説明

回収排出機構および窓システム

【課題】 簡素な構成にしたがって、窓ガラスと日射遮蔽装置との間の内側空間において日射により発生する高温空気を自然回収し且つ室外へ自然排出することのできる回収排出機構。
【解決手段】 日射により窓ガラス(1)と室内側の日射遮蔽装置(2)との間の内側空間(12)で発生する高温空気を回収して室外へ排出する回収排出機構(3)は、高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部(31)と、内側空間と回収部との間を選択的に連通状態にする第1シャッター部材(32)と、回収部と室外との間を選択的に連通状態にする第2シャッター部材(33)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収排出機構および窓システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペリメータの温熱環境対策ならびに省エネルギー対策として、例えば熱的性能の高いダブルスキン構造の窓システムが利用されている。ダブルスキン構造では、建物の外壁とその外側に設けられたファサードとの間の内部空間へ下側換気口から流入した外気を、上側換気口から外部へ排出する。ダブルスキン構造においてもシングルスキン構造においても、採光性能などを考慮して透明な窓ガラスを使用するため、窓ガラスの内側(室内側)にブラインドなどの日射遮蔽装置を用いるのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ダブルスキン構造では、シングルスキン構造に比して熱的性能は高いが、設置費用が高く、施工期間は長くなる。一方、シングルスキン構造では、設置費用および施工期間に関して有利であるが、室内側に設置された日射遮蔽装置と窓ガラスとの間の内側空間において日射による高温空気が発生し、ひいては熱滞留が起こることが懸念される。すなわち、シングルスキン構造の窓システムでは、特段の策を講じない限り、熱的性能が比較的低く、空調負荷が大きくなり易い。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成にしたがって、窓ガラスと日射遮蔽装置との間の内側空間において日射により発生する高温空気を自然回収し且つ室外へ自然排出することのできる回収排出機構および窓システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、日射により窓ガラスと室内側の日射遮蔽装置との間の内側空間で発生する高温空気を回収して室外へ排出する回収排出機構であって、
前記高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部と、
前記内側空間と前記回収部との間を選択的に連通状態にする第1シャッター部材と、
前記回収部と前記室外との間を選択的に連通状態にする第2シャッター部材とを備えていることを特徴とする回収排出機構を提供する。
【0006】
本発明の第2形態では、日射により窓ガラスと室内側の日射遮蔽装置との間の内側空間で発生する高温空気を回収して室外へ排出する第1形態の回収排出機構を備えていることを特徴とする窓システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様では、窓ガラスと室内側の日射遮蔽装置との間の内側空間の上端に設けられた回収排出機構が、日射により内側空間で発生する高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部を備え、第1シャッター部材により内側空間と回収部との間が選択的に連通状態に設定され、第2シャッター部材により回収部と室外との間が選択的に連通状態に設定される。その結果、本発明の一態様にしたがう回収排出機構および窓システムでは、強制換気を採用しない簡素な構成にしたがって、窓ガラスと日射遮蔽装置との間の内側空間において日射により発生する高温空気を自然回収し且つ室外へ自然排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態にかかる窓システムの要部構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態の窓システムにおける回収排出機構の動作および作用効果を説明する図である。
【図3】変形例にかかる窓システムの要部構成を概略的に示す図である。
【図4】変形例の窓システムにおける回収排出機構の動作および作用効果を説明する図である。
【図5】第2変形例にかかる窓システムの要部構成を概略的に示す図である。
【図6】外側ドラム部材と内側ドラム部材との協働作用を説明する図である。
【図7】第2変形例の窓システムにおける回収排出機構の動作および作用効果を説明する図である。
【図8】第3変形例にかかる窓システムの要部構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、ブラインドのような日射遮蔽装置と窓ガラスとの間の内側空間で発生すると予測される熱滞留、すなわち日射により内側空間で発生する高温空気の滞留に関する実験を実施した。特に、本実験では、ブラインドの上部に熱溜まり空間(実施形態における回収部に対応)を設けて、その空間に溜まった熱量に関する定量的なデータを得ることができた。加えて、溜まった熱量を効率的に室外へ排出することが省エネルギーの観点から有効であることを確認した。以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態にかかる窓システムの要部構成を概略的に示す図である。本実施形態では、シングルスキン構造の窓システムに対して本発明を適用している。図1を参照すると、本実施形態の窓システムは、透明な窓ガラス1と、窓ガラス1から間隔を隔てて室内側に設置されたブラインド2と、窓ガラス1とブラインド2との間の内側空間12の上端に設けられて、日射により内側空間12で発生する高温空気を回収して室外(建物の外部)へ排出する回収排出機構3とを備えている。
【0011】
回収排出機構3は、内側空間12で発生する高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部31、内側空間12と回収部31との間を選択的に連通状態にする第1シャッター部材32、および回収部31と室外との間を選択的に連通状態にする第2シャッター部材33を有する。さらに、回収排出機構3は、回収部31の内側に設けられた温度センサ34、および温度センサ34の出力に基づいて第1シャッター部材32および第2シャッター部材33の開閉を制御する制御部35を有する。
【0012】
回収部31は、例えば長方形状の断面を有し、発泡ポリスチレンのような高断熱性の部材により形成されている。第1シャッター部材32および第2シャッター部材33として、例えばロードロック式(気密開閉扉式)のシャッター部材を用いることができる。制御部35は、例えばインターロック方式にしたがって第1シャッター部材32および第2シャッター部材33の開閉を制御する。インターロック方式にしたがう制御によれば、双方のシャッター部材32,33が同時に閉じることがあっても、双方のシャッター部材32,33が同時に開くことはない。
【0013】
図2は、本実施形態の窓システムにおける回収排出機構の動作および作用効果を説明する図である。図2では、図面の明瞭化のために制御部35の図示を省略している。本実施形態の窓システムでは、図2(a)に示す不使用状態において、回収排出機構3の双方のシャッター部材32,33が閉じており、回収部31は実質的に密閉状態にある。制御部35は、日射による影響が強くなると、図2(b)に示すように、第2シャッター部材33を閉じたまま、第1シャッター部材32だけを開ける。
【0014】
図2(b)に示す使用開始状態では、内側空間12と回収部31との間だけが連通し、回収部31と室外との間は連通していない。その結果、ブラインド2が日射の一部を吸収し、ブラインド2と窓ガラス1との間の内側空間12において熱滞留が起き、滞留した熱は浮力により上昇する。すなわち、日射により内側空間12で発生した高温空気は上昇気流となり、開いた状態の第1シャッター部材32を介して回収部31の中へ流入する。ただし、第2シャッター部材33は閉じられているので、回収部31の中へ流入した高温空気は室外へ流出することなく、回収部31の内側の気温は高温空気の回収につれて上昇する。高温空気の回収に伴う気温の上昇は、温度センサ34によって検知される。
【0015】
図2(b)に示す状態を維持すると、やがて、図2(c)に示すように、回収部31に十分な高温空気が回収された状態になる。制御部35は、図2(d)に示すように、回収部31への高温空気の十分な回収を検知した温度センサ34の出力に基づいて、第1シャッター部材32を閉じると同時に、第2シャッター部材33を開ける。こうして、回収部31に回収された高温空気は、内側空間12へ戻ることなく、室外へ確実に排出される。高温空気の排出に伴う気温の下降は、温度センサ34によって検知される。
【0016】
日射が比較的弱い冬期や中間期などには、制御部35は、回収部31からの高温空気の十分な排出を検知した温度センサ34の出力に基づいて、第1シャッター部材32を閉じたまま第2シャッター部材33を閉じて、図2(a)に示す不使用状態に戻す。あるいは、日射が比較的強い夏期や中間期などには、回収部31からの高温空気の十分な排出を検知した温度センサ34の出力に基づいて、第1シャッター部材32を開くと同時に第2シャッター部材33を閉じて、図2(b)に示す使用開始状態へ戻し、回収部31への高温空気の回収を再開する。
【0017】
このように、温度センサ34は、回収部31への熱の回収量を把握する手段、すなわち回収部31への高温空気の回収を検知する検知部を構成している。具体的に、温度センサ34は、回収部31へ高温空気が十分に回収されたことを検知するとともに、回収部31から高温空気が十分に排出されたことを検知する。そして、温度センサ34は、図2(c)に示す状態から図2(d)に示す熱排出状態へ移行するタイミングを決定するとともに、図2(d)に示す熱排出状態から図2(a)に示す不使用状態または図2(b)に示す使用開始状態へ移行するタイミングを決定する。
【0018】
本実施形態では、回収部31が発泡ポリスチレンのような高断熱性の部材により形成されているので、回収部31に回収された高温空気の室内側への熱影響は小さく抑えられる。ちなみに、図2(b)に示す使用開始状態において、第1シャッター部材32だけでなく第2シャッター部材33も開けると、回収部31の中へ一旦流入した高温空気が外気の影響(風などの影響)により内側空間12へ、ひいては室内側へ逆流する恐れがある。
【0019】
また、本実施形態では、窓ガラス1と室内側のブラインド2との間の内側空間12の上端に設けられた回収排出機構3が、日射により内側空間12で発生する高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部31を備え、第1シャッター部材32により内側空間12と回収部31との間が選択的に連通状態に設定され、第2シャッター部材33により回収部31と室外との間が選択的に連通状態に設定される。
【0020】
その結果、本実施形態では、強制換気を採用しない簡素な構成にしたがって、日射により内側空間12で発生する高温空気を自然回収し且つ室外へ自然排出することができる。すなわち、本実施形態では、回収排出機構3の作用により熱的性能が向上し、日射や外気の温度などの室内側への影響を小さく抑えることができるので、空調負荷が低減され、ひいては省エネルギーを図ることができる。
【0021】
なお、上述の実施形態では、図2(d)に示す状態において高温空気を回収部31から室外へ排出している間に、日射により内側空間12で発生した高温空気が閉じた状態の第1シャッター部材32の近傍まで上昇し、やがてブラインド2を介して室内側へ高温空気の熱が拡散する恐れがある。そこで、図3に示す変形例にかかる窓システムでは、この高温空気の熱の拡散を小さく抑えるために、窓ガラス1から間隔を隔てた位置において回収部31から下方に延びる垂下壁部36を付設している。
【0022】
図3の変形例は、図1の実施形態と類似の構成を有し、回収排出機構3に垂下壁部36が付設されている点だけが図1の実施形態と相違している。具体的に、垂下壁部36は、例えば回収部31の断面の長方形の一辺に沿って鉛直方向に延びている。図3では、図1の実施形態における要素と同様の機能を果たす要素に図1と同じ参照符号を付している。以下、図1の実施形態との相違点に着目し、図4を参照して図3の変形例の窓システムにおける回収排出機構の動作および作用効果を説明する。図4においても、図面の明瞭化のために制御部35の図示を省略している。
【0023】
図3の変形例にかかる窓システムでは、図1の実施形態の場合と同様に、図4(a)に示す回収排出機構3の不使用状態において双方のシャッター部材32,33が閉じており、図4(b)に示す使用開始状態において第2シャッター部材33を閉じたまま第1シャッター部材32だけを開ける。そして、図1の実施形態の場合と同様に、図4(c)に示すように回収部31に十分な高温空気が回収されると、図4(d)に示すように第1シャッター部材32が閉じて第2シャッター部材33が開き、ひいては回収部31に回収された高温空気が室外へ排出される。
【0024】
日射が比較的強い夏期には、図4(d)に示す状態において高温空気を回収部31から室外へ排出している短期間の間にも、日射により内側空間12で発生した高温空気が閉じた状態の第1シャッター部材32の近傍まで上昇することがある。この場合、図3の変形例の窓システムでは、図1の実施形態の場合とは異なり、閉じた状態の第1シャッター部材32の近傍まで上昇した高温空気は、窓ガラス1と第1シャッター部材32と垂下壁部36とにより画成される非密閉空間に一時的に滞留する。
【0025】
その結果、垂下壁部36の作用により、内側空間12で発生して閉じた状態の第1シャッター部材32の近傍まで上昇した高温空気の熱が室内側へ拡散することが確実に回避される。なお、垂下壁部36を発泡ポリスチレンのような高断熱性の部材で形成することにより、窓ガラス1と第1シャッター部材32と垂下壁部36とにより画成される非密閉空間に一時的に滞留する高温空気の室内側への熱影響を小さく抑えることができる。また、回収部31と垂下壁部36とを同じ材料(高断熱性の部材)により形成する場合、回収部31と垂下壁部36とを一体的に形成することもできる。
【0026】
図3の変形例では、回収部31からの高温空気の十分な排出を検知した温度センサ34の出力に基づいて、第1シャッター部材32を開くと同時に第2シャッター部材33を閉じて、図4(b)に示す使用開始状態へ戻し、回収部31への高温空気の回収、とりわけ第1シャッター部材32の近傍に滞留していた高温空気の回収を行う。あるいは、内側空間12で新たに発生する高温空気および第1シャッター部材32の近傍に滞留していた高温空気の回収部31への回収が不要な場合には、第1シャッター部材32を閉じたまま第2シャッター部材33を閉じて、図4(a)に示す不使用状態に戻す。
【0027】
なお、図1の実施形態および図3の変形例では、制御部35が温度センサ34の出力に基づいて第1シャッター部材32および第2シャッター部材33の開閉を制御している。しかしながら、これに限定されることなく、本発明の範囲内において第1シャッター部材および第2シャッター部材の開閉を手動で行う態様も可能である。
【0028】
ところで、前述したように、図1の実施形態および図3の変形例において第1シャッター部材32および第2シャッター部材33の双方が開いた状態になると、回収部31の中へ一旦流入した高温空気が外気の影響(風などの影響)により内側空間12へ、ひいては室内側へ逆流する恐れがある。シャッター部材の開閉を手動で行う場合、操作ミスなどによりシャッター部材32および33の双方が開いた状態になる可能性は否定できない。また、シャッター部材の開閉を自動制御する場合であっても、停電や制御部35の誤作動などによりシャッター部材32および33の双方が開いた状態になる可能性は否定できない。
【0029】
図5に示す第2変形例では、回収部が内側空間および室外の双方に連通した状態にならないように構成されているので、回収部の中へ一旦流入した高温空気が外気の影響により内側空間(ひいては室内側)へ逆流するのを確実に防止することができる。具体的に、第2変形例の回収排出機構3Aは、内側空間12で発生する高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部として、円筒状の断面を有する外側ドラム部材41を有する。外側ドラム部材41には、内側空間12に開口した第1開口部41aおよび室外に開口した第2開口部41bが設けられている。
【0030】
また、回収排出機構3Aは、図1の実施形態における第1シャッター部材32および第2シャッター部材33に対応する部材として、外側ドラム部材41に内接しつつ中心軸42c廻りに回転可能な円筒状の断面を有する内側ドラム部材42を有する。内側ドラム部材42には、第1開口部41aおよび第2開口部41bに応じた2つの開口部42aおよび42bが設けられている。さらに、回収排出機構3Aは、内側ドラム部材42の内側(ひいては回収部としての外側ドラム部材41の内側)に設けられた温度センサ43、および温度センサ43の出力に基づいて内側ドラム部材42の回転を制御する制御部44を有する。
【0031】
外側ドラム部材41および内側ドラム部材42は、例えば発泡ポリスチレンのような高断熱性の部材により形成されている。内側ドラム部材42は、回収部としての外側ドラム部材41が内側空間12および室外に連通しない第1状態と、外側ドラム部材41が内側空間12だけに連通した第2状態と、外側ドラム部材41が室外だけに連通した第3状態との間で切り換え可能に構成されている。さらに詳細には、内側ドラム部材42は、第1状態と第2状態と第3状態との間の切り換えに際して外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した第4状態にならないように、回転可能な角度範囲が機械的に制限されている。
【0032】
図6は、外側ドラム部材41と内側ドラム部材42との協働作用を説明する図である。図6(a)には、外側ドラム部材41の第1開口部41aと内側ドラム部材42の開口部42aとが重なり且つ外側ドラム部材41の第2開口部41bと内側ドラム部材42の開口部42bとが重なった状態、すなわち外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した第4状態が示されている。
【0033】
以下、説明の理解を容易にするために、図6の紙面において外側ドラム部材41の中心すなわち内側ドラム部材42の中心軸42cと第1開口部41aの中心とを結ぶ線分61が図中鉛直方向に延びており、中心軸42cと第2開口部41bの中心とを結ぶ線分62が線分61と150度の角度をなしているものとする。また、図6(a)において第1開口部41aと開口部42aとがほぼ完全に重なり且つ第2開口部41bと開口部42bとがほぼ完全に重なっているものとする。
【0034】
この場合、図6(a)の第4状態から内側ドラム部材42が反時計廻りに60度回転すると、図6(b)に示す第1状態、すなわち外側ドラム部材41が内側空間12および室外に連通しない状態が得られる。図6(b)の第1状態から内側ドラム部材42が反時計廻りに90度回転すると、図6(c)に示す第2状態、すなわち外側ドラム部材41が内側空間12だけに連通した状態が得られる。図6(c)の第2状態から内側ドラム部材42が反時計廻りに60度回転すると、図6(d)に示す第3状態、すなわち外側ドラム部材41が室外だけに連通した状態が得られる。
【0035】
このように、内側ドラム部材42が図6(b)に示す第1状態と図6(d)に示す第3状態との間で150(=90+60)度の角度範囲に亘ってのみ回転するように構成されていれば、図6(b)の第1状態と図6(c)の第2状態と図6(d)の第3状態との間の切り換えに際して、外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した図6(a)の第4状態にはならない。図5に示す第2変形例では、図6(b)に示す第1状態と図6(d)に示す第3状態との間で150度の角度範囲に亘ってのみ内側ドラム部材42が回転するように、例えば周知のストッパ手段などにより内側ドラム部材42の回転可能な角度範囲が機械的に制限されている。
【0036】
図7は、第2変形例の窓システムにおける回収排出機構の動作および作用効果を説明する図である。図7では、図面の明瞭化のために制御部44の図示を省略している。第2変形例の窓システムでは、図7(a)に示す不使用状態(図6(b)の第1状態に対応)において、回収排出機構3Aの外側ドラム部材41の第1開口部41aおよび第2開口部41bがともに内側ドラム部材42の作用により閉じており、回収部としての外側ドラム部材41は実質的に密閉状態にある。制御部44は、日射による影響が強くなると、内側ドラム部材42を反時計廻りに90度回転させて、図7(b)に示すように、外側ドラム部材41の第2開口部41bを閉じたまま第1開口部41aだけを開ける。
【0037】
図7(b)に示す使用開始状態(図6(c)の第2状態に対応)では、回収部としての外側ドラム部材41と内側空間12との間だけが連通し、外側ドラム部材41と室外との間は連通していない。その結果、日射により内側空間12で発生した高温空気は上昇気流となり、開いた状態の第1開口部41aを介して外側ドラム部材41の中へ流入する。ただし、第2開口部41bは閉じられているので、外側ドラム部材41の中へ流入した高温空気は室外へ流出することなく、外側ドラム部材41の内側の気温は高温空気の回収につれて上昇する。高温空気の回収に伴う気温の上昇は、温度センサ43によって検知される。
【0038】
図7(b)に示す状態を維持すると、やがて、図7(c)に示すように、外側ドラム部材41の内側に十分な高温空気が回収された状態になる。制御部44は、外側ドラム部材41への高温空気の十分な回収を検知した温度センサ43の出力に基づいて、内側ドラム部材42を反時計廻りに60度回転させて、図7(d)に示すように、外側ドラム部材41の第1開口部41aを閉じるとともに第2開口部41bを開ける。こうして、外側ドラム部材41の内側に回収された高温空気は、内側空間12へ戻ることなく、室外へ確実に排出される。高温空気の排出に伴う気温の下降は、温度センサ43によって検知される。
【0039】
日射が比較的弱い冬期や中間期などには、制御部44は、外側ドラム部材41からの高温空気の十分な排出を検知した温度センサ43の出力に基づいて、内側ドラム部材42を時計廻りに150度回転させて、外側ドラム部材41の第1開口部41aおよび第2開口部41bをともに閉じて、図7(a)に示す不使用状態に戻す。あるいは、日射が比較的強い夏期や中間期などには、外側ドラム部材41からの高温空気の十分な排出を検知した温度センサ34の出力に基づいて、内側ドラム部材42を時計廻りに60度回転させて、外側ドラム部材41の第1開口部41aを開くとともに第2開口部41bを閉じて、図7(b)に示す使用開始状態へ戻し、外側ドラム部材41の内側への高温空気の回収を再開する。
【0040】
このように、図5の第2変形例においても、図1の実施形態および図3の変形例の場合と同様に、強制換気を採用しない簡素な構成にしたがって、日射により内側空間12で発生する高温空気を自然回収し且つ室外へ自然排出することができる。すなわち、第2変形例においても、回収排出機構3Aの作用により熱的性能が向上し、日射や外気の温度などの室内側への影響を小さく抑えることができるので、空調負荷が低減され、ひいては省エネルギーを図ることができる。
【0041】
特に、第2変形例では、図1の実施形態および図3の変形例の場合とは異なり、外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した状態にならないように回転可能な角度範囲が機械的に制限されているので、停電や制御部44の誤作動などにより外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した状態になる可能性はなく、外側ドラム部材41の中へ一旦流入した高温空気が外気の影響により内側空間12(ひいては室内側)へ逆流するのを確実に防止することができる。
【0042】
なお、図5の第2変形例では、制御部44が温度センサ43の出力に基づいて内側ドラム部材42を回転させることにより外側ドラム部材41の第1開口部41aおよび第2開口部41bの開閉を制御している。しかしながら、これに限定されることなく、本発明の範囲内において内側ドラム部材42の回転による外側ドラム部材41の第1開口部41aおよび第2開口部41bの開閉を手動で行う態様も可能である。この場合も、外側ドラム部材41の回転可能な角度範囲が機械的に制限されているので、操作ミスなどにより外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した状態になる可能性はなく、外側ドラム部材41の中へ一旦流入した高温空気が外気の影響により内側空間12(ひいては室内側)へ逆流するのを確実に防止することができる。
【0043】
また、図5の第2変形例では、外側ドラム部材41の第1開口部41aおよび第2開口部41bに応じた2つの開口部42aおよび42bが、内側ドラム部材42に設けられている。しかしながら、これに限定されることなく、外側ドラム部材および内側ドラム部材の具体的な構成、例えば外側ドラム部材の開口部の配置、内側ドラム部材の開口部の数および配置などについては様々な形態が可能である。
【0044】
ところで、例えば中間期の朝や夜には、室外における空気(外気)が室内における空気よりも冷たい。したがって、内側空間の下側において室外から室内へ冷気を取り入れ且つ内側空間の上側において室内から室外へ空気を排出することにより自然換気を行うことが効率的である。そこで、図8に示す第3変形例では、図1の実施形態の構成において、内側空間12の下端に設けられて内側空間12と室外との間を選択的に連通状態にする第3シャッター部材37を付設している。第3シャッター部材37の開閉は、制御部35により制御される。
【0045】
第3変形例にかかる回収排出機構3Bでは、例えば中間期の朝や夜に、制御部35は第1シャッター部材32、第2シャッター部材33および第3シャッター部材37を同時に開ける。その結果、室外から第3シャッター部材37を介して内側空間12の下側へ新鮮な冷気が自然に取り入れられるとともに、室内から第1シャッター部材32および第2シャッター部材33を介して室外へ空気が自然に排出される。内側空間12の下端に設けられた第3シャッター部材37を利用する自然換気は、ペリメータの温熱環境および省エネルギーの観点において効率的である。
【0046】
内側空間12の下端に付設された第3シャッター部材を利用して自然換気を行う手法は、図3の変形例および図5の第2変形例に対しても同様に適用可能である。ただし、図5の第2変形例に対して上述の自然換気の手法を適用する場合には、内側ドラム部材42の回転角度範囲の機械的な制限を解除して、外側ドラム部材41が内側空間12および室外の双方に連通した第4状態も実現可能に構成する必要がある。
【0047】
なお、図1の実施形態、図3の変形例、および図8の第3変形例では、シャッター部材32,33,37として、回転する複数枚の羽根部材を有する通常のダンパ式のシャッター部材を用いる例が図示されている。しかしながら、これに限定されることなく、シャッター部材の具体的な構成については様々な形態が可能である。例えば、スライドする複数枚の羽根部材を有するスライドダンパ式のシャッター部材、揺動する1枚のプレート部材を有する排煙窓式のシャッター部材、外側ドラム部材および内側ドラム部材を有する二重ドラム構造のシャッター部材などを用いることもできる。
【0048】
また、上述の説明では、回収部31または回収部としての外側ドラム部材41への高温空気の回収を検知する検知部として、温度センサ34または43を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、例えば圧力センサのような検知部を用いて回収部への高温空気の回収を検知しても良い。
【0049】
また、上述の説明では、窓ガラス1から間隔を隔てて室内側に設置される日射遮蔽装置としてブラインド2を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、例えばロールスクリーンのような日射遮蔽装置を用いる窓システムに対しても同様に本発明を適用することができる。
【0050】
また、上述の説明では、シングルスキン構造の窓システムに対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、例えばダブルスキン構造の窓システムに対しても同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 窓ガラス
2 ブラインド(日射遮蔽装置)
3,3A,3B 回収排出機構
31 回収部
32,33,37 シャッター部材
34,43 温度センサ
35,44 制御部
36 垂下壁部
41 外側ドラム部材
42 内側ドラム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射により窓ガラスと室内側の日射遮蔽装置との間の内側空間で発生する高温空気を回収して室外へ排出する回収排出機構であって、
前記内側空間の上端に設けられて前記高温空気を一時的に回収するための実質的に密閉可能な回収部と、
前記内側空間と前記回収部との間を選択的に連通状態にする第1シャッター部材と、
前記回収部と前記室外との間を選択的に連通状態にする第2シャッター部材とを備えていることを特徴とする回収排出機構。
【請求項2】
前記回収部の内側に設けられて、前記回収部への高温空気の回収を検知する検知部と、該検知部の出力に基づいて前記第1シャッター部材および前記第2シャッター部材の開閉を制御する制御部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の回収排出機構。
【請求項3】
前記検知部は、温度センサを有することを特徴とする請求項2に記載の回収排出機構。
【請求項4】
前記制御部は、インターロック方式にしたがって前記第1シャッター部材および前記第2シャッター部材の開閉を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の回収排出機構。
【請求項5】
前記第1シャッター部材および前記第2シャッター部材のうちの少なくとも一方は、ロードロック式のシャッター部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回収排出機構。
【請求項6】
窓ガラスから間隔を隔てた位置において前記回収部から下方に延びる垂下壁部を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回収排出機構。
【請求項7】
前記回収部は長方形状の断面を有し、前記垂下壁部は前記断面の長方形の一辺に沿って鉛直方向に延びていることを特徴とする請求項6に記載の回収排出機構。
【請求項8】
前記垂下壁部は、高断熱性の部材により形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の回収排出機構。
【請求項9】
前記垂下壁部は、前記回収部と一体的に形成されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の回収排出機構。
【請求項10】
前記回収部は、前記内側空間に開口した第1開口部および前記室外に開口した第2開口部が設けられた円筒状の断面を有する外側ドラム部材を有し、
前記第1シャッター部材および前記第2シャッター部材は、前記外側ドラム部材に内接しつつ回転可能なドラム部材であって、前記第1開口部および前記第2開口部に応じた複数の開口部が設けられた円筒状の断面を有する内側ドラム部材を有し、
前記内側ドラム部材は、前記回収部が前記内側空間および前記室外に連通しない第1状態と、前記回収部が前記内側空間だけに連通した第2状態と、前記回収部が前記室外だけに連通した第3状態との間で切り換え可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回収排出機構。
【請求項11】
前記内側ドラム部材は、前記第1状態と前記第2状態と前記第3状態との間の切り換えに際して前記回収部が前記内側空間および前記室外の双方に連通した第4状態にならないように、回転可能な角度範囲が制限されていることを特徴とする請求項10に記載の回収排出機構。
【請求項12】
前記内側空間の下端に設けられて前記内側空間と前記室外との間を選択的に連通状態にする第3シャッター部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の回収排出機構。
【請求項13】
前記回収部は、高断熱性の部材により形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の回収排出機構。
【請求項14】
日射により窓ガラスと室内側の日射遮蔽装置との間の内側空間で発生する高温空気を回収して室外へ排出する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の回収排出機構を備えていることを特徴とする窓システム。
【請求項15】
前記日射遮蔽装置は、ブラインドまたはロールスクリーンであることを特徴とする請求項14に記載の窓システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92039(P2013−92039A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−213347(P2012−213347)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】