説明

回転電機および回転電機のロータ

【課題】製造が容易で低コストの回転電機および回転電機のロータの提供。
【解決手段】電動モータ1は、モータハウジング2に固定されたステータ3と、ステータ3に対して半径方向内方に配置され、モータハウジング2内に回転可能に取り付けられたロータ4を備えている。ロータ4を形成するロータコア41の外周面上には、外周面側がN極であるN極磁石43と、外周面側がS極であるS極磁石44とが交互に配置されている。N極磁石43は内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ穏やかな湾曲状に着磁されている。また、S極磁石44は外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ穏やかな湾曲状に着磁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに対して半径方向に対向するように配置されたロータを備えた回転電機および回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のロータ用のマグネットとして、従来から数多くのものが提案されてきた。例えば、特許文献1に記載された電動機用のマグネットは、リング状に一体に形成されており、ロータの表面に配置されている。当該マグネットには極異方の着磁が施されており、ロータの外周側に形成された空隙において、周方向の角度による磁束密度を測定すると、その磁束密度分布波形は略正弦波状となっている。
これにより、特許文献1に開示されたマグネットは、電動機におけるコギングトルクやトルクリプルを低減でき、電動機の振動および騒音を防止することに非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−147288号公報(第4頁、図1および図2)
【特許文献2】特開2007−221911号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方、特許文献1に開示されたような極異方性のマグネットを、粉末焼結法によりリング状に製造する場合、通常、大型のものを製造することが困難であった。したがって、当該マグネットを適用可能な電動機は、ロータ径による制約を受けていた。
これに対して、特許文献2に記載された電動機のロータは、外周面上に複数の永久磁石をリング状に配置している。各々の永久磁石は半径方向に対して傾斜した方向に着磁されており、これらはロータ上においてハルバック配列を形成している。
【0005】
説明したように、特許文献2によるロータの永久磁石はセグメントごとに分割されているため、これらを並べて配置することによって大型のロータを形成することも可能であり、ロータ径にとらわれず、多種多様な電動機に適用することができる。
しかしながら、特許文献2に記載されたロータの永久磁石は、隣接した磁石同士の対向面が同極となることがある。したがって、永久磁石のロータコアへの組付時に、隣接した永久磁石同士が互いに反発し合って、その組付作業を困難にする場合があった。
【0006】
また、ロータ上に取り付けられた後にも、隣接した永久磁石同士が互いに反発し合って、疲労によりロータコアから脱落する恐れがあった。これを防止するためには、永久磁石を保持するようにロータコアに特別な形状加工を施したり、接着力の大きい接着剤を使用する必要があり、ロータにおけるコストの増大を招いていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造が容易で低コストの回転電機および回転電機のロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る回転電機の発明の構成は、ハウジングに固定され、内周面または外周面において、複数の電機子巻線が円周上に形成されたステータと、ステータに対して半径方向に対向するように、ハウジングに回転可能に取り付けられ、外周面または内周面には複数のロータ磁石が円周上に並ぶように配置されたロータと、を備え、ロータ磁石は、ロータの外周面において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている、または、ロータ磁石は、ロータの内周面において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることである。
【0008】
請求項2に係る発明の構成は、請求項1の回転電機において、ステータがロータに対して半径方向外方に形成されており、ロータ磁石は、ロータの外周面において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石は、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石は、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成は、請求項1の回転電機において、ステータがロータに対して半径方向内方に形成されており、ロータ磁石は、ロータの内周面において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石は、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石は、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成は、請求項1乃至3のうちのいずれかの回転電機において、ロータ磁石の着磁方向は、それぞれのロータ磁石の円周方向中央に向けて膨らんだ曲線状を呈していることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成は、請求項1乃至4のうちのいずれかの回転電機において、ロータは、ハウジングに対して回転可能に取り付けられたロータコアと、ロータコアの外周面または内周面に固着されたロータ磁石と、により形成され、ロータ磁石は、ロータコア上に固定された後に着磁されることである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成は、請求項1乃至5のうちのいずれかの回転電機において、ロータ磁石は、永久磁石粉末を焼結することにより形成されることである。
【0013】
請求項7に係る回転電機のロータの発明の構成は、ハウジングに固定されたステータに対し、半径方向に対向するようにハウジングに回転可能に取り付けられ、外周面または内周面には複数のロータ磁石が円周上に並ぶように配置された回転電機のロータであって、ステータが半径方向外方に形成されている場合、ロータ磁石は、ロータの外周面において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、ステータが半径方向内方に形成されている場合、ロータ磁石は、ロータの内周面において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る回転電機によれば、ロータの外周面上において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている、または、ロータの内周面上において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、ロータへの組付時において、隣接したロータ磁石の対向面が同極となることがないため、隣接したロータ磁石同士が互いに反発することがなく、低コストで組付作業性のよい回転電機にすることができる。
【0015】
また、ロータ上に取り付けられた後においても、隣接したロータ磁石が互いに反発し合うことがないため、ロータ磁石のロータからの脱落を防止することができる。
尚、上述した発明の構成のうち、「円周方向の各々両端に位置する部位」および「円周方向の中央に位置する部位」とは、ロータ磁石における着磁位置を厳密に限定する意図はなく、隣接したロータ磁石同士が互いに反発することがないという作用効果を有するものを、広範囲に含むように解釈するべきものである。これについては、以下の各請求項に係る発明についても同様である。
【0016】
請求項2に係る回転電機によれば、ステータがロータに対して半径方向外方に形成されており、ロータ磁石は、ロータの外周面上において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石は、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石は、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、インナロータ型の回転電機において、ロータ磁石によって発生する磁束について、ステータが形成されていない半径方向内方への漏れ磁束を低減することができ、回転電機の回転トルクを増大させることができる。
【0017】
請求項3に係る回転電機によれば、ステータがロータに対して半径方向内方に形成されており、ロータ磁石は、ロータの内周面上において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石は、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石は、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、アウタロータ型の回転電機において、ロータ磁石によって発生する磁束について、ステータが形成されていない半径方向外方への漏れ磁束を低減することができ、回転電機の回転トルクを増大させることができる。
【0018】
請求項4に係る回転電機によれば、ロータ磁石の着磁方向は、それぞれのロータ磁石の円周方向中央に向けて膨らんだ曲線状を呈していることにより、ロータ磁石によって発生する磁束について、漏れ磁束をいっそう低減することができる。
【0019】
請求項5に係る回転電機によれば、ロータ磁石はロータコア上に固定された後に着磁されることにより、ロータコアへの組付時に隣接したロータ磁石同士が互いに反発することがなく、組付作業性を向上させることができる。
また、ロータコアへの組付時にN極磁石とS極磁石の区別がないため、誤組付の発生をなくすることができる。
【0020】
請求項6に係る回転電機によれば、ロータ磁石は永久磁石粉末を焼結して形成されることにより、磁気特性に優れ磁力の強いロータ磁石にすることができる。
【0021】
請求項7に係る回転電機のロータによれば、ステータが半径方向外方に形成されている場合、ロータの外周面上において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、ステータが半径方向内方に形成されている場合、ロータの内周面上において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、N極磁石においては、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石においては、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、ロータへの組付時において、隣接したロータ磁石の対向面が同極となることがないため、隣接したロータ磁石同士が互いに反発することがなく、低コストで組付作業性のよいロータにすることができる。
また、ロータ上に取り付けられた後においても、隣接したロータ磁石が互いに反発し合うことがないため、ロータ磁石のロータからの脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1による電動モータの回転軸に垂直な方向にカットした断面図
【図2】図1の部分拡大図
【図3】図1に示したロータの製造方法を示す模式的な工程図であって、ロータ磁石の磁場プレス工程を表した図(a)、ロータ磁石の焼結工程を表した図(b)、ロータ磁石のロータコアへの取付工程を表した図(c)およびロータ磁石への着磁工程を表した図(d)
【図4】実施形態2による電動モータの回転軸に垂直な方向にカットした断面図
【図5】図4の部分拡大図
【図6】他の実施形態による電動モータの部分拡大図
【図7】他の実施形態によるロータ磁石の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
図1乃至図3に基づき、本発明の実施形態1による電動モータ1(回転電機に該当する)について説明する。尚、説明中において半径方向または円周方向といった場合、ロータ4の回転軸φ(図1示)を中心とした半径方向または円周方向を意味しているものとする。また、説明中において回転軸といった場合、特に断らなければ、上述した回転軸φを意味している。
図1に示したように、電動モータ1はモータハウジング2(ハウジングに該当する)に固定されたステータ3と、モータハウジング2内に回転可能に取り付けられたロータ4とを備えている。本実施形態による電動モータ1は、ステータ3がロータ4に対して半径方向外方に対向するように配置されているインナロータ型の同期モータである。
【0024】
モータハウジング2はアルミニウム合金によって円筒状に形成され、その内部にはステータ3が収容されている。ステータ3は、鋼材によって形成された円環状のステータリング31を備えている。ステータリング31の端部に設けられた図示しないフランジに取付ボルトを貫通させ、さらに、当該取付ボルトをモータハウジング2に締め付けることによって、ステータ3はモータハウジング2に固定されている。ステータリング31の内周面には、圧入または接着により複数のステータコア32が円周上に取り付けられている。
【0025】
それぞれのステータコア32は、ステータリング31の内周面に取り付けられ、円周方向にそれぞれ延在したバックヨーク部32aを備えている。各々のバックヨーク部32aからはティース32bが半径方向内方に延びており、各ティース32bにはステータコイル33(電機子巻線に該当する)が巻回されている。各々のステータコイル33は、各給電相ごとに外部から交流電流が印加可能に構成されている。
【0026】
一方、ロータ4は、回転軸方向に複数のケイ素鋼板(電磁鋼板)が積層されて形成されたロータコア41を備えている。ロータコア41は略円柱状に形成されており、その半径方向中央部には、シャフト取付孔41aが形成され、シャフト取付孔41aはキー溝41bを有している。シャフト取付孔41aおよびキー溝41bには駆動シャフト42が嵌合し、駆動シャフト42はロータコア41に対して相対回転不能に取り付けられている。駆動シャフト42は、軸受(図示せず)を介して、モータハウジング2によって回転可能に支承されている。
【0027】
ロータコア41には、複数のN極磁石43およびS極磁石44が接着剤等によって固着されている。以下、N極磁石43およびS極磁石44を包括して言う場合、ロータ磁石43、44と言う。ロータ磁石43、44は、これに限定されるべきものではないが、いずれもネオジウム(Nd-Fe-B)系の希土類金属による永久磁石であって、ロータコア41の外周面において円周上に配置されている。
本実施形態において、N極磁石43は、ロータ4の外周面側がN極であり、内周面側であって円周方向の両端がS極のロータ磁石43であり、S極磁石44は、外周面側がS極であり、内周面側であって円周方向の両端がN極のロータ磁石44である。N極磁石43とS極磁石44は、ロータコア41の外周面において交互に配置されている。
【0028】
各々のN極磁石43においては、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている(図1において、一対の矢印Pにて示す)。また、各々のS極磁石44においては、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている(図1において、一対の矢印Qにて示す)。
したがって、ロータ4上のN極磁石43とS極磁石44とが隣接する部位においては、それぞれの異極同士が対向することになり、双方の間で吸引力は発生するが、反発力は生じない。
【0029】
また、図1において示したように、ロータ磁石43、44の着磁方向P、Qは、それぞれのロータ磁石43、44の円周方向中央に向けて穏やかに膨らみ、曲線状(湾曲状)の配向を呈している。
したがって、図2において破線にて示すように、ロータ磁石43、44によって発生する磁束は、ロータ4の半径方向外方において、N極磁石43の外周面からステータコア32を介してS極磁石44の外周面へと形成される。その一方、ロータ磁石43、44による磁束は、ロータ4の半径方向内方においては、ロータコア41側へほとんど漏れることはない。
【0030】
また、図1に示すように、複数のロータ磁石43、44が取り付けられたロータコア41は、その軸方向の両端部が一対のエンドプレート45によって挟持されている(図1において一側のもののみ示す)。
上述した構成を有する電動モータ1において、外部からステータコイル33に交流電流が流入することにより、ステータ3において回転磁界が発生し、半径方向内方に設けられたロータ4が回転軸を中心に回転する。
【0031】
次に、上述したロータ4の製造方法について説明する。
図3(a)に示す磁場プレス工程においては、インゴットから粉砕されて形成された永久磁石粉末Fを、外部から磁界を加えながら各セグメントごとに成形する。詳細には、永久磁石粉末Fを金型M内に充填し、磁場コイルCまたは永久磁石によって磁界を発生させる。この状態で、複数のパンチ(図示せず)によって永久磁石粉末Fを加圧成形し、永久磁石粉末Fの磁化容易軸方向を揃える。尚、図3(a)において、永久磁石粉末Fは紙面に垂直な方向に互いに対向する一対のパンチにより、挟むように加圧されている。
【0032】
次に、焼結工程において、成形後の永久磁石粉末Fを、所定の温度、時間により加熱して焼き固め、その密度を増大させて着磁前磁石Uを形成する(図3(b)示)。その後、保持力を増大させるため着磁前磁石Uに熱処理を施した後、腐食防止のために、Niメッキ等の表面処理を行う。
表面処理が施された複数の着磁前磁石Uはセグメントごとに形成されており、接着剤等によって、ロータコア41の外周面に円周上に固着される(図3(c)示)。
【0033】
ロータコア41に固定された後の着磁前磁石Uは、着磁工程においてそれぞれ着磁される(図3(d)示)。詳細には、ロータコア41上の着磁前磁石Uの半径方向外方であって隣接したもの同士の間において、着磁コイルGに回転軸方向に電流が流されることによって、各々の着磁前磁石Uは着磁される。隣接した着磁コイルGには、互いに反対方向に電流が流れるため、ロータコア41の外周面上において、N極磁石43とS極磁石44とが交互に形成される。尚、図3(d)において、破線による矢印は、着磁コイルGによって発生される磁束の方向を示している。
【0034】
本実施形態によれば、ロータコア41の外周面上において、外周面側がN極であるN極磁石43と、外周面側がS極であるS極磁石44とが交互に配置され、N極磁石43においては、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、S極磁石44においては、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、ロータコア41への組付時において、隣接したロータ磁石43、44の対向面が同極となることがないため、ロータ磁石43、44同士が互いに反発することがなく、低コストで組付作業性のよい電動モータ1にすることができる。
【0035】
また、ロータコア41上に取り付けられた後においても、隣接したロータ磁石43、44が互いに反発し合うことがないため、ロータ磁石43、44のロータコア41からの脱落を防止することができる。
また、ロータ磁石43、44がセグメントごとに形成されているため、その製造においてロータ4の径による制約を受けることがなく、種々のサイズのロータ4に適用することが可能となる。
【0036】
また、ステータ3がロータ4に対して半径方向外方に形成されており、ロータ磁石43、44は外周面側がN極であるN極磁石43と、外周面側がS極であるS極磁石44とが交互に配置され、N極磁石43が、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石44が、外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、インナロータ型の電動モータ1において、ロータ磁石43、44によって発生する磁束について、ステータ3が形成されていない半径方向内方への漏れ磁束を低減することができ、電動モータ1の回転トルクを増大させることができる。
また、半径方向内方への漏れ磁束を低減することができるため、ロータ4においてロータヨークをなくすことが可能となる。
【0037】
また、ロータ磁石43、44の着磁方向は、それぞれのロータ磁石43、44の円周方向中央に向けて膨らんだ曲線状を呈していることにより、ロータ磁石43、44によって発生する磁束について、漏れ磁束をいっそう低減することができる。
また、ロータ磁石43、44の着磁方向が、穏やかに湾曲していることにより、ロータ磁石43、44において局所的な減磁が生じることを抑制することができる。
【0038】
また、ロータ磁石43、44はロータコア41上に固定された後に着磁されることにより、ロータコア41への組付時に隣接したロータ磁石43、44同士が互いに反発することがなく、組付作業性を向上させることができる。
また、ロータコア41への組付時にN極磁石43とS極磁石44の区別がないため、誤組付の発生をなくすることができる。
また、ロータ磁石43、44は、永久磁石粉末を焼結して形成されることにより、磁気特性に優れ磁力の強いロータ磁石43、44にすることができる。
【0039】
<実施形態2>
図4および図5に基づき、本発明の実施形態2による電動モータ5(回転電機に該当する)について説明する。尚、説明中において半径方向または円周方向といった場合、ロータ8の回転軸φ(図4示)を中心とした半径方向または円周方向を意味しているものとする。また、説明中において回転軸といった場合、特に断らなければ、上述した回転軸φを意味している。
【0040】
図4に示したように、電動モータ5はモータハウジング6(ハウジングに該当する)に固定されたステータ7と、モータハウジング6内に回転可能に取り付けられたロータ8とを備えている。本実施形態による電動モータ5は、ステータ7がロータ8に対して半径方向内方に対向するように配置されているアウタロータ型の同期モータである。
モータハウジング6はアルミニウム合金によって一体に形成され、回転軸方向の両端部が閉じた円筒状のアウタ部61と、アウタ部61に対し回転軸方向端部において接続されたインナ部62とを備えている。筒状のインナ部62は、アウタ部61に対して半径方向内方に配置されるとともに回転軸方向に延在しており、その外周面上にはステータ7を形成するステータコア71が嵌着されている。
【0041】
ステータコア71は、回転軸方向に複数のケイ素鋼板が積層されて形成されており、インナ部62に固着された軸部71aと、軸部71aの外周面から半径方向外方に突出した複数のコアティース71bを有している。コアティース71bは、互いの間に所定の間隔を有して円周上に並ぶように設けられている。
図4に示すように、それぞれのコアティース71bには、ステータコイル72(電機子巻線に該当する)が巻回されている。各々のステータコイル72は、各給電相ごとに外部から交流電流が印加可能に構成されている。
【0042】
一方、アウタ部61の回転軸方向端部には、ロータ8のロータボデー81が回転軸を中心に回転可能に取り付けられている。ロータボデー81は、回転軸方向に延びる円筒状を呈しており、図4に示すように、ステータ7に対して半径方向外方に対向するように配置されている。
ロータボデー81の内周面には、ロータコア82が圧入されている。ロータコア82は、それぞれリング状を呈した複数のケイ素鋼板が、回転軸方向に積層されて形成されている。
さらに、ロータコア82の内周面には、複数のN極磁石83およびS極磁石84が接着剤等によって円周上に固着されている。以下、N極磁石83およびS極磁石84を包括して言う場合、ロータ磁石83、84と言う。
【0043】
本実施形態において、N極磁石83は、ロータ4の内周面側がN極であり、外周面側であって円周方向の両端がS極のロータ磁石83であり、S極磁石84は、内周面側がS極であり、外周面側であって円周方向の両端がN極のロータ磁石84である。N極磁石83とS極磁石84は、ロータコア82の内周面において交互に配置されている。
各々のN極磁石83においては、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている(図4において、一対の矢印Vにて示す)。また、各々のS極磁石84においては、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている(図4において、一対の矢印Wにて示す)。
したがって、ロータ8上のN極磁石83とS極磁石84とが隣接する部位においては、それぞれの異極同士が対向することになり、双方の間で吸引力は発生するが、反発力は生じない。
【0044】
また、図4において示したように、ロータ磁石83、84の着磁方向V、Wは、それぞれのロータ磁石83、84の円周方向中央に向けて穏やかに膨らみ、曲線状(湾曲状)の配向を呈している。
したがって、図5において破線にて示すように、ロータ磁石83、84によって発生する磁束は、ロータ8の半径方向内方において、N極磁石83の内周面からステータコア71を介してS極磁石84の内周面へと形成される。その一方、ロータ磁石83、84による磁束は、ロータ8の半径方向外方においては、ロータコア82側へほとんど漏れることはない。
上述した構成を有する電動モータ5において、外部からステータコイル72に交流電流が流入することにより、ステータ7において回転磁界が発生し、半径方向外方に設けられたロータ8が回転軸を中心に回転する。
【0045】
本実施形態によれば、ロータコア82の内周面上において、内周面側がN極であるN極磁石83と、内周面側がS極であるS極磁石84とが交互に配置され、N極磁石83においては、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石84においては、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、ロータコア82への組付時において、隣接したロータ磁石83、84の対向面が同極となることがないため、ロータ磁石83、84同士が互いに反発することがなく、低コストで組付作業性のよい電動モータ5にすることができる。
また、ロータコア82上に取り付けられた後においても、隣接したロータ磁石83、84が互いに反発し合うことがないため、ロータ磁石83、84のロータコア82からの脱落を防止することができる。
【0046】
また、ステータ7がロータ8に対して半径方向内方に形成されており、ロータ磁石83、84は内周面側がN極であるN極磁石83と、内周面側がS極であるS極磁石84とが交互に配置され、N極磁石83が、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、S極磁石84が、内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されていることにより、アウタロータ型の電動モータ5において、ロータ磁石83、84によって発生する磁束について、ステータ7が形成されていない半径方向外方への漏れ磁束を低減することができ、電動モータ5の回転トルクを増大させることができる。
また、半径方向外方への漏れ磁束を低減することができるため、ロータ8においてロータヨークをなくすことが可能となる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
ロータ磁石43、44、83、84は、必ずしも粉末焼結法により形成しなければならないわけではなく、永久磁石粉末のバインダーとして合成樹脂材料や合成ゴム材料を使用した樹脂成形法によって形成してもよい。
また、ロータ磁石43、44、83、84は、ロータコア41、82に固定する前に着磁されてもよい。
【0048】
また、図6において示したように、ロータ磁石43、44、83、84の着磁方向P、Q、V、Wを、膨らみを持たせずに直線状に形成してもよい(図6において、ロータ磁石43、44の着磁方向P、Qのみ示す)。
また、図1に示したステータコア32は、分割タイプに限定されるものではなく、リング状に一体的に形成されたものであってもよい。
また、各々のロータ磁石43、44、83、84は、必ずしも一体的に形成されていなくてもよく、図7に示したように、複数枚の永久磁石を回転軸方向に積層した後に、互いに接着した形態のものであってもよい(図7において、ロータ磁石43、44のみ示す)。
また、本発明は、同期モータ、誘導モータあるいはそれ以外のあらゆる電動モータもしくは発電機といった回転電機に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
図面中、1,5は電動モータ(回転電機)、2,6はモータハウジング(ハウジング)、3,7はステータ、4,8はロータ、33,72はステータコイル(電機子巻線)、41,82はロータコア、43,83はN極磁石(ロータ磁石)、44,84はS極磁石(ロータ磁石)、Fは永久磁石粉末、P,Q,V,Wは着磁方向を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに固定され、内周面または外周面において、複数の電機子巻線が円周上に形成されたステータと、
前記ステータに対して半径方向に対向するように、前記ハウジングに回転可能に取り付けられ、外周面または内周面には複数のロータ磁石が円周上に並ぶように配置されたロータと、
を備え、
前記ロータ磁石は、前記ロータの外周面において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、
前記N極磁石においては、前記内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、前記外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、
前記S極磁石においては、前記外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、前記内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている、
または、
前記ロータ磁石は、前記ロータの内周面において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、
前記N極磁石においては、前記外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、前記内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、
前記S極磁石においては、前記内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、前記外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている回転電機。
【請求項2】
前記ステータが前記ロータに対して半径方向外方に形成されており、
前記ロータ磁石は、前記ロータの外周面において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、
前記N極磁石は、前記内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、前記外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、
前記S極磁石は、前記外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、前記内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記ステータが前記ロータに対して半径方向内方に形成されており、
前記ロータ磁石は、前記ロータの内周面において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、
前記N極磁石は、前記外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、前記内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、
前記S極磁石は、前記内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、前記外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている請求項1記載の回転電機。
【請求項4】
前記ロータ磁石の着磁方向は、それぞれの前記ロータ磁石の円周方向中央に向けて膨らんだ曲線状を呈している請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ロータは、
前記ハウジングに対して回転可能に取り付けられたロータコアと、
前記ロータコアの外周面または内周面に固着された前記ロータ磁石と、
により形成され、
前記ロータ磁石は、前記ロータコア上に固定された後に着磁される請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ロータ磁石は、永久磁石粉末を焼結することにより形成される請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
ハウジングに固定されたステータに対し、半径方向に対向するように前記ハウジングに回転可能に取り付けられ、外周面または内周面には複数のロータ磁石が円周上に並ぶように配置された回転電機のロータであって、
前記ステータが半径方向外方に形成されている場合、
前記ロータ磁石は、前記ロータの外周面において、外周面側がN極であるN極磁石と外周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、
前記N極磁石においては、前記内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、前記外周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、
前記S極磁石においては、前記外周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、前記内周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、
前記ステータが半径方向内方に形成されている場合、
前記ロータ磁石は、前記ロータの内周面において、内周面側がN極であるN極磁石と内周面側がS極であるS極磁石とが交互に配置され、
前記N極磁石においては、前記外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位から、前記内周面側であって円周方向の中央に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されており、かつ、
前記S極磁石においては、前記内周面側であって円周方向の中央に位置する部位から、前記外周面側であって円周方向の各々両端に位置する部位に向けて、それぞれ着磁されている回転電機のロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106499(P2013−106499A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250957(P2011−250957)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】