説明

回転コネクタ装置

【課題】回転コネクタにおいて他の部材との接続のために設けられた弾性係合突起部分での雑音の発生を抑制する。
【解決手段】車体側に固定されるステータと、該ステータに対して相対回転可能に取り付けられステアリングホイール51のボス部52を受けるロテータ31を有し、該ロテータ31に前記ボス部52の係合溝53,54と係合する圧入係合突起36と弾性係合突起37が形成されるとともに、これら係合突起のうちの弾性係合突起37が、前記係合溝53の内側面53aに対向する弾性支持片38を有した回転コネクタ装置11であって、前記弾性支持片38における前記内側面53aに対向する対向面に、弾性支持片38の幅方向に湾曲する湾曲面38bが形成された回転コネクタ装置11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転コネクタ装置に関し、より詳しくは、雑音の発生を抑制できるような回転コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタ装置は、固定側部材と、これに対して相対回転可能に取り付けられる回転側部材を備える。自動車の車体とステアリングホイールとの間を電気的に接続するための回転コネクタ装置では、車体側、具体的にはコンビネーションスイッチ側に固定される固定側部材と、ステアリングホイールを相対回転不可に受ける回転側部材を有する。
【0003】
つまり、ステアリングホイールが回転することで回転側部材は回転し、前記コンビネーションスイッチとの間に設けられた舵角センサへ前記回転が伝達され、操舵角を検出する。
【0004】
この操舵角は、車両制御の信頼性の観点から、正しく検出されなければならない。そこで、下記特許文献1のような回転コネクタ装置が案出された。
【0005】
これは、部材間における回転力が伝達される伝達箇所の数を少なくして、伝達のための係合部分でのガタ付きによって回転角伝達に誤差が発生するのを抑制しようとするもので、固定側部材と、回転側部材と、固定側部材に対して回転側部材を回転自在に結合するとともに回転側部材と連動して回転し、舵角センサに回転を伝達するアタッチメントとを備え、このアタッチメントに、ステアリングホイールと係合する2個のホイール係合突起を設けたというものである。ホイール係合突起のうちの一方は、ステアリングホイールのホイール係合凹部に緩みなく密に係合するもので、他方は、ホイール係合凹部に弾性的に係合し、一方のホイール係合突起が破損したときにも係合状態が維持できるように予備的な係合を維持するものである。
【0006】
弾性的に係合するこのホイール係合突起は、矢印(矢の形の印)の先端のような形をなす2本の弾性片部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図9(a)に示したように、前記弾性的に係合するホイール係合突起101の弾性片部102は、ホイール係合凹部103に当たる面102aが平らであり、ホイール係合凹部103も平らであるので、ホイール係合凹部103の対向面103aに対しては、面または線で当たることになる。
【0009】
このため、振動等でホイール係合突起101の弾性片部102が震えたときに、図9(b)に仮想線で示したように、弾性片部102とホイール係合凹部103との間で接触、非接触が繰り返し起こり、音が発生する。この音は、回転コネクタ装置内の開放された空間内で起こることと、振動が各部材も通じて伝導・伝播されることにより、比較的大きく感じ、不快な雑音となる。
【0010】
そこで、この発明は、雑音の発生を抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、該回転側部材に前記回転入力部材の係合溝と係合する複数の係合突起が形成されるとともに、これら係合突起のうちの少なくとも一の係合突起が前記係合溝の内側面に対向する弾性支持片を有した回転コネクタ装置であって、前記弾性支持片における前記内側面に対向する対向面に、弾性支持片の幅方向に湾曲する湾曲面が形成された回転コネクタ装置である。
【0012】
別の手段は、前記弾性支持片における前記内側面に接触する部位に、前記内側面と点接触する当接部が形成された回転コネクタ装置である。
【0013】
弾性支持片の湾曲面や当接部は、係合溝の内側面に対して点で接触する。このため、振動等で弾性支持片が震えた場合でも、当たりが柔らかい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、係合突起の弾性支持片と係合溝の内側面との接触面積が小さいので、衝突したときの音を抑えることができる。この結果、雑音の発生を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】要部を示す横断面図。
【図2】回転コネクタ装置の斜視図。
【図3】回転コネクタ装置の斜視図。
【図4】図2のA−A断面図。
【図5】回転コネクタ装置の一部の部材を外した状態の平面図。
【図6】圧入係合突起の平面図と正面図。
【図7】弾性係合突起の平面図と正面図と断面図。
【図8】他の例に係る弾性係合突起を示す断面図。
【図9】従来技術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、この発明の要部を示す横断面図であり、回転コネクタ装置11において雑音の発生を抑制するという目的を、弾性支持片38における係止溝53の内側面53aに対向する対向面に、弾性支持片38の幅方向に湾曲する湾曲面38bを形成する、または弾性支持片38における係止溝53の内側面53aに接触する部位に、前記内側面53aと点接触する当接部38cを形成するという構成にて実現した。
【0017】
まず、回転コネクタ装置11全体の概略構造について説明してから、その要部について説明する。
【0018】
図2は、回転コネクタ装置11を上面側から見た斜視図、図3は、回転コネクタ装置11を下面側から見た斜視図である。これらの図に示すように、回転コネクタ装置11は、下面側に位置する固定側部材としてのステータ21と、上面側に位置する回転側部材の一部としてのロテータ31と、これらステータ21及びロテータ31間でのステータ21に対するロテータ31の中立位置(回転コネクタ装置の中立位置)を保持する回転側部材の一部としての回転ロックユニット41を備える。
【0019】
前記ステータ21は、図4の縦断面図にも示すように、中央に円形の穴を有する略環状をなす固定側リング板部材22と、この固定側リング板部材22における外周側部位の上面に係合して一体化される平面視円形をなす外周筒部材23とで構成される。
【0020】
固定側リング板部材22は、下面に、図示しないコンビネーションスイッチに固定する固定爪24等の固定手段を有する。また、外周筒部材23を固定する位置よりも外周側には、適宜外方に張り出すコネクタハウジング25が形成されている。
【0021】
外周筒部材23は、内外二重壁構造に構成され、内側に位置する内側壁部26の方が外側に位置する外側壁部27よりも高さが低くなるように形成される。また、外側壁部27の外周側であって、前記固定側リング板部材22のコネクタハウジン25に対応する部位には、その固定側リング板部材22のコネクタハウジング25と組み合わさるコネクタハウジング28が形成され、これらコネクタハウジング25,28内にはコネクタ29(図2参照)が内蔵されている。
【0022】
前記ロテータ31は、前記ステータ21の固定側リング板部材22の上面側と外周筒部材23の内周側との間に、図示しないフラットケーブルを収容するための環状をなす収容空間Sを形成できるように、平面視リング状をなす天板部32と、この天板部32の内周縁から垂設された内周筒部33とを一体に有する。
【0023】
天板部32の大きさは、前記外周筒部材23の内側壁部26の上端に被さるが、外側壁部27には接触しない大きさに設定されている。また、天板部32には、コネクタハウジング34が一体形成され、コネクタ35が内蔵されている。
【0024】
内周筒部33の内周面には、回転入力部材としてのステアリングホイール51の回転を伝達できるようにするために、2個の係合突起36,37が一体に形成されている。これら係合突起36,37は、図4に示したようにステアリングホイール51の芯金のボス部52に形成された係合溝53,54に係合するものである。
【0025】
すなわち、ロテータ31の内周筒部33の内周側はステアリングホイール51を受ける受け部となり、上面側から前記ボス部52を挿入すると、係合溝53と係合突起37、係合溝54と係合突起36が係合しあい、相対回転不可となる。
【0026】
前記回転ロックユニット41は、断面横L字状で平面円形をなすロック部材42と、このロック部材42を受けるとともに、前記ロテータ31の内周筒部33に係合して一体化される受け部材43と、これらロック部材42と受け部材43との間に介装されてこれらが離間する方向に付勢するばね部材44を有する。ばね部材44の付勢力に任せておくことによってロック部材42が上動し、ロック部材42に一体に形成されたロック突起45がロテータ31に係止して前記ロテータ31の回転を阻止する。一方、ばね部材44の付勢力に抗してロック部材42を押し下げると、すなわち、前記ステアリングホイール51のボス部52を挿入すると、ロック部材42によるロックが解除され、ロテータ31が回転するようになる。
【0027】
このロテータ31の回転と共に、前記受け部材43も一体に回転する。この受け部材43の下面には、図示しない舵角センサに係合する舵角センサ係合部46が形成されているので、ロテータ31の回転が舵角センサに入力されるという構成である。
【0028】
つぎに、前記要部について説明する。
図5は、前記回転ロックユニット41を外した状態の平面図である。この図に示すように、ロテータ31の前記2個の係合突起36,37は、中心を挟んで相対向するように形成されている。
【0029】
一方の係合突起36は、一部を変形させて圧入状態を創出するもの(以下、「圧入係合突起36」という。)であり、図6(a)に示したように、内周方向に突設されていて略角柱状をなす。圧入係合突起36の上端側部分は、上側ほど細くなるように形成され、この上端側部分の正面には、上側ほど外周側へ後退するように傾斜する傾斜面36aが形成されている。そしてこのような上端側部分より下側の両側縁には、図6(b)にも示したように外方に張り出す潰しリブ36bが形成されている。潰しリブ36bは、断面三角形をなす。
【0030】
この潰しリブ36bが、前記変形される部分であり、図6(b)に仮想線で示したような係合溝54が挿嵌されたときに、潰しリブ36bが潰されて、係合溝54内で圧入状態が得られ、ロテータ31とステアリングホイール51との極めて高い一体性が得られることになる。
【0031】
他方の係合突起37は、弾性支持片38を有して予備的に係合されるもの(以下、「弾性係合突起37」という。)であり、図7(a)に示したように、内周方向に突設されて平面視T字形に形成されている。弾性係合突起37は、角柱状の連結部37aを有するとともに、この連結部37aの正面側の上端部に、上側ほど外周側に後退するように傾斜する傾斜面37bが形成されている。また、このような上端部から、図7(b)に示したように、外側下方に向けて斜めに下がる前記弾性支持片38を有する。弾性支持片38の下端部には、その先を下に下げるように曲がる屈曲部38aが形成されている。
【0032】
そしてこの弾性支持片38の全体の断面形状は、図7(b)のB−B断面図である図7(c)に示したように、前記係合溝53の内側面53aに対向する対向面が弾性支持片38の幅方向に湾曲する形状である。
【0033】
すなわち、弾性支持片38における係合溝53の内側面53aに対向する対向面に、弾性支持片38の幅方向に湾曲する湾曲面38bを有する。また、弾性支持片38における係合溝53の内側面53aに接触する部位に、その内側面と点接触する当接部38cを有する。当接部38cは湾曲面38bのうちの頂部に形成されることになる。
【0034】
一方、前記係合溝53は、下方ほど幅広となる溝で形成され、前記内側面53aは正面視ハ字状をなすように斜めに形成され、それぞれの内側面53aは平らに形成されている。
【0035】
前記湾曲面38bまたは当接部38cについて他の例を示すと、たとえば図8(a)に示したように、弾性支持片38の幅方向の一部、中央部分のみに、弾性支持片38の長手方向に沿って延びて上面が弾性支持片38の幅方向に湾曲する凸条39aを形成することで、前記湾曲面38bまたは当接部38cを構成することもできる。凸条39aの稜線部分が前記湾曲面38bまたは当接部38cである。
【0036】
また、図8(b)に示したように、図8(a)で例示した凸条39aよりも細い断面半円形をなす凸条39aを形成しても、前記湾曲面38bまたは当接部38cを構成できる。凸条39aの稜線部分が前記湾曲面38bまたは当接部38cである。このような凸条39aは複数本形成してもよい。
【0037】
図8(c)に示したように、凸条39aではなく、半球状をなす突起39bを形成しても、前記湾曲面38bまたは当接部38cを構成できる。突起39bの頂部が前記湾曲面38bまたは当接部38cである。前記突起39bは、円錐形、角錐形であってもよい。
【0038】
なお、前記舵角センサは必須の構成要素ではない。
【0039】
このように構成された回転コネクタ装置11では、係合溝53の内側面53aが平らであるのに対して、弾性係合突起37の弾性支持片38には湾曲面38bまたは当接部38cが形成されているので、両者の接触面積は点接触であって小さい。このため、弾性係合突起37とステアリングホイール51の係合溝53との係合がなされた状態において、振動等によって、弾性支持片38が係合溝53の内側面53aに対して激しく接離を繰り返したとしても、音の発生を小さく抑えることができるとともに、振動の伝導・伝播も抑えることができる。このため、雑音の発生を抑制できる。
【0040】
湾曲面38bを弾性支持片38の幅方向全体にわたって形成した場合には、その部分の強度を確保して、係合溝53の内側面53aに衝突を繰り返したときの耐久性が得られる。
【0041】
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明の固定側部材は、ステータ21に対応し、
以下同様に、
回転側部材は、ロテータ31と回転ロックユニット41に対応し、
回転入力部材は、ステアラングホイール51に対応するも、
この発明は、前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0042】
たとえば、前記回転側部材には、ロテータのほか、ロテータとともに回転する部材、前記の例で言えば回転ロックユニットを含むので、弾性支持片を有した係合突起は、回転ロックユニット等の他の部材に備えることもできる。
【符号の説明】
【0043】
11…回転コネクタ装置
21…ステータ
31…ロテータ
41…回転ロックユニット
36…圧入係合突起
37…弾性係合突起
38…弾性支持片
38b…湾曲面
38c…当接部
51…ステアリングホイール
53…係合溝
53a…内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、該回転側部材に前記回転入力部材の係合溝と係合する複数の係合突起が形成されるとともに、これら係合突起のうちの少なくとも一の係合突起が前記係合溝の内側面に対向する弾性支持片を有した回転コネクタ装置であって、
前記弾性支持片における前記内側面に対向する対向面に、弾性支持片の幅方向に湾曲する湾曲面が形成された
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記湾曲面が、前記弾性支持片の幅方向全体にわたって形成された
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
固定される固定側部材と、該固定側部材に対して相対回転可能に取り付けられ回転入力部材を受ける回転側部材を有し、該回転側部材に前記回転入力部材の係合溝と係合する複数の係合突起が形成されるとともに、これら係合突起の一部が前記係合溝の内側面に対向する弾性支持片を有した回転コネクタ装置であって、
前記弾性支持片における前記内側面に接触する部位に、前記内側面と点接触する当接部が形成された
回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−204506(P2011−204506A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71331(P2010−71331)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)