説明

土木用アンカー取付装置、および土木用アンカー取付装置用ワッシャ

【課題】第1の目的として、ナットと座金との接合部分における止水効果の増大を期待することができ、さらに第2の目的として、ナットおよび座金が樹脂被覆されている場合、ナットと座金との接合部分における樹脂の剥がれを防止できると共に、締付けトルクへの影響を少なくすることができる、土木用アンカー取付装置を提供すること。
【解決手段】この発明の土木用アンカー取付装置1は、ネジの形成されたロックボルト等の長尺状の土木用アンカー11と、土木用アンカー11の頭部に螺着されるナット12と、土木用アンカー11が挿入される挿通孔が形成された角座金13と、角座金13の挿通孔の内径より大きい外径を有する最大外径部から角座金13の挿通孔の内径より小さい外径を有する最小外径部まで傾斜した円錐状傾斜面を有するテーパーワッシャ14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤や岩盤の補強や安定化などを図るために地山補強土等に使用されるナットと座金とを有する土木用アンカー取付装置、および土木用アンカー取付装置用ワッシャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤や岩盤の補強や安定化などを図るために地山補強土等に使用されるナットと座金を有する土木用アンカー取付装置では、例えば、底面に球面凸部を有するナットと、球面凹部またはテーパー部等を有する座金との組み合わせにより、法面や法枠構造物に形成されたボアホール挿入されたロックボルト等の土木用アンカーを固定している(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3730035号公報
【特許文献2】特許第4173511号公報
【特許文献3】特許第4211946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の特許文献1〜3の土木用アンカー取付装置では、ナットと座金とが直接接触しているので、ナットと座金との接合部分における止水が十分でない、という問題がある。
【0005】
また、ナットや座金は、錆の発生や腐食等を防止するため、一般に弾性のある樹脂により被覆(コーティング)しているので、ナットの締付時に樹脂被覆されたナットと座金との間の摩擦力により、その樹脂が剥がれる場合があり、その剥がれた部分から錆が発生したり、腐食等が発生するおそれがあると共に、樹脂同士の接触のため摩擦抵抗が大きくなり、締付けトルクに影響を与える、という問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、第1の目的として、ナットと座金との接合部分における止水効果の増大を期待することができ、さらに第2の目的として、ナットおよび座金が樹脂被覆されている場合、ナットと座金との接合部分における樹脂の剥がれを防止できると共に、締付けトルクへの影響を少なくすることができる、土木用アンカー取付装置、およびそこで用いる土木用アンカー取付装置用ワッシャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の土木用アンカー取付装置は、ネジの形成されたロックボルト等の長尺状の土木用アンカーと、前記土木用アンカーの頭部に螺着されるナットと、前記土木用アンカーが挿入される挿通孔が形成された座金と、前記座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する最大外径部から前記座金の挿通孔の内径より小さい外径を有する最小外径部まで傾斜した円錐状傾斜面を有する円錐状傾斜面付きワッシャと、を有することを特徴とする土木用アンカー取付装置にある。
ここで、前記ナットおよび前記座金は、樹脂被覆されている一方、前記円錐状傾斜面付きワッシャは、樹脂被覆されていない、ようにしても勿論よい。
また、前記ナットは、当該ナットを回転させる締付け工具が装着されても、前記締付け工具より締付けトルクが伝達されない頭部および胴部と、前記胴部に連続し、前記胴部より外径が大きいと共に、その外周側面に複数の角部が形成され、前記締付け工具が装着されて前記締付け工具より締付けトルクが伝達されることにより当該ナットを回転させるトルク伝達部と、前記トルク伝達部に連続し、前記座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する座金当接部と、を有し、前記トルク伝達部の複数の角部は、面取りされ、面取り部が形成されている、ようにしても勿論よい。
また、前記ナットは、前記トルク伝達部の複数の角部に形成された前記面取り部が、前記座金に近接する基部から当該ナットの頭部に向かうに従い当該ナット中心に近付くように傾斜している、ようにしても勿論よい。
また、前記ナットは、前記トルク伝達部の複数の角部に形成された前記面取り部が、前記座金に近接する基部から当該ナットの頭部に向かうに従い当該ナット中心に近付くように凹形状に傾斜している、ようにしても勿論よい。
また、前記ナットは、前記トルク伝達部の複数の角部に形成された前記面取り部間の側面部の中央が凹形状に窪んでいる、ようにしても勿論よい。
また、本発明の土木用アンカー取付装置用ワッシャは、ネジの形成されたロックボルト等の長尺状の土木用アンカーと、前記土木用アンカーの頭部に螺着されるナットと、前記土木用アンカーが挿入される挿通孔が形成された座金と、を有する土木用アンカー取付装置における前記ナットと前記座金との間に挿入されて使用される土木用アンカー取付装置用ワッシャであって、前記座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する最大外径部から前記座金の挿通孔の内径より小さい外径を有する最小外径部まで傾斜した円錐状傾斜面を有する、ことを特徴とする土木用アンカー取付装置用ワッシャである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の土木用アンカー取付装置および土木用アンカー取付装置用ワッシャでは、土木用アンカーの頭部に螺合するナットと、座金との間に、座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する最大外径部から座金の挿通孔の内径より小さい外径を有する最小外径部まで傾斜した円錐状傾斜面を有する円錐状傾斜面付きワッシャを挿入して、締付けるようにしたので、ナット締付時、円錐状傾斜面付きワッシャの円錐状傾斜面が、ナットのトルク伝達部や座金の挿通孔の接触部分の形状に馴染みながら変形するので、座金との密着性が従来よりも高くなり、止水効果の増大を期待することができ、本発明の第1の目的を達成できる。
また、ナットおよび座金が樹脂被覆され、円錐状傾斜面付きワッシャは樹脂被覆されていない場合には、ナット締付時、樹脂被覆されたナットと座金の樹脂被覆同士の接触摩擦が生じなくなり、ナットや座金の樹脂の剥がれを防止することができると共に、締付けトルクに影響を与えることを防止することができ、本発明の第2の目的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施の形態1の土木用アンカー取付装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る土木用アンカー取付装置の使用例を示す斜視図である。
【図3】法枠構造物に埋め込まれた実施の形態1の土木用アンカー取付装置の状態を示す全体断面図である。
【図4】(a),(b)は、それぞれ、図3におけるA部分の拡大断面図であり、法枠構造物に実施の形態1の土木用アンカー取付装置が垂直にまたは傾いて取り付けられた状態を示す部分断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のキャップナット12の正面図、平面図、断面図である。
【図6】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の土木用アンカー取付装置の角座金の平面図、正面図である。
【図7】(a)〜(d)は、それぞれ、実施の形態1の土木用アンカー取付装置のテーパーワッシャ14の斜視図、平面図、正面図、断面図である。
【図8】実施の形態1の土木用アンカー取付装置の連結順序を示す断面図である。
【図9】(a),(b)は、それぞれ、土木用アンカー取付装置のキャップナットを締付ける締付け工具であるソケットレンチやトルクレンチとその連結状態を示す図である。
【図10】キャップナット締付け時における実施の形態1のキャップナットと、ソケットレンチのソケット内側面との接触状態を示す図である。
【図11】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態2の土木用アンカー取付装置のキャップナットの正面図、平面図である。
【図12】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態2の土木用アンカー取付装置のキャップナットの他の例の正面図、平面図である。
【図13】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態3の土木用アンカー取付装置のキャップナットの正面図、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る土木用アンカー取付装置の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る実施の形態1の土木用アンカー取付装置1の構成例を示す斜視図、図2は、本発明に係る土木用アンカー取付装置の使用例を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1は、外周面にネジの形成されたロックボルト等の長尺状の土木用アンカー11と、土木用アンカー11の頭部に螺着される樹脂被覆されたナットしてのキャップ状のナット(以下、本明細書では、「キャップナット」と称する。)12と、土木用アンカー11が挿入される挿通孔131が形成された樹脂被覆された角座金13と、後述する円錐状傾斜面付きワッシャ(以下、本明細書では、「テーパーワッシャ」と称する。)14とを有する。
【0013】
図1に示すように構成された実施の形態1の土木用アンカー取付装置1は、図2に示すように、自然斜面あるいは切土斜面等の法面2に構築されたコンクリート製の法枠構造物3等の交点部分に挿入され、土圧、地震および降雨等により発生するすべり力に対し、地山全体の安定を図るものである。
【0014】
図3は、法枠構造物3に埋め込まれた実施の形態1の土木用アンカー取付装置1の状態を示す全体断面図、図4(a),(b)は、それぞれ、図3におけるA部分の拡大断面図であり、法枠構造物3に実施の形態1の土木用アンカー取付装置1が垂直にまたは傾いて取り付けられた状態を示す全体断面図である。
【0015】
つまり、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1は、図3に示すように、角座金13が法枠構造物3表面に設置され、角座金13を貫通して土木用アンカー11が法枠構造物3および法面中に埋め込まれ、角座金13中央に形成された挿通孔131から地表に突出する土木用アンカー11先端部を、後述するようにテーパーワッシャ14を介してキャップナット12を螺合して取り付ける。
【0016】
また、図3に示すように、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1の土木用アンカー11は、その表面にネジ溝111が形成された全ネジボルト等から構成されている。ここで、土木用アンカー11の長さが足りない場合には、図3に示すように、カプラ11aや溶接等により複数の土木用アンカー11を継ぎ足して使用する。また、この土木用アンカー11の表面は、その全体が溶融亜鉛メッキ等により防錆処理されていると共に、キャップナット12との連結部分やカプラ11a(図3参照。)との連結部分等になる両端部あるいはその全長に亘り、さらに、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂やエポキシ樹脂等により樹脂被覆されている。
【0017】
なお、法枠構造物3および法面2中に埋め込まれた土木用アンカー11は、図4(a)に示すように、法枠構造物3および法面2表面に対し垂直に埋め込まれているのが理想であるが、実際には、地山斜面等の自然が対象なので、斜面に対して垂直な状態の削孔を形成することはなかなか難しく、完全に垂直に埋め込まれることはまれで、大抵は、図4(b)に示すように、法枠構造物3および法面2表面の鉛直線に対し多少傾いて取り付けられるため、キャップナット12も、法枠構造物3および法面2表面の鉛直線に対し傾いて取り付けられ、この状態で後述するソケットレンチ4等により締付けられる。
【0018】
図5(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のキャップナット12の正面図、平面図、断面図である。
【0019】
図5(a),(b)に示すように、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のキャップナット12の外表面は、半球状の頭部121と、円柱状の胴部122と、ソケットレンチ等の締付け工具が嵌り締付けトルクを受けるトルク伝達部123と、角座金13に当接する座金当接部124とを有し、これらの表面は、この土木用アンカー11の表面と同様に、その全体が溶融亜鉛メッキ等によりメッキされていると共に、錆や腐食等を防止するためPVB樹脂やエポキシ樹脂等により被覆されている。そして、図5(c)に示すように、キャップナット12の中心には、土木用アンカー11表面に形成されたネジ溝111と螺合するネジ孔125が形成されており、ネジ孔125の上端には、そのネジ孔125を封止する封止ネジ126が設けられている。
【0020】
トルク伝達部123は、図5(b)に示すように、切断面形状がほぼ6角形等で構成されており、6個の各角部は、面取りされて面取り部1231が形成されており、6つの面取り部1231間は、平面の側面部1232が形成されている。このため、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のキャップナット12では、後述するように、トルク伝達部123がソケットレンチ4等の締付け工具から締付けトルクを受けた場合、角部ではなく、角部が面取りされた面取り部1231がソケットレンチ4のソケット41内側面に当接して締付けトルクを受けるので、トルク伝達部123に被覆された樹脂被覆の剥がれを防止することができる。
【0021】
図6(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1の角座金13の平面図、正面図である。
【0022】
図6(a),(b)に示すように、角座金13の中心には、挿通孔131が形成されていると共に、角座金13の挿通孔131におけるキャップナット12の座金当接部124側は、テーパーワッシャ14の円錐状傾斜面141あるいはキャップナット12の座金当接部124における当接部位の形状に合わせた広口に傾斜した円錐形状の円錐形状面131aが形成されており、これらの表面は、この土木用アンカー11やキャップナット12の表面と同様に、その全体が溶融亜鉛メッキ等によりメッキされていると共に、錆や腐食等を防止するためPVB樹脂やエポキシ樹脂等により樹脂被覆されている。なお、円錐形状面131aの傾斜は、凹形状または凸形状に湾曲した球面形状でも、テーパー(直線傾斜)面形状のどちらでも良い。また、角座金13の挿通孔131に円錐形状面131aを設けることは任意であり、省略しても勿論よい。ここで、角座金13の挿通孔131の内径をφ1とする。
【0023】
図7(a)〜(d)は、それぞれ、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のテーパーワッシャ14の斜視図、平面図、正面図、断面図である。
【0024】
図7(a)〜(d)に示すように、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のテーパーワッシャ14は、角座金13の挿通孔131の内径φ1より大きい外径φ2を有する最大外径部141aから角座金13の挿通孔131の内径φ1より小さい外径φ3を有する最小外径部141bまで傾斜した円錐状傾斜面141と、円錐状傾斜面141の最小外径部141bに隣接する円筒部142とを有する。ここで、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のテーパーワッシャ14は、上述したように、樹脂被覆されてなく、キャップナット12締付時にある程度は、隙間に馴染むように締付けトルクや加重を受けて変形するものの、ちぎれたり、はみださないように、ステンレス製やアルミ等の腐食に強い金属等から構成されていることが望ましい。また、締付時の摩擦抵抗が低減されるようになるべくすべりの良い材料が望ましい。また、このテーパーワッシャ14の円錐状傾斜面141は、前述したように、直線的な傾斜面でも、キャップナット12の座金当接部124の接触部位の形状に合わせた球面凹形状に窪んだ傾斜面のどちらでも良い。なお、円筒部142は、省略されていて、円錐状傾斜面141のみからなるテーパーワッシャ14でも勿論良い。ただし、角座金13の挿通孔131の内径φ1より小さい外径φ3を有する円筒部142を有することにより、テーパーワッシャ14が角座金13の挿通孔131に対し斜めになったり、土木用アンカー11を挿入する前でも、角座金13の挿通孔131から外れることを防止することができるので、円筒部142を有することが望ましい。
【0025】
次に、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1の取り付けについて説明する。
【0026】
図8は、実施の形態1の土木用アンカー取付装置の連結順序を示す断面図、図9は、(a),(b)は、それぞれ、土木用アンカー取付装置のキャップナットを締付ける締付け工具であるソケットレンチ4やトルクレンチ5とそれらとの連結状態を示す図、図10は、キャップナット12締付け時における実施の形態1のキャップナット12と、ソケットレンチ4のソケット41内側面との接触状態を示す図である。
【0027】
まず、図8に示すように、法枠構造物3および法面2等に形成されたアンカーホール31に、土木用アンカー11を挿入し、セメントミルク等のコンクリート等のグラウト材を注入する。次に、角座金13を土木用アンカー11の突出部分に嵌め、挿通孔131の位置を合わせて角座金13を法枠構造物3の上面に設置する。なお、先に、アンカーホール31にグラウト材を注入した後に、土木用アンカー11を挿入しても勿論よい。その後、土木用アンカー11にテーパーワッシャ14を通し、ワッシャ14の上からキャップナット12を螺合する。
【0028】
そして、図9(a)に示すように、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のキャップナット12のトルク伝達部123の外形に合わせたソケット41を有するソケットレンチ4や、図9(b)に示すように、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1のキャップナット12のトルク伝達部123の外形に合わせたトルク伝達部51を有するメガネレンチ5等の締付け工具により、キャップナット12のトルク伝達部123に、そのソケットレンチ4のソケット41や、メガネレンチ5のトルク伝達部51を嵌合させて、キャップナット12を締め付ける。
【0029】
すると、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1では、図4(a),(b)等に示すように、キャップナット12の座金当接部124と、角座金13の挿通孔131との間に、テーパーワッシャ14が存在している。ここで、キャップナット12の座金当接部124と、角座金13の挿通孔131の円錐形状面131aとの接触は、球面と球面との接触でも、球面とテーパー(直線傾斜)面との接触でも、さらにはテーパー(直線傾斜)面とテーパー(直線傾斜)面との接触でも特にこだわらないが、この間の摩擦が最小化することを考慮すると、キャップナット12の座金当接部124と、角座金13の挿通孔131の円錐形状面131aとのうち、いずれか一方が球面で、他方がテーパー(直線傾斜)面であることが望ましい。
【0030】
そのため、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1では、ソケットレンチ4やメガネレンチ5により、キャップナット12を締付けてテーパーワッシャ14を介して角座金13に圧着固定させていくと、図6に示すように角座金13の挿通孔131におけるキャップナット12の座金当接部124側には円錐形状面131aが形成されているので、テーパーワッシャ14の円錐状傾斜面141がキャップナット12の座金当接部124と角座金13の挿通孔131の円錐形状面131aとの間に挟まれ、押圧力を受けることにより、座金当接部124と角座金13の挿通孔131の円錐形状面131aの形状に変形して馴染んで、座金当接部124と角座金13との密着性が従来よりも高くなる。これにより、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1によれば、テーパーワッシャ14を設けない従来の場合と比較して、座金当接部124と角座金13の挿通孔131との間の止水効果を向上させることができる。
【0031】
また、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1によれば、樹脂被覆された角座金13の挿通孔131と、同様に樹脂被覆されたキャップナット12の座金当接部124との間には、樹脂被覆されていないテーパーワッシャ14が存在しており、樹脂被覆された角座金13と、樹脂被覆されたキャップナット12とが直接接触しないので、角座金13やキャップナット12の接触部分の樹脂同士の摩擦がなくなり、その間の接触摩擦が減少する。これにより、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1によれば、樹脂被覆されてないテーパーワッシャ14を設けない従来の場合と比較して、角座金13やキャップナット12の接触部分の樹脂が剥がれることを防止することができ、その接触部分の防錆効果を向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1によれば、図5に示すように、キャップナット12のトルク伝達部123は、切断面形状が6角形等で構成されており、その角部は、面取りされて面取り部1231が形成されている。その結果、角部の角度より、面取り部1231の角の方が角度が大きくなるので、面取り部1231の方が、ソケットレンチ4のソケット41の内側面と接触しても、削れや磨耗等により樹脂被覆が剥がれ難くなる。このため、実施の形態1の土木用アンカー取付装置1では、締付け工具であるソケットレンチ4のソケット41がキャップナット12に挿入しやすいように多少のクリアランスないしはガタツキが設けられていて、キャップナット12のトルク伝達部123がかかるソケットレンチ4等から締付けトルクを受けても、図10に示すように、角部が面取りされた面取り部1231の角がソケットレンチ4のソケット41の内側面に面接触等により当接してトルクを受けて、削れや磨耗等により樹脂被覆が剥がれやすい角部が直接ソケット41の内側面に当らず、しかも面取り部123がキャップナット12のトルク伝達部1231とソケットレンチ4のソケット41との間のクリアランスやガタツキも吸収するので、キャップナット12のトルク伝達部123の角部の樹脂被覆の剥がれを防止することができ、その角部の防錆効果を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1では、キャップナット12および角座金13が樹脂被覆されているものとして説明したが、本発明では、これに限らず、キャップナット12および角座金13が樹脂被覆されていなくても勿論よい。ただし、この場合には、止水効果の増大を期待することができる、という本発明の第1の目的は達成することができるものの、ナットや座金の樹脂の剥がれを防止することができると共に、締付けトルクに影響を与えることを防止することができる、という本発明の第2の目的は達成できない。なお、このことは、後述する実施の形態2,3でも同様である。
【0034】
また、本実施の形態1の土木用アンカー取付装置1では、キャップナット12のトルク伝達部123の角部が面取りされ、面取り部1231が形成されているものとして説明したが、本発明では、これに限らず、テーパーワッシャ14を採用したことが第1の特徴であるので、トルク伝達部123の角部が面取りされてなく、面取り部1231が形成されていなくても勿論よい。
【0035】
実施の形態2.
次に、実施の形態2の土木用アンカー取付装置で使用するキャップナット12’,12”について、図11および図12を参照して説明する。なお、キャップナット12’,12”以外の構成は、上記実施の形態1と同様なので、これらの説明は省略し、必要であれば、実施の形態1のものを参照して説明する。また、実施の形態2の土木用アンカー取付装置では、実施の形態1のテーパーワッシャ14を使用しても、使用しなくても、どちらでも良い。
【0036】
図11(a),(b)は、それぞれ、実施の形態2の土木用アンカー取付装置のキャップナット12’の正面図、平面図である。
【0037】
図11(a),(b)に示すように、実施の形態2の土木用アンカー取付装置のキャップナット12’のトルク伝達部123’は、実施の形態1のトルク伝達部123と同様にその角部が面取りされて面取り部1231’が形成されているだけでなく、面取り部1231’における角座金13に近接する基部1231a’から当該キャップナット12’の胴部122側の先端部1231b’に向かうに従い、面取り部1231’の表面が当該キャップナット12’の中心に近付くように直線的に傾斜している。
【0038】
従って、本実施の形態2の土木用アンカー取付装置のキャップナット12’,12”によれば、上記実施の形態1の土木用アンカー取付装置のキャップナット12と同様の効果が得られると共に、本実施の形態2のキャップナット12’のトルク伝達部123’がソケットレンチ4等の締付け工具から締付けトルクを受けても、角座金13に近接する面取り部123の基部1231a’周辺が、主に、ソケットレンチ4のソケット41内側面に当接してトルクを受け、当該キャップナット12’の胴部122側の先端部1231b’周辺はほとんど接触せず、実施の形態1のトルク伝達部123の場合より、ソケット41との接触面積が減少するので、この点でも、キャップナット12’のトルク伝達部123’の角部の樹脂被覆の剥がれをより防止することができ、その角部の防錆効果を向上させることができる。
【0039】
なお、ここでは、図11(a),(b)に示すように、キャップナット12’のトルク伝達部123’の面取り部1231’は、角座金13に近接する基部1231a’から当該キャップナット12’の胴部122側の先端部1231b’に向かうに従い、面取り部1231’の表面が当該キャップナット12’ナット中心に近付くように直線的に傾斜しているものとして説明したが、本発明では、これに限らず、図12(a),(b)に示すように、面取り部1231”における角座金13に近接する基部1231a”から当該キャップナット12”の胴部122側の先端部1231b”に向かうに従い、面取り部1231”の表面が当該キャップナット12”の中心に近付くように凹形状で湾曲して傾斜させるように形成したキャップナット12”でも勿論よい。
【0040】
実施の形態3.
次に、実施の形態3の土木用アンカー取付装置のキャップナット12”’について説明する。なお、キャップナット12”’以外の構成は、上記実施の形態1,2のキャップナット12,12’,12”と同様なので、これらの構成の説明は省略し、必要であれば、実施の形態1のものを参照して説明する。また、実施の形態3の土木用アンカー取付装置では、実施の形態2の土木用アンカー取付装置と同様に、実施の形態1のテーパーワッシャ14を使用しても、使用しなくても、どちらでも良い。
【0041】
図13(a),(b)は、それぞれ、実施の形態3の土木用アンカー取付装置のキャップナット12”’の正面図、平面図である。
【0042】
図13(a),(b)に示すように、実施の形態3の土木用アンカー取付装置のキャップナット12”’のトルク伝達部123”’は、実施の形態1のトルク伝達部123と同様にその角部が面取りされて面取り部1231が形成されているだけでなく、面取り部1231間の側面部1232’の中央が凹形状に窪んでいる形状にしている。なお、実施の形態3のキャップナット12”’のトルク伝達部123”’の面取り部1231は、実施の形態1の面取り部1231のように傾斜していなくても、また、図11および図12に示す実施の形態2の面取り部1231’,1231”のように直線的または凹形状に傾斜していても勿論よい。
【0043】
従って、本実施の形態3の土木用アンカー取付装置のキャップナット12”’によれば、上記実施の形態1,2の土木用アンカー取付装置のキャップナット12’,12”’と同様の効果が得られると共に、本実施の形態3のキャップナット12”’のトルク伝達部123”’がソケットレンチ4等の締付け工具から締付けトルクを受けても、トルク伝達部123”’の複数の角部に形成された面取り部1231のみがソケットレンチ4のソケット41の内壁に接触して締付けトルクを受け、当該キャップナット12”’のトルク伝達部123”’の面取り部1231間の側面部1232’がほとんど接触せず、ソケットレンチ4等との接触面積が減少するので、この点でも、キャップナット12のトルク伝達部123”’の樹脂被覆の剥がれをより防止することができ、その角部の防錆効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 土木用アンカー取付装置
11 土木用アンカー
12,12’,12”,12”’ キャップナット(ナット)
121 頭部
122 胴部
123,123’,123”,123”’ トルク伝達部
1231,1231’,1231” 面取り部
1232,1232’ 側面部
124 座金当接部
13 角座金(座金)
131 挿通孔
131a 円錐形状面
14 テーパーワッシャ(円錐状傾斜面付きワッシャ)
141 円錐状傾斜面
2 法面
3 法枠構造物
4 ソケットレンチ(締付け工具)
41 ソケット
5 メガネレンチ(締付け工具)
51 トルク伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジの形成されたロックボルト等の長尺状の土木用アンカーと、
前記土木用アンカーの頭部に螺着されるナットと、
前記土木用アンカーが挿入される挿通孔が形成された座金と、
前記座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する最大外径部から前記座金の挿通孔の内径より小さい外径を有する最小外径部まで傾斜した円錐状傾斜面を有する円錐状傾斜面付きワッシャと、
を有することを特徴とする土木用アンカー取付装置。
【請求項2】
請求項1記載の土木用アンカー取付装置において、
前記ナットおよび前記座金は、樹脂被覆されている一方、
前記円錐状傾斜面付きワッシャは、樹脂被覆されていない、
ことを特徴とする土木用アンカー取付装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の土木用アンカー取付装置において、
前記ナットは、
当該ナットを回転させる締付け工具が装着されても、前記締付け工具より締付けトルクが伝達されない頭部および胴部と、
前記胴部に連続し、前記胴部より外径が大きいと共に、その外周側面に複数の角部が形成され、前記締付け工具が装着されて前記締付け工具より締付けトルクが伝達されることにより当該ナットを回転させるトルク伝達部と、
前記トルク伝達部に連続し、前記座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する座金当接部と、を有し、
前記トルク伝達部の複数の角部は、面取りされ、面取り部が形成されている、
ことを特徴とする土木用アンカー取付装置。
【請求項4】
請求項3記載の土木用アンカー取付装置において、
前記ナットは、
前記トルク伝達部の複数の角部に形成された前記面取り部が、
前記座金に近接する基部から当該ナットの頭部に向かうに従い当該ナット中心に近付くように傾斜している、
ことを特徴とする土木用アンカー取付装置。
【請求項5】
請求項4記載の土木用アンカー取付装置において、
前記ナットは、
前記トルク伝達部の複数の角部に形成された前記面取り部が、
前記座金に近接する基部から当該ナットの頭部に向かうに従い当該ナット中心に近付くように凹形状に傾斜している、
ことを特徴とする土木用アンカー取付装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかの一の請求項に記載の土木用アンカー取付装置において、
前記ナットは、
前記トルク伝達部の複数の角部に形成された前記面取り部間の側面部の中央が凹形状に窪んでいる、
ことを特徴とする土木用アンカー取付装置。
【請求項7】
ネジの形成されたロックボルト等の長尺状の土木用アンカーと、
前記土木用アンカーの頭部に螺着されるナットと、
前記土木用アンカーが挿入される挿通孔が形成された座金と、を有する土木用アンカー取付装置における前記ナットと前記座金との間に挿入されて使用される土木用アンカー取付装置用ワッシャであって、
前記座金の挿通孔の内径より大きい外径を有する最大外径部から前記座金の挿通孔の内径より小さい外径を有する最小外径部まで傾斜した円錐状傾斜面を有する、
ことを特徴とする土木用アンカー取付装置用ワッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−140985(P2012−140985A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292348(P2010−292348)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】