説明

圧電振動子

【課題】小型の圧電基板の面取り加工寸法精度の低下による圧電振動子の共振特性や周波
数温度特性のバラツキ、等価回路定数値のバラツキ等の問題を防止することを可能とする
エネルギー閉じ込めに必要な圧電基板の構造的な加工を高精度に再現性良く実現し、且つ
、量産においても好適な圧電振動子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】厚み滑り振動を主振動として励振する圧電基板を有する圧電振動子において
、圧電基板両主面上中央部に励振用電極を形成すると共に、圧電基板長手方向端部と前記
励振用電極との間に、フォトリソグラフィ技法とエッチング技法とを用いて複数の溝また
は孔を形成する、或はイオン打込みによりドーピング層を形成することによって励振用電
極直下の振動領域にエネルギー閉じ込めを可能せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短冊型圧電基板を用いた圧電振動子において、圧電基板両主面上中央部の励
振用主電極と圧電基板長辺方向端部との間に複数の溝または孔を形成し、あるいはドーピ
ングを施した圧電基板を備えた圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器や伝送通信機器に用いる基準周波数信号源として圧電振動子、例え
ば水晶振動子が幅広く使用されている。特に、ATカット水晶基板を用いた水晶振動子は
、広い温度範囲で極めて高い周波数安定性を有し、更に経時変化特性にも優れており、且
つ、製造技術の進歩により低コストで大量に製造することができるようになったので、移
動体通信を中心とする各種通信機器で多用されている。
【0003】
ATカット水晶振動子は、厚み滑り振動モード(Thickness Shear Mode)を主振動とし
て用いられることが多く、今日ではエネルギー閉じ込め型水晶振動子が主流となり広く用
いられている。
【0004】
ここで、エネルギー閉じ込め型水晶振動子とは、水晶基板の励振用電極のない領域の周
波数をf’o、励振用電極のある部分の共振周波数fo(励振用電極を付加したことによ
る質量負荷効果によりfo<f’oとなっている)としたとき、励振用電極のある部分で
は波動は自由に伝搬するが、前記励振用電極のない部分(電極端近傍)に波動がくると水
晶基板の厚み方向に平行な面で反射を起こすので電極直下に定在波をつくりエネルギーが
閉じ込められ、励振用電極のない領域では振動エネルギーは指数関数的に減衰するという
ことを利用した水晶振動子であることは周知の通りである。
【0005】
しかし、前記厚み滑り振動モードの共振周波数近傍には、他に厚み屈曲振動(Thicknes
s Flexural Mode)、縦振動(Longitudinal Mode)、輪郭滑り振動(Face Shear Mode)
等の不要な振動モードが存在することが知られている。これらの不要な振動モードは水晶
基板の輪郭寸法に依存し、厚み滑り振動により得られる所望共振周波数に悪影響を及ぼし
、それによって生ずる不要スプリアス、また温度変化に対する周波数及びCI値(クリス
タル・インピーダンス=水晶振動子の等価抵抗)の非連続的な変動、所謂、特異現象(An
omalous Activity Dip)等が問題となっていた。
【0006】
上述の如き問題を抑制するための対策の一つとして、従来、水晶基板の周囲の面取り加
工を行うことが提案され広く実施されている。面取り加工した水晶基板の構造は、一般に
ベベル構造やコンベックス構造と呼ばれ、図13(a)のは片面ベベル(プラノベベル)
、図13(b)のは両面ベベル(バイベベル)構造、図14(a)のは片面コンベックス
(プラノコンベックス)、図14(b)のは両面コンベックス(バイコンベックス)の構
造が知られている。これら水晶基板の構造は、水晶基板中央部から長手方向端部に向かっ
て徐々に板厚を薄くした構造となっている。
【0007】
これらの面取り加工はバレル研磨装置により行われ、バレル研磨装置には円筒パイプを
回転させるパイピング法、及び、円筒状や球状のバレル槽を公転或は自転させる高速遊星
旋回法などがある。これらバレル研磨装置に水晶基板と砥粒とを入れて槽を回転させて、
自重によって加圧された水晶基板と砥粒とを接触させその時の摩擦により水晶基板周囲を
研磨して面取り加工するものである。
【0008】
上述の如く水晶基板の輪郭に面取り加工を施すことにより、主振動である厚み滑り振動
のエネルギーを閉じ込め、一方、厚み屈曲、縦、輪郭滑り等の副振動のエネルギーを大き
く弱めることができる。つまり、厚み滑り振動モードにおける振動エネルギーを励振電極
近傍に閉じ込めることが可能となり、更に水晶基板寸法等に起因する輪郭系振動モードな
どの不要スプリアスも抑圧し、良好な特性を有する水晶振動子を得ることができる。
【0009】
一方、前述の主振動のエネルギーを閉じ込め、且つ、不要スプリアスの原因となる副振
動モードを抑圧するという効果の再現性を良くするためには、面取り加工の寸法精度のバ
ラツキを抑えて高精度な加工を維持する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日、携帯電話機等の通信機器の小型化によりそれに用いられる電子デバイスも小型化
が要求され、水晶振動子においても小型化の開発が進められ、水晶振動子の小型化に伴っ
て、それに用いられる水晶基板のサイズも小型化されている。
【0011】
しかしながら、現在のバレル研磨装置は水晶基板の自重を利用して研磨を行うので、水
晶基板の小型化に伴い単位時間当たりの水晶基板の輪郭の加工量が減少し、それによって
研磨加工の時間は長くなり研磨効率が低下してしまうという問題があった。更に、砥粒は
湿度の影響を受け易く、わずかの湿気で砥粒が固まり易いため、単なる面取り加工では時
間による精度のコントロールが困難でありバラツキにも影響を及ぼし易いという問題があ
った。
故に、水晶基板の小型化による研磨加工の効率の低下、及び研磨加工の条件の変化(湿
度による砥粒への影響等)との複合要因により水晶基板の面取り加工による安定した品質
維持が非常に困難になってきた。
【0012】
つまり、水晶基板の面取り加工寸法精度が低下すると水晶振動子の共振特性や周波数温
度特性のバラツキ、等価回路定数値のバラツキが生じ、小型の水晶振動子を量産する場合
、水晶基板の面取り加工精度の低下は顕著であり、歩留りの低下の大きな要因となってい
た。
本発明の目的は、上述した如き従来の面取り加工を要する圧電基板を用いた圧電振動子
の問題点に鑑みなされたものであって、エネルギー閉じ込めに必要な圧電基板の構造的な
加工を高精度に再現性良く実現し、且つ、量産における歩留りを向上せしめた圧電振動子
及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る圧電振動子及びその製造方法の請求項1記載の
発明は、厚み滑り振動を主振動とする圧電振動子において、圧電基板両主面上中央部に励
振用電極を形成すると共に、前記圧電基板の厚み滑り振動の伝搬方向端部と前記励振用電
極との間に複数の溝を設けたことを特徴とする圧電振動子である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記圧電振動子が短冊形であって、前記複数の溝が、前記圧電
基板の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜して設けられていることを特徴とする請求
項1記載の圧電振動子である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記圧電振動子が短冊形であって、前記複数の溝が、前記圧電
基板の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜し、且つ、前記圧電基板長辺に平行し且つ
前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線に対して線対称に設けられていることを特徴と
する請求項1記載の圧電振動子である。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記複数の溝が、前記圧電基板の対向する長辺から延在し、互
いに間挿するよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子である。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記複数の溝が、前記圧電基板長辺から、前記圧電基板長辺に
平行し且つ前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線付近まで延在することを特徴とする
請求項4記載の圧電振動子である。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記溝が、所定の曲率で前記励振用電極側に湾曲していること
を特徴とする請求項1記載の圧電振動子である。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記溝の長さが、前記励振用電極辺の長さ以上であることを特
徴とする請求項1,2,3,6記載の圧電振動子である。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記励振用電極の両側に位置し、該電極にもっとも近接した一
対の溝の圧電基板厚さ方向の深さは、他の溝の深さより浅いことを特徴とする請求項1,
2,3,6,7記載の圧電振動子である。
【0021】
請求項9記載の発明は、前記複数の溝の圧電基板厚さ方向の深さは、前記励振用電極に
近い程浅く、圧電基板長手方向端部に近いほど深くしたことを特徴とする請求項8記載の
圧電振動子である。
【0022】
請求項10記載の発明は、前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置
にある溝の圧電基板厚さ方向の深さを他の溝の深さより深くしたことを特徴とする請求項
1乃至7記載の圧電振動子である。
【0023】
請求項11記載の発明は、前記励振用電極の両側に位置し、該電極にもっとも近接した
一対の溝及びその次に近接した一対の溝の圧電基板厚さ方向の深さは、他の溝の深さより
浅いことを特徴とする請求項4及び5記載の圧電振動子である。
【0024】
請求項12記載の発明は、前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置
にある隣り合う一組の溝と、該一組の溝とは前記励振用電極を挟んで対向する位置にある
他の隣り合う一組の溝の圧電基板厚さ方向の深さをそれ以外の溝の深さより深くしたこと
を特徴とする請求項11記載の圧電振動子である。
【0025】
請求項13記載の発明は、厚み滑り振動を主振動とする圧電振動子において、圧電基板
両主面上中央部に励振用電極を形成すると共に、前記圧電基板の厚み滑り振動の伝搬方向
端部と前記励振用電極との間に複数の孔を設けたことを特徴とする圧電振動子である。
【0026】
請求項14記載の発明は、前記振動子が短冊形であって、前記複数の孔は、前記圧電基
板の短辺方向に列状に形成したことを特徴とする請求項13記載の圧電振動子である。
【0027】
請求項15記載の発明は、前記振動子が短冊形であって、前記孔の列が、前記圧電基板
の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜していることを特徴とする請求項14記載の圧
電振動子である。
【0028】
請求項16記載の発明は、前記振動子が短冊形であって、前記孔の列が、前記圧電基板
の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜し、且つ、前記圧電基板長辺方向に平行し且つ
前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線に対して線対称に設けられていることを特徴と
する請求項13又は14記載の圧電振動子である。
【0029】
請求項17記載の発明は、前記複数の列が、前記圧電基板の対向する長辺から延在し、
互いに間挿するよう配置されていることを特徴とする請求項13又は14記載の圧電振動
子である。
【0030】
請求項18記載の発明は、前記複数の列が、前記圧電基板長辺から、前記圧電基板長辺
に平行し且つ前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線付近まで延在することを特徴とす
る請求項17記載の圧電振動子である。
【0031】
請求項19記載の発明は、前記列が、所望の曲率で前記励振用電極側に湾曲しているこ
とを特徴とする請求項14記載の圧電振動子である。
【0032】
請求項20記載の発明は、前記孔が、千鳥格子状に配列したことを特徴とする請求項1
3記載の圧電振動子である。
【0033】
請求項21記載の発明は、前記列の長さが、前記励振用電極の長さ以上であることを特
徴とする請求項14,15,16,19記載の圧電振動子である。
【0034】
請求項22記載の発明は、前記励振用電極に近い前記孔の圧電基板厚さ方向の深さが、
他の孔の深さより浅いことを特徴とする請求項13,20記載の圧電振動子である。
【0035】
請求項23記載の発明は、前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置
にある複数の孔の圧電基板厚さ方向の深さを他の孔の深さより深くしたことを特徴とする
請求項13,20記載の圧電振動子である。
【0036】
請求項24記載の発明は、前記孔の圧電基板厚さ方向の深さを、前記励振用電極に近い
ほど浅く、圧電基板長手方向端部に近いほど深くしたことを特徴とする請求項13,20
記載の圧電振動子である。
【0037】
請求項25記載の発明は、前記励振用電極に近い前記列を構成する孔の圧電基板厚さ方
向の深さが、他の列に含まれる孔の深さより浅いことを特徴とする請求項14,15,1
6,17,18,19記載の圧電振動子である。
【0038】
請求項26記載の発明は、前記列を構成する孔の圧電基板厚さ方向の深さを、前記励振
用電極に近い列の孔ほど浅く、圧電基板長手方向端部に近い列の孔ほど深くしたことを特
徴とする請求項14,15,16,17,18,19記載の圧電振動子である。
【0039】
請求項27記載の発明は、前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置
にある列を構成する孔の圧電基板厚さ方向の深さを他の列を構成する孔の深さより深くし
たことを特徴とする請求項14,15,16,19記載の圧電振動子である。
【0040】
請求項28記載の発明は、前記励振用電極にもっとも近接した一対の列及びその次に近
接した一対の列を構成する孔の圧電基板厚さ方向の深さが、他の列を構成する孔の深さよ
り浅いことを特徴とする請求項17及び18記載の圧電振動子である。
【0041】
請求項29記載の発明は、厚み滑り振動を主振動とする圧電振動子において、圧電基板
両主面上中央部に励振用電極を形成すると共に、前記圧電基板の厚み滑り振動の伝搬方向
端部と前記励振用電極との間に添加物を添加したことを特徴とする圧電振動子である。
【0042】
請求項30記載の発明は、前記添加物を、イオン打込み技術或は気相熱拡散技術を用い
て添加したことを特徴とする請求項29記載の圧電振動子である。
【0043】
請求項31の発明は、単一のウェーハ上であって、圧電振動子の励振用電極と該圧電振
動子個片の長手方向端部との間に位置する部位に複数の溝または孔を形成する工程或は添
加物を添加する工程と、単一のウェーハ上であって、各圧電振動子個片に対応し、圧電振
動子個片の端部或は端部付近に位置する部位にスルーホールを形成する工程と、単一のウ
ェーハ上に圧電振動子個片の励振用電極及びリード電極を夫々複数形成する工程と、前記
スルーホールに導体膜を形成する工程と、前記単一のウェーハを複数の圧電振動子に分割
する工程とからなることを特徴とする圧電振動子の製造方法である。
【0044】
請求項32に発明は、上記溝または孔を形成する工程と上記スルーホールを形成する工
程とを同時に行うことを特徴とする請求項31記載の圧電振動子の製造方法である。
【0045】
請求項33記載の発明は、上記励振用電極及びリード電極を形成する工程と上記スルー
ホールに導体膜を形成する工程とを同時に行うことを特徴とする請求項31または32記
載の圧電振動子の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る実施形態を説明するための図であって、(a)は圧電振動子の斜視図、(b)は圧電振動子をパッケージ内にマウントした状態を示す斜視図、(c)はA−A断面図である。
【図2】本発明に係る他の実施形態を説明するための図であって、(a)は圧電振動子の斜視図、(b)は圧電振動子をパッケージ内にマウントした状態を示す斜視図、(c)はA−A断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明に係る圧電振動子の励振用電極と圧電基板長手方向端部との間に形成する溝の構造を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、圧電基板のエッチングの性質を説明するための断面図である。
【図5】(a)乃至(f)は、圧電基板にフォトリソグラフィ技法とエッチング技法とを用いて溝を形成する手法を説明するための断面図である。
【図6】本発明に係る溝とスルーホールの一括形成を説明するための断面図である。
【図7】(a)乃至(e)は、本発明に係る圧電基板に形成する溝パターンを説明するための平面図である。
【図8】(a)乃至(g)は、本発明に係る圧電基板に形成する孔によるパターンを説明するための平面図である。
【図9】(a)乃至(c)は、本発明に係る圧電基板に形成した溝または孔の深さを説明するための図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明に係る圧電基板にランダムに形成した孔の深さを説明するための図である。
【図11】本発明に係る他の実施形態を説明するための図であって、(a)は圧電振動子の斜視図、(b)は圧電振動子をパッケージ内にマウントした状態を示す斜視図、(c)はA−A断面図である
【図12】(a)乃至(e)は、本発明に係る圧電振動子の製造工程を説明するための図である。
【図13】(a)及び(b)は、従来のベベル構造を示す断面図である。
【図14】(a)及び(b)は、従来のコンベックス構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図示した実施の形態例に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る圧電振動子の一例としてATカット水晶振動子を示す図であって
、図1(a)は水晶振動子1の斜視図、図1(b)は前記水晶振動子1をパッケージ2本
体内に実装した状態を示す斜視図、図1(c)はそのA−A断面図である。
この水晶振動子1は、短冊平板状のATカット水晶基板の両主面に励振用電極3及びリ
ード電極4を導電性材料膜にて形成すると共に、パッケージ開口側のATカット水晶基板
主面上リード電極4が延出する基板端部に切欠き部を設けた凹所5の内壁にリード電極4
と接続する導体膜6を有している。導体膜6はリード電極4の延長上にあって反対側の主
面にまで到達している。凹所5をスルーホール7とすることによって上側のリード電極4
を下面付近にまで延在することができる。
【0048】
更に、前記励振用電極3とATカット水晶基板長手方向端部との間に、前記基板長手方
向端部と平行な励振用電極辺8に平行に複数の溝9を形成している。これらの溝の深さは
、前記励振用電極から前記基板長手方向端部に向かって徐々に深くなっている。
【0049】
尚、前記スルーホール7は図2に示すような実施形態を用いてもよい。図2(a)は、
水晶振動子14の斜視図であって励振用電極10とATカット水晶基板長手方向端部との
間に穴状のスルーホール11を設けて前記励振用電極10からリード電極12を当該スル
ーホール11まで延出し、他方の面に貫通したスルーホール11内に形成した導体膜13
に接続している。図2(b)は、水晶振動子14をパッケージ15本体内に実装した状態
を示す斜視図、図2(c)はそのA−A断面図である。
【0050】
前記穴状のスルーホール11を水晶基板の両端側付近に設け、下面側のリード電極を上
面まで延在するようにすれば、水晶振動子14をパッケージ15本体内に実装する際に上
下の方向性がなくなり、いずれの面を下向きにしても接続できるようになるので作業性が
向上する。尚、図1に示した凹陥状のスルーホール7を水晶基板両端側に設け、水晶振動
子の上下方向性をなくすことも可能である。
【0051】
図1(b)のパッケージ2内に形成された凹陥部の段差上に形成されたパッド16に対
して各リード電極4を接続する際には、水晶基板下面に形成したリード電極4については
パッド16に載置して導電性接着剤或は半田(バインダ)にて接続を行い、上側のリード
電極4についてはスルーホール7内の導電膜6と他方のパッド17とを導電性接着剤等1
8により接続する。従って、上下のリード電極4を各パッド16,17に対して接続する
作業において、夫々一回の導電性接着剤等18の塗布により完了できるので生産性を向上
することができる。
【0052】
ここで、ATカット水晶基板上に形成した複数の溝について、以下詳細に説明する。図
1及び図2に示した水晶振動子は、平行平板の水晶基板の両主面の中央部に配置された励
振用電極と水晶基板長手方向端部との間に、所定の間隔で複数個の溝9が形成されている
。当該溝9は、水晶基板にフォトリソグラフィ技法とエッチング技法とを用いて形成して
おり、溝9の深さを基板の長手方向端部へ近づくほど深くした構造としている。
【0053】
上述した構造とすることにより図3(a)に示すように、水晶基板20(実線で示した
)は点線で示したバイベベル構造19の水晶基板と擬似的に等価となり、水晶基板端部へ
の主振動モード(ここでは、厚みすべり振動モード)の振動エネルギーの漏洩を防止し、
スプリアスの要因となる副振動モードを抑圧せしめ、励振用電極部直下に主振動モードの
振動エネルギーを閉じ込めることができる。
【0054】
尚、図3(b)に示すように、複数個設けた溝のうち励振用電極3に近接した溝21を
除いて、少なくとも一の溝22の深さを他の溝の深さより深くして、点線23で示した如
く所定の部位を絞り込んだ構造としても良い。この場合、溝が深い部位で振動エネルギー
を閉じ込めることができる。また、こうした構造とすることにより水晶基板長手方向端部
に近接した溝24において、導電性接着剤等の励振用電極3への流れ込みを防ぐことがで
きるという効果も得られる。
【0055】
ここで、互いに深さの異なる複数の溝を一括処理にてフォトリソグラフィ技法とエッチ
ング技法により形成する手段について詳細に述べる。
水晶基板は、結晶軸方向により異方性を有するため、図4(a)に示すようにエッチン
グを行い溝を形成したとき、X軸方向に溝の断面を観察すると溝の側壁25,26の傾斜
度は、エッチング終点で夫々θ1,θ2となる性質を有している。
【0056】
図4(b)に示す如く溝側壁の傾斜度は、フォトリソグラフィ技法で形成した保護膜2
7で覆われていないエッチングすべき開口幅sの部位をエッチングする過程で傾斜度θ1
,θ2が形成されるまで、深さ(水晶基板厚さ)方向に向かってエッチングは進行し、深
さdの点Cに到達したとき、つまり傾斜度θ1=tan-1(CP/AP),θ2=tan
-1(CQ/BQ)の側壁25,26の形成が完了した時点でエッチングの終点となり、そ
れ以降はエッチングは進行しない。
【0057】
即ち、開口幅sの大きさによって側壁の形成時間(エッチング終点時間)が異なるため
、それによって深さdが変わってくる。
【0058】
本願出願人は、この性質に着眼してエネルギー閉じ込め型水晶振動子の設計に際し、図
4(a)に示す如く開口幅s1≠s2とすれば、深さd1≠d2となることを利用して、
深さの相異なる複数の溝をフォトリソグラフィ技法とエッチング技法を用いて一括処理す
ることを可能せしめ、所望の特性を満足する水晶振動子の実現に至った。
【0059】
以下に、水晶基板上に溝をフォトリソグラフィ技法とエッチング技法とにより一括形成
する手法について図5を用いて説明する。
水晶基板28を用意し(図5(a))、両主面上に保護膜29を塗布する(図5(b)
)。フォトリソグラフィにより溝に対応する部位に穴30の開いたマスク等の露光手段3
1を用いて保護膜29を露光し(図5(c))、現像を行い溝を形成する所定の部位のみ
水晶基板を露出させる(図5(d))。エッチングにより複数の溝32を一括形成し(図
5(e))、保護膜29を剥離する(図5(f))。
【0060】
ここで、前述の水晶基板のエッチングの性質を更に応用し、励振用電極から延出したリ
ード電極を他方の面へ導出するためのスルーホールの形成も前述の溝形成工程にて一括形
成にて処理することができる。
即ち、図6に示す如く、上述の水晶基板のエッチングの性質を考慮して、溝幅sに対し
てスルーホール33の開口断面幅tを、s<<tとすれば、水晶基板の両主面からエッチ
ングを同時または交互に行うことによって、水晶基板厚さ方向の中心で夫々のスルーホー
ル形成部位に形成される凹陥底部を互いに到達させ貫通させることができる。
【0061】
前記スルーホール33が形成されるまでには、溝32は溝幅sがスルーホール開口幅t
に比して極めて小さいので、所定の傾斜度θsをもって既にエッチング終点に到達してい
るので、溝32とスルーホール33は一括形成にて処理が可能となる。
尚、溝32の側壁傾斜度θsとスルーホール33の側壁傾斜度θtとの関係は、θs=
θtであることは言うまでもない。
【0062】
次に、図7及び図8を用いて本発明に係る水晶振動子の他の実施例について説明する。
図7(a)は、励振用電極辺34にほぼ平行な溝35であって溝35の長さを電極辺34
以上としたパターン、図7(b)は、圧電基板長辺と直交する線から、圧電基板長手方向
端部37に向けて所望の角度傾斜して形成した溝38のパターン、図7(c)は、圧電基
板主面上で圧電基板長辺36と直交する線から、圧電基板長手方向端部37に向けて所望
の角度傾斜し、且つ、圧電基板長手方向に平行し、励振用電極のほぼ中央を通過する線に
対して線対称となるよう形成した溝39のパターン、図7(d)は、圧電基板の対向する
長辺36から延在し、且つ、圧電基板長手方向端部37に向けて所望の角度傾斜させて互
いに間挿するように形成した溝40のパターン、図7(e)は、圧電基板短辺の二等分線
38上の所望部位から所望の曲率で励振用電極3側に湾曲して形成した溝41のパターン
である。
【0063】
図8(a)は、圧電基板長手方向端部37と前記励振用電極3との間に複数の孔42を
設け、孔42が短辺37方向に列状になっているパターン、図8(b)は、圧電基板長辺
36と直交する線から、圧電基板長手方向端部37に向けて所望の角度傾斜して形成した
列状の孔43のパターン、図8(c)は、圧電基板長辺36と直交する線から、圧電基板
長手方向端部37に向けて所望の角度傾斜し、且つ、圧電基板長手方向に平行し、励振用
電極3のほぼ中央部を通過する線に対して線対称となるよう形成した列状の孔44のパタ
ーン、図8(d)は、圧電基板長辺36から延在し、且つ、圧電基板長手方向端部37に
向けて所望の角度傾斜させて互いに間挿するように形成した列状の孔45のパターン、図
8(e)は、圧電基板短辺37の二等分線上の所望部位から所望の曲率で前記励振用電極
3側に湾曲して形成した列状の孔46のパターン、図8(f)は、圧電基板長手方向端部
37と前記励振用電極3との間に千鳥格子状に配列してなる複数の列状の孔47からなる
パターン、図8(g)は、圧電基板長手方向端部37と前記励振用電極3との間にランダ
ムに形成した孔48からなるパターンである。
【0064】
ここで、前述の変形実施例で示したATカット水晶基板上に形成する溝または孔のパタ
ーンの深さは、図9(a)に示す如く溝または孔の深さd1を一定とした構造や、図9(
b)に示す如く励振用電極3にもっとも近接した溝または孔の深さd2を他の溝より浅い
ことを特徴とした構造や、図9(c)に示す如く励振用電極3から水晶基板長手方向端部
37に向かって溝または孔の深さを暫時大きくした(d3<d4<d5)ことを特徴とし
た構造が考えられる。
【0065】
尚、図8(g)のランダムに設けた孔48の場合、その孔48の深さは、図10(a)
に示すように圧電基板短辺37方向の励振用電極3の端部に平行な位置49を基準とし、
該基準位置49から孔の中心までの距離xにおいて、当該距離が圧電基板長手方向端部に
近づくにしたがって、図10(b)の如く孔の深さyを適宜設定すれば良い。
【0066】
また、上記変形実施例における溝または孔の形成においても、水晶基板にフォトリソグ
ラフィ技法とエッチング技法とを用いれば容易に形成することができるは言うまでもない

【0067】
更に、エネルギー閉じ込め型振動子の設計にあたって、上述の溝または孔のパターンの
選定及び溝または孔の深さの設定は、エネルギー閉じ込めに要する励振用電極の電極膜厚
や電極寸法を考慮して、設計者の設計思想に基づいて適宜設定すれば良い。
【0068】
上述の如く、溝または孔の加工をフォトリソグラフィ技法とエッチング技法を用いるこ
とにより、当該溝または孔の寸法や位置を高精度に形成せしめ、更に量産においても好適
な加工手段であるので、従来の小型水晶基板の面取り加工に比して加工バラツキを極めて
抑制することができ、且つ、再現性も優れているので、水晶振動子の共振特性や温度特性
等の諸特性のバラツキや等価回路定数値のバラツキも低減することができる。
【0069】
次に、励振用電極と水晶基板長手方向端部との間に添加物(dopant)を添加する(dopi
ng)ことにより水晶基板の励振用電極直下の振動領域にエネルギーを閉じ込める手法につ
いて以下説明する。
【0070】
ATカット水晶振動子の励振用電極へ電圧を印加すると、その振動レスポンスには、主
振動モードである厚味滑り振動とスプリアスの要因となる輪郭滑り振動等の副振動モード
とが混在するという問題があり、これを解決するためにATカット水晶基板の一部分にの
み励振用電極を形成し、且つ、ATカット水晶基板の、特に小型の水晶基板において励振
用電極と基板長手方向端部との間に溝または孔を設けることによって、励振用電極直下に
主振動のエネルギーを閉じ込め、副振動モードを抑圧せしめた優れた水晶振動子を実現し
得るのは前述の通りである。
【0071】
本願出願人は、更に本願発明に係る他の実施例として、図11に示すように気相熱拡散
技術やLSIの製造等で広く用いられているイオン打込み(Ion Implantation)技術を応
用して、励振用電極3と水晶基板長手方向端部37との間にドーピング層50を形成する
ことによって、励振用電極直下に主振動のエネルギーを閉じ込め、副振動を抑圧した水晶
振動子が実現できることに思い至った。
【0072】
ここでは、イオン打込みを用いたドーピング層50の形成について以下詳細に説明する

イオン打込み技術は、添加物をイオン化し更にそれを加速してイオンビームとしてLS
Iで用いられるシリコン等の基板中へ叩き込む技術であって、イオンビームのエネルギー
を数百eV以上とすると基板へ照射されたイオンは表面層に入り込み、基板表面の原子を
真空中へたたき出す、所謂スパッタリング現象が発生する。更に、加速電圧を上昇させて
いくと、イオンは基板表面から基板厚さ方向へ更に深くまで入り込んでいく。
【0073】
イオン打込み装置は、質量分析計が付いているので特定のイオン種だけを選択して打込
むことができるので、同一の添加物元素に対して、打込み深さや量に応じて異なるイオン
種を選択できる。また、打込まれるイオンの量もイオン電流として、基板に流れる電流を
測定することで正確に求められ、打込み深さもイオン種と加速電圧で決まるので、添加物
の量及び深さ共に制御できる。
従って、水晶振動子の量産工程においてもイオン打込み手法は好適な工法である。
【0074】
ATカット水晶基板の励振用電極3と水晶基板長手方向端部37との間にドーピング層
50を形成するには、先ず、ATカット水晶基板主面上へ保護膜を塗布し、フォトリソグ
ラフィ技法によりドーピング層形成領域のみ水晶基板を露出させる。ボロン(B)やリン
(P)等の添加物を適宜選定し、イオン打込みによりドーピングを行いドーピング層を形
成後保護膜を剥離する。
【0075】
前述の処理を行うことによって、図11に示すように励振用電極直下のATカット水晶
基板の両側に形成されたドーピング層50により主振動モードのエネルギーのみを前記励
振用電極直下領域に閉じ込めることができ、副振動モードは抑圧され、優れた振動特性を
備えた水晶振動子51を実現することができる。
【0076】
尚、前述した図11の水晶振動子51は、励振用電極3とドーピング層50の境界付近
で波動を反射させ所望のエネルギーを閉じ込めた構造としているが、他の実施例として、
所望のエネルギーを閉じ込め、面取り加工と同等の効果を得るためにドーピング層形成領
域の断面の深さを溝や孔を形成した場合と等価となるよう設定してもよい。
即ち、溝や孔に代えてドーピング層形成領域を形成することにより、溝や孔を設けた場
合と同様の効果を得ることができる。
【0077】
次に、上述した如き本発明に係る水晶振動子の製造方法について図12に基づいて説明
する。尚、ここで一例として図1に示したATカット水晶振動子を製造する方法について
図示説明するが、図1以外に示した溝または孔を形成した水晶基板を有する水晶振動子に
ついての製造手順は図1の水晶振動子の製造手順に準じるものである。
【0078】
先ず、図12(a)の如く個片52となる部分が未分離で複数連結された状態にある単
一のウェーハ53を準備する。図12(b)は、単一のウェーハ53上の各個片52の励
振用電極3と該個片の長手方向端部37との間に位置する部位に複数の溝9をフォトリソ
グラフィ技法とエッチング技法により形成する工程である。図12(c)は、単一のウェ
ーハ53上であって、各個片52に対応し個片52の端部37に位置する部位にスルーホ
ール7を形成する工程である。スルーホール7の位置は各個片において定められた位置と
する。この例では各個片52間の境界線54に沿った位置とする。
【0079】
図12(d)は、電極形状がかたどられたマスク等の手段を用いた真空蒸着やスパッタ
成膜、或はフォトリソグラフィ技法等を用いて、励振用電極3、該励振用電極3から延出
するリード電極4を形成する工程である。
尚、この工程と同時に、或は前後してスルーホールの内壁の適所に導体膜6を形成して
一方のリード電極4との導通を確保する。
【0080】
図12(e)は、複数の個片52が連結された単一のウェーハ53をダイシング・ソー
等の切断手段を用いて個片52に分割する工程である。斯かる製造手順により図に示した
ATカット水晶振動子52(1)が完成する。
【0081】
図2のような点対称に位置する2つの穴状のスルーホールを有する水晶振動子の場合に
は、個片を複数連結した単一ウェーハの各個片の境界線54上から内側寄りの位置にスル
ーホール11を形成することとなる。更に、図12(b)の溝または孔の形成工程と図1
2(c)のスルーホールの形成とを同時に行うことは前述の通り水晶基板のエッチングの
性質を利用することにより可能であり、リードタイム短縮に寄与する。
【0082】
また、図11に示すような励振用電極3と水晶基板長手方向端部37との間にドーピン
グ層50を形成した水晶振動子51の場合には、図12(b)の溝または孔の形成工程を
水晶基板の励振用電極3と水晶基板長手方向端部37との間に添加物をイオン打込み装置
により添加する工程に置き換えれば良い。尚、斯かるドーピング層50の形成工程は、図
12(c)のスルーホール形成工程と前後してもかまわない。
【0083】
上述したごとき本発明に係る水晶振動子は、今日の小型の水晶振動子に用いられる小型
の水晶基板に面取り加工と同等な溝または孔加工をフォトリソグラフィ技法とエッチング
技法とにより、高精度にバラツキ無く、且つ、安定した再現性とによって実現し得るので
、共振特性や温度特性等の諸特性及び等価回路定数値のバラツキを抑制せしめたエネルギ
ー閉じ込め型水晶振動子を提供できる。
【0084】
また、励振用電極と水晶基板長手方向端部との間にドーピング層を形成することによっ
て、励振用電極直下に主振動のエネルギーのみを閉じ込めることが可能となったので、上
述と同様に共振特性や温度特性等の諸特性及び等価回路定数値のバラツキを抑制せしめた
エネルギー閉じ込め型水晶振動子を提供できる。
【0085】
更に、本発明に係る水晶振動子の製造方法は量産において極めて好適であり、バラツキ
が無く歩留りも高いので、量産性の極めて高い製造方法を提供できる。
【0086】
以上、ATカット水晶基板を用いた圧電振動子及びその製造方法を本発明の実施例とし
て説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の圧電材料、例えばランガサ
イト(La3Ga5SiO14)や四ホウ酸リチウム(Li247)、圧電セラミック基板
などの圧電材料についても本発明を適用することができるのは言うまでもない。
【0087】
(発明の効果)
本発明に係る圧電振動子及びその製造方法は、以上説明した如く構成したので下記の如
く優れた効果を奏する。
請求項1乃至28の発明は、今日の小型の圧電振動子に用いられる小型の圧電基板に面
取り加工と同等な溝または孔加工をフォトリソグラフィ技法とエッチング技法とにより、
高精度にバラツキ無く、且つ、安定した再現性とによって実現し得るので、共振特性や温
度特性等の諸特性及び等価回路定数値のバラツキを抑制せしめたエネルギー閉じ込め型圧
電振動子を提供できるという優れた効果を奏する。
【0088】
請求項29および30の発明は、励振用電極と圧電基板長手方向端部との間にドーピン
グ層を形成することによって、励振用電極直下に主振動のエネルギーのみ閉じ込めること
を可能せしめたので、共振特性や温度特性等の諸特性及び等価回路定数値のバラツキを抑
制せしめたエネルギー閉じ込め型圧電振動子を提供することができるという優れた効果を
奏する。
【0089】
請求項31の発明は、圧電振動子をバッチ処理にてバラツキの無い、且つ、高い歩留り
で製造することが可能であるので大量生産において極めて好適であるという優れた効果を
奏する。
【0090】
請求項32の発明は、溝また孔の形成工程とスルーホール形成工程とを同時に行うこと
ができるので、リードタイムを短縮をすることができるため生産効率を高めることに優れ
た効果を奏する。
【0091】
請求項33の発明は、励振用電極とリード電極を形成する工程とスルーホールに導電膜
を形成する工程とを同時に行うことができるので、リードタイムを短縮することができる
ため生産効率を高めることに優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0092】
1 圧電振動子、2 パッケージ、3 励振用電極、4 リード電極、5 切欠き部、
6 導電膜、7 スルーホール、8 励振用電極辺、9 溝、10 励振用電極、11
スルーホール、12 リード電極、13 導電膜、14 圧電振動子、15 パッケージ
、16 パッド、17 パッド、18 導電性接着剤、19 点線、20 圧電基板、2
1 溝、22 溝、23 点線、24 溝、25 側壁、26 側壁、27 保護膜、2
8 圧電基板、29 保護膜、30 穴、31 マスク、32 溝、33 スルーホール
、34 励振用電極辺、35 溝、36 長辺、37 短辺、38 溝、39 溝、40
溝、41 溝、42 孔、43 孔、44 孔、45 孔、46 孔、47 孔、48
孔、49 基準線、50 ドーピング層、51 圧電振動子、52 個片、53 単一
ウェーハ、54 境界線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み滑り振動を主振動とする圧電振動子において、圧電基板両主面上中央部に励振用電
極を形成すると共に、
前記圧電基板の厚み滑り振動の伝搬方向端部と前記励振用電極との間に複数の溝を設け
たことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記圧電振動子が短冊型であって、
前記複数の溝は、前記圧電基板の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜して設けられ
ていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記圧電振動子が短冊型であって、
前記複数の溝は、前記圧電基板の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜し、
且つ、前記圧電基板長辺に平行し且つ前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線に対し
て線対称に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記複数の溝は、前記圧電基板の対向する辺から延在し、
互いに間挿するよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記複数の溝は、前記圧電基板の辺から、
前記圧電基板の辺に平行し且つ前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線付近まで延在
することを特徴とする請求項4記載の圧電振動子。
【請求項6】
前記溝が、所定の曲率で前記励振用電極側に湾曲していることを特徴とする請求項1記
載の圧電振動子。
【請求項7】
前記溝の長さは、前記励振用電極辺の長さ以上であることを特徴とする請求項1,2,
3,6記載の圧電振動子。
【請求項8】
前記励振用電極の両側に位置し、該電極にもっとも近接した一対の溝の圧電基板厚さ方
向の深さは、他の溝の深さより浅いことを特徴とする請求項1,2,3,6,7記載の圧
電振動子。
【請求項9】
前記複数の溝の圧電基板厚さ方向の深さは、前記励振用電極に近い程浅く、
圧電基板長手方向端部に近いほど深くしたことを特徴とする請求項8記載の圧電振動子

【請求項10】
前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置にある溝の圧電基板厚さ方
向の深さを他の溝の深さより深くしたことを特徴とする請求項1乃至7記載の圧電振動子

【請求項11】
前記励振用電極の両側に位置し、該電極にもっとも近接した一対の溝及びその次に近接
した一対の溝の圧電基板厚さ方向の深さは、他の溝の深さより浅いことを特徴とする請求
項4及び5記載の圧電振動子。
【請求項12】
前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置にある隣り合う一組の溝と

該一組の溝とは前記励振用電極を挟んで対向する位置にある他の隣り合う一組の溝の圧
電基板厚さ方向の深さをそれ以外の溝の深さより深くしたことを特徴とする請求項11記
載の圧電振動子。
【請求項13】
厚み滑り振動を主振動とする圧電振動子において、圧電基板両主面上中央部に励振用電
極を形成すると共に、
前記圧電基板の厚み滑り振動の伝搬方向端部と前記励振用電極との間に複数の孔を設け
たことを特徴とする圧電振動子。
【請求項14】
前記圧電振動子が短冊形であって、
前記複数の孔は、前記圧電基板の短辺方向に列状に形成したことを特徴とする請求項1
3記載の圧電振動子。
【請求項15】
前記圧電振動子が短冊形であって、
前記孔の列が、前記圧電基板の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜していることを
特徴とする請求項14記載の圧電振動子。
【請求項16】
前記圧電振動子が短冊形であって、
前記孔の列が、前記圧電基板の長辺と直交する線に対し所望の角度傾斜し、
且つ、前記圧電基板長辺方向に平行し且つ前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線に
対して線対称に設けられていることを特徴とする請求項13又は14記載の圧電振動子。
【請求項17】
前記複数の列は、前記圧電基板の対向する辺から延在し、
互いに間挿するよう配置されていることを特徴とする請求項13又は14記載の圧電振
動子。
【請求項18】
前記複数の列が、前記圧電基板の辺から、
前記圧電基板の辺に平行し且つ前記励振用電極のほぼ中央部を通過する線付近まで延在
することを特徴とする請求項17記載の圧電振動子。
【請求項19】
前記列が、所望の曲率で前記励振用電極側に湾曲していることを特徴とする請求項14
記載の圧電振動子。
【請求項20】
前記孔が、千鳥格子状に配列したことを特徴とする請求項13記載の圧電振動子。
【請求項21】
前記列の長さは、前記励振用電極の長さ以上であることを特徴とする請求項14,15
,16,19記載の圧電振動子。
【請求項22】
前記励振用電極に近い前記孔の圧電基板厚さ方向の深さは、他の孔の深さより浅いこと
を特徴とする請求項13,20記載の圧電振動子。
【請求項23】
前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置にある複数の孔の圧電基板
厚さ方向の深さを他の孔の深さより深くしたことを特徴とする請求項13,20記載の圧
電振動子。
【請求項24】
前記孔の圧電基板厚さ方向の深さは、前記励振用電極に近いほど浅く、
圧電基板長手方向端部に近いほど深くしたことを特徴とする請求項13,20記載の圧
電振動子。
【請求項25】
前記励振用電極に近い前記列を構成する孔の圧電基板厚さ方向の深さは、他の列に含ま
れる孔の深さより浅いことを特徴とする請求項14,15,16,17,18,19記載
の圧電振動子。
【請求項26】
前記列を構成する孔の圧電基板厚さ方向の深さは、前記励振用電極に近い列の孔ほど浅
く、
圧電基板長手方向端部に近い列の孔ほど深くしたことを特徴とする請求項14,15,
16,17,18,19記載の圧電振動子。
【請求項27】
前記励振用電極と圧電基板長手方向端部との間の所望の位置にある列を構成する孔の圧
電基板厚さ方向の深さを他の列を構成する孔の深さより深くしたことを特徴とする請求項
14,15,16,19記載の圧電振動子。
【請求項28】
前記励振用電極にもっとも近接した一対の列及びその次に近接した一対の列を構成する
孔の圧電基板厚さ方向の深さは、他の列を構成する孔の深さより浅いことを特徴とする請
求項17及び18記載の圧電振動子。
【請求項29】
厚み滑り振動を主振動とする圧電振動子において、圧電基板両主面上中央部に励振用電
極を形成すると共に、
前記圧電基板の厚み滑り振動の伝搬方向端部と前記励振用電極との間に添加物を添加し
たことを特徴とする圧電振動子。
【請求項30】
前記添加物は、イオン打込み技術或は気相熱拡散技術を用いて添加したことを特徴とす
る請求項29記載の圧電振動子。
【請求項31】
単一のウェーハ上であって、圧電振動子の励振用電極と該圧電振動子個片の長手方向端
部との間に位置する部位に複数の溝または孔を形成する工程或は添加物を添加する工程と

単一のウェーハ上であって、各圧電振動子個片に対応し、圧電振動子個片の端部或は端
部付近に位置する部位にスルーホールを形成する工程と、
単一のウェーハ上に圧電振動子個片の励振用電極及びリード電極を夫々複数形成する工
程と、
前記スルーホールに導体膜を形成する工程と、前記単一のウェーハを複数の圧電振動子
に分割する工程とからなることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項32】
上記溝または孔を形成する工程と上記スルーホールを形成する工程とを同時に行うこと
を特徴とする請求項31記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項33】
上記励振用電極及びリード電極を形成する工程と上記スルーホールに導体膜を形成する
工程とを同時に行うことを特徴とする請求項31または32記載の圧電振動子の製造方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−97623(P2011−97623A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282770(P2010−282770)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2001−229064(P2001−229064)の分割
【原出願日】平成13年7月30日(2001.7.30)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】