説明

圧電アクチュエータ

【課題】圧電アクチュエータの使用により生じるクラックの侵蝕を防止して、耐久性及び信頼性の高い圧電アクチュエータを得る。
【解決手段】圧電素子11の電極面14には溝部20が設けられる。溝部20は電極面14の長手方向、すなわち圧電素子11の伸縮方向全長に渡って形成される。すなわち電極面14の幅方向に関する断面には必ず溝部20が設けられる。溝部20の幅は隣接する溝部20との間よりも短い。溝部20の深さは圧電素子11の厚さの1/2よりも深いが、圧電素子11の厚さと同じになることはない。使用により圧電素子11の表面にクラックが生じると、さらなる加振により圧電素子11の内部をクラックが侵蝕する。しかし電極面14の幅方向には溝部20が必ず設けられているため、電極面14の幅方向に侵蝕するクラックは必ず溝部20に達する。クラックが溝部20に到達すると、クラックはそれ以上侵蝕せず圧電素子11は破断しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエータは、圧電素子、補強板及び電極からなる。圧電素子は電圧が印加されると逆圧電効果を生じ伸張する。補強板は圧電素子に導電性接着剤等を用いて密着し圧電素子を補強する。電極は補強板と同様にして圧電素子と密着し、電極としても機能する補強板と協同して交流電圧を圧電素子に印加する。
【0003】
交流電圧を印加された圧電素子は、交流電圧の周波数に従って伸縮を繰り返して振動を生じる。この振動により圧電アクチュエータは被駆動体を駆動する。圧電素子は一方向にのみ伸縮するため、圧電アクチュエータの駆動方向は一方向となる。二方向に圧電アクチュエータを駆動させるために、圧電アクチュエータに複数の電極を設け、選択的に電圧を印加して圧電素子の一部を選択的に伸縮させることにより、二方向への動作を可能にすると共に圧電素子の製造誤差から生じる振動の誤差を補正する構成が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−94895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧電素子は一般的に単結晶のセラミックスから成るため脆く、振動や外力によりクラックが生じて破損する。圧電素子の表面に発生したクラックは、振動を繰り返すことにより圧電素子の内部を侵蝕する。クラックが侵蝕して圧電素子の一部が他の部分から破断すると、破断した一部と他の部分との振動周波数が一致せず、圧電アクチュエータ全体が充分な性能を発揮することが出来なくなる。さらに、圧電素子の破断により電極が破断することがある。電極が破断すると電圧が印加されなくなって破断した圧電素子の一部に電圧が印加されなくなる。これにより振動しない圧電素子が発生して圧電アクチュエータは充分な性能を発揮することが出来なくなる。これらを防止するため圧電素子に補強板が取り付けられるが、完全にクラックを防止することは不可能である。
【0005】
本発明は、使用により圧電素子に生じるクラックの侵蝕を阻止して、圧電素子及び電極の破断を防ぎ、圧電アクチュエータの耐久性及び信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による圧電アクチュエータは、補強面の反対側の面に電極面が形成された平板状の圧電素子と、補強面に密着して設けられる補強板と、電極面に密着して設けられる電極とを備え、補強面と電極面の少なくとも一方には伸縮方向に延びる一以上の溝部が設けられることを特徴とする。
【0007】
溝部は電極面及び補強面に設けられてもよく、電極面に設けられる溝部は、補強面に設けられる溝部に対応した位置、又は補強面に設けられる隣接する溝部の間の対応した位置に設けられてもよい。
【0008】
溝部の幅は、隣接する溝部間の間隔よりも短いことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧電アクチュエータの使用により生じるクラックの侵蝕を防止して、耐久性及び信頼性の高い圧電アクチュエータを得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0011】
第1の実施形態を図1、図2に示す。図1は圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータが取り付けられる部材の斜視図であり、図2は圧電アクチュエータの側面図である。
【0012】
本実施形態による圧電アクチュエータ10は、圧電素子11と圧電素子11を補強する補強板12と電極13とから成り、電極13は図1では省略されている。圧電素子11は平板状の直方体である。圧電素子11の図において上側は電極面14であり、電極面14の裏面は補強面15である。電極面14全体には導電性接着剤等を用いて電極13が密着して設けられ、補強面15にも導電性接着剤等を用いて補強板12が密着して設けられる。
【0013】
補強板12は平板状であって、直方体である補強部16と支持部17とが略中心で交差して形成する十字形である。補強部16における長手方向の長さは、圧電素子11の長手方向長さと略同じ長さであり、幅は設定される振動周波数に応じて定められ、本実施形態では圧電素子11の幅よりも狭い。支持部17における長手方向の長さは圧電素子11の幅よりも長く、幅は圧電素子11の振動を妨げない程度の長さである。支持部17の両端部には輪状の取付部18が設けられる。
【0014】
圧電アクチュエータ10は基部21に固定される。基部21は円筒形状である2つの突起部22を備える。突起部22の内面は螺子孔部23を備え、2つの螺子孔部23の中心軸の間隔は取付部18が有する2つの開口孔部19における中心軸の間隔と一致する。そのため取付部18と突起部22は互いの孔の中心軸を一致させて、螺子24により固定される。
【0015】
補強板12は導電性の材料から成り電極としても機能する。補強板12及び電極13には図示しないリード線が接続されて図示しない電源から電力が供給される。電力の供給により補強板12と電極13との間には電位差が生じ、この電位差により圧電素子11が伸縮する。電力は交流で与えられて補強板12と電極13との間の電位差を連続的に変化させる。これによって圧電素子11は伸縮を繰り返して振動を発生させる。
【0016】
圧電素子11は電圧の印加により全ての面に対して垂直方向に伸縮するが、最も伸縮の大きい方向は圧電素子11の長手方向である。そのため、圧電素子11の長手方向に発生する伸縮が圧電アクチュエータ10の駆動に用いられる。そこで、本実施形態では、圧電素子11の伸縮方向は長手方向とする。圧電素子11の長手方向に発生した振動は圧電アクチュエータ10が生じる駆動力として利用され、圧電素子11から突出する補強部16の先端部を介して図示しない被駆動体に伝達される。
【0017】
圧電素子11の電極面14には溝部20が設けられる。溝部20は電極面14の長手方向、すなわち圧電素子11の伸縮方向全長に渡って形成される。言い換えると、電極面14における幅方向の断面には必ず溝部20が設けられる。溝部20の幅は隣接する溝部20との間よりも短い。溝部20の深さは圧電素子11の厚さの1/2よりも深いが、圧電素子11の厚さと同じになることはない。
【0018】
使用により圧電素子11の表面にクラックが生じると、さらなる使用により圧電素子11の内部をクラックが侵蝕する。しかし電極面14の幅方向には溝部20が必ず設けられているため、電極面14の幅方向に侵蝕するクラックは必ず溝部20に達する。クラックが溝部20に到達すると、クラックはそれ以上侵蝕せず圧電素子11は破断しない。
【0019】
本実施形態によれば、クラックの侵蝕を防ぐと共に圧電素子11が完全に破断することを防止できるため、圧電アクチュエータ10は長期間に渡って性能を維持する。
【0020】
図3を用いて第2の実施形態について説明する。図3は補強面15に溝部20が設けられる圧電アクチュエータ10の側面図である。第1の実施形態と同様の構成に関しては説明を省略する。
【0021】
圧電アクチュエータ10の補強面15には補強板12が密着して設けられる。電極面14には電極13が密着して設けられ、補強板12と電極13の間には上述と同様の構成により電位差が生じる。
【0022】
補強面15には溝部20が設けられる。溝部20は補強面15の長手方向、すなわち圧電素子11の伸縮方向全長に渡って形成される。すなわち補強面15の幅方向に関する断面には必ず溝部20が設けられる。溝部20の幅は隣接する溝部20との間よりも短い。溝部20の深さは圧電素子11の厚さの1/2よりも深いが、圧電素子11の厚さと同じになることはない。
【0023】
使用により圧電素子11の表面にクラックが生じると、さらなる使用により圧電素子11の内部をクラックが侵蝕する。しかし補強面15の幅方向には溝部20が必ず設けられ、補強面15の幅方向に侵蝕するクラックは必ず溝部20に達する。クラックが溝部20に到達すると、クラックはそれ以上侵蝕せず圧電素子11は破断しない。
【0024】
本実施形態によれば、加振によるクラックが補強面15から生じるときに、圧電素子11の強度を保持しつつ補強面15から生じるクラックの侵蝕を効率よく阻止することが出来る。
【0025】
なお、電極13は電極面14全体に設けられなくても良い。圧電アクチュエータ10の駆動に必要な電圧を加えるために必要なだけ設けられれば良い。
【0026】
溝部20は補強面15及び電極面14の両方に設けられても良い。圧電素子11の表面から生じるクラックの侵蝕を効率よく阻止することが出来る。
【0027】
補強面15及び電極面14の両方に設けられる溝部20は、互いに対応する位置、すなわち補強面15に対して垂直方向に互いの位置が一致する位置に設けられても良い。圧電素子11の強度低下を最小限にとどめながら、表面から生じるクラックの侵蝕を効率よく阻止することが出来る。
【0028】
また、補強面15及び電極面14の両方に設けられる溝部20のうち、補強面15に設けられる溝部20は電極面14の溝部20の間に対応する位置、すなわち補強面15に対して垂直方向における互いの位置が異なる位置に設けられても良い。圧電素子11の強度低下を防止しながら、表面から生じるクラックの侵蝕を効率よく阻止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態による圧電アクチュエータの斜視図である。
【図2】第1の実施形態による圧電アクチュエータの側面図である。
【図3】第2の実施形態による圧電アクチュエータの側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 圧電アクチュエータ
11 圧電素子
12 補強板
16 補強部
17 支持部
20 溝部
21 基部
22 突起部
24 螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強面の反対側の面に電極面が形成された平板状の圧電素子と、
前記補強面に密着して設けられる補強板と、
前記電極面に密着して設けられる電極とを備え、
前記補強面と前記電極面の少なくとも一方には、前記圧電素子の破損を防止する伸縮方向に延びる溝部が設けられることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記溝部は、前記電極面及び前記補強面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記電極面に設けられる溝部は、前記補強面に設けられる溝部に対応した位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記電極面に設けられる溝部は、前記補強面に設けられる隣接する溝部の間の対応した位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記溝部の幅は、隣接する前記溝部間の間隔よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−79356(P2008−79356A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252044(P2006−252044)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)