説明

回転機械とその軸受位置決定方法

【課題】回転機械において、生産性を低下させることなく、かつ、生産コストを上昇させることなく、運転時に生じる振動を抑制する手段を提供することにある。
【解決手段】回転機械10は、回転駆動される回転体3と、回転体3を回転可能に支持する軸受5a、5bと、軸受5a、5bが取り付けられており回転体3の少なくとも一部を収容するハウジング7と、を備える。回転体3の軸方向において、ハウジング7の振動モードにおける節の近傍に、軸受5aが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の運転時に生じる振動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械は、回転駆動される回転体と、回転体を回転可能に支持する軸受と、該軸受が取り付けられており回転体の少なくとも一部を収容するハウジングと、を備える。回転機械は、例えば、回転体に設けた羽根車によって、流体との間で連続的にエネルギーを伝えるターボ機械(例えば、ターボチャージャ)である。以下において、ターボチャージャを例として、背景技術を説明する。
【0003】
ターボチャージャの回転体は、タービン羽根車とコンプレッサ羽根車を有する。タービン羽根車は、内燃機関からの排ガスにより回転駆動される。コンプレッサ羽根車は、タービン羽根車と一体で回転することにより、内燃機関に圧縮空気を供給する。
また、ターボチャージャの回転体は、タービン羽根車とコンプレッサ羽根車とを互いに連結する回転シャフトを有する。回転シャフトを回転可能に支持する軸受が、回転体のハウジングに組み込まれている。
【0004】
ターボチャージャの運転時に、振動による騒音が発生する。すなわち、回転体が回転駆動されることにより、回転体や、これを収容するハウジングに振動が発生して騒音が生じる。
【0005】
このような振動を低減するために、次の方法が採用されている。
(a)振動の原因となっている回転体のアンバランスを修正する。
(b)ハウジングの剛性を高めることにより、ハウジングを含む構造体の固有振動数を、ターボチャージャの運転域(一秒間における回転体の回転数)より大きくする。
(c)ハウジングと軸受との間に弾性体を設け、弾性体により振動を減衰させる(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−310229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した方法(a)(b)(c)により振動を低減する場合には、アンバランス修正の手間がかかり、高剛性の材料が必要となり、または、新たな部材として弾性体が必要となる。そのため、ターボチャージャの生産性が低下したり、その生産コストが上昇する可能性がある。特に、要求される振動レベルが小さいと、生産性が大きく低下し、生産コストが大きく上昇する可能性がある。この問題は、ターボチャージャ以外の回転機械においても同様である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、回転機械において、生産性を低下させることなく、かつ、生産コストを上昇させることなく、運転時に生じる振動の抑制を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によると、回転駆動される回転体と、回転体を回転可能に支持する軸受と、該軸受が取り付けられており回転体の少なくとも一部を収容するハウジングと、を備える回転機械であって、
回転体の軸方向において、前記ハウジングの振動モードにおける節の近傍に、前記軸受が配置されている、ことを特徴とする回転機械が提供される。
【0010】
回転機械の使用時に前記ハウジングは構造物に取り付けられ、好ましくは、前記振動モードは、前記構造物に取り付けられた状態にある前記ハウジングの振動モードである。
【0011】
好ましくは、前記ハウジングに生じる複数の振動モードのうち、振幅が最大となる振動モードにおける節の近傍に、前記軸受が配置されている。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、前記回転体は、内燃機関の排ガスにより回転駆動されるタービン羽根車と、空気を圧縮して内燃機関に供給するコンプレッサ羽根車と、タービン羽根車とコンプレッサ羽根車とを同軸に結合し両者の間で軸方向に延びる回転シャフトと、を有し、
前記軸受は、回転シャフトを半径方向に支持するように異なる軸方向位置に配置された複数の軸受のうちの1つである。
【0013】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記ハウジングは、タービン羽根車を収容するタービンハウジングと、前記軸受が内部に取り付けられている軸受ハウジングと、を有し、
前記節の近傍に配置されている前記軸受は、軸方向において、タービンハウジングと軸受ハウジングとが結合されている結合位置の近傍に位置している。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、回転駆動される回転体と、回転体を回転可能に支持する軸受と、該軸受が取り付けられており回転体の少なくとも一部を収容するハウジングと、を備える回転機械の軸受位置決定方法であって、
ハウジングの振動モードを、シミュレーションまたは実験により求め、
求めた振動モードの節の近傍を、前記軸受の位置とする、ことを特徴とする回転機械の軸受位置決定方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によると、回転体の軸方向において、前記ハウジングの振動モードにおける節の近傍に、軸受が配置されるので、回転体に生じた振動による力が、ハウジングの振動モードの節近傍で、回転体からハウジングに与えられるようになる。このように、振動モードの節近傍でハウジングに与えられる力は、ハウジングの振動増大にほとんど寄与しない。その結果、回転機械の運転時に生じるハウジングの振動を抑制することができる。
すなわち、軸受の軸方向位置を振動モードの節の近傍にすることにより、回転体のアンバランス修正を行わなくても、ハウジングの剛性を高めなくても、または、ハウジングと軸受との間に弾性体を設けなくても、回転機械の運転時に生じる振動を抑制することができる。
よって、生産性を低下させることなく、かつ、生産コストを上昇させることなく、回転機械の運転時に生じる振動を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるターボチャージャの構成図である。
【図2】タービンハウジングと軸受ハウジングとの結合構造を示す。
【図3】本発明の実施形態による軸受位置決定方法を示すフローチャートである。
【図4】ハウジングの振動実験を説明するための図である。
【図5】ハウジングの振動実験により得た振動データを示す。
【図6】本発明の他の実施形態によるターボチャージャの構成図である。
【図7】図6の結合構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による回転機械10の一例を示す。回転機械10は、回転駆動される回転体3と、回転体3を回転可能に支持する軸受(図1では、軸受5a、5b)と、該軸受が取り付けられており回転体3の少なくとも一部を収容するハウジング7と、を備える。
また、回転機械10は、ターボ機械であってよい。ターボ機械は、回転する羽根車によって、流体と機械との間で連続的にエネルギーを変換する流体機械である。すなわち、ターボ機械では、その回転体3に羽根車が設けられており、回転駆動されている当該羽根車の運動エネルギーを流体に与え、または、流体から圧力を受けることにより当該羽根車が回転駆動される。図1の例では、回転機械10は、ターボ機械であり、より詳しくは、羽根車としてタービン羽根車9とコンプレッサ羽根車11を有するターボチャージャである。
【0019】
以下、本発明の実施形態によるターボチャージャ10について説明する。
【0020】
回転体3は、タービン羽根車9とコンプレッサ羽根車11と回転シャフト13とを有する。タービン羽根車9は、内燃機関からの排ガスにより回転駆動される。コンプレッサ羽根車11は、タービン羽根車9と一体で回転し、吸入空気を圧縮して内燃機関に供給する。回転シャフト13は、タービン羽根車9とコンプレッサ羽根車11との間で軸方向に延びて両者を同軸に結合している。
【0021】
ハウジング7は、タービンハウジング7aとコンプレッサハウジング7bと軸受ハウジング7cとを有する。
【0022】
タービンハウジング7aは、タービン羽根車9をその内部に収容する。また、タービンハウジング7aには、内燃機関からの排ガスが供給されるスクロール流路15と、タービン羽根車9を駆動した排ガスを排出する排気口17とが形成されている。タービンハウジング7aは、内燃機関からの排ガスが供給される排ガス導入管16を有する。この排ガス導入管16は、供給された排ガスをスクロール流路15に導入する。排ガスは、スクロール流路15から流路19を通してタービン羽根車9へ導入されてタービン羽根車9を回転駆動し、その後、排気口17から外部へ排出される。なお、流路19には、図1のように複数のノズル翼21が周方向に一定の間隔で配置されてもよい。
【0023】
コンプレッサハウジング7bは、コンプレッサ羽根車11をその内部に収容する。また、コンプレッサハウジング7bには、外部から空気が吸引される吸引口23と、コンプレッサ羽根車11により圧縮された空気が導入されるスクロール流路25とが形成されている。吸引口23から導入された空気は、コンプレッサ羽根車11によりディフューザ流路27に送出されて圧縮される。この圧縮空気は、スクロール流路25に導入され、その後、コンプレッサハウジング7bに設けられた図示しない吐出口から内燃機関に送られる。
【0024】
軸受ハウジング7cには、その内部において、複数の軸受5a、5bが組み込まれている。これらの軸受5a、5bは、異なる軸方向位置において、回転シャフト13を回転可能に半径方向に支持する。すなわち、軸受ハウジング7cは、軸受5a、5bを介して、回転シャフト13を回転可能に半径方向に支持する。なお、本願において、軸方向は、回転体3の中心軸Cと平行な方向であり、半径方向は、回転体3の中心軸Cと直交する方向である。
【0025】
ターボチャージャ10は、タービンハウジング7aと軸受ハウジング7cとを結合させる結合構造29を備える。
【0026】
結合構造29は、タービンハウジング7aのフランジ部39と、軸受ハウジング7cのフランジ部41と、これらのフランジ部39、41を結合するカップリング43と、を有する。
【0027】
フランジ部39は、タービンハウジング7aにおいて半径方向外側に突出した部分である。フランジ部41は、軸受ハウジング7cにおいて半径方向外側に突出した部分である。フランジ部39、41は、互いに軸方向に隣接している。
【0028】
カップリング43は、両フランジ部39、41を挟み込むことにより、タービンハウジング7aと軸受ハウジング7cとを結合する。
【0029】
カップリング43は、例えば、図2に示す構造を有する。図2(A)は、図1の部分拡大図であり、図2(B)は、図1のB−B矢視図でありカップリング43のみを示す。
カップリング43は、一対の半円弧部材45、47と、環状リング48と、締結具49とからなる。各半円弧部材45、47の一端部には、フランジ部45a、47aが形成されている。各半円弧部材45、47の他端部には、折返部45b、47bが形成されている。締結具49は、フランジ部45a、47a同士を結合させるボルト49aとナット49bである。環状リング48は、折返部45b、47bを互いに結合する。なお、図1において、環状リング48と折返部45b、47bの図示を省略している。
この構成で、ボルト49aの一端側部分に螺合したナット49bの進み量(回転量)に応じた力で、タービンハウジング7aとコンプレッサハウジング7bとを結合することができる。なお、ボルト49aの他端側部分は、適宜の手段によりフランジ部47aに結合されていてよい。
【0030】
また、コンプレッサハウジング7bと軸受ハウジング7cとは、図2の結合構造29と同様の構造で結合されていてもよいし、他の構造(例えば、後述する図7の結合構造29と同様の構造)により結合されていてもよい。
【0031】
本発明の実施形態によると、軸方向において、ハウジング7の振動モードにおける節の近傍に、軸受5aが配置される。このように振動モードの節の近傍に配置される軸受5aは、互いに異なる軸方向位置に配置される複数の軸受5a、5bのうちの1つ以上(本実施形態では、1つ、即ち、軸受5a)である。ここで、本実施形態において、振動モードとは、ハウジング7における半径方向の振動に関するものである。なお、軸方向において振動モードの節の近傍は、当該節の軸方向位置であるか、または、当該節付近の軸方向位置であることを意味する。ここで、節付近の軸方向位置とは、好ましくは、対象とする振動モードにおいて、腹における振幅の10%以下の振幅となる軸方向位置である。
【0032】
回転機械(本実施形態ではターボチャージャ)10の使用時にハウジング7は、所定の構造物に取り付けられる。なお、この構造物は、回転機械10が実際に使用される時の状態のものである。そのため、好ましくは、前記振動モードは、前記構造物に取り付けられた状態におけるハウジング7の振動モードである。
この場合、ターボチャージャ10(特に車両用ターボチャージャ)において、タービンハウジング7aと軸受ハウジング7cとが軸方向に結合されている結合位置Pcの近傍が、前記振動モード(後述の実施例では、3次の振動モード)の節の軸方向位置になることが多い。そのような場合には、図1のように、軸方向において、タービンハウジング7aと軸受ハウジング7cとの結合位置Pcの近傍に、軸受5aを配置する。なお、結合位置Pcの近傍は、当該結合位置Pcであるか、または、当該結合位置Pc付近であることを意味する。
【0033】
結合位置Pcは、図1の例では、タービンハウジング7aにおける、軸受ハウジング7cと結合している結合面38の軸方向位置である。この結合面38は、図1において、軸方向を向いており、他の部材を間に挟んで軸受ハウジング7c(図1では、半径方向突出部37)に結合している。なお、結合面38は、軸受ハウジング7cに、直接、接触して結合していてもよい。
【0034】
本発明の実施形態では、軸方向において、ハウジング7の振動モードにおける節の近傍に、軸受5aが配置されているので、回転体3に生じた振動による力が、ハウジング7の振動モードの節近傍で、回転体3からハウジング7に与えられるようになる。このように、振動モードの節近傍にてハウジング7に与えられる力は、ハウジング7の振動増大にほとんど寄与しない。その結果、ターボチャージャ10の運転時に生じるハウジング7の振動を抑制することができる。
【0035】
図3は、本発明の実施形態による回転機械の軸受位置決定方法を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、回転機械10の使用時にハウジング7が取り付けられる構造物に、ハウジング7を取り付ける。
【0037】
ステップS2において、ステップS1で前記構造物に取り付けられたハウジング7に打撃を与えることにより、ハウジング7を振動させる。具体的には、1つの軸方向位置において、軸方向と直交する方向にハウジング7に打撃を与える。
【0038】
ステップS3において、ステップS2で与えられた打撃により振動しているハウジングの振動を計測する。具体的には、複数の軸方向位置において、軸方向と直交する方向に生じたハウジング7の振動(例えば、変位、速度または加速度)を計測する。
【0039】
ステップS4において、ステップS2で打撃を与えた軸方向位置と、ステップS3で振動を計測した複数の軸方向位置と、ステップS3において各軸方向位置で計測した振動とに基づいて、ハウジング7の各振動モードを求める。
【0040】
ステップS5において、ステップS4で求めた振動モードの節の近傍を、前記軸受の位置とする。好ましくは、ステップS4で求めた複数の振動モードのうち、腹の軸方向位置での振幅が最も大きい振動モードの節の近傍を、回転機械10の前記軸受の位置とする。
【0041】
(実施例)
実施例では、図1のターボチャージャ10における軸受5aの位置を、図3のフローチャートに従って、次のように振動実験により特定した。
【0042】
まず、ターボチャージャ10の使用時にハウジング7が、所定の構造物に取り付けられるので、ステップS1で、当該構造物にハウジング7を取り付けた。当該構造物は、図4に示すように、排ガス管18、22である。排ガス管18は、内燃機関から排出された排ガスが流れる配管であって、当該排ガスが上述した排ガス導入管16に流入するようにタービンハウジング7aの排ガス導入管16に取り付けられる。排ガス管22は、排気口17から排ガスが導入されるようにタービンハウジング7aに取り付けられる。
【0043】
ステップS2で、図4に示す軸方向位置Piにおいて、かつ、回転体3の中心軸Cと同じ高さにおいて、インパルスハンマーで、図4の紙面と垂直な水平方向にハウジング7を打った。なお、図4における上下方向が鉛直方向である。
【0044】
これによってハウジング7に生じる半径方向の振動(加速度)を、ステップS3で、図4に示す複数の軸方向位置(1)〜(8)において計測した。この実施例では、図4の紙面と垂直な水平方向における振動を、回転体3の中心軸Cと同じ高さで軸方向位置(1)〜(8)において計測した。図5は、この計測結果を示す。図5において、横軸は、振動を計測した前記軸方向位置(計測位置)(1)〜(8)を示す。図5において、縦軸は、計測された振動の振幅を示す。詳しくは、縦軸は、ステップS2においてインパルスハンマーで与えた力(加振力)で、ステップS3において計測された振動(加速度)の振幅を割った値を示す。図5において、縦軸の正負は、振れている方向が逆であることを意味する。すなわち、軸方向位置(3)〜(6)と軸方向位置(1)(2)(7)(8)とは互いに逆方向に(180度の位相差で)振れている。
【0045】
ステップS4では、ステップS3により得られた図5のデータから、ハウジング7の振動モードを特定し、当該振動モードの節の軸方向位置を特定した。この実施例では、振動モードの節の軸方向位置は、ハウジング7における図4に示す軸方向位置(6)の近傍に特定された。この振動モードは、ハウジング7と、ハウジング7が取り付けられた構造物18、22とからなる構造体の固有振動数での振動モードである。なお、軸方向位置(6)は、軸方向において上述した結合位置Pcの近傍にあった。
【0046】
ステップS5では、ステップS4により特定した振動モードにおける節の軸方向位置の近傍を、軸受5aの位置とする。従って、特定したハウジング7aの節の軸方向位置の近傍に、軸受5aを配置する。すなわち、複数の軸受5a、5bのうち1つ以上を、振動モードにおける節の軸方向位置の近傍に配置する。
【0047】
ステップS5において、ステップS4で複数の振動モードが特定された場合には、これらの振動モードのうち、腹での振幅(すなわち、最大振幅)が最大となるものを選択する。次いで、ステップS5で、選択した振動モードにおける節の軸方向位置の近傍を、軸受5aの位置とする。従って、選択した振動モードの節の軸方向位置の近傍に、前記軸受(この例では、軸受5a)を配置する。
これにより、回転体3のアンバランスにより生じた回転体3の振動によって、ハウジング7に生じる振動をより効果的に抑えることができる。その結果、ハウジング7の振動が抑制され、ハウジング7の振動によって発生する騒音をより効果的に抑えることができる。
この実施例では、ステップS4で特定した複数の振動モードのうち、腹での振幅が最大となるものは、3次の振動モードであった。また、腹での振幅が最大となる振動モードが、ハウジング7の振動によって発生する騒音の周波数に相当するか、または、この周波数に近い周波数に相当する。そのため、図1の場合に、軸方向において、前記3次の振動モードの節の近傍に、軸受5aを配置する。この節は、上述の結合位置Pcの近傍であるので、軸方向において、結合位置Pcの近傍に軸受5aを配置する。
【0048】
以下、ハウジング7が取り付けられる構造物について説明を補足する。
【0049】
ターボチャージャ10の使用時にハウジング7が取り付けられる構造物のうち、ハウジング7の振動モードに最も影響を与えるものは、タービンハウジング7aに取り付けられ、かつ、タービンハウジング7aを固定する上述の排ガス管18、22である。そのため、好ましくは、上述の実施例のように、タービンハウジング7aに排ガス管18、22を取り付け、この状態で、ステップS2、S3の打撃と振動計測を行う。
【0050】
なお、より好ましくは、ターボチャージャ10の使用時にハウジング7に取り付けられる他の構造物をハウジング7に取り付け、この状態で、上述のステップS2、S3を行う。このような他の構造物としては、例えば、次の(A)〜(G)がある。
【0051】
(A)ノズル翼21を駆動することによりタービン羽根車9への排ガスの流速を調節する場合には、前記構造物として、上述のノズル翼21を駆動するアクチュエータ(例えば電動モータ)がある。このアクチュエータは、タービンハウジング7aに取り付けられる。
【0052】
(B)前記構造物として、コンプレッサハウジング7bの吸引口23に空気を導入する配管がある。この配管は、コンプレッサハウジング7bに取り付けられる。
【0053】
(C)前記構造物として、スクロール流路25に導入された圧縮空気を内燃機関に送る配管がある。この配管は、コンプレッサハウジング7bに取り付けられる。
【0054】
(D)前記構造物として、軸受5a、5bに潤滑油を供給するために、軸受ハウジング7c内に潤滑油を供給する配管がある。この配管は、軸受ハウジング7cに取り付けられる。
【0055】
(E)前記構造物として、軸受5a、5bに供給した潤滑油を軸受ハウジング7c外へ排出する配管がある。この配管は、軸受ハウジング7cに取り付けられる。
【0056】
(F)前記構造物として、軸受ハウジング7c内に設けられる冷却水路34、36に冷却水を供給し、冷却水路34、36から冷却水を排出する配管がある。このような配管は、軸受ハウジング7cに取り付けられる。図1の例では、各冷却水路34、36は、中心軸Cを回る周方向に延びており、例えば、この周方向に1周するように延びている。なお、冷却水路34、36は互いに連通していてもよい。
【0057】
(G)ウェイストゲートバルブが設けられる場合には、前記構造物として、ウェイストゲートバルブの開度を調節するアクチュエータ(駆動装置)がある。このアクチュエータは、例えば、タービンハウジング7aに取り付けられる。なお、ウェイストゲートバルブは、排ガス管18の途中箇所と排ガス管22の途中箇所とを連通させるバイパス管に設けられ、その開度によって、バイパス管を流れる排ガスの量を調節する。この排ガスは、内燃機関からの排ガスであるが、タービン羽根車9をバイパスする。
【0058】
ただし、上記(A)〜(G)の構造物がハウジング7の振動モードに与える影響は、無視できる程度に小さい。従って、上記(A)〜(G)の構造物にハウジング7を取り付けずに上述のステップS2、S3を行っても、本発明の効果が得られる。
【0059】
[他の実施形態]
図6は、本発明の他の実施形態によるターボチャージャ10を示す。図6のターボチャージャ10では、以下で説明する点で、図1のターボチャージャ10と異なり、他の点は、図1のターボチャージャ10と同じである。
【0060】
図7は、図6の実施形態における結合構造29を示す。図7(A)は、図6の部分拡大図であり、図7(B)は、図7(A)のB−B線矢視図である。
結合構造29は、タービンハウジング7aにおいて軸受ハウジング7c側に軸方向に開口するボルト穴31と、ボルト穴31に螺合したボルト33と、該ボルト33の頭33aとタービンハウジング7aとに挟み込まれることによりタービンハウジング7aに固定されたプレート状部材35と、により構成される。プレート状部材35とタービンハウジング7aとの間に、軸受ハウジング7cの半径方向突出部37が挟み込まれることにより、軸受ハウジング7cは、タービンハウジング7aに結合されている。
なお、図7(A)において、ボルト33のネジ部33bが、これと同程度の寸法を有するプレート状部材35の貫通孔(図示せず)を頭33a側から軸方向に貫通してボルト穴31に螺合している。
【0061】
図6に示すターボチャージャ10においても、図1の実施形態と同様に、ハウジング7の軸方向において、ハウジング7の振動モードにおける節の近傍に、軸受5aが配置される。
また、図6においても、軸方向において、タービンハウジング7aと軸受ハウジング7cとの結合位置Pcの近傍に、軸受5aが配置されている。
【0062】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、以下のように本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1、2のいずれかを採用してもよい。この場合、以下で説明しない点は、上述と同じである。
【0063】
(変更例1)
ステップS2では、1つの軸方向位置において、既知の力で、ハウジング7に打撃を与え、ステップS3では、ステップS2で与えられた打撃により振動しているハウジング7の振動を1つ軸方向位置で計測し、次いで、ステップS2へ戻り、再び、まだ打撃を与えていない新たな軸方向位置において、既知の力で、ハウジング7に打撃を与え、次いで、ステップS3で、振動しているハウジング7の振動を1つの軸方向位置(例えば、前回と同じ軸方向位置)で計測する。このようにして、ステップS2とステップS3を繰り返す。その後、ステップS4において、ステップS2で衝撃を与えた複数の軸方向位置と、ステップS2で与えた既知の力と、ステップS3で振動を計測した軸方向位置(例えば、同じ軸方向位置)と、ステップS3で計測した振動の各値とに基づいて、ハウジング7の各振動モードを求める。
【0064】
(変更例2)
上述のステップS1〜S4の代わりに、ハウジング7の各振動モードを、コンピュータのシミュレーションにより求めてもよい。このシミュレーションは有限要素法によるものであってよい。また、このシミュレーションでは、回転機械10の使用時にハウジング7が構造物に取り付けられる場合には、当該構造物に取り付けられた状態のハウジング7の各振動モードを求める。その後は、上述のようにステップS5を行う。すなわち、シミュレーションにより求めた振動モードの節の近傍を、前記軸受の位置とする。好ましくは、シミュレーションにより求めた複数の振動モードのうち、腹の軸方向位置で振幅が最も大きい振動モードの節の近傍を、前記軸受の位置とする。
【符号の説明】
【0065】
3 回転体、5a、5b 軸受、7 ハウジング、7a タービンハウジング、7b コンプレッサハウジング、7c 軸受ハウジング、9 タービン羽根車、10 回転機械(ターボチャージャ)、11 コンプレッサ羽根車、13 回転シャフト、15 スクロール流路、16 排ガス導入管、17 排気口、18 排ガス管、19 流路、21 ノズル翼、22 排ガス管、23 吸引口、25 スクロール流路、27 ディフューザ流路、29 結合構造、31 ボルト穴、33 ボルト、33a ボルトの頭、33b ボルトのネジ部、34 冷却水路、35 プレート状部材、36 冷却水路、37 軸受ハウジングの半径方向突出部、38 結合面、39 タービンハウジングのフランジ部、41 軸受ハウジングのフランジ部、43 カップリング、45、47 半円弧部材、45a、47a フランジ部、45b、47b 折返部、48 環状リング、49 締結具、49a ボルト、49b ナット、C 中心軸、Pc 結合位置、Pi 加振軸方向位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される回転体と、回転体を回転可能に支持する軸受と、該軸受が取り付けられており回転体の少なくとも一部を収容するハウジングと、を備える回転機械であって、
回転体の軸方向において、前記ハウジングの振動モードにおける節の近傍に、前記軸受が配置されている、ことを特徴とする回転機械。
【請求項2】
回転機械の使用時に前記ハウジングは構造物に取り付けられ、前記振動モードは、前記構造物に取り付けられた状態にある前記ハウジングの振動モードである、ことを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記ハウジングに生じる複数の振動モードのうち、振幅が最大となる振動モードにおける節の近傍に、前記軸受が配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項4】
前記回転体は、内燃機関の排ガスにより回転駆動されるタービン羽根車と、空気を圧縮して内燃機関に供給するコンプレッサ羽根車と、タービン羽根車とコンプレッサ羽根車とを同軸に結合し両者の間で軸方向に延びる回転シャフトと、を有し、
前記軸受は、回転シャフトを半径方向に支持するように異なる軸方向位置に配置された複数の軸受のうちの1つである、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の回転機械。
【請求項5】
回転駆動される回転体と、回転体を回転可能に支持する軸受と、該軸受が取り付けられており回転体の少なくとも一部を収容するハウジングと、を備える回転機械の軸受位置決定方法であって、
ハウジングの振動モードを、シミュレーションまたは実験により求め、
求めた振動モードの節の近傍を、前記軸受の位置とする、ことを特徴とする回転機械の軸受位置決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96312(P2013−96312A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240247(P2011−240247)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】