説明

回転電機

【課題】磁石の減磁耐性を損なうことなく、回転電機を軽量化する。
【解決手段】ロータハウジングの大径部32の内周面に取り付けられた永久磁石40は、周方向両端における径方向の厚みが所定の厚みY1に設定されている。各永久磁石40の内側面40a(径方向内側の面)は、断面視すると径方向外側に向かって窪むように円弧状に形成されている。各永久磁石40の外側面40b(径方向外側の面)は、断面視すると径方向内側に向かって窪むように円弧状に形成されている。これら内側面40a及び外側面40bの円弧形状によって、永久磁石40は、周方向両端の厚みY1よりも周方向中央の厚みY2の方が小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コアを外周側から覆う筒状のハウジングの内周面に複数の磁石が取り付けられた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機として、コアを外周側から覆う筒状のハウジングの内周面に複数の磁石が取り付けられたものが知られている。例えば、特許文献1のアウターロータ型モータは、円盤状のブラケットを備え、そのブラケットの端面中央には、円筒状の突出部が突出形成されている。突出部の内周面には、ブラケットの端面に対して直交する方向に延びるシャフトの一端が軸受を介して回転可能に支持されている。シャフトの他端は、アウターロータ型モータのトルクを伝達しようとする部材に駆動連結されるとともに、その部材によって支持されている。突出部の外周面には、径方向外側に向かって複数の突極が突設されたステータコアが固定されている。各突極にはそれぞれコイルが巻き回されている。シャフトには、シャフトの延設方向に延びる有底筒状のロータハウジングの底部が固定されている。ロータハウジングは、軸方向一方側の開口がブラケット側を指向し、ステータコアを外周側から覆うように取り付けられている。ハウジングの内周面には、複数の板状の磁石がそれぞれ周方向に等間隔に配置されるように取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−278768号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアウターロータ型モータにおいては、ロータハウジングの内周面に磁石が取り付けられており、コイルよりも径方向外側に磁石が配置されている。そのため、径方向内側(シャフト側)に磁石が配置され、磁石よりも径方向外側(ロータハウジング側)にコイルが配置されているモータに比べて、周方向に幅広な磁石を採用してコイルに対する磁石の対向面積を大きくすることが可能となる。したがって、同じ大きさのモータであれば、ロータハウジングの内周面に磁石が取り付けられたモータの方がトルクの向上が期待できる。
【0005】
ところが、ロータハウジングの内周面に磁石が取り付けられたモータの場合、磁石が周方向に幅広な分、磁石全体の体積も大きくなる。そのため、磁石の重量が増加することになり、モータの軽量化という観点からは好ましくない。
【0006】
そこで、例えば、磁石の厚みを薄くすることによりモータの軽量化を図ることが考えられる。磁石の厚みを薄くすれば、磁石におけるコイルへの対向面積を減少させることなく、磁石の体積を小さくすることはできる。しかし、磁石の厚みを薄くすると、磁石がコイルからの減磁界に抗することができずに減磁されるおそれがある。磁石の減磁は、モータのトルク低下の原因となるため好ましくない。また、このような問題点は、ハウジングの内周面に磁石が取り付けられたモータであれば、筒状のステータハウジングがロータコアを径方向外側から覆う態様のモータ、いわゆるインナーロータ型モータであっても同様に発生する。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたものであって、磁石の減磁耐性を損ねることなく、回転電機を軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、シャフトの外周に固定されるとともに、径方向外側に向かって複数の突極が突設されたコアと、前記コアを径方向外側から覆う筒状のハウジングと、前記ハウジングの内周面に取り付けられた複数の磁石とを備えた回転電機であって、前記磁石は、周方向一端における径方向の厚みよりも周方向中央における径方向の厚みの方が小さく形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、磁石の周方向中央の厚みが周方向一端の厚みよりも小さいことから、周方向一端の厚みで周方向全体に亘って一定の厚みで磁石を形成する場合に比べて磁石を軽量化できる。また、コイルが発生する減磁界は、磁石の周方向一端においてより強く作用し、周方向中央部においてはそれよりも弱く作用する。したがって、磁石の周方向中央の厚みを小さくしたとしても磁石の減磁耐性が損なわれることはなく、磁石は、実用上減磁されない。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転電機において、前記ハウジングには、径方向内側に向かって窪む凹条部が軸方向に延びるように形成されており、前記凹条部は、前記磁石に対して対向配置されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、周方向中央の厚みが小さくされた磁石の外側面とハウジングの内周面との接触面積を大きくすることができ、両者の間に空隙が生じることを抑制できる。そのため、磁石とハウジングとの間の磁束経路の形成が妨げられることを抑制でき、トルクの低下を抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転電機において、前記ハウジングは、前記磁石が取り付けられていない部分における径方向の厚みよりも、前記磁石の周方向中央と対向する部分における径方向の厚みの方が小さく形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ハウジングにおいて磁石の周方向中央と対向する部分における径方向の厚みが小さいことから、ハウジングを一定の厚みで形成する場合に比べてハウジングを軽量化することができる。また、ハウジングにおいて磁石の周方向中央と対向する部分は、磁石から発せられる磁束密度が低い部分である。したがって、ハウジングにおいて磁石の周方向中央と対向する部分の厚みを小さくしたとしても、磁気飽和が発生することを回避できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転電機において、前記ハウジングは、前記磁石の周方向中央と対向する部分における径方向の厚みが前記磁石が取り付けられていない部分における径方向の厚みの2分の1以下に形成されていることを特徴とする。
【0015】
ハウジングにおいて磁石の周方向中央と対向する部分における磁束密度は、磁石が取り付けられていない部分における磁束密度の数分の1以下である。したがって、この構成によれば、ハウジングにおいて磁石の周方向中央と対向する部分における磁束密度を考慮してその厚みを設定しているので、より適切に磁気飽和を回避しつつハウジングの軽量化を実現することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の回転電機において、前記磁石は、周方向中央における径方向の厚みが周方向一端における径方向の厚みの2分の1以下に形成されていることを特徴とする。
【0017】
磁石の周方向中央部に作用する減磁界は、周方向一端において作用する減磁界の2分の1〜3分の1以下である。したがって、この構成によれば、磁石の周方向中央部に作用する減磁界の強さを考慮してその厚みを設定しているので、より適切に磁石の減磁を回避しつつ、磁石の軽量化を実現することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の回転電機において、前記ハウジングは、前記コアに対して回転するように構成されたアウターロータであることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、磁石を軽量化することにより、アウターロータのイナーシャ(回転慣性)を低減することができるため、回転電機の起動、停止等の制御応答性の向上が期待できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁石の減磁を最小限に抑えつつも、回転電機を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】アウターロータ型モータの軸方向概略断面図。
【図2】図1におけるα−α線断面図。
【図3】(a)及び(b)は、図2における一部拡大図。
【図4】磁石厚みと有効磁束量との関係を示すグラフ。
【図5】磁束の流れを示す参考図。
【図6】本発明に係る変更例の一部拡大断面図。
【図7】本発明に係る変更例の一部拡大断面図。
【図8】本発明に係る変更例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明をアウターロータ型モータに適用した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。先ず、アウターロータ型モータの基本構成について説明する。
図1に示すように、アウターロータ型モータの軸線A方向一端には、略円盤状の取付ブラケット11が設けられている。取付ブラケット11には、図示しないボルト穴等の取付手段が形成されており、この取付手段によってアウターロータ型モータを他の装置等に取付固定することが可能となっている。取付ブラケット11の端面には、円盤状の円盤部12が固定されている。円盤部12には、図示しない端子や配線等が設けられており、これらを介して外部からアウターロータ型モータの内部に電気信号(電流)等の供給が可能となっている。円盤部12において取付ブラケット11とは逆側の端面中央には、円盤部12の端面に直交する方向(軸線A方向)に延びる円柱状のシャフト13が固定されている。
【0023】
図1に示すように、シャフト13の外周面には、全体として略円筒状を成すステータコア20が固定されている。図2に示すように、ステータコア20における径方向内側(シャフト13側)は、断面視略円環状の円環部21として形成されているとともに、円環部21の内周面がシャフト13に固定されている。円環部21の外周には、径方向外側に向かって突出する複数の突極22が突出形成されている。本実施形態では、9つの突極22が周方向において等間隔(40度毎)に配置されている。断面視略T字状の各突極22は、円環部21側の首部22aと、その首部の先端に形成されるとともに首部22aよりも周方向の幅が大きい頭部22bとで構成されている。各頭部22bは、その外周面がシャフト13の軸線Aを中心とする仮想円上に配置されるように形成されている。各突極22において首部22aには、コイルCが巻き回されている。なお、本実施形態においてステータコア20は、所定厚みのコア板を複数枚積層することにより形成されたものである。
【0024】
図1に示すように、シャフト13においてステータコア20が固定されている部分よりも先端側の外周面には、アンギュラ玉軸受14を介して、全体として筒状を成すロータハウジング30(バックヨーク)が軸線A方向に延びるように取り付けられている。ロータハウジング30は、円筒状に形成されたシャフト13側の小径部31と、筒状に形成された取付ブラケット11側の大径部32とが一体成型されることにより形成されている。ロータハウジング30は、小径部31の内周面がアンギュラ玉軸受14に取り付けられることにより、シャフト13に対して回転可能に支持されている。大径部32は、小径部31よりも径が大きく形成されているとともにその軸方向長さがステータコア20の軸方向長さよりも大きく形成されている。また、大径部32は、ステータコア20を外周側から覆うことができるよう、その最小内径がステータコア20の最大外径よりも相応に大きく設定されている。なお、本実施形態においては、ロータハウジング30における小径部31の外周面に他の部材が駆動連結されることにより、ロータハウジング30のトルクが伝達される。
【0025】
図1及び図2に示すように、ロータハウジング30における大径部32の内周面には、軸方向に長尺な板状の永久磁石40が取り付けられている。本実施形態では、12枚の永久磁石40が周方向において等間隔(30度毎)に配置されているとともに、隣り合う永久磁石40が一定の間隔を確保するように配置されている。各永久磁石40は、それぞれ厚み方向に着磁されており、隣り合う永久磁石40のN極及びS極が逆になるように配置されている。具体的には、ある永久磁石40において径方向外側がN極で径方向内側がS極であれば、その永久磁石40の隣の永久磁石40は、径方向外側がS極で径方向内側がN極である。なお、本実施形態において永久磁石40は、焼結後に着磁されたフェライト磁石である。
【0026】
次に、ロータハウジング30における大径部32の形状及び永久磁石40の形状について、より詳細に説明する。
図3(a)及び(b)に示すように、ロータハウジング30の大径部32には、径方向内側に向かって窪む円弧状の凹条部33が大径部32の軸方向全体に亘って延びるように形成されている。凹条部33の周方向の幅は、凹条部33が永久磁石40の周方向全体に対向するように、永久磁石40の周方向の幅と略同一に設定されている。また、凹条部33は、その周方向中央が最も径方向内側に位置するように形成されている。
【0027】
図3(a)に示すように、ロータハウジング30の大径部32において、永久磁石40が取り付けられておらず、永久磁石40と対向しない非対向部分34における径方向の厚みが所定の厚みX1に設定されている。大径部32の凹条部33においては、内周面33aの曲率よりも外周面33bの曲率が大きくなるように形成されている。その結果として、大径部32の凹条部33の周方向両端から永久磁石40の周方向中央と対向する部分に向かうほど、径方向の厚みが小さくなっている。本実施形態では、凹条部33の永久磁石40の周方向中央と対向する部分の厚みX2が非対向部分34の厚みX1の3分の1となるように、内周面33aの曲率及び外周面33bの曲率が設定されている。
【0028】
図3(b)に示すように、永久磁石40は、周方向両端における径方向の厚みが所定の厚みY1に設定されている。各永久磁石40の内側面40a(径方向内側の面)は、断面視すると径方向外側に向かって窪むように円弧状に形成されている。各永久磁石40の内側面40aの曲率は、軸線Aを中心とする仮想円上に、12個の永久磁石40の内側面40aが配置されるように設定されている。各永久磁石40の外側面40b(径方向外側の面)は、断面視すると径方向内側に向かって窪むように円弧状に形成されている。永久磁石40の外側面40bの曲率は、ロータハウジング30における大径部32の凹条部33における内周面33aの曲率と同じ曲率に形成され、永久磁石40の外側面40b全体が凹条部33の内周面33aに面接触している。これら内側面40a及び外側面40bの円弧形状によって、永久磁石40は、周方向両端から周方向中央に向かうほど、径方向の厚みが小さくなっている。本実施形態では、永久磁石40の周方向中央における径方向の厚みY2が周方向両端における径方向の厚みY1の3分の1となるように、永久磁石40の内側面40a及び外側面40bの曲率が設定されている。
【0029】
次に、アウターロータ型モータの作用について説明する。
先ず、アウターロータ型モータのトルクについて検討する。仮に、永久磁石が周方向において一定の厚みで形成されていると仮定する。そして、その厚みが所定厚みのとき(磁石厚み比100%)の有効磁束量を100%とする。周方向において一定厚みの永久磁石の厚みを徐々に小さくしていくと、有効磁束量は徐々に小さくなる。しかし、永久磁石のステータコアに対する対向面積が一定であれば、永久磁石の厚みの低下割合に比べて有効磁束量の低下割合は小さい。具体的には、例えば、図4に示すように、永久磁石の厚みを所定厚みに比して50%に低下させたとしても、その有効磁束量は、所定厚みのときの有効磁束量(100%)に比して85%程度である。また、永久磁石の厚みを所定厚みに比して33%に低下させたとしても、その有効磁束量は、所定厚みのときの有効磁束量(100%)に比して75%程度である。
【0030】
上記実施形態のアウターロータ型モータにおいて、永久磁石40の厚みは周方向において一定ではなく、周方向中央に向かうほど小さくなっている。そして、永久磁石40の周方向両端は厚みY1が確保され、周方向中央の厚みY2は周方向両端の厚みY1の3分の1に設定されている。したがって、永久磁石が周方向において厚みY1で一定の厚みで形成されているときの有効磁束量を100%とするならば、上記実施形態の永久磁石40の有効磁束量比は、75%より大きく100%未満、具体的にはおよそ90%である。すなわち、永久磁石40の周方向中央の厚みY2を小さくしたことに伴うトルクの低下は10%程度に抑えられる。このようなトルク低下の程度であれば、例えば、シャフト側に永久磁石が配置され、ロータハウジング側にコイルが配置された同じ大きさのアウターロータ型モータのトルクよりも、大きなトルクを確保することが可能である。
【0031】
次いで、上記実施形態の永久磁石40の減磁について検討する。
上記実施形態のアウターロータ型モータにおいてロータハウジング30が回転する場合、永久磁石40に作用するコイルCからの減磁界は、永久磁石40の回転方向側の一端においてより強く、回転方向とは逆側の他端に向かうにつれて弱くなる。上記実施形態では、永久磁石40の周方向両端の厚みY1は比較的に大きく設定されているため、永久磁石40の回転方向側の一端において、コイルCからの比較的に強い減磁界が作用しても、永久磁石40は減磁されないか、仮に減磁されたとしてもその程度は僅かなものである。
【0032】
一方、永久磁石40における周方向中央に作用する減磁界の強さは、永久磁石40の回転方向側の一端に作用する減磁界の強さに比べて2分の1以下(およそ3分の1程度)である。したがって、永久磁石40の周方向中央の厚みY2を、両端の厚みY1の3分の1に設定したとしても、永久磁石40が減磁されやすくなることを回避できる。
【0033】
なお、上記実施形態において永久磁石40は、その両端において厚みY1に設定されている。したがって、上記実施形態においては、ロータハウジング30及び永久磁石40がいずれの方向に回転したとしても、永久磁石40の回転方向側の一端が減磁されることを回避できる。
【0034】
次いで、上記実施形態のロータハウジング30の磁気飽和について検討する。
図5に参考図として示すように、円筒状のハウジング50の内周面に複数の永久磁石51、52が取り付けられたモータにおいては、永久磁石51の外側面から発せられた磁束がハウジング50の内部を通って隣の永久磁石52の外側面に至り、永久磁石52の内側面から発せられた磁束が隣の永久磁石51の内側面に至るという磁束経路(図5においては模式的に矢印で図示している)が形成される。このとき、永久磁石51の外周面において周方向中央付近から発せられた磁束の磁束経路F1は、永久磁石52の周方向中央付近を経由する。また、永久磁石51の外周面において周方向中央より永久磁石52側から発せられた磁束の磁束経路F2は、永久磁石52の周方向中央よりも永久磁石51側を経由する。そして、永久磁石51の外周面において周方向一端付近から発せられた磁束の磁束経路F3は、永久磁石52の周方向一端付近を経由する。したがって、ハウジング50において永久磁石51、52が取り付けられていない非対向部分近傍の領域A1においては、磁束経路F1〜F3が全て形成されることになる。その一方で、ハウジング50において永久磁石51、52の周方向中央に対向する部分近傍の領域A2においては、磁束経路F1のみが形成される。つまり、ハウジング50において、非対向部分近傍の領域A1ほど磁束密度が高く、永久磁石51、52の周方向中央に対向する部分近傍の領域A2に向かうほど磁束密度が低くなり、領域A2における磁束密度は、領域A1の磁束密度に比べて数分の1以下となる。
【0035】
上記実施形態のロータハウジング30の大径部32においては、永久磁石40と対向しない非対向部分34における径方向の厚みX1として比較的に大きな厚みが確保されている。そのため、大径部32の非対向部分34において磁気飽和が発生することはないか、磁気飽和が起きたとしてもその程度は非常に小さい。
【0036】
一方、上記実施形態では、大径部32の凹条部33における永久磁石40の周方向中央と対向する部分の厚みX2が非対向部分34の厚みX1の3分の1に設定されている。この永久磁石40の周方向中央と対向する部分は磁束密度が低い部分であるため、厚みX2を厚みX1の3分の1に設定したとしても、大径部32において磁気飽和が発生することはほとんどない。
【0037】
上記実施形態のアウターロータ型モータによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、永久磁石40の周方向中央の厚みY2が周方向両端の厚みY1よりも小さい(3分の1)ことから、厚みY1で周方向全体に亘って一定の厚みで永久磁石40を形成する場合に比べて永久磁石40を軽量化できる。また、コイルCが発生する減磁界は、永久磁石40の回転方向側の一端においてより強く作用し、周方向中央においてはそれよりも弱く作用する。したがって、永久磁石40の周方向中央の厚みY2を小さくしたとしても、永久磁石40が減磁されやすくなることを回避できる。
【0038】
(2)上記実施形態によれば、ロータハウジング30の大径部32に、径方向内側に向かって窪む凹条部33が軸方向に延びるように湾曲形成され、その凹条部33の内周面33aの曲率と永久磁石40の外側面40bの曲率とが同一に設定されている。そのため、永久磁石40の外側面40bがロータハウジング30における凹条部33の内周面33aに面接触することが可能で、両者の間に空隙が生じることを抑制できる。
【0039】
(3)上記実施形態によれば、ロータハウジング30の大径部32(凹条部33)において永久磁石40の周方向中央と対向する部分における厚みX2が非対向部分34における厚みX1よりも小さい(3分の1)。したがって、ロータハウジング30を厚みX1で周方向全体に亘って一定の厚みで形成する場合に比べてロータハウジング30を軽量化することができる。また、ロータハウジング30の大径部32(凹条部33)において永久磁石40の周方向中央と対向する部分は、永久磁石40から発せられる磁束密度が低い部分である。したがって、ロータハウジング30の大径部32(凹条部33)において永久磁石40の周方向中央と対向する部分の厚みX1を小さくしたとしても、磁気飽和が発生することを回避できる。
【0040】
(4)ロータハウジング30において永久磁石40の周方向中央と対向する部分における磁束密度は、永久磁石40が取り付けられていない部分における磁束密度の数分の1以下である。上記実施形態では、ロータハウジング30の大径部32(凹条部33)において永久磁石40の周方向中央と対向する部分における磁束密度を考慮して、永久磁石40の周方向中央に対向する部分の厚みX2を、非対向部分34の厚みX1の3分の1に設定しているので、より適切に磁気飽和を回避しつつロータハウジング30の軽量化を実現できる。
【0041】
(5)永久磁石40の周方向中央に作用する減磁界は、永久磁石40の回転方向側の一端において作用する減磁界のおよそ3分の1である。上記実施形態では、永久磁石40の周方向中央部に作用する減磁界の強さを考慮して、周方向中央の厚みY2を周方向両端の厚みY1の3分の1に設定しているので、より適切に永久磁石40の減磁を回避しつつ、永久磁石40の軽量化を実現できる。
【0042】
(6)上記実施形態では、永久磁石40の周方向両端において所定の厚みY1を確保している。したがって、ロータハウジング30及び永久磁石40がどちら側に回転した場合でも、永久磁石40の回転方向側の一端が減磁されることを回避できる。
【0043】
(7)上記実施形態のアウターロータ型モータは、ロータハウジング30が回転するため、ロータハウジング30及びロータハウジング30に取り付けられた永久磁石40を軽量化することによって、イナーシャ(慣性力)を低減することもできる。イナーシャを低減させることによって、アウターロータ型モータの起動、停止等の制御応答性の向上が期待できる。
【0044】
(8)上記実施形態のアウターロータ型モータは、例えば、永久磁石40が周方向において厚みY1で一定の厚みで形成されているときに比べても、90%程度のトルクを発揮できる。このようなトルク低下の程度であれば、シャフト側に永久磁石が配置され、ハウジング側にコイルが配置された同じ大きさのモータよりも大きなトルクを確保することが可能である。したがって、永久磁石40として、比較的に高価なネオジムやジスプロジウム等を含む永久磁石を使用せず、フェライト磁石を使用しても、相応に大きなトルクを確保できる。
【0045】
上記実施形態は以下のように変更してもよい。また、各変更例を組み合わせて適用してもよい。
・ 永久磁石40の周方向中央の厚みY2は、周方向両端の厚みY1の3分の1に限らず、厚みY1よりも小さければ、適宜変更可能である。なお、永久磁石40の周方向中央に作用する減磁界は、永久磁石40の回転方向側の一端に作用する減磁界の2分の1以下である。したがって、永久磁石40の軽量化の程度を大きくするために、厚みY2を厚みY1の2分の1以下にしたとしても、永久磁石40が減磁されやすくなることを回避できる。
【0046】
・ 12枚全ての永久磁石40について周方向中央の厚みY2を周方向両端の厚みY1よりも小さくするのではなく、一部の永久磁石40についてのみ、厚みY2を厚みY1より小さくしてもよい。
【0047】
・ 永久磁石40の形状は、周方向中央の厚みY2を周方向両端の厚みY1よりも小さくできるのであれば、適宜変更できる。例えば、永久磁石40の外側面40bを、径方向内側に窪む円弧状に形成するのに代えて、永久磁石40の周方向中央において外側面40bから径方向内側に向かってテーパ状に窪む凹部を形成してもよい。また、例えば、永久磁石40の外側面40bを円弧状に形成しつつ、その円弧状の外側面40bの周方向中央において外側面40bから径方向内側に向かってテーパ状に窪む凹部を形成してもよい。
【0048】
・ 永久磁石40の外側面40bの形状(曲率)とロータハウジング30における凹条部33の内周面33aの形状(曲率)とは、同一でなくともよい。なお、両者の形状(曲率)が異なる場合、永久磁石40と大径部32との間に一部空隙が生じることになるが、永久磁石40をロータハウジング30における大径部32の内周面に取り付けることができるのであれば、それでも構わない。
【0049】
・ 上記実施形態では、永久磁石40の周方向両端の厚みを厚みY1に設定したが、少なくとも永久磁石40の周方向一端が厚みY1に設定されていれば、周方向他端の厚みは問わない。この場合、永久磁石40の周方向他端の厚みは、周方向中央の厚みY2と同一でもよいし、それより小さくてもよい。なお、永久磁石40の周方向一端のみを厚みY1に設定し、周方向他端の厚みを厚みY1よりも小さくした場合でも、ロータハウジング30が永久磁石40の周方向他端側から一端側に回転するようにアウターロータ型モータを制御すれば、周方向他端の厚みを小さくしたとしても永久磁石40が減磁されやすくなることを回避できる。
【0050】
・ ロータハウジング30の大径部32において、非対向部分34の厚みX1と大径部32の永久磁石40の周方向中央と対向する部分の厚みX2との寸法関係は、上記実施形態に限らない。例えば、厚みX2を厚みX1の3分の2や4分の1に設定してもよい。なお、大径部32の永久磁石40の周方向中央と対向する部分の磁束密度は、大径部32の非対向部分34の磁束密度の数分の一以下である。したがって、ロータハウジング30の大径部32の軽量化の程度を大きくするために、厚みX2を厚みX1の2分の1以下にしたとしても、ロータハウジング30において磁気飽和が発生しやすくなることを回避できる。
【0051】
・ 例えば、図6に示すように、凹条部33の内周面33aの曲率と外周面33bの曲率とを一定に設定して、厚みX1と厚みX2とが同一となるようにしてもよい。この場合、大径部32が周方向全体に亘ってほぼ同一の厚みで形成されることになるため、ロータハウジング30の生産性が向上する。
【0052】
・ 上記実施形態では、ロータハウジング30の凹条部33の周方向の幅を永久磁石40の周方向の幅と略同一にしたが、永久磁石40の周方向の幅よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。すなわち、ロータハウジング30の凹条部33が少なくとも永久磁石40の周方向中央と対向していれば、凹条部33の周方向の幅は問わない。
【0053】
・ 凹条部33の形状は断面円弧状に限らない。例えば、凹条部33を、断面視で径方向内側に向かって窪むテーパ状や階段状(段差状)に形成してもよい。なお、凹条部33を断面視テーパ状や階段状に形成した場合、永久磁石40の外側面40bを同様に断面視でテーパ状や階段状に形成すれば、凹条部33の内周面33aと永久磁石40の外側面40bとが面接触する。
【0054】
・ 例えば、図7に示すように、ロータハウジング30の凹条部33において永久磁石40と対向する部分の内周面33a及び外周面33bの曲率を略ゼロに設定してもよい。この場合でも、図7に示すように永久磁石40の内側面40aが断面視で径方向外側に窪むように円弧状に形成されていれば、永久磁石40周方向中央の厚みY2を周方向両端部の厚みY1よりも小さくすることができる。なお、この変更例においても、大径部32が円筒状に形成されている場合(凹条部33が存在しない場合)に比べて凹条部33が径方向内側に窪んでいると言える。
【0055】
・ 図7に示す変更例においては、永久磁石40の周方向の幅が大きいほど、周方向中央の厚みY2を、周方向両端部の厚みY1に比して小さくすることができる。したがって、永久磁石40の枚数を少なくして(例えば4枚)周方向に幅広な永久磁石40を使用すれば、ロータハウジング30の大径部32に凹条部33を湾曲形成せずとも、永久磁石40の周方向中央の厚みY2を周方向両端部の厚みY1の2分の1以下にすることが可能である。
【0056】
・ 永久磁石40としては、焼結後に着磁されたフェライト磁石に限らず、永久磁石として使用できるものであればその材質は問わない。例えば、永久磁石40としてネオジム磁石を使用したり、樹脂材料に粉末磁石等を混ぜ合わせて成形したプラスチック磁石(ボンド磁石)を使用したりしてもよい。
【0057】
・ ステータコア20において突極22の数は9つに限らない。同様に、永久磁石40の枚数も12枚に限らない。アウターロータ型モータに求められるトルクや、応答性等の制御性能に応じて突極22及び永久磁石40の数を設定すれば良い。
【0058】
・ 上記実施形態では、アウターロータ型モータに本発明を適用したが、ハウジング側に永久磁石が配置され、シャフト側にコイルが配置されているモータであれば、インナーロータ型モータにも本発明を適用することができる。なお、上記実施形態のアウターロータ型モータをインナーロータ型モータに変更する態様としては、例えば、ロータハウジング30を円盤部12に固定してステータハウジングとして構成し、シャフト13を円盤部12に対して回転可能に支持させることにより、ステータコア20をシャフト13と一体的に回転するロータコアとして構成することが考えられる。また、上記実施形態のアウターロータ型モータを、アウターロータ型発電機として使用することも可能である。
【0059】
・ 例えば、永久磁石の数を4枚に少なくしたインナーロータ型モータとして、図8に示すインナーロータ型モータが挙げられる。図8に示すインナーロータ型モータのステータハウジング81は軸方向両端が閉塞された略四角筒状に形成されている。ステータハウジング81の軸方向に延びる4つの角部は、面取り形状を成している。すなわち、ステータハウジング81は、4つの主壁部81aと、各主壁部81aの間に存在する4つの面取壁部81bを有する。そして、ステータハウジング81の中心軸上には、ステータハウジング81の軸方向両端部に設けられた図示しない軸受を介してシャフト82が挿通されている。ステータハウジング81の内部において、シャフト82の外周面にはロータコア83が固定されている。なお、図8においてはロータコア83を模式的に円形状に図示しているが、ロータコア83は、複数の突極を備え、それら各突極には、コイルが巻き回されている。そして、ロータコア83のコイルには、図示しないブラシ及びコミテータを介して電流が供給される。ステータハウジング81の4つの主壁部81aの内周面には、それぞれ略板状の永久磁石84が取り付けられている。永久磁石84は、ステータハウジング81の主壁部81aに対向する外側面が主壁部81aの内周面形状に応じて略直平面状に形成されており、ロータコア83に対向する内側面が円弧状に形成されている。これにより、永久磁石84の周方向両端における径方向の厚みよりも、周方向中央における径方向の厚みの方が小さくなっている。図8に示すインナーロータ型モータにおいては、永久磁石84の周方向中央の厚みは、周方向両端の厚みの3分の1に設定されている。なお、この図8におけるインナーロータ型の回転電機は、永久磁石84として、材料が高価でかつ形状自由度の高い希土類ボンド磁石を採用した場合に特に適している。
【0060】
・ 円盤部12に対するシャフト13の支持構成、シャフト13に対するロータハウジング30(小径部31)の支持構成は適宜変更できる。例えば、シャフト13を円盤部12に対して回転可能に支持させ、ロータハウジング30(小径部31)をシャフト13に固定するようにすれば、ロータハウジング30のトルクを、シャフト13を介して他の部材に伝達することができる。
【0061】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)シャフトの外周に固定されるとともに径方向外側に向かって複数の突極が突設されたコアと、前記コアを覆う筒状のハウジングと、前記ハウジングの内周面に取り付けられた複数の磁石とを備えた回転電機であって、前記ハウジングは、前記磁石が取り付けられていない部分における径方向の厚みよりも、前記磁石の周方向中央と対向する部分における径方向の厚みの方が小さく形成されていることを特徴とする回転電機。
【0062】
(ロ)コアは、ハウジングに対して回転するように構成されたインナーロータであることを特徴とする回転電機。
【符号の説明】
【0063】
13…シャフト、20…ステータコア、21…円環部、22…突極、30…ロータハウジング、31…小径部、32…大径部、33…凹条部、33a…凹条部の内周面、33b…凹条部の外周面、34…非対向部分、40…永久磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周に固定されるとともに、径方向外側に向かって複数の突極が突設されたコアと、前記コアを径方向外側から覆う筒状のハウジングと、前記ハウジングの内周面に取り付けられた複数の磁石とを備えた回転電機であって、
前記磁石は、周方向一端における径方向の厚みよりも周方向中央における径方向の厚みの方が小さく形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ハウジングには、径方向内側に向かって窪む凹条部が軸方向に延びるように形成されており、前記凹条部は、前記磁石に対して対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記磁石が取り付けられていない部分における径方向の厚みよりも、前記磁石の周方向中央と対向する部分における径方向の厚みの方が小さく形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記磁石の周方向中央と対向する部分における径方向の厚みが前記磁石が取り付けられていない部分における径方向の厚みの2分の1以下に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記磁石は、周方向中央における径方向の厚みが周方向一端における径方向の厚みの2分の1以下に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記コアに対して回転するように構成されたアウターロータであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−99164(P2013−99164A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241285(P2011−241285)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】