緊急手動停止が行えるようにチューブ91に設けられる。更に、チューブ96及び手動バルブMV1は、装置が、利用後排水され、器官を出て行く潅流が再循環される(再循環モード)のではなく廃棄されるように向けられる単一パスモードで操作するように、なされている。
【0101】
真空バルブVV2を介して真空で連絡する重炭酸塩貯蔵部130、シリンジポンプ131及びチューブ132、並びに排出回収ユニット120、並びに、チューブ121a、122aは、夫々隣接して配置され器官チャンバと連絡するようにされている。
【0102】
本発明は、肝臓などの複雑な脈管構造を伴う器官に対して適合する潅流装置のために設けられる。例として肝臓を利用して、図26は潅流装置2600を示す。潅流装置2600は、好ましくはローラポンプ若しくは蠕動ポンプである単体のポンプ2610を有する。チューブは、例えば、肝臓の門脈側に向かって進む3本のチューブ(門脈チューブ2625)と肝臓の肝臓動脈側に向かって進む1本のチューブ(肝臓動脈チューブ2626)のように、2つ又はそれ以上の方向に分岐する。潅流装置2600の門脈側は多くのチューブがある。なぜならば、肝臓の門脈側は、動脈側の3〜10倍の流れを利用するからである。図27は、ポンプと、門脈チューブ2625と動脈チューブ2626に分岐するチューブの斜視図を示す。
【0103】
潅流装置2600の門脈側と動脈側の両方は、フィルタ2630、泡トラップ2640、圧力変換器2650、温度変換器2660、及び流れセンサ2670を有するのが好ましい。更なる温度センサ2660が流体戻りチューブ2620内にあってもよい。器官は、上述のように、氷と水溶液2680により、若しくは低体温流体により、冷却されてもよい。低体温流体を利用する実施の形態では、器官の凝固(凍結)は回避される設計であるべきである。
【0104】
複数のポンプが用いられてもよい。しかしながら、多数のポンプを利用すると、一般的には装置のサイズとコストが増えてしまう。両方の管脈構造に対して単一のポンプ2610を利用すると、肝臓を潅流するのに利用され得る種々のモードが提供される。個々の泡トラップ2640の後、チューブは2つの方向に分岐する。肝動脈側では、肝臓注入バルブ2685は肝臓の肝動脈側への流れを制御し、肝動脈洗浄バルブ2686は器官溶液の中への流れを制御する。門脈側では、門脈注入バルブ2695は肝臓の門脈側への流れを制御し、門脈洗浄バルブ2696は器官溶液の中への流れを制御する。好ましくは、注入バルブと洗浄バルブの夫々のペアは、オン/オフ仕様で操作される。言い替えれば、例えば、門脈側が注入に設定されると、門脈洗浄バルブ2696バルブが閉じられる。以下のテーブルは、潅流装置のための操作の種々のモードを示す。
【0105】
[表1]

【0106】
上記テーブルに示される操作のモードは、肝臓に注入するためのオプションを示す。第1のモード、「門脈のみ」では、肝臓の門脈側が注入される。従って、門脈バルブは注入するように設定されるが、このことは、門脈注入バルブ2695が開けられ門脈洗浄バルブ2696が閉じられることを意味する。また、「門脈のみ」のモードでは、肝動脈注入バルブ2685が閉じられ肝動脈洗浄バルブ2686が開けられる。「門脈のみ」のモードでは、門脈圧力が優勢であり、このことは、圧力が門脈側の圧力変換器2650により制御されることを意味する。このモードでは、肝動脈注入は無い。
【0107】
「門脈優先」モードでは、門脈バルブ及び肝動脈バルブは注入に設定される。門脈圧力が優勢である。従って、肝動脈側は門脈側に依存する。「交互」モードでは、門脈バルブは注入に設定され、肝動脈バルブは注入設定と洗浄設定の間をスイッチする。「交互」モードでは、肝動脈バルブが注入に設定されると、肝動脈側は優勢圧力となる。肝動脈バルブが洗浄に設定されると、門脈側は圧力優勢となる。このタイプの交互の圧力制御は、門脈側を波状流とし、肝動脈側をパルス状流とする。
【0108】
本発明は、図28に示される器官診断システム2800も提示する。器官診断システム2800は、コンピュータ2810及びアナライザ2820を有する。図29に示す器官評価器具2830は、コンピュータ2810及びアナライザ2820の両方に接続される。器官診断システム2800は、システム及び器官の状況を示す適切な表示部が備わるのが好ましい。器官評価器具2830は潅流チャンバ2840及び器官チャンバ2850を有する。転送ライン2860はアナライザ2820と器官評価器具2830を繋げる。器官診断システム2800は器官の分析を提示し、潅流装置1及び/又は運搬装置1900から移動可能であるのが好ましい滅菌されたカセット内で、迅速に器官生存力指標を生成する。器官生存力指標は、流れ及び温度のプログラムされた単一通過の潅流、並びにインライン自動分析により、生成されるのが好ましい。分析は複数通過システムで為され得る。複数通過システムは、器官を維持し評価しつつ、分析のための流れを再循環する。流れはバルブ(図示せず)により制御され、アナライザ2820に到達する前に、システムの始めに戻り再循環してもよい。
【0109】
単一通過システムの有用な形態は、限定数のセンサで構成されてもよく、その場合分析をするための十分な潅流のみ必要とする。単一通過の潅流は、公知の且つ所定の化学的性質を有する潅流を伴う器官流入が為され得る。この場合、血液や合成血液坦体やそれらの組み合わせなどの、配布される潅流のタイプ及び内容の融通性が増す。この潅流のタイプ及び内容は、処理される特定の分析に対して調整され変更され得るものである。
【0110】
図29は、器官評価器具2830の斜視図を示す。器官評価器具2830は、潅流チャンバ2840及び器官チャンバ2850を有する。器官チャンバ2850は防護され、取り外し自在である、若しくはヒンジされ得る蓋2910を有するのが好ましい。器官チャンバ2850は、好ましくは、カセット65を開けることなく、若しくはカセット65の内部の滅菌を危険に曝すことなく、カセット65を受けるように構成されている。カセット65及び器官チャンバ2850は、効率的な熱伝達が可能となるように、適合して一致すべく構成されるのが好ましい。カセット65及び器官チャンバ2850の形状的要素は、カセット65が器官チャンバ2850内部に配置されるときには部品が分析のために固定しているように、構成されるのが好ましい。ポート2920は転送ライン2860と接続するように構成されてもよい。
【0111】
図30は、器官診断システム2800の単一通過の流体システムを示す。始めの潅流流体はチャンバ3010の中に含まれる。チャンバ3010は、加熱及び冷却システムにより温度制御されるのが好ましい。システム内部の流体流は、流れセンサ3020によりモニタされ、ピンチバルブ3030とポンプ3040に信号を出すことにより制御される。流体システムは、泡トラップ3050、圧力変換器3060及び温度変換器3070も備える。熱交換器3080は、温度制御を行い、器官潅流に先立ちシステム内部の流体に対して加熱及び冷却を行う。器官はカセット65内で潅流される。器官溶液内の流体が収集され、即ち静脈潅流が捕捉され、分析されてもよい。流体は、収集され転送ライン2860を通過し、アナライザ2820に到る。転送ライン2860は、独立の加熱及び冷却ユニットも設けられる。流体が分析されると、汚物容器3090に収集され得る。
【0112】
図31は、器官診断システム2800のための論理回路を示す。コンピュータは制御パラメータを与え、アナライザから結果及びデータを受ける。論理回路は、センサからマイクロプロセッサへの入力を示し、潅流冷却器、潅流加熱器、ピンチバルブ、ポンプ、転送ライン加熱器/冷却器、及び/又は、表示部などのハードウエア要素への出力を示す。
【0113】
本発明に係る方法は、好ましくは、上述のように器官の生存力を維持しモニタし及び/又は回復するために器官を潅流し、及び/又は、器官を転送し、及び/又は、格納するための、装置を利用する。器官の生存力の保存は、器官移植の成功若しくは器官の他の利用にとって、重要である。器官は、ドナーの身体から器官を取り除く際、及び/又は、格納の際、及び/又は、器官の移送の際、ドナーの身体への疾患や傷害により長期の間、酸素が奪われることがしばしばある(虚血として知られる)。本発明に係る潅流、診断、及び/又は、運搬装置は、潅流を調整し細胞の代謝を制御して器官への虚血性損傷を回復し再潅流の傷害を回避するために、移植される器官の細胞化学作用を検出する能力を有する。虚血性傷害特有の一つの結果は、細胞自然死、若しくはプログラムされた細胞死となり得る。特定の装置により制御される情況の下で、潅流、診断及び/又は運搬装置により、器官に与えられる特定の薬剤及び依存性薬剤は、細胞自然死を中断し、減少し、及び/又は、逆転させる。
【0114】
本発明の好適な方法では、器官若しくは組織は、機械的、物理的、化学的若しくは包括的な操作、及び/又は、変更により、生体外で処置され、これにより、疾患を処置し、及び/又は、損傷を処置し、及び/又は、器官若しくは組織の特性を強化する。器官若しくは組織は、第1の身体から外され、第1の身体の外で、変更され、処置され、及び/又は、分析され、そして、第1の身体に戻され、第2の身体に移植され、若しくは別途利用される。装置の利点は、身体外処置のために器官が利用可能である期間を拡大するということである。例えば時間単位(2、4、6、8、10、12若しくはそれ以上の時間)で、日単位(2、4、6、8、10、12若しくはそれ以上の日数)で、若しくは週単位(1、2、3、4、5、6、6若しくはそれ以上の週)で、拡大する。好適な実施の形態では、本発明の潅流、診断、及び/又は、運搬装置は、器官若しくは組織に、特定の溶液若しくは化学製品若しくは薬剤を与えるために利用されてもよく、又は、特定の溶液若しくは化学製品で、器官若しくは組織を洗い流すこと、若しくは洗浄することを含む特定の処置を実施するために利用されてもよい。身体外の処置は、移植される組織若しくは器官に対して実施されてもよく、患者から外されて所望の手順が為された後に患者に戻されるべき組織若しくは器官に対して実施されてもよく、又は、実質的な試験などで利用されるべき組織若しくは器官に対して実施されてもよい。身体外の処置は、虚血及び/又はアポキシア(apoxia)の期間若しくは複数期間に耐える組織若しくは期間の処置を含むが、それに限定されるものではない。身体外の処置は、例えば、壊死組織の除去のような、器官を切除し縫合するような、器官に対する外科的技術を実施することを含んでもよい。生体内で組織若しくは器官に対して実施され得る外科的若しくは他の処置技術が、身体外で組織若しくは器官に対して実施されてもよい。このような身体外の処置の利点は、例えば、器官の内や外に存在する腫瘍を処置する放射線照射や化学療法において、処置の最中に、患者の他の部位が、的はずれの放射線や化学療法に曝されることを回避することにある。本発明の潅流及び運搬装置は、組織若しくは器官に対して特定の技術を実施する前、最中、及び/又は、後に、医師が組織若しくは器官を維持する追加的な時間を与える。
【0115】
器官の脈管構造にトラップされる粒子により、器官が適切に潅流できないことがある、即ち、該粒子により、移植の前、及び/又は、後で、器官が不適切に機能してしまうことがある。本発明の潅流、診断及び運搬装置は、形成された血液クロットを溶融し若しくは気管内に血液クロット雅兄制されることを防ぎ、そして器官の脈管構造を開くための、ストレプトキナーゼなどの、適量の血栓溶解剤により、器官を潅流し、洗い流し、若しくは洗浄することを含む身体外の技術を、提供する。このような技術は、例えば、2000年8月25日出願の米国特許出願09/938597号、代理人整理番号106996に開示され、それらの開示内容全体は参照の上本明細書に援用される。
【0116】
器官移植に係る別の関心事は、レシピエントが器官拒絶を回避するために投薬され得る程度である。器官移植では、更なる身体外の技術は、移植される器官に対する被提供者の耐性を増すために、器官移植の前、最中、及び/又は、後に、器官の拒絶を防止若しくは減少するべく被提供者の免疫システムを器官が作動してしまうことを回避し、且つ、被提供者の免疫システムを抑制する必要を限定若しくは防ぐように、器官を変更することを含む。器官の変更は、例えば、被提供者の身体が移植器官を自家組織と認識するように助長することであってもよい。
【0117】
本発明の潅流、診断及び/又は運搬装置は、器官に対して、化合物、天然の若しくは変更された抗体、抗毒素などの物質を配布してもよく、更に、器官がそのような物質を吸収し、若しくは吸収して新陳代謝し器官が拒絶しない見込みを増加させる助けとなってもよい。これらの物質は、異促進の細胞(樹枝状細胞、パッセンジャ白血球、抗原提示細胞など)の成熟を、ブロックし、殺し、涸渇し及び/又は防ぐことにより、器官をマスクし、こんことにより、レシピエントの免疫システムがそれを認識し、若しくは器官を自家組織と認識するようにしてもよい。器官は移植の直前に処置されてもよく、移植の数時間前、数日前若しくは数週間前に、前処理されてもよい。このような技術は、更に、2000年8月25日出願の米国分割特許出願60/227841号、代理人整理番号100034に開示され、それらの開示内容全体は参照の上本明細書に援用される。
【0118】
変更された若しくは変更されない免疫グロブリン、ステロイド及び/又はポリエチレングリコール(PEG)を含む溶液などの物質、並びに、グルタチオンなどの抗酸化剤は、低体温保存及び/又は器官若しくは組織移植の間に、器官をマスクするために、若しくは脈管内膜過形成の始まりを処置するために、組織若しくは器官に、与えられてもよい。これらの溶液は、本発明の潅流、診断、及び/又は運搬装置により器官に与えられてもよい。例示の溶液及び方法は、米国特許出願09/499520号に開示され、それらの開示内容全体は参照の上本明細書に援用される。
【0119】
上述のように、本発明は、潅流の間に器官の生存力をモニタし、維持し及び/又は回復しつつ、器官への損傷を回避すること、及び、格納及び/又は移送のために器官を保存することを含む。しかしながら、上述の例示の形態に係る、寄贈され潅流される器官の全てが、刺繍的に被提供者の中へ移植されるわけではない。注意深い分析の後、器官が移植に適切ではないと判断されることもある。しかしながら、器官は不必要に廃棄されるべきではない。即ち、移植に適しないと判断されたのと同じ器官は、別の目的を果たしてもよい。
【0120】
本発明の更なる例示の形態によれば、器官は、生物活性若しくは他の薬剤を遮蔽して研究開発のデータを与えるために、医療用流体で潅流され得る。器官若しくは組織は、生理的パラメータにて若しくは近傍で、維持され及び/又は分析されるので、器官は、身体外で、器官若しくは組織に対して、生理的薬剤若しくは薬物などの物質を用いる種々の処置の効果のために、テストされてもよい。身体外の処置は、小さい哺乳動物、畜牛、豚、羊、及び山羊などの家畜を含む大きい哺乳動物、及び/又は人間の器官のために、利用され得る。更に、器官の身体外の処置は、腎臓、腸、膵臓、心臓及び肺などの種々の器官のために、利用されてもよく、例えば門脈及び肝動脈の多数の脈管構造を有する肝臓などのより複雑な器官に適用されてもよい。
【0121】
本発明の潅流、診断及び運搬装置は、上述の技術及び方法と併せて、及び/又は、更なる技術及び方法と併せて利用されて、これにより器官若しくは組織に関する研究を実施してもよい。種々の装置は器官を保存及び/又は維持し、器官を身体外での利用に対して利用可能にしてもよい。
【0122】
器官が保存され及び/又は維持される期間の間、種々の活動が器官に関して及び/又は器官と共に、実施され得る。例えば、器官は、若しくは複数の器官は同時に、一つ若しくは複数の生物活性薬剤など(例えば、推定上不活性の薬剤)のような物質を含む流体で潅流され、物質、及び/又は、器官、及び/又は、物質と期間の間の相互作用のふるまいに関するデータを取得するようにしてもよい。
【0123】
血液、人工血液代替物若しくはそれらの組み合わせ、又は、周知若しくは非周知の化学的特性を有する潅流液と器官を介して混合された血液細胞を潅流し、一方で、器官、器官管流出、若しくは他の器官流出をモニタして、研究を実施し器官の状況を分析し、及び/又は物質での遮蔽による器官への効果を判定することによって、潅流、診断及び/又は運搬装置は、データを集めるように利用されてもよい。
【0124】
例えば、図28〜図31に関して説明したように、器官診断システム2800はコンピュータ2810とアナライザ2820を有する。器官評価器具2830は、コンピュータ2810とアナライザ2820の両方に接続し、自動サンプリングを行う。本発明のシステム及び方法により、手動サンプリングが可能となる。器官診断システム2800は、器官と潅流の分析を行う。本発明の実施形態によれば、器官の潅流により周知の所定の化学的性質を有する潅流を伴う器官流入が可能になる。このことにより、血液や合成血液坦体やそれらの組み合わせなどの、配布される潅流のタイプ及び内容の融通性が増す。この潅流のタイプ及び内容は、処理される特定の分析に対して調整され変更され得るものである。
【0125】
システム内部の流体流は、流れセンサ3020によりモニタされる。流体は、収集されて転送ライン2860を通過されアナライザ2820に到る。感知された特性は、静脈、胆汁、腔内、及び尿流出などの、器官の計測可能な流出、並びに、肺などの器官からの気管計測を捕捉し、感知された特性を、例えば流入、又は他の実際の若しくは理想の器官の特性と比較することによって、計測されてもよい。静脈流出が直接捕捉され計測されてもよく、器官溶液が計測され、これにより比較のための流体特性の大まかな近似を与えてもよい。
【0126】
上述のように、器官及び医療用流体の特性が、例えば、図28〜図31に示されるように独立の診断装置及び/又はアナライザ内で、分析されてもよい。感知された特性は、試験物質のどれだけの量が器官に入り込みどれだけの量が出ていったかの判定を、研究者になさしめる。更に、試験物質は、それに対する追跡と器官との相互作用に対する追跡を助けるために、ラジオアイソトープでラベルされてもよい。ラジオアイソトープは、質量分析計などの器具で追跡され得る。そのような感知された特性の結果により、研究者は、吸収、分配、代謝、排出、薬物動態学、薬理学及び毒性などの器官スクリーニング結果を分析でき、更に、そのような感知された特性の結果は、例えば、データが最終的には薬の効能及び/又は毒性を判定する助けとなり得る薬開発のためのデータを与えるために、利用され得る。感知された特性は個別に分析されてもよく多数の特性が分析されてもよく、このことにより、器官に対する効果、及び/又は物質を含む医療用流体と器官との間の相互作用が、判断される。
【0127】
上述のように、器官診断システム2800は、器官及び/又は潅流及び/又はそれらの相互作用を分析し、分析の結果に関するデータが生成され得る。上述のように、図31は器官診断システム2800のためのブロック図を示す。コンピュータは制御パラメータを提供し、アナライザ2820から結果及びデータを受ける。コンピュータは更に、自動サンプリング、サンプリングの維持に関する制御、及び他の性質保証特徴などの、本発明に係る特徴を制御する。本発明に係る実施の形態に従って収集されるデータは、例えば、吸収、分配、代謝及び排出(ADME)に関するデータを効率よく収集する。データはリアルタイムで生成されて表示され、格納され、リモートサイトへ転送され、及び/又は、記録媒体に移転される。このタイプのデータを収集することにより、科学者及び研究者は何の物質が器官に作用し逆に何の器官が物質に作用するか判断できる。このデータにより、研究者は、より実効的且つ安全な研究プロセスに寄与でき、物質を分析でき、丸ごとの動物のレベルで物質を試験する前に器官に対する物質の効果を分析できる。更に、上述の種々の例示の形態により決定され得るデータは、プレシステム排出、薬理学、トキシコキネティクス、薬−薬相互作用などに関するデータを含む。本発明に係る種々の例示の実施形態において物質、気管及びそれらの相互作用に関するデータを収集できるが、このことは本発明の精神及び範囲に含まれるものである。
【0128】
種々のデータ構造と情報関連と分析副次記録は、器官の処置の前、最中及び後に有用な全体通信及びデータ転送に加わるように促進されてもよい。潅流装置、運搬装置、及び器官診断装置は、ネットワーク化され、このことにより、器官、医療用流体及び試験物質のリモートマネジメント及びモニタを可能にするようにしてもよい。情報システムは、器官、医療用流体、試験物質、及びそれらの相互作用のデータを集めるように利用されてもよい。システムは、結果データを提供し、このことにより、器官と医療用流体と物質の迅速な研究が可能になるようにしてもよく、情報は、そのようなデータをモニタする潅流、診断、若しくは運搬装置から直接に回復されてもよい。種々のタイプのデータ及び情報が副次レコード若しくは副次ディレクトリにグループ化されデータマネジメント及び転送に加わるようにしてもよい。全ての副次レコードは、結合されて全体のレコードを生成し、この全体のレコードは、医師、科学者若しくは研究目的の他の組織に、分散されたり、検索されたりしてもよい。
【0129】
潅流、診断及び運搬装置に係る好適な実施形態は、内部データベースにデータの多く若しくは全てを自動的に記録できる。装置はLANに接続されてもよく、データアップロードは、断続的に若しくは連続的に、且つリアルタイムで発生し得る。データはインタネット上で表示されてアクセスされ任意の位置からのモニタを促進できる。
【0130】
例示の実施形態によると、器官データ指標は、上述の種々の計測ファクタ及び分析ファクタを考慮に入れて生成される。データ指標は、器官特有のものでもよく、種々の器官に適用され得るものでもよい。データ指標は、感知された特性及びデータを、器官を処置し研究の判断をなすために利用される診断サマリの中に集める。データ指標は自動生成され研究者若しくは医師に与えられ得る。指標は、潅流装置、運搬装置、及び/又は器官診断装置への接続を介してコンピュータ生成されることが好ましい。実施の形態では、迅速な比較、リモートモニタ及びデータ蓄積を行うためのローカルエリアネットワークやインタネットなどのコンピュータネットワークで利用可能とされてもよい。器官データ指標は、吸収、分配、代謝、排出、薬物動態学、薬理学及び毒性などの、個々の特性に対する計測値と通常の範囲を与えてもよい。通常の範囲外の計測値は、例えばアスタリスクや他の表示で視覚上指示可能であってもよく、聴覚上指示可能であってもよく、若しくは機械的認識信号により指示可能であってもよい。代謝の安定性、グルコースの消費、ラクトースの創造及び酸素消費などの、器官の代謝の特性により、医師の病識は実効的なものになる。
【0131】
本発明に係る方法は、器官の生存力を維持し、モニタし及び/又は回復し、及び/又は器官を移転し及び/又は格納する上述のような装置を利用するのが好ましい。器官は、ドナーの身体から器官を取り除く際、及び/又は、格納の際、及び/又は、器官の移送の際、ドナーの身体への疾患や傷害により長期の間、酸素が奪われることがしばしばある(虚血として知られる)。本発明に係る潅流、診断、及び/又は、運搬装置は、潅流を調整し細胞の代謝を制御して器官への虚血性損傷を回復し再潅流の傷害を回避するために、器官の細胞化学作用を検出する能力を有する。虚血性傷害特有の一つの結果は、細胞自然死、若しくはプログラムされた細胞死となり得る。特定の装置により制御される情況の下で、潅流、診断及び/又は運搬装置により、器官に与えられる特定の薬剤及び依存性薬剤は、細胞自然死を中断し、減少し、及び/又は、逆転させる。
【0132】
被提供者の身体の中への器官の移植の前、若しくは研究開発のための器官の利用の前に器官の生存力を保存し、虚血前のエネルギ及び酵素レベルを維持し及び/又は回復するように細胞ミトコンドリアを処置し、器官への一般的な組織損傷を回避し、更に器官の管内皮ライニングを洗い流すことや損傷することを回避するために、本発明に係る好適な方法は3つのコンセプトに焦点を当てる。
【0133】
ミトコンドリアは細胞のエネルギ源である。それらは機能するために大量の酸素を必要とする。酸素が奪われると、エネルギを生成する能力は、減少若しくは制約される。更に、20°C以下では、ミトコンドリアは酸素を利用してエネルギを生成できない。正常体温にて器官を酸素豊富な医療用流体で潅流することにより、ミトコンドリアは十分な量の酸素が供給され、器官内の酸素の欠乏により減少した保存高エネルギヌクレオチドの虚血前のレベル、即ちATPレベルはフリーラジカルスカベンジャから器官セルを保護する酵素のレベルで、維持され及び/又は回復される。米国特許第5066578号に開示されるピルビン酸塩が豊かな溶液は、器官の虚血前のエネルギレベルを維持し及び/又は回復することができず、短期間でATPのレベルを僅かに上げるように機能するのみである。器官に更なるピルビン酸塩を加えても、ミトコンドリアがエネルギ生成のための十分な酸素を与えられない限り、器官の虚血前のエネルギレベルを回復し及び/又は維持する助けとはならない。従って、正常体温の潅流流体はピルビン酸塩を含んでもよく、殆ど若しくは全く含まないのでもよい。例えば、6mM以下のピルビン酸塩を含んでもよく、5mM、4mMでもよく、全くピルビン酸塩を含まなくてもよい。米国特許第5599659号に開示されるような、他の周知の保存溶液は、虚血前のエネルギ及び酵素レベルを回復し及び/又は維持するのに十分な酸素を含むものでもない。正常体温若しくは正常体温に近い温度の酸素の豊かな第1の医療用流体で器官を潅流することにより器官の虚血前のエネルギレベルを維持し及び/又は回復した後(正常体温モード)、器官は、低体温の第2の医療用流体で潅流されてもよい(低体温モード)。低体温は器官の代謝を低下し、器官の格納及び/又は移送の間にエネルギを保存する。低体温モードで利用される医療用流体は殆ど酸素を含んでおらず、ミトコンドリアによって、約20°C以下でエネルギを生成するのには利用され得ない。医療用流体は、カタラーゼ/スーパーオキシドジスムターゼの生成の減少のために低体温で活性する高フリーラジカル形成から保護するための、例えば、アスコルビン酸、グルタチオン、水溶性ビタミンE、カタラーゼ、若しくはスーパーオキシドジスムターゼなど酸化防止剤及び他の組織保護剤を含んでもよい。更に、ホルモン、ビタミン、栄養物、抗生物質及び他などの種々の薬及び薬剤が、適切な溶液に加えられてもよい。更に、例えばペプチドなどの血管拡張剤は、傷害の状況でも流れを維持するために、医療用流体に加えられてもよい。
【0134】
正常体温での酸素の豊富な第1の医療用流体で正常体温の潅流をする前に、器官は、酸素を殆ど含まず好ましくは酸化防止物を含む医療溶液で洗い流されてもよい。洗い流しは通常低体温度で実施されるが、所望であれば及び/又は必要であれば、正常体温で及び/又は正常体温に近い温度で、実施されることもできる。一つ又は複数の低体温潅流、正常体温潅流、及び/又は静的格納のあとに行ってよく、必要な順序でも所望の順序でもよい。あるケースでは、正常体温潅流も静穏潅流も必要ではない。
【0135】
正常体温潅流は、予めの低体温の洗い流しが有っても無くても、正常体温器官に実施されるだけでなく、静的若しくは潅流状況の下で低体温度に既に曝された器官にも、実施されてもよい。
【0136】
器官は、格納のため低体温で潅流される前及び/又は潅流された後に、生存力を維持し、モニタし、及び/又は回復するように正常体温若しくは正常体温に近い温度で潅流され、その後、低体温潅流なく輸送されてもよいし、好ましくは低体温潅流により輸送されるのがよい。更に、正常体温潅流は、ドナーの身体から器官を外す前に、生体内で実施されてもよい。更に、器官は、格納及び/又は輸送の準備として、低体温で潅流する前に、生存力を維持し、モニタし及び/又は回復するように正常体温で潅流されてもよい。そして、器官は、低体温で維持しつつ、被提供者の身体に移植されてもよく他の研究に利用されてもよく、格納及び/又は輸送の効果から器官が回復する手助けをするために正常体温潅流に曝されてもよい。後者の場合、器官は、正常体温度で移植若しくは利用されてもよく、好ましくは低体温度での移植のために再び低体温で潅流されてもよい。移植後、器官は生体内にて正常体温度で再び潅流されてもよく、被提供者の循環から暖かくしてもよい。物質の研究は、正常体温度で為されるのが好ましい。更に、通常の生理的状況に近い状況で物質の試験を行うのが好ましい。例えば、温度、酸素レベルなどである。
【0137】
あくまで例示であり以下に限定されるものではないが、図16は本発明に係る可能な処理ステップの例示図を示す。図は、可能なWIT(高温虚血時間)及び低酸素損傷査定を含む、器官ドナーから被提供者内の移植を介しての器官外植からの複数器官の回復の種々の可能な処理ステップを示す。幾つかの例示のシナリオは以下の説明で示される。
【0138】
例えば、本発明の一つの実施形態では、器官は、心臓が鼓動する状況でドナーから取られ得る。取った後、器官は、VIASPAN(登録商標)(デュポン(登録商標)より入手可能な保存溶液)、他の晶質溶液、デキストラン、HES(ヒドロキシエチルでんぷん)、2000年7月28日出願の米国特許出願09/628311に記載の溶液などを含む適切な溶液若しくは材料で、洗い流されてもよい。右出願の内容全体は本明細書に参照の上援用される。器官は、例えば氷温度で(約1〜10°Cで)、静的に格納されてもよい。
【0139】
器官には最小限のWITと最小限の血管閉塞しかない、別の実施形態では、別の手順が利用され得る。ここでは、器官は、心臓が鼓動する状況でドナーから取られ得、好ましくは低体温で洗い流しがなされる。必要であれば、器官は例えば氷温度で適切な運搬装置内に格納されてもよい。器官への流れは、設定圧力最大により制御可能であり、予め設定の圧力最小値と圧力最小値はパルスウエーブ構成を制御する。24時間以上など、長期間器官を格納する必要が有れば、器官はMORに配置されてもよい。MORでは、好ましくは低体温で、晶質溶液、デキストランなどの適切な潅流が用いられてもよい。低体温は約4〜10°Cが好ましく、所望であれば及び/又は必要であれば、より高温でもより低体温でもよい。潅流溶液は、損傷評価を為せる特定のマーカを含んでもよい。但し、損傷評価は他の周知の手順でも為され得る。所望の場合、器官は運搬装置に戻されてもよい。
【0140】
上述の手順のバリエーションとして、最小限のWIT及び最小限の血管閉塞を備える器官が非鼓動の心臓の状況下で取られてもよい。ここで、器官は好ましくは低体温で洗い流され、必要であれば輸送のために例えば氷温度で適切な運搬装置内で格納されてもよい。上述のように、器官への流れは設定圧力最大により制御可能であり、予め設定の圧力最小値と圧力最大値はパルスウエーブ構成を制御する。器官は、拡張された格納でも、及び/又は、損傷評価及び/又は修理に対しても、MOR内に配置され得る。MORでは、好ましくは低体温で、晶質溶液、デキストランなどの適切な潅流が利用可能である。低体温は約4〜10°Cが好ましく、所望であれば及び/又は必要であれば、より高温でもより低体温でもよい。潅流溶液は、損傷評価を為せる特定のマーカを含んでもよい。但し、損傷評価は他の周知の手順でも為され得る。低体温潅流に続いて、好ましくは正常体温で、第2の潅流が利用されてもよい。所望のように、酸化溶媒、栄養分、及び/又は成長因子を含む溶液などの適切な潅流溶液であれば、この処理に対して利用され得る。好ましくは、正常体温は12〜24°Cであり、所望であれば及び/又は必要であれば、約37°Cを含むより高温でもより低体温でもよい。正常体温潅流は、例えば、約1時間〜約24時間の適切な時間処理されてもよい。正常体温潅流からの回復に続いて、器官は、好ましくは低体温の、例えば、晶質溶液、デキシトランなどの適切な溶液を利用して低体温潅流に戻るのが好ましい。所望の場合、器官は運搬装置に戻されてもよい。
【0141】
器官が高いWITを有し、及び/又は血管閉塞の傾向若しくは現実が存在する実施の形態では、上記プロセスに関するバリエーションが利用可能である。例えば、非鼓動の心臓下で器官が取られる場合、器官は上述のように洗い流され得る。しかしながら、更に、フリーラジカルスカンベジャは、所望であれば、洗い流す溶液に加えられてもよい。上述のように、器官は、輸送のために例えば氷温度で適切な運搬装置内で格納されてもよく、器官への流れは、設定圧力最大により制御可能であり、予め設定の圧力最小値と圧力最大値はパルスウエーブ構成を制御する。器官は、拡張された格納でも、及び/又は、損傷評価及び/又は修理に対しても、MOR内に配置され得る。MORでは、好ましくは低体温で、晶質溶液、デキストランなどの適切な潅流が利用可能である。低体温は約4〜10°Cが好ましく、所望であれば及び/又は必要であれば、より高温でもより低体温でもよい。潅流溶液は、損傷評価を為せる特定のマーカを含んでもよい。但し、損傷評価は他の周知の手順でも為され得る。低体温潅流に続いて、好ましくは正常体温で、第2の潅流が利用されてもよい。所望のように、酸化溶媒、栄養分、及び/又は成長因子を含む溶液などの適切な潅流溶液であれば、この処理に対して利用され得る。好ましくは、正常体温は12〜24°Cであり、所望であれば及び/又は必要であれば、より高温でもより低体温でもよい。正常体温潅流は、例えば、約1時間〜約24時間の適切な時間処理されてもよい。所望であれば特に、血管閉塞が存在すると判定され若しくは仮定される場合、更なる潅流が、例えば約24〜約37°Cのより高い正常体温で為されてもよい。この更なる潅流は、血管閉塞を妨げる所望の材料を含む適切な溶液を用いて、為されてもよい。そのような材料は、例えば、ストレプトキナーゼなどのクロットバスタを含む。正常体温潅流からの回復に続いて、器官は、好ましくは低体温の、例えば、晶質溶液、デキシトランなどの適切な溶液を利用して低体温潅流に戻るのが好ましい。所望の場合、器官は運搬装置に戻されてもよい。
【0142】
本発明に係る器官カセット65により、器官は、器官レシピエントに対して、及び/又は、例えば、上述の運搬装置1900、若しくは従来の冷却器、若しくは同時係属の米国出願第09/161919に開示されるような携帯用容器などの、器官潅流、診断、及び/又は携帯用運搬装置の間で、容易に運搬され得る。器官カセットは、内部に配置される器官に接続するための、カセットの中への器官潅流、運搬、若しくは診断装置のチューブが挿入される開口部が備わるので、又は、器官潅流、運搬、若しくは診断装置からの及び/又は自身のバルブを伴うチューブに接続される自身のチューブ及び接続デバイスが備わるので、器官カセットは格納し、分析し、及び/又は輸送するための器官に保護的環境を与え、一方で、器官潅流、運搬、若しくは診断装置のチューブへの器官の挿入、及び/又は該チューブへの器官の接続を促進する。更に、器官カセットは、カセットの輸送を促進するハドルも含み、器官が視覚によりモニタされ得るように透明部材で形成され得る。
【0143】
運搬装置1900及び/又はカセット65は、器官の位置の追跡を可能にするグローバルポジショニングシステム(GTS)(図示せず)を含む。装置は、装置の位置で若しくは別の位置で器官をモニタできるデータロガ及び/又は送信機も含んでもよい。
【0144】
本発明の方法を、図2に示す装置の操作により以下に説明する。しかしながら、他の装置も、発明の方法を実施するのに利用され得る。
【0145】
上述のように、上記装置は2つのモード、正常体温潅流モードと低体温潅流モードで操作し得る。正常体温潅流モードを最初に説明し、続いて低体温潅流モードの説明をする。繰り返しの記述はできるだけ割愛する。
【0146】
正常体温若しくは正常体温近傍の潅流モードでは、器官は、医療用流体所蔵部10と熱交換連絡するように配置された熱電ユニット30aにより、好ましくは約10〜38°Cの範囲内で、より好ましくは約12〜35°Cの範囲内で、更に好ましくは約12〜24°C若しくは約18〜24°Cの範囲内で(例えば、室温22〜23°Cで)、維持される医療用流体で、好ましくは1/2〜6時間、より好ましくは1/2〜4時間、更に好ましくは1/2〜1時間、潅流される。
【0147】
上述のように、このモードでは、医療用流体は、酸素処理され交差結合されたヘモグロビン基底の重炭酸塩溶液であるのが好ましい。交差結合されたヘモグロビン基底の医療用流体は、例えば、単一の、ウイスコンシン大学のグルコン酸塩タイプの潅流よりも、単位潅流体積あたり、器官に対して150倍までの酸素を、引き渡せる。このことにより、正常体温潅流は、1、2時間、涸渇したATPレベルを部分的若しくは全体的に回復できる。しかしながら、本発明はこの保存溶液に限定されない。米国特許第5149321号、5234405号、及び5395314号、同時係属の米国特許出願第08/484601号、並びに、2000年7月28日出願の米国特許出願09/628311号、代理人整理番号第101311号に開示されるような、他の保存溶液でもよい。これら出願の内容全体は、参照の上本明細書に援用される。
【0148】
正常体温潅流モードでは、医療用流体は、チューブ50a、50b、50c又は50d50e、50cの夫々を介してバッグ15a、15bの一つ又は他のものから、器官チャンバ4内部に配置される器官に、直接供給される。器官は、好ましくは約3〜5ml/g/分の範囲内の流速で潅流される。圧力センサP1は、潅流圧力をマイクロプロセッサ150に中継し、該マイクロプロセッサ150は圧力源20により供給される圧力を変動し、潅流圧力を制御して、及び/又は手動の調整のために制御及び表示エリア5a上に圧力を表示する。圧力は、約10〜100mmHgの範囲内で、好ましくは50〜90mmHgの範囲内で、圧力源20と利用中の圧力カフ15a、15bとステッピングモータ/カムバルブ65の組み合わせによって、制御されるのは好ましい。コンプレッサ及びカフは、前耐圧力制御を為す。ステッピングモータ/カムバルブ65(又は、他の種々のバルブ若しくは圧力レギュレータ)は、オペレータ、若しくは圧力センサP1からの信号に応答してマイクロプロセッサ150によっても制御されるが、更に、圧力を下げて微調整し、及び/又は、パルス波を流れに載せて器官60に到らせる。潅流圧力が所与の限定を超えると、ステッピングモータ/カムバルブ65は、器官60への流体流を止めるように作動するのがよい。
【0149】
特定温度における特定の圧力、流速及び潅流時間長は、特定の器官若しくは潅流去れる器官に依存して変動する。例えば、心臓と腎臓は、器官の虚血前のエネルギレベルを回復し及び/又は維持して、器官の生存力を維持し及び/又は回復するために、約10〜100mmHgの圧力で、約3〜5ml/g/分の流速で、約2〜4時間まで、正常体温にて、潅流されるのが好ましく、格納及び/又は輸送のために、約10〜30mmHgの圧力で、約1〜2ml/g/分の流速で、約72時間、低体温にて、潅流されるのが好ましい。しかしながら、これらの基準は、特定の器官、ドナーの身体及び/又は被提供者の身体、利用用途の状況、及び/又は、特定器官のサイズに依存して変動する。当業者であれば、本明細書に設定されるガイダンスを考慮して、過度の実験を行うことなく、適切な状況を選択できる。
【0150】
流出の医療用流体は器官チャンバ40の底に集まり、第2の熱電ユニット30bにより既述の温度範囲内に維持される。温度センサT2は、器官の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、該マイクロプロセッサ150は熱電ユニット30aを制御し医療用流体及び器官溶液の温度を調整し、所望の温度に器官60を維持し、及び/又は、手動の調整のために制御及び表示エリア5c上に医療用流体温度を表示する。
【0151】
収集された流出医療用流体は、ポンプ80によりポンプアウトされチューブ81を介しフィルタユニット82を通過し器官溶液に戻る。このことのより、流出医療用流体から外科及び/又は細胞くずが濾過され、濾過された医療用流体に戻り器官60のための溶液として作用する。レベルセンサL2が、流出医療用流体の所定のレベルが(好ましくは、流出医療用流体内に浸された器官60を十分維持できる程度に)器官チャンバ40内に存在すると感知すると、更なる流出医療用流体はチューブ91を介してポンプ90によりポンプアウトされる。温度センサT1は、器官溶液の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、該マイクロプロセッサ150は熱電ユニット30bを制御して医療用流体の温度を調整し、所望の温度で器官を維持し、及び/又は、手動調節及びモニタのために制御及び表示エリア5cに温度を表示する。
【0152】
上述のように、医療用流体は、単一通過モードで廃棄されるように仕向けられてもよいし、最後に器官及び/又は溶液に戻って再循環する(再循環モード)ように為されてもよい。
【0153】
チューブ91に沿って、再循環の医療用流体は、フィルタユニット95を通過して先ずポンプされる。交差結合のヘモグロビンの医療用流体を利用することにより、サブミクロンの利用が、バクテリアだけでなく、大きな外科くずや細胞くずを取り除けることになる。このようにすることにより、抗生物質の利用を最小限にでき、腎臓損傷のような器官損傷を回避する助けとなる。
【0154】
次に、再循環の医療用流体はCOスクラバ/O膜100を通過してポンプされる。医療用流体は、親水性(例えば、Hypol)コートを伴う疎水性マクロ多孔性膜を通り過ぎ、低真空が、再循環医療用流体からCOを除く作動バルブVV1により対向する側に加えられる。
【0155】
続いて、医療用流体の一部は、人工肺110(例えば、JOSTRA(登録商標)人工肺)に入り、一部はそこを迂回し、チューブ111を介してpH、pO、pCO、LDH、T/GST、TプロテインセンサV1を通過する。このポイントで、2つの気体、好ましくは100%酸素及び95/5%酸素/二酸化炭素が、迂回した医療用流体のpHレベルに依存して膜の対向する側に夫々配置される。気体は200mHgまでの圧力で、好ましくは50〜100mmHgの圧力で、また好ましくはマイクロメータガスバルブGV3を通過して、加えられるのがよい。交差結合のヘモグロビン基底の重炭酸塩医療用流体は、約40mmHgのpCOを好適なpH範囲7.25−7.45の中点(7.35)とすることを要求するように定式化されるのがよい。
【0156】
人工肺を出て行く医療用流体が、好適なpH範囲(例えば、7.25−7.45)の範囲内ならば、100%酸素が気体交換チャンバに供給されバルブLV1は開かなくなり、潅流は非利用中のバッグ15a若しくは15bの中の貯蔵部10に戻る。戻る潅流pHが酸側の範囲外(例えば、7.25以下)であるならば、100%酸素が気体交換チャンバに供給されバルブLV1は開き、潅流は器官チャンバ40に戻る。シリンジポンプ131の作動により、例えば、重炭酸塩貯蔵部132から1ccの重炭酸塩溶液をポンプし、チューブ132を介して器官溶液の中に到らせる。高いヘモグロビン内容を伴う医療用流体は、大きい緩衝容量を与える。重炭酸塩を追加すると、容量を緩衝し可逆のpH制御機構を与えることを促進することになる。
【0157】
戻る潅流pHが塩基側の範囲外(例えば、7.25以上)であるならば、95/5%酸素/二酸化炭素が気体交換チャンバに供給されバルブLV1は作動せず、潅流は非利用中のバッグ15a若しくは15bに戻る。非利用中のバッグ15a又は15bはバルブGV4を介して(例えば、過剰の酸素を)脱気できる。利用中のバッグ15a又は15bにて、内部に約250ml以下の医療用流体が残余するとき、夫々のカフ16a、16bは夫々の気体バルブGV1、GV2を介して排気できる。続いて、予め利用されないバッグ15a又は15bの夫々のカフ16a、16bには、器官に医療用流体を供給し期間の潅流を継続する圧縮気体源20から気体が供給される。
【0158】
低体温モードでは、器官は、好ましくは約1°C〜15°Cの範囲内の温度で、より好ましくは4°C〜10°Cで、最も好ましくは10°C近辺で、冷却された医療用流体で潅流される。医療用流体は、晶質潅流であるのが好ましく、例えば、アスコルビン酸、グルタチオン、水溶性ビタミンE、カタラーゼ、若しくはスーパーオキシドジスムターゼなどの、抗酸化物及び他の組織保護剤が補われるのが好ましい。
【0159】
器官に医療用流体を直接加える代わりに、医療用流体は、好ましくは約5〜40mmHgの、より好ましくは10〜30mmHgの、最も好ましくは20mmHg近辺の、圧力ヘッドである中間タンク70の中に、チューブ51を介して、貯蔵タンク17から供給されてもよい。医療用流体は、バルブLV6を作動してチューブ50cに沿って、中間タンク70から器官60へ、重力若しくは圧力により供給される。中間タンク70内のレベルセンサ71は、貯蔵タンク17からの供給を制御し所望の圧力ヘッドを維持するのに利用される。低体温モードでは医療用流体は、重力により好ましくは圧力により器官に与えられるのだから、器官の繊細な微小血管への潅流圧力の誘発する傷害は少ない。実際、器官が潅流される圧力は、大きくても40mmHgの圧力ヘッドに限定される。
【0160】
ステッピングモータ/カムバルブ205(又は、他の種々のバルブ若しくは圧力レギュレータ)は、チューブ50c上に配置され、上述のように、器官60へ医療用流体の白銅製の供給を行い、制御目的のため器官60の中へ供給される医療用流体の圧力を減じ、又は、器官60の中への医療用流体の流れを停止するようにしてもよい。
【0161】
更に、低体温モードでは、器官60は栄養分を求める要求が殆ど無いので、医療用流体は、長期間において、断続的に(例えば、約100ml/分までの流速で、2時間毎に)、若しくは、ゆっくりとした流速で(例えば、100ml/分までで)、器官に与えられてもよい。断続的な潅流は単一通過モードで実装されてもよく再循環モードで実装されてもよい。ポンプ80、フィルタ82、及びチューブ81は、pH、pO、pCO、LDH、T/GST及びプロテインセンサの利用と共に器官溶液を濾過するのに利用され得る。しかしながら、器官は低体温度では酸素を利用できないので、人工肺が利用されない。所望及び/又は必要であれば、十分な酸素が、濾過された室内空気若しくは他の適切な源から得られる。
【0162】
潅流と温度調整の両方は、自動的に制御可能である。このように自動的に制御できることにより、操作中の潅流状況に迅速且つ信頼性高く対応できる。自動的流れ制御は、潅流流速、器官から出て行く潅流のpH、器官入口圧力、又は、予め選択された流速若しくは潅流モード間のスイッチングなどのタイムシーケンスを含む、システムから計測されたパラメータを基礎にし得る。好ましくは、流れ制御は、気管内への潅流流入の圧力モニタを基にする。自動的流れ制御の利点は、連続流若しくは制御された中間流の下で操作しつつ、適切な酸素化及びpH制御を維持することを含む。熱電デバイス(TED)の熱制御は、器官カセット即ち容器、及び潅流貯蔵部の温度を調整できる。熱制御は、例えば、潅流溶液内の若しくは器官内部のサーミスタプローブにより、又は、熱電デバイス内にセンサにより、為される熱計測を基礎にする。
【0163】
自動制御は、操作容易のメニューアイコン及び表示部を利用して相互制御プログラムにより為されるのが好ましい。パラメータは、利用者による選択のために予め格納されてもよいし、システムの操作の間に利用者によりプログラムされてもよい。制御プログラムは、プログラムされた一般目的のコンピュータ上に実装されるのが好ましい。しかしながら、コントローラは、特定目的コンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサ、即ちマイクロコントローラ及び周辺集積回路部品、ASIC若しくは他の集積回路、デジタルシグナルプロセッサ、個別素子回路、PLD、PLA、FPGA若しくはPALなどのプログラマブルロジックデバイスなどに、実装されてもよい。概略、本明細書に記載する制御プロセスを実施できる有限状態機械を実装できるどのデバイスが利用されてもよい。制御プロセスは、ROMを利用して実装されてもよい。しかしながら、PROM、EPROM,EEPROM、CD−ROMやDVD―ROMなどの光学ROMディスク、及びディスクドライブなどを利用して、実装されてもよい。しかしながら、所望であれば、制御プログラムは、静的若しくは動的RAMを利用されてもよい。それは、フロッピディスク及びディスクドライブ、書き込み可能光学ディスク及びディスクドライブ、ハードドライブ、フラッシュメモリなどを利用して実装されてもよい。
【0164】
操作時には、図15に示すように、一つ又はそれ以上の器官の潅流を制御する操作の基本ステップは、先ず、器官データを入力することを含む。器官データは、少なくとも器官のタイプと質量を含む。そして、プログラムは、利用者が一つ又は複数の潅流モードのタイプを選択するのを促進する。潅流モードのタイプは、上述のように、低体温潅流、正常体温潅流、並びに、正常体温潅流と低体温潅流の両方を利用する一連の潅流を含む。正常体温潅流と低体温潅流の両方が利用されると、利用者は種々の温度の医療用流体で選択できる。勿論、システムは、特定の器官にとって適切な予め格納された値に基づくデフォルト値を含む。利用者は、中間潅流、単一通過潅流、及び再循環潅流からも選択できる。選択された潅流タイプに依存して、有酸素若しくは無酸素の医療用流体が特定され得る。
【0165】
次に、個々の選択された潅流モードに対する流れ制御のタイプが設定される。流れ制御セレクタは、潅流流速、潅流pH、器官入口圧力及びタイムシーケンスの内の少なくとも一つに基づいて、流れ制御を選択する。好適な実施の形態では、流れ制御は、器官への潅流入口において検出された圧力に基づく。医療用流体の流れは、選択された潅流モード及び流れ制御に基づく。
【0166】
操作の間、システムにより、とりわけ器官及び潅流により経験される状況は、検出されてモニタされる。検出された操作の状況は、予め格納された操作の状況と比較される。比較に基づく器官の生存力を示す信号が生成され得る。種々の検出器、センサ及びモニタデバイスは前に説明しているが、少なくとも圧力センサ、pH検出器、酸素センサ及び流れメータを含む。
【0167】
制御システムは、潅流と器官のうちの少なくとも一つの温度を制御する熱制御も含んでもよい。熱制御は、試験デバイスを制御することにより医療用流体貯蔵部及び器官容器の温度を制御できる。上述のように、温度センサは、コントローラに接続されモニタ及び制御を促進する。
【0168】
制御システムは、常時手動で調整可能であり、デフォルトセッティングに従うようにセットされ得る。システムは、器官の生存力を危険にさらしてしまうパラメータをオペレータが設定することを回避する論理回路を含む。上述のように、システムは、一連の低体温及び/又は正常体温潅流のためのコンピュータ制御モードに加えて、一連の低体温及び/又は正常体温潅流のための手動モードでも、操作され得る。上述の装置及び方法は、カセット、及び/又は、圧力及び流速の夫々につき、必要とされる修正を施せば、成人即ち大きい器官だけでなく、子ども即ち小さい器官に対しても、利用可能である。前に説明したように、器官カセットは、特定の器官若しくは器官サイズの形状及びサイズに併せて、構成可能である。装置及び方法は、器官を成長/クローンかするために、例えば人工胎盤細胞培養などへの実行血液供給を為すのにも、利用されてもよい。
【0169】
発明は特定の実施形態と関連させて既述したが、多数の代替案、変更及びバリエーションは当業者に明白である。従って、本明細書に記載した本発明の好適な実施形態は、例示であることを意図し、内容を限定するものではないことを意図する。種々の変更が、本発明の範囲から乖離することなく為され得る。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明に係る器官潅流装置である。
【図2】図1の装置の系統図である。
【図3】図1の装置の回路図である。
【図4】本発明に係る組み合わせポンプ、濾過、酸化及び/又はデバブラ装置の第1のポンプモジュールの分解図である。
【図5】本発明に係る組み合わせポンプ、濾過、酸化及び/又はデバブラ装置の濾過モジュールの分解図である。
【図6】本発明に係る組み合わせポンプ、濾過、酸化及び/又はデバブラ装置の酸化モジュールの分解図である。
【図7】本発明に係る組み合わせポンプ、濾過、酸化及び/又はデバブラ装置のデバブラモジュールの分解図である。
【図8】本発明に係る組み合わせポンプ、濾過、酸化及び/又はデバブラ装置の第2のポンプモジュールの分解図である。
【図9】図4〜図8のモジュールを組み立てて示す分解斜視図である。
【図10】本発明に係る組み合わせポンプ、濾過、酸化及び/又はデバブラ装置の組立モジュラの前面斜視図である。
【図11A】本発明に係る器官カセットの実施形態の側斜視図を示す。
【図11B】本発明に係る器官カセットの実施形態の側斜視図を示す。
【図11C】本発明に係る器官カセットの実施形態の側斜視図を示す。
【図11D】本発明に係る器官カセットの実施形態の側斜視図を示す。
【図12】多数の器官を同時に潅流するように構成される器官潅流装置の系統図である。
【図13A】本発明に係るステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図13B】本発明に係るステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図14A】本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図14B】本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図14C】本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図14D】本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図14E】本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図14F】本発明に係る別のステッピングモータ/カムバルブを示す。
【図15】本発明に係る制御システムを概略示すブロック図を示す。
【図16】本発明に係る可能な処理ステップの例の図を示す。
【図17】本発明の器官カセットの実施形態を示す。
【図17A】本発明の器官カセットの実施形態を示す。
【図18】本発明に係る器官チェアの実施形態を示す。
【図18A】本発明に係る器官チェアの実施形態を示す。
【図19】本発明に係る器官運搬装置の外部斜視図を示す。
【図20】図19の器官運搬装置の断面図を示す。
【図21】図19の器官運搬装置のブロック図を示す。
【図22】図19の器官運搬装置の操作状態を示す。
【図23】図19の器官運搬装置の別の断面図を示す。
【図24】本発明の潅流及び器官移植システムのデータ構造及び情報移動スキームを示す。
【図25】本発明に係る潅流ポンプのモータ制御を示す。
【図25A】本発明に係る潅流ポンプのモータ制御を示す。
【図26】本発明に係る肝臓潅流装置を示す
【図27】図26に係る潅流装置で用いる蠕動ポンプの拡大図を示す。
【図28】本発明に係る器官診断システムの全体図を示す。
【図29】図28に係る器官診断システムで用いる器官評価器具の斜視図を示す。
【図30】図28に係る器官診断システムで用いるインライン潅流システムを示す。
【図31】図28に係る器官診断システムのための論理回路を示す。
【符号の説明】
【0171】
1・・・器官潅流装置、40・・・器官チャンバ、60・・・器官、65・・・カセット、80・・・ポンプ、81・・・チューブ、150・・・マイクロプロセッサ、1800・・・器官チェア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官への物質の効果を判定する方法であって、
少なくとも一つの器官を保存するために少なくとも一つの器官を第1の医療用流体で潅流するステップ、
少なくとも一つの器官を少なくとも一つの試験物質にさらすステップ、及び、
少なくとも一つの器官、少なくとも一つの試験物質、及び、少なくとも一つの器官と少なくとも一つの試験物質との間の相互作用のうちの、少なくとも一つに関するデータを収集するステップ
を含む方法。
【請求項2】
さらすステップが、試験物質を含む第2の医療用流体で器官を潅流することによって、実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1と第2の医療用流体が同じであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1と第2の医療用流体が異なることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの器官と器官からの流出とのうちの少なくとも一つが、流出と少なくとも一つの器官とのうちの少なくとも一つの特徴を感知するセンサにより、モニタされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
更に、感知された特徴からなるデータを収集するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
データがリアルタイムで生成されて表示され、格納され、リモートサイトへ伝送され、記録媒体へ転送され、評価のためのマイクロプロセッサに中継されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
器官溶液から少なくとも一つの器官を通過した第2の医療用流体を収集するステップと、少なくとも一つの器官と少なくとも一つの試験物質との間の相互作用を示す収集された医療用流体の特徴を感知するステップとを、更に示す請求項2に記載の方法。
【請求項9】
試験物質が化学化合物であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
試験物質が、天然の且つ変更された抗体の少なくとも一つのであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
試験物質が抗毒素であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項12】
第2の医療用流体が血液であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
感知された特徴が、吸収、配布、代謝及び代謝のうちの少なくとも一つに関連することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項14】
感知された特徴が、薬物動態、薬理学及び毒性のうちの少なくとも一つに関連することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項15】
感知された特徴が、物質が少なくとも一つの器官に何の作用をするかを判定することと、少なくとも一つの器官が物質に何の作用をするかを判定することのうちの、少なくとも一つに関連することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項16】
生物活性剤で少なくとも一つの器官をスクリーニングする方法であって
少なくとも一つの器官が移植されないことを判定するステップ、
器官を保存するために第1の医療用流体で少なくとも一つの器官を潅流するステップ、
少なくとも一つの器官を少なくとも一つの試験物質にさらすステップ、及び、
少なくとも一つの器官、少なくとも一つの試験物質、及び、少なくとも一つの器官と少なくとも一つの試験物質との間の相互作用のうちの、少なくとも一つに関するデータを収集するステップ
を含む方法。
【請求項17】
器官が移植に適さないことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つの器官を第1の医療用流体で潅流するステップ、及び、
器官の生存力を示す流体の特徴を感知するステップ
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17A】
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【図18】
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【図18A】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図25A】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2007−519763(P2007−519763A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552193(P2006−552193)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/003008
【国際公開番号】WO2005/074681
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(301063452)オーガン リカヴァリー システムス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】