説明

回転式空気予熱器

【課題】
リークを低減した回転式予熱器を提供する。
【解決手段】
熱交換エレメントとシール部との間隙に、熱交換エレメントに支持された樹脂フィルムを設け、樹脂フィルムは、シール部に接触かつ摺動可能に設けられることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式空気予熱器のリーク低減に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1における回転式空気予熱機にあっては、互いに相対回転する熱交換エレメントとシーンリグシューとの間隙にシール材およびワイヤブラシを設け、リークを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−133991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1にあっては、シール材が金属で形成されるため、シール材とシーリングシューとの接触を回避するためのクリアランスが必要となり、ワイヤブラシを設けたとしても、このクリアランスにおけるリークを防止することはできなかった。また、ワイヤブラシが劣化して錆びや折れ曲がりが発生した場合、リーク量が増大するおそれがある。熱交換を行うガスが腐食性気体である場合、この問題はより顕著である。
本発明は上記問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、リークを低減した回転式予熱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を解決するため、本願発明では、熱交換エレメントとシール部との間隙に、熱交換エレメントに支持された樹脂フィルムを設け、樹脂フィルムは、シール部に接触かつ摺動可能に設けられることとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、リークを低減した回転式予熱器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】回転式空気予熱器の斜視図である。
【図2】回転式空気予熱器1における熱交換エレメントの斜視図である。
【図3】熱交換エレメントの軸方向正面図である。
【図4】熱交換エレメントの径方向正面図である。
【図5】実施形態1におけるラジアルプレートの詳細を示す図である。
【図6】押さえ板の詳細である。
【図7】実施形態2におけるラジアルプレートの詳細を示す図である。
【図8】実施形態3を示す図である。
【図9】実施形態4におけるサーカムシールプレートの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
[回転式空気予熱器の概要]
図1は、実施形態1における回転式空気予熱器1の斜視図、図2は熱交換エレメント2の斜視図、図3は熱交換エレメント2の軸方向正面図、図4は熱交換エレメント2の径方向正面図である。
回転式空気予熱器1は、熱交換エレメント2、サイドプレート4(シール部)、ケーシング9を有する。熱交換エレメント2はケーシング9に収納され、回転可能に支持される。
【0009】
熱交換エレメント2における軸方向一方側の側面である第1側面23には、高温ガス導入部201が設けられている。また、第1側面23とは反対側に設けられた第2側面24には、高温ガス排出部202が設けられている。熱交換前の高温ガスは、第1側面23の高温ガス導入部201に導入されて熱交換エレメント2に熱を供給し、第2側面24の高温ガス排出部202から排出される。高温ガスは、例えば発電所の排ガスである。
【0010】
第2側面24であって高温ガス排出部202とは異なる領域には、低温ガス導入部203が設けられている。また、第2側面24と反対側の第1側面23であって、高温ガス導入部201と異なる領域には、低温ガス排出部204が設けられている。熱交換前の低温ガスは、第2側面24の低温ガス導入部203に導入されて熱交換エレメント2から熱を奪い、第1側面23の低温ガス排出部204から排出される。低温ガスは、例えば発電所の燃焼用空気である。
【0011】
サイドプレート4は金属製であって、熱交換エレメント2の第1、第2側面23,24にそれぞれ設けられ、高温の排ガスと燃焼用空気のシールを行う。第1側面23には高温ガス導入シール部41および低温ガス排出シール部44が設けられ、第2側面24には高温ガス排出シール部42および低温ガス導入シール部43が設けられ、それぞれの位置をシールする。
【0012】
熱交換エレメント2は金属で形成され、円筒状の伝熱エレメント21と、伝熱エレメント21の軸方向端面からさらに軸方向に突出するラジアルプレート22を有する。ラジアルプレート22とサイドプレート4との間にはクリアランスLが設けられ、ラジアルプレート22とサイドプレート4との接触を回避する。クリアランスLは、熱交換エレメント2の熱膨張を考慮して設定される。
【0013】
[ラジアルプレート]
図5はラジアルプレートの詳細である。図5(a)はラジアルプレート22回転方向の正面図、(b)は軸方向正面図である(軸は回転式空気予熱器1の回転軸)。ラジアルプレート22は熱交換エレメント2の内周側に設けられ、熱交換エレメント2の中心軸Oから伝熱エレメント21の外周側に向かって放射状に複数設けられている。このラジアルプレート22には、サイドプレート4に向かって軸方向に延在する樹脂フィルム221が設けられている。
【0014】
樹脂フィルム221は、押さえ板6とラジアルプレート22との間に挟持されることでラジアルプレート22の軸方向端部に接続され、サイドプレート4の各シール部41〜44に接触かつ摺動可能に設けられている。この樹脂フィルム221は、少なくとも回転式空気予熱器1の運転中においてサイドプレート4に接触かつ摺動する。
【0015】
図6は押さえ板6である。図6(a)は回転方向の正面図、(b)は軸方向正面図である。サイドプレート4との摺動時に樹脂フィルム221が湾曲した際、樹脂フィルム221に傷をつけないよう、押さえ板6の外周側(サイドプレート4側)の端部61にはRが設けられている。また押さえ板6はボルト孔が設けられ、ボルト・ナットにより樹脂フィルムをラジアルプレート22に対し固定する。
【0016】
[樹脂フィルムによるリーク低減]
熱交換エレメント2における熱交換では、高温ガスは第1側面23から導入されて第2側面24から排出され、低温ガスは第2側面24から導入されて第1側面23から排出される。したがって、高温ガスと低温ガスは互いに対向して流動することとなる。
【0017】
ここで、高温ガスを発電所のボイラ等から排出される排ガスとし、低温ガスをボイラの燃焼用空気とした場合、一般的に発電所のボイラは負圧となっていることが多い。一方、低温ガスは正圧の空気であるため、熱交換エレメント2において互いに対向して流れる高温ガスと低温ガスとの間に圧力差が生じる。これにより、高温ガスと低温ガスが熱交換エレメント2を介した熱交換を行わないままリークし、回転式空気予熱器1の熱効率が低下するだけでなく排ガスおよび燃焼用空気の通風機の所要動力が増加する。とりわけ第2側面24においては、低温ガスが熱交換を行わないまま負圧側の高温ガス排出部202にリークするため、熱効率低下等に与えるリークの影響が顕著である。
【0018】
したがって本願ではラジアルプレート22に樹脂フィルム221を設け、この樹脂フィルム221を各シール部41〜44に接触かつ摺動させることにより、リークを低減する。これにより、回転式空気予熱器1の熱効率を向上させるとともに排ガスおよび燃焼用空気の通風機の所要動力が低減できる。樹脂フィルムであるため、サイドプレート4の各シール部41〜44に摺動させることが可能となり、金属製のシール材よりもリークが低減される。なお、サイドプレート4の各シール部41〜44では熱交換エレメント2の回転に伴いラジアルプレート22での燃焼用空気リークの方向が交互に変化する。そのため樹脂フィルム221には繰返し曲げ応力が発生するために樹脂フィルム221には耐屈曲性が要求される。そこで樹脂フィルム221はポリイミドフィルムにより形成することで、耐久性を向上させるものである。
【0019】
また、樹脂フィルム221は複数のフィルムを積層することで形成される。樹脂フィルム221はサイドプレート4の各シール部41〜44と摺動するため、耐久性を高めるためにフィルムを厚くすると、曲げ剛性が高くなって柔軟性が低下し、摺動時の抵抗が増大するとともにシール性も低下する。とりわけ、ポリイミド等の硬質樹脂ではこの傾向が顕著である。したがって複数のフィルムを積層することで樹脂フィルム221を形成することにより、柔軟性を確保しつつ耐久性を向上させるものである。
【0020】
[実施形態1の効果]
(1)熱交換エレメント2とサイドプレート4(シール部)との間隙に、熱交換エレメント2のラジアルプレート22に支持された樹脂フィルム221を設け、樹脂フィルム221は、サイドプレート4の各シール部41〜44に接触かつ摺動可能に設けられることとした。これにより、リークを低減して回転式空気予熱器1の熱効率を向上させるとともに通風機の所要動力を低減させることができる。
(2)樹脂フィルム221はポリイミドフィルムであることとした。これにより、耐久性を向上させることができる。
(3)樹脂フィルム221は、複数のフィルムの積層により形成されることとした。これにより、柔軟性を確保しつつ耐久性を向上させることができる。
【0021】
[実施形態2]
図7は実施形態2におけるラジアルプレートの詳細である。図7(a)は回転方向の正面図、(b)は軸方向正面図である。基本構成は実施形態1と同様である。実施形態2では、ラジアルプレート2の外周方向に延在するシール板7を設け、このシール板7のさらに外周側に、樹脂フィルム221を接続する点で異なる。
【0022】
シール板7であって外周方向に延在された部分は折り曲げられ、折曲部72を形成する。この折曲部72に樹脂フィルム221が設けられ、実施形態1と同様に押さえ板6によって挟持される。折曲部72を折り曲げる方向は、サイドプレート4に対するラジアルプレート22の相対回転とは逆方向であれば(図7参照)、樹脂フィルム221とサイドプレート4との摺動がスムーズである。
【0023】
[実施形態2の効果]
実施形態2では、ラジアルプレート2の外周方向に延在し、かつ折り曲げられたシール板7を設け、このシール板7の外周側に、樹脂フィルム221を接続することとした。これにより、シール性をさらに向上させることができる。
【0024】
[実施形態3]
実施形態3につき図8に基づいて説明する。図8は実施形態3におけるラジアルプレート22の軸方向正面図である。実施形態3では、押さえ板6のかわりに両面テープ62もしくは接着剤を用いて樹脂フィルム221をラジアルプレート22もしくはシール板7に固定している(図8は両面テープ62を用いてラジアルプレート22に固定する例を示す)。また、高温ガスとしてボイラ排ガスを用いる場合、樹脂フィルム221は高温ガス中のダストにさらされるため、樹脂フィルム221を金属製薄板63で被覆することにより、耐久性を向上させている。実施形態3にあっても、実施形態1および2と同様の効果を得ることができる。また、実施形態3ではボルト等の締結によらず両面テープ62もしくは接着剤で樹脂フィルムを固定するため、構成が簡易かつ安価である。
【0025】
[実施形態4]
実施形態4につき図9に基づき説明する。図9(a)はサーカムシールプレート5を有する熱交換エレメント2の径方向正面図、図9(b)はサーカムシールプレート5付近の拡大図である。実施形態4では、熱交換エレメント2の外周側端部222から外周側に延伸するサーカムシールプレート5に、樹脂フィルム221を設けている。このサーカムシールプレート5は熱交換エレメント2とケーシング9との間隙をシールするものであり、樹脂フィルム221を設けることでよりシール性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、回転式空気予熱器全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 回転式空気予熱器
2 熱交換エレメント
21 伝熱エレメント
22 ラジアルプレート
23,24 第1、第2側面
221 樹脂フィルム
4 サイドプレート(シール部)
41 高温ガス導入シール部
42 高温ガス排出シール部
43 低温ガス導入シール部
44 低温ガス排出シール部
5 サーカムシールプレート
6 押さえ板
7 シール板
9 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換エレメントと、
前記熱交換エレメントを収容するケーシングと、
前記熱交換エレメントの軸方向一方側の側面であって、熱交換前の高温ガスが供給される高温ガス導入部と、
前記熱交換エレメントの軸方向他方側の側面であって、熱交換後の前記高温ガスが排出される高温ガス排出部と、
前記熱交換エレメントの軸方向他方側の側面であって、前記高温ガス排出部とは異なる位置に設けられ、熱交換前の低温ガスが供給される低温ガス導入部と、
前記熱交換エレメントの軸方向一方側の側面であって、前記高温ガス供給部とは異なる位置に設けられ、熱交換後の前記低温ガスが排出される低温ガス排出部と、
前記高温ガス排出部と前記低温ガス導入部が設けられた前記熱交換エレメントの一方側の側面に対面し、前記高温ガス排出部と前記低温ガス導入部とを互いにシールするシール部と
を有し、
前記熱交換エレメントと、前記高温ガスおよび低温ガスとの相対回転により熱交換を行う回転式空気予熱器において、
前記熱交換エレメントと前記シール部との間隙に、前記熱交換エレメントに支持された樹脂フィルムを設け、
前記樹脂フィルムは、前記シール部に接触かつ摺動可能に設けられること
を特徴とする回転式空気予熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式空気予熱器において、
前記樹脂フィルムは、ポリイミドフィルムであること
を特徴とする回転式空気予熱器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の回転式空気予熱器において、
前記樹脂フィルムは、複数のフィルムの積層により形成されること
を特徴とする回転式空気予熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−61139(P2013−61139A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201353(P2011−201353)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)