説明

固体電解コンデンサ用基材およびその製造方法、単板固体電解コンデンサ素子およびその製造方法、並びに積層型固体電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】固体電解質の這い上がりと接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ること。
【解決手段】 表面にエッチング層を有し、陽極部領域と陰極部領域との間のエッチング層が除去されることによりエッチング層除去領域が形成された基材と、
前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁に接しないように、前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁よりも前記陰極部領域側に設けられ、前記陽極部領域と前記陰極部領域とを電気的に絶縁する絶縁性樹脂材と
を備えた固体電解コンデンサ用基材を用いたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ用基材およびその製造方法、単板固体電解コンデンサ素子およびその製造方法、並びに積層型固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型固体電解コンデンサは、複数の単板固体電解コンデンサ素子が積層されることによって構成されており、単板固体電解コンデンサ素子は、陽極部領域と陰極部領域とが絶縁性樹脂材によって電気的に絶縁された固体電解コンデンサ用基材と、その陰極部領域の表面に順に形成された固体電解質層および陰極接続部とを備えている。
【0003】
即ち、積層型固体電解コンデンサでは、複数の単板固体電解コンデンサ素子が積層され、積層方向に隣り合う陰極接続部同士が互いに接合されるとともに、陰極端子が、いずれかの陰極接続部に接続される一方、陽極端子が、積層方向に並ぶ陽極部領域と接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような積層型固体電解コンデンサに用いられる従来の固体電解コンデンサ用基材の一例について、図5を用いて説明する。
図5(a)は、従来の固体電解コンデンサ用基材の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【0005】
固体電解コンデンサ用基材80は、基材81と、基材81の表面にエッチングにより形成されたエッチング層82と、基材81における陽極部領域80Aと陰極部領域80Cとの間に設けられ、陽極部領域80Aと陰極部領域80Cとを電気的に絶縁する絶縁性樹脂材83とを備えている。エッチング層82は、多孔質化されているため、エッチング層82の表面に設けられた絶縁性樹脂材83は、図中、矢印により示すように、エッチング層82内に拡散している。
【0006】
なお、陽極部領域80Aは、陽極端子(図示せず)または他の陽極部領域(図示せず)が接続される領域である。陰極部領域80Cは、その表面に固体電解質層(図示せず)と陰極接続部(図示せず)とが順に形成される領域である。陽極部領域80Aと陰極部領域80Cとは、絶縁性樹脂材83によって区分され、陰極部領域80Cと絶縁性樹脂材83とは、隣接している。これに対し、陽極部領域80Aと絶縁性樹脂材83とは、隣接しておらず、陽極部領域80Aと絶縁性樹脂材83との間には、スペース80Sが設けられている。スペース80Sの幅は、例えば、1000〜1500μmである。
【0007】
また、従来の固体電解コンデンサ用基材としては、例えば、表面にエッチング層を有し、陽極部領域と陰極部領域との間のエッチング層の少なくとも一部が除去され、除去により形成された凹部に絶縁性樹脂材が充填された固体電解コンデンサ用基材がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この固体電解コンデンサ用基材について、図6を用いて説明する。
図6(a)は、従来の固体電解コンデンサ用基材の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
固体電解コンデンサ用基材90は、基材91と、エッチング層92と、絶縁性樹脂材93とを備えている。また、陽極部領域90Aと陰極部領域90Cとは、絶縁性樹脂材93によって区分され、陰極部領域90Cと絶縁性樹脂材93とは、隣接している。
【0009】
以上の点において、固体電解コンデンサ用基材90は、固体電解コンデンサ用基材80と同様であるが、エッチング層92に形成された凹部94に絶縁性樹脂材93が充填されている点において、固体電解コンデンサ90は、固体電解コンデンサ用基材80と異なっている。
【0010】
凹部94に絶縁性樹脂材93が充填されることにより、陰極部領域90Cの表面に固体電解質層(図示せず)を形成する際、重合溶液が陽極部領域90A側に侵入する所謂這い上がりを防止することができる。
【0011】
上述した固体電解コンデンサ用基材90においても、固体電解コンデンサ用基材80と同様に、陽極部領域90Aと絶縁性樹脂材93とは、隣接しておらず、陽極部領域90Aと絶縁性樹脂材93との間には、スペース90Sが設けられている。
【0012】
図5および図6に示したように、陽極部領域と絶縁性樹脂材との間に、スペースを設けることにより、絶縁性樹脂材が陽極部領域まで拡散して陽極部における接続不良が生じることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−180327号公報
【特許文献2】国際公開第2006/137482号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、陽極部領域と絶縁性樹脂材との間にスペースを設けると、その分、陰極部領域が狭くなるため、コンデンサの静電容量を確保できないという問題があった。
また、絶縁性樹脂材が設けられた部分には、固体電解質層を形成することができないので、絶縁性樹脂材が設けられた部分は、静電容量を発現しない。従って、絶縁性樹脂材の塗布量はできる限り少ないことが好ましい。
従来から、コンデンサでは、小形化および大容量化が求められており、そのような点からみて、従来の固体電解コンデンサ用基材には、まだ改善の余地があった。
【0015】
本発明は、固体電解質の這い上がりと接続不良の発生とを防止しつつ、小形化および大容量化を図ることが可能な固体電解コンデンサ用基材およびその製造方法、単板固体電解コンデンサ素子およびその製造方法、並びに積層型固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(1) 表面にエッチング層を有し、陽極部領域と陰極部領域との間のエッチング層が除去されることによりエッチング層除去領域が形成された基材と、
前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁に接しないように、前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁よりも前記陰極部領域側に設けられ、前記陽極部領域と前記陰極部領域とを電気的に絶縁する絶縁性樹脂材と
を備えることを特徴とする固体電解コンデンサ用基材。
【0017】
(1)の構成によれば、陽極部領域と陰極部領域との間のエッチング層が除去されることにより、エッチング層除去領域が形成されており、絶縁性樹脂材が、そのエッチング層除去領域の陽極部領域側の縁に接しないように、エッチング層除去領域の陽極部領域側の縁よりも陰極部領域側に設けられており、それにより、陽極部領域と陰極部領域とが電気的に絶縁されている。
従って、エッチング層除去領域によって、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散を遮断することができるので、陽極部領域と絶縁性樹脂材との間に広いスペースを確保する必要がなく、絶縁性樹脂材の塗布量を少なくすることができる。従って、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
また、エッチング層除去領域によって、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散を遮断することができるので、接続不良の発生を防止することができる。
更に、エッチング層除去領域と絶縁性樹脂材との組合せによって、固体電解質を形成する際の重合溶液の這い上がりを確実に防止することができる。
従って、(1)の固体電解コンデンサ用基材によれば、固体電解質を形成する際の重合溶液の這い上がりと陽極部の接続不良の発生とを防止しつつ、小形化および大容量化を図ることができる。
【0018】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(2) (1)の固体電解コンデンサ用基材であって、
前記絶縁性樹脂材が、前記エッチング層除去領域よりも前記陰極部領域側に設けられている。
【0019】
(2)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。
【0020】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(3) (1)の固体電解コンデンサ用基材であって、
前記絶縁性樹脂材が、前記エッチング層除去領域に接しないように設けられている。
【0021】
(3)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。
【0022】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(4) (1)〜(3)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材であって、
前記絶縁性樹脂材が、前記エッチング層除去領域と前記エッチング層との接辺に接するように設けられている。
【0023】
(4)の構成によれば、絶縁性樹脂材とエッチング層除去領域との距離ができる限り短縮されているので、コンデンサの小形化および大容量化を図ることが可能である。
【0024】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(5) (1)〜(4)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材であって、
前記エッチング層除去領域における前記エッチング層の厚みが、前記エッチング層除去領域以外の前記エッチング層の厚みを1とした場合、0〜0.5である。
【0025】
(5)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。更に、固体電解質の這い上がりも、より確実に防止することができる。
【0026】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(6) (1)〜(5)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材であって、
前記エッチング層除去領域は、前記エッチング層に対するレーザ光の照射により形成されている。
【0027】
(6)の構成によれば、狭いエッチング層除去領域が精密に形成されるので、固体電解質の這い上がりおよび接続不良の発生をより確実に防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【0028】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(7) (1)〜(6)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材であって、
前記エッチング層除去領域は、凹部であり、
前記エッチング層除去領域の縁は、前記凹部と前記エッチング層との接辺、および前記凹部の側壁からなる。
【0029】
(7)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。更に、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりも、より確実に防止することができる。
【0030】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(8) (1)〜(7)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材と、
前記固体電解コンデンサ用基材の前記陰極部領域に設けられた誘電体酸化皮膜および固体電解質層と、
前記固体電解質層の上層に形成された陰極接続部と
を備える単板固体電解コンデンサ素子。
【0031】
(8)の構成によれば、固体電解質の這い上がりと接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
なお、単板固体電解コンデンサ素子は、単独で用いられ、単板型固体電解コンデンサとされてもよく、複数積層され、積層型固体電解コンデンサとされてもよい。
【0032】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(9) (8)の単板固体電解コンデンサ素子が複数積層されて構成された積層型固体電解コンデンサ。
【0033】
(9)の構成によれば、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりと陽極部の接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【0034】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(10) エッチングにより表面にエッチング層が形成された基材における陽極部領域と陰極部領域との間の前記エッチング層を除去することにより、エッチング層除去領域を形成する工程(A)と、
前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁に接しないように、前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁よりも前記陰極部領域側に、絶縁性樹脂材を設けることにより、前記陽極部領域と前記陰極部領域とを電気的に絶縁する工程(B)と
を含む固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【0035】
(10)の構成によれば、陽極部領域と陰極部領域との間のエッチング層を除去することにより、エッチング層除去領域を形成し、絶縁性樹脂材を、そのエッチング層除去領域の陽極部領域側の縁に接しないように、エッチング層除去領域の陽極部領域側の縁よりも陰極部領域側に設け、それにより、陽極部領域と陰極部領域とを電気的に絶縁する。
従って、エッチング層除去領域によって、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散を遮断することができるので、陽極部領域と絶縁性樹脂材との間に広いスペースを確保する必要がなく、絶縁性樹脂材の塗布量を少なくすることができる。従って、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
また、エッチング層除去領域によって、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散を遮断することができるので、接続不良の発生を防止することができる。
更に、エッチング層除去領域と絶縁性樹脂材との組合せによって、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりを確実に防止することができる。
従って、(10)の方法によれば、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりと接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【0036】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(11) (10)の固体電解コンデンサ用基材の製造方法であって、
前記(B)工程において、前記絶縁性樹脂材を、前記エッチング層除去領域よりも前記陰極部領域側に設ける。
【0037】
(11)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。
【0038】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(12) (10)の固体電解コンデンサ用基材の製造方法であって、
前記(B)工程において、前記絶縁性樹脂材が前記エッチング層除去領域に接しないように、前記絶縁性樹脂材を設ける。
【0039】
(12)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。
【0040】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(13) (10)〜(12)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材の製造方法であって、
前記(B)工程において、前記絶縁性樹脂材を、前記エッチング層除去領域と前記エッチング層との接辺に接するように設ける。
【0041】
(13)の構成によれば、絶縁性樹脂材とエッチング層除去領域との距離をできる限り短縮することができるので、コンデンサの小形化および大容量化を図ることが可能である。
【0042】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(14) (10)〜(13)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材の製造方法であって、
前記(A)工程において、前記エッチング層除去領域における前記エッチング層の厚みが、前記エッチング層除去領域以外の前記エッチング層の厚みを1として、0〜0.5となるように、前記エッチング層の除去を行う。
【0043】
(14)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。更に、固体電解質の這い上がりも、より確実に防止することができる。
【0044】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(15) (10)〜(14)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材の製造方法であって、
前記(A)工程における前記エッチング層の除去を、レーザ光の照射により行う。
【0045】
(15)の構成によれば、狭いエッチング層除去領域を精密に形成することができるので、固体電解質の這い上がりおよび接続不良の発生をより確実に防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【0046】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(16) (10)〜(15)のいずれか1の固体電解コンデンサ用基材の製造方法であって、
前記エッチング層除去領域は、凹部であり、
前記エッチング層除去領域の縁は、前記凹部と前記エッチング層との接辺、および前記凹部の側壁からなる。
【0047】
(16)の構成によれば、絶縁性樹脂材の陽極部領域へ向かう拡散をより確実に遮断することができるので、接続不良の発生をより確実に防止することができる。更に、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりも、より確実に防止することができる。
【0048】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(17) (10)〜(16)のいずれか1の製造方法により形成された固体電解コンデンサ用基材の前記陰極部領域に、誘電体酸化皮膜および固体電解質層を順次設ける工程と、
前記固体電解質層の上層に陰極引出層を形成する工程と
を含む単板固体電解コンデンサ素子の製造方法。
【0049】
(17)の構成によれば、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりと陽極部の接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【0050】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(18) (17)の製造方法により製造された単板固体電解コンデンサ素子を複数積層する工程
を含む積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【0051】
(18)の構成によれば、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりと陽極部の接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりと陽極部の接続不良の発生とを防止しつつ、コンデンサの小形化および大容量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサ用基材を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図2】(a)は、図1に示した固体電解コンデンサ用基材のエッチング層除去領域付近の部分拡大断面図であり、(b)〜(f)は、それぞれ、本発明の固体電解コンデンサ用基材の他の例におけるエッチング層除去領域付近の部分拡大断面図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る単板固体電解コンデンサ素子を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る積層型固体電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
【図5】(a)は、従来の固体電解コンデンサ用基材の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図6】(a)は、従来の固体電解コンデンサ用基材の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0055】
<固体電解コンデンサ用基材>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサ用基材を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【0056】
固体電解コンデンサ用基材10は、アルミニウム製の基材11と、基材11の表面にエッチングにより形成されたエッチング層12と、基材11における陽極部領域10Aと陰極部領域10Cとの間に設けられ、陽極部領域10Aと陰極部領域10Cとを電気的に絶縁する絶縁性樹脂材13とを備えている。基材11における陽極部領域10Aと陰極部領域10Cとの間には、エッチング層12が除去されることにより、凹部(エッチング層除去領域)14が形成されている。絶縁性樹脂材13は、凹部14よりも陰極部領域10C側において、凹部14に隣接するように設けられている。ここで、凹部14の幅は、例えば、100〜500μmである。
【0057】
エッチング層12は、エッチングによる電気化学的処理で多孔質化されているため、エッチング層12の表面に設けられた絶縁性樹脂材13は、図中、矢印により示すように、毛細管現象によって、エッチング層12内に拡散し、その一部は基材11まで到達している。しかし、絶縁性樹脂材13よりも陽極部領域10A側におけるエッチング層12には、絶縁性樹脂材13に隣接するように、凹部14が形成されているので、絶縁性樹脂材13は、陽極部領域10A側に拡散することがない。従って、陽極部領域10Aにおける陽極端子(図示せず)または他の陽極部領域(図示せず)との接続不良の発生を防止することができる。
【0058】
このような固体電解コンデンサ用基材10の製造方法について説明する。
まず、基材11の表面をエッチングすることにより電気化学的に粗面化し、基材11の表面にエッチング層12を形成する。ここで、更に、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液中で10Vの電圧を印加して約60分間陽極酸化を行い、表面に酸化皮膜層(図示せず)を形成しておくことが好ましい。
【0059】
次に、エッチング層12(酸化被膜層が形成されている場合、酸化皮膜層を含む。以下同じ)に対して、レーザ光を照射し、エッチング層12を除去することにより、凹部14を形成する(工程(A))。工程(A)においては、凹部14におけるエッチング層12の厚みが、凹部14以外のエッチング層12の厚みを1として、0〜0.5となるように、エッチング層12の除去を行うことが好ましい。
続いて、絶縁性樹脂材13を、凹部14よりも陰極部領域10C側において、凹部14に隣接するようにかつ周方向に巻き付けるように塗布し、陽極部領域10Aと陰極部領域10Cとを区分する(工程(B))。絶縁性樹脂材13を塗布する位置は、凹部14の陽極部領域10A側の縁15A(図2参照)に接しないで、かつ凹部14の陽極部領域10Aの縁15Aよりも陰極部領域10C側であれば、特に限定されない。絶縁性樹脂材13の好ましい位置については、後に図2を用いて詳述する。工程(A)、(B)により、固体電解コンデンサ用基材10が完成する。
【0060】
次に、本発明に係る固体電解コンデンサ用基材における凹部(エッチング層除去領域)および絶縁性樹脂材の態様について、より具体的に説明する。
図2(a)は、図1に示した固体電解コンデンサ用基材の凹部付近の部分拡大断面図であり、(b)〜(f)は、それぞれ、本発明の固体電解コンデンサ用基材の他の例における凹部付近の部分拡大断面図である。なお、図2(b)〜(f)においては、図2(a)と同様の構成については、図2(a)と同様の符号を付し、その説明を省略することにする。
【0061】
図2(a)において、凹部14は、エッチング層12を貫通し、基材11に達するように形成されている。換言すれば、凹部14におけるエッチング層12の厚みが、凹部14以外のエッチング層12の厚みを1として、0である。図中、16Aは、凹部14とエッチング層12との陽極部領域10A側の接辺を指し、17Aは、凹部14の陽極部領域側10A側の側壁を指し、本発明において、凹部14の陽極部領域10A側の縁15Aは、接辺16Aと側壁17Aとからなる。同様に、16Cは、凹部14とエッチング層12との陰極部領域10C側の接辺を指し、17Cは、凹部14の陰極部領域側10C側の側壁を指し、本発明において、凹部14の陰極部領域10C側の縁15Cは、接辺16Cと側壁17Cとからなる。
【0062】
絶縁性樹脂材13は、凹部14の陽極部領域10A側の縁15Aに接しないように、凹部14の陽極部領域10Aの縁15Aよりも陰極部領域10C側に設けられ、陽極部領域10Aと陰極部領域10Cとを電気的に絶縁している。絶縁性樹脂材13は、凹部14よりも陰極部領域10C側に設けられている。絶縁性樹脂材13は、凹部14と接しておらず、凹部14とエッチング層12との陰極部領域10C側の接辺16Cと接している。絶縁性樹脂材13の幅は、例えば、300〜1000μmであることが好ましい。ここで、絶縁性樹脂材13の幅は、エッチング層12との接触面における、陽極部領域10Aから陰極部領域10Cへ向かう方向に沿った幅をいう。
【0063】
次に、図2(b)に示す態様について説明する。
図2(b)に示す態様は、絶縁性樹脂材23と接辺16Cとの間に間隔Wが設けられている点で、図2(a)に示す態様と異なっている。このように、絶縁性樹脂材23と接辺16Cとの間隔Wを空ける場合においては、間隔Wは、300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。300μm以下の範囲であれば、小形化および大容量化を妨げることなく、陽極部の接続不良の発生および固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりをより確実に防止し得る。
【0064】
次に、図2(c)に示す態様について説明する。
図2(c)に示す態様は、絶縁性樹脂材33が、凹部14の縁15Cに沿って垂れ下がり、凹部14の底面(基材11の表面)に到達している点で、図2(a)に示す態様と異なっている。このように、本発明においては、凹部14の縁15Aと接していなければ、凹部14内に絶縁性樹脂材33が一部入っていてもよい。
【0065】
凹部14内に絶縁性樹脂材33が入る場合、凹部14は、基材11に達するように形成されていることが好ましい。多孔質化されたエッチング層12が全て除去されているので、多孔質化されたエッチング層12を介して絶縁性樹脂材13が陽極部領域10Aまで拡散して到達することを防止できるからである。
【0066】
次に、図2(d)に示す態様について説明する。
図2(d)に示す態様は、凹部44が基材11に達しないように形成されている点で、図2(a)に示す態様と異なっている。図中、凹部44の陽極部領域10A側の縁45Aは、接辺46Aと側壁47Aとからなり、凹部44の陰極部領域10C側の縁45Cは、接辺46Cと側壁47Cとからなる。
【0067】
図2(d)に示すように、絶縁性樹脂材13が凹部44よりも陰極部領域側10C側に設けられ、絶縁性樹脂材13と凹部44とが接していない場合には、凹部44は基材11に達するように形成されていなくても、陽極部の接続不良の発生および固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりを防止することができる。
【0068】
また、このように、絶縁性樹脂材13と凹部44とが接しておらず、かつ凹部44が基材11に達しないように形成されている場合において、凹部44におけるエッチング層12の厚みは、凹部44以外のエッチング層12の厚みを1とした場合、0を超え、かつ0.5以下であることが好ましい。陽極部の接続不良の発生および固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりをより確実に防止することができるからである。また、凹部44を浅くすることにより、固体電解コンデンサ用基材の強度を確保することも可能になる。
【0069】
次に、図2(e)に示す態様について説明する。
図2(e)に示す態様は、凹部54が基材11に達しておらず、かつ凹部54の幅が広く、更に、絶縁性樹脂材53が凹部54内に入っている点で、図2(a)に示す態様と異なっている。図中、凹部54の陽極部領域10A側の縁55Aは、接辺56Aと側壁57Aとからなり、凹部54の陰極部領域10C側の縁55Cは、接辺56Cと側壁57Cとからなる。
【0070】
このように、凹部54が基材11に達しておらず、かつ絶縁性樹脂材53が凹部54内に入っている場合において、凹部54の幅は、300〜700μmであることが好ましく、また、凹部54におけるエッチング層12の厚みは、凹部54以外のエッチング層12の厚みを1とした場合、0を超え、かつ0.5以下であることが好ましい。陽極部の接続不良の発生および固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりをより確実に防止することができるからである。また、凹部54を浅くすることにより、固体電解コンデンサ用基材の強度を確保することも可能になる。
【0071】
次に、図2(f)に示す態様について説明する。
図2(f)に示す態様は、凹部64の幅が広く、絶縁性樹脂材63が全て凹部64に相当する領域に設けられ、かつ凹部64の縁65A、65Cに接していない点で、図2(a)と異なっている。なお、図中、凹部64の陽極部領域10A側の縁65Aは、接辺66Aと側壁67Aとからなり、凹部64の陰極部領域10C側の縁65Cは、接辺66Cと側壁67Cとからなる。
【0072】
このように、凹部64が基材11に達し、かつ絶縁性樹脂材63が凹部64の縁65A、65Cに接しないように凹部64内に設けられている場合において、凹部64の幅は、500〜900μmであることが好ましい。陽極部の接続不良の発生および固体電解質を形成する際、重合溶液の這い上がりをより確実に防止することができるからである。
【0073】
勿論、本発明において、凹部と絶縁性樹脂材との態様は、図2(a)〜(f)に示した態様に限定されず、絶縁性樹脂材が凹部の陽極部領域側の縁に接しないように、凹部の陽極部領域側の縁より陰極部領域側に設けられていればよい。
更に、本発明において、固体電解コンデンサ用基材は、上述した例に限定されず、例えば、以下のような構成を採用することができる。
【0074】
本発明の好ましい実施態様における固体電解コンデンサ基材は、表面に、エッチング層を有するコンデンサ用材料であり、好ましくは、微細孔を有する弁作用金属材料、特に好ましくは、表面に誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属である。
弁作用金属はアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウムあるいはこれらを基質とする合金系の弁作用を有する金属箔、棒、あるいはこれらを主成分とする粉体等から選ばれる。これらの金属は空気中の酸素により表面が酸化された結果としての誘電体酸化皮膜を有しているが、予め公知の方法によりエッチングまたは成形・焼結処理し、多孔質化する。次に公知の方法等に従って、化成処理し確実に誘電体酸化皮膜を形成しておくことが好ましい。
【0075】
弁作用を有する金属基材は、粗面化後、予め固体電解コンデンサの形状に合わせた寸法に裁断したものを使用するのが好ましい。
弁作用を有する金属箔としては、使用目的によって厚さが変わるが、一般的に厚みが約40〜150μmの箔が使用される。また、弁作用を有する金属箔の大きさおよび形状は用途により異なるが、平板形素子単位として幅約1〜50mm、長さ約1〜50mmの矩形のものが好ましく、より好ましくは幅約2〜20mm、長さ約2〜20mm、さらに好ましくは幅約2〜5mm、長さ約2〜6mmである。
【0076】
本発明は、上述した表面にエッチング層を有する固体電解コンデンサ基材において、陽極部領域と陰極部領域の間のエッチング層を除去し、絶縁性樹脂材を、エッチング層除去領域の陽極部領域側の縁に接しないように、エッチング層除去領域の陽極部領域側の縁よりも陰極部領域側に設けることを特徴とする。
【0077】
すなわち、エッチング層を有する固体電解コンデンサ基材、例えば、微細孔を有する弁作用金属材料の表面に誘電体皮膜が形成された固体電解コンデンサ用基材において、陽極部領域と、陰極部領域との間の領域の少なくとも一部に対し、エッチング層の除去を行う。
エッチング層の除去には、エッチング層そのものを基材から取り除くだけでなく、絶縁性樹脂材、または絶縁性樹脂材および固体電解質の這い上がり可能な細孔の除去が含まれる。例えば、エッチング層の除去、エッチング層の圧縮等が挙げられる。更に、エッチング層の部分的な溶融による細孔の緻密化等が含まれる。
【0078】
エッチング層の除去方法は、多孔質体を精度良く除去でき、他の領域、特に陰極部領域へ悪影響を及ぼさない手法であれば、特に限定されず、例えば機械的、電気的、化学的(例えば、溶解)、熱的(例えば、揮散)手法等が利用できる。好ましくはレーザ光を利用した切削手法、水流コラム内に封じ込められたレーザ光を利用した切削手法等を挙げることができる。また、針状金属片で削り取る手法、円盤状金属板で回転研磨しながら切削する手法等を用いることも可能である。
【0079】
レーザ光を利用した切削方法では、0.1〜11μmの波長を有するレーザ光が使用でき、具体的にはルビー、ガラス、YAG等の固体レーザ、GaAs、InGaAsP等の半導体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、He−Ne、Ar、ArF、F、CO等の気体レーザ等が挙げられる。特に好ましくは、YAG、COのレーザ光を使用した切削方法および水流コラム内に封じ込められたYAGのレーザ光を利用した切削方法が好ましい。
【0080】
例えば、水圧10〜50MPa、コラム径30〜180μmとして、水を細い糸のように吹き出し、YAGレーザをこの水の中に導いて切削することができる。水流コラム内に封じ込められたYAGのレーザ光は、レーザ光照射部分に発生する熱を照射と同時に水流によって除去することができる。これにより、基材に残存するエッチング層の表面が溶解するのを低減することができるため、絶縁性樹脂材の浸透性が良くなり、さらに溶解粉による汚染やバリの発生が防止される点で、切削方法として有効である。
水流コラム内に封じ込められたYAGのレーザ光を利用した場合の切削の幅は水流圧力とレーザによる相乗効果のため、コラム径の1〜3倍の範囲に拡大される。
【0081】
圧縮方法もエッチング層を精度良く圧縮でき、他の領域、特に陰極部領域へ悪影響を及ぼさない手法であれば、特に限定されず、例えば、機械的手法が利用できる。さらに詳しく言えば、針状金属片や薄片の縁部を押し当てる方法、円盤状金属板を回転させつつ押し当てる方法等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0082】
エッチング層を除去することにより形成される凹部の割合は、好ましくは、エッチング層の全体の厚み(除去されていない部位のエッチング層の厚みを)を1とした場合、除去された部位のエッチング層の厚みが0〜0.5の比となる範囲であることが好ましい。
より好ましい範囲としては、エッチング層の全体の厚みを1とした時、除去されたエッチング層の厚みが0〜0.3であり、更に好ましくは0〜0.1である。
【0083】
除去の場合、除去部位のエッチング層をすべて除去することも可能であるが、固体電解コンデンサ用基材の強度を確保するために、エッチング層を部分的に残すことも可能である。
【0084】
除去されるエッチング層の幅は、陰極部領域の長軸方向の長さを1とした場合、0.0005〜0.1の比で表される。
更に好ましい範囲としては、0.001〜0.075の範囲、更に好ましくは0.002〜0.05の範囲である。0.001〜0.075の範囲であれば、陰極部領域と陽極部領域との電気的な絶縁をより確実に行うことができるとともに、コンデンサの容量を確保することができる。
【0085】
なお、本発明の目的から、固体電解コンデンサ用基材が平板状である場合、陽極部領域と陰極部領域の間において基材の両面で、または基材の横断面を巡って周状にエッチング層の除去または圧縮処理を施すことが好ましい。
【0086】
所定の形状に裁断された弁作用を有する金属の化成処理は種々の方法によって行うことができる。化成処理の条件は特に限定されるものではないが、例えばシュウ酸、アジピン酸、ホウ酸、リン酸等の少なくとも1種を含む電解液を用い、電圧は処理する化成箔の既に形成されている皮膜の化成電圧に応じた数値、化成時間が60分以内の条件で化成を行う。
【0087】
前記の化成処理の条件は工業的方法として好適なものではあるが、弁作用金属材料表面に既に形成されている誘電体酸化皮膜を破壊または劣化させない限り、電解液の種類、電解液濃度、温度、電流密度、化成時間等の諸条件は任意に選定することができる。
【0088】
絶縁性樹脂材は、陰極部領域と陽極部領域とを電気的に絶縁し、固体電解質または固体電解質形成用処理液が陰極部領域から陽極部領域に侵入するのを防止するための遮蔽材として設けられる。
このような絶縁性樹脂材としては、上述した目的に適合する限りにおいて特に限定されず、一般的な耐熱性樹脂、好ましくは溶剤に可溶あるいは膨潤しうる耐熱性樹脂またはその前駆体、無機質微粉とセルロース系樹脂からなる組成物(特開平11−80596号公報)等が使用できる。具体例としてはポリフェニルスルホン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ポリイミドおよびそれらの誘導体等が挙げられる。ポリイミド、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂およびそれらの前駆体が好ましく、特に弁作用金属に十分な密着力、充填性を有し、約450℃までの高温処理に耐えられる絶縁性に優れたポリイミドが好ましい。ポリイミドとしては、200℃以下、好ましくは100〜200℃の低温度での熱処理により硬化が十分可能であり、陽極箔の表面上の誘電体層の熱による破損・破壊等の外的衝撃が少ないポリイミドが好適に使用できる。ポリイミドの好ましい平均分子量としては約1,000〜1,000,000であり、より好ましくは約2,000〜200,000である。
【0089】
これらは、有機溶剤に溶解あるいは分散可能であり、塗布操作に適した任意の固形分濃度(従って粘度)の溶液あるいは分散液を容易に調製することができる。好ましい濃度としては、約10〜60質量%、より好ましい濃度としては、約15〜40質量%である。濃度が低すぎると絶縁性樹脂材による描線がにじみ、高過ぎると糸引き等が起こり、線幅が不安定になる。
【0090】
本発明においては、上に述べた液状の絶縁性樹脂材を、例えば、図2(a)〜(f)に示したように塗布する。塗布後の絶縁性樹脂材に対して、必要に応じて、乾燥、加熱、光照射等の処理を行っても良い。
【0091】
<単板固体電解コンデンサ素子>
次に、本発明の単板固体電解コンデンサ素子について説明する。
図3(a)は、本発明の一実施形態に係る単板固体電解コンデンサ素子を模式的に示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【0092】
単板固体電解コンデンサ素子1は、固体電解コンデンサ用基材11の陰極部領域10Cの表面に、固体電解質層2、カーボン層3、銀層4が順に積層形成されている。固体電解質層2は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)等の導電性高分子を含む電解質が化学重合または電解重合されることによって形成された層である。カーボン層3および銀層4は、陰極接続部として機能し、陰極端子(図示せず)または他の陰極接続部に接続される。一方、陽極部領域10Aは、そのまま、陽極端子(図示せず)または他の陽極部領域と接続される。なお、固体電解質層2については、上述した例に限定されるものではなく、公知の固体電解質を使用可能である。また、陰極接続部は、カーボン層および銀層の積層構造に限定されるものではない。
【0093】
単板固体電解コンデンサ素子1の製造方法としては、例えば、上述した固体電解コンデンサ用基材10の陰極部領域10Cに、固体電解質層2、カーボン層3、および銀層4をこの順に積層することにより、単板固体電解コンデンサ素子1を得る方法等を挙げることができる。
【0094】
<積層型固体電解コンデンサ>
次に、積層型固体電解コンデンサについて説明する。
図4(a)、(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る積層型固体電解コンデンサを模式的に示す断面図である。なお、図中では、モールド樹脂を示していない。
【0095】
図4(a)に示す積層型固体電解コンデンサ100では、上述した単板固体電解コンデンサ素子1が複数(4つ)積層されている。各単板固体電解コンデンサ素子1は、積層されるときに、各陽極側が一方向に積層され、かつ各陰極側が他方向に積層されており、これにより、陰極・陽極の2端子とした積層型固体電解コンデンサとなっている。
【0096】
各単板固体電解コンデンサ素子1の陽極部領域10Aは、陽極リードフレーム(陽極端子)101に接続されている。積層方向に隣り合う単板固体電解コンデンサ素子1の銀層4(陰極接続部)は導電性接着剤103を介して、互いに接合されている。最下層の単板固体電解コンデンサ素子1の銀層4は、導電性接着剤103を介して、陰極リードフレーム(陰極端子)102に接続されている。
【0097】
図4(b)に示す積層型固体電解コンデンサ200においても、上述した単板固体電解コンデンサ1が複数(4つ)積層されている。各単板固体電解コンデンサ素子1は、積層されるときに、陰極側が中央に配置され、陽極側は交互に正対する方向に位置するように配置されている。
【0098】
積層方向に重なり合う2組の陽極部領域10Aは、それぞれ、陽極リードフレーム201に接続され、中央において積層方向に隣り合う単板固体電解コンデンサ素子1の銀層4は、互いに接合されている。最下層の単板固体電解コンデンサ素子1の銀層4は、導電性接着剤203を介して、陰極リードフレーム202に接続されている。
【0099】
積層型固体電解コンデンサの製造方法について、図4(a)に示す積層型固体電解コンデンサ100を例として説明する。まず、複数の単板固体電解コンデンサ素子1の銀層4(陰極接続部)を、導電性接着剤103を介して接合することにより積層する。また、導電性接着剤103を介して、最下層の単板固体電解コンデンサ素子1の銀層4を、陰極リードフレーム102に接合する。さらに、複数の単板固体電解コンデンサ素子1の陽極部領域10Aを陽極リードフレーム101に接続する。続いて、陽極、陰極の各リードフレームの外部回路との接続面を除いて、積層体全体を樹脂でモールドして完成品とする。ここで用いられる樹脂は、本発明における絶縁性樹脂材とは異なるものである。
【0100】
図4(a)、(b)では、単板固体電解コンデンサ素子1を複数積層して、積層型固体電解コンデンサ100、200とする場合について説明したが、本発明は、この例に限定されず、例えば、1つの単板固体電解コンデンサ素子に、陽極端子と陰極端子とを接続し、単板型固体電解コンデンサとしてもよい。また、積層態様は、図4に示す態様に限定されるものではない。
【0101】
なお、本発明では、一方端に陽極部領域を設けた固体電解コンデンサ素子を作製したが、固体電解コンデンサ素子の両端に陽極部領域、該陽極部領域間に陰極部領域を設けた素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 単板固体電解コンデンサ素子
2 固体電解質層
3 カーボン層
4 銀層
10 固体電解コンデンサ用基材
10A 陽極部領域
10C 陰極部領域
11 基材
12 エッチング層
13、23、33、53、63 絶縁性樹脂材
14、44、54、64 エッチング層除去領域(凹部)
15A、45A、55A、65A (エッチング層除去領域の陽極部領域側の)縁
15C、45C、55C、65C (エッチング層除去領域の陰極部領域側の)縁
16A、46A、56A、66A (エッチング層除去領域とエッチング層との陽極部領域側の)接辺
16C、46C、56C、66C (エッチング層除去領域とエッチング層との陰極部領域側の)接辺
17A、47A、57A、67A (凹部の陽極部領域側の)側壁
17C、47C、57C、67C (凹部の陰極部領域側の)側壁
100、200 積層型固体電解コンデンサ
101、201 陽極リードフレーム(陽極端子)
102、202 陰極リードフレーム(陰極端子)
103、203 導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にエッチング層を有し、陽極部領域と陰極部領域との間のエッチング層が除去されることによりエッチング層除去領域が形成された基材と、
前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁に接しないように、前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁よりも前記陰極部領域側に設けられ、前記陽極部領域と前記陰極部領域とを電気的に絶縁する絶縁性樹脂材と
を備えることを特徴とする固体電解コンデンサ用基材。
【請求項2】
前記絶縁性樹脂材が、前記エッチング層除去領域よりも前記陰極部領域側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ用基材。
【請求項3】
前記絶縁性樹脂材が、前記エッチング層除去領域に接しないように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ用基材。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂材が、前記エッチング層除去領域と前記エッチング層との接辺に接するように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材。
【請求項5】
前記エッチング層除去領域における前記エッチング層の厚みが、前記エッチング層除去領域以外の前記エッチング層の厚みを1として、0〜0.5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材。
【請求項6】
前記エッチング層除去領域は、前記エッチング層に対するレーザ光の照射により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材。
【請求項7】
前記エッチング層除去領域は、凹部であり、
前記エッチング層除去領域の縁は、前記凹部と前記エッチング層との接辺、および前記凹部の側壁からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材と、
前記固体電解コンデンサ用基材の前記陰極部領域に設けられた誘電体酸化皮膜および固体電解質層と、
前記固体電解質層の上層に形成された陰極引出層と
を備えることを特徴とする単板固体電解コンデンサ素子。
【請求項9】
請求項8に記載の単板固体電解コンデンサ素子が複数積層されて構成された積層型固体電解コンデンサ。
【請求項10】
エッチングにより表面にエッチング層が形成された基材における陽極部領域と陰極部領域との間の前記エッチング層を除去することにより、エッチング層除去領域を形成する工程(A)と、
前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁に接しないように、前記エッチング層除去領域の前記陽極部領域側の縁よりも前記陰極部領域側に、絶縁性樹脂材を設けることにより、前記陽極部領域と前記陰極部領域とを電気的に絶縁する工程(B)と
を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項11】
前記(B)工程において、前記絶縁性樹脂材を、前記エッチング層除去領域よりも前記陰極部領域側に設けることを特徴とする請求項10に記載の固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項12】
前記(B)工程において、前記絶縁性樹脂材が前記エッチング層除去領域に接しないように、前記絶縁性樹脂材を設けることを特徴とする請求項10に記載の固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項13】
前記(B)工程において、前記絶縁性樹脂材を、前記エッチング層除去領域と前記エッチング層との接辺に接するように設けることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項14】
前記(A)工程において、前記エッチング層除去領域における前記エッチング層の厚みが、前記エッチング層除去領域以外の前記エッチング層の厚みを1として、0〜0.5となるように、前記エッチング層の除去を行うことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項15】
前記(A)工程における前記エッチング層の除去を、レーザ光の照射により行うことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項16】
前記エッチング層除去領域は、凹部であり、
前記エッチング層除去領域の縁は、前記凹部と前記エッチング層との接辺、および前記凹部の側壁からなることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1に記載の固体電解コンデンサ用基材の製造方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1に記載の製造方法により形成された固体電解コンデンサ用基材の前記陰極部領域に、誘電体酸化皮膜層および固体電解質層を順次設ける工程と、
前記固体電解質層の上層に陰極引出層を形成する工程と
を含むことを特徴とする単板固体電解コンデンサ素子の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法により製造された単板固体電解コンデンサ素子を複数積層する工程
を含むことを特徴とする積層型固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−249632(P2011−249632A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122342(P2010−122342)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)