説明

固体高分子電解質型オゾン生成装置

【課題】固体高分子電解質膜と導電性ダイヤモンド電極との接触面の抵抗が小さく、電解オゾン生成処理における消費エネルギーを低減させることができる上に、固体高分子電解質膜の劣化を低減させることも可能な電極ユニットの提供、及びかかる電極ユニットを用いた電解オゾン生成装置を提供すること。
【解決手段】固体高分子電解質膜102の一の面と他の面とに、各々直流電流を印加する電極を接触させて成る電極ユニット101、該電極ユニットと接続される直流電源、ならびに電解槽を含む、固体高分子電解質型オゾン生成装置であって、該固体高分子電解質膜と該電極103とが金属105を介して接触しており、少なくとも該一つの電極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする、前記装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解法により水中でオゾンを発生させ、オゾンが溶解したオゾン水を製造する装置ならびに該オゾン水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水電解法によりオゾンを生成する方法は古くから知られている。例えば、電気陰性度の高い陰イオンを含む液体を電気分解してオゾンを製造する方法が挙げられる。この方法では、電解液や電解条件を適宜選択することにより高い電流効率を得ることができるが、電解液の極めて高い腐食性のために、実用的な装置としては商品化を見ていない。
【0003】
他の方法として、固体高分子電解質を用いて水を電気分解する方法が挙げられる。これは、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)の両側にメッシュ状あるいは多孔状の陰極及び陽極を密着させた電極ユニットを使用する、ゼロギャップ型電解方法である(非特許文献1)。この方法では、電極として二酸化鉛、固体高分子電解質膜としてパーフルオロカーボンスルホン酸系陽イオン交換膜を用いる装置が数種類提供されている。この装置は電気分解の際に純水を原料とするため、オゾン以外には腐食性、或いは危険性のある物質が存在或いは発生せず、取り扱いも便利である。
【0004】
非特許文献1によると、水電解では以下の電気化学反応が起こり、陽極側で酸素とオゾンが、そして陰極側で水素が生成する:
【0005】
〔数1〕
2HO→O+2H (E=1.23V)
3HO→O+3H (E=1.51V)
電極として使用する二酸化鉛は、このオゾン生成反応に有効な電極である。二酸化鉛を使用した電極の製造方法として、チタン基材に二酸化鉛をコーティングする方法、あるいは炭素繊維と複合化して二酸化鉛電極を製作する方法などが知られている。しかし、オゾン生成時に、鉛が水中に溶出する可能性があり、電解生成されたオゾンを含む水を直接利用することは難しい。したがって電解生成したオゾンを一度気相中へ移動させ、再び水中へ溶解させる必要があり、オゾンを水中に直接生成可能であるという電解オゾン法の利点を生かしているとはいいがたい。
【0006】
近年、ボロンなどをドープして導電性を持たせた導電性ダイヤモンドが特異的な電気化学特性を有することが明らかにされ始めている。導電性ダイヤモンドは広い電気窓をもち、陽極として用いると電極表面でOHラジカルが効率よく生成するので、導電性ダイヤモンド電極を固体高分子電解質膜とともに用いることで電解オゾン生成が可能であることがわかっている。
さらに、ダイヤモンドは炭素であるから、電解オゾン生成を行っても二酸化鉛のように有害な物質が水中に溶け出すことがないので、電解オゾン水を直接利用することが可能になる。
【0007】
しかし、導電性ダイヤモンドは、導電性とはいえ金属に比べると比抵抗が大きい。例えば、白金の比抵抗は20℃で10.2×10−6(Ω・cm)程度であるが、導電性ダイヤモンド(炭素対ボロンの比を100:1(10000ppm B/C)とする)の抵抗率は10−2(Ω・cm)程度と、3桁程度比抵抗が大きいことがわかる。よって、固体高分子電解質膜と導電性ダイヤモンド電極との接触面における電気抵抗が非常に大きく、電解反応において印加電圧が上昇し、消費エネルギーの増大を招く。
さらに固体高分子電解質膜と導電性ダイヤモンド電極を直接接触させると、接触面でOHラジカルが少なからず生成し、生成したOHラジカルが固体高分子電解質膜を酸化することがあるため、固体高分子電解質膜が短時間で劣化しうるという問題があった。
【非特許文献1】「固体高分子電解セルによるオゾン水の生成特性」大庭貴弘、楠博敦、砂川大輔、恩田和夫、電気学会全国大会講演論文集、pp.58-59(2004.3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、固体高分子電解質膜と導電性ダイヤモンド電極との接触面の抵抗が小さく、電解オゾン生成における消費エネルギーを低減させることができる上に、固体高分子電解質膜の劣化を低減させることも可能な電極ユニットの提供、及びかかる電極ユニットを用いた電解オゾン生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、固体高分子電解質膜の一の面と他の面とに、各々直流電流を印加する陽極及び陰極を接触させて成る電極ユニットを含む、固体高分子電解質型オゾン生成装置であって、該固体高分子電解質膜と該陽極とが金属を介して接触しており、該陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする、前記装置である。
【0010】
本発明の第2の態様は、固体高分子電解質膜と陽極とを介在する金属が、比抵抗10−4Ω・cm以下の金属である、上記1に記載の装置である。
本発明の第3の態様は、固体高分子電解質と陽極とを介在する金属が、白金、イリジウム、金、銀及び銅から成る群から選択される、上記2に記載の装置である。
【0011】
本発明の第4の態様は、該陽極及び陰極が、いずれも導電性ダイヤモンド電極であり、該固体高分子電解質膜と該陽極及び陰極とが金属を介して接触している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置である。
【0012】
本発明の第5の態様は、固体高分子電解質膜の一の面と他の面とに各々陽極及び陰極を接触させた電極ユニットを内部に有する電解槽に、水を供給し、該陽極及び陰極に直流電流を印加することによりオゾン水を製造する方法であって、該固体高分子電解質膜と該陽極とを金属を介して接触させ、該陽極に導電性ダイヤモンド電極を用いることを特徴とする、前記方法である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の装置に使用する「固体高分子電解質」とは、一般に高いイオン伝導度を有する高分子化合物のことを云う。すなわち、固体高分子電解質とは、固体でありながら電解質溶液のようにイオンが自由に移動可能でこれにより電気を通す性質(イオン導電性)を示す物質のことである。固体高分子電解質として、本発明において好適に用いることができるのは、パーフルオロカーボンスルホン酸系陽イオン交換樹脂である。
【0014】
本発明の装置に使用する固体高分子電解質は、膜状のものであることが好ましい。固体高分子電解質の種類や性状にもよるが、本発明において固体高分子電解質膜という場合、厚さ約0.05mm〜0.2mm程度のものを指す。
【0015】
かかる固体高分子電解質から成る膜の両面に、電極を接触させて、本発明に用いる電極ユニットを形成する。本明細書において電極とは、各々に直流電流を印加することにより水電解の陽極及び陰極となるべきものであり、陽極または陰極のいずれか、あるいは陽極及び陰極の対のことを意味する。本発明において使用する陽極基材は、広く一般に導電性ダイヤモンド電極の基材として用いられているもので良いが、例えばニオブ、チタン等を用いることができる。また陽極基材の形状として、メッシュ状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状のものが挙げられる。

本発明において固体高分子電解質膜と陽極とを接触させる際に、金属を介して接触させることに特徴がある。そこで上記の陽極基材の少なくとも一部に、導電性の高い金属をコーティングすることが好ましい。陽極基材の金属コーティングは、陽極基材が固体高分子電解質膜と接触する部分のみに行うことができる。例えば、メッシュ状の陽極基材を使用する場合には、格子の交点などに金属コーティングを施すことが好ましい。金属コーティングの方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、電解めっき、無電解めっきなどの湿式めっき法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの乾式方法が挙げられる。また金属塩を陽極基材に塗布して、熱分解により蒸着させる焼成法であっても良い。
【0016】
コーティングする金属は、比抵抗が低く(例えば比抵抗10−4Ω・cm以下)、電気を流しやすいものが好ましい、例えば、銅、金、銀、イリジウム、白金などが挙げられる。
【0017】
本発明において「導電性ダイヤモンド電極」という場合、電極材料の少なくとも一部に導電性ダイヤモンドによるコーティングを施した電極のことを指す。本発明において、特に陽極として好適に用いられる電極は、導電性ダイヤモンド電極である。したがって、上記の金属コーティングした電極材料の少なくとも一の面に導電性ダイヤモンドをコーティングすることが好ましい。好ましくは金属コーティングした面と反対側の面に導電性ダイヤモンド電極をコーティングする。電極材料に導電性ダイヤモンドを成膜し、導電性ダイヤモンド電極を製造する方法として、化学蒸着法(以下、「CVD」と云う)が挙げられ、現在、主にホットフィラメントCVDとマイクロ波プラズマCVDの二種類の方法が知られている。これらの方法は、双方とも高圧をかけない減圧下での人工ダイヤモンドの合成法である。
【0018】
マイクロ波プラズマCVDでは、水素雰囲気下で数百ppmから数%のメタン、アセトン、その他ダイヤモンドの炭素原となる有機物気体に2.4GHz程度のマイクロ波を照射してプラズマを生成させる。生成するプラズマ近傍に600〜1000℃の温度に維持した基板をおくと、この基板上にダイヤモンド膜が成長する。ダイヤモンド膜に導電性を持たせるために、水素雰囲気下にメタンガス以外に例えばジボラン、酸化硼素等の硼素源を混在させると、p型の半導体ダイヤモンド膜が成長する。マイクロ波プラズマCVDにより、主にシリコンウエハー基板にダイヤモンドが成膜されており、センサー等の用途開発が期待されている。一方、ホットフィラメントCVDでは、炭素原として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、不飽和炭化水素等の一種類以上の炭化水素、エタノール等のアルコール類、またはアセトン等のケトン類が、数%含まれている水素ガス雰囲気下で、タングステン、タンタルまたはルテニウム等のフィラメントを約2000℃までに加熱すると、フィラメント近傍に設置してある基板にダイヤモンド膜が成長する。
【0019】
導電性ダイヤモンドによる電極材料のコーティングは、電極が固体高分子電解質膜と接触しない側の面にのみ行えばよい。すなわち、電極材料が固体高分子電解質膜と接触する側の面には、導電性金属コーティングも導電性ダイヤモンドコーティングも施されていない部分、つまり電極材料が裸になっている部分が存在しても良い。これは、例えば電極材料としてチタンやニオブを用いる場合、電解反応開始後に電極材料が裸になっている部分に酸化膜が形成され、その部分では電流が流れにくくなり、実質的に反応が起こらなくなるので、電極材料が裸になっている部分が存在してもオゾン生成に悪影響を及ぼさないからである。さらに、電極材料の片面のみに導電性ダイヤモンドをコーティングすれば、電極製造コストを低減させることができる。もちろん、電極材料両面に導電性ダイヤモンドをコーティングしても構わない。また、電極材料への金属コーティング、及び導電性ダイヤモンドコーティングの順序は、上記の通り金属、導電性ダイヤモンドの順でも、またその逆でも良い。
【0020】
このようにして、電極材料、導電性金属コーティング及び導電性ダイヤモンドコーティングから構成される導電性ダイヤモンド電極を得、次にこれを固体高分子電解質膜と組み合わせて電極ユニットを形成する。電極ユニットは、固体高分子電解質膜の一の面と他の面とに、各々陽極及び陰極を接触させて構成する。陽極側には、上述した導電性ダイヤモンド電極を用いるのが好ましい。陰極側には、通常電気分解装置において使用される電極材料(チタン、ステンレス等)を使用することができるが、陰極側にも金属コーティングをした導電性ダイヤモンド電極を使用してもよい。陰極、陽極双方に導電性ダイヤモンド電極を使用すると、電解が進行するにつれ形成されうる陰極表面のスケールを除去するために、該陰極と陽極の極性を変換するだけでよく、非常に便利である。
【0021】
電極の導電性金属コーティングをした部分を固体高分子電解質膜の方に接触させ、固体高分子電解質膜と電極とを金属を介して接触させるようにし、こちらを陽極とする。固体高分子電解質膜のもう一方の面にも同様に、電極の導電性金属コーティングをした部分を接触させるか、あるいはチタン、ステンレス等の金属を接触させ、こちらを陰極とする。このように固体高分子電解質膜を2つの電極で挟むようにして電極ユニットを構成する。例として、陽極、陰極ともに金属コーティングを施した導電性ダイヤモンド電極を使用して形成した電極ユニットの断面図を図1に記載する。
【0022】
電極ユニットを電解槽内に好適な方法で設置し、電極ユニットの各々の電極と直流電源とを接続し、本発明のオゾン生成装置が完成する。電解槽は一般的なステンレス製あるいは樹脂製のものを用いることができる。
【0023】
本発明のオゾン生成装置は、オゾンが溶解した水(以下、「オゾン水」と云う)を低エネルギーで生成することが可能となる。オゾンは一般に放電法で製造されているが、放電法ではオゾン生成器の他、空気冷却装置、除湿装置、オゾン溶解装置など、多くの附帯設備が必要である。ところが本発明のオゾン生成装置に必要な設備は、基本的には電極ユニット、これを内部に有する電解槽および直流電源のみである。さらに本発明の装置に使用する電極ユニットは、固体高分子電解質膜と電極とが金属を介して接触しているため、固体高分子電解質膜と電極との接触面での電気抵抗が減少し、これに伴い消費エネルギーを低減させることができる。
【0024】
本発明の装置を使用して電解法によりオゾンを製造すると、水中に直接オゾンを生成させることができるため、放電法で必要なオゾン溶解プロセスがなく、効率的にオゾン水を製造することが可能である。また、本発明の装置に使用する電極は二酸化鉛電極ではなく導電性ダイヤモンド電極であるため、水中に鉛が溶出する問題がなく、オゾン水を直接使用することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の装置に使用する電極ユニットでは、固体高分子電解質膜と電極とが金属を介して接触されている。これにより、固体高分子電解質膜と電極との接触面における電気抵抗が低減し、電解反応における印加電圧を低くすることができる。
【0026】
また、電極として導電性ダイヤモンド電極を使用することにより、水中への鉛の流出という問題がなくなり、オゾン水をそのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の装置と、これを使用したオゾン水の製造法の例を、図面を用いて説明する。各図面は、本発明の装置及び製造方法の例を示すものであり、本発明の思想を限定することを意味するものではない。
【0028】
図1は、本発明の装置に使用する電極ユニットの断面を模式的に描いたものである。図中、101:電極ユニット、102:固体高分子電解質膜、103:電極材料、104:導電性ダイヤモンドコーティング、105:金属コーティングである。図1に記載される電極ユニットは、陽極、陰極とも導電性ダイヤモンド電極を使用しているが、オゾン生成の目的のためには、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であればよい。
【0029】
固体高分子電解質膜102としてはパーフルオロカーボンスルホン酸系陽イオン交換樹脂を用いることができる。このような樹脂として、例えばナフィオン(登録商標、デュポン)が挙げられる。固体高分子電解質膜102は、厚さ約0.05mm〜0.2mmのものを使用することが好適である。
【0030】
電極材料103は、導電性ダイヤモンド電極の基材として一般に用いられるものであれば如何なるものを使用しても良く、最も好適には、チタン、ニオブを用いることができる。また電極材料の形状はメッシュ状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状のものを使用することができ、図1にはエキスパンドメタル状の電極材料を使用した例を模式的に表している。電極材料の厚さは、好適には約0.5mm〜3mm程度のものを用いる。固体高分子電解質膜102と電極材料103とが接する箇所に金属コーティング105を施す。金属コーティング105は、固体高分子電解質膜102と電極材料103とが接する部分にのみ施されていれば良く、図1においてはエキスパンドメタル状電極材料の格子の交点部分に各々金属コーティングを行った例を模式的に表す。一方、固体高分子電解質膜102と接触しない側の面には、導電性ダイヤモンドコーティング104を施す。導電性ダイヤモンドコーティング104は、好適には化学蒸着法(CVD)により電極材料103表面上に形成することができる。
【0031】
電極材料103のうち、導電性ダイヤモンドコーティング104を施していない側の面、すなわち金属コーティング105を施した側の面を固体高分子電解質膜102に接触させる。図1には、2枚の導電性ダイヤモンド電極にて固体高分子電解質膜102を挟み、電極ユニット101を構成した例を表す。かかる電極ユニット101を例えばステンレスあるいは樹脂製の適当な電解槽に入れ、電極を直流電源と接続し、本発明のオゾン生成装置を構成することができる。
【0032】
次に図2は、本発明のオゾン生成装置を使用して、オゾン水を製造する方法を模式的に説明したものである。図中、201:電極ユニット、206:電解槽、207:直流電源、208:タンク、209:水、210:ポンプ、211:流量計、212:サンプル弁、213:ドレインである。
【0033】
オゾン水製造用の水は、好ましくは水道水以上の純度を有する水、特に好ましくは純水である。具体的には電気伝導度0.5mS/cm以下、TOC5mg/L以下の水であることが好ましい。特に有機物の溶解ができる限り少ない水であることが好ましい。水に有機物が溶解していると、本発明のオゾン生成装置により電気分解を行う際に、導電性ダイヤモンド電極表面上で生成したOHラジカルが、有機物の分解に消費され、オゾンの生成量が減少するからである。タンク208に入った水209をポンプ210にて吸い上げ、流量計211にて流量を測定しながら電解槽206に送液する。電解槽206に水が入ったところで、直流電源207のスイッチを入れ、直流電流を通電する。本発明の方法によりオゾン水を製造するためには、水の流速約10〜100L/時間程度に維持し、電流密度約10〜100mA/cm程度で電解を行うのが好ましい。電極ユニット201の陽極表面では、電気化学反応により酸素とオゾンが生成し、陰極表面では水素が生成する。生成したオゾンが溶解した水は弁から取り出して使用することができる。
【0034】
本発明のオゾン生成装置にて生成したオゾン水は、オゾンの殺菌力、酸化力を利用して、主に水処理に用いることができる。例えば、処理対象となる水の流れの途中に直接、本発明のオゾン生成装置を接続し、処理対象の水に直接オゾンを生成させる方法に用いることができる。あるいは、本発明のオゾン生成装置により製造したオゾン水を処理対象の水に混和して利用することができる。処理対象の水が比較的清澄な水である場合は、直接生成させるのが効率が良く、処理対象の水が比較的汚濁している場合は、オゾン水の形で混和させる方がよい。先に説明したとおり、処理対象の水に有機物が含まれていると、導電性ダイヤモンド電極表面で生成したOHラジカルが無駄に消費されてしまい、効率的にオゾンが生成しないことがあるからである。
【0035】
オゾンは、一般に知られている細菌・ウイルス・藻類などの殺菌、不活性化、または殺藻、着色成分対策としての脱色、着臭味成分対策としての脱臭又は味の改善、有機物酸化分解、鉄やマンガンなどの金属成分の除去、難生分解性物質の生物易分解性化などに利用できる。したがって、このような処理を必要としている水が、処理対象水となりうる。
【0036】
さらに塩素系酸化剤よりも酸化力が強く、かつ分解すると無害な酸素になるオゾンは応用範囲が広い。例えば、パルプの漂白などに利用することが挙げられる。パルプの漂白の際に塩素系漂白剤を使用すると、漂白パルプや工程洗浄排水中に有機塩素化合物が含まれることとなり、この排水中の塩素化合物の処理コストがかかる。また製品の紙に残留しうる塩素が紙ゴミとして焼却炉で処分される際、ダイオキシンなどの環境汚染物質の発生源となりうるため、塩素系漂白をオゾン漂白に置き換えることができれば、環境的にも好ましい。
【0037】
さらに、工場、発電所ならびに半導体関連施設における冷却水系では、水管路内壁や熱交換器表面に微生物が付着し、送水量の低下、水管路の閉塞、熱交換効率の低下を引き起こしうる。かかる水管路途中に本発明のオゾン生成装置を接続するか、あるいは本発明のオゾン生成装置にて製造したオゾン水を水管路に間歇的に注入することにより、生物付着を防止することが可能となる。スクラバー水の浄化、膜を用いる水処理において膜表面に生成するスライムの除去にも使用できる他、半導体プロセスにおける薬液洗浄に代わる洗浄方法として、オゾン水を利用することができる。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
チタンエキスパンドメタル30mm×100mmの片面にホットフィラメントCVD法を用いて導電性ダイヤモンドコーティングを施した。
【0039】
続いて、導電性ダイヤモンドコーティングを施した面とは反対側の面にサンドブラスト処理により粗化処理を行い、フッ化水素で表面の活性処理を行った後、白金めっきを施した。塩化白金酸4g/L、リン酸アンモニウム20g/L、リン酸ナトリウム100g/Lの組成を持つめっき液を使用し、pH6.8、温度70℃、電流密度10mA/cmの条件下にてめっきした。
【0040】
ナフィオン324(登録商標、デュポン)パーフルオロスルホン酸系陽イオン交換膜(厚さ:0.15mm)を固体高分子電解質膜として、前記固体高分子電解質膜を前記白金めっき面が固体高分子電解質膜に接するように2枚の電極で挟んで電極ユニットを作成した。
【0041】
上記のように作成した電極ユニットの陽極陰極それぞれに直流電源を接続し、次いで図2に示す配列にてオゾン水生成装置を構成した。電極間に電流密度50mA/cmの直流電流を印加し、水道水を流量100L/時間で流して、オゾン生成能を評価した。
【0042】
その結果、上記条件下においてオゾン発生量は4.1g/kVAであった。
[実施例2]
実施例1の電極ユニットにおいて、チタン電極材料の両面とも導電性ダイヤモンドコーティングを行い、白金めっきを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に電極ユニットを作成した。実施例1と同条件下にて、オゾン生成能を評価した。
【0043】
その結果、オゾン発生量は3.6g/kVAであった。
実施例1のように電極材料に白金めっきを施し、白金めっきをした側の面を固体高分子電解質膜に接触させたことにより、固体高分子電解質膜と電極との接触抵抗が減少し、約15%の消費エネルギーを低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のオゾン生成装置にて生成したオゾン水は、オゾンの殺菌力、酸化力を利用して、主に水処理に用いることができる。オゾンは、一般に知られている細菌・ウイルス・藻類などの殺菌、不活性化、または殺藻、着色成分対策としての脱色、着臭味成分対策としての脱臭又は味の改善、有機物酸化分解、鉄やマンガンなどの金属成分の除去、難生分解性物質の生物易分解性化などに利用できる。さらに塩素系酸化剤よりも酸化力が強く、かつ分解すると無害な酸素になるオゾンは、例えばパルプの漂白などにも用いることができる。さらに、工場、発電所ならびに半導体関連施設における冷却水系では、水管路内壁や熱交換器表面に付着する微生物対策として、本発明の装置を利用することができる。半導体プロセスにおける薬液洗浄に代わる洗浄方法としても、本発明のオゾン生成装置及びこれにより製造したオゾン水を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の装置に使用する電極ユニットの断面の模式図である。
【図2】本発明のオゾン生成装置を使用して、オゾン水を製造する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
101:電極ユニット、102:固体高分子電解質膜、103:電極材料、104:導電性ダイヤモンドコーティング、105:金属コーティング
201:電極ユニット、206:電解槽、207:直流電源、208:タンク、209:水、210:ポンプ、211:流量計、212:サンプル弁、213:ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜の一の面と他の面とに、各々直流電流を印加する陽極及び陰極を接触させて成る電極ユニットを含む、固体高分子電解質型オゾン生成装置であって、該固体高分子電解質膜と該陽極とが金属を介して接触しており、該陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
固体高分子電解質膜と陽極とを介在する金属が、比抵抗10−4Ω・cm以下の金属である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
固体高分子電解質と陽極とを介在する金属が、白金、イリジウム、金、銀及び銅から成る群から選択される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
該陽極及び陰極が、いずれも導電性ダイヤモンド電極であり、該固体高分子電解質膜と該陽極及び陰極とが金属を介して接触している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
固体高分子電解質膜の一の面と他の面とに各々陽極及び陰極を接触させた電極ユニットを内部に有する電解槽に、水を供給し、該陽極及び陰極に直流電流を印加することによりオゾン水を製造する方法であって、該固体高分子電解質膜と該陽極とを金属を介して接触させ、該陽極に導電性ダイヤモンド電極を用いることを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−70701(P2007−70701A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260426(P2005−260426)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】