説明

固定化紫外線吸収剤およびその製造方法

【目的】 紫外線吸収能、安全性および熱安定性に優れた固定化紫外線吸収剤を提供する。
【構成】 Si−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体に由来する部分に紫外線吸収剤を結合してなる固定化紫外線吸収剤を構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シリコーンポリマー被覆固体に紫外線吸収剤を結合させた固定化紫外線吸収剤およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から紫外線吸収剤は化粧料、塗料、容器ならびにシートに用いられている。従来公知の紫外線吸収剤は多数あるが、その中で安息香酸系、アントラニル酸系、ケイ皮酸系およびベンゾフェノン系化合物がよく用いられている。特に化粧料の場合、これら化合物は紫外線防御能があることが認められるが、高濃度で使用した場合に、経皮吸収、光毒性、刺激性、さらに熱安定性に問題があった。このように紫外線吸収剤はその配合に制限があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、前記した従来技術の問題点、即ち経皮吸収、安全性、配合制限および熱安定性における問題を解決し、固定化しても紫外線吸収能が損なわれず、特に安全性に優れた固定化紫外線吸収剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先に、特に物理的強度に優れて無機質固体の表面を改質することにより、それらに誘導される有機残基を化学的諸条件に対する安定性の付与手段として、それらの表面をシリコーンポリマーで被覆する方法並びにこのような被覆シリコーンポリマーの反応性基を利用して機能性をシリコーンポリマー被覆無機質固体にさらに付与することに成功した。(特開昭63-171678号公報参照)これらには、紫外線吸収剤をその上あるいはその中に含有した粉体に、シリコーンポリマー被覆できることが開示されてるが、本発明者らは紫外線防御能、安全性、安定性などにさらに優れたものを開発すべく研究を重ねた結果、特定のシリコーンポリマー被覆固体に紫外線吸収剤を結合させたものが、紫外線吸収効果、熱安定性および安全性に優れていることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0005】即ち、本発明に従えば、Si−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体に由来する部分に紫外線吸収剤を結合してなる固定化紫外線吸収剤が提供される。
【0006】本発明の好ましい態様によれば、前記固体部分のSi−H基由来のケイ素原子がビニル基またはアリル基を有する紫外線吸収剤と共有結合してなる請求項1記載の固定化紫外線吸収剤が提供される。
【0007】本発明に従えば、またSi−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体のSi−H基をビニル基またはアリル基を有する紫外線吸収剤と反応させる工程を含んでなる前記紫外線吸収剤の製造方法が提供される。
【0008】以下、本発明の固定化紫外線吸収剤およびその製造方法について具体的に説明する。本発明で用いるSi−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体は、それ自体公知であり、例えば本発明者らの先願に係わる特開昭63-171678号公報に具体的に記載されるものを上げることが出来る。被覆するシリコーンポリマーとしてはその種類およびその被覆方法を問わないが、シリコーンポリマーの前駆体なるシリコーンモノマーまたはオリゴマーを固体表面上に吸着させ、その表面上で重合させることにより均一なシリコーン被覆を形成したものが好ましい。この被覆に都合のよいシリコーンモノマーまたはオリゴマーとしては、一般式化1のシリコーン化合物を使用することができる。
【0009】
【化1】(R1HSiO)a (R23SiO)b (R456SiO1/2 )c(式中、R1,R2及びR3は相互に独立に水素原子であるかまたはハロゲン原子少なくとも1個で置換されていることのある炭素数1〜10の炭化水素基であるが、ただしR1,R2及びR3が同時に水素原子であることはないものとし、そしてR4,R5及びR6は相互に独立水素原子であるかまたはハロゲン原子少なくとも1個で置換されていることのある炭素数1〜10の炭化水素基であり、aは1以上の整数であり、cは0または2であるが、但し、cが0である場合にはa+bが3以上の整数であるものとし、そしてa+b+cの最大値は10000であるものとし、この化合物は−SiH部分を少なくとも1個含むものとする)
【0010】前記式化1において基R1〜R6はそれぞれ、各繰り返し単位においてそれぞれ異なるものであることができる。具体的には次式化2、化3、化4、及び化5で示される化合物をあげることができる。
【0011】
【化2】


(式中、R1は低級アルキル基例えばメチル基もしくはエチル基またはアリール基例えばフェニル基であり、a=3〜7である)
【0012】
【化3】


(式中、R1及びR2は低級アルキル基またはアリール基であり、R3はアルキル基またはアリール基であり、a+bは3〜100である)
【0013】
【化4】


(式中、aは好ましくは1〜500、特に好ましくは2〜5である)
【0014】
【化5】


(式中、a+bは1〜500であり、a≧2である)
また、化4及び化5中の1個またはそれ以上のメチル基が、エチル基、プロピル基またはフェニル基等1個またはそれ以上で置き換えたものを使用することもできる。
【0015】このような化合物としては、例えば、ジハイドロジェンヘキサメチルシクロテトラシロキサン、トリハイドロジェンペンタメチルシクロテトラシロキサン、テトラハイドロジェンテトラメチルシクロテトラシロキサン、ジハイドロジェンオクタメチルシクロペンタシロキサン、テトラハイドロジェンヘキサメチルシクロペンタシロキサン及びペンタハイドロジェンペンタメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シリコーン化合物ならびに1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,9,9,9−ノナメチルペンタシロキサンおよび1,1,1,3,5,7,9,11,11,11−デカメチルヘキサシロキサンなどの直鎖状シリコーン化合物を挙げることができる。これらのシリコーン化合物は、例えば前記公開公報に示される固体表面上での重合によって、固体表面上に堆積したシリコーンポリマー被覆を形成することができる。このポリマーはその対応するモノマーあるいはオリゴマーの一般式から理解できるように反応性ヒドロシリル(Si−H)基を有する。したがって、Si−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体に由来する部分とは、前記シリコーンポリマー被覆固体に含まれるSi−H基が少なくとも1個Si−となったものをいう。
【0016】シリコーン化合物との接触、及び重合は気相処理によって行うことが最も好ましいが、前記シリコーン化合物を溶媒に溶かし粉体を分散させた後に乾燥させて粉体表面上にシリコーンポリマー被膜を形成させることもできるし、溶媒に溶かしたシリコーン化合物を直接噴霧し加熱乾燥してシリコーンポリマー被膜を形成させることもできる。即ち、液相処理を利用することができ、液相処理の場合には、処理後乾燥すれば、シリコーンポリマー被膜が表面上に形成され、それだけでも安定な粉体が得られる。気相処理の場合は乾燥工程さえ不要である。たとえば、適当な混合機(回転ボールミル,振動式ボールミル,遊星型ボールミル,サンドミル,アトライター,パグミル,ポニミキサー,プラネタリーミキサー,擂潰機)等の中に粉体を装入し、メカノケミカルに処理することによって実施する。
【0017】次にSi−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体に由来する部分とビニル基およびアリル基を有する紫外線吸収剤との反応について説明する。
【0018】この反応で使用される紫外線吸収剤は、たとえば4-アミノ安息香酸(以下PABAと略す)、PABAブチルエステル、PABAグリセリルエステル、N,N-ジイソプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAアミルエステル、N,N-ジメチルPABAイソオクチルエステル等のPABA系紫外線吸収剤、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、ジプロピレングリコールサリシレート、エチレングリコールサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート4-イソプロピルシンナメート、2,5-ジイソプロピルシンナメート、2,4-ジイソプロピルシンナメート、p-メトキシシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメートシクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、モノ-2-エチルヘキサノイル-ジ(-p-メトキシシンナモイル)グリセリン、3,4,5-トリメトキシシンナメート、3,4,5-トリメトキシシンナメート、1-メチルアリル-3,4,5-トリメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4'-メトキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4'-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2'-メチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3- アリル-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(n-オクトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4'-クロルベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-3,3-ジスルホン酸塩等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニエチルエステル4-イミダゾールアクリル酸[ウロカニン酸誘導体]、2-フェニル-5-メチルベンゾヘキサゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸、ベンジルフタリド、アントラセン、2-(2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾリルカーボネート、ジアニソイルメタン、2-ヒドロキシ-4'-ヒドロキシジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、4-メトキシ-4'-ヒドロキシジベンゾイルメタン、4-ヒドロキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、2,3-ジヒドロキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、2,3-ジメトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、3,4-ジメトキシ-4',5'-ジ-t-ブチルジベンゾイルメタン、3,5-ジ-t-ブトキシ-4',5'-ジ-t-ブチルジベンゾイルメタン、3,4,5-トリメトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンテン-2-オン、グアニン、シンコニジン、ベラトロール等の紫外線吸収剤が挙げられ、紫外線吸収剤の中でビニル基またはアリル基をひとつ以上含んだものである。
【0019】前記シリコーンポリマー被覆固体のSi−H基由来部分とビニル基およびアリル基を含有した紫外線吸収剤との共有結合は、一般には、形成原料のビニル基と前記Si−H基とを、それ自体公知の方法によって反応させてケイ素−炭素共有結合を形成させることによって行うことができる。(例えば特開昭63−171678号公報参照)。
【0020】本発明によって提供される前記紫外線吸収剤は、本発明の他の態様である紫外線吸収剤の製造方法によって有利に製造することができる。
【0021】本発明によれば、例えば特開昭63−171678号公報に記載の方法に準じて調製したSi−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体をビニル基およびアリル基を含有した紫外線吸収剤と反応させる。即ち、Si−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体と、例えばビニル基を含む紫外線吸収剤とを、2−プロパノール、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、水及びその混合溶媒中、塩化白金酸触媒の存在下で、室温から使用溶媒の沸点までの範囲の温度にて反応させるのが好ましい。
【0022】前記したように、Si−H基を含む固体部分とビニル基を有する紫外線吸収剤との反応は、溶媒中で行うのが好ましいが、この反応は300℃以下の気相で行うこともでき、使用できる触媒としては、前記触媒を初めとして白金族触媒、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の化合物が適しているが、特にパラジウムと白金の化合物が好適である。パラジウム系触媒としては塩化パラジウム(II)、塩化テトラアンミンパラジウム(II)酸アンモニウム、酸化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)等があげられる。白金系触媒としては、塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)アンモニウム、酸化白金(II)、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、酸化白金(IV)、二硫化白金(IV)、硫化白金(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム等があげられる。また、これらのパラジウム系化合物、白金系化合物にトリ−n−アルキル(例えば炭素数1〜8)メチルアンモニウムクロライドやトリ−n−アルキルアミンを加えて水/有機溶媒系でイオン対抽出を行った後の有機溶媒層を用いることもできる。さらに、アミン触媒、例えばトリブチルアミンまたは重合開始剤を使用することが出来る。前記付加反応は紫外線、γ線、プラズマ等を利用して実施することもできる。こうして導入される紫外線吸収剤部分の結合量は、シリコーンポリマー被覆に用いる原料(例えば、前記一般式化1、化2、または化3の化合物)を選ぶことまたは反応時間を選ぶことによって任意に調整することが出来る。
【0023】こうして本発明の一つの態様の固定化紫外線吸収剤が得られる。なお、本発明による固定化紫外線吸収剤は、塗料、化粧料、容器、プラスチック、紙、繊維、シート、ガラス、プリズム、レンズ等に利用することができる。
【0024】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものではないことは言うまでもない。
【0025】実施例1−1:微粒子シリカゲルのシリコーンポリマー被覆容積100リットルの回転式ダブルコーン型反応槽(ステンレススチール製、保温ジャケット付き)中に粒径50nmのシリカゲル4kgを入れた。その反応槽及びそれに直結させた容積10リットルの処理液供給タンク(ステンレススチール製、保温ジャケット付き)の温度は、80℃に加熱した熱媒体を循環ポンプで熱媒体加熱槽から各保温ジャケットに供給することにより、80℃に保持した。処理液供給タンクに窒素ガスを1.5リットル/minで供給して、処理液をバブリングさせた。なお、反応槽には凝縮器を取り付け、窒素ガスがそこから放出され、未反応の処理剤が回収できるようにした。また、反応槽は10分間隔で1分間回転させ、反応槽内で微粒子シリカゲルを混合する操作を8時間繰り返し、処理粉体を取り出した。得られた処理粉体は著しい疎水性を示した。
【0026】実施例1−2実施例1−1の微粒子シリカゲルを微粒子二酸化チタンに変えて、同様の処理を行い、シリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを得た。
【0027】実施例1−3実施例1−1の微粒子シリカゲルをセリサイト10kgに変えて、同様の処理を行い、シリコーンポリマー被覆セリサイトを得た。
【0028】実施例1−4実施例1−1の微粒子シリカゲルをタルク10kgに変えて、同様の処理を行い、シリコーンポリマー被覆セリサイトを得た。
【0029】実施例1−5微粒子二酸化チタン20gを遊星形ボールミルに入れ5分間混合摩砕後、メチルハイドロジェンポリシロキサン(分子量6000)1gを加えてさらに混合摩砕を3時間行った。得られた処理粉体は著しい疎水性を示した。
【0030】実施例1−6実施例1−5の微粒子二酸化チタンをセリサイトに変えて、同様の処理を行い、シリコーンポリマー被覆セリサイトを得た。
【0031】実施例1−7実施例1−5の微粒子二酸化チタンをシリカゲルに変えて、同様の操作を行い、シリコーンポリマー被覆シリカゲルを得た。
【0032】実施例1−8実施例1−5の微粒子二酸化チタンを亜鉛華に変えて、同様の操作を行い、シリコーンポリマー被覆亜鉛華を得た。
【0033】実施例2−1:シリコーンポリマー被覆微粒子シリカゲルへの紫外線吸収剤付加実施例1−1のシリコーンポリマー被覆微粒子シリカゲル100gを3リットルのナス型フラスコに取り、これに触媒として塩化白金酸10mg、9−ビニルアントラセン6g及びトルエン0.5リットルを加えてマントルヒーター中で6時間加熱還流させた後、ろ過し、トルエン2リットルで洗浄し、脱気乾燥を行い、アントラセンで表面修飾された固定化紫外線吸収剤を得た。
【0034】実施例2−2実施例1−2のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0035】実施例2−3実施例1−3のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。図1には、拡散反射法による赤外線吸収スペクトルを示した。
【0036】実施例2−4実施例1−4のシリコーンポリマー被覆タルクを用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0037】実施例2−5実施例1−5のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0038】実施例2−6実施例1−6のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0039】実施例2−7実施例1−7のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0040】実施例2−8実施例1−8のシリコーンポリマー被覆亜鉛華を用いて、実施例2−1と同様の処理を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0041】実施例3−1実施例1−1のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例2−1と同様の操作をアリル-3,4,5-トリメトキシシンナメートにて行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0042】実施例3−2実施例1−2のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0043】実施例3−3実施例1−3のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0044】実施例3−4実施例1−4のシリコーンポリマー被覆タルクを用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0045】実施例3−5実施例1−5のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0046】実施例3−6実施例1−6のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0047】実施例3−7実施例1−7のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0048】実施例3−8実施例1−8のシリコーンポリマー被覆亜鉛華を用いて、実施例3−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0049】実施例4−1実施例1−1のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例2−1と同様の操作を2-(2-ヒドロキシ-3-アリル-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールにて行い、ベンゾトリアゾールで表面修飾された固定化紫外線吸収剤を得た。
【0050】実施例4−2実施例1−2のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0051】実施例4−3実施例1−3のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0052】実施例4−4実施例1−4のシリコーンポリマー被覆タルクを用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0053】実施例4−5実施例1−5のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0054】実施例4−6実施例1−6のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0055】実施例4−7実施例1−7のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0056】実施例4−8実施例1−8のシリコーンポリマー被覆亜鉛華を用いて、実施例4−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0057】試験例1:紫外線吸収効果試験(その1)実施例2−3で得た固定化紫外線吸収剤(シリコーンポリマー被覆セリサイトにアントラセン結合)と未処理のセリサイトをそれぞれヒマシ油に10%分散させそれを石英板上に厚さ10μm塗布し紫外線吸収スペクトルを測定した。
【0058】図2に示したように、実施例2−3の固定化紫外線吸収剤は未処理のセリサイトに比べて紫外線吸収効果が格段に向上することがわかった。
【0059】試験例2:紫外線吸収効果試験(その2)実施例2−3で得た固定化紫外線吸収剤と、それと同濃度の紫外線吸収剤を未処理のセリサイトと単純混合したものを試験例1と同様の操作によって紫外線吸収スペクトルを測定した。
【0060】図3に示したように、紫外線吸収剤を単純に混合したものとそれを固定化した実施例2−3ではスペクトルに大きな違いはなく、固定化によって紫外線吸収効果が減少することはなかった。
【0061】試験例3:光毒性試験酵母(Saccharomyces cerevisiae)に対する毒性により光毒性を検討する方法を用いた。培地は4%ポテトデキストロース寒天培地をオートクレーブ処理(120℃-20min)したものを用い、酵母の接種はドライイースト30mgを20mlの滅菌ミリQ水に懸濁しイイースト0.1mlに対して上記寒天培地2mlの割合で混合し、培養用プレートに0.4ml/well重層した。次に、実施例2−3で得た固定化紫外線吸収剤及び希釈に用いた溶媒(アセトン)20μlをフィルターペーパーディスク(φ=6mm)に滴下し、15分放置して乾燥させた後、酵母を接種した6穴マイクロプレートの穴の中央に密着させた。その後、長波長紫外線50J/cm2を照射し、25℃に設定されたふ卵器中で72時間培養した。光毒性の評価は、フィルターペーパーディスクの周辺に阻止帯が観察されない、または照射プレートと非照射プレートにおける阻止帯の差が2mm未満は(−)2mm以上では(+)とした。その結果、表1に示すように9-ビニルアントラセンや陽性対照物質であるアントラセンでは光毒性の評価は(+)であるのに対し、実施例2−3のものは試験を行った全ての濃度において阻止帯の形成は認められず光毒性の評価は(−)であった。よって、固定化することにより安全性が格段に向上することがわかった。
【0062】
【表1】
──────────────────────────────── 試験物質 試験濃度(%) * 阻止帯(mm) 光毒性の評価──────────────────────────────── 実施例2−3 9.0 ** 0 1.8 ** 0 − 0.36 ** 0 0.072 ** 0──────────────────────────────── 9-ビニル 1.1 7.3 アントラセン 0.22 5.3 + 0.044 4.1 0.0088 1.9──────────────────────────────── アントラセン 1.0 11.8 0.2 10.9 + 0.04 10.5 0.008 10.1────────────────────────────────* フィルターペーパーディスクへの添加濃度 **懸濁液非照射プレートには阻止帯は認められなかった。
【0063】次に、本発明に係る固定化紫外線吸収剤を配合した各種皮膚外用剤の実施例について説明する。なお、各実施例の皮膚外用剤とも、皮膚刺激性、アレルギー性は認められず、皮膚に対する安全性は極めて高いものであった。
【0064】実施例5−1実施例1−1のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例2−1と同様の操作を2−ヒドロキシ−3−アリル−4−メトキシベンゾフェノンにて行い、ベンゾフェノンで表面修飾された固定化紫外線吸収剤を得た。
【0065】実施例5−2実施例1−2のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0066】実施例5−3実施例1−3のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0067】実施例5−4実施例1−4のシリコーンポリマー被覆タルクを用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0068】実施例5−5実施例1−5のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0069】実施例5−6実施例1−6のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0070】実施例5−7実施例1−7のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0071】実施例5−8実施例1−8のシリコーンポリマー被覆亜鉛華を用いて、実施例5−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0072】実施例6−1実施例1−1のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例2−1と同様の操作を4−アリロキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタンにて行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0073】実施例6−2実施例1−1のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0074】実施例6−3実施例1−3のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0075】実施例6−4実施例1−4のシリコーンポリマー被覆タルクを用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0076】実施例6−5実施例1−5のシリコーンポリマー被覆微粒子二酸化チタンを用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0077】実施例6−6実施例1−6のシリコーンポリマー被覆セリサイトを用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0078】実施例6−7実施例1−7のシリコーンポリマー被覆シリカゲルを用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0079】実施例6−8実施例1−8のシリコーンポリマー被覆亜鉛華を用いて、実施例6−1と同様の操作を行い、固定化紫外線吸収剤を得た。
【0080】
実施例7:ファンデーション 配 合 成 分 重量%(1)実施例3−3の固定化紫外線吸収剤 10.0(2)二酸化チタン 13.0(3)コロイダルカオリン 25.0(4)タルク 34.7(5)ベンガラ 1.0(6)黄酸化鉄 2.5(7)黒酸化鉄 0.1(8)流動パラフィン 8.0(9)セスキオレイン酸ソルビタン 3.5(10)グリセリン 2.0(11)エチルパラベン 0.2
【0081】(製法)上記成分(1)〜(7)を混合し、粉砕機を通して平均粒径1〜5μmに粉砕した。これを高速ブレンダーに移し、成分(10)を加えて混合した。別に成分(8),(9)及び(11)を混合し、均一にしたものを上記混合物に加えてさらに均一に混合した。これを粉砕機で処理し、ふるいを通し粒度を整えた後、圧縮成形し、ケーキ型ファンデーションを得た。
【0082】
実施例8:乳化ファンデーション 配 合 成 分 重量%(A) イオン交換水 43.5 コンドロイチン硫酸ナトリウム 1 乳酸ナトリウム 0.5 1,3-ブチレングリコール 3 メチルパラベン 適量(B) ジメチルポリシロキサン(20cs) 16 デカメチルシクロペンタシロキサン 5 シリコーン樹脂 1 セチルイソオクタネート 1 ポリオキシアルキレン変性 オルガノポリシロキサン(変性率 20%) 4 酸化防止剤 適量 香料 適量(C) 黄色酸化鉄 1 赤色酸化鉄 0.45 黒色酸化鉄 0.2 実施例2−2の固定化紫外線吸収剤 11.7 実施例2−3の固定化紫外線吸収剤 11.65
【0083】(製法)成分(B)を加熱溶解後、成分(C)の粉体を添加分散する。さらに予め溶解加熱しておいた成分(A)を添加乳化し室温まで冷却して乳化ファンデーションを得た。
【0084】
実施例9:プレストパウダー 配 合 成 分 重量%(1) 実施例2−6の固定化紫外線吸収剤 30(2) 実施例2−4の固定化紫外線吸収剤 65.8(3) 酸化鉄顔料 0.1(4) スクワラン 2.0(5) 2-エチルヘキシルパルミテート 2.0(6) 香料 0.1
【0085】(製法)成分(1),(2)及び(3)をヘンシェルミキサーで混合し、これに成分(4)及び(5)を加熱混合したものを吹き付け、混合後粉砕し、中皿に成型してプレストパウダーを得た。
【0086】
実施例10:紫外線防御スティック 配 合 成 分 重量%(1)実施例4−2の固定化紫外線吸収剤 20.0(2)実施例4−4の固定化紫外線吸収剤 10.0(3)実施例4−3の固定化紫外線吸収剤 11.0(4)酸化鉄(赤色、黄色、黒色) 0.5(5)カルナウバロウ 1.0(6)固形パラフィン 3.0(7)流動パラフィン 45.0(8)イソプロピルミリステート 8.0(9)ソルビタンセスキオレート 1.5(10)香料 適量
【0087】(製法)成分(7)(8)を釜に流し込み、80〜90℃に加温し成分(5)(6)を加えて溶解させる。これに成分(1)〜(4)を加えて均一に分散し、脱気後成分(10)を加えてゆるやかに撹拌する。これを80℃で容器に流し込み室温まで冷却することにより紫外線防御スティックを得た。
【0088】比較例1実施例8の処方において、実施例4−2の固定化紫外線吸収剤を未処理の二酸化チタンに置換した他は実施例8と同様にして比較例1の固定化紫外線吸収剤を得た。実施例8のものは、比較例1のものに比べ二酸化チタンの分散性が良く、きれいに仕上がり、日焼け止め効果の高いものであった。
【0089】
実施例11:口紅 配 合 成 分 重量%(1)炭化水素ワックス 3.0(2)カルナウバロウ 1.0(3)グリセリルイソステアレート 40.0(4)流動パラフィン 45.8(5)実施例3−2の固定化紫外線吸収剤 4.0(6)酸化鉄,セリサイト混合粉体 6.0(7)香料 0.2
【0090】(製法)成分(1)〜(4)を85℃で溶かし、その中に成分(5)(6)を撹拌しながら加えた。最後に、撹拌下で成分(7)を加えた。得られた混合物を容器に裝入した。こうして、優れた分散性を持つ所望の口紅が得られた。
【0091】
実施例12 日焼け止めクリーム 配 合 成 分 重量%(A)デカメチルシクロペンタシロキサン 42.0 ポリエチレングリコール 5.0 分散剤 適量(B)セチルアルコール 5.0 ワセリン 10.0 ジメチルポリシロキサン(10cs/25℃) 5.0 メチルフェニルポリシロキサン(20cs/25℃) 5.0 ミクロクリスタリンワックス 5.0 グリセリルモノステアレート 3.0 ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 3.0 香料 適量 防腐剤 適量 酸化防止剤 適量(C)実施例5−2の固定化紫外線吸収剤 5.0 着色顔料 適量
【0092】(製法)(A)相を加熱溶解した後(C)相を添加しホモミキサーで均一に分散させる。それに(B)相を加熱溶解したものを添加してよく攪拌し、ホモミキサーで均一に分散後、攪拌冷却することにより日焼け止めクリームを得た。
【0093】
実施例13 ボディパウダー 配 合 成 分 重量%(A)タルク 50.0 実施例6−4の固定化紫外線吸収剤 39.0 パール剤 1.0 着色顔料 適量(B)亜鉛華 3.0(C)ステアリン酸マグネシウム 4.0 流動パラフィン 1.0 殺菌剤 適量(D)香料 適量
【0094】(製法)(A)をブレンダーで混合する。これに(B)を添加してよく混合してから(C)を加え、調色した後、香料(D)を噴霧し均一に混ぜる。これを粉砕機で粉砕した後、ふるいを通すことによりボディパウダーを得た。
【0095】実施例14 塗料実施例4−5で得た固定化紫外線吸収剤20gとアクリル樹脂溶液(Mn48,200,Mw/Mn2.56)18gをガラスビーズ70gと共にペイントシェーカーで20分間混練して塗料を得た。
【0096】実施例15 容器実施例2−3で得た固定化紫外線吸収剤をポリエチレン中に2重量%混合して白色のポリスチレン広口瓶を射出成形した。
【0097】比較例2比較例として固定化紫外線吸収剤を混合しないで白色のポリスチレン広口瓶を射出成形した。
【0098】実施例13と比較例2の広口瓶からそれぞれ4cmX4cmの大きさのピースを切り取り紫外線吸収スペクトル(拡散反射法)を測定したところ実施例15で得られたピースの方に高い紫外線吸収効果がみられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施例2−3の固定化紫外線吸収剤の拡散反射法による赤外線吸収スペクトルである。
【図2】本発明にかかる実施例2−3の固定化紫外線吸収剤及び未処理のセリサイトの紫外線吸収スペクトルである。
【図3】本発明にかかる実施例2−3の固定化紫外線吸収剤及び紫外線吸収剤と未処理のセリサイトを単純に混合したものの紫外線吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Si−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体に由来する部分に紫外線吸収剤を結合してなる固定化紫外線吸収剤。
【請求項2】 固体が粉体である請求項1に記載の固定化紫外線吸収剤。
【請求項3】 Si−H基を含むシリコーンポリマー被覆固体のSi−H基にビニル基及びアリル基を有する紫外線吸収剤を反応させる工程を含んでなる請求項1または2記載の固定化紫外線吸収剤の製造方法。
【請求項4】 請求項1または2に記載の固定化紫外線吸収剤を含有した化粧料。
【請求項5】 請求項1または2に記載の固定化紫外線吸収剤を含有した塗料。
【請求項6】 請求項1または2に記載の固定化紫外線吸収剤を含有した容器。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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