説明

地下たび及びその製造方法

【課題】 本発明は、目的にあった文字、模様等の図柄を自由に選定でき、かつ図柄の連続性を意識したもので、図柄の制約のない、自由で迫力のある図柄で装飾された地下たびを提供する。
【解決手段】 アッパーに接地底を取付けてなる地下たびであって、アッパー内甲と外甲とを縫合する甲縫い部16及び/又は立つ縫い部17の所要位置に、当該縫い部を跨り内外甲面にパターンが連続した図柄を形成したことを特徴とする地下たび及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、祭行事や各種イベントなどに使用される装飾された地下たびに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築現場あるいは農作業において、各種の地下たびが使用されている。これらの地下たびは、今までの用途では黒色、紺色又は白色などアッパー全体を単色で形成するものが多かった。
最近では祭行事やその他のイベントあるいは一種のカジュアルな履物としても使用されることがあるが、このような用途では、使用目的に適う文字や図柄などの図柄をアッパーの外面あるいは内面に施した地下たびが求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3109522号公報
【0004】
前記した要求に応える地下たびとして、例えば特許文献1に示す柄入り地下足袋が提案されている。
この文献に示された地下足袋は製造方法が詳しく開示されていないものの、予め柄の入った生地を用い、これを裁断し縫合したアッパーを用いているとみられ、とりわけアッパー中央部の甲から脚にかけて伸びている甲縫い部等の縫合部では、甲を形成する生地片の柄が甲内外の縫い線部で分断されて連続性のある図柄を表せないきらいがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のようにして図柄を表す場合は、内外の甲部に設ける図柄が波模様、迷彩模様あるいは水玉模様のように、甲内外の縫合部の境目での非連続性が目立たない独立の小さい模様の繰り返し柄に限られてしまい、人物や風景等縫合部で途切れることのない連続性が要される図柄を目的の図柄として表現させることは行われていなかった。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑み、目的にあった文字、模様等の図柄を自由に選定でき、かつ図柄の連続性を意識したものであって、図柄の制約のない、自由で迫力のある図柄で装飾された地下たびを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の要旨とするところは、アッパーに接地底を取付けてなる地下たびであって、アッパー内甲と外甲とを縫合する甲縫い部及び/又は立つ縫い部の所要位置に、当該縫い部を跨り内外甲面にパターンが連続した図柄を形成したことをたことを特徴とする地下たびにあり、また本発明は、アッパーに接地底を取付けてなる地下たびの製造方法であって、アッパー内甲と外甲とを縫合したアッパー縫製体の甲縫い部及び/又は立つ縫い部の所要位置を緊張させて平滑性を確保し、この面にプリントを施してパターンが連続した図柄を形成したことを特徴とする地下たびの製造方法にある。
なお本発明において、内甲とは地下たびを履いたときに身体に近い側、すなわち親指(第一指)側となる布を指しており、外甲とは反対側の四指側となる布を指している。
また甲縫い部とは、図2に基づいて説明すれば、正面略中央の上から下に延びる縫い線部分(符号16)を指しており、また立つ縫い部は同様に、図3背面の正面略中央の上から下に延びる縫い線の部分(符号17)を指している。
【0008】
また本発明は、上記の特徴を備える地下たび及び地下たびの製造方法において、さらにアッパー内甲と外甲とを縫合する甲縫い部の、指先付根部やや上方から甲から脚に立ち上がる部分の間に連続する図柄を形成したことを特徴とし、また上記連続した図柄以外のアッパー面に独立した図柄を形成することを特徴とし、さらにアッパー体裏布の縫合部及び/又は所要部に図柄を形成したことを特徴とし、さらにまた少なくとも連続した図柄がインクジェットプリントで形成されたことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上の如き構成からなるものであるから、甲縫い部及び/又は立つ縫い部を跨いだ所要箇所に、目的にあった文字、模様等の連続した図柄を自由に選定でき、かつ内外の甲部で非連続性を起すような制約のない、地下たびの外観に適合する迫力のある図柄で装飾された地下たびを提供できる利点がある。
また、本発明は上記の特徴に加えて、アッパー体裏布の縫合部及び/又は所要部に図柄を形成し、一層画趣に富んだ外観を呈する地下たびを提供することができる。
さらにまた、連続する図柄と非連続の図柄とを組み合わせて形成し、地下たびとしての外観を一層強調させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示す斜め後方から見た斜視図である。
【図2】同じく正面から見た正面図である。
【図3】同じく背面から見た背面図である。
【図4】本発明に使用するアッパー体を示す一部変形させた正面図である。
【図5】本発明に使用するアッパー体を内甲側から見た平面図である。
【図6】本発明に使用するアッパー体を外甲側から見た平面図である。
【図7】本発明に使用するアッパー体の甲縫い部を示す断面図である。
【図8】本発明に使用するアッパー体の内甲布を示す平面図である。
【図9】本発明に使用するアッパー体の外甲布を示す平面図である。
【図10】本発明に使用するアッパー体のマチ布を示す平面図である。
【図11】本発明に使用するアッパー体裏布縫合線の箇所に図柄を形成させた例を示す平面図である。
【図12】本発明に使用する図柄を形成したアッパー体内甲布の裏布を示す平面図である。
【図13】本発明に使用する図柄を形成したアッパー体外甲布の裏布を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
これらの図のうち図1ないし図3は、本発明によって得られた地下たびの外観で、図では右足用の片足を示している。そして図中1は綿布で縫製されたアッパー,2はゴム等からなる接地底で、両者はミシン縫合、又はこれに一部接着剤を併用して一体化する縫付方式、あるいはゴムの未硬化状態の接地底を加硫成形して取り付ける貼付方式によって製作されている。
アッパー1は、接地底2を取り付ける直前の状態、すなわち図4に示すようにアッパー体1Aとして縫製したものに、図示は省略しているが、これに比較的厚地の中底を底部に縫着してアッパー1とし、この状態で型に履かせて、中底の面に接地底2を取り付けている。
得られた地下たびは、一般に図5に示すようなコハゼ3及び掛糸4を止め具として用いて履くようになっている。なお図において、14及び15は補強のために縫合される被せ布及び尻皮布である。
【0012】
上記アッパー体1Aは、基本的に図8に示す内甲布片11a、図9に示す外甲布片12a及び図10に示すマチ布片13aからなっているが、実際にはこれらの布片は、表布と裏布とからなっているため、これらが縫合された箇所とりわけ甲縫い部16あるいは立つ縫い部17においては、図7に示すように内甲布片11aとその裏布11b及び外甲布12aとその裏布12bの4枚の布が重なり合って縫合されている。なお立つ縫い部17は、外甲布片12aとマチ布片13aとが同様な構成で縫合されている。
したがって、この部分では布厚の重なりによる段差が生じるため、この部分を跨いで連続する図柄を形成することを諦めている状況であった。しかしながら、地下たびの形態からして図1ないし図3の部位は、履いたときに目立つ部分であり、この縫合部に連続する図柄を設けることができれば、図柄による訴求効果は大きいことに着眼し、本発明に至ったものである。
【0013】
本発明は、以上のように甲縫い部16及び/又は立つ縫い部17の段差の生じる部分を含めてこの箇所に縫合部で図柄が非連続になったり、ズレが生じないように図柄を形成したものであるため、違和感のない所期の文字、模様を表示でき、綺麗で迫力のある図柄が形成された地下たびを提供のすることができることになる。
このような図柄は、例えばアッパー体1Aの甲縫い部16に図柄を形成する場合、図5及び図6に示すように、甲縫い部16の指付根部やや上方から脚に立ち上がる部分の間1Bに図柄を形成することが好ましい。この部分は図2に示すように、甲部の見やすい箇所に相当するため好ましいが、これより下方になると図柄が目立ち難く、反対にこれより上方になると甲から脚への湾曲が大きく所期の図柄が設けにくくなる面がある。
【0014】
そして甲縫い部16に図柄を形成するときには、完成された地下たびの状態で施すことは困難であるので、図4のように接地底2を取り付ける以前のアッパー体1Aの指付根部やや上方から脚に立ち上がる部分の間1Bが平滑性を確保するように、周囲方向から張力を与えるなどして、この上面からプリントを行えばよい。
なお、立つ縫い部17に図柄を形成するときは、この部分は甲縫い部16のように高さ方向に大きく湾曲する部分がないので、例えば図3の状態から押圧した状態で平滑性を維持して上方よりプリントすることによって形成することができる。
【0015】
上記実施例において、図1ないし図3に示すように甲縫い部16には馬の図形Aが、また立つ縫い部17には円形マークBを形成しているが、特に甲縫い部16には地下たびとして目立ち易い箇所のため、迫力のある人物、動物、風景等の中から選択して形成すればよい。一方立つ縫い部17には地下たびの背面側になるので、寺社の祭礼等に用いるマーク、町名、屋号等を形成することができる。勿論、立ち縫い部17に甲縫い部16と同様な図柄を形成しても良い。
【0016】
以上のように、アッパー体1Aの状態で甲縫い部16及び/又は立つ縫い部17に図柄を形成するときは、縫製された無地のアッパー体1Aの状態で保持しておけば、所望の異なる図柄、異なる色に変更するときにも使えて便利であり、これによって加工コストの節減、納期の短縮を図ることができ有利である。
【0017】
本発明は以上のように甲縫い部16単独、立つ縫い部17単独或は両者16、17に図柄を形成することを第一義としているが、これに併用して縫合部以外の部分に連続性が問われない独立の図柄を形成することができる。このような形成する場合には、特許文献1にも示されているように、裁断する前の布或は図8ないし図10の裁断した布片の状態で図柄形成をした上で製作することができる。
【0018】
図11ないし図13は、本発明のアッパー体1Aの裏布に図柄を形成した例を示すもので、図11は内甲と外甲の部分を平面した状態で示している。同図において、この甲縫い部16を跨るように、図3と同じ図柄Bを形成している。この例において内外布の裏布11b、12bを展開して平面したときは、周囲方向に伸張させることでこの部分の平滑性を保つことができるので、上方からのプリントを容易に施して、所定の図柄Bを形成することができる。
【0019】
図12及び図13は、アッパー内甲及び外甲に相当する裏布の縫合する前の状態を示しており、この例では麻の葉模様の図柄を前面に形成したものである。
これらの裏布11b、12bは、全面に図柄を形成した布を裁断して用いるのが一般的であるため、アッパー体1Aを製作した際に、その縫合部では模様の連続性は失われることになるが、裏布に図柄を施すことは、表布に施す場合に比べ図柄の連続性を問われることも少なく、また細かい模様などを施せばこの点を目立たせないようにすることができる。
また、このように全面に図柄を施した裏布を用いてアッパー体1Bとしたものに、さらに図11の要領で、縫合部に連続した図柄を形成することによって、模様を強調させることもできる。
【0020】
本発明の図柄を形成するためのプリント方法は、布面に施せるものであればスクリーン印刷、シリコンパッド印刷など特に限定されないが、多色刷の図柄を形成する場合にはインクジェットプリントの方法で形成すると、図柄が鮮明で多色の図柄が一度のプリント得られ、プリントのための版の入手も容易に行えるので有利である。
【符号の説明】
【0021】
1 アッパー
1A アッパー体
11 内甲布
11a 内甲布片
11b 内甲布裏布
12 外甲布
12a 外甲布片
12b 外甲布裏布
13 マチ布
13a マチ布片
14 被せ布
15 尻皮布
16 甲縫い部
17 立つ縫い部
2 接地底
3 コハゼ
4 掛糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーに接地底を取付けてなる地下たびであって、アッパー内甲と外甲とを縫合する甲縫い部及び/又は立つ縫い部の所要位置に、当該縫い部を跨り内外甲面にパターンが連続した図柄を形成したことを特徴とする地下たび。
【請求項2】
前記甲縫い部の指付根部やや上方から甲から脚に立ち上がる部分の間に連続する図柄を形成したことを特徴とする請求項1に記載の地下たび。
【請求項3】
アッパー面の連続した図柄以外の部分に、独立した図柄を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の地下たび。
【請求項4】
アッパー体裏布の縫合部及び/又は所要部に図柄を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の地下たび。
【請求項5】
少なくとも連続した図柄がインクジェットプリントで形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の地下たび。
【請求項6】
アッパーに接地底を取付けてなる地下たびの製造方法であって、アッパー内甲と外甲とを縫合したアッパー縫製体の甲縫い部及び/又は立つ縫い部の所要位置を 緊張させて平滑性を確保し、この面にプリントを施してパターンが連続した図柄を形成したことを特徴とする地下たびの製造方法。
【請求項7】
前記甲縫い部の指付根部やや上方から甲から脚に立ち上がる部分の間に連続する図柄を形成するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の地下たびの製造方法。
【請求項8】
少なくとも連続した図柄がインクジェットプリントで形成されたことを特徴とする請求項6又は7に記載の地下たびの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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