説明

回転コネクタ装置

【課題】この発明は、収容空間に入り込む異物の量を低減することができる回転コネクタ装置の提供を目的とする。
【解決手段】ステータ12の外側外周筒部15oをロテータ13の外周縁部13aより大径に形成し、該外側外周筒部15oの上端部15aを、ロテータ13の外周縁部13aの側方を覆うように上向き方向へ延長し、ステータ12とロテータ13との間に形成された隙間Pを上方に向けて開口している。ステアリングロアカバーKの回動時に侵入する異物Zは、外側外周筒部15oの上端部15aを迂回して上向きに開口された隙間Pに上方から入り込むことになるので、収容空間Sに向けて異物Zが直接入り込みにくく、収容空間Sに入り込む異物Zの量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に装着される回転コネクタ装置に関し、ステアリングホイール側と車体側との間を電気的に接続するために用いる回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装着されるステアリングロールコネクタなどの回転コネクタ装置は、相対的に回転可能に同軸上に組み付けられるステータ(固定ケース)とロテータ(回転ケース)とで構成されるケーブルハウジングを備えている。
【0003】
回転コネクタ装置は、ケーブルハウジングのうち、ステータが車体側に固定され、ロテータがステアリングホイール側に組み付けられている。さらに、回転コネクタ装置は、ケーブルハウジング内部の収容空間に収容されたフラットケーブルを介して、車体側とステアリングホイール側との間の例えば、ホーンモジュール、エアバッグモジュール等の電気的な接続を行っている。
【0004】
特許文献1に記載の回転コネクタも上述した回転コネクタ装置の一例であり、ケーブルハウジングの内部に構成される収容空間(環状の空間)に収容されたフラットケーブル(帯状伝送線)を案内するリテーナ(案内部材)が収容空間の底面に配置されている。
【0005】
リテーナは、ロテータの回転軸回りに回転自在に収容空間の底面に配置された平面視C型の板状のガイドリングと、該ガイドリングの周方向を等分配する各部において、ロテータの回転軸と平行な回転軸回りに回転自在に軸支された複数のローラとで構成している。
【0006】
フラットケーブルは、収容空間に巻回状態で収容され、その半径方向の内端がロテータの内周筒部(内筒軸部)に巻き付けられ、半径方向の外端がステータの外周筒部(外筒部)に巻き付けられ、中間がU字状に巻き返されている。
前記回転コネクタは、図7に示すように、ステアリングコラムカバーを構成するステアリングロアカバーKとコラムカバーLとに連通して形成された開口部MのうちコラムカバーL側に収容されている。
【0007】
しかし、ステアリングロアカバーKとコラムカバーLとの間に形成されたクリアランスNに対し、ステータ12とロテータ13との対向周縁部に形成された隙間Pが対向する中間の位置にあるため、例えば砂、ゴミ、塵埃等の異物Zが、ステータ12とロテータ13との隙間Pからケーブルハウジング11の収容空間Sに入り込みやすいという問題があった。
【0008】
このようにして、ステータ12とロテータ13との隙間Pからケーブルハウジング11の収容空間Sに異物Zが入り込んだ際、ステータ12及びロテータ13の相対回動によって巻き付け及び巻き解きされるフラットケーブルCが互いに擦り合わされるため、フラットケーブルCに断線が発生したり、フラットケーブルCのラミネートが剥離してショートしたり、或いは、擦れ合う際に異音が発生するという問題が生じる。また、ステータ12とロテータ13との回動抵抗が大きくなり、回転コネクタの操作性が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−68020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、収容空間に入り込む異物の量を低減することができる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、環状の回転側リング板と、該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部とで構成するロテータと、環状の固定側リング板と、該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部とで構成するステータとを、前記回転側リング板と前記外周筒部との間に隙間を設けて相対回動可能に嵌合し、前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで構成する収容空間に、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続するケーブルを巻き回した状態で収容した回転コネクタ装置であって、前記ロテータ又はステータのいずれか一方の外周縁部を、他方の外周縁部より大径に形成し、前記大径に形成した一方の外周縁部を、前記他方の外周縁部の側方を覆う方向へ延長して、前記ロテータとステータとの間に形成された隙間を径方向に対し交差する方向に向けて開口した回転コネクタ装置であることを特徴とする。
【0012】
この発明により、収容空間と装置外部とを連通する隙間の距離を確保することができるので、収容空間に異物が入り込みにくくなる。したがって、従来構造に比べて収容空間に入り込む異物の量を低減することができる。
【0013】
詳しくは、前記構成を備えた回転コネクタ装置を、例えば、ステアリングコラムカバーを構成するステアリングロアカバーとコラムカバーとに形成された開口部のうちコラムカバー側に収容した際、異物がステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスからロテータとステータとの隙間を通って収容空間へ入り込もうとするが、ロテータとステータとの隙間を、ステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスに対し交差する方向に向けて開口しているので、収容空間へ入り込む際には交差する方向へ迂回することになる。
【0014】
これにより、収容空間に異物が入り込みにくく、従来構造に比べて収容空間に入り込む異物の量を低減することができる。したがって、フラットケーブルが断線したり、フラットケーブルのラミネートが剥離してショートしたり、異音が発生する等の不具合が発生することを防止できる。
【0015】
この発明の態様として、前記ステータの筒状に形成された外周縁部を、前記ロテータの外周縁部より大径に形成し、該ステータの外周縁部を、前記ロテータの外周縁部の側方を覆う方向へ延長して、前記隙間を上方に向けて開口することができる。
【0016】
この発明により、異物がステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスから装置内部の収容空間に入り込むためには、ステアリングロールコネクタの上方に向けて開口している隙間に上方から入り込み、下方へと向かい、次に径方向へと向きを変えて侵入しなければならない。したがって、異物が入り込みにくく、収容空間に入り込む異物の量を低減することができる。
【0017】
また、この発明の態様として、ステアリングホイールと共回りするステアリングロアカバーに対して、所定の間隔を隔てると共に、車体側に対向させたコラムカバーの内側に収容した状態において、上方に向けて開口した前記隙間の開口端を、前記ステアリングロアカバーと前記コラムカバーとの間に形成された前記所定の間隔のクリアランスにおける内側周縁部よりも上方に配置することができる。
【0018】
上述の内側周縁部は、ステアリングロアカバーとコラムカバーとの間に形成されたクリアランスにおける径方向の内側の周縁部分である。換言すると、対向周縁部といえる。
【0019】
この発明により、異物がステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスから装置内部の収容空間へ入り込むためには、ステータの外周縁部を一旦迂回して、上方に向けて開口している隙間の開口端に上方から入り込なければならないため、開口端から入り込む異物の量が少なくなる。したがって、収容空間に入り込む異物の量をさらに低減することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記ロテータの外周縁部を、前記ステータの筒状に形成された外周縁部より大径に形成し、該ロテータの外周縁部を、前記ステータの外周面に沿って該外周面を覆う方向へ延長して、前記隙間を下方に向けて開口することができる。
【0021】
この発明により、異物がステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスから装置内部の収容空間に入り込むためには、ステアリングロールコネクタの下方に向けて開口された隙間に下方から入り込み、自重に抗して上方へと向かい、次に径方向へと向きを変えて侵入しなければならない。したがって、異物が入り込みにくく、収容空間に入り込む異物の量を低減することができる。
【0022】
また、この発明の態様として、前記ステアリングホイールと共回りする前記ステアリングロアカバーに対して、前記所定の間隔を隔てると共に、車体側に対向させた前記コラムカバーの側に収容した状態において、下方に向けて開口した隙間の開口端を、前記ステアリングロアカバーと前記コラムカバーとの間に形成された前記所定の間隔の前記クリアランスにおける前記内側周縁部よりも下方に配置することができる。
【0023】
この発明により、異物がステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスから装置内部の収容空間へ入り込むためには、ロテータの外周縁部を一旦迂回して、下方に向けて開口している隙間の開口端に下方から入り込まなければならないため、開口端から入り込む異物の量が少なくなる。したがって、収容空間に入り込む異物の量をさらに低減することができる。
【0024】
また、この発明の態様として、前記ステータの外周縁部より内側に該外周縁部より小径で筒状の内周縁部を形成し、該外周縁部と内周縁部との間に前記隙間と連通する溝部を形成することができる。
この発明により、前記異物は、該異物自体の自重によりステータの外周壁部と内周壁部との間に形成された溝部に溜まりやすく、収容空間に入り込む異物の量をさらに低減することができる。
【0025】
また、この発明の態様として、前記溝部を、前記ステータの外周縁部に沿って周方向に連続して形成することができる。
この発明により、前記隙間に対し全周(360度)のいずれの方向から異物が入り込んでも、周方向に連続して形成された溝部に溜まりやすく、収容空間に対し全周から入り込む異物の量を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、ロテータとステータとの間に形成された隙間を径方向と交差する方向に向けて開口しているので、従来例のステアリングロアカバーとコラムカバーとのクリアランスから回転コネクタ装置の収容空間に向けて異物が入り込みにくく、従来構造に比べて収容空間に入り込む異物の量を低減することができる。これにより、ケーブルが断線したり、ケーブルのラミネートが剥離してショートしたり、異音等が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態のステアリングロールコネクタの外観図。
【図2】図1のステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】図1のロテータを分離したステアリングロールコネクタの平面図。
【図4】図1中のA−A線矢視断面図。
【図5】図4中の一部を示す拡大端面図。
【図6】他の実施形態のステアリングロールコネクタを示す拡大端面図。
【図7】従来のステアリングロールコネクタの一部を示す拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
本実施形態のステアリングロールコネクタ10(SRC)は、図1及至図5に示すように、ケーブルハウジング11と、リテーナ41と、回転ロックユニット51とで構成している。
【0029】
なお、図1、図2は、前記ステアリングロールコネクタのそれぞれ外観図、分解斜視図である。図3は、後述するロテータを外した状態の前記ステアリングロールコネクタの平面図である。図4は、図1中のA−A線矢視断面図である。図5は、図4中の一部を示す拡大端面図である。
【0030】
ケーブルハウジング11は、平面視中央部分にステアリングシャフト(図示省略)の軸方向に貫通した差込孔Hが形成された略円筒状に形成されている。差込孔Hは、前記ステアリングコラム(図示省略)に支持されたステアリングシャフトの挿入を許容する径で形成されている。
なお、前記ステアリングシャフトの上端部には、回転操作を行うためのステアリングホイールが固定されている。
【0031】
ケーブルハウジング11は、互いに相対回動可能に嵌合されたステータ12とロテータ13とで構成している。ケーブルハウジング11の内部には、図2及至図5に示すように、フレキシブルフラットケーブルC(以下、「フラットケーブルC」という。)が適宜巻かれた状態で収容される収容空間Sが形成されている。
【0032】
また、ステアリングロールコネクタ10は、ステアリングコラムカバーを構成するステアリングロアカバーKとコラムカバーLとに連通して形成された開口部MのうちコラムカバーL側に収容されている。
【0033】
さらに、ステータ12の外周筒部15と、ロテータ13の回転側リング板21との対向周縁部には、ケーブルハウジング11の外部と収容空間Sとに連通してステータ12とロテータ13とを相対回動可能に嵌合するための隙間Pが周方向に連続して形成されている。
【0034】
前記収容空間Sは、前記ステータ12とロテータ13とを嵌合することによって、該ステータ12の固定側リング板14及び外周筒部15と、ロテータ13の回転側リング板21及び内周筒部22とで構成されている。
【0035】
ステータ12は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図示省略)に固定され、ステアリングホイールに対して相対回動可能に取り付けられている。前記ステータ12は、底板として環状に形成した固定側リング板14と、この固定側リング板14の外周縁から垂直に延びる円筒状の外周筒部15とで構成されている。固定側リング板14の外周縁と筒部15の下端とは嵌合により一体に構成している。
【0036】
外周筒部15は、図4、及び、図5に示すように、円筒状の外側外周筒部15oと、該外側外周筒部15oよりも僅かに小径で内側に形成された円筒状の内側外周筒部15iとで構成され、外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとが半径方向において近接して対向するよう同心円状に配置した2層構造で構成されている。
【0037】
また、ステータ12の外側外周筒部15oをロテータ13の外周縁部13aより大径に形成するとともに、該外側外周筒部15oの上端部15aを、ロテータ13の外周縁部13aの側方が覆われるようにステータ12の軸芯と平行する方向、すなわち、上向き方向に向けて延長している。
これにより、ステータ12とロテータ13との間に形成された隙間Pは、該ステータ12及びロテータ13の径方向に対し交差(又は直交)する上向き方向に開口している。
【0038】
外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとは、ステアリングホイールの軸方向(図4、及び、図5中の上下方向)の中間部において連結部18により一体に連結されている。外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとの半径方向の間に構成される隙間は、連結部18により上下方向に分断され、図5に示すように、上下各側向けて開口した2つの溝部gu,gdが構成されている。
【0039】
また、上側に向けて開口している溝部guは、ステータ12の軸芯を中心として外側外周筒部15o又は内側外周筒部15iに沿って周方向に連続して形成されている。
また、前記内側外周筒部15iの上部には、図5に示すように、収容空間Sで巻き回したフラットケーブルCよりも上方で該収容空間Sに向けて半径方向の内側(径内方向)へ突出し、該フラットケーブルCを上方からガイドするガイド突出片16が鍔状に形成されている。
【0040】
ガイド突出片16は、平面視円環状に内側外周筒部15iの上部の内周縁に沿って収容空間Sへ真直ぐに突出しているが、前記ガイド突出片16の下面16uは、半径方向の内側に沿って上方へ傾斜するテ―パ形状で形成されている。
【0041】
ステータ12には、ステータ側コネクタ17が取り付けられている。
ステータ側コネクタ17は、第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとで構成している。第1ステータ側コネクタ17Aと第2ステータ側コネクタ17Bとは、所定間隔を隔ててそれぞれのコネクタ接続口が同じ方向を向くように外周筒部15(外側外周筒部15o)の外側に配置されている。
【0042】
前記ロテータ13は、環状に形成された回転側リング板(天板)21と、この回転側リング板21の内周縁から垂直に延びる円筒状の内周筒部22とで構成している。そしてロテータ13は、ステアリングホイールとともに一体的に回転するように構成されている。ロテータ13は、ステータ12に対して前記ステアリングホイールの回転軸と同一の軸回りに回転することができる。
【0043】
回転側リング板21は、ロテータ13の回転軸の方向で前記固定側リング板14に対面するように配置されている。
なお、ロテータ13の回転軸の方向は、上述したステアリングホイールの軸方向(図4、及び、図5中の上下方向)と同じ方向である。
また、前記内周筒部22は、外周筒部15と半径方向で対面するように配置されている。
【0044】
ロテータ13には、該ロテータ13の回転に伴って一体的に回転するロテータ側コネクタ23Bが取り付けられる。
ロテータ側コネクタ23は、第1ロテータ側コネクタ23Aと第2ロテータ側コネクタ23Bとで構成している。
【0045】
第1ロテータ側コネクタ23Aと第1ステータ側コネクタ17A、及び、第2ロテータ側コネクタ23Bと第2ステータ側コネクタ17Bとは、それぞれ収容空間Sに配置されたフラットケーブルCによって相互に電気的に接続されている。
【0046】
ステータ側コネクタ17は、コラムカバーL(図示省略)内において車体側の電気回路等から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
ロテータ側コネクタ23は、例えば、ホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたケーブル(図示省略)にそれぞれ接続される。
【0047】
また、上述のリテーナ41は、複数の回転ローラ43とベースリング42とで構成され、収容空間Sにおいてロテータ13の回転軸を中心にして回転可能に配置されている。
回転ローラ43は、後述のローラ支持突部45と同じ数で備えられ、それぞれローラ支持突部45に軸支され、それぞれが前記ロテータ13の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0048】
ベースリング42は、平面視円環状をした板状のベースリング本体部44とローラ支持突部45とローラ外周側突部46とで構成されている。
ベースリング本体部44は、前記固定側リング板14に対して摺動可能に近接して配置され、ステータ12に対して相対回動可能に構成されている。ローラ支持突部45は、ベースリング本体部44の周方向に等間隔ごとに回転ローラ43を軸支可能に上方に向けて突出している。
【0049】
ローラ外周側突部46は、ローラ支持突部45に対して外側で、フラットケーブルCを後述するように回転ローラ43の周りに折り返した折り返し部分(後述する反転部Cr)を径外側からガイドするようベースリング本体部44に対して上方に向けて突出している。
【0050】
前記回転ロックユニット51の構造を詳述する。該回転ロックユニット51は、図2に示すように、ロック体52とバネ受けスリーブ54と、該ロック体52および該バネ受けスリーブ54との間に介在する戻しバネ53とで構成されている。
【0051】
バネ受けスリーブ54を戻しバネ53の付勢力に抗して押し上げることでステータ12に対してロテータ13が相対回動しないようロック体52でロックすることができ、或いは、ステアリングホイールの芯金のボス部(図示省略)を挿入することで自由に相対回動することを許容するようロック体52によるロックを解除することができる。
【0052】
フラットケーブルCは、複数の扁平な平角導体Caが所定のピッチで平行に配列され、電気絶縁体Cbで被覆した可撓性を有する帯状の伝送線である。
また、フラットケーブルCは、収容空間Sで2本備え、該収容空間Sにおいて2本を重ね合わして巻き回した状態で備えている。
【0053】
重ね合わした2本のうち一方のフラットケーブルCは、その長さ方向の一端側を第1ステータ側コネクタ17A側に接続していると共に、他端側を第1ロテータ側コネクタ23A側に接続している(図示省略)。
【0054】
また、重ね合わした2本のうち他方のフラットケーブルCは、その長さ方向の一端側を第2ステータ側コネクタ17B側に接続していると共に、他端側を第2ロテータ側コネクタ23B側に接続している(図示省略)。
【0055】
以上の構成で、フラットケーブルCの長さ方向の一端と他端との間は、収容空間Sにおいて適宜、巻回した状態で収容される。
詳しくは、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて、第1ステータ側コネクタ17A、第2ステータ側コネクタ17Bのそれぞれから前記収容空間Sへ引き込まれ、図3及至図5に示すように、リテーナ41の外側でステータ12の外周筒部15(内側外周筒部15i)の内周面に沿うように巻かれた外側巻き部分Coが構成される。
【0056】
従って、外側巻き部分Coの基端は、ステータ側コネクタ17の位置において固定されている。
なお、フラットケーブルCは、収容空間Sにおいて上述したように2本一組として重ね合わして巻き回されているが、図3及至図5では、簡略化して一本のみを巻き回した状態で図示している。
【0057】
そして、図3に示すように、フラットケーブルCは、長さ方向の途中で、複数の前記回転ローラ43のうち1つにU字型に巻き掛かるようにして向きを反転させた反転部分Crが構成される。
【0058】
フラットケーブルCは、その後は、長さ方向の他端側をリテーナ41の内側でロテータ13の内周筒部22の外周面に沿うように巻かれた内側巻き部分Ciが構成される。図3及至図5に示すように、フラットケーブルCは、最終的には収容空間Sから引き出されて第1ロテータ側コネクタ23A、第2ロテータ側コネクタ23B側に接続される。
従って、内側巻き部分Ciの基端は、ロテータ側コネクタ23の位置において固定されている。
【0059】
このように、前記収容空間Sの内部においてフラットケーブルCは、ロテータ13がステータ12に対して回転することにより、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間でそれぞれ巻き付けと巻き解きのいずれかが行われる。
【0060】
このとき、フラットケーブルCは、外側巻き部分Coと内側巻き部分Ciとの間の巻き状態のバランスの変化に追従するように反転部分Crがリテーナ41とともに適宜回転する。これにより、ステアリングロールコネクタ10は、フラットケーブルCを収容空間S内で常に整列された巻き付け状態で保持することができるとともに、円滑なステアリングホイールの回転操作を可能としている。
【0061】
このように構成されたステアリングロールコネクタ10を、図5に示すように、ステアリングコラムカバーを構成するステアリングロアカバーKとコラムカバーLとに連通して形成された開口部MのうちコラムカバーL側に収容する。
【0062】
この状態において、ステアリングロアカバーKとコラムカバーLとの間に形成されたクリアランスNにおける内側周縁部Niの上端位置h1に対して、上向きに開口された隙間Pの開口端Peを高い位置に配置している。
【0063】
上述したステアリングロールコネクタ10は、以下のような様々な作用、効果を得ることができる。
上述のようにクリアランスNの上端位置h1に対して、上向きに開口している隙間Pの開口端Peは高い位置となる。このため、異物Zが装置内部の収容空間Sへ入り込むためには、ステータ12の外側外周筒部15oを上方に延長してなる上端部15aを迂回して、上方に向けて開口している隙間Pの開口端Peに上方から入り込なければならない。したがって、例えば、図5の破線で示すクリアランスN′の上端位置h1′に対して開口端Peが低い位置にある場合に比べて、開口端Peから入り込む異物Zの量が少なくなる。
【0064】
また、上方に向けて開口している隙間Pの開口端Peに上方から入り込んだ異物Zが装置内部の収容空間Sへ入り込むためには、開口端Peから下方へと向かい、次に径方向へと向きを変えて侵入しなければならない。さらに、図7に示す従来構造に比べて、ケーブルハウジング11の外部と収容空間Sとを連通する隙間Pの距離も長い。したがって、収容空間Sに向けて異物が入り込みにくく、収容空間Sに入り込む異物Zの量を低減することができる。
【0065】
これにより、図7に示す従来構造に比べて、収容空間Sに入り込む異物Zの量が少なくなるので、ステータ12及びロテータ13の相対回動時において、フラットケーブルCが断線したり、フラットケーブルCのラミネートが剥離してショートしたり、異音が発生することを防止できる。
【0066】
また、溝部guを、ステータ12の外側外周筒部15oと内側外周筒部15iとに沿って周方向に連続して形成しているので、隙間Pに対し全周(360度)のいずれの方向から異物Zが入り込んでも、周方向に連続して形成された溝部guのいずかの箇所に溜まりやすく、収容空間Sに対し全周から入り込む異物Zの量を低減することができる。
【0067】
図6は、他の実施形態のステアリングロールコネクタ10の一部を示す拡大端面図である。
他の実施形態のステアリングロールコネクタ10は、ロテータ13の外周縁部13aをステータ12の外側外周筒部15oより大径となるように径方向に延長するとともに、該ロテータ13の外周縁部13aを、外側外周筒部15oの外周面に沿って該外側外周筒部15oの外周面が覆われるようにロテータ13の軸芯と平行する方向、すなわち、下向き方向に向けて延長している。
【0068】
これにより、前記隙間Pを、ステータ12及びロテータ13の径方向に対し交差(又は直交)する下向き方向に開口している。
このように構成されたステアリングロールコネクタ10を、図6に示すように、ステアリングコラムカバーを構成するステアリングロアカバーKとコラムカバーLとに連通して形成された開口部MのうちコラムカバーL側に収容する。
【0069】
この状態において、ステアリングロアカバーKとコラムカバーLとの間に形成されたクリアランスNにおける内側周縁部Niの下端位置h2に対して、下方に向けて開口している隙間Pの開口端Peを低い位置に配置している。
【0070】
上述のようにクリアランスNの下端位置h2に対して、下方に向けて開口している隙間Pの開口端Peは低い位置となる。このため、異物Zが装置内部の収容空間Sへ入り込むためには、ロテータ13の径方向に延長された外周縁部13aを迂回して、下向きに開口している隙間Pの開口端Peに下方から入り込なければならない。したがって、例えば、図6の破線で示すクリアランスN′の下端位置h2′に対して開口端Peが高い位置にある場合に比べて、開口端Peから入り込む異物Zの量が少なくなる。
【0071】
また、下方に向けて開口している隙間Pの開口端Peに下方から入り込んだ異物Zが装置内部の収容空間Sに入り込むためには、ステアリングロールコネクタ10の下向きに開口された隙間Pの開口端Peに下方から入り込み、自重に抗して上方へと向かい、次に径方向へと向きを変えて侵入しなければならない。さらに、図7に示す従来構造に比べて、ケーブルハウジング11の外部と収容空間Sとを連通する隙間Pの距離も長い。したがって、収容空間Sに向けて異物Zが入り込みにくく、収容空間Sに入り込む異物Zの量を低減することができる。
【0072】
したがって、収容空間Sに向けて異物Zが入り込みにくく、従来構造に比べて収容空間Sに入り込む異物Zの量を低減することができる。この結果、前記実施形態と略同等或いは同等以上の作用及び効果を奏することができる。
なお、他の実施形態に於いて、前記本実施形態と同一構成の部分は同一の符号を記してその詳細な説明を省略する。
【0073】
この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、回転コネクタ装置は、ステアリングロールコネクタ10に対応し、
以下同様に、
ケーブルは、フレキシブルフラットケーブルCに対応し、
ステータ12の外周縁部は、外周筒部15の外側外周筒部15oに対応し、
ステータ12の内周縁部は、外周筒部15の内側外周筒部15iに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
10…ステアリングロールコネクタ
11…ケーブルハウジング
12…ステータ
13…ロテータ
13a…外周縁部
15…外周筒部
15o…外側外周筒部
15i…内側外周筒部
C…フラットケーブル
S…収容空間
K…ステアリングロアカバー
L…コラムカバー
M…開口部
N…クリアランス
Ni…内側周縁部
P…隙間
Pe…開口端
Z…異物
gu…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の回転側リング板と、該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部とで構成するロテータと、環状の固定側リング板と、該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部とで構成するステータとを、前記回転側リング板と前記外周筒部との間に隙間を設けて相対回動可能に嵌合し、
前記ロテータの回転側リング板及び内周筒部と、前記ステータの固定側リング板及び外周筒部とで構成する収容空間に、前記ロテータ側と前記ステータ側とを電気的に接続するケーブルを巻き回した状態で収容した回転コネクタ装置であって、
前記ロテータ又はステータのいずれか一方の外周縁部を、他方の外周縁部より大径に形成し、
前記大径に形成した一方の外周縁部を、前記他方の外周縁部の側方を覆う方向へ延長して、前記ロテータとステータとの間に形成された隙間を径方向に対し交差する方向に向けて開口した
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記ステータの筒状に形成された外周縁部を、前記ロテータの外周縁部より大径に形成し、
該ステータの外周縁部を、前記ロテータの外周縁部の側方を覆う方向へ延長して、前記隙間を上方に向けて開口した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
ステアリングホイールと共回りするステアリングロアカバーに対して、所定の間隔を隔てると共に車体側に対向させたコラムカバーの内側に収容した状態において、
上方に向けて開口した前記隙間の開口端を、
前記ステアリングロアカバーと前記コラムカバーとの間に形成された前記所定の間隔のクリアランスにおける内側周縁部よりも上方に配置した
請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記ロテータの外周縁部を、前記ステータの筒状に形成された外周縁部より大径に形成し、
該ロテータの外周縁部を、前記ステータの外周面に沿って該外周面を覆う方向へ延長して、前記隙間を下方に向けて開口した
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項5】
前記ステアリングホイールと共回りする前記ステアリングロアカバーに対して、前記所定の間隔を隔てると共に、車体側に対向させた前記コラムカバーの内側に収容した状態において、
下方に向けて開口した隙間の開口端を、
前記ステアリングロアカバーと前記コラムカバーとの間に形成された前記所定の間隔の前記クリアランスにおける前記内側周縁部よりも下方に配置した
請求項4に記載の回転コネクタ装置。
【請求項6】
前記ステータの外周縁部より内側に該外周縁部より小径で筒状の内周縁部を形成し、該外周縁部と内周縁部との間に前記隙間と連通する溝部を形成した
請求項1〜5のいずれか一つに記載の回転コネクタ装置。
【請求項7】
前記溝部を、前記ステータの外周縁部に沿って周方向に連続して形成した
請求項6に記載の回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−228287(P2011−228287A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67786(P2011−67786)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)