説明

圧電素子

【課題】内部電極の隅部に発生するクラックやそれによるショートを防止できる圧電素子を提供する。
【解決手段】矩形体に形成され、電圧の印加により伸縮する積層型の圧電素子100であって、電圧が印加される内部電極115と、内部電極115と交互に積層された圧電層と、を備え、内部電極115は、外部電極に接続する取り出し部115a以外は、積層方向に平行な側面112に露出せず、隅部115bの角が取れた略矩形状に形成され、側面112同士側面同士により形成される柱角部113は、面取りされている。これにより、応力を均等にし、内部電極115の隅部115bに発生する引っ張り応力でクラックが入る故障を低減することができる。そして、絶縁性が低下して生じる放電でショートするのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形体に形成され、電圧の印加により伸縮する積層型の圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の圧電素子は、圧電層と内部電極とが交互に積層して形成されている(特許文献1参照)。図4(a)、(b)は、いずれも従来の圧電素子500を示す側面図である。図4(a)は、電圧を印加しない状態を示し、図4(b)は、電圧の印加により圧電素子500が積層方向に伸びた状態を示している。なお、破線は内部電極の位置を示している。
【0003】
圧電素子500は、電圧印加により積層方向(分極方向)へ伸びるが、面方向へは縮む。圧電素子500が圧電素子の側面に内部電極が露出しない電極隠し構造を有する場合には、内部電極の周囲の不活性領域は変形せず、駆動により積層方向に沿って内部電極に重なる活性領域のみ伸縮する。このような応力を緩和するために内部電極層間の内部電極が重ならない不活性領域に空隙等を設けている圧電素子が研究されている(特許文献2、3参照)。
【0004】
一方、このような圧電素子やその内部電極について、様々な形状が提案されている。特許文献1には、n個の角のうち1個以上かつn−1個以下の角が,その他の残りの角とは異なる形状になるように面取りされた積層型圧電素子ユニットが開示されている。特許文献2には、内部電極の角部が直線で面取り、または曲線で丸められている圧電素子が開示されている。また、特許文献3には、内部電極の形状が多角形や円形でもよいことや、圧電素子の形状が多角柱や円柱でもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−274030号公報
【特許文献2】特開平8−274381号公報
【特許文献3】特許3894861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5(a)、(b)は、いずれも従来の圧電素子500を示す平断面図である。図5(a)、(b)は、交互に印刷され積層されているそれぞれの内部電極のパターンを示している。圧電素子500が、このような電極隠し構造を有する場合には、不活性領域516は変形せず、活性領域515のみ伸縮し、矢印で示す応力が発生する。その際には、活性領域の辺の中央部に比べて4つの隅部515bの距離の方が長くて拘束力が強く、隅部515bに応力が集中する。このような原因により、過負荷な駆動や繰返しの駆動で応力集中部にクラックが入り、短絡故障が発生している。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、内部電極の隅部に発生するクラックやそれによるショートを防止できる圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電素子は、矩形体に形成され、電圧の印加により伸縮する積層型の圧電素子であって、電圧が印加される内部電極と、前記内部電極と交互に積層された圧電層と、を備え、前記内部電極は、外部電極に接続する取り出し部以外は、積層方向に平行な側面に露出せず、隅部の角が取れた略矩形状に形成され、前記側面同士により形成される柱角部は、面取りされていることを特徴としている。
【0009】
これにより、内部電極から素子外面までの距離を四辺中央付近と隅部とにおいてなるべく同じにし、それぞれの位置で生じる応力を均等にすることができる。その結果、内部電極の隅部に発生する引っ張り応力でクラックが入る故障を低減することができる。そして、絶縁性が低下して放電でショートするのを防止できる。
【0010】
(2)また、本発明の圧電素子は、前記取り出し部以外の前記内部電極の形状と、前記積層方向に垂直な断面の形状とが、概略相似していることを特徴としている。これにより、内部電極と素子外形との距離の位置による相違をさらに小さくし、応力を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、応力を均等にし、内部電極の隅部に発生する引っ張り応力でクラックが入る故障を低減することができる。そして、絶縁性が低下して放電でショートするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の圧電素子の斜視図である。
【図2】(a)、(b)いずれも本発明の圧電素子の平断面図である。
【図3】(a)、(b)いずれも本発明の圧電素子の平断面図である。
【図4】(a)、(b)いずれも従来の圧電素子を示す側面図である。
【図5】(a)、(b)いずれも従来の圧電素子を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
(圧電アクチュエータの構成)
図1は、圧電素子100の斜視図である。圧電素子100は、矩形体に形成され、電圧の印加により伸縮する積層型の圧電素子である。また、図2(a)、(b)は、いずれも圧電素子100を示す平断面図であり、内部電極115が設けられている断面を示した図である。圧電素子100は、矩形体として形成されており、素子本体110に外部電極120が設けられている。
【0015】
素子本体110は、圧電層111と内部電極115とが積層方向Zについて交互に積層され、圧電層111は厚み方向の互い違いの向きに分極されている。なお、図1の破線は内部電極115の位置を示している。柱角部113は、圧電素子100の積層方向に平行な側面同士により形成され、面取りされている。なお、柱角部113は、言い換えると圧電素子100の積層方向Zに平行な側面4角部である。
【0016】
圧電層111は、たとえばPZTのような圧電材料で構成される。内部電極115は、対向する側面112上で外部電極120に取り出されており、隣り合う内部電極115に異なる電圧を印加できるように形成されている。内部電極115へ電圧を印加することで各圧電層111が伸縮し、圧電素子全体が伸縮する。
【0017】
圧電素子100は、加工代として積層方向Zの両端部に設けられた保護層118と電圧の印加により駆動する活性層119とに区分できる。さらに、活性層119は、内部電極115の積層方向Zへの投影が重なり合う中央の活性領域と内部電極115が外部とショートしないように設けられた周囲の不活性領域116とに区分できる。活性領域は、圧電素子100において実際に駆動する領域である。活性領域は電圧により駆動するが、その周囲の不活性領域116は、電圧の印加により変形せず応力が生じる。
【0018】
内部電極115は、外部電極120が設けられた側面112の取り出し部115a以外の側面には露出せず、隅部115bの角が取れた略矩形状に形成されている。これにより、内部電極115から素子外面までの距離を、圧電素子100の四辺中央付近と隅部115bとにおいてなるべく同じにし、それぞれの位置で生じる応力を均等にすることができる。その結果、隅部115bに発生する引っ張り応力でクラックが入る故障を低減することができる。そして、絶縁性が低下して生じる放電でショートするのを防止できる。
【0019】
図2(a)、(b)に示すように、取り出し部115a以外の内部電極115の形状と、素子本体110の積層方向に垂直な断面の形状とは、概略相似している。これにより、内部電極115と素子外面との距離の位置による相違を小さくし、応力を低減できる。なお、辺中央部における内部電極115と素子外面との距離dを基準としたとき、最大となる内部電極115と素子外面との距離dから基準距離dを引いた値が、基準距離dの20%以下であることが好ましい。この範囲内となるように圧電素子100が形成されることで、十分に隅部115bにおける応力を低減できる。
【0020】
(圧電素子の製造方法)
次に、上記のように構成された圧電素子100の製造方法について説明する。まず、圧電体を含むスラリーを用い、引き上げ成形、ドクターブレード成形、押出成形等の方法によってグリーンシートを形成する。
【0021】
このような圧電体のグリーンシートを準備し、グリーンシートには内部電極115用のパターンをスクリーン印刷等により塗布する。内部電極115用として電極ペースト(Ag−Pd合金等)を塗布し、その後、乾燥させて焼成前電極膜を形成する。このとき、スクリーンは内部電極115となる領域に角のとれた矩形を印刷できるように設計しておく。
【0022】
次に、電極膜が形成された複数のグリーンシートを積層し、プレス成形した後、加熱して、グリーンシート、電極ペーストおよび非焼結材料ペースト中の有機成分を脱脂する。有機成分は加熱によって分解され気体となってグリーンシートやペースト膜から抜ける。
【0023】
このようにして脱脂された積層体を焼成し、得られた素子本体110を適宜加工し、外部電極120を印刷、焼き付けする。加工の際には、隣り合う側面により形成される素子本体110の柱角部113を面取りし、断面の角が取れた形状に整える。内部電極115の柱角部113が辺に対して45°の直線で角を取っているに場合には、素子本体110の隅部115bも側面に対して45°の平面で角を取る。すなわち、各断面形状が互いに概略相似していることが好ましい。
【0024】
ポジショナ用アクチュエータを作製する場合には、作製した複数の圧電素子100を積層方向に直列に連結し、いわゆる多連化を行なう。多連化された圧電素子は分極処理を行ない、キャップを被せることでポジショナ用アクチュエータを作製できる。
【0025】
このように、内部電極115の四つの隅部115bを角の取れた形状とし、かつ素子本体110の外形の側面が形成する柱角部113を面取りした圧電素子100を製造することができる。その結果、内部電極115と素子表面の距離を周囲にわたって概略同一にすることができ、素子変形時に内部電極115の隅部115bに発生する応力を低減させることでクラックによる故障を軽減する。
【0026】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、素子本体110の面取りとして、柱角部の角を側面112に対して45°の面に研削しているが、丸面取りで加工してもよい。図3(a)、(b)は、素子本体210および内部電極215の隅部215bがいずれも丸く形成された圧電素子200を示す平断面図である。図1に示す圧電素子200は、基本的には圧電素子100と同様の構造を有している。素子本体210は、矩形体であり、側面が接する柱角部213は丸く形成されている。
【0027】
内部電極215は、外部電極に接続される取り出し部215a以外は概略矩形に形成されており、隅部215bは丸くなっている。また、内部電極215の周囲には、不活性領域216が設けられている。取り出し部215a以外の内部電極215の形状と、素子本体の積層方向に垂直な断面の形状とは、概略相似していることが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
100 圧電素子
110 素子本体
111 圧電層
112 側面
113 柱角部
115 内部電極
115a 取り出し部
115b 内部電極の隅部
116 不活性領域
118 保護層
119 活性層
120 外部電極
200 圧電素子
213 柱角部
215 内部電極
215a 取り出し部
215b 内部電極の隅部
216 不活性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形体に形成され、電圧の印加により伸縮する積層型の圧電素子であって、
電圧が印加される内部電極と、
前記内部電極と交互に積層された圧電層と、を備え、
前記内部電極は、外部電極に接続する取り出し部以外は、積層方向に平行な側面に露出せず、隅部の角が取れた略矩形状に形成され、
前記側面同士により形成される柱角部は、面取りされていることを特徴とする圧電素子。
【請求項2】
前記取り出し部以外の前記内部電極の形状と、前記積層方向に垂直な断面の形状とが、概略相似していることを特徴とする請求項1記載の圧電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77636(P2013−77636A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215430(P2011−215430)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)