説明

培養装置

【課題】培養液全体に十分な光量の光を照射し、光合成生物の培養効率を向上させる。
【解決手段】培養装置10は、ガラス製の導光体20および融着体30を備える。導光体20は容器を兼ねており、容器内に培養液12が収容されている。融着体30はガラス繊維を焼結することで得られる3次元網目構造を有し、その空隙に培養液12が満たされる。融着体30は導光体20の内壁に融着しており、導光体20の端面22から入射した光は、導光体20内を深さ方向に伝搬するとともに、深さ方向と直交する方向に融着体30にも伝搬し、融着体30の空隙に保持された培養液12が光照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類等の光合成生物を培養するための培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原油価格高騰や地球温暖化対策の必要性を背景に、化石燃料の代替品としてバイオ燃料が注目されている。バイオ燃料の原料としてトウモロコシやサトウキビなどの穀物を用いた穀物系バイオ燃料の開発が進められている。しかし、穀物系バイオ燃料の需要増大が食料価格の高騰を招くことや、穀物の栽培に広大な土地が必要であり、肥料、農薬、水などを投入するために多大なエネルギーを必要とすることが課題となっている。このため、非穀物系バイオ燃料の原料として、藻類を用いることが有望視されている。
【0003】
藻類の主な培養方法として、開放池方式と屋内培養方式がある。開放池方式では、広大な面積を必要とし、かつ異物が混入しやすいという課題がある。このため、屋内培養に適した培養装置について様々な研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−62691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の培養装置では、藻類が増殖するにつれて藻類による光吸収の度合いが大きくなる。この結果、培養液の液面からの深さが深くなるにつれて到達する光量が徐々に減少し、十分な光量の光が照射されない部分が培養液中に生じる。この結果、培養液全体での光合成効率の低下を招いていた。特許文献1では、このような課題を解決すべく、光伝導チューブを培養液中に設置する技術が開示されている。しかし、特許文献1に記載の技術では、光伝導チューブの近傍領域にしか光伝達ができないため、培養液中に照射される光量が不足する領域が生じるという課題は依然として残っている。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、培養液全体に十分な光量の光を照射し、光合成生物の培養効率を向上させることができる培養装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、培養装置である。当該培養装置は、光合成生物を培養液中で培養するための培養装置であって、培養液を収容する容器と、光源からの光を前記容器の深さ方向に導光する導光体と、少なくとも一部が前記容器に収容され、前記培養液が流入可能な空隙を形成する3次元網目構造を有する透光性部材と、を備え、前記透光性部材と前記導光体とが光学的に接続していることを特徴とする。
【0008】
前記透光性部材がガラス繊維が融着した融着体であってもよい。前記透光性部材と前記導光体とが融着していてもよい。上記態様の培養装置において、前記導光体が前記容器を兼ねていてもよい。前記導光体が前記容器の中央部分において、前記容器の深さ方向に延在して設けられていてもよい。前記導光体が中空構造を有していてもよい。この場合、前記導光体の上部開口から導入された二酸化炭素を含むガスが、前記導光体の中空部分を経由して前記導光体の下部開口から吐出されることにより、前記培養液に供給されてもよい。前記容器の深さ方向に前記透光性部材を貫通する貫通孔が設けられていてもよい。前記導光体が前記培養液の液面より上方に突出し、前記培養液の上方に突出した前記導光体に融着した前記透光性部材の空隙に前記培養液が保持されていてもよい。
【0009】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養液全体に十分な光量の光を照射し、光合成生物の培養効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る培養装置の概要を示す概略図である。
【図2】図2(A)は、試料1のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図2(B)は、試料2のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図2(C)は、試料3のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図2(D)は、試料4のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。
【図3】試料1〜4の各試料における入射光の方向に透過した透過光量を示すグラフである。
【図4】図4(A)は、試料5について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図4(B)は、試料6について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図4(C)は、試料7について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図4(D)は、試料8について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。
【図5】試料5〜8の各試料における入射光と直交する方向に透過した透過光量を示すグラフである。
【図6】実施の形態2に係る培養装置の概要を示す概略図である。
【図7】実施の形態3に係る培養装置の概要を示す概略図である。
【図8】実施の形態4に係る培養装置の概要を示す概略図である。
【図9】実施の形態5に係る培養装置の概要を示す概略図である。
【図10】実施の形態6に係る培養装置の概要を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る培養装置10の概要を示す概略図である。培養装置10は、主な構成として、容器14、導光体20および融着体30を備える。
【0014】
容器14は、外壁部材および底面部材としての導光体20および蓋部材16を有する。言い換えると、導光体20は容器14の一部を兼ねている。容器14には、培養液12や融着体30が収容されている。蓋部材16により容器14の内部空間が密閉されており、容器14に収容された培養液の水分が蒸発したり、外部から異物が混入することが抑制される。
【0015】
本実施の形態の導光体20はガラスで形成されている。ただし、導光体20は、光源100から照射される光が透過し、容器として十分な強度を得ることができる材料で形成されていればよく、ガラス以外の導光体20の材料としては、アクリル樹脂などの透明樹脂が挙げられる。導光体20は、光源100から照射された光(可視光)を受光する受光面となる端面22を有し、この端面22から導光体20に入射した光は導光体20内を伝搬することにより容器14の深さ方向に沿って導光される。なお光源100は、LED、太陽光、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱灯、レーザおよびこれらと光ファイバを組み合わせたもので構成される。
【0016】
融着体30は容器14を兼ねる導光体20の内部に収容されている。融着体30は、光透過性を有するとともに、培養液が流入可能な空隙を有するように、ガラス繊維が融着した3次元網目構造を有する透光性部材の一例である。融着体30を形成するガラス繊維の繊維長、繊維径は、たとえば、それぞれ、0.05mm〜50mm、0.01mm〜0.7mmである。さらに、融着体30は、導光体20の内壁と光学的に接続している。本実施の形態では、融着体30と導光体20とが融着している。融着体30によって形成された空隙は培養液12で満たされている。なお、透光性部材は、材料の特性として光透過性および形態として3次元網目構造を具備すればよく、融着体30に限られず、抄紙あるいはエレクトロスピニングにより作製されたガラスペーパーであってもよい。
【0017】
導光体20内を容器14の深さ方向に導光された光は、導光体20と融着体30との融着部分を経由して、融着体30にも伝搬する。つまり、導光体20の端面22から導光体20内に入射した光は、容器14の深さ方向に伝搬するだけでなく、融着体30の3次元網目構造に従って容器14の内側方向にも伝搬する。融着体30内を伝搬した光は、融着体30を構成するガラス繊維の端面部分から漏れ出し、培養液12に照射される。したがって、融着体30を構成するガラス繊維の繊維長が短い程、光の出射口となるガラス繊維の端面の数が多くなり、培養液12への光照射の光量を十分確保することができる。なお、ガラス繊維から光が放出される箇所には、ガラス繊維の端面に限られず、ガラス繊維が大きく屈曲または湾曲したベンド部分も含まれる。このため、ガラス繊維の繊維長を短くするとともに、ガラス繊維の曲げ半径を小さくし、ガラス繊維の曲げ回数を多くすることにより、培養液12への光照射の光量をより増加させることができる。
【0018】
容器14の下部には通気管40が接続されている。通気管40には開閉弁(図示せず)が設けられており、この開閉弁を開くことにより、通気管40を通じて容器に保持された培養液に二酸化炭素を含むガス(具体的には空気)を供給することができる。通気管40から供給された空気が培養液12内を上昇する間に培養液12に二酸化炭素が溶け込む。なお、融着体30によって形成された空隙に満たされた培養液12を空気が上昇する場合、融着体30が3次元網目構造をなすことにより、空気が通る経路が複雑になる。このため、培養液12の中を単に上昇する場合に比べて、空気が通る経路長が大幅に長くなる。この結果、培養液12への二酸化炭素の溶け込み効率を大幅に向上させることができる。
【0019】
また、容器14の下部には、排水管44が接続されている。排水管44には開閉弁(図示せず)が設けられており、開閉弁を開くことにより培養液12を外部に排出することができる。特に、付着性藻類を培養する場合には、培養後に開閉弁を開いて培養液12を排出すると、培養した藻類が融着体30に付着して残る。このため、遠心分離工程を実施することなく、藻類を分離することができる。
【0020】
蓋部材16には、排気管42が取り付けられており、通気管40から供給され、培養液12の中を通り抜けた空気は、排気管42を通して外部に排出される。
【0021】
また、蓋部材16には、通液管46が接続されている。通液管46の外部側の端部は、抽出溶媒が貯蔵された容器(図示せず)に接続されており、通液管46に設けられた開閉弁(図示せず)の開度を調節することにより、容器14に供給する抽出溶媒の量を適宜設定することができる。抽出溶媒としては、ペンタン、ペンテン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、デカヒドロナフタレン(デカリン)ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、p−キシレン、クメン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ジイソプロピルエーテル、ジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、酢酸ブチル、ニトロベンゼン、ベンゼンニトリル、キノリン、リン酸トリブチル(TBP)および石油エーテル等や、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタン、シクロペンテン、3−メチル−1−ブタノール(イソアミノアルコール)、およびアセチルアセトンなどの混合溶媒が挙げられる。なお、混合溶媒に水が加えられる場合もある。
【0022】
培養後、通液管46から所定量の抽出溶媒を添加し、抽出処理が完了した後、排水管44を通じて藻類の生成成分からなる抽出液を回収することができる。なお、抽出処理後に残った藻類は、必要に応じて洗浄したり、培養が再度可能な場合には通液管46から培地(培養液)を充填することより、連続的に培養することができる。
【0023】
以上説明した培養装置10によれば、導光体20の端面22から入射した光が導光体20内を容器14の深さ方向に伝搬しつつ、導光体20に光学的に接続された透光性部材(融着体30)にも伝搬する。この結果、容器14に収容された培養液12全体に光が照射される。したがって、藻類が増殖することにより光源100からの光が吸収された状態であっても、容器14に収容された培養液12全体に対する光照射を十分に確保することができ、ひいては、藻類などの光合成生物の培養効率を向上させることができる。
【0024】
また、導光体20の端面22から入射した光を融着体30全体に伝搬させることができるため、光エネルギーの利用率を高めることができ、ひいては、光照射に要するエネルギーを低減することができる。
【0025】
以下、融着体の作製方法および導光体に融着した融着体による光伝搬効果について説明する。
【0026】
(融着体用のガラス繊維の調整)
表1に示すCガラス組成のガラスを溶融紡糸して繊維径300μmのガラス繊維を作製し、粗切断および粉砕した。その後、繊維長分布が500〜1500μmであるガラス繊維に分級した。具体的には、JIS規格の試験用篩を用いて乾式振動分級法にて分級し、目開き710μm篩(前段篩)を通過し、かつ、目開き300μm(後段篩)上に残ったガラス繊維を融着体(焼結体)原料とした。本実施例で用いたCガラス組成のガラスは厚さ3mmのときの可視光透過率が80%以上(例えば波長600nmの透過率が95%)であった。
【表1】

【0027】
(融着体の作製)
得られたガラス繊維(融着体原料)を、光路長10mmの分光光度計の石英ガラスセルに体積3mlとなるように充填し、軟化点付近の690℃で1時間焼成、炉中で放冷し、ガラス繊維の融着体(焼結体)を作製した。融着体の空隙率は47%であった。
【0028】
(試料作製1)
得られた融着体をガラスセルに充填したものを試料1とした。試料1では、融着体によって形成される空隙は空気で満たされている。得られた融着体をガラスセルに充填し、さらに、培養液の代用として、市販の墨汁を超純水を用いて1/2000に希釈した溶液を充填したものを試料2とした。また、試料1で用いた融着体と同量の未焼成のガラス繊維をガラスセルに充填したものを試料3とした。試料1で用いた融着体と同量の未焼成のガラス繊維をガラスセルに充填し、さらに、市販の墨汁を超純水を用いて1/2000に希釈した溶液を充填したものを試料4とした。なお、試料3および試料4の空隙率はともに47%であった。
【0029】
(光照射方向における透過光量の測定)
試料1〜4の各試料のガラスセルに、一定距離から一定強度の660nmのレーザー光を入射角0度で入射し、ガラスセルの裏面に設置したカメラで一定距離から同一の露光条件で撮影し、一定面積の透過光量を画像解析により評価した。
【0030】
図2(A)は、試料1のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図2(B)は、試料2のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図2(C)は、試料3のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図2(D)は、試料4のガラスセルを透過した光を撮影した画像である。図3に各試料における入射光の方向に透過した透過光量を示すグラフである。
【0031】
試料1のガラスセルでは、入射光が融着したガラス繊維中に伝搬することで、63.88の光量が得られた。一方、試料3のガラスセルでは入射光が散乱されることにより減衰し、透過した光量は52.77と低い値となった。さらに、試料2のガラスセルでは、47.94、試料4のガラスセルでは22.68と低い値となった。墨汁を充填した場合での比較では、試料2の光透過性と試料4の光透過性との差が明確となり、ガラス繊維を未焼成の試料4における透過光量はガラス繊維を焼成した試料2の場合の1/2以下に低下した。
【0032】
(試料作製2)
ガラス繊維と同程度の軟化点のスライドガラスを準備し、端面を光学研磨した。スライドガラスの上に内径15mm、高さ7mmのアルミナからなるパイプ状の磁性管を設置し、磁性管の内部に長さを調整したガラス繊維(融着体原料)を7mmの高さとなるように充填し、690℃で1時間焼成し、炉中で放冷した(試料5)。さらに、水を充填したものを試料6とした。なお、試料5および試料6の空隙率はともに47%であった。また、試料5で用いた融着体と同量の未焼成のガラス繊維を磁性管に充填したものを試料7とした。試料5で用いた融着体と同量の未焼成のガラス繊維を磁性管に充填し、さらに、水を充填したものを試料8とした。なお、試料7および試料8の空隙率はともに47%であった。
【0033】
(端面入射での光透過性の比較)
試料5〜8の各試料について、スライドガラスの光学研磨した端面に一定距離から一定強度の660nmのレーザー光を0度で入射し、ガラス繊維を設置した部位に透過、伝搬する光を入射光と直交する位置に設置したカメラで一定距離から同一の露光条件で撮影し、一定面積の透過光量を画像解析により評価した。
【0034】
図4(A)は、試料5について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図4(B)は、試料6について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図4(C)は、試料7について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図4(D)は、試料8について入射光と直交する方向に透過した光を撮影した画像である。図5に各試料における入射光と直交する方向に透過した透過光量を示すグラフである。
【0035】
スライドガラスとガラス繊維とが融着した試料5では、ガラス繊維に入射光が伝搬することで、57.30の光量となった。一方、ガラス繊維が未焼成の試料7では、スライドガラス中を伝搬する光がガラス繊維には殆ど伝搬せず5.54の光量となった。また、ガラス繊維に水を含浸させた場合、ガラス繊維が未焼成の試料8では光量が38.56であったのに対し、ガラス繊維が融着した試料6の場合には光量が110.70であり、光伝搬性が非常に高いことが示された。焼成したガラス繊維はガラス繊維同士の融着に加え、スライドガラスとも融着しているため、スライドガラスを通った光がガラス繊維にも効率よく伝搬したと考えられる。
【0036】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る培養装置10の概要を示す概略図である。実施の形態2に係る培養装置10の基本的な構成は、実施の形態1と同様である。以下、実施の形態2に係る培養装置10について、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0037】
本実施の形態の培養装置10では、容器14の深さ方向に延在した貫通孔32が融着体30に形成されている。貫通孔32は培養液12で満たされており、通気管40から導入された空気は貫通孔32に充填された培養液12を通って容器の上部に到達することができる。
【0038】
この構成によれば、ガラス繊維焼結体の空隙に増殖した藻類が詰まり、融着体30において通気効率が低下した場合であっても、貫通孔32を空気が通過することにより、培養液全体に空気を十分供給することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、貫通孔32が1つの場合が例示されているが、貫通孔32の数は融着体30の通気効率に応じて適宜設定される。
【0040】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3に係る培養装置10の概要を示す概略図である。実施の形態3に係る培養装置10について、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0041】
本実施の形態では、棒状の導光体20が培養液12や融着体30を収容する容器14の中央部分に挿入されている。導光体20の軸方向は容器14の深さ方向と略平行に延在している。本実施の形態では、導光体20の外周に融着体30が融着している。導光体20の端面22から導光体20に入射した光は、導光体20内を導光しつつ、一部が導光体20と融着した融着体30に伝搬することにより、導光体20の軸方向と直交する方向に放射状に伝搬する。
【0042】
本実施の形態によれば、導光体20の上部端面に光を集中的に照射し、導光体20から周囲の融着体30に光を放射状に伝搬させることにより、光エネルギーを有効利用することができる。
【0043】
なお、実施の形態1と同様に、容器14を導光体とし、容器14に融着体30を融着させてもよい。これによれば、融着体30において、容器14の中心部分から外壁の方向への光の伝搬に加えて、容器14の外壁部分から中心部分への光の伝搬が生じるため、培養液12をより均一に光照射することができる。
【0044】
(実施の形態4)
図8は、実施の形態4に係る培養装置10の概要を示す概略図である。実施の形態4に係る培養装置10の基本的な構成は、実施の形態3と同様である。以下、実施の形態4に係る培養装置10について、実施の形態3と異なる構成を中心に説明する。
【0045】
本実施の形態では、導光体20は中空構造を有している。導光体20の上部開口から導入された二酸化炭素を含むガス(空気)が、導光体20の中空部分24を経由して導光体20の下部開口から吐出される。これにより、導光体20の下部開口付近の培養液に空気が供給され、この空気が培養液内を上昇することにより、培養液全体に空気が供給される。なお、導光体20の上部開口は、培養液の液面より上方に位置しており、導光体20の上部開口に培養液が流入しないようになっている。
【0046】
本実施の形態によれば、導光体20が通気管を兼ねることにより、培養装置10の構成をより簡便にすることができる。
【0047】
なお、導光体20を中空構造とした場合の利用形態としては、二酸化炭素を含む空気のエアレーションに限られない。例えば、導光体20の中空部分24に温調された水を循環させることで、培養液12の温度調節を行うことができる。また、導光体20の中空部分24に、通気用のガラス管や、培養液12を循環・供給するためのガラス管などを挿入してもよい。
【0048】
(実施の形態5)
図9は、実施の形態5に係る培養装置10の概要を示す概略図である。本実施の形態の導光体20は平板状であり、具体的にはガラス基板で形成されている。導光体20の最下部の一部分が培養液に浸り、導光体20の大部分が培養液12の液面より上方に突出している。
【0049】
融着体30は、導光体20の一方の主表面全体に融着しており、導光体20と同様に、融着体30の大部分は培養液12の液面より上方に突出している。なお、融着体30は導光体20の他方の主表面や、導光方向に延在し、両主表面と接続する一対の側面に融着していてもよい。
【0050】
毛細管現像により、培養液12の液面より上方に突出した部分の融着体30の空隙に容器14に収容された培養液12が吸い上げられ、当該空隙に培養液12が保持されている。
【0051】
導光体20の端面22から入射した光が、導光体20に融着した融着体30に伝搬することで、融着体30の空隙に保持された培養液12が光照射される。これにより、容器14に収容された培養液12の中のみならず、培養液12の液面より上方に突出した部分の融着体30の空隙部分においても藻類を培養することができる。本実施の形態の培養装置10での培養に適した藻類としては、乾燥に強い気生藻類が挙げられる。
【0052】
本実施の形態によれば、融着体30が保持できる培養液12の量を確保すれば済むため、培養液12の量を低減することができる。このため、培養装置10に付随する設備を簡便化することができ、また、廃液処理コストの低減を図ることができる。
【0053】
実施の形態1と同様に、容器14の下部には、排水管44が接続されている。排水管44には開閉弁(図示せず)が設けられており、開閉弁を開くことにより培養液12を外部に排出することができる。特に、付着性藻類を培養する場合には、培養後に開閉弁を開いて培養液12を排出すると、培養した藻類が融着体30に付着して残る。このため、遠心分離工程を実施することなく、藻類を分離することができる。
【0054】
(実施の形態6)
図10は、実施の形態6に係る培養装置10の概要を示す概略図である。本実施の形態では、実施の形態5の構成に加えて、配管60およびポンプ62をさらに備える。配管60の一方の開口は容器14に収容された培養液12に浸かり、他方の開口は融着体30の上部端面の上方に位置している。ポンプ62により、容器14に収容された培養液12が汲み上げられ、汲み上げられた培養液12は配管60を通って融着体30の上部端面に供給される。
【0055】
この構成によれば、培養液12の液面より上方に位置する融着体30の空隙に培養液12を保持させるメカニズムを毛細管現象のみに頼らず、ポンプ62で汲み上げた培養液12を積極的に供給することで、融着体30の空隙部分が乾燥することを抑制することができる。このため、本実施の形態の培養装置10は、乾燥に弱い藻類の培養に好適である。
【0056】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0057】
例えば、上述の各実施の形態では、培養する光合成生物として藻類が例示されているが、培養に適した光合成生物は藻類に限定されず、光合成細菌なども含む。
【0058】
また、上述の各実施の形態では、導光体20と融着体30との光学的な接続は、融着により確保されているが、導光体20から融着体30へ光が伝搬できればよく、導光体20と融着体30とが、透明樹脂系の接着剤、水ガラス、ゾルゲルガラスなどの透光性部材により接合されていてもよい。
【0059】
導光体20を伝搬する光は融着体30への伝搬により、下方になるほど光量が減る。言い換えると、培養液12の上部領域では、光源100から直接届く光の割合が高い。このため、培養液12の下方部分にのみ、導光体20と融着体30とを融着させてもよい。また、導光体20と融着体30との融着の度合いを培養液12の下方ほど高めてもよい。また、導光体20が容器外壁の場合には、容器14の外側に反射部材を設けてもよい。これによれば、容器14の外側に光が漏れることを抑制し、光源100から照射された光を有効利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 培養装置、12 培養液、20 導光体、30 融着体、40 通気管、42 排気管、44 排水管、100 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成生物を培養液中で培養するための培養装置であって、
培養液を収容する容器と、
光源からの光を前記容器の深さ方向に導光する導光体と、
少なくとも一部が前記容器に収容され、前記培養液が流入可能な空隙を形成する3次元網目構造を有する透光性部材と、
を備え、
前記透光性部材と前記導光体とが光学的に接続していることを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記透光性部材がガラス繊維が融着した融着体である請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記透光性部材と前記導光体とが融着している請求項1または2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記導光体が前記容器を兼ねている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項5】
前記導光体が前記容器の中央部分において、前記容器の深さ方向に延在して設けられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項6】
前記導光体が中空構造を有している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項7】
前記導光体の上部開口から導入された二酸化炭素を含むガスが、前記導光体の中空部分を経由して前記導光体の下部開口から吐出されることにより、前記培養液に供給される請求項6に記載の培養装置。
【請求項8】
前記容器の深さ方向に前記透光性部材を貫通する貫通孔が設けられている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項9】
前記導光体が前記培養液の液面より上方に突出し、前記培養液の上方に突出した前記導光体に融着した前記透光性部材の空隙に前記培養液が保持される請求項1に記載の培養装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図4】
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