説明

回路基板

【課題】端子間のマイグレーションを防止する回路基板を提供する。
【解決手段】並列した端子22a及び22bと、並列した端子22a及び22bに接続している回路を覆うと共に、一の端面から並列した端子22a及び22bを突出させ、かつ当該一の端面の、隣接する端子22aと端子22bとの間に、凹部26が形成された絶縁体40と、を備えることにより、隣接する端子22aと端子22bとの間の沿面距離を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体で被覆された回路基板に係り、特に絶縁体の一の端面から並列した複数の端子が突出している回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁体の端面から複数の端子が並列して突出する回路基板では、当該絶縁体の端面上に生じた沿面放電による、隣接する端子間のマイグレーションが問題となる。
【0003】
端子間のマイグレーションを防止するには、端子間での絶縁体の表面に沿った最短距離である沿面距離を大きくする必要があり、例えば、隣接する端子同士をできるだけ引き離すことが考えられる。
【0004】
しかしながら、機器の小型化を鑑みると、当該機器に使用される回路基板の端子間の間隔を無条件で大きくすることはできない。
【0005】
特許文献1には、隣接する端子同士をフィルム状樹脂で被覆した半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−161846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている半導体装置は、フィルム状樹脂を別途要し、フィルム状樹脂を装着する工程が必要である。
【0008】
別途部品及び当該部品を装着するための工程を要することから、製造コストが嵩み、工数が増加するという問題があった。
【0009】
隣接する端子間のマイグレーションは湿度が高い状況下で生じやすいので、フィルム状樹脂の代わりに、各端子が突出している絶縁体の端面に防滴剤を塗布することも考えられるが、防滴剤を塗布するための工程を別途要する。
【0010】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、新たな部品又は新たな工程を別途要さずに、端子間のマイグレーションを防止する回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するために請求項1記載の発明に係る回路基板は、並列した複数の端子と、前記並列した複数の端子に接続している回路を覆うと共に、一の端面から前記並列した複数の端子を突出させ、かつ該一の端面の、隣接する端子と端子との間に、凹部又は凸部が形成された絶縁体と、を備えている。
【0012】
請求項1記載の回路基板は、例えば薄板状の端子が、並列に隣接して設けられている。
【0013】
また、請求項1の回路基板は、複数の端子に接続している回路が樹脂等の絶縁体で被覆されており、絶縁体の一の端面から、複数の端子が突出している。
【0014】
また、隣接する端子間の絶縁体には凹部又は凸部が設けられ、端子間の沿面距離が大きくなるようになっている。
【0015】
このように、本発明では、隣接する端子間の絶縁体に凹凸を設けることにより、端子間の沿面距離が大きくなるので、新たな部品又は新たな工程を別途要さずに、隣接する端子間でのマイグレーションを防止できる。
【0016】
また、請求項1記載の発明は、請求項2記載のように、前記凹部又は凸部は、前記絶縁体の前記一の端面で隣接する端子と端子との間を通って、前記一の端面を横切るように連続的に設けられていることが好ましい。
【0017】
この請求項2の発明によれば、端子が突出している絶縁体の一の端面において、隣接する端子間を含めて、端子間の沿面距離を増大させる凹部又は凸部が、当該一の端面を横切るように設けられるので、端子間のマイグレーションをより確実に防止できる。
【0018】
なお、請求項1記載の発明は、請求項3記載のように、前記一の端面は、前記並列した複数の端子の先端と平行であることが好ましい。
【0019】
この請求項3の発明によれば、並列する端子の先端に平行な端面の各端子間に凹部又は凸部を設けることで、隣接する端子間でのマイグレーションを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る回路基板の全体図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係る回路基板を図1の矢印Aの方向から見た場合のバスバー付近の拡大図である。
【図2B】本発明の実施の形態に係る回路基板を図1の矢印Bの方向から見た場合のバスバー付近の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る回路基板における端子間の絶縁体の形状の第1の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る回路基板における端子間の絶縁体の形状の第2の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る回路基板における端子間の絶縁体の形状の第3の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る回路基板における端子間の絶縁体の形状の第4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る回路基板10の全体図である。
【0022】
図1の回路基板10は、ブラシ付きブロワモーターの駆動回路に係るもので、当該回路基板上に、トランジスタ、キャパシタ及びハイブリッドIC等の部品が実装されることにより、ブラシ付きブロワモーターの駆動回路が構成される。
【0023】
回路基板10には、電力の分配に使用されるバスバー20が設けられており、バスバー20は、ブラシ付きブロワモーターを駆動させる電力が通電される端子22a及び22bを有する。
【0024】
端子22a及び22bは、互いに極性が異なり、端子22aと端子22bとに通電される電流の電位差は、略12Vである。
【0025】
図2Aは、本実施の形態に係る回路基板10を図1の矢印Aの方向から見た場合のバスバー付近の拡大図であり、図2Bは、本実施の形態に係る回路基板10を図1の矢印Bの方向から見た場合のバスバー付近の拡大図である。
【0026】
図2A及び図2Bに示したように、バスバー20を構成する端子22a及び22bは、端子間隔24で示した間隔で絶縁体40から突出している。
【0027】
端子22a及び22bは、ハッチングで示した絶縁体40の端面から、図1における矢印Bとは反対方向に突出した後、略直角に折れ曲がって、図1における矢印Aとは反対方向に伸びている。
【0028】
また、図2Aに示したように、端子22aと端子22bとの間には、断面が半円状を呈する溝状の凹部26が形成されている。
【0029】
かかる凹部26を設けることにより、端子22aと端子22bとの間の沿面距離を増大させている。
【0030】
端子間のマイグレーションの原因である沿面放電は、2つの導体間の沿面距離が小さいほど生じやすい。従って、本実施の形態のように、隣接する端子の間の絶縁体の端面の形状を平面ではなく、図2Aに示したように、凹部26を設けることで、端子間隔24を大きくせずとも隣接する端子間のマイグレーションを防止できる。
【0031】
また、凹部26を設けることにより、端子22a及び22bが突出している絶縁体40の端面に沿面放電を防止するための防滴剤を塗布する必要もない。
【0032】
図2Aに示す断面が半円状の凹部を形成するには、本実施の形態に係る回路基板10を構成する金属部品に絶縁体40を被覆する際に用いられる金型に、凹部26が形成されるための突起を設けておけばよい。
【0033】
かかる金型を用いれば、当該金属部品が絶縁体40で被覆されるのと同時に、図2Aに示した凹部26が絶縁体40の端子22aと端子22bとの間に形成されるので、凹部26を設けるための別途の工程を要しない。
【0034】
なお、絶縁体40は、合成樹脂で構成され、当該合成樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂又はポリカーボネート等が使用可能である。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る回路基板10における端子間の絶縁体の形状の第1の変形例を示す図であり、端子22aと端子22bとの間には、凹部26に代えて、断面が半円状を呈する畝状の凸部28が設けられている。
【0036】
図4は、本実施の形態に係る回路基板10における端子間の絶縁体の形状の第2の変形例を示す図であり、端子22aと端子22bとの間には、断面が略V字状を呈する溝状の凹部30が設けられている。
【0037】
図5は、本実施の形態に係る回路基板10における端子間の絶縁体の形状の第3の変形例を示す図であり、端子22aと端子22bとの間には、断面が略方形状を呈する溝状の凹部30が設けられている。
【0038】
図6は、本実施の形態に係る回路基板10における端子間の絶縁体の形状の第4の変形例を示す図であり、端子22aと端子22bとの間には、断面が略U字状を呈する溝状の凹部30が設けられている。
【0039】
以上、図3〜6に示したいずれの変形例であっても、端子22aと端子22bとの間の沿面距離を大きくすることができるので、端子と端子との間隔を大きくすることなく、また、沿面放電を防止するための防滴剤の塗布を要することなく、隣接する端子間でのマイグレーションを防止することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、端子が突出している絶縁体の端面において、隣接する端子間を通ると共に、当該端面を横切るように連続的に設けられた溝状の凹部又は畝状の凸部によって、隣接する端子間の沿面距離を増大させた。
【0041】
しかしながら、隣接する端子間の沿面距離を大きくできるのであれば、絶縁体の端面を横切るように設けられた溝状の凹部又は畝状の凸部でなくともよい。
【0042】
例えば、隣接する端子間の絶縁体を、当該端子間の近傍において、所定の長さだけ設けられた溝状の凹部又は畝状の凸部によって、隣接する端子間の沿面距離を増大させてもよい。
【0043】
また、隣接する端子間の絶縁体を、略半球状、略円錐状、略円柱状又は略角柱状に抉ったような凹部によって、隣接する端子間の沿面距離を増大させてもよい。
【0044】
また、隣接する端子間の絶縁体を、略半球状、略円錐状、略円柱状又は略角柱状に盛り上げたような凸部によって、隣接する端子間の沿面距離を増大させてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 回路基板
20 バスバー
22a、22b 端子
24 端子間距離
26 凹部
28 凸部
30、32、34 凹部
40 絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列した複数の端子と、
前記並列した複数の端子に接続している回路を覆うと共に、一の端面から前記並列した複数の端子を突出させ、かつ該一の端面の、隣接する端子と端子との間に、凹部又は凸部が形成された絶縁体と、
を備える回路基板。
【請求項2】
前記凹部又は凸部は、前記絶縁体の前記一の端面で隣接する端子と端子との間を通って、前記一の端面を横切るように連続的に設けられている請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記一の端面は、前記並列した複数の端子の先端と平行である請求項1又は2に記載の回路基板。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115095(P2013−115095A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257411(P2011−257411)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】