圧電素子を用いた風力発電機並びに風速測定装置及び風力発電装置
【課題】設置が容易であり、瞬間風速の測定が可能な風速測定装置、及び外部に電力の供給が可能な風力発電装置を提供すること。
【解決手段】
垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車と中心軸を共通にする円筒の内部に周設された複数の柱に設けられた垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車の中心軸に軸支された固定保持部材に一端が固定され、中心軸から円周に向かって垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、を具備する風力発電機。
【解決手段】
垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車と中心軸を共通にする円筒の内部に周設された複数の柱に設けられた垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車の中心軸に軸支された固定保持部材に一端が固定され、中心軸から円周に向かって垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、を具備する風力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用い、風力を利用して発電する風力発電機、並びに、該風力発電機を用いた風速測定装置及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンな発電方法として風力発電が注目されるようになってきている。一般的な風力発電装置としては、プロペラを風力で回転させ、電磁誘導により発電するものが知られているが、これには、装置が大型であってコストが高いことや、設置場所が制限されること、また、所定の設置間隔を取らなければ発電効率が低下すること等の問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、圧電素子を用いた発電装置が提案されている。例えば、特許文献1には、空気の渦流を発生させて振動板を振動させ、その振動を圧電素子に加えて発電する方法が記載されている。しかしながら、この構造では圧電素子に加わる振動の変位は限られたものになる場合があった。
【0004】
また、特許文献2には、フレーム部材と、フレーム部材に支持された圧電振動板と、振動板の表面に取り付けられた受風部材とを備え、風を受けて振動板に屈曲運動を生じさせることにより発電する風力発電装置が記載されている。しかしながら、この構造では、振動板の振動がフレーム部材によって抑制され、発電量が十分に得られないという問題があった。一方、振動抑制を小さくするためにフレーム部材を大きくすると、設置面積が広くなってしまうという問題があった。
【0005】
更に、特許文献1と特許文献2に共通する問題点として、これらの装置は、風が脈動しているか、または定常流であっても羽根の後方でカルマン渦を形成する場合しか振動しないので、駆動効率が低いという問題もあった。
【0006】
風の脈動や羽根の後方での渦だけに依存しない装置として、特許文献3には、長尺状でその幅方向に所定角度で二つ折りされた形状を有し、その長手方向の一端が固定された状態で風力を受けた際に所定のねじれ振動を生ずるように、その幅が長手方向において変化している受風翼と、前記受風翼の振動によって発電する発電部とを具備する風力発電装置が記載されている。そして、発電部には、屈曲することによって発電する圧電素子が使用されている。しかしながら、この構造では、風自体を制御していないため、受風翼に取り付けられた圧電素子に効率的な振動を常に与えられない場合があった。
【0007】
また、特許文献4には、断面形状が略V字状等の受風翼を支持する支持棒をその軸芯回りに回転自在に保持する軸保持部材と、この軸保持手段が取り付けられる振動板と、風力によって振動板に発生する振動を利用して発電する発電機構を具備する風力発電装置が記載されている。そして、振動板には圧電素子は貼り付けられており、圧電素子が屈曲することによって発電できる構造が記載されている。しかしながら、この構造でも、風自体を制御していないため、振動板に貼り付けられた圧電素子に効率的な振動を常には与えられない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−303726号公報
【特許文献2】特開2001−231273号公報
【特許文献3】特開2005−273644号公報
【特許文献4】特開2006−291842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、風力を有効的に利用し、安価で設置が容易であり、瞬間風速の測定が可能な風速測定装置、及び外部に電力の供給が可能な風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、垂直軸風車を有する風力伝達機構、及び、圧電素子部材に振動を与える受力板と該振動により屈曲し発電する圧電素子部材とを有する発電機構を組み合わせることによって上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部又は下部に、該垂直軸風車の中心軸に一端が軸支された複数の垂直板、若しくは、該垂直軸風車の中心軸に固定された軸柱に設けられた複数の垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車と中心軸を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直板若しくは垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、
を具備する風力発電機を提供するものである(態様1)。
【0012】
また本発明は、垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車と中心軸を共通にする円筒の内部に周設された複数の柱に設けられた垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車の中心軸に軸支された固定保持部材に一端が固定され、円周の外部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、
を具備する風力発電機を提供するものである(態様2)。
【0013】
また本発明は、上記風力発電機を用いた風速測定装置を提供するものである。
【0014】
また本発明は、上記風力発電機を用い、外部に電力を供給できるようにした風力発電装置を提供するものである。
【0015】
更に本発明は、本発明における上記風速測定装置を用いて測定された風速データを無線送信するための電力供給用の上記風力発電装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定風速下で生じるカルマン渦によって生じる非対称の流れによる回転振動を捉えることができ、風力を有効的に利用し、単純な構造であるため安価で、措置の設置が容易である。また、瞬間風速の測定が可能であり突風信号を発信することができ、該回転振動を複数の圧電素子部材に段階的に伝えることにより風速の階級分けが可能な風速測定装置を提供することができる。更に、該回転振動を圧電素子部材に伝達させることにより、高い発電効率を実現できて外部に電力を供給できる風力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を有する装置である。
【図2】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す上面図である。
【図3】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す側面図である。
【図4】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す上からの透視図である。 (a)複数の垂直板14を用いた場合 (b)複数の垂直溝16を用いた場合 (c)複数の柱19に設けられた垂直溝16を用いた場合
【図5】本発明の風力発電機を用いた風速測定装置の風速が測定できる機構を示す上からの透視図である。 (a)圧電素子部材21[1]のみが振動している場合 (b)圧電素子部材21[1]〜[2]が振動している場合 (c)圧電素子部材21[1]〜[3]が振動している場合 (d)圧電素子部材21[1]〜[4]が振動している場合
【図6】本発明の風力発電機において、垂直溝16を用いたときの、垂直溝16と受力板23及び圧電素子部材21との位置関係を示したものである。 (a)垂直溝16の各溝幅を段階的に広くした場合 (b)垂直溝16の各溝幅が全て等しい場合
【図7】本発明の風速測定装置からの出力を検知するための測定回路の一例を示す回路図である。
【図8】本発明の風力発電機からの集電を行う集電回路の一例を示す回路図である。
【図9】実施例1において圧電素子部材21から得られる発電電圧の一例を示すグラフである。
【図10】実施例2で用いた風速測定機の上からの透視図である。
【図11】実施例2において圧電素子部材21から得られる出力電圧の一例を示すグラフである。 (a)風速8.17m/s下における出力電圧 (b)風速16.5m/sにおける出力電圧 (c)風速22.5m/sにおける出力電圧 (d)風速27.2m/sにおける出力電圧
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施の具体的形態のみに限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
【0019】
(1)風力発電機について
図1〜図4には、風力伝達機構(1)と風力発電機構(2)が示されている。図1は、本発明の風力発電機の好ましい基本構成を有する装置の一例を示すものであり、図2は、本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す上面図であり、図3はその側面図であり、図4は上からの透視図である。
【0020】
<態様1について>
風力伝達機構(1)は、少なくとも、
(a)垂直軸風車10
(b)該垂直軸風車10の上部又は下部に、該垂直軸風車10の中心軸11に一端が軸支された複数の垂直板14、若しくは、該垂直軸風車10の中心軸11に一端が固定された軸柱15に設けられた複数の垂直溝16
によって構成されている。
【0021】
風力発電機構(2)は、少なくとも、
(c)該垂直軸風車10と中心軸を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材21
(d)前記圧電素子部材21の一端に取り付けられており、上記垂直板14若しくは垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材21に伝えて発電させる受力板23
(e)前記圧電素子部材21の、前記受力板23が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材24
によって構成されている。
【0022】
(1−1)風力伝達機構について
本発明における垂直軸風車とは、風向きに対し回転軸が垂直になっている風車である。垂直軸風車であることによって、風向きの影響を受けずに常に風を受けることができ発電が効率的となり、また、風速が正確に測定でき、特に本発明の特長である瞬間風速の測定にも適用が可能となる。具体的には、例えば、クロスフロー形風車、サボニウス形風車、パドル形(風杯型)風車、ジャイロミル形風車、ダリウス形風車、S形風車等が挙げられる。
【0023】
垂直軸風車には、抗力型垂直軸風車と揚力型垂直軸風車がある。抗力型垂直軸風車とは、風向きに対し回転軸が垂直であり、抗力で回転力を得る風車であり、揚力型垂直軸風車とは、風向きに対し回転軸が垂直であり、揚力で回転力を得る風車である。本発明においては何れも用いられるが、受力板23を押す力が強く、また、強風時においても過度な回転力を与えないように、半円筒羽根13の枚数で回転数やトルクを調整可能等の点で抗力型垂直軸風車が好ましい。
【0024】
抗力型垂直軸風車の中でも、騒音、起動性、安全性、指向性、出力特性等の点で、クロスフロー形風車、サボニウス形風車、パドル形(風杯型)風車等がより好ましく、一定風速下で生じるカルマン渦を利用して効率良く回転振動が捉えられる点、風向きの影響を受け難くい点で、クロスフロー形風車が特に好ましい。
【0025】
本発明における抗力型垂直軸風車としてクロスフロー形風車を用いる場合には、効率良く回転力を得るために、上円盤12aと下円盤12bとで中心軸11が固定された半円筒羽根13が4〜10枚用いられることが好ましい。特に好ましくは6〜10枚である。半円筒羽根13の数が多すぎると、回転速度が大きくなりすぎる場合があり、一方、少なすぎると、回転速度が小さく圧電素子に与える振動が少なくなる場合がある。
【0026】
半円筒羽根13の大きさについては、風向きの影響を受けずに回転できれば特に制限はない。
【0027】
本発明の風力伝達機構(1)には、該風車の中心軸11に一端が軸支された複数の垂直板14、若しくは、該風車の中心軸11に固定された軸柱15に設けられた複数の垂直溝16を有する。
【0028】
風車の中心軸11に一端が軸支された複数の垂直板14は、例えば、図4(a)に示すように、中心軸11に固定された軸柱15に一端が軸支されていてもよく、中心軸11に直接に一端が軸支されていてもよい(図示せず)。垂直板14は、中心軸11の回りを風車の回転と共に回転し、その回転の際に、受力板23を押して振動を開始させるものである。
【0029】
本発明における複数の垂直板14の形状については、効率的に受力板23を通じて圧電素子部材21を屈曲させることができれば特に限定はなく、長方形板状や円形板状等の何れでもよい。垂直板14の面積についても特に限定はないが、受力板23を押す際に垂直板14自身が変形し、圧電素子部材21を屈曲させるのに十分な力を伝達できないことがないように、垂直板14に用いる材質の弾性係数から鑑みて十分な面積を有していることが、弱い風によっても圧電素子部材21をより屈曲させることができる点で好ましい。複数の垂直板14の材質も特に限定はなく、金属や樹脂等の何れでもよいが、繰り返し強度、塑性変形しない材質が好ましい。
【0030】
複数の垂直板14は、3〜16枚の垂直板14が好ましく、より好ましくは4〜8枚の垂直板14であり、特に好ましくは4枚の垂直板である。垂直板14の枚数が多すぎると、回転力に対する反発力が大きくなりすぎ、小さい風力では効率的な発電ができない等の場合があり、一方、少なすぎると、その枚数分しか段階分けによって風速が測定できない場合があるので、風速測定の細かい段階分けができなくなる、風向により圧電素子部材21の出力が影響を受けやすくなる等の場合がある。
【0031】
複数の垂直板14は、段階的に受力板23を押し始めるように、一定の距離ずつずらして設置してあることも好ましい。段階的に受力板23を押し始めるようにするには、後で詳述するように複数の受力板23の方を一定の距離ずつずらして設置することもできるが、複数の垂直板14の方を一定の距離ずつずらして設置することも可能である。これにより、後述する方法(A)を用いた風速測定装置が得られる。
【0032】
また、風車の中心軸11に固定された軸柱15に設けられた複数の垂直溝16とは、例えば、図4(b)に示すように、風車の中心軸11に軸支された軸柱15に、中心軸11と平行に、地面とは垂直に設けられた溝であり、風車の回転と共に回転し、その回転の際に、受力板23を押して振動を開始させるものである。
【0033】
垂直溝16の個数としては、3〜16個であることが好ましく、より好ましくは4〜8個であり、特に好ましくは4個である。垂直溝16の個数が多すぎると、回転力に対して圧電素子部材21自身が有する反発力が大きくなりすぎ、小さい風力では効率的な発電ができない等の場合があり、一方、少なすぎると、その個数分しか段階分けによって風速が測定できない場合があるので、風速測定の細かい段階分けができなくなる、風向により圧電素子部材21の出力が影響を受けやすくなる等の場合がある。
【0034】
本発明における垂直溝16の形状については、効率的に受力板23を押して圧電素子部材21を屈曲させることができれば特に限定はない。複数の垂直溝16が設けられている軸柱15の材質も特に限定はなく、金属や樹脂等の何れでもよいが、繰り返し強度、耐摩耗性等の点で金属が好ましい。
【0035】
また、複数の垂直溝16の各溝幅は、その全てが等しくなっていてもよく、段階的に広くなっていてもよい。複数の垂直溝16のうち、どの段階のものまでが受力板23を押して振動を開始させたかを検知して風速を測定する場合(後述する方法(A)の場合)には、段階的に広くなっている必要がある。
【0036】
好ましい溝幅としては、1mm〜8mm、より好ましくは1mm〜4mmである。溝幅が大きすぎる場合は、垂直溝16の個数を少なくせざるを得ないので、上記した垂直溝16の個数が少ない時と同様の問題が生じる場合があり、また、小さい風力下では圧電素子部材21に伝達する力が少なくなる等の場合があり、一方、小さすぎる場合は、回転力が圧電素子部材21に与える力が過剰になる場合があり、圧電素子部材21の耐久性に影響を与える等の場合がある。
【0037】
垂直溝16と受力板23との間のクリアランスは、その全てが等しくなっていてもよく、段階的に広くなっていてもよい。また、このクリアランスは0mmであってもよい。すなわち、クリアランスは実質的になくてもよい。
【0038】
(1−2)風力発電機構について
本発明における圧電素子部材21は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に中心に向かって垂直に張り出している。該圧電素子部材21は、薄手の圧電素子22を金属板等に貼り合わせたモノモルフ構造を有するものであっても、2枚の圧電素子を貼り合わせたバイモルフ構造を有するものであってもよいが、製造が容易である、発熱しない、発電能力の効率からバイモルフ構造が好ましい。また、1個の圧電素子部材21を構成する圧電素子22は複数個であってもよい。
【0039】
本発明における複数の圧電素子部材21の位置は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に、それぞれ等しい距離を持って等間隔に固定してもよいが、風速により上記複数の垂直板14が、段階的に上記受力板23を押して振動を開始させるようにするためには、図5(a)に示すように段階的に一定の距離ずつずらして固定する。
【0040】
圧電素子部材21は、上記複数の垂直板14又は複数の垂直溝16と通常等しい数だけ設けられる。
【0041】
本発明における受力板23は、図3に示すように、上記の圧電素子部材21の一端に取り付けられており、垂直板14若しくは垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材21に伝えて発電させるものである。本発明における受力板23の形状については、効率的に圧電素子部材21を屈曲させることができれば特に限定はなく、長方形板状や円形板状等の何れでもよい。受力板23の面積についても特に限定はないが、受力板23を押す際に垂直板14自身が変形し圧電素子部材21を屈曲させるために十分な力を伝達できないことがないように、垂直板14に用いる材質の弾性係数から鑑みて十分な面積を有していることが好ましい。受力板23の材質も特に限定はなく、金属や樹脂等の何れでもよい。
【0042】
上記圧電素子部材21の、上記受力板23が取り付けられていない側は、固定保持部材24によって固定されている。固定保持部材24は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする同心円の円周上に配置されている。本発明における圧電素子部材21は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に、固定保持部材24によって一端が固定されて、中心に向かって張り出している。
【0043】
固定保持部材24は、圧電素子部材21が動かないように固定するものであり、圧電素子部材21の屈曲の力を逃がさないようになっていることが好ましく、風力によって実質的に変位を受けずに静止しているようになっている。
【0044】
<態様2について>
本発明の態様2については、図4(c)に示した。
風力伝達機構(1)は、少なくとも、
(a)垂直軸風車10
(b)該垂直軸風車10の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に設けられた垂直溝16
によって構成されている。
【0045】
風力発電機構(2)は、少なくとも、
(c)該垂直軸風車10の中心軸11に軸支された固定保持部材24
(d)前記固定保持部材24に一端が固定され、円周の外部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材21
(d)前記圧電素子部材21の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材21に伝えて発電させる受力板23
によって構成されている。
【0046】
(1−3)風力伝達機構について
垂直軸風車10は上記態様1で記載した通りである。本発明の風力発電機構(1)には、該風車10と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に設けられた垂直溝16を有する。該垂直溝16は、垂直軸風車10の上部、下部又は垂直軸風車10と同一面の内部(垂直軸風車10の内部)の何れにあってもよいが、垂直軸風車10の内部にあることが好ましい。
【0047】
風車10と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に設けられた垂直溝16は、例えば、図4(c)に示すように、風車と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に、地面とは垂直に設けられた溝であり、風車の回転と共に回転し、その回転の際に受力板23を振動させるものである。
【0048】
円筒18の内部に周設された柱19の個数としては、3〜16個であることが好ましく、より好ましくは4〜8個であり、特に好ましくは4個である。柱19の個数が多すぎると、回転力に対して圧電素子部材21が有する反発力が大きくなりすぎ(あまり屈曲せず)、小さい風力では効率的な発電ができない場合があり、一方、少なすぎると、その個数分しか段階分けによって風速が測定できない場合があるので、風速測定の細かい段階分けができなくなる、風向により圧電素子部材21の出力が影響を受けやすくなる等の場合がある。垂直溝16の形状、溝幅やクリアランスは上記態様1と同様である。
【0049】
(1−4)風力発電機構について
本発明における圧電素子部材21は、風車10の中心軸11に軸支された固定保持部材24に一端が固定され、中心軸11から円周の方に向かって垂直に張り出している。該圧電素子部材21及び固定保持部材24の構造等は、前記態様1と同様である。
【0050】
上記圧電阻止部材21の一端に取り付けられている受力板23は、図4(c)に示すように、垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動して、その振動を該圧電素子部材21に伝えて、圧電素子22を発電させるものである。受力板23の形状等については、前記態様1で上記した通りである。
【0051】
以下、本発明の風力発電機を用いた風速測定装置と風力発電装置について説明する。
【0052】
(2)風速測定装置について
本発明の風速測定装置は、上記した風力発電機を用いたものである。該風速測定装置は、以下の(A)、(B)及び/又は(C)の方法によって風速を測定する。
(A)上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16のうち、どの段階のものまでが上記受力板23を押して振動を開始させたかを検知して風速を測定する。
(B)上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動する際の振動数を圧電素子部材21が検知して風速を測定する。
(C)上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動することによって圧電素子部材21が振動して発電する際の出力電圧又は電力を検知して風速を測定する。
【0053】
<方法(A)について>
方法(A)は、圧電素子部材21の位置を、該垂直軸風車10の中心軸11からそれぞれ段階的にずらして固定して、風速により、上記複数の垂直板14が、段階的に上記受力板23を押して振動を開始させるようにして風速を測定するものである。すなわち、例えば、図5(a)〜(d)に示すように、垂直板14と受力板23との接触が段階的になるように、垂直板14と受力板23との間隔が、距離tずつ増えていくように設定し、風速に応じて各垂直板14が段階的に受力板23を押して振動を開始させるようにする。図5(a)では、受力板23[1]と垂直板14との距離は、両者が接触しているので0であり、受力板23[2]と垂直板14との距離はtであり、受力板23[3]と垂直板14との距離は2tであり、受力板23[4]と垂直板14との距離は3tである。
【0054】
方法(A)による風速測定は、具体的には以下の通りである。すなわち、風速が小さい場合には、図5(a)に示すように、垂直板14が「受力板23[1]−圧電素子部材21[1]」のみに振動を与え、風速がそれより大きくなると、図5(b)に示すように、2枚の垂直板14が、それぞれ「受力板23[1]−圧電素子部材21[1]」と「受力板23[2]−圧電素子部材21[2]」の2個に振動を与える。このように、風速が大きくなるにつれて、振動を与える垂直板14と「受力板23−圧電素子部材21」の組数が増えていく。そして、何組が振動して発電されているかを検知して風速を測定する。
【0055】
距離tとしては、1mm〜8mmが好ましく、特に好ましくは1mm〜4mmである。距離tが大き過ぎる場合には、小さい風力下で圧電素子22に伝達する力が少なくなる等の場合があり、弱風時の検知感度が低下する場合があり、小さすぎる場合には、圧電素子22に与える力が弱風時において高くなるため強風時に適切に検知できない場合がある。
【0056】
また、方法(A)については、複数の垂直溝16の溝幅を段階的に広げ、上記受力板23との間に段階的にクリアランスを設け、風速により、上記複数の垂直溝16が、段階的に上記受力板23を押して振動を開始させるようにすることもできる。すなわち、例えば図6(a)に示すように、複数の垂直溝16の溝幅を段階的に広げ、受力板23との間に段階的に広くなるクリアランスを設け、風速により、複数の垂直溝16が、段階的に受力板23を押し始めて振動を開始させることもできる。風速が大きくなるにつれて、振動を与える垂直板14と垂直溝16の組数が増えていく。そして、何組が振動して発電されているかを検知して風速を測定する。
【0057】
この場合、溝幅は、0.5mm〜1mmずつ広げていくことが好ましく、特に好ましくは1mmずつ広げていくことである。
【0058】
上記風速測定装置は、何組が振動しているかが瞬時に分かることから、瞬間時の風速が容易に得られ、従来は測定が難しかった瞬間風速測定装置として機能する。例えば、パドル形(風杯型、三杯型)風速計では、瞬間風速の値はその直前の風速の影響を受けてしまう。従って、本発明の風速測定装置は、瞬間風速測定装置として用いられることも好ましい。また、振動している受力板23の数によって、容易に風速の階級分けが可能になる。更に、受力板23の特定の枚数以上が振動を開始したときに(特定の組数が振動した時に)警報を発信するように設定しておけば、瞬間風速により警報を発信することができて災害防止に極めて有効である。
【0059】
<方法(B)について>
方法(B)は、上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動する際の振動数を圧電素子部材21が検知して風速を測定する。通常、振動数が大きいほど風速が強いことになる。方法(B)の場合、上記tは0であっても、0でなくてもよい。また、垂直溝16の溝幅は段階的に広げてあっても(図6(a))、段階的に広げてなくて(溝幅が等しくて)もよい(図6(b))。すなわち、方法(B)は、単独で風速を測定しても、方法(A)と組み合わせて風速を測定してもよい。
【0060】
<方法(C)について>
方法(C)は、上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動することによって、その振動を圧電素子部材21に伝え、圧電素子部材21が周期的に振動して発電する際の出力電圧又は電力を検知して風速を測定する。圧電素子部材21からの出力電圧又は電力が大きいほど風速が強いことになる。方法(C)は、単独で風速を測定しても、方法(A)や方法(B)と組み合わせて風速を測定してもよい。
【0061】
図7に、本発明の風速測定装置の測定回路80の一例を示した。測定回路80では、圧電素子部材21が発生した電圧を電圧計82で測定する。
【0062】
(3)風力発電装置について
本発明の風力発電装置は、上記した風力発電機を用い、外部に電力を供給できるようにしたものである。また、上記した風速測定装置を用いて測定された風速データを無線送信するための電力供給用としても用いることができる。
【0063】
本発明における風力発電装置は、例えば図6(b)に示すように、複数の垂直溝16の各溝幅は全て等しい方が好ましい。また、本発明における圧電素子部材21は、垂直軸風車10の中心軸11から放射状に全て等しい距離をおいて固定することが好ましい。
【0064】
より多くの電力を得るために、本発明における風力伝達機構(1)及び発電機構(2)を1個の垂直軸風車10に複数設置してもよい。その際、垂直軸風車10の下部に積み重ねるようにして設置することが、装置の設置がしやすい等点で好ましい。
【0065】
また、風速測定装置と風力発電装置は共通の装置とすることも可能ではあるが、両者を分離させた構造の方が、風速測定装置の測定回路80を動作させるための安定的な電力を確保できる点で好ましい。また、1個の垂直軸風車10に対して、前記の風速測定装置と風力発電装置を積み重ねて設置し、かかる風速測定装置で測定した風速のデータを、かかる風力発電装置で発電した電力により無線発信することも好ましい。
【0066】
図8に、圧電素子部材21からの集電を行う集電回路90の一例を示した。かかる集電回路90は本発明の風力発電装置に好適に用いられる。集電回路90は、圧電素子部材21a、21bが発生した電気(交流)を整流する整流回路91と、整流回路91によって整流された電力の一部を貯蔵するとともに、貯蔵した電力を負荷92へ供給する充放電回路93とを有している。整流回路91は、ダイオード94で全波整流する構成を有する。また、充放電回路93は、電力を貯蔵/放出するコンデンサや二次電池等の電力貯蔵体95を備えていてもよい。
【0067】
このような集電回路90によれば、整流回路91により整流された電力のうち、負荷92へ必要な電力をリアルタイムに送ることができる。一方、負荷92で必要とされない余剰電力を電力貯蔵体95に貯蔵することができるために、例えば、受力板23に変位が生じない無風時等には、この電力貯蔵体95に貯蔵された電力を用いて負荷92を動作させることができる。
【0068】
本発明の風力発電装置を無線送信用の電力供給用に用いることは、メンテナンスフリーを実現できる点で好ましい。更には、無電源で風速を測定し、その結果を無線送信するための電力供給用に用いることも好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
図4(a)に示した本発明の風力発電機を用いて、9.69m/s及び12.3m/sの一定風速下での各圧電素子部材21から得られる電圧(V)を測定した。図9に横軸が時間(ms)、縦軸が発電電圧(V)の電圧曲線の一例を示す。
【0071】
本実施例で用いた本発明の風力発電機の構造は、図4(a)に示したように、8枚の半円筒羽根13を有する垂直軸風車10の下部に、該垂直軸風車10の中心軸11に軸支された軸柱15に一端が固定された4枚の垂直板14を有し、該垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に中心に向かって垂直に張り出された4個の圧電素子部材21及び該圧電素子部材21に固定されている受力板23を有する風力発電機である。
【0072】
図9から明らかなように、一定風速下で生じるカルマン渦を利用して、圧電素子部材21の振動により発電した。更に、風速が速くなるにつれて圧電素子部材21が振動する個数が2個から4個に増加し、総発電量も増加していることが分かった。従って、本発明の風力発電機は、風速測定装置としても風力発電装置としても用いることができ、これを利用することで外部に電力を供給することも可能である。
【0073】
実施例2
図1と図10に示した本発明の風力発電機を用いて、風速5m/s〜28m/sにおける風速下での各圧電素子部材21から得られる電圧(V)を測定した。ここで、本実施例で用いた風力発電機は、図10に示すように、受力板23と複数の垂直板14が段階的に接触するように、各圧電素子部材21[1]〜[4]を距離t=1mmだけずらして固定した以外は、実施例1と同様のものである。結果を図11に、横軸が時間(ms)、縦軸が出力電圧(V)の電圧曲線として示す。
【0074】
図11(a)〜(d)に示したように、風速8.17m/s下では1個の圧電素子部材21[1]のみが、16.54m/sでは2個が、22.52m/sでは3個が、27.22m/sでは4個の圧電素子部材21[1]〜[4]全てが振動し、発電した。このとき、垂直板14が接触していない(押していない)受力板23に固定された圧電素子部材21からの出力はほぼ0であった。つまり、風速の大小により、振動する圧電素子の個数が変化するのを利用して、風速の階級分けをすることができた。以下に本実施例における風速と、圧電素子が振動し発電した個数を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
また、風速が小さい(8.17m/s)図11(a)では振動数が小さく、風速が大きくなるにつれて(例えば風速22.52m/sの図11(c))、振動数が大きくなった。これより、振動周波数が大きくなることによっても、風速が測定できることが明らかになった。
【0077】
また、風速が小さい(8.17m/s)図11(a)では電力量が小さく、風速が大きくなるにつれて(例えば風速22.52m/sの図11(c))、電力量が大きくなった。これより、電力量が大きくなることによっても、風速が測定できることが明らかになった。
【0078】
以上より、本発明の風力発電機を用いれば、圧電素子が振動し発電する個数等から風速の階級分けが可能な風速測定装置、及び、自然風下での風力発電が可能な風力発電装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の風力発電機は、風速測定用、無線送信の電力供給用等に用いられるほか、発電効率に特に優れているため、電力を必要とするあらゆる分野に広く一般に利用されるものである。
【符号の説明】
【0080】
1・・・・・風力伝達機構
2・・・・・発電機構
10・・・・・垂直軸風車
11・・・・・中心軸
12a・・・・上円盤
12b・・・・下円盤
13・・・・・半円筒羽根
14・・・・・垂直板
15・・・・・軸柱
16・・・・・垂直溝
17・・・・・台座
18・・・・・円筒
19・・・・・柱
21・・・・・圧電素子部材
21a・・・・圧電素子部材a
21b・・・・圧電素子部材b
21[1]・・圧電素子部材[1]
21[2]・・圧電素子部材[2]
21[3]・・圧電素子部材[3]
21[4]・・圧電素子部材[4]
22・・・・・圧電素子
23・・・・・受力板
23[1]・・受力板[1]
23[2]・・受力板[2]
23[3]・・受力板[3]
23[4]・・受力板[4]
24・・・・・固定保持部材
80・・・・・風速測定装置の測定回路
81・・・・・抵抗
82・・・・・電圧計
90・・・・・風力発電装置の集電回路
91・・・・・整流回路
92・・・・・負荷
93・・・・・充放電回路
94・・・・・ダイオード
95・・・・・電力貯蔵体
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用い、風力を利用して発電する風力発電機、並びに、該風力発電機を用いた風速測定装置及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンな発電方法として風力発電が注目されるようになってきている。一般的な風力発電装置としては、プロペラを風力で回転させ、電磁誘導により発電するものが知られているが、これには、装置が大型であってコストが高いことや、設置場所が制限されること、また、所定の設置間隔を取らなければ発電効率が低下すること等の問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、圧電素子を用いた発電装置が提案されている。例えば、特許文献1には、空気の渦流を発生させて振動板を振動させ、その振動を圧電素子に加えて発電する方法が記載されている。しかしながら、この構造では圧電素子に加わる振動の変位は限られたものになる場合があった。
【0004】
また、特許文献2には、フレーム部材と、フレーム部材に支持された圧電振動板と、振動板の表面に取り付けられた受風部材とを備え、風を受けて振動板に屈曲運動を生じさせることにより発電する風力発電装置が記載されている。しかしながら、この構造では、振動板の振動がフレーム部材によって抑制され、発電量が十分に得られないという問題があった。一方、振動抑制を小さくするためにフレーム部材を大きくすると、設置面積が広くなってしまうという問題があった。
【0005】
更に、特許文献1と特許文献2に共通する問題点として、これらの装置は、風が脈動しているか、または定常流であっても羽根の後方でカルマン渦を形成する場合しか振動しないので、駆動効率が低いという問題もあった。
【0006】
風の脈動や羽根の後方での渦だけに依存しない装置として、特許文献3には、長尺状でその幅方向に所定角度で二つ折りされた形状を有し、その長手方向の一端が固定された状態で風力を受けた際に所定のねじれ振動を生ずるように、その幅が長手方向において変化している受風翼と、前記受風翼の振動によって発電する発電部とを具備する風力発電装置が記載されている。そして、発電部には、屈曲することによって発電する圧電素子が使用されている。しかしながら、この構造では、風自体を制御していないため、受風翼に取り付けられた圧電素子に効率的な振動を常に与えられない場合があった。
【0007】
また、特許文献4には、断面形状が略V字状等の受風翼を支持する支持棒をその軸芯回りに回転自在に保持する軸保持部材と、この軸保持手段が取り付けられる振動板と、風力によって振動板に発生する振動を利用して発電する発電機構を具備する風力発電装置が記載されている。そして、振動板には圧電素子は貼り付けられており、圧電素子が屈曲することによって発電できる構造が記載されている。しかしながら、この構造でも、風自体を制御していないため、振動板に貼り付けられた圧電素子に効率的な振動を常には与えられない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−303726号公報
【特許文献2】特開2001−231273号公報
【特許文献3】特開2005−273644号公報
【特許文献4】特開2006−291842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、風力を有効的に利用し、安価で設置が容易であり、瞬間風速の測定が可能な風速測定装置、及び外部に電力の供給が可能な風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、垂直軸風車を有する風力伝達機構、及び、圧電素子部材に振動を与える受力板と該振動により屈曲し発電する圧電素子部材とを有する発電機構を組み合わせることによって上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部又は下部に、該垂直軸風車の中心軸に一端が軸支された複数の垂直板、若しくは、該垂直軸風車の中心軸に固定された軸柱に設けられた複数の垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車と中心軸を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直板若しくは垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、
を具備する風力発電機を提供するものである(態様1)。
【0012】
また本発明は、垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車と中心軸を共通にする円筒の内部に周設された複数の柱に設けられた垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車の中心軸に軸支された固定保持部材に一端が固定され、円周の外部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、
を具備する風力発電機を提供するものである(態様2)。
【0013】
また本発明は、上記風力発電機を用いた風速測定装置を提供するものである。
【0014】
また本発明は、上記風力発電機を用い、外部に電力を供給できるようにした風力発電装置を提供するものである。
【0015】
更に本発明は、本発明における上記風速測定装置を用いて測定された風速データを無線送信するための電力供給用の上記風力発電装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定風速下で生じるカルマン渦によって生じる非対称の流れによる回転振動を捉えることができ、風力を有効的に利用し、単純な構造であるため安価で、措置の設置が容易である。また、瞬間風速の測定が可能であり突風信号を発信することができ、該回転振動を複数の圧電素子部材に段階的に伝えることにより風速の階級分けが可能な風速測定装置を提供することができる。更に、該回転振動を圧電素子部材に伝達させることにより、高い発電効率を実現できて外部に電力を供給できる風力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を有する装置である。
【図2】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す上面図である。
【図3】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す側面図である。
【図4】本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す上からの透視図である。 (a)複数の垂直板14を用いた場合 (b)複数の垂直溝16を用いた場合 (c)複数の柱19に設けられた垂直溝16を用いた場合
【図5】本発明の風力発電機を用いた風速測定装置の風速が測定できる機構を示す上からの透視図である。 (a)圧電素子部材21[1]のみが振動している場合 (b)圧電素子部材21[1]〜[2]が振動している場合 (c)圧電素子部材21[1]〜[3]が振動している場合 (d)圧電素子部材21[1]〜[4]が振動している場合
【図6】本発明の風力発電機において、垂直溝16を用いたときの、垂直溝16と受力板23及び圧電素子部材21との位置関係を示したものである。 (a)垂直溝16の各溝幅を段階的に広くした場合 (b)垂直溝16の各溝幅が全て等しい場合
【図7】本発明の風速測定装置からの出力を検知するための測定回路の一例を示す回路図である。
【図8】本発明の風力発電機からの集電を行う集電回路の一例を示す回路図である。
【図9】実施例1において圧電素子部材21から得られる発電電圧の一例を示すグラフである。
【図10】実施例2で用いた風速測定機の上からの透視図である。
【図11】実施例2において圧電素子部材21から得られる出力電圧の一例を示すグラフである。 (a)風速8.17m/s下における出力電圧 (b)風速16.5m/sにおける出力電圧 (c)風速22.5m/sにおける出力電圧 (d)風速27.2m/sにおける出力電圧
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施の具体的形態のみに限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
【0019】
(1)風力発電機について
図1〜図4には、風力伝達機構(1)と風力発電機構(2)が示されている。図1は、本発明の風力発電機の好ましい基本構成を有する装置の一例を示すものであり、図2は、本発明の風力発電機の好ましい基本構成を示す上面図であり、図3はその側面図であり、図4は上からの透視図である。
【0020】
<態様1について>
風力伝達機構(1)は、少なくとも、
(a)垂直軸風車10
(b)該垂直軸風車10の上部又は下部に、該垂直軸風車10の中心軸11に一端が軸支された複数の垂直板14、若しくは、該垂直軸風車10の中心軸11に一端が固定された軸柱15に設けられた複数の垂直溝16
によって構成されている。
【0021】
風力発電機構(2)は、少なくとも、
(c)該垂直軸風車10と中心軸を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材21
(d)前記圧電素子部材21の一端に取り付けられており、上記垂直板14若しくは垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材21に伝えて発電させる受力板23
(e)前記圧電素子部材21の、前記受力板23が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材24
によって構成されている。
【0022】
(1−1)風力伝達機構について
本発明における垂直軸風車とは、風向きに対し回転軸が垂直になっている風車である。垂直軸風車であることによって、風向きの影響を受けずに常に風を受けることができ発電が効率的となり、また、風速が正確に測定でき、特に本発明の特長である瞬間風速の測定にも適用が可能となる。具体的には、例えば、クロスフロー形風車、サボニウス形風車、パドル形(風杯型)風車、ジャイロミル形風車、ダリウス形風車、S形風車等が挙げられる。
【0023】
垂直軸風車には、抗力型垂直軸風車と揚力型垂直軸風車がある。抗力型垂直軸風車とは、風向きに対し回転軸が垂直であり、抗力で回転力を得る風車であり、揚力型垂直軸風車とは、風向きに対し回転軸が垂直であり、揚力で回転力を得る風車である。本発明においては何れも用いられるが、受力板23を押す力が強く、また、強風時においても過度な回転力を与えないように、半円筒羽根13の枚数で回転数やトルクを調整可能等の点で抗力型垂直軸風車が好ましい。
【0024】
抗力型垂直軸風車の中でも、騒音、起動性、安全性、指向性、出力特性等の点で、クロスフロー形風車、サボニウス形風車、パドル形(風杯型)風車等がより好ましく、一定風速下で生じるカルマン渦を利用して効率良く回転振動が捉えられる点、風向きの影響を受け難くい点で、クロスフロー形風車が特に好ましい。
【0025】
本発明における抗力型垂直軸風車としてクロスフロー形風車を用いる場合には、効率良く回転力を得るために、上円盤12aと下円盤12bとで中心軸11が固定された半円筒羽根13が4〜10枚用いられることが好ましい。特に好ましくは6〜10枚である。半円筒羽根13の数が多すぎると、回転速度が大きくなりすぎる場合があり、一方、少なすぎると、回転速度が小さく圧電素子に与える振動が少なくなる場合がある。
【0026】
半円筒羽根13の大きさについては、風向きの影響を受けずに回転できれば特に制限はない。
【0027】
本発明の風力伝達機構(1)には、該風車の中心軸11に一端が軸支された複数の垂直板14、若しくは、該風車の中心軸11に固定された軸柱15に設けられた複数の垂直溝16を有する。
【0028】
風車の中心軸11に一端が軸支された複数の垂直板14は、例えば、図4(a)に示すように、中心軸11に固定された軸柱15に一端が軸支されていてもよく、中心軸11に直接に一端が軸支されていてもよい(図示せず)。垂直板14は、中心軸11の回りを風車の回転と共に回転し、その回転の際に、受力板23を押して振動を開始させるものである。
【0029】
本発明における複数の垂直板14の形状については、効率的に受力板23を通じて圧電素子部材21を屈曲させることができれば特に限定はなく、長方形板状や円形板状等の何れでもよい。垂直板14の面積についても特に限定はないが、受力板23を押す際に垂直板14自身が変形し、圧電素子部材21を屈曲させるのに十分な力を伝達できないことがないように、垂直板14に用いる材質の弾性係数から鑑みて十分な面積を有していることが、弱い風によっても圧電素子部材21をより屈曲させることができる点で好ましい。複数の垂直板14の材質も特に限定はなく、金属や樹脂等の何れでもよいが、繰り返し強度、塑性変形しない材質が好ましい。
【0030】
複数の垂直板14は、3〜16枚の垂直板14が好ましく、より好ましくは4〜8枚の垂直板14であり、特に好ましくは4枚の垂直板である。垂直板14の枚数が多すぎると、回転力に対する反発力が大きくなりすぎ、小さい風力では効率的な発電ができない等の場合があり、一方、少なすぎると、その枚数分しか段階分けによって風速が測定できない場合があるので、風速測定の細かい段階分けができなくなる、風向により圧電素子部材21の出力が影響を受けやすくなる等の場合がある。
【0031】
複数の垂直板14は、段階的に受力板23を押し始めるように、一定の距離ずつずらして設置してあることも好ましい。段階的に受力板23を押し始めるようにするには、後で詳述するように複数の受力板23の方を一定の距離ずつずらして設置することもできるが、複数の垂直板14の方を一定の距離ずつずらして設置することも可能である。これにより、後述する方法(A)を用いた風速測定装置が得られる。
【0032】
また、風車の中心軸11に固定された軸柱15に設けられた複数の垂直溝16とは、例えば、図4(b)に示すように、風車の中心軸11に軸支された軸柱15に、中心軸11と平行に、地面とは垂直に設けられた溝であり、風車の回転と共に回転し、その回転の際に、受力板23を押して振動を開始させるものである。
【0033】
垂直溝16の個数としては、3〜16個であることが好ましく、より好ましくは4〜8個であり、特に好ましくは4個である。垂直溝16の個数が多すぎると、回転力に対して圧電素子部材21自身が有する反発力が大きくなりすぎ、小さい風力では効率的な発電ができない等の場合があり、一方、少なすぎると、その個数分しか段階分けによって風速が測定できない場合があるので、風速測定の細かい段階分けができなくなる、風向により圧電素子部材21の出力が影響を受けやすくなる等の場合がある。
【0034】
本発明における垂直溝16の形状については、効率的に受力板23を押して圧電素子部材21を屈曲させることができれば特に限定はない。複数の垂直溝16が設けられている軸柱15の材質も特に限定はなく、金属や樹脂等の何れでもよいが、繰り返し強度、耐摩耗性等の点で金属が好ましい。
【0035】
また、複数の垂直溝16の各溝幅は、その全てが等しくなっていてもよく、段階的に広くなっていてもよい。複数の垂直溝16のうち、どの段階のものまでが受力板23を押して振動を開始させたかを検知して風速を測定する場合(後述する方法(A)の場合)には、段階的に広くなっている必要がある。
【0036】
好ましい溝幅としては、1mm〜8mm、より好ましくは1mm〜4mmである。溝幅が大きすぎる場合は、垂直溝16の個数を少なくせざるを得ないので、上記した垂直溝16の個数が少ない時と同様の問題が生じる場合があり、また、小さい風力下では圧電素子部材21に伝達する力が少なくなる等の場合があり、一方、小さすぎる場合は、回転力が圧電素子部材21に与える力が過剰になる場合があり、圧電素子部材21の耐久性に影響を与える等の場合がある。
【0037】
垂直溝16と受力板23との間のクリアランスは、その全てが等しくなっていてもよく、段階的に広くなっていてもよい。また、このクリアランスは0mmであってもよい。すなわち、クリアランスは実質的になくてもよい。
【0038】
(1−2)風力発電機構について
本発明における圧電素子部材21は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に中心に向かって垂直に張り出している。該圧電素子部材21は、薄手の圧電素子22を金属板等に貼り合わせたモノモルフ構造を有するものであっても、2枚の圧電素子を貼り合わせたバイモルフ構造を有するものであってもよいが、製造が容易である、発熱しない、発電能力の効率からバイモルフ構造が好ましい。また、1個の圧電素子部材21を構成する圧電素子22は複数個であってもよい。
【0039】
本発明における複数の圧電素子部材21の位置は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に、それぞれ等しい距離を持って等間隔に固定してもよいが、風速により上記複数の垂直板14が、段階的に上記受力板23を押して振動を開始させるようにするためには、図5(a)に示すように段階的に一定の距離ずつずらして固定する。
【0040】
圧電素子部材21は、上記複数の垂直板14又は複数の垂直溝16と通常等しい数だけ設けられる。
【0041】
本発明における受力板23は、図3に示すように、上記の圧電素子部材21の一端に取り付けられており、垂直板14若しくは垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材21に伝えて発電させるものである。本発明における受力板23の形状については、効率的に圧電素子部材21を屈曲させることができれば特に限定はなく、長方形板状や円形板状等の何れでもよい。受力板23の面積についても特に限定はないが、受力板23を押す際に垂直板14自身が変形し圧電素子部材21を屈曲させるために十分な力を伝達できないことがないように、垂直板14に用いる材質の弾性係数から鑑みて十分な面積を有していることが好ましい。受力板23の材質も特に限定はなく、金属や樹脂等の何れでもよい。
【0042】
上記圧電素子部材21の、上記受力板23が取り付けられていない側は、固定保持部材24によって固定されている。固定保持部材24は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする同心円の円周上に配置されている。本発明における圧電素子部材21は、垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に、固定保持部材24によって一端が固定されて、中心に向かって張り出している。
【0043】
固定保持部材24は、圧電素子部材21が動かないように固定するものであり、圧電素子部材21の屈曲の力を逃がさないようになっていることが好ましく、風力によって実質的に変位を受けずに静止しているようになっている。
【0044】
<態様2について>
本発明の態様2については、図4(c)に示した。
風力伝達機構(1)は、少なくとも、
(a)垂直軸風車10
(b)該垂直軸風車10の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に設けられた垂直溝16
によって構成されている。
【0045】
風力発電機構(2)は、少なくとも、
(c)該垂直軸風車10の中心軸11に軸支された固定保持部材24
(d)前記固定保持部材24に一端が固定され、円周の外部に垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材21
(d)前記圧電素子部材21の固定されていない他端に取り付けられており、上記垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材21に伝えて発電させる受力板23
によって構成されている。
【0046】
(1−3)風力伝達機構について
垂直軸風車10は上記態様1で記載した通りである。本発明の風力発電機構(1)には、該風車10と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に設けられた垂直溝16を有する。該垂直溝16は、垂直軸風車10の上部、下部又は垂直軸風車10と同一面の内部(垂直軸風車10の内部)の何れにあってもよいが、垂直軸風車10の内部にあることが好ましい。
【0047】
風車10と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に設けられた垂直溝16は、例えば、図4(c)に示すように、風車と中心軸11を共通にする円筒18の内部に周設された複数の柱19に、地面とは垂直に設けられた溝であり、風車の回転と共に回転し、その回転の際に受力板23を振動させるものである。
【0048】
円筒18の内部に周設された柱19の個数としては、3〜16個であることが好ましく、より好ましくは4〜8個であり、特に好ましくは4個である。柱19の個数が多すぎると、回転力に対して圧電素子部材21が有する反発力が大きくなりすぎ(あまり屈曲せず)、小さい風力では効率的な発電ができない場合があり、一方、少なすぎると、その個数分しか段階分けによって風速が測定できない場合があるので、風速測定の細かい段階分けができなくなる、風向により圧電素子部材21の出力が影響を受けやすくなる等の場合がある。垂直溝16の形状、溝幅やクリアランスは上記態様1と同様である。
【0049】
(1−4)風力発電機構について
本発明における圧電素子部材21は、風車10の中心軸11に軸支された固定保持部材24に一端が固定され、中心軸11から円周の方に向かって垂直に張り出している。該圧電素子部材21及び固定保持部材24の構造等は、前記態様1と同様である。
【0050】
上記圧電阻止部材21の一端に取り付けられている受力板23は、図4(c)に示すように、垂直溝16から外れないように周期的に押されて振動して、その振動を該圧電素子部材21に伝えて、圧電素子22を発電させるものである。受力板23の形状等については、前記態様1で上記した通りである。
【0051】
以下、本発明の風力発電機を用いた風速測定装置と風力発電装置について説明する。
【0052】
(2)風速測定装置について
本発明の風速測定装置は、上記した風力発電機を用いたものである。該風速測定装置は、以下の(A)、(B)及び/又は(C)の方法によって風速を測定する。
(A)上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16のうち、どの段階のものまでが上記受力板23を押して振動を開始させたかを検知して風速を測定する。
(B)上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動する際の振動数を圧電素子部材21が検知して風速を測定する。
(C)上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動することによって圧電素子部材21が振動して発電する際の出力電圧又は電力を検知して風速を測定する。
【0053】
<方法(A)について>
方法(A)は、圧電素子部材21の位置を、該垂直軸風車10の中心軸11からそれぞれ段階的にずらして固定して、風速により、上記複数の垂直板14が、段階的に上記受力板23を押して振動を開始させるようにして風速を測定するものである。すなわち、例えば、図5(a)〜(d)に示すように、垂直板14と受力板23との接触が段階的になるように、垂直板14と受力板23との間隔が、距離tずつ増えていくように設定し、風速に応じて各垂直板14が段階的に受力板23を押して振動を開始させるようにする。図5(a)では、受力板23[1]と垂直板14との距離は、両者が接触しているので0であり、受力板23[2]と垂直板14との距離はtであり、受力板23[3]と垂直板14との距離は2tであり、受力板23[4]と垂直板14との距離は3tである。
【0054】
方法(A)による風速測定は、具体的には以下の通りである。すなわち、風速が小さい場合には、図5(a)に示すように、垂直板14が「受力板23[1]−圧電素子部材21[1]」のみに振動を与え、風速がそれより大きくなると、図5(b)に示すように、2枚の垂直板14が、それぞれ「受力板23[1]−圧電素子部材21[1]」と「受力板23[2]−圧電素子部材21[2]」の2個に振動を与える。このように、風速が大きくなるにつれて、振動を与える垂直板14と「受力板23−圧電素子部材21」の組数が増えていく。そして、何組が振動して発電されているかを検知して風速を測定する。
【0055】
距離tとしては、1mm〜8mmが好ましく、特に好ましくは1mm〜4mmである。距離tが大き過ぎる場合には、小さい風力下で圧電素子22に伝達する力が少なくなる等の場合があり、弱風時の検知感度が低下する場合があり、小さすぎる場合には、圧電素子22に与える力が弱風時において高くなるため強風時に適切に検知できない場合がある。
【0056】
また、方法(A)については、複数の垂直溝16の溝幅を段階的に広げ、上記受力板23との間に段階的にクリアランスを設け、風速により、上記複数の垂直溝16が、段階的に上記受力板23を押して振動を開始させるようにすることもできる。すなわち、例えば図6(a)に示すように、複数の垂直溝16の溝幅を段階的に広げ、受力板23との間に段階的に広くなるクリアランスを設け、風速により、複数の垂直溝16が、段階的に受力板23を押し始めて振動を開始させることもできる。風速が大きくなるにつれて、振動を与える垂直板14と垂直溝16の組数が増えていく。そして、何組が振動して発電されているかを検知して風速を測定する。
【0057】
この場合、溝幅は、0.5mm〜1mmずつ広げていくことが好ましく、特に好ましくは1mmずつ広げていくことである。
【0058】
上記風速測定装置は、何組が振動しているかが瞬時に分かることから、瞬間時の風速が容易に得られ、従来は測定が難しかった瞬間風速測定装置として機能する。例えば、パドル形(風杯型、三杯型)風速計では、瞬間風速の値はその直前の風速の影響を受けてしまう。従って、本発明の風速測定装置は、瞬間風速測定装置として用いられることも好ましい。また、振動している受力板23の数によって、容易に風速の階級分けが可能になる。更に、受力板23の特定の枚数以上が振動を開始したときに(特定の組数が振動した時に)警報を発信するように設定しておけば、瞬間風速により警報を発信することができて災害防止に極めて有効である。
【0059】
<方法(B)について>
方法(B)は、上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動する際の振動数を圧電素子部材21が検知して風速を測定する。通常、振動数が大きいほど風速が強いことになる。方法(B)の場合、上記tは0であっても、0でなくてもよい。また、垂直溝16の溝幅は段階的に広げてあっても(図6(a))、段階的に広げてなくて(溝幅が等しくて)もよい(図6(b))。すなわち、方法(B)は、単独で風速を測定しても、方法(A)と組み合わせて風速を測定してもよい。
【0060】
<方法(C)について>
方法(C)は、上記複数の垂直板14又は上記複数の垂直溝16から受力板23が周期的に押されて振動することによって、その振動を圧電素子部材21に伝え、圧電素子部材21が周期的に振動して発電する際の出力電圧又は電力を検知して風速を測定する。圧電素子部材21からの出力電圧又は電力が大きいほど風速が強いことになる。方法(C)は、単独で風速を測定しても、方法(A)や方法(B)と組み合わせて風速を測定してもよい。
【0061】
図7に、本発明の風速測定装置の測定回路80の一例を示した。測定回路80では、圧電素子部材21が発生した電圧を電圧計82で測定する。
【0062】
(3)風力発電装置について
本発明の風力発電装置は、上記した風力発電機を用い、外部に電力を供給できるようにしたものである。また、上記した風速測定装置を用いて測定された風速データを無線送信するための電力供給用としても用いることができる。
【0063】
本発明における風力発電装置は、例えば図6(b)に示すように、複数の垂直溝16の各溝幅は全て等しい方が好ましい。また、本発明における圧電素子部材21は、垂直軸風車10の中心軸11から放射状に全て等しい距離をおいて固定することが好ましい。
【0064】
より多くの電力を得るために、本発明における風力伝達機構(1)及び発電機構(2)を1個の垂直軸風車10に複数設置してもよい。その際、垂直軸風車10の下部に積み重ねるようにして設置することが、装置の設置がしやすい等点で好ましい。
【0065】
また、風速測定装置と風力発電装置は共通の装置とすることも可能ではあるが、両者を分離させた構造の方が、風速測定装置の測定回路80を動作させるための安定的な電力を確保できる点で好ましい。また、1個の垂直軸風車10に対して、前記の風速測定装置と風力発電装置を積み重ねて設置し、かかる風速測定装置で測定した風速のデータを、かかる風力発電装置で発電した電力により無線発信することも好ましい。
【0066】
図8に、圧電素子部材21からの集電を行う集電回路90の一例を示した。かかる集電回路90は本発明の風力発電装置に好適に用いられる。集電回路90は、圧電素子部材21a、21bが発生した電気(交流)を整流する整流回路91と、整流回路91によって整流された電力の一部を貯蔵するとともに、貯蔵した電力を負荷92へ供給する充放電回路93とを有している。整流回路91は、ダイオード94で全波整流する構成を有する。また、充放電回路93は、電力を貯蔵/放出するコンデンサや二次電池等の電力貯蔵体95を備えていてもよい。
【0067】
このような集電回路90によれば、整流回路91により整流された電力のうち、負荷92へ必要な電力をリアルタイムに送ることができる。一方、負荷92で必要とされない余剰電力を電力貯蔵体95に貯蔵することができるために、例えば、受力板23に変位が生じない無風時等には、この電力貯蔵体95に貯蔵された電力を用いて負荷92を動作させることができる。
【0068】
本発明の風力発電装置を無線送信用の電力供給用に用いることは、メンテナンスフリーを実現できる点で好ましい。更には、無電源で風速を測定し、その結果を無線送信するための電力供給用に用いることも好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
図4(a)に示した本発明の風力発電機を用いて、9.69m/s及び12.3m/sの一定風速下での各圧電素子部材21から得られる電圧(V)を測定した。図9に横軸が時間(ms)、縦軸が発電電圧(V)の電圧曲線の一例を示す。
【0071】
本実施例で用いた本発明の風力発電機の構造は、図4(a)に示したように、8枚の半円筒羽根13を有する垂直軸風車10の下部に、該垂直軸風車10の中心軸11に軸支された軸柱15に一端が固定された4枚の垂直板14を有し、該垂直軸風車10と中心軸11を共通にする円周上に一端が固定され、円周の内部に中心に向かって垂直に張り出された4個の圧電素子部材21及び該圧電素子部材21に固定されている受力板23を有する風力発電機である。
【0072】
図9から明らかなように、一定風速下で生じるカルマン渦を利用して、圧電素子部材21の振動により発電した。更に、風速が速くなるにつれて圧電素子部材21が振動する個数が2個から4個に増加し、総発電量も増加していることが分かった。従って、本発明の風力発電機は、風速測定装置としても風力発電装置としても用いることができ、これを利用することで外部に電力を供給することも可能である。
【0073】
実施例2
図1と図10に示した本発明の風力発電機を用いて、風速5m/s〜28m/sにおける風速下での各圧電素子部材21から得られる電圧(V)を測定した。ここで、本実施例で用いた風力発電機は、図10に示すように、受力板23と複数の垂直板14が段階的に接触するように、各圧電素子部材21[1]〜[4]を距離t=1mmだけずらして固定した以外は、実施例1と同様のものである。結果を図11に、横軸が時間(ms)、縦軸が出力電圧(V)の電圧曲線として示す。
【0074】
図11(a)〜(d)に示したように、風速8.17m/s下では1個の圧電素子部材21[1]のみが、16.54m/sでは2個が、22.52m/sでは3個が、27.22m/sでは4個の圧電素子部材21[1]〜[4]全てが振動し、発電した。このとき、垂直板14が接触していない(押していない)受力板23に固定された圧電素子部材21からの出力はほぼ0であった。つまり、風速の大小により、振動する圧電素子の個数が変化するのを利用して、風速の階級分けをすることができた。以下に本実施例における風速と、圧電素子が振動し発電した個数を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
また、風速が小さい(8.17m/s)図11(a)では振動数が小さく、風速が大きくなるにつれて(例えば風速22.52m/sの図11(c))、振動数が大きくなった。これより、振動周波数が大きくなることによっても、風速が測定できることが明らかになった。
【0077】
また、風速が小さい(8.17m/s)図11(a)では電力量が小さく、風速が大きくなるにつれて(例えば風速22.52m/sの図11(c))、電力量が大きくなった。これより、電力量が大きくなることによっても、風速が測定できることが明らかになった。
【0078】
以上より、本発明の風力発電機を用いれば、圧電素子が振動し発電する個数等から風速の階級分けが可能な風速測定装置、及び、自然風下での風力発電が可能な風力発電装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の風力発電機は、風速測定用、無線送信の電力供給用等に用いられるほか、発電効率に特に優れているため、電力を必要とするあらゆる分野に広く一般に利用されるものである。
【符号の説明】
【0080】
1・・・・・風力伝達機構
2・・・・・発電機構
10・・・・・垂直軸風車
11・・・・・中心軸
12a・・・・上円盤
12b・・・・下円盤
13・・・・・半円筒羽根
14・・・・・垂直板
15・・・・・軸柱
16・・・・・垂直溝
17・・・・・台座
18・・・・・円筒
19・・・・・柱
21・・・・・圧電素子部材
21a・・・・圧電素子部材a
21b・・・・圧電素子部材b
21[1]・・圧電素子部材[1]
21[2]・・圧電素子部材[2]
21[3]・・圧電素子部材[3]
21[4]・・圧電素子部材[4]
22・・・・・圧電素子
23・・・・・受力板
23[1]・・受力板[1]
23[2]・・受力板[2]
23[3]・・受力板[3]
23[4]・・受力板[4]
24・・・・・固定保持部材
80・・・・・風速測定装置の測定回路
81・・・・・抵抗
82・・・・・電圧計
90・・・・・風力発電装置の集電回路
91・・・・・整流回路
92・・・・・負荷
93・・・・・充放電回路
94・・・・・ダイオード
95・・・・・電力貯蔵体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車と中心軸を共通にする円筒の内部に周設された複数の柱に設けられた垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車の中心軸に軸支された固定保持部材に一端が固定され、中心軸から円周に向かって垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記複数の柱に設けられた垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、
を具備する風力発電機。
【請求項2】
請求項1記載の風力発電機を用いた風速測定装置。
【請求項3】
上記複数の柱に設けられた垂直溝の溝幅を段階的に広げ、上記受力板との間に段階的にクリアランスを設け、風速により、上記複数の柱に設けられた垂直溝が、段階的に上記受力板を押して振動を開始させるようにした請求項2記載の風速測定装置。
【請求項4】
上記複数の柱に設けられた垂直溝のうち、どの段階のものまでが上記受力板を押して振動を開始させたかを検知して風速を測定する請求項3記載の風速測定装置。
【請求項5】
上記複数の柱に設けられた垂直溝から受力板が周期的に押されて振動する際の振動数を該圧電素子部材が検知して風速を測定する請求項2又は請求項3記載の風速測定装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の風速測定装置を用いたことを特徴とする瞬間風速測定装置。
【請求項7】
請求項1記載の風力発電機を用い、外部に電力を供給できるようにした風力発電装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の風速測定装置を用いて測定された風速データを無線送信するための電力供給用の請求項7記載の風力発電装置。
【請求項1】
垂直軸風車、及び、該垂直軸風車の上部、下部又は内部に、該垂直軸風車と中心軸を共通にする円筒の内部に周設された複数の柱に設けられた垂直溝、を有する風力伝達機構(1)、並びに、
該垂直軸風車の中心軸に軸支された固定保持部材に一端が固定され、中心軸から円周に向かって垂直に張り出された、屈曲することによって発電する圧電素子部材、及び、該圧電素子部材の固定されていない他端に取り付けられており、上記複数の柱に設けられた垂直溝から外れないように周期的に押されて振動してその振動を該圧電素子部材に伝えて発電させる受力板、を有する発電機構(2)、
を具備する風力発電機。
【請求項2】
請求項1記載の風力発電機を用いた風速測定装置。
【請求項3】
上記複数の柱に設けられた垂直溝の溝幅を段階的に広げ、上記受力板との間に段階的にクリアランスを設け、風速により、上記複数の柱に設けられた垂直溝が、段階的に上記受力板を押して振動を開始させるようにした請求項2記載の風速測定装置。
【請求項4】
上記複数の柱に設けられた垂直溝のうち、どの段階のものまでが上記受力板を押して振動を開始させたかを検知して風速を測定する請求項3記載の風速測定装置。
【請求項5】
上記複数の柱に設けられた垂直溝から受力板が周期的に押されて振動する際の振動数を該圧電素子部材が検知して風速を測定する請求項2又は請求項3記載の風速測定装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の風速測定装置を用いたことを特徴とする瞬間風速測定装置。
【請求項7】
請求項1記載の風力発電機を用い、外部に電力を供給できるようにした風力発電装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の風速測定装置を用いて測定された風速データを無線送信するための電力供給用の請求項7記載の風力発電装置。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【公開番号】特開2013−76406(P2013−76406A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282123(P2012−282123)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2007−306638(P2007−306638)の分割
【原出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人科学技術振興機構、革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2007−306638(P2007−306638)の分割
【原出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人科学技術振興機構、革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】
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