説明

基板に設けたコイル構造

【課題】 基板にコイルを設ける際にコイル部品を準備する必要がなく、基板にコイルを設ける作業の効率が向上されたコイル構造を提供すること。
【解決手段】 基板1の上面1aにプリント配線21を並べて複数形成し、基板1の下面1bに、プリント配線21の奥側の端部21aの真裏位置と、当該プリント配線21の隣りの第1配線21の手前側の端部21bの真裏位置とを結ぶプリント配線51を複数形成し、各プリント配線21の奥側の端部21aからその真裏のプリント配線51の奥側の端部51aに貫通する貫通孔61と、各プリント配線21の手前側の端部21bからその真裏のプリント配線51の奥側の端部51bに貫通する貫通孔62とを形成し、各貫通孔61,62の孔内面に貫通孔61,62の両開口部でプリント配線21,51に電気的に接続された導電層を形成することによりコイルKを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板に設けたコイル構造に関する。
【0002】
【従来の技術】プリント配線パターンが形成された基板にコイルを設ける場合は、通常、コイル部品を半田付けによって実装している。ところで、需要が少ない回路を備える基板などのように、生産量が少ない基板を生産する場合は、当該基板に実装するコイル部品の生産も少量でよいが、実装しようとしているコイル部品が規格品でない場合は、基板を生産する度に必要なコイル部品を生産することとなり、基板にコイルを設ける作業の効率が悪い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、基板にコイルを設ける際にコイル部品を準備する必要がなく、基板にコイルを設ける作業の効率が向上されたコイル構造を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の基板に設けたコイル構造は、上記課題を解決するため、基板の一方の面に複数の第1配線を並列状態で形成すると共に、基板の他方の面に、第1配線の一方側の端部の真裏の位置と、当該第1配線から所定側にn本隣りの第1配線の他方側の端部の真裏の位置とを結ぶ第2配線を並列状態で複数形成し、各第1配線の一方側の端部からその真裏の第2配線の一方側の端部に貫通する貫通孔と、各第1配線の他方側の端部からその真裏の第2配線の他方側の端部に貫通する貫通孔とを形成すると共に、各貫通孔の孔内面に、貫通孔の両開口部で当該開口部に面して形成された配線に電気的に接続されており、かつ貫通孔の全長に亘る導電層を形成することによりn個のコイルを設けたことを特徴とする。但し、nは自然数である。
【0005】第1配線及び第2配線は、基板の表面にプリント配線パターンを形成する工程で同時に形成でき、貫通孔は、例えばスルーホールプリント配線方式などの公知の配線技術で基板の両面の配線を相互に電気的に導通させる配線を形成する工程で同時に形成できる。つまり、基板に配線を形成する際にコイルを設けることができる。従って、コイル部品を実装する作業が必要なくなると共にコイル部品を準備しておく必要がなくなり、基板にコイルを設ける作業の効率が向上する。
【0006】ところで、第1配線の一方側の端部の真裏の位置と、当該第1配線から所定側に1本隣り即ち隣接した第1配線の他方側の端部の真裏の位置とを結ぶ第2配線を並列状態で複数形成すると、1つのコイルができるが、所定側にn本隣りの第1配線の他方側の端部の真裏の位置とを結ぶ第2配線を並列状態で複数形成するとn個のコイルが形成される。例えばn=2であれば、2個のコイルが設けられるので、一方のコイルを一次巻線として用いると共に、他方のコイルを二次巻線として用いれば、当該コイル構造の部分が変圧器や変成器になる。従って、基板に配線を形成する際に変圧器や変成器を設けることができ、これらの部品の実装作業が不要になると共にこれらの部品の準備が不要になり、基板に変圧器や変成器を設ける作業の効率が向上する。
【0007】
【発明の実施の形態】図1を参照して、1はプリント配線基板(以下、基板とする)である。基板1の上面1aには、同じ長さの複数のプリント配線21(第1配線)が平行に並ぶ状態に形成されたプリント配線パターン2と、その両側に形成されるプリント配線パターン3,4が形成されている。また、基板1の下面1bには、同じ長さの複数のプリント配線51(第2配線)が平行に並ぶ状態で形成されたプリント配線パターン5が形成されている。各プリント配線51の図1における奥側(一方側)の端部51aは、上面1aのプリント配線21の奥側の端部21aの真裏の位置になっている。一方、プリント配線51の手前側(他方側)の端部51bは、奥側の端部51aの真上に端部21aが位置するプリント配線21の右隣り、すなわち右側(所定側)に1本隣りのプリント配線21の手前側の端部21bの真裏の位置になっている。
【0008】また基板1には、各プリント配線21の奥側の端部21aからその真裏のプリント配線51の奥側の端部51aに貫通する貫通孔61と、各プリント配線21の手前側の端部21bからその真裏のプリント配線51の手前側の端部51bに貫通する貫通孔62とが形成されている。各貫通孔61,62の孔内面には貫通孔61,62の全長に亘る導電層(図示せず)が形成されており、導電層は貫通孔61,62の上面及び下面の両開口部で当該開口部に面して形成されたプリント配線21,51の端部21a,21b,51a,51bに電気的に接続されている。なお導電層は、例えば後述のスルーホールプリント配線方式を用いた場合は銅を電界めっきすることにより形成される。
【0009】このようにしてプリント配線21,51及び導電層を備える貫通孔61,62を形成すると、これらの導電体が直列に接続されてコイルKを形成する。つまり、例えば図1の左端のプリント配線21を起点に説明すると、当該プリント配線21はその奥側の端部で貫通孔61の導電層に電気的に接続され、当該貫通孔61の導電層はその下端でプリント配線51に電気的に接続され、プリント配線51はその手前側の端部51bで貫通孔62の導電層に電気的に接続され、当該貫通孔62の導電層は、その上端で起点にしたプリント配線21の右隣りのプリント配線21の手前側の端部に電気的に接続されるというように直列接続される。コイルKの巻数は基板1に形成するプリント配線21,51及び導電層を備える貫通孔61,62の数によって任意に設定できる。当該コイルKにはプリント配線パターン3,4により通電される。
【0010】プリント配線パターン2,3,4,5は公知のプリント配線パターン形成方法により、また導電層を備える貫通孔61,62は例えばスルーホールプリント配線方式など、基板の両面に形成されたプリント配線パターンを電気的に導通させる配線を形成するための公知の配線方式によって形成できる。従って、本実施の形態のようにすれば、基板1にプリント配線を形成する際に基板1にコイルKを設けることができ、コイル部品を実装する作業が必要なくなると共にコイル部品を準備しておく必要がなくなるので、基板にコイルを設ける作業の効率が向上する。なおコイルの巻回密度はプリント配線パターンを形成できる範囲で任意の密度にすることが可能である。
【0011】次に別の実施の形態を説明する。本実施の形態と上記の実施の形態とでは、基板1の下面1bに形成したプリント配線51の手前側の端部51b位置に違いがあると共に、この違いに伴いプリント配線パターン6,7が形成されている点に違いがある。即ち、本実施の形態では、プリント配線51の手前側の端部51bが、奥側の端部51aの真上に端部21aが位置するプリント配線21の右側に2本隣りのプリント配線21の手前側の端部21aの真裏の位置になっている。このようにすれば、プリント配線パターン3とプリント配線パターン4との間に形成されるコイルK1と、プリント配線パターン6とプリント配線パターン7との間に形成されるコイルK2との都合2つのコイルが二条ネジのネジ山の配列と同様に配列された状態で基板に設けられる。従って、一方のコイルK1を一次巻線として用いると共に他方のコイルK2を二次巻線として用いることにより、当該コイル構造の部分を変圧器や変成器として利用できる。つまり、基板1にプリント配線を形成する際に変圧器や変成器を設けることができるので、これらの部品の実装作業が不要になると共にこれらの部品の準備が不要になり、基板にコイルを設ける作業の効率が向上する。
【0012】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、基板にコイルを設ける際にコイル部品を準備する必要がないので、基板にコイルを設ける作業の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る基板に設けたコイル構造を示す斜視図
【図2】 本発明に係る基板に設けたコイル構造の別の実施形態を示す斜視図
【符号の説明】
1 基板
2,3,4,5 プリント配線パターン
21 プリント配線(第1配線)
51 プリント配線(第2配線)
61,62 貫通孔
K,K1,K2 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の一方の面に複数の第1配線を並列状態で形成すると共に、基板の他方の面に、第1配線の一方側の端部の真裏の位置と、当該第1配線から所定側にn本隣りの第1配線の他方側の端部の真裏の位置とを結ぶ第2配線を並列状態で複数形成し、各第1配線の一方側の端部からその真裏の第2配線の一方側の端部に貫通する貫通孔と、各第1配線の他方側の端部からその真裏の第2配線の他方側の端部に貫通する貫通孔とを形成すると共に、各貫通孔の孔内面に、貫通孔の両開口部で当該開口部に面して形成された配線に電気的に接続されており、かつ貫通孔の全長に亘る導電層を形成することによりn個のコイルを設けたことを特徴とする基板に設けたコイル構造。但し、nは自然数である。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2000−223316(P2000−223316A)
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−25387
【出願日】平成11年2月2日(1999.2.2)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】