説明

圧力タンクの異常検知方法および給水装置

【課題】封入圧力の低下などの圧力タンクの異常を精度よく検知することができる圧力タンクの異常検知方法および圧力タンクの異常検知機能を有する給水装置を提供する。
【解決手段】本発明の圧力タンクの異常検知方法は、給水装置10のポンプ14の回転速度を監視し、ポンプ14の回転が完全に停止する前にポンプ14が再始動した場合には、圧力タンク36に異常が生じていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力タンクの異常検知方法および給水装置に係り、特にポンプを駆動して集合住宅などの建物に給水を行うための給水装置に用いられる圧力タンクの異常検知方法および圧力タンクの異常検知機能を有する給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどの中層または高層の建物では、水道本管からの水道水をポンプにより加圧して需要先の給水末端(給水栓や給湯器など)に供給する給水装置が用いられている。通常、給水装置が供給すべき水量は需要先の水の使用量に依存して大きく変動し、例えば、夜間などの水の使用量が少ない時間帯においては供給水量が大幅に減少する。このため、省エネルギーの観点から、水の使用量が一定以下に低下したときはポンプを停止させるようにしている。このとき、ポンプを直ちに停止させず、一時的にポンプの運転速度を上げて給水装置内に設けられた圧力タンク内に水を保持させる。このようにすることで、ポンプを再び始動しなくても、しばらくの間は圧力タンクから水が需要先に供給される。
【0003】
水が使用されるにつれて圧力タンク内の水は少なくなり、建物内部の給水配管内の水圧(すなわちポンプの吐出側の圧力)が低下する。そして、この吐出側圧力がポンプの始動圧力以下にまで低下すると、圧力センサがこれを検知し、ポンプが再始動される。その後、再び、水の使用量が少なくなると、ポンプを加速させて圧力タンクに蓄圧した後、ポンプが停止される。このようして、水の使用量とポンプの吐出側圧力とに基づいてポンプの停止と再始動とが繰り返される。
【0004】
給水装置に用いられる圧力タンクとしては、内部にダイヤフラム(隔壁)を配置したダイヤフラム式圧力タンクが一般である。この圧力タンクの内部には予め空気が封入されており、圧力タンクに流入した水はダイヤフラムを介して空気を圧縮する。圧力タンクとポンプとの間には逆止弁が配置されており、この逆止弁と圧力タンクとにより、ポンプが停止した後においても給水配管内の水圧が高圧に維持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイヤフラム式圧力タンクは、過度に加圧された状態で長期間使用されると、通常の使用に比べてダイヤフラムが早く劣化し、場合によっては破損してしまう。ダイヤフラムが破損して圧力タンク内部の空気がなくなると、給水配管内の圧力は水の使用により急激に低下し、極めて短い時間で始動圧力以下に低下してしまう。このため、ポンプの始動頻度が多くなり、ポンプの寿命が短くなるという問題が生じる。従って、圧力タンクに異常が生じた場合には速やかにこれを検知し、必要に応じて圧力タンクの補修または交換を行うことが必要となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、封入圧力の低下などの圧力タンクの異常を精度よく検知することができる圧力タンクの異常検知方法およびこのような異常検知機能を有する給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、圧力タンクの異常検知方法であって、給水装置のポンプの回転速度を監視し、前記ポンプの回転が完全に停止する前に前記ポンプが再始動した場合には、前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプの回転が完全に停止する前に該ポンプが再始動した場合にはカウントに1を加算し、前記カウントが所定の基準数に達したときに前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記判断は、前記ポンプの目標圧力の下限値と前記ポンプの吸込側圧力との差が所定の基準値以上であることを条件として行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記ポンプの吐出側に設けられた吐出管と、前記吐出管に接続された圧力タンクと、前記吐出管に設けられた逆止弁と、前記吐出管内の圧力を検出する圧力検出器と、前記吐出管の水量が所定の過小水量に達したことを検出する水量検出器と、前記ポンプの吐出し圧力が所定の圧力に維持されるように前記モータの回転速度を制御する制御部と、前記ポンプの回転速度を検出する回転速度検出器とを備え、を備え、前記制御部は、前記吐出管の水量が前記所定の過小水量に達したときに、前記ポンプの吐出し圧力を所定の停止圧力まで上昇させて前記ポンプを停止させ、前記吐出管内の圧力が前記停止圧力から所定の始動圧力にまで低下したときに前記ポンプを再始動させ、前記ポンプの回転が完全に停止する前に前記ポンプが再始動した場合には、前記圧力タンクに異常が生じていると判断するように構成されていること特徴とする給水装置である。
【0009】
本発明の一参考例は、圧力タンクの異常検知方法であって、給水装置のポンプの吐出側圧力が前記ポンプの停止圧力から前記ポンプの始動圧力に低下するまでの圧力低下時間を計測し、前記圧力低下時間と所定の基準時間とを比較し、前記圧力低下時間が前記基準時間以下の場合にはカウントに1を加算し、前記カウントが所定の基準数に達したときに前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
【0010】
上記参考例の好ましい態様は、前記判断は、前記ポンプの目標圧力の下限値と前記ポンプの吸込側圧力との差が所定の基準値以上であることを条件として行うことを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記基準時間は、前記圧力タンクが正常に機能しているときにおける、前記吐出側圧力が前記停止圧力から前記始動圧力に低下するまでの最短時間であることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の参考例は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記ポンプの吐出側に設けられた吐出管と、前記吐出管に接続された圧力タンクと、前記吐出管に設けられた逆止弁と、前記吐出管内の圧力を検出する圧力検出器と、前記吐出管の水量が所定の過小水量に達したことを検出する水量検出器と、前記ポンプの吐出し圧力が所定の圧力に維持されるように前記モータの回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出管の水量が前記所定の過小水量に達したときに、前記ポンプの吐出し圧力を所定の停止圧力まで上昇させて前記ポンプを停止させ、前記吐出管内の圧力が前記停止圧力から所定の始動圧力にまで低下したときに前記ポンプを再始動させ、前記吐出管内の圧力が前記停止圧力から前記始動圧力に低下するまでの圧力低下時間を計測し、前記圧力低下時間と所定の基準時間とを比較し、前記圧力低下時間が前記基準時間以下の場合にはカウントに1を加算し、前記カウントが所定の基準数に達したときに前記圧力タンクに異常が生じていると判断するように構成されていることを特徴とする給水装置である。
【0012】
本発明の他の参考例は、圧力タンクの異常検知方法であって、給水装置のポンプが停止してから再始動するまでの間において、第1時点における前記ポンプの吐出側圧力と第2時点における前記ポンプの吐出側圧力との圧力差を算出し、前記圧力差と所定の基準圧力差とを比較し、前記圧力差が前記基準圧力差以上である場合には前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
【0013】
上記参考例の好ましい態様は、前記基準圧力差は、前記圧力タンクが正常に機能していないときに測定された、前記第1時点における吐出側圧力と前記第2時点における吐出側圧力との圧力差であることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記圧力差が前記基準圧力差以上である場合にはカウントに1を加算し、前記カウントが所定の基準数に達したときに前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記判断は、前記ポンプの目標圧力の下限値と前記ポンプの吸込側圧力との差が所定の基準値以上であることを条件として行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の参考例は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記ポンプの吐出側に設けられた吐出管と、前記吐出管に接続された圧力タンクと、前記吐出管に設けられた逆止弁と、前記吐出管内の圧力を検出する圧力検出器と、前記吐出管の水量が所定の過小水量に達したことを検出する水量検出器と、前記ポンプの吐出し圧力が所定の圧力に維持されるように前記モータの回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出管の水量が前記所定の過小水量に達したときに、前記ポンプの吐出し圧力を所定の停止圧力まで上昇させて前記ポンプを停止させ、前記吐出管内の圧力が前記停止圧力から所定の始動圧力にまで低下したときに前記ポンプを再始動させ、前記ポンプが停止してから再始動するまでの間において、第1時点における前記吐出管内の圧力と第2時点における前記吐出管内の圧力との圧力差を算出し、前記圧力差と所定の基準圧力差とを比較し、前記圧力差が前記基準圧力差以上である場合には前記圧力タンクに異常が生じていると判断するように構成されていること特徴とする給水装置である。
【0015】
本発明の他の参考例は、圧力タンクの異常検知方法であって、給水装置のポンプが停止してから再始動されるまでのポンプ停止時間を計測し、前記ポンプ停止時間と所定の基準時間とを比較し、前記ポンプ停止時間が前記基準時間よりも短い場合は、前記比較の結果を異常検知結果として記録し、前記異常検知結果が複数回記録された場合に前記圧力タンクに異常が生じていると判断すること特徴とする。
【0016】
上記参考例の好ましい態様は、前記異常検知結果が連続して複数回記録された場合に前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、所定の監視期間内に前記異常検知結果が記録された回数が所定回数に達した場合に前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記基準時間は、前記圧力タンクが正常に機能しているときにおける、前記ポンプが停止してから再始動されるまでの最短時間であることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記ポンプの目標圧力の下限値と前記ポンプの吸込側圧力との差が所定の基準値以上であることを条件として前記判断を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の参考例は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記ポンプの吐出側に設けられた吐出管と、前記吐出管に接続された圧力タンクと、前記吐出管に設けられた逆止弁と、前記吐出管内の圧力を検出する圧力検出器と、前記吐出管の水量が所定の過小水量に達したことを検出する水量検出器と、前記ポンプの吐出し圧力が所定の圧力に維持されるように前記モータの回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出管の水量が前記所定の過小水量に達したときに、前記ポンプの吐出し圧力を所定の停止圧力まで上昇させて前記ポンプを停止させ、前記吐出管内の圧力が前記停止圧力から所定の始動圧力にまで低下したときに前記ポンプを再始動させ、前記ポンプが停止してから再始動されるまでのポンプ停止時間を計測し、前記ポンプ停止時間と所定の基準時間とを比較し、前記ポンプ停止時間が前記基準時間よりも短い場合は、前記比較の結果を異常検知結果として記録し、前記異常検知結果が複数回記録された場合に前記圧力タンクに異常が生じていると判断するように構成されていること特徴とする給水装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダイヤフラムの破損などに起因する空気の封入圧力の低下や、圧力タンクそのものの破損を精度よく検知することができる。従って、異常が検知された圧力タンクを速やかに補修または交換することができ、ポンプの始動頻度を減らしてポンプの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】給水装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す給水装置におけるポンプの運転特性曲線を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る圧力タンクの異常検知方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る圧力タンクの異常検知方法を示すフローチャートである。
【図5】図5(a)および図5(b)はポンプが停止してから再始動するまでの吐出側圧力の変化を示すグラフである。
【図6】2台のポンプを備えた給水装置の構造の例を示す正面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】5台のポンプを備えた給水装置の構造の例を示す正面図である。
【図9】図8の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る圧力タンクの異常検知方法の実施形態について図1から図9を参照して詳細に説明する。なお、図1から図9において、同一または相当する構成要素には、同一の符号および/または名称を付して重複した説明を省略する。
【0021】
図1は給水装置を示す模式図であり、図2は図1に示す給水装置におけるポンプの運転特性曲線を示すグラフである。図2において、横軸が水量、縦軸が圧力(ヘッドまたは揚程)を表している。図1に示すように、給水装置10は、水道本管12に接続されるポンプ14と、ポンプ14を駆動するモータ16と、モータ16の回転周波数を制御するインバータ18と、インバータ18をはじめとする各種機器を制御する制御部20とを備えている。モータ16は制御部20に接続されており、モータ16に設けた光学式または磁気式のロータリーエンコーダ(回転速度検知器)15からの出力信号によりモータ16またはポンプ14の回転速度が制御部20でモニタされるようになっている。
【0022】
給水装置10のポンプ14は、水道本管12から延びる上流給水管22に接続され、ポンプ14の吐出側には吐出管26が接続されている。吐出管26には、ポンプ14が停止した場合に吐出側から吸込側に水が逆流することを防止し、吐出管26内の圧力を維持するための逆止弁28と、吐出管26内の水量が少なくなったことを検出するフロースイッチ(水量検出器)30とが設けられている。このフロースイッチ30は、ポンプ14から吐出管26に吐出される水量が設定量(所定の過小水量)Qminよりも少なくなると動作し、過少水量検出信号を発する。フロースイッチ30は制御部20に接続されており、フロースイッチ30の出力信号により吐出管26内の過少水量が制御部20でモニタされるようになっている。なお、ポンプの数は1台に限られず、複数のポンプを給水装置10に配置してもよい。
【0023】
図1に示すように、吐出管26には、吐出管26内の水圧(ポンプ14の吐出側圧力)を検知する圧力センサ(圧力検出器)34と、吐出管26中の水を蓄えておく圧力タンク36とが、それぞれ枝管38,39を介して取り付けられている。圧力センサ34は制御部20に接続されており、圧力センサ34の出力信号により吐出管26内の水圧が制御部20でモニタされるようになっている。
【0024】
給水装置10の吐出管26は、ビルやマンションなどの需要家の給水末端40に延びる下流給水管42に接続されており、上述した給水装置10により水道本管12の水が需要家に供給されるようになっている。これらの給水末端40は、例えば、分岐した下流給水管42のそれぞれに設けられる給湯器や給水栓、トイレ洗浄用のフラッシュバルブなどである。
【0025】
ここで、図1に示すように、制御部20には、液晶画面等の表示部と数値入力用のテンキーまたは増減ボタンとを有する入力パネル44が取り付けられている。この入力パネル44を介して、操作者は、目標圧力の上限値(上限圧力)Pや下限値(下限圧力)P、過少水量時の停止圧力P、上限圧力Pと下限圧力Pとの差圧P、その他制御に必要な情報を入力できるようになっている。例えば、入力パネル44の液晶画面のタッチパネルやボタンを押すことにより上記制御に必要な情報を入力できるようになっている。また、上限圧力Pおよび下限圧力Pは、例えば、ポンプ14を設置するときの条件、すなわち、給水を行う建物の高さや、給水栓までの配管の長さ、配管抵抗、保証すべき吐出管内の圧力などを考慮して、入力パネル44を介して設定および変更できるようになっている。
【0026】
図1に示すように、制御部20は、中央演算処理装置(CPU)46と内部メモリ48とタイマ49とを備えており、入力パネル44から入力された情報は、CPU46を介して内部メモリ48に記憶される。制御部20の内部では、モータ16のゲート制御信号が演算され、このゲート制御信号がインバータ18に送られてインバータ18内部のゲートトランジスタが駆動される。インバータ18は、電気的に接続されたモータ16に速度制御信号を送り、所定の回転速度でポンプ14を駆動させる。なお、ポンプ14の駆動にあたっては、例えば、パルス幅変調(PWM)やパルス振幅変調(PAM)により交流電圧を無段階に制御することにより、効率良く高速でポンプ14を運転することができる。
【0027】
制御部20は、入力パネル44から入力された情報および圧力センサ34からの出力信号等に基づいて、インバータ18を介してポンプ14の回転速度(回転周波数)を可変速制御する。すなわち、制御部20は、インバータ18を制御して所定の交流電圧もしくは直流電圧をモータ16に印加し、モータ16を増減速させる。モータ16の回転が高速になるのに伴って、ポンプ14の吐出量が増大する。このとき、吐出管26内の水圧は上昇するが、この吐出側圧力は圧力センサ34により逐次検出されており、制御部20は、圧力センサ34により検出される圧力が目標圧力に一致するように、ポンプ14の回転速度をフィードバック制御する。
【0028】
ここで、需要家の給水末端40において水が使用され、圧力センサ34により検出される検出圧力が予め設定された始動圧力P以下に低下すると、給水装置10のポンプ14が始動される。ポンプ14がモータ16により駆動されると、水道本管12の水が上流給水管22を介してポンプ14に吸い込まれ、所定の圧力で吐出管26に吐出される。吐出管26に吐出された水は、下流給水管42を通って需要側の給水末端40に給水される。ポンプ14により揚水される水は、中層住宅や高層住宅、商業用ビルなどの最も高い位置に設けられる給水末端40aにも十分給水できる圧力に加圧される。
【0029】
ポンプ14の運転中に、給水末端40における水の使用量が少なくなり、水量が設定量Qminよりも少なくなってフロースイッチ30が動作すると、ポンプ14の運転が停止される。このポンプ14の停止にあたっては、一時的にポンプ14の運転速度を上げて吐出し圧力を上げることによって、圧力タンク36内に十分な水を蓄圧する。最終的には、圧力タンク36内の水が所定の停止圧力Pに昇圧された状態でポンプ14が停止される。
【0030】
その後、給水末端40において水が使用されると、しばらくは圧力タンク36から水が供給されるが、圧力タンク36の水が少なくなり、圧力センサ34の検出圧力が上述した始動圧力P以下に低下すると、ポンプ14が再び起動される。
【0031】
なお、ポンプ14の始動開始後一定の時間においては、フロースイッチ30からの過少水量検出信号をキャンセルするようにしてもよい。このようにすることで、給水設備の諸条件により、ポンプ14が始動してからしばらくの間は水が流れないような場合であっても、過少水量の検出によってポンプ14が停止されることを防止することができる。また、ポンプ14の吐出し圧力が所定の値よりも低い場合には、フロースイッチ30から過少水量検知信号が送られてもポンプ14の停止処理を行わないように制御部20をプログラムしてもよい。このようにすることで、ポンプ14の運転中の吐出し圧力を常に所定の値よりも低くならないようにすることができ、過少水量による停止処理の頻度を低くすることができる。
【0032】
ここで、上述したように、制御部20は、圧力センサ34により検出された圧力が目標圧力に一致するように、ポンプ14の回転速度を制御するが、このときの制御としては、ポンプ14の吐出し圧力が一定になるようにポンプ14の回転速度を制御する吐出圧力一定制御や、配管の末端圧力が一定となるようにポンプ14の吐出し圧力の目標値を逐次演算し、この目標値にポンプ14の吐出し圧力が一致するようにポンプ14の回転速度を制御する推定末端圧力一定制御などがなされる。これらの制御方法のうち、推定末端圧力一定制御について説明する。
【0033】
推定末端圧力は、最高所および/または最長配管の末端40aにおける圧力を推定したものであり、この末端40aがポンプ14の目標吐出圧力を支配する。この末端における圧力を一定にするようなポンプ14の吐出し圧力が目標圧力として演算され、ポンプ14の吐出し圧力が目標圧力となるようにポンプ14の回転速度が制御される。
【0034】
図2において、曲線N〜Nは、各回転速度におけるポンプ14の運転特性を示しており、Nは、ポンプ14の最高回転速度における特性曲線である。ここで、抵抗曲線Rは、ポンプ14から給水末端40までの使用水量に応じた管路損失であり、水量が0の点を原点として使用水量Qの略二乗に比例する曲線となっている。
【0035】
推定末端圧力一定制御においては、使用水量に応じた(抵抗曲線Rで示される)管路損失を見込んだ制御がなされるため、抵抗曲線Rに沿って目標圧力が逐次演算される。この演算された目標圧力は制御部20の内部メモリ48に一時的に記憶される。制御部20は、ポンプ14の吐出し圧力が、演算された目標圧力となるようにポンプ14の回転速度を制御する。
【0036】
図2において、最高回転速度における運転点は点Aであり、この点Aにおける圧力は上限圧力P、水量はQとなっている。ポンプ14の回転速度を下げることにより、運転点は、点Aから点A、点Aを通る抵抗曲線R上を移動する。例えば、図2に示すように、水量Qxのときの目標圧力Pxが抵抗曲線Rに沿って演算され、ポンプ14の吐出し圧力がこの目標圧力Pxになるようにポンプ14の回転速度が設定される。
【0037】
水量が設定量Qminよりも少なくなってフロースイッチ30が動作すると、ポンプ14の停止処理が開始される。このポンプ停止処理においては、ポンプ14の吐出し圧力の目標値を上述した抵抗曲線Rに沿った目標圧力から、予め設定された停止圧力Pに一時的に変更する。これにより、ポンプ14の回転速度が上げられ、最終的にはポンプ14の吐出し圧力は停止圧力Pに達し、ポンプ14が停止される。なお、フロースイッチ30が動作した後、過少水量の状態が一定時間継続してはじめてポンプ14の停止処理を開始することが好ましい。この過少水量の状態の継続時間は、例えば、直前のポンプ14の運転状態により逐次変化させることができる。このようにすることで、ポンプ14の停止処理およびそれに続くポンプ14の起動処理の頻度を減らし、装置の耐久性の向上および長寿命化を図ることができる。
【0038】
制御部20は、内部メモリ48に記憶された上限圧力Pおよび下限圧力Pに基づいて上記停止圧力Pを演算できるようになっている。例えば、停止圧力Pが上限圧力Pまたはこれ以上の値となるように演算される。また、制御部20は、ポンプ14の始動圧力Pも演算できるようになっており、例えば、下限圧力Pと同等の圧力または下限圧力Pより若干低い圧力となるように始動圧力Pが演算される。
【0039】
また、入力された上限圧力Pから下限圧力Pを演算してもよい。例えば、給水末端40の最高位置がビルの5階である場合には、上限圧力Pを14mとし、上限圧力Pから約15%低い12mを下限圧力Pとしてもよい。このように、下限圧力Pを上限圧力Pよりも約15%低く設定するのは、配管抵抗分がおよそ15%程度と見積もられるからである。
【0040】
例えば、上述した制御部20の入力パネル44を介して上限圧力Pと割合D%とを入力し、下限圧力PをP=P−(P×D%)により求めてもよい。あるいは、上限圧力Pと差圧Pとを入力し、下限圧力PをP=P−Pにより求めてもよい。なお、上限圧力Pと下限圧力Pとを同一の値に設定すれば、吐出圧力一定制御を行うことができる。この場合には、停止圧力PはP(=P)となり、始動圧力はP−Pとなるため、ポンプ14による過剰な加圧は行われない。
【0041】
上述したように、給水装置10は、水の使用量が少ないときにポンプ14の運転を停止させる機能を有している。圧力タンク36および逆止弁28は、ポンプ14を停止させた後の吐出管26内の水圧を維持させるために用いられる。図1に示すように、圧力タンク36の内部には、ゴムなど弾力性のある材料により形成されたダイヤフラム(隔壁)41が配置されており、このダイヤフラム41によって画成された空気室47には加圧空気が予め封入されている。水量が設定量Qmin以下となったときにポンプ14の回転速度を上げると、吐出管26を流れる水は枝管39を通って圧力タンク36内に流れ込み、ダイヤフラム41を介して空気室47内の空気を圧縮する。逆止弁28はポンプ14と圧力タンク36との間に配置されているので、圧力タンク36内の圧縮空気によって吐出管26内の圧力が維持される。
【0042】
しかしながら、ダイヤフラム41の破損などに起因して圧力タンク36内の封入圧力が低下すると、少量の水の使用によっても吐出管26内の圧力が急激に低下し、極めて短い時間で始動圧力Pに到達する。このため、ポンプ14の停止時間が短くなるのみならず、ポンプ14の始動頻度が多くなってしまい、ポンプ14の寿命を短縮させてしまう。そこで、このような不具合を解消するために、本実施形態では、以下に述べる方法により圧力タンク36の異常を検知し、警報を発して圧力タンク36の補修または交換を促すようにしている。
【0043】
水の使用量が低下して吐出管26を流れる水量が設定量(最小流量)Qminに達したことがフロースイッチ30によって検知されると、制御部20の制御動作は吐出圧力一定制御または推定末端圧力一定制御からポンプ停止制御に移行する。すなわち、制御部20はインバータ18にポンプ14の回転速度(運転速度)を上昇させるように指令を出し、ポンプ14の吐出し圧力を上昇させて圧力タンク36内に水を送り込む。ポンプ14の吐出し圧力が停止圧力Pに達したところで、制御部20はインバータ18にポンプ停止指令を送信し、ポンプ14を停止させる。このとき、制御部20はポンプ14(またはモータ16)が停止した時点を起点としてポンプ停止時間の計測を開始する。
【0044】
ポンプ14が停止している状態で水が使用されると、圧力タンク36内に貯留された水が需要家に送水され、これにより吐出管26内の圧力(圧力センサ34によって検出されるポンプ14の吐出側の圧力)が低下する。水の使用が継続されると、吐出側圧力はさらに低下していき、やがてポンプ14の始動圧力Pに達する。吐出側圧力が始動圧力Pにまで低下したことが圧力センサ34によって検知されると、制御部20はインバータ18にポンプ始動指令を発し、これによりポンプ14が再始動される。ロータリーエンコーダ15からはポンプ14が始動したことを示す回転速度信号が制御部20に送られ、この信号を受けて制御部20はポンプ停止時間の計測を終了し、ポンプ14が実際に停止していた時間を算出する。
【0045】
制御部20は、上記ポンプ停止時間と予め設定されている基準時間(設定時間)とを比較し、ポンプ停止時間が基準時間よりも短いか否かを判定する。この基準時間は、圧力タンク36が正常に機能しているときに予め計測された、ポンプ14が停止してから再始動するまでの最短のポンプ停止時間であり、水の最大使用量や圧力タンク36の容量などに応じて決定される。この基準時間は、入力パネル44を介して制御部20の内部メモリ48に予め入力されている。
【0046】
ポンプ停止時間が基準時間よりも短いということは、圧力タンク36の封入圧力が低下していること、すなわち、圧力タンク36に何らかの異常(故障)が生じているということを意味している。従って、ポンプ14の実際の停止時間が基準時間よりも短いことを検知することにより、圧力タンク36が正常に機能していないと判断することができる。しかしながら、一回のみの検知では、誤判断となるおそれがある。そこで、本実施形態では、ポンプ停止時間が基準時間よりも短いことが検知された場合には、その検知結果を制御部20の内部メモリ48に記録し、検知結果が複数回記録された場合に初めて圧力タンク36に異常が生じていると判断する。なお、圧力タンク36に異常が見られる原因としては、ダイヤフラム41の破損に起因する空気圧(封入圧力)の低下、空気弁からの空気漏れ、圧力タンク36の外壁の損傷などが挙げられる。
【0047】
ここで、図3を参照して本発明の第1の実施形態に係る圧力タンクの異常検知方法について説明する。図3は本発明の第1の実施形態に係る圧力タンクの異常検知方法を示すフローチャートである。図3に示すように、制御部20は、ポンプ14が停止してから再始動するまでのポンプ停止時間を計測する(ステップ1)。次いで、ポンプ停止時間と基準時間とを比較し(ステップ2)、ポンプ停止時間が基準時間よりも短いと判定された場合には(ステップ2のYES)、その比較の結果を1つの異常検知結果として内部メモリ48に記録する(ステップ3)。一方、ポンプ停止時間が基準時間以上の場合には(ステップ2のNO)、圧力タンク36に異常があるとは判断されない。
【0048】
制御部20は異常検知結果の記録回数を監視し、異常検知結果の記録回数が所定回数(基準回数)に達した場合には(ステップ4のYES)、圧力タンク36に異常が生じていると判断する(ステップ5)。一方、異常検知結果の記録回数が所定回数を下回る場合には(ステップ4のNO)、圧力タンク36に異常があるとは判断されない。
【0049】
ここで、下限圧力Pとポンプ14の吸込側圧力との差が所定の基準値(設定値)以上であることを前提条件として、圧力タンク36の異常発生の判断を行うことが好ましい。これは次の理由による。すなわち、給水装置10が受水槽を介さずに水道本管12に直結されている場合、ポンプ14の吸込側圧力(図示しない圧力センサによって検出される上流給水管22内の水圧)が下限圧力P近傍にまで上昇していることがある。このような場合では、圧力タンク36が故障していても、あたかも圧力タンク36が正常に機能しているかのように吐出側圧力が緩やかに低下する。その結果、ポンプ14の停止時間が長くなり、圧力タンク36が正常に機能しているか否かを正確に判断することができなくなる。このような理由から、下限圧力Pとポンプ14の吸込側圧力との差が所定の基準値以上であることを確認した上で圧力タンク36の異常の判断を行うことが好ましい。この基準値は圧力タンク36の正常時における空気の封入圧力に基づいて設定される。
【0050】
このように、本実施形態によれば、異常検知結果が複数回記録されていることを確認することにより、圧力タンク36に異常が生じていることを精度よく検知することができる。この場合、異常検知結果が連続して所定回数記録されたときに圧力タンク36に異常が生じていると判断するようにしてもよく、あるいは、所定の監視期間内において異常検知結果が記録された回数が所定回数に達したときに圧力タンク36に異常が生じていると判断するようにしてもよい。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、特に説明しない本実施形態の動作は上述した第1の実施形態と同様であり、図1に示す給水装置10の構成および図2に示すポンプ14の運転特性曲線を示すグラフは本実施形態にも適用される。
【0052】
本実施形態では、次のような方法にしたがって圧力タンク36の異常を検知する。まず、ポンプ14の吐出側圧力(圧力センサ34の検出圧力)が停止圧力Pから始動圧力Pまで低下した時間を制御部20が計測する。この計測された時間は圧力低下時間として内部メモリ48に保存される。このとき、制御部20は、下限圧力Pとポンプ14の吸込側圧力(上流給水管22内の水圧)との差が所定の基準値以上であること、すなわち第1の実施形態で述べた前提条件を満たしていることを確認する。
【0053】
制御部20は圧力低下時間と予め設定された基準時間とを比較し、圧力低下時間が基準時間よりも短いか否かを判定する。この基準時間は、圧力タンク36が正常に機能しているときに予め計測された、吐出側圧力が停止圧力Pから始動圧力Pまで低下したときの最短の圧力低下時間であり、水の最大使用量や圧力タンク36の容量などに応じて決定される。この基準時間は、入力パネル44を介して制御部20の内部メモリ48に予め入力されている。圧力低下時間が基準時間よりも短いと判定されると、制御部20に組み込まれた図示しないカウンタ(計数部)のカウントに1が加算される。そして、カウント(圧力低下時間が基準時間よりも短いと判定された総数)が所定の基準数に達したときに圧力タンク36に異常が生じていると判断する。
【0054】
ここで、図4を用いて本実施形態における圧力タンク36の異常検知方法を詳細に説明する。図4は本発明の第2の実施形態に係る圧力タンクの異常検知方法を示すフローチャートである。図4に示すように、ポンプ14の吐出し圧力が停止圧力Pに達したときに、制御部20はポンプ14を停止させると同時に吐出側圧力の圧力低下時間の計測を開始する(ステップ1)。次いで、吐出側圧力がポンプ14の始動圧力P以下にまで低下したか否かを判定する(ステップ2)。吐出側圧力が始動圧力Pまで低下していない場合には(ステップ2のNO)、ポンプ14の停止状態が維持される。吐出側圧力が始動圧力P以下にまで下がった場合には(ステップ2のYES)、圧力低下時間の計測を終了する(ステップ3)。
【0055】
次に、制御部20はカウントの比較対象となる上記基準数が0であるか否かを確認する(ステップ4)。この基準数は操作者によって予め入力パネル44から入力されており、基準数が0であるときは(ステップ4のYES)、カウントを0にクリアし、その後ポンプ14が再始動される(ステップ10)。この場合は、圧力タンク36の異常検知は行われない。一方、基準数が0でなければ(ステップ4のNO)、下限圧力Pとポンプ14の吸込側圧力との差が所定の基準値以上であるか否かが制御部20によって判定される(ステップ5)。下限圧力Pと吸込側圧力との差が所定の基準値よりも小さい場合は(ステップ5のNO)、カウントを0にクリアし、その後ポンプ14が再始動される(ステップ10)。一方、下限圧力Pと吸込側圧力との差が上記基準値以上である場合は(ステップ5のYES)、次のステップ6に移る。
【0056】
ステップ6では、圧力低下時間と基準時間とが比較される。圧力低下時間が基準時間以下の場合、すなわち、ポンプ14が瞬時に再始動した場合には(ステップ6のYES)、カウントに1を加算する(ステップ7)。一方、圧力低下時間が基準時間よりも長い場合には(ステップ6のNO)、カウントを0にクリアし、その後ポンプ14が再始動される(ステップ10)。そして、カウントが基準数に達したときは(ステップ8のYES)、制御部20は圧力タンク36に異常が生じていると判断する(ステップ9)。この場合、圧力タンク36に異常が生じていると判断されても、断水を避ける観点からポンプ14は再始動され(ステップ10)、ポンプ14自体の運転は継続される。一方、カウントが基準数よりも小さい場合は(ステップ8のNO)、圧力タンク36に異常が生じているとは判断されずにポンプ14が再始動される(ステップ10)。本実施形態においても、カウント(圧力低下時間が基準時間よりも短いと判定された総数)が所定の基準数に達して初めて圧力タンク36に異常が生じていると判断されるので、判断の信頼性と精度を高めることができる。
【0057】
次に、本発明の第3の実施形態について図5(a)および図5(b)を参照して説明する。図5(a)および図5(b)はポンプが停止してから再始動するまでの吐出側圧力の変化を示すグラフである。なお、特に説明しない本実施形態の動作は上述した第1の実施形態と同様であり、図1に示す給水装置10の構成および図2に示すポンプ14の運転特性曲線を示すグラフは本実施形態にも適用される。
【0058】
本実施形態では、次のような方法にしたがって圧力タンク36の異常を検知する。図5(a)および図5(b)において、ポンプ14が停止してから再始動するまでの吐出側圧力を曲線L´で示す。図5(a)に示すように、ポンプ14が停止した時点tの後であって、かつポンプ14が再始動する時点t´の前において、所定の第1時点tにおける吐出側圧力P´と所定の第2時点tにおける吐出側圧力P´との圧力差P´−P´を算出する。そして、この圧力差P´−P´と所定の基準圧力差とを比較し、圧力差P´−P´が基準圧力差以上である場合には圧力タンク36に異常が生じていると判断する。この判断は、ポンプ14が再始動する前に行われる。
【0059】
上記基準圧力差は、圧力タンク36が正常に機能していないときに測定された吐出側圧力の変化に基づいて決定される。具体的には、封入圧力の低下などにより圧力タンク36が正常に機能していないときに、ポンプ14が始動して(t)から再始動する(t)までのポンプ14の吐出側圧力(曲線Lで示す)を圧力センサ34によって予め測定しておき、これを制御部20の内部メモリ48に保存する。そして、第1時点tにおける吐出側圧力Pと第2時点tにおける吐出側圧力Pとの圧力差P−Pを求め、これを上記基準圧力差とする。
【0060】
図5(a)に示す例では、圧力差P´−P´が基準圧力差P−Pよりも大きいので、圧力タンク36に異常が生じていると制御部20によって判断される。一方、図5(b)に示す例では、圧力差P´−P´が基準圧力差P−Pよりも小さいので、圧力タンク36が正常に機能していると制御部20によって判断される。制御部20は、下限圧力Pとポンプ14の吸込側圧力(上流給水管22内の水圧)との差が所定の基準値以上であること、すなわち第1の実施形態で述べた前提条件を満たしていることを確認した上で上記判断を行うことが好ましい。
【0061】
通常、圧力タンク36が正常に機能していないと、ポンプ14の始動頻度が多くなる。従って、ポンプ14の始動頻度を減らすために、水量が最小流量Qminに達した時点からポンプ停止処理が開始されるまでに一定の遅延期間を設けることが好ましい。この場合、本異常検知方法によって圧力タンク36に異常が生じていると判断された場合には、上記遅延期間を最長の値に設定することが好ましい。さらにこの場合、圧力タンク36に異常が生じていると判断されたときに、始動圧力Pの値を上げることが好ましい。
【0062】
ここで、圧力差P´−P´が基準圧力差P−P以上である場合には、制御部の20のカウンタ(計数部)のカウントに1を加算し、このカウント(すなわち、圧力差P´−P´が基準圧力差P−P以上であると判定された総数)が所定の基準数に達したときに圧力タンク36に異常が生じていると判断するようにしてもよい。また、第1の実施形態のように、圧力差P´−P´が基準圧力差P−P以上である場合には、その都度異常検知結果を内部メモリ48に記録し、異常検知結果が連続して所定回数記録された場合に圧力タンク36に異常が生じていると判断するようにしてもよい。このようにすることで、判断の信頼性と精度を向上させることができる。
【0063】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、特に説明しない本実施形態の動作は上述した第1の実施形態と同様であり、図1に示す給水装置10の構成および図2に示すポンプ14の運転特性曲線を示すグラフは本実施形態にも適用される。
【0064】
第1の実施形態で述べたように、水量が設定量Qminに達したことがフロースイッチ30によって検知されると、制御部20はインバータ18にポンプ14の回転速度(運転速度)を上昇させるように指令を出し、ポンプ14の吐出し圧力を上昇させて圧力タンク36内に水を送り込む。そして、ポンプ14の吐出し圧力が停止圧力Pに達したところで、制御部20はインバータ18にポンプ停止指令を送信し、ポンプ14を停止させる。
【0065】
このとき、ポンプ14の羽根車の回転は慣性により直ぐには停止せず、ポンプ停止指令がインバータ18に送信されてからある程度時間が経過した後に完全に停止する。通常、圧力タンク36が正常に機能していれば、ポンプ14の回転が完全に停止した後に吐出側圧力は始動圧力Pに達し、ポンプ14が再始動される。しかしながら、封入圧力の低下などの理由により圧力タンク36が正常に機能していないと、吐出側圧力が急激に始動圧力Pまで低下し、ポンプ14の回転が完全に停止する前にポンプ14が再始動することがある。そこで、本実施形態では、ポンプ14(モータ16)の回転速度をロータリーエンコーダ15を介して制御部20によって監視し、ポンプ14の回転が完全に停止する前に、吐出側圧力が停止圧力Pから始動圧力Pまで低下してポンプ14が再始動したときには、圧力タンク36に異常が生じていると判断する。
【0066】
この場合、制御部20は、下限圧力Pとポンプ14の吸込側圧力(上流給水管22内の水圧)との差が所定の基準値以上であること、すなわち第1の実施形態で述べた前提条件を満たしていることを確認した上で上記判断を行うことが好ましい。また、ポンプ14の回転が完全に停止する前にポンプ14が再始動した場合には、制御部20のカウンタ(計数部)にカウント1を加算し、このカウント(すなわち、ポンプ14の回転が完全に停止する前にポンプ14が再始動した総数)が所定の基準数に達したときに圧力タンク36に異常が生じていると判断するようにしてもよい。さらに、第1の実施形態のように、ポンプ14の回転が完全に停止する前にポンプ14が再始動した場合には、その都度監視結果を内部メモリ48に記録し、監視結果が連続して所定回数記録された場合に圧力タンク36に異常が生じていると判断するようにしてもよい。このようにすることで、判断の信頼性と精度を向上させることができる。
【0067】
上述の例では、1台のポンプ14を備えた給水装置10について説明したが、上述した第1乃至第4の実施形態は、以下に示すような複数のポンプを備えた給水装置にも適用可能である。図6は2台のポンプを備えた給水装置10の構造の一例を示す正面図、図7は図6の平面図である。図6および図7に示すように、給水装置10は、ベース50上に設置された2台のポンプ14と、それぞれのポンプ14を駆動する2台のモータ16と、各モータ16の回転速度を制御する制御部20とを備えている。
【0068】
各ポンプ14には、上流給水管からの水を吸い込む吸込管24と、加圧した水を吐出する吐出管26とが取り付けられている。各吐出管26には、吐出管26の水量が所定の量よりも少なくなったことを検出するフロースイッチ30が設けられている。フロースイッチ30を垂直吐出管に配置する場合には、垂直吐出管をモータ16の軸方向と同一の方向に配置すれば、ポンプ14からの吐き出し流体による流れの影響を避けることができ、安定した検知が可能となる。また、これらの吐出管26は合流管32に合流されている。2台のポンプ14の間には、圧力タンク36がベース50上に設置されており、この圧力タンク36は合流管32に接続されている。また、合流管32には、吐出される水の圧力を検出する圧力センサ34が設けられている。
【0069】
このような構成の給水装置10において、吸込管24から吸い込まれた水は、ポンプ14により加圧された後、合流管32を通って吐出口52から吐出され、下流給水管を介して給水末端に供給される。ここで、ポンプ14の吐出し圧力が所定の目標圧力になるように、各モータ16の回転速度が可変制御される。
【0070】
なお、給水装置10の全体の振動を防止するために、ベース50の任意の位置に切欠き孔(図示せず)を形成することが好ましい。このような切欠き孔を振動の共振点に形成することにより、防振効果を得ることができ。また、ベース50にリブ(図示せず)を設けることで、より一層の防振効果を得ることができる。切欠き孔の形状は、別の共振点が生じるような角部を有していなければ、どのようなものであってもよい。例えば、円形や楕円形の切欠き孔を設けることができる。
【0071】
図8および図9は、5台のポンプを備えた給水装置110の例であり、図8は正面図、図9は平面図である。図8および図9に示すように、給水装置110は、ベース150上に設置された5台のポンプ114a,114bと、それぞれのポンプを駆動するモータ116と、各モータ116の回転速度を制御する制御部120とを備えている。
【0072】
各ポンプ114a,114bには、上流給水管からの水を吸い込む吸込管124と、加圧した水を吐出する吐出管126とが取り付けられている。各吐出管126には、吐出管126の水量が所定の量よりも少なくなったことを検出するフロースイッチ130が設けられている。なお、フロースイッチ30を垂直吐出管に配置する場合には、垂直吐出管をモータ16の軸方向と同一の方向に配置すれば、ポンプ14からの吐き出し流体による流れの影響を避けることができ、安定した検知が可能となる。
【0073】
図8および図9に示す給水装置110は、3台のポンプ114aの吐出管126に接続される第1の合流管132aに、ポンプ114bの吐出管126に接続される第2の合流管132bを2つ接続した構造となっている。このように、3台のポンプ114aから構成されるベースユニット133aに、1台のポンプ114bから構成される付加ユニット133bをポンプ114aの並び方向に任意の数だけ接続することで、ユーザの要求に応じたポンプ台数の給水装置を簡単に構成することができる。
【0074】
また、第1の合流管132aには、吐出される水の圧力を検出する圧力センサ134が設けられている。ベース150上には、圧力タンク136が設置されており、この圧力タンク136は第1の合流管132aに接続されている。このように、制御部120の下部に圧力タンク136をポンプ114a,114bと並列に設置することにより、圧力タンク136のメンテナンス時および交換時に圧力タンク136内の水が制御部120にかかることが防止される。
【0075】
この例では、第1の合流管132aの端部には、ブラインドフランジ154を取り付けられており、反対側の第2の合流管132bの端部に吐出口152が形成されている。なお、第2の合流管132bの端部にブラインドフランジ154を取り付け、第1の合流管132aの端部に吐出口152を形成してもよい。
【0076】
このような構成の給水装置110において、吸込管124から吸い込まれた水は、ポンプ114a,114bにより加圧された後、各合流管132a,132bを通って吐出口152から吐出され、下流給水管を介して給水末端に供給される。ここで、ポンプ114a,114bの吐出し圧力が所定の目標圧力になるように、各モータ116の回転速度が可変制御される。
【0077】
比較的高層の集合住宅やビルなど、ポンプによるブーストアップが不可欠な大規模な建物においては、ポンプの異常停止が断水に直結するため、ポンプを複数台備えてバックアップ機能を持たせることが必要不可欠である。上述した第1乃至第4の実施形態に係る異常検知方法は、図6および図7に示す圧力タンク36、および図8および図9に示す圧力タンク136のいずれにも適用することが可能である。
なお、上述の実施形態においては、給水装置が水道本管に直接接続される場合について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、給水装置の上流に水道水をいったん貯留する受水槽を設置し、この受水槽に貯留された水を給水装置により各需要家に供給することとしてもよい。
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
10,110 給水装置
12 水道本管
14,114a,114b ポンプ
15 ロータリーエンコーダ(回転速度検出器)
16,116 モータ
18 インバータ
20,120 制御部
22 上流給水管
24,124 吸込管
26,126 吐出管
28 逆止弁
30,130 フロースイッチ(水量検出器)
32,132a,132b 合流管
34,134 圧力センサ(圧力検出器)
36,136 圧力タンク
38,39 枝管
40 給水末端
41 ダイヤフラム
42 下流給水管
44 入力パネル
46 CPU
47 空気室
48 内部メモリ
49 タイマ
50,150 ベース
52,152 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力タンクの異常検知方法であって、
給水装置のポンプの回転速度を監視し、
前記ポンプの回転が完全に停止する前に前記ポンプが再始動した場合には、前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする圧力タンクの異常検知方法。
【請求項2】
前記ポンプの回転が完全に停止する前に該ポンプが再始動した場合にはカウントに1を加算し、
前記カウントが所定の基準数に達したときに前記圧力タンクに異常が生じていると判断することを特徴とする請求項1に記載の圧力タンクの異常検知方法。
【請求項3】
前記判断は、前記ポンプの目標圧力の下限値と前記ポンプの吸込側圧力との差が所定の基準値以上であることを条件として行うことを特徴とする請求項1または2に記載の圧力タンクの異常検知方法。
【請求項4】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記ポンプの吐出側に設けられた吐出管と、
前記吐出管に接続された圧力タンクと、
前記吐出管に設けられた逆止弁と、
前記吐出管内の圧力を検出する圧力検出器と、
前記吐出管の水量が所定の過小水量に達したことを検出する水量検出器と、
前記ポンプの吐出し圧力が所定の圧力に維持されるように前記モータの回転速度を制御する制御部と、
前記ポンプの回転速度を検出する回転速度検出器とを備え、
を備え、
前記制御部は、
前記吐出管の水量が前記所定の過小水量に達したときに、前記ポンプの吐出し圧力を所定の停止圧力まで上昇させて前記ポンプを停止させ、
前記吐出管内の圧力が前記停止圧力から所定の始動圧力にまで低下したときに前記ポンプを再始動させ、
前記ポンプの回転が完全に停止する前に前記ポンプが再始動した場合には、前記圧力タンクに異常が生じていると判断するように構成されていること特徴とする給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−144976(P2012−144976A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87690(P2012−87690)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2010−35274(P2010−35274)の分割
【原出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】