説明

固液混合放射性廃液の処理装置および処理方法

【課題】固液分離しやすい放射性廃液を均一に、安定的に反応槽に供給できる装置および方法を提供すること。
【解決手段】比重の異なる2種以上の固形物を含む固液混合放射性廃液を所定の濃度に調整する固形物調整装置と、底部と側部とを連通するように循環ラインが具備されるとともに、前記調整装置から供給された所定の濃度に調整された前記廃液を攪拌する攪拌槽と、前記攪拌槽内で攪拌された廃液を反応させる反応槽と、を備え、前記調整装置から所定の濃度に調整された固液混合放射性廃液を前記攪拌槽内に導入し、前記循環ラインで前記廃液を循環させながら略均一に攪拌させた後、前記反応槽に供給させるようにしたことを特徴とする固液混合放射性廃液の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液混合放射性廃液の処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等において生じる固液混合放射性廃液の処分には、当該廃液を適当な反応槽において酸化分解などの反応を行い、当該反応液を、例えばセメント等の固化材により固化して廃棄する方法が用いられる。この際、廃棄体生成量を低減させる点から、一定組成の放射性廃液を反応槽に供給して処理することが有効である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−279726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一定組成の放射性廃液を反応槽に供給しても、該廃液が均一でない場合には、反応槽において、反応が十分に起こらない、反応が過度に激しくなる等の問題があった。
【0005】
また、前記固液混合放射性廃液が、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルター等、固液分離しやすい固体を含む場合には、攪拌棒等により廃液を攪拌するのみでは、均一な固液混合放射性廃液を得ることが困難な場合があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたもので、固液分離しやすい放射性廃液を所定の濃度で、均一に、安定的に反応槽に供給できる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の装置および方法により、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
【0008】
[1] 比重の異なる2種以上の固形物を含む固液混合放射性廃液を所定の濃度に調整する固形物調整装置と、
底部と側部とを連通するように循環ラインが具備されるとともに、前記調整装置から供給された所定の濃度に調整された前記廃液を攪拌する攪拌槽と、
前記攪拌槽内で攪拌された廃液を反応させる反応槽と、を備え、
前記調整装置から所定の濃度に調整された固液混合放射性廃液を前記攪拌槽内に導入し、前記循環ラインで前記廃液を循環させながら略均一に攪拌させた後、前記反応槽に供給させるようにしたことを特徴とする固液混合放射性廃液の処理装置。
【0009】
[2] 前記固形物調整装置は、
比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留された分離槽と、
前記未処理放射性廃液が貯留された前記分離槽内に下方から上方に向かって水を供給し、当該分離槽内で前記2種以上の固形物を拡散、沈降させ、これにより前記2種以上の固形物を前記分離槽内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離させる逆洗分離手段と、
前記逆洗分離手段により層状に分離した前記2種以上の各層の固形物をそれぞれ別々に貯留する固形物貯留槽と、
前記各固形物貯留槽に取り分けられた各固形物を量り取り、比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を調製する調製手段と、を有する、[1]に記載の固液混合放射性廃液の処理装置。
【0010】
[3] 前記固液混合放射性廃液が、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターからなる群より選ばれる少なくとも1種の固形物を含む、[1]または[2]に記載の固液混合放射性廃液の処理装置。
[4] 前記固液混合放射性廃液がカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を含む、[3]に記載の固液混合放射性廃液の処理装置。
【0011】
[5] 比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を予め用意する準備工程と、
前記準備工程で得られた所定の濃度の前記廃液を循環させながら略均一に攪拌する攪拌工程と、
前記攪拌工程で攪拌された廃液を反応槽内に供給する供給工程と、を有することを特徴とする固液混合放射性廃液の処理方法。
【0012】
[6] 前記準備工程は、
前記比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留された分離槽の内部に、当該分離槽の下方から上方に向かって水を供給し、前記分離槽内で前記2種以上の固形物を拡散、沈降させ、これにより前記2種以上の固形物を前記分離槽内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離させる逆洗分離工程と、
前記逆洗分離工程により層状に分離した前記2種以上の各層の固形物をそれぞれ個別の固形物貯留槽内に取り分ける固形物取り分け工程と、
前記固形物取り分け工程により各固形物貯留槽内に取り分けられた固形物を、それぞれ量り取り、量り取った固形物と水とを混合させることで比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を調製する調製工程と、を有する、[5]に記載の固液混合放射性廃液の処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の固液混合放射性廃液の処理装置によれば、固液混合放射性廃液を反応させて処理する反応槽に、所定濃度の固液混合放射性廃液を均一に、安定的に供給することができる。
また、本発明の固液混合放射性廃液の処理装置は、安全性、操作性およびメンテナンス性に優れる。
さらに、本発明の固液混合放射性廃液の処理方法によれば、廃棄体の発生量が少なく、安価に、安全に放射性廃液を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る固液混合放射性廃液の処理装置の一例を示す概略模式図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る固液混合放射性廃液の処理装置の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明するが、下記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0016】
≪固液混合放射性廃液の処理装置≫
図1および図2は、それぞれ、本実施形態に係る固液混合放射性廃液の処理装置100、101の一例を示す概略模式図である。
本発明に係る固液混合放射性廃液の処理装置100,101は、比重の異なる2種以上の固形物を含む固液混合放射性廃液を所定の濃度に調整する固形物調整装置Aと、
底部と側部とを連通するように循環ライン2が具備されるとともに、前記調整装置Aから供給された所定の濃度に調整された前記廃液を攪拌する攪拌槽1と、
前記攪拌槽1内で攪拌された廃液を反応させる反応槽11と、を備え、
前記調整装置Aから所定の濃度に調整された固液混合放射性廃液を前記攪拌槽1内に導入し、前記循環ライン2で前記廃液を循環させながら略均一に攪拌させた後、前記反応槽11に供給させるようにしたことを特徴とする。
【0017】
本発明の処理装置100,101によれば、所定濃度の固液混合放射性廃液を均一に、安定的に反応槽11に供給することができる。また、本発明の処理装置は、安全性、操作性およびメンテナンス性に優れ、単純な流路で、流路が固形物で閉塞するおそれの少ない装置である。
本発明の処理装置を用いることで、廃棄体の発生量が少なく、安価に、安全に固液混合放射性廃液を処理することができる。
【0018】
前記固形物調整装置Aは、比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留された分離槽31と、
前記未処理放射性廃液が貯留された前記分離槽31内に下方から上方に向かって水を供給し、当該分離槽31内で前記2種以上の固形物を拡散、沈降させ、これにより前記2種以上の固形物を前記分離槽内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離させる逆洗分離手段と、
前記逆洗分離手段により層状に分離した前記2種以上の各層の固形物をそれぞれ別々に貯留する固形物貯留槽41,51と、
前記各固形物貯留槽41,51に取り分けられた各固形物を量り取り、比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を調製する調製手段と、を有することが好ましい。
【0019】
本発明の固液混合放射性廃液の処理装置は、前記固形物調整装置Aを有しているため、反応槽11に供給される廃液組成を正確に把握することができる。そのため、前記反応槽で放射性廃液を反応させる際に変動し得る廃液のpHの変化等を容易に予測し制御することが可能であり、前記の反応に際して必要に応じて用いられるpH調整剤などの添加剤の使用量を大幅に削減することができる。このため、本発明の処理装置を用いると、放射性廃液の処理において最終的に生じる廃棄体の生成量を削減することが可能になり、安価に固液混合放射性廃液を処理することができる。
【0020】
前記固液混合放射性廃液は、比重の異なる2種以上の固形物を含めば特に制限されないが、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターからなる群より選ばれる少なくとも1種の固形物を含むことが好ましく、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を含むことが好ましい。
また、前記固液混合放射性廃液に含まれる固形物は、水より重いことが好ましい。
【0021】
前記固液混合放射性廃液に含まれる固形物の平均粒径は、処理したい放射性廃液に含まれる固形物に応じて変わるが、通常1〜1000μm、好ましくは10〜1000μmであり、カチオン交換樹脂の場合、通常500〜850μmであり、アニオン交換樹脂の場合、通常450〜600μmである。なお、放射性廃液に含まれる固形物の平均粒径が前記範囲となるよう、整粒、粉砕、篩別等を行ってもよい。
【0022】
このように、固液混合放射性廃液に含まれるイオン交換樹脂などの固形物は、通常その平均粒径が大きいが、本発明の処理装置は、操作性およびメンテナンス性等に優れ、単純な流路であるため、流路が該固形物で閉塞するおそれは少ない。また、固形物の閉塞を防ぐため等の目的から、本発明の処理装置におけるライン等の管径は、処理する固形物の種類に応じて設計することが好ましい。たとえば、処理する廃液に固形物としてイオン交換樹脂が含まれる場合、管径は前記固形物の平均粒径の10〜100倍、好ましくは30〜80倍である。
【0023】
前記分離槽31には、比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留されており、分離水供給ライン32および排水ライン34が設けられている。なお、本発明において、分離水供給ライン32および排水ライン34を併せて「逆洗分離手段」ともいう。
【0024】
本発明の処理装置におけるライン等には、必要に応じて適宜ラインを開閉する弁および廃液等を流動させるポンプなどが設けられてもよい。また、本発明の処理装置は、放射性廃液を処理する際に用いられるため、特に安全性が求められ、放射性廃液により、槽やラインからの漏洩等が許されない。このため、本発明の処理装置における槽、ラインは、例えば、ステンレス、ハステロイ、ジルカロイ、チタン、チタン系合金、セラミックス、ガラスおよび塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種の材料から形成されることが好ましい。さらに、槽やラインは、必要に応じて、ライニング処理されたものを用いてもよい。
【0025】
また、前記「未処理放射性廃液」とは、後述する調製工程を経ていない放射性廃液のことを意味し、原子力発電所、使用済燃料再処理施設、原子力研究所等の原子力関連施設などで生じる、比重の異なる2種以上の固形物を含む放射性廃液そのままであってもよく、該廃液を分離槽31に貯留させる前に、予め何らかの処理をしたものであってもよい。
【0026】
前記分離槽31では、分離槽31内に下方から上方に向かって貯水槽33からの水を分離水供給ライン32を経て供給し、当該分離槽31内で前記比重の異なる2種以上の固形物を拡散させ、沈降させる。これにより、前記固形物が分離槽31内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離する(逆洗分離工程)。
【0027】
なお、分離槽31内に水を供給する際に、必要に応じて、分離槽31の上部に設けられた排水ライン34から分離槽31の外(例えば貯水槽33)に分離槽31内に貯留していた水を排出してもよい。
【0028】
前記固形物貯留槽41および51には、それぞれ、分離槽31から固形物を移送するための固形物移送ライン42および52と、固形物貯留槽41および51それぞれから攪拌槽1に固形物を供給するための固形物供給ライン61および62とが設けられている。
【0029】
前記逆洗分離手段により上下方向に層状に分離した前記2種以上の各層の固形物は、それぞれ、第1の固形物移送ライン42を経て第1の固形物貯留槽41に、また、第2の固形物移送ライン52を経て第2の固形物貯留槽51に貯留される(固形物取り分け工程)。具体的には、分離槽31内では、より比重の大きい固形物が槽31の最下部に沈降するため、該固形物が第1の固形物貯留槽41に貯留される。
【0030】
なお、図1および図2では、固形物貯留槽を2つ記載しているが、用いる放射性廃液に応じて、適宜固形物貯留槽の数を増やせばよい。つまり、用いる廃液が、比重の異なる3種以上の固形物を含む場合には、固形物貯留槽を3つ以上含む処理装置とすることができる。
【0031】
前記取り分け工程により各固形物貯留槽41,51に取り分けられた固形物は、攪拌槽1に供給する量が所定量となるようにそれぞれ量り取られ、調製手段により、比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液が調製される。該比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液は、好ましくは、前記量り取られた固形物と水とを混合することで調製される(調製工程)。また、この調製工程では、必要に応じてpH等を調整するための酸またはアルカリなどの添加剤をさらに添加してもよい。
【0032】
なお、前記「所定の濃度」は、固液混合放射性廃液を処理する反応方法等により、適宜選択されるが、固液混合放射性廃液中の固形物全体の濃度が所定の値であること、および、固液混合放射性廃液中の2種以上の固形物それぞれの濃度が所定の値であることを意味する。また、固液混合放射性廃液中の2種以上の固形物それぞれの割合が所定の値であることを意味する。
【0033】
例えば、前記所定の濃度に調整された固液混合放射性廃液中の固形物全体の濃度は、1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%であり、前記固液混合放射性廃液中に、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を含む場合、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との割合は、好ましくは略1:1である。
【0034】
前記調製工程において、前記量り取られた固形物と水とを混合する場合、この混合は、攪拌槽1に供給する際(攪拌槽1内)であってもよく、攪拌槽1に供給する前に予め混合しておいてもよい。
【0035】
前記調製手段は、固形物供給ライン61,62および組成調整ライン63、ならびに、必要に応じて設けられる組成調整槽71(図2)および調整液供給ライン72(図2)を含んでなる。
【0036】
なお、組成調整ライン63は、図1および図2に示すように、攪拌槽1または組成調整槽71のみに結合させてもよいし、必要に応じて、組成調整ライン63をさらに固形物供給ライン61および/または62に結合させてもよい。
【0037】
前記調製手段では、固形物貯留槽41,51に取り分けられた固形物を、攪拌槽1に供給する量が所定量となるようにそれぞれ量り取り、それぞれ、固形物供給ライン61,62を経て攪拌槽1に供給する。この際、攪拌槽1に供給される廃液が所定の濃度になるよう組成調整ライン63を経て、水を攪拌槽1に供給する。
【0038】
また、前記調製手段では、固形物貯留槽41,51に取り分けられた固形物および組成調整ライン63を経て供給される水を、図2に示すように、予め組成調整槽71に一旦貯留した後、調整液供給ライン72を経て攪拌槽1に供給してもよい。
【0039】
図2に示すように固形物供給ライン61,62に流量調整部64を設けることで、固形物貯留槽41,51に取り分けられた固形物を量り取り、組成調整ライン63に流量調整部64を設けることで、攪拌槽1に供給される廃液が所定の濃度になるように水を攪拌槽1または組成調整槽71に供給することができる。
【0040】
本発明では、以上の逆洗分離工程、固形物取り分け工程および調製工程等を併せて、「準備工程」ともいう。
【0041】
前記攪拌槽1には、固形物貯留槽41および51それぞれから攪拌槽1に固形物を供給するための固形物供給ライン61および62と、攪拌槽1に供給する廃液の固形物の濃度を調整するための組成調整ライン63が設けられている。
前記攪拌槽1には、さらに、底部と側部とを連通するように循環ライン2が設けられるとともに、前記固形物調整装置Aから供給された所定の濃度に調整された廃液を攪拌する攪拌棒3が設けられている。
【0042】
前記攪拌槽1では、固形物調整装置Aで得られる、比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を攪拌棒3で攪拌しながら、該攪拌槽1内下部付近に存在する廃液を攪拌槽1の底部より抜き出し、抜き出した廃液を循環ライン2を経て攪拌槽1の側部から攪拌槽1内に供給する(攪拌工程)。攪拌工程は、必要に応じて加温下で行ってもよい。
【0043】
なお、前記攪拌槽1の側部は、該槽1の底部より上方であれば特に制限されないが、攪拌翼の付いた攪拌棒を使用する場合には、該攪拌翼より上方であることが好ましい。
このような攪拌工程により、固液混合放射性廃液を略均一に攪拌させることができる。
【0044】
前記循環ライン2には、切り替え部4が設けられていることが好ましく、必要により、さらに、タイマー計測手段5が設けられていることが好ましい。
なお、前記切り替え部4は、固形物が溜まり、循環ラインが閉塞することを防ぐため、操作性およびメンテナンス性等を考慮すると、閉塞の危険がより小さく、形状が複雑でないバルブであることが好ましい。例えば、バタフライ弁、ゲート弁、ボール弁などが挙げられる。前記切り替え部4として、グローブ弁やニードル弁などを用いると、バルブ内部の構造が複雑であり、廃液中の固形物が堆積し、閉塞する可能性がある。
【0045】
前記反応槽11には、攪拌槽1で略均一に攪拌させた固液混合放射性廃液を反応槽11に供給するための攪拌物供給ライン12が設けられており、液位計測手段13および/またはガス排出計測手段13が設けられていることが好ましい。
【0046】
前記攪拌工程で得られた略均一に攪拌された固液混合放射性廃液を反応槽11に供給する方法として、好ましくは、(i)前記タイマー計測手段5により所定時間が計測された後に、攪拌槽1から反応槽11に、攪拌後の廃液を供給する方法、(ii)前記液位計測手段13の計測結果に基づいて、攪拌槽1から反応槽11に、攪拌後の廃液を供給する方法、(iii)前記ガス排出計測手段13の計測結果に基づいて、攪拌槽1から反応槽11に、攪拌後の廃液を供給する方法などが挙げられる。
【0047】
上記(i)〜(iii)の方法によれば、反応槽11内の放射性廃液の量を容易に所望の範囲に設定することができる。このため、反応槽11内での固形物の反応が十分に起こり、安価に、安全に、短時間で固液混合放射性廃液を処理することができる。
攪拌槽1から反応槽11に廃液を供給するには、例えば、前記切り替え部4を切り替えればよい。
【0048】
前記反応槽11では、前記(i)〜(iii)の方法などで供給された攪拌後の廃液を反応させる。該反応としては、固形物を湿式酸化分解する反応等が挙げられる。反応の際には、必要に応じて過酸化水素やpH調整剤等の添加剤を添加することができる。前記反応の条件は、特に限定されないが、100℃程度の加温、常圧下で行うことができる。
【0049】
本発明の処理装置によれば、固形物の濃度が所定の値に調整され、かつ、固形物が略均一に攪拌された固液混合放射性廃液が反応槽11に供給されるため、該反応槽11内で湿式酸化分解反応等を行う場合、該反応の停止、該反応が十分に起こらない、該反応が過度に激しくなるなどの問題が起こりにくい。このため、本発明の処理装置によれば、廃棄体の発生量が少なく、安価に、安全に、短時間で放射性廃液を処理することができる。
放射性廃液を処理する際には、特に安全性が求められるため、本発明の処理装置は、放射性廃液の処理に適している。
【0050】
≪固液混合放射性廃液の処理方法≫
本発明に係る固液混合放射性廃液の処理方法は、
比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を予め用意する準備工程と、
前記準備工程で得られた所定の濃度の前記廃液を循環させながら略均一に攪拌する攪拌工程と、
前記攪拌工程で攪拌された廃液を反応槽内に供給する供給工程と、を有することが好ましい。
【0051】
前記準備工程は、前記比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留された分離槽の内部に、当該分離槽の下方から上方に向かって水を供給し、前記分離槽内で前記2種以上の固形物を拡散、沈降させ、これにより前記2種以上の固形物を前記分離槽内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離させる逆洗分離工程と、
前記逆洗分離工程により層状に分離した前記2種以上の各層の固形物をそれぞれ個別の固形物貯留槽内に取り分ける固形物取り分け工程と、
前記固形物取り分け工程により各固形物貯留槽内に取り分けられた固形物を、それぞれ量り取り、量り取った固形物と水とを混合させることで比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を調製する調製工程と、を有することが好ましい。
【0052】
このような処理方法によれば、放射性廃液の酸化分解等の反応を、反応が急激に進むこと等がなく、均一に行うことができる。このため、本発明の固液混合放射性廃液の処理方法によれば、廃棄体の発生量が少なく、安価に、安全に放射性廃液を処理することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:攪拌槽
2:循環ライン
3:攪拌棒
4:切り替え部
5:タイマー計測手段
11:反応槽
12:攪拌物供給ライン
13:液位計測手段またはガス排出計測手段
31:分離槽
32:分離水供給ライン
33:貯水槽
34:排水ライン
41:第1の固形物貯留槽
42:第1の固形物移送ライン
51:第2の固形物貯留槽
52:第2の固形物移送ライン
61:第1の固形物供給ライン
62:第2の固形物供給ライン
63:組成調整ライン
64:流量調整部
71:組成調整槽
72:調製液供給ライン
100,101:処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の異なる2種以上の固形物を含む固液混合放射性廃液を所定の濃度に調整する固形物調整装置と、
底部と側部とを連通するように循環ラインが具備されるとともに、前記調整装置から供給された所定の濃度に調整された前記廃液を攪拌する攪拌槽と、
前記攪拌槽内で攪拌された廃液を反応させる反応槽と、
を備え、
前記調整装置から所定の濃度に調整された固液混合放射性廃液を前記攪拌槽内に導入し、前記循環ラインで前記廃液を循環させながら略均一に攪拌させた後、前記反応槽に供給させるようにしたことを特徴とする固液混合放射性廃液の処理装置。
【請求項2】
前記固形物調整装置は、
比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留された分離槽と、
前記未処理放射性廃液が貯留された前記分離槽内に下方から上方に向かって水を供給し、当該分離槽内で前記2種以上の固形物を拡散、沈降させ、これにより前記2種以上の固形物を前記分離槽内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離させる逆洗分離手段と、
前記逆洗分離手段により層状に分離した前記2種以上の各層の固形物をそれぞれ別々に貯留する固形物貯留槽と、
前記各固形物貯留槽に取り分けられた各固形物を量り取り、比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を調製する調製手段と、
を有する、請求項1に記載の固液混合放射性廃液の処理装置。
【請求項3】
前記固液混合放射性廃液が、フィルタースラッジ、グラニュール、焼却灰、イオン交換樹脂およびHEPAフィルターからなる群より選ばれる少なくとも1種の固形物を含む、請求項1または2に記載の固液混合放射性廃液の処理装置。
【請求項4】
前記固液混合放射性廃液がカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を含む、請求項3に記載の固液混合放射性廃液の処理装置。
【請求項5】
比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を予め用意する準備工程と、
前記準備工程で得られた所定の濃度の前記廃液を循環させながら略均一に攪拌する攪拌工程と、
前記攪拌工程で攪拌された廃液を反応槽内に供給する供給工程と、
を有することを特徴とする固液混合放射性廃液の処理方法。
【請求項6】
前記準備工程は、
前記比重の異なる2種以上の固形物を含む未処理放射性廃液が貯留された分離槽の内部に、当該分離槽の下方から上方に向かって水を供給し、前記分離槽内で前記2種以上の固形物を拡散、沈降させ、これにより前記2種以上の固形物を前記分離槽内で比重の差に基づいて上下方向に層状に分離させる逆洗分離工程と、
前記逆洗分離工程により層状に分離した前記2種以上の各層の固形物をそれぞれ個別の固形物貯留槽内に取り分ける固形物取り分け工程と、
前記固形物取り分け工程により各固形物貯留槽内に取り分けられた固形物を、それぞれ量り取り、量り取った固形物と水とを混合させることで比重の異なる2種以上の固形物を所定の濃度で含む固液混合放射性廃液を調製する調製工程と、
を有する、請求項5に記載の固液混合放射性廃液の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−159420(P2012−159420A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19904(P2011−19904)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)