説明

回転機械装置

【課題】インバータを制御する基板に異常が発生しても、需要先の利用者に不具合を生じさせることなく運転を継続することができる回転機械装置を提供する。
【解決手段】回転機械装置としての給水装置1は、複数のポンプ3と、対応するポンプの回転周波数を可変制御する複数のインバータ5と、複数のインバータ5を制御する制御部6とを備えている。制御部6は、それぞれが複数のインバータ5を単独で制御可能な複数の制御基板60a,60bを備えており、運転中に一の制御基板60aまたは60bに異常が発生した場合に、待機中の他の制御基板60bまたは60aがバックアップして複数のインバータ5を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置などの回転機械装置に係り、特にポンプをインバータ制御して集合住宅などに給水を行う給水装置などの回転機械装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、給水装置などの回転機械装置においては、商用交流電源の周波数および電圧を任意の周波数および電圧に変換するインバータを用いることにより、ポンプを可変速運転することが広く行われている。インバータは、ポンプを駆動するモータの回転速度を任意に変えられるため、ポンプの負荷に対応した最適な回転速度で運転することが可能となり、定格速度で運転する場合に比較して省エネルギー化を図ることができる。
【0003】
このような給水装置においては、複数のポンプを複数のインバータを用いて制御する場合があり、この場合にはこれらのポンプおよびインバータを制御する制御部が設けられる。このような複数のポンプおよびインバータを用いた給水装置においては、あるポンプが故障(漏電、過電流、欠相など)した場合には、自動的に他のポンプに切り替え、断水を回避することができる。
【0004】
しかしながら、ポンプおよびインバータを制御する制御部(制御基板)が何らかの不具合によって正常に動作しなくなった場合には、すべてのポンプが運転不能となってしまい、故障した制御基板を交換するまで断水状態が続くこととなる。
【0005】
このような観点から、すべてのポンプを数台ごとにいくつかのグループに分けて、数台のポンプに対して1つの制御基板を設けて、複数の制御基板により制御することもなされている。この方法によれば、1つの制御基板が故障しても、他の制御基板によって給水を継続することが可能となる。しかしながら、この方法では、故障した制御基板以外の制御基板は、十分な入力端子を備えておらず、すべてのポンプを制御することができないので、供給できる給水量が減ってしまうという問題がある。したがって、この場合にも、故障した制御基板を交換するまでの間に需要先の利用者に不都合を与えてしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、インバータを制御する基板に異常が発生しても、需要先の利用者に不具合を生じさせることなく運転を継続することができる、給水装置などの回転機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、複数の回転機械と、対応する回転機械の回転周波数を可変制御する複数のインバータと、前記複数のインバータを制御する制御部とを備え、前記制御部は、それぞれが前記複数のインバータを単独で制御可能な複数の制御基板を備え、運転中に前記複数の制御基板のうちの一の制御基板に異常が発生した場合に、待機中の他の制御基板が前記一の制御基板をバックアップして前記複数のインバータを制御することを特徴とする回転機械装置である。上記複数の制御基板は同一の構成を有していてもよい。あるいは、上記複数の制御基板は、上記複数のインバータを制御するために必要な最低限の構成を有するバックアップ運転用の制御基板を少なくとも1つ含んでいてもよい。
【0008】
本発明の一参考例は、複数のポンプと、対応するポンプの回転周波数を可変制御する複数のインバータと、上記複数のインバータを制御する制御部とを備えた給水装置が提供される。上記制御部は、それぞれが上記複数のインバータを単独で制御可能な複数の制御基板を備えている。この場合において、運転中に一の制御基板に異常が発生した場合に、待機中の他の制御基板が上記一の制御基板をバックアップして上記複数のインバータを制御することが好ましい。
【0009】
このような構成により、一の制御基板に異常が発生しても、待機中の他の制御基板でバックアップすることで、給水装置の最大水量で運転を継続することができ、断水を回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明によれば、インバータを制御する基板に異常が発生しても、需要先の利用者に不具合を生じさせることなく運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における給水装置を示す概略図である。
【図2】図1のインバータを示す概略図である。
【図3】図1の制御部を示す概略図である。
【図4】図3の制御基板と図1のインバータとの関係を示すブロック図である。
【図5】図3の制御基板の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における給水装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る回転機械装置としての給水装置の実施形態について図1から図6を参照して詳細に説明する。また、図1から図6において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態における給水装置1を示す概略図である。図1に示すように、給水装置1は、2つの受水槽2と、配管10を介して各受水槽2に接続される2つのポンプ3と、ポンプ3を駆動するモータ4と、モータ4の回転周波数を制御するインバータ5と、インバータ5をはじめとする各種機器を制御する制御部6とを備えている。
【0014】
各受水槽2には、電極棒12aにより受水槽2の水位を検知する水位検知器12が設けられている。本実施形態における水位検知器12は、4つの液面レベル(満水、減水、復帰、渇水)を検知する。各受水槽2には、水道本管(図示せず)に接続された給水管14から電磁弁16を介して水道水が導入されるようになっている。水位検知器12により受水槽2の水位が検知され、水位の増減に応じて制御部6により電磁弁16が開閉される。このような構成により、受水槽2に水道水がいったん貯水され、この貯水された水がポンプ3により住宅等の末端の需要先に供給されるようになっている。
【0015】
各ポンプ3の吐出側には、配管18および吐出管20が接続されており、ポンプ3により受水槽2内の水道水が住宅等の末端の需要先に供給されるようになっている。配管18にはチェッキ弁22およびフロースイッチ24がそれぞれ設けられており、フロースイッチ24の出力は各インバータ5に入力される。なお、チェッキ弁22はポンプ3が停止した場合に吐出側から吸込側に水が逆流することを防止するための逆流防止弁であり、フロースイッチ24は配管18内の水量が少なくなったことを検出するためのものである。
【0016】
吐出管20には、ポンプ3の吐出圧力を検出する圧力センサ26が設置されており、この圧力センサ26の出力信号は制御部6に入力されている。また、吐出管20には圧力タンク28が接続されており、フロースイッチ24により水量が少なくなったことが検出された場合には、ポンプ3の締切運転を防止するために、圧力タンク28に蓄圧してからポンプ3の運転を停止することができる。
【0017】
この給水装置1においては、フロースイッチ24や圧力センサ26などの出力信号に基づいて、ポンプ3の回転速度(回転周波数)がインバータ5を用いて可変速制御される。一般的には、圧力センサ26により検出された圧力信号が設定された目標圧力と一致するようにポンプ3の回転速度を制御してポンプ3の吐出圧力が一定になるように制御する吐出圧力一定制御や、ポンプ3の吐出圧力の目標値を適切に変化させることにより末端の需要先における供給水圧を一定に制御する推定末端圧力一定制御などが行われる。これらの制御によれば、その時々の需要水量に見合った回転速度でポンプ3が駆動されるので、省エネルギーを達成することができる。
【0018】
また、フロースイッチ24がONになると、水の使用のない、水量が少ない状態と判断され、ポンプ3の運転が停止される。吐出圧力の低下などにより水の使用が検知されると、ポンプが再起動される。水量の少ないときにポンプ3を停止する場合には、一度ポンプ3を加速して、圧力タンク28に蓄圧してからポンプ3を停止する蓄圧運転を行ってもよい。
【0019】
本実施形態の給水装置1は、複数のポンプを備えているので、追加解列を伴う複数台運転を行ったり、運転中に特定のポンプ3やインバータ5の異常が検知された場合に、他の正常なポンプ3やインバータ5に運転を切り替えて給水を継続することができる。
【0020】
図2は、図1のインバータ5を示す概略図である。図2に示すように、インバータ5は、主基板50と、インバータ5の設定(例えば加速時間や減速時間等の設定)などを行う操作パネル52と、各種信号の入出力を行うI/O基板(入出力基板)54とを備えている。
【0021】
主基板50は、漏電遮断器(Earth Leakage Circuit Breaker:ELB)56を介して入力された交流電力を整流する整流器500と、整流器500によって整流された電力を所望の周波数の交流電力に変換するスイッチング素子(電力部)501と、制御部6や他のインバータ5とシリアル通信ケーブル30を介して情報の授受を行う通信部(シリアルポート)502と、各種のプログラムを記憶したメモリ(ROMや書換え可能な不揮発性記憶素子であるフラッシュメモリ等)503と、メモリ503に記憶されたプログラムに基づいて演算制御動作を行うCPU504とを備えている。
【0022】
主基板50は、漏電遮断器56を介して入力される電力を整流器500で直流電力に変換し、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子501を駆動して所望の周波数の交流電力(制御部6から通信部502を介して送られる情報に応じた周波数の電力)に変換して、ポンプ3を駆動するモータ4にこの電力を供給する。
【0023】
メモリ503には、スイッチング素子501の制御や通信部502を介した情報の授受、I/O基板54や操作パネル52との情報の授受を行うためのプログラムや、各種のインバータ制御および運転制御プログラムが記憶されている。これらのプログラムは、CPU504によって実行される。なお、メモリ503とCPU504とは同一の半導体チップ上に搭載されたものであってもよい。メモリ503やCPU504などは直流電力で駆動されるため、インバータ5の主基板50には、直流電力を主基板50に供給する電源部505が設けられている。この電源部505は、トランスや整流器、コンデンサなどにより構成される。なお、この電源部505は操作パネル52やI/O基板54にも電力を供給するようになっている。
【0024】
I/O基板54は、インバータ5の使用用途により自由に改変可能な各種の入力端子および出力端子を備えている。図2に示すI/O基板54では、各ポンプ3に設けられポンプ3の温度を検知するサーミスタからの信号が入力されるアナログ入力端子540と、インバータ5の1次側に設けられた漏電遮断器56のトリップ信号やポンプ3の吐出側に設けられたフロースイッチ24のON/OFF信号が入力されるデジタル入力端子541と、ポンプ3が運転中であるかどうか(ポンプの発停)を示すON/OFF信号である運転信号やポンプ3やインバータ5などの故障を知らせる故障信号を装置外部に出力するためのデジタル出力端子542とが設けられている。
【0025】
また、I/O基板54にはディップスイッチ543が設けられており、このディップスイッチ543は複数のインバータを有する給水装置におけるインバータ番号(ポンプ番号)の設定などに用いられる。
【0026】
このように、I/O基板54は、サーミスタや漏電遮断器56、フロースイッチ24などといった、ポンプの系列ごとに必要とされる信号(ポンプに依存する入力信号)の入力端子を備えており、同様に、運転や故障といった、ポンプの系列ごとに必要とされる信号(ポンプに依存する出力信号)の出力端子も備えている。したがって、従来のように制御部6にこれらの入出力端子を設ける必要がなくなり、ポンプの台数が増えた場合にも、これらの信号の入出力用に別途基板を用意する必要がなくなる。
【0027】
I/O基板54と主基板50とは、インタフェイス544,506を介して互いに接続されている。I/O基板54の入力端子540,541から入力された信号は、主基板50のメモリ503に記憶されたプログラムに従って、通信部502から制御部6に送信される。また、制御部6や主基板50のCPU504の判断に基づいて故障信号がインタフェイス506,544を介して出力端子542から外部に出力される。
【0028】
図2に示すように、操作パネル52は、インバータ5により駆動されるポンプ3の試験・停止・自動運転を選択する運転切替スイッチ(操作部)520と、運転・故障を示すランプ521と、インバータ5の設定等を行うのに最低限必要な数の操作ボタン(操作部)522とを備えている。この操作パネル52は、従来のインバータの操作パネルとは異なり、インバータ5に関する情報を表示するための液晶ディスプレイや7セグメント表示器などからなる表示部を備えていない。
【0029】
操作パネル52は、インタフェイス523,545を介してI/O基板54に接続されている。運転切替スイッチ520を切り替えることにより、ポンプ3の運転状態を切り替えることができ、操作ボタン522を操作することによりインバータ5の設定(例えば加速時間や減速時間等の設定)や表示部に表示する内容を変更する(切り替える)ことができるようになっている。なお、本実施形態においては、操作パネル52を主基板50と別に形成し、インタフェイス523,545を介して操作パネル52をI/O基板54に接続しているが、操作パネル52をI/O基板54と一体に形成してもよい。
【0030】
操作パネル52の運転切替スイッチ520を「自動」にすると、制御部6からの指令に従ってポンプ3が可変速制御される。運転切替スイッチ520を「停止」にすると、インバータ5は制御部6の指令にかかわらずポンプ3の駆動を停止する。また、運転切替スイッチ520を「試験」にすると、インバータ5、モータ4、およびポンプ3を手動で試験運転(試運転)することができる。給水装置1においては、装置の据付時やポンプ3やモータ4のメンテナンスを行った際などに、該当するポンプ3の試験運転を行う。この試験運転では、装置が動くかどうか、あるいはポンプの回転方向が正しいかどうかなどがチェックされる。
【0031】
このような運転切替スイッチ520が、各インバータ5に設けられているので、任意のポンプを強制的に停止や運転させたい場合に、容易にその目的を達成することができる。なお、インバータ5は、運転切替スイッチ520が「停止」または「試験」に切り替えられると、停止状態または試験状態に切り替えられたことを制御部6に伝達し、制御部6はこれを考慮した制御を行うことができる。
【0032】
図3は、図1の制御部6を示す概略図である。図3に示すように、制御部6は、信号の入出力および装置の制御を行う2つの制御基板60a,60bと、各種設定を行う操作パネル62とを備えている。制御基板60a,60bは同一の構成を有するものであるので、ここでは制御基板60aについてのみ説明する。
【0033】
制御基板60aは、インバータ5の通信部502と接続される通信部(シリアルポート)600と、各種のプログラムを記憶したメモリ(ROMや書換え可能な不揮発性記憶素子であるフラッシュメモリ等)601と、メモリ601に記憶されたプログラムに基づいて演算制御動作を行うCPU602とを備えている。通信部600を介してポンプ3の発停や回転周波数、インバータ5のトリップ等の情報の授受が行われる。なお、メモリ601とCPU602とは同一の半導体チップ上に搭載されたものであってもよい。
【0034】
また、制御基板60aは、受水槽2の液面に関する信号(水位検知器12の出力信号)等が入力される入力端子603と、圧力センサ26からの出力信号が入力される入力端子604と、電磁弁16への出力信号を出力するための出力端子605と、受水槽2の状態(満水・減水・渇水・故障など)を外部に出力するための出力端子606とを備えている。このように、入力端子603,604にはポンプに依存しない入力信号が入力され、出力端子605,606からはポンプに依存しない出力信号が出力される。また、制御基板60aはディップスイッチ607を備えている。
【0035】
このように、制御基板60aには、受水槽2の液面に関する信号、吐出圧力や流入圧力など、ポンプごとに設ける必要のない入出力端子(ポンプに依存しない入出力端子)は設けられているが、上述したように、ポンプ系列ごとに必要な入出力端子(ポンプに依存する入出力端子)については、インバータ5のI/O基板54に設けられているので、制御基板60aから入出力端子が減って小型化することができる。これに伴い、コストダウンを見込める。
【0036】
制御基板60aは、メモリ601に記憶された制御プログラムを実行して、操作パネル62で設定された条件や各種センサからの信号に基づいて、各ポンプ3の発停(運転台数)および運転周波数を決定し、インバータ5にそれらを送信してポンプ3の回転周波数制御を行う。また、制御基板60aは、各種センサからの信号やインバータ5からのトリップ信号により、ポンプ3の運転を停止する、あるいは他のポンプ3に運転を切り替えるなどの制御を行う。
【0037】
ここで、装置の据付時、ポンプ3やモータ4のメンテナンス時には、ポンプ3の試験運転(試運転)が行われる。この試験運転は、インバータ5の操作パネル52の運転切替スイッチ520を手動で「試験」に切り替えることにより行われる。試験運転時のモータ4の回転周波数は、操作パネル52の操作ボタン(上下ボタン)522により任意の回転周波数に変更することができるようになっている。しかしながら、高い周波数で試験運転を行うと、水の使用がない場合などに給水装置1の2次側の配管内の圧力が大きく上昇してしまい、配管継手からの漏れなどの問題を生じてしまう。
【0038】
このような問題を避けるため、試験運転時はインバータ5の最高運転周波数を通常運転時より低くなるように制御している。具体的には、インバータ5の設定において、試験運転時の最高運転周波数自体を設定する、あるいは試験運転時の最高運転周波数を通常運転時の最高運転周波数に対する比率として設定できるようになっている。これにより、給水装置1の2次側の配管内の圧力が過度に上昇することを防止することができる。
【0039】
また、各インバータ5においては自由に試験運転を行うことができるようになっている。すなわち、他のポンプが自動運転中に、任意の他のポンプを試験運転することができる。この場合、試験運転中のポンプによって加圧された分は、圧力センサ26に検出されるため、試験運転中のポンプの回転速度(回転周波数)が非常に大きくない限り、通常の圧力制御を行っていればよい。しかしながら、そのような回転速度を超えて手動で回転速度を上昇させてしまった場合には、吐出圧力は他のポンプを停止しても目標圧力以上になってしまう。したがって、制御基板60aは、試験運転状態のインバータ5に対して、吐出圧力が目標圧力以上に上昇してしまうような場合に、回転速度をそれ以上上昇しないように制御する、あるいは回転速度を低下させるよう制御することができる。すなわち、ポンプ3の試験運転時には吐出圧力が一定以上の圧力に上がらないように、自動的にポンプ3の運転周波数に制限をかけることにより、安全かつ簡単にポンプ3の試験運転を行うことができるようになる。
【0040】
なお、制御基板60a,60bのメモリ601やCPU602は、インバータ5の主基板50の電源部505から電源端子507(図2参照)を介して直流電力の供給を受けて駆動するようになっている。このように、インバータ5から制御部6の制御基板60a,60b用の電力を供給することによって、制御基板60a,60b用の直流電源を別途設ける必要がなくなる。したがって、給水装置の製造コストを低減することができ、制御基板60a,60bの大きさも小さくすることができる。また、安定した電源の開発には相当の時間および費用がかかるが、本実施形態によれば、インバータに搭載する電源部の開発だけでよいので、装置のコストダウンを図ることができる。
【0041】
なお、すべてのインバータ5の電源端子507から両方の制御基板60a,60bに電力を供給するのではなく、制御基板60aに電力を供給するインバータ群と制御基板60bに電力を供給するインバータ群とに分けてもよい。この場合には、制御基板が1つのときと比べて、インバータ5の電源部505の容量を大きくする必要もなくなる。
【0042】
図3に示すように、制御部6の操作パネル62は、装置の状態を示すランプ620と、給水装置1の目標圧力等の運転条件を設定する操作ボタン622と、装置に関する情報を表示するための液晶ディスプレイや7セグメント表示器などからなる表示部624とを備えている。操作ボタン622により、運転モードの選択や運転条件の設定を行う。また、表示部624には、運転中の装置のパラメータなどが表示される。
【0043】
上述したように、各インバータ5の操作パネル52には、従来のインバータの操作パネルとは異なり表示部が設けられていない。電流や運転周波数などのインバータ5に関する情報は、制御部6の操作パネル62に設けられた表示部624に表示されるようになっている。すなわち、インバータ5の操作パネル52の操作ボタン522を押すと、制御部6の操作パネル62上の表示部624にインバータ5に関する情報が表示されるようになっている。この場合において、操作ボタン522のうち、いずれか1つのボタンを押せば表示部624を切り替えるようにしてもよいし、あるいは、操作ボタン522に表示切替用のボタンを設けてもよい。
【0044】
このように、本実施形態によれば、インバータ5に液晶等の表示部を設ける必要がないため、装置のコストダウンを図ることができる。また、制御部6に表示部を集約して設けているので、操作者は容易に表示内容を理解することができ、操作性を向上させることができる。
【0045】
一方、インバータ5の操作パネル52には、必要最小限の操作ボタン522は残してあるため、インバータ5の操作パネル52における操作により表示を切り替えることができる。したがって、制御部6の操作パネル62における操作により表示を切り替える場合に比べて、表示の切替作業が簡便になり、ポンプ3およびインバータ5の増減があった場合にも、制御部6の操作パネル62の表示部624の構造を変更する必要がない。なお、表示のための操作が多少煩雑になってもよい場合には、制御部6の操作パネル62における操作により表示を切り替えて各インバータ5の情報を表示することとしてもよい。
【0046】
制御部6の操作パネル62は、上述したインバータ5に関する情報を表示する機能に加えて、操作ボタン622の操作により、給水装置1の運転中の吐出圧力や流入圧力等を選択的に表示させることができる機能を有している。また、操作ボタン622の操作により、給水装置1の目標圧力等の運転条件を設定することができる。また、この操作パネル62は警報ブザーを備えており、警報が出されたときは、表示部624に警報内容が表示されるようになっている。
【0047】
図4は、図3の制御基板60a,60bと図1のインバータ5との関係を示すブロック図である。上述したように、制御基板60a,60bは同一の構成であり、互いにシリアル通信によって接続され相互に通信監視される。それぞれの制御基板は、単独ですべてのインバータ5を制御することができるようになっている。したがって、たとえ一方の制御基板60aまたは60bに異常(CPUエラー・通信異常・システム異常など)が発生しても、もう一方の待機中の制御基板60bまたは60aでバックアップすることで、給水装置の最大水量で運転を継続することができ、断水を回避することができる。なお、このとき、出力端子606を介して外部に異常発生信号を出力する。
【0048】
また、上述したように、ポンプの系列ごとに必要とされる信号の入力端子および運転や故障といった、ポンプの系列ごとに必要とされる信号の出力端子は、インバータ5に設けられているので、制御基板60a,60bにすべてのポンプを運転する能力を持たせるとしても、制御基板60a,60bの大きさをポンプ3の台数にかかわりなく必要最小限にすることができる。
【0049】
ここで、制御基板60aと60bのどちらを優先させて使用するかは、任意に設定することができ、必要に応じて切り替えることもできる。例えば、装置の駆動プログラムのアップデートが必要になった場合に、待機中の制御基板60aまたは60bのメモリ601に新規のプログラムを導入した後、使用する制御基板を制御基板60aまたは60bに切り替え、先ほどまで使用していた制御基板60bまたは60aを待機状態にし、この制御基板60bまたは60aのプログラムも書き換えることができる。これにより、給水装置1の運転を停止することなくプログラムを新規のものに書き換えることが可能となる。
【0050】
上述した例では、制御基板60aと制御基板60bとを同一の構成とした例について説明したが、制御基板60aと制御基板60bは、インバータ5の制御に必要な最低限の構成を有していれば、必ずしも同一の構成を有する必要はない。例えば、図5に示すように、制御基板60bをバックアップ運転用の基板として用いて、インバータ5(ポンプ)の制御に必要な最低限の構成を有するように機能を簡略化してもよい。このようにすることで、装置全体のコストを低減することができる。
【0051】
主制御基板60aの不具合によりバックアップ運転用の制御基板60bが動作すると、主制御基板60aが故障した旨の警報および通知がなされる。これにより、メンテナンスのため作業者が現地に行って修理を行うことになる。このように、バックアップ運転用の制御基板60bの運転時には作業者が現地に行っているので、バックアップ運転用の制御基板60bに不具合があっても外部に必ずしも通報する必要はない。したがって、図5に示すバックアップ運転用の制御基板60bでは、図3に示す制御基板60aにおける入力端子603のうち故障および警報の外部通知用の出力端子606を省略している。また、入力端子603のうち、満水、減水、復帰の入力は、ポンプの制御には必ずしも必要ではないため、これらの端子を省略して入力端子603を簡略化している。
【0052】
このように、バックアップ運転用制御基板60bは、主制御基板60aの構成を簡略化したものであっても、ポンプの制御に必要な最低限の構成さえあれば、主制御基板60aを修理するまでの間であれば、十分にポンプの制御が可能である。これにより、装置全体のコストを低減することができる。なお、主制御基板60aの出力端子606(図3参照)から主制御基板60a自身の故障を出力できないことも考えられるが、インバータ5の出力端子542(図2参照)からの故障信号によって主制御基板60aの故障を外部に知らせることも可能である。
【0053】
図6は、本発明の第2の実施形態における給水装置101を示す概略図である。図6に示す給水装置101は、ポンプ3を水道本管102に直結して水道本管102の圧力を利用して給水を行う直結タイプの給水装置である。この給水装置101においては、水道本管102の水圧を検知するための吸込側圧力センサ103が吸込配管104に設けられており、この出力は制御部6に入力される。また、吸込配管104には、逆流防止装置105が設けられている。
【0054】
上述した実施形態においては、給水装置1にインバータ5を適用した例について説明したが、これに限られるものではない。インバータ5の操作パネル52とI/O基板54とを適切なものに変更し、メモリ503内のプログラムを書き換えるだけで、上記インバータ5を給水装置以外の種々の装置に適用することができる。したがって、インバータ5の主基板50のハードウェアの構成を変更することなく、種々の装置に本発明を適用できるため、装置のコストダウンを図ることができる。
【0055】
また、DCブラシレスモータを駆動する電源の周波数を制御するための機器は一般にドライバと呼ばれることも多いが、交流電源を整流してスイッチング素子により所望の周波数の電力とする点で、ドライバも誘導電動機を駆動するためのインバータと同一である。したがって、上述した構成のインバータを用いてDCブラシレスモータを駆動してもよい。なお、DCブラシレスモータを使用する場合には、モータの回転信号や電流信号をインバータ5のI/O基板54に入力してもよい。
【0056】
受水槽2、ポンプ3、モータ4、インバータ5、制御部6、制御基板60a,60bなどの数は、図示のものに限られるものではないことは言うまでもない。また、インバータ5の通信部502と制御基板60a,60bの通信部600との間の通信はシリアル通信だけではなく、無線で行うこともできる。また、上述の実施形態においては、給水装置を例に説明したが、本発明は給水装置に限られるものではない。例えば、回転速度制御の必要なファンや圧縮機などの回転機械装置に用いられるインバータに適用することが可能である。すなわち、ポンプをファンや圧縮機にして、圧力センサを温度センサ等の装置の負荷を検出する装置に変更することにより、ファンや圧縮機を用いた種々の装置に適用することができる。
【0057】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1,101 給水装置
2 受水槽
3 ポンプ
4 モータ
5 インバータ
6 制御部
10 配管
12 水位検知器
14 給水管
16 電磁弁
18 配管
20 吐出管
22 チェッキ弁
24 フロースイッチ
26,103 圧力センサ
28 圧力タンク
30 シリアル通信ケーブル
50 主基板
52,62 操作パネル
54 I/O基板(入出力基板)
56 漏電遮断器
60a,60b 制御基板
102 水道本管
104 吸込配管
105 逆流防止装置
500 整流器
501 スイッチング素子(電力部)
502,600 通信部
503,601 メモリ
504,602 CPU
505 電源部
506,523,544,545 インタフェイス
507 電源端子
520 運転切替スイッチ
521,620 ランプ
522,622 操作ボタン
540,541,603,604 入力端子
542,605,606 出力端子
543,607 ディップスイッチ
624 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転機械と、
対応する回転機械の回転周波数を可変制御する複数のインバータと、
前記複数のインバータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、それぞれが前記複数のインバータを単独で制御可能な複数の制御基板を備え、
運転中に前記複数の制御基板のうちの一の制御基板に異常が発生した場合に、待機中の他の制御基板が前記一の制御基板をバックアップして前記複数のインバータを制御することを特徴とする回転機械装置。
【請求項2】
前記複数の制御基板は同一の構成を有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項3】
前記複数の制御基板は、前記複数のインバータを制御するために必要な最低限の構成を有するバックアップ運転用の制御基板を少なくとも1つ含むことを特徴とする請求項1に記載の回転機械装置。
【請求項4】
複数の回転機械と、
対応する回転機械の回転周波数を可変制御する複数のインバータと、
前記複数のインバータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、それぞれが前記複数のインバータを単独で制御可能な複数の制御基板を備え、
前記複数の制御基板は、前記複数のインバータを制御するために必要な最低限の構成を有するバックアップ運転用の制御基板を少なくとも1つ含むことを特徴とする回転機械装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225349(P2012−225349A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161837(P2012−161837)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2005−130028(P2005−130028)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】