説明

基板乾燥方法、制御プログラム及び基板乾燥装置

【課題】欠陥の発生を抑制することができる基板乾燥方法、制御プログラム及び基板乾燥装置を提供すること。
【解決手段】基板乾燥装置1は、リンス液ノズル20と、乾燥気体ノズル30と、リンス液ノズル20及び乾燥気体ノズル30を移動させる移動機構40と、基板Wを回転させる回転機構10と、制御プログラムがインストールされた制御装置50とを備える。制御装置50の制御プログラムで実行される基板乾燥方法は、乾燥気体流Gfが基板Wに衝突する範囲に基板Wの回転中心Wcが存在する範囲である中心エリアを乾燥させる工程と、中心エリアの外側を乾燥させる工程とを備える。乾燥気体流Gfに含有するIPAが、中心エリア乾燥工程中は2mol%未満を維持し、外側エリア乾燥工程では中心エリア乾燥工程中よりも高濃度とする。これで、遠心力が小さい中心エリアで欠陥の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板乾燥方法、制御プログラム及び基板乾燥装置に関し、特に欠陥の発生を抑制することができる基板乾燥方法、この基板乾燥方法を実行する制御プログラム及び基板乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスへの微細化の要請を背景に、配線材料としてより抵抗の小さい銅が用いられるようになってきている。銅配線は、一般に、基板の表面に形成された絶縁膜に溝を掘り、その溝に銅を埋め込んだ後、余分な銅をCMP(化学機械研磨)で削ることで形成される。CMPで研磨した後の基板は、湿式洗浄された後に乾燥される。銅が埋め込まれる絶縁膜は、配線間に形成されるコンデンサ容量を低減させる観点からk値(比誘電率)の低い材料(Low−k膜)が用いられる。Low−k膜は疎水性であるため、研磨後の洗浄において基板上の水膜が分断されやすく、水膜が分断された状態で乾燥が行われるとウォーターマーク(水染み)等の欠陥が発生しやすい。
【0003】
上記のような事情の下、欠陥の発生抑制に効果的な乾燥方法として、枚葉式で、回転する基板に洗浄用のリンス液の液流を供給して基板面全体を覆う液膜を形成すると共に、リンス液の表面張力を低下させるIPA(イソプロピルアルコール)を含有する乾燥用の気体流を液流の内側に供給し、液流ノズル及び気体流ノズルを、回転する基板の中心から外周に移動させることで、遠心力とマランゴニ力とでリンス液を外周側に移動させて基板上の乾燥領域を中心から外周に徐々に広げ、最終的に基板面全体を乾燥させる方法(以下、本明細書では「枚葉IPA乾燥」という)がある。
【0004】
図7に、これまでに把握されている乾燥用の気体流中のIPA濃度と0.15μm以上のウォーターマークの発生量との関係を示す。なお、図7のグラフは、k値(比誘電率)が2.9で、表面に銅の回路が形成された基板(パターンウェハ)に対して枚葉IPA乾燥を行った結果を示すものである。枚葉IPA乾燥において、乾燥用の気体流中のIPA含有量は、気体ノズルが基板の半径のほぼ半分に至るまでは一定の値(図7に示す実績に基づいて2mol%以上)を維持し、そこから液膜を除去する面積が大きくなる外周にかけて増加させることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/082780号(段落0159、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の乾燥方法(基板全面にわたって気体流中のIPAが2mol%以上を維持する方法)では、製品に影響を与え得る基板上の異物やキズやウォーターマーク(水染み)等の欠陥について、例えば欠陥サイズ0.15μm以上を検出対象とする従来の基準の下では不問とされていた例えば0.15μm未満である0.10μmの欠陥が、近年の半導体技術の進歩に伴って検証が要求されるサイズになることにより欠陥として検出されてしまい、結果として多数の欠陥が発生したことになってしまっていることが分かった。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑み、欠陥の発生を抑制することができる基板乾燥方法、この基板乾燥方法を実行する制御プログラム及び基板乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る基板乾燥方法は、例えば図1、図3、図4及び図6(a)に示すように、水平面内で回転する基板Wに、リンス液流Rf及びIPAを含有し得る乾燥気体流Gfを供給しつつ、回転する基板Wの中心Wc側から外周側へリンス液流Rf及び乾燥気体流Gfを移動させて基板Wを乾燥させる方法であって;乾燥気体流Gfが基板Wに衝突する範囲である衝突範囲に基板Wの回転中心Wcが存在する基板Wの範囲である中心エリアW1を乾燥させる中心エリア乾燥工程と;基板Wの中心エリアW1の外側に存在する外周エリアW3を乾燥させる外周エリア乾燥工程とを備え;乾燥気体流Gfに含有し得るIPAが、中心エリア乾燥工程中は2mol%未満を維持し、外周エリア乾燥工程では中心エリア乾燥工程中よりも高濃度とする。IPAは、典型的には、マランゴニ効果を得るためのリンス液の表面張力の低下を担う。
【0009】
このように構成すると、遠心力が比較的小さくリンス液が残留しやすい中心エリアにおいてリンス液が蒸発しても欠陥の発生を抑制することができる。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る基板乾燥方法は、例えば図1、図3、図4及び図6(a)に示すように、水平面内で回転する基板Wに、リンス液流Rf及びIPAを含有し得る乾燥気体流Gfを供給しつつ、回転する基板Wの中心Wc側から外周側へリンス液流Rf及び乾燥気体流Gfを移動させて基板Wを乾燥させる方法であって;乾燥気体流Gfが基板Wに衝突する範囲である衝突範囲に基板Wの回転中心Wcが存在する基板Wの範囲である中心エリアW1を乾燥させる中心エリア乾燥工程と;基板Wの中心エリアW1の外側に存在する外周エリアW3を乾燥させる外周エリア乾燥工程とを備え;乾燥気体流Gfに含有するIPAが、中心エリア乾燥工程中はマランゴニ効果が実質的に生じない濃度であり、外周エリア乾燥工程中はマランゴニ効果が生じる濃度である。ここで、マランゴニ効果とは、流体表面の表面張力が不均質になることが原因で流体の流れが駆動される効果であり、マランゴニ対流といわれる場合もある。また、マランゴニ効果が実質的に生じないとは、典型的にはリンス液を除去するという目的に照らして期待される程度の効果が生じない状況である。
【0011】
このように構成すると、遠心力が比較的小さくリンス液が残留しやすい中心エリアにおいてリンス液が蒸発しても欠陥の発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第3の態様に係る基板乾燥方法は、例えば図1及び図6(a)に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る基板乾燥方法において、乾燥気体流Gfに含有し得るIPAの濃度が、中心エリア(W1)乾燥工程における濃度から外周エリア(W3)乾燥工程における濃度まで上昇する際に、徐々に上昇するように構成されている。典型的には、乾燥気体流Gfに含有し得るIPAの濃度が、中心エリア乾燥工程における濃度から外周エリア乾燥工程における濃度まで上昇する際に、外周エリアW3よりも5mm以上回転中心Wc側から徐々に上昇するように構成されている。
【0013】
このように構成すると、基板に供給されたリンス液の、乾燥気体流が接触した部分の表面張力を徐々に低下させることができ、基板の乾燥状態を安定させて欠陥の発生を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る基板乾燥方法は、例えば図1及び図4(a)に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る基板乾燥方法において、中心エリア乾燥工程及び外周エリア乾燥工程を含む基板Wの回転中心Wcから外周端まで基板Wを乾燥させる工程において、リンス液流Rf及び乾燥気体流Gfの移動速度が変化しないように構成されている。
【0015】
このように構成すると、欠陥を発生させやすいリンス液流及び乾燥気体流の移動速度の変化がないため、欠陥の発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第5の態様に係る基板乾燥方法は、例えば図1及び図4(b)に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る基板乾燥方法において、中心エリア乾燥工程中又は中心エリア乾燥工程が終了した直後に、リンス液流Rf及び乾燥気体流Gfの移動速度を上昇させる。枚葉IPA乾燥では、リンス液で覆われた基板の回転中心にまず乾燥気体流を供給して基板の回転中心に乾燥された領域である乾燥スポットを形成し、その後リンス液流及び乾燥気体流を基板の外周側に移動させることに伴って乾燥スポットを外周側に広げることで基板の乾燥を行うが、本発明の第4の態様に係る基板乾燥方法では、典型的には、リンス液流及び乾燥気体流の移動開始直後は乾燥スポットが形成されるまで比較的低速度で移動させ、乾燥スポットが形成された後はリンス液流及び乾燥気体流の移動速度を上昇させることとなる。
【0017】
このように構成すると、乾燥気体流の供給を開始したときに乾燥気体流の衝突範囲を取り囲むように残りがちなリンス液を適切に除去することができ、中心エリアにおける欠陥の発生を抑制しつつ、リンス液流及び乾燥気体流の移動速度を上昇させることに伴うスループット(単位時間当たりの生産性あるいは処理能力)の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の第6の態様に係る基板乾燥方法は、例えば図1及び図4(a)に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る基板乾燥方法において、中心エリア乾燥工程及び外周エリア乾燥工程を含む基板Wの回転中心Wcから外周端まで基板Wを乾燥させる工程において、基板Wの回転速度を減少させないように構成されている。
【0019】
このように構成すると、特に単位面積に対するリンス液の量が不足しがちな外周エリアにおいて、遠心力よりもリンス液の表面張力の方が相対的に大きくなることを回避することができ、基板を覆っているリンス液の表面が乱れることに起因する欠陥の発生を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第7の態様に係る制御プログラムは、例えば図1を参照して示すと、基板乾燥装置に接続されたコンピュータ50にインストールされ、コンピュータ50が基板乾燥装置を制御する制御プログラムであって;上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る基板乾燥方法を実行する基板乾燥装置を制御する。
【0021】
このように構成すると、遠心力が比較的小さくリンス液が残留しやすい中心エリアにおいてリンス液が蒸発しても欠陥の発生を抑制した基板の乾燥を行うことができる基板乾燥装置に適用可能な制御プログラムとなる。
【0022】
また、本発明の第8の態様に係る基板乾燥装置は、例えば図1に示すように、基板Wに供給するリンス液Rを吐出するリンス液ノズル20と;リンス液ノズル20を移動させるリンス液ノズル移動機構40と;基板Wに供給する乾燥気体流Gfを吐出する乾燥気体ノズル30と;乾燥気体ノズル30を移動させる乾燥気体ノズル移動機構40と;基板Wを水平面内で回転させる回転機構10と;上記本発明の第7の態様に係る制御プログラムがインストールされたコンピュータを有する制御装置50とを備える。
【0023】
このように構成すると、遠心力が比較的小さくリンス液が残留しやすい中心エリアにおいてリンス液が蒸発しても欠陥の発生を抑制した基板の乾燥を行うことができる基板乾燥装置となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、遠心力が比較的小さくリンス液が残留しやすい中心エリアにおいてリンス液が蒸発しても欠陥の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板乾燥装置の概略構成を示す図である。(a)は斜視図、(b)はノズル先端まわりの部分拡大側面図である。
【図2】乾燥気体生成装置まわりの模式的系統図である。
【図3】基板の表面の区別した範囲を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る基板乾燥方法における、乾燥気体流中のIPA濃度の変化、基板の回転速度の変化、可動アームの移動速度の変化を示すタイムチャートである。(a)は本発明の実施の形態に係る基板乾燥方法を従来例と比較して示した図、(b)は変形例に係る基板乾燥方法における可動アームの移動速度の変化を示す図である。
【図5】乾燥処理を行った後に検出された欠陥の状況を示す図である。(a)は本実施の形態に係る基板乾燥方法による処理の結果を示す図、(b)は従来の乾燥方法による処理の結果を示す図である。
【図6】(a)は本発明の実施の形態の変形例に係る基板乾燥方法における乾燥気体中のガス流量及びIPA濃度の変化を示すタイムチャート、(b)は(a)に示す方法におけるIPA濃度変化の開始点と欠陥の発生状況との関係を示すグラフである。
【図7】従来把握されていた気体流中のIPA濃度と0.15μm以上のウォーターマーク発生量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0027】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る基板乾燥装置1を説明する。図1は、基板乾燥装置1の概略構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はノズル先端まわりの部分拡大側面図である。基板乾燥装置1は、処理される基板Wを回転させる回転機構10と、リンス液ノズルとしてのリンス水ノズル20と、基板Wに乾燥気体Gを供給する乾燥気体ノズル30と、リンス水ノズル20及び乾燥気体ノズル30を基板Wの面と平行に移動させる移動機構40と、回転機構10及び移動機構40を含む基板乾燥装置1の動作を制御する制御装置50とを備えている。リンス水ノズル20は、基板Wにリンス液としてのリンス水Rを供給する装置である。本実施の形態では、移動機構40は、リンス液ノズル移動機構と乾燥気体ノズル移動機構とを兼ねている。処理される基板Wは、典型的には、半導体素子製造の材料である半導体基板であり、円盤状に形成されている。基板Wは、一方の面に回路が形成されており(この面を「表面WA」という。)、他方の面(裏面)には回路が現れていない。
【0028】
回転機構10は、チャック爪11と、回転駆動軸12とを有している。チャック爪11は、基板Wの外周端部(エッジ部分)を把持して基板Wを保持するように複数設けられている。チャック爪11は、基板Wの面を水平にして保持することができるように、それぞれ回転駆動軸12に接続されている。本実施の形態では、表面WAが上向きとなるように、基板Wがチャック爪11に保持される。回転駆動軸12は、基板Wの面に対して垂直に延びる軸線まわりに回転することができ、回転駆動軸12の軸線まわりの回転により基板Wを水平面内で基板回転方向Drに回転させることができるように構成されている。
【0029】
リンス水ノズル20は、基板Wの表面WA上の液が液滴の状態から乾燥することに起因するウォーターマーク等の欠陥の発生を回避するために、基板Wの上面を液膜で覆うためのリンス水Rを、基板Wに水流(リンス水流Rf)の状態で供給するノズル(筒状で先端の細孔から流体を噴出する装置)である。リンス水Rは、典型的には純水であるが、溶存塩類及び溶存有機物を除去した脱イオン水、炭酸ガス溶解水、(水素水や電解イオン水などの)機能水等を用いてもよい。ウォーターマーク発生の原因となる溶存塩類及び溶存有機物を排除する観点からは脱イオン水を用いるのがよい。また、基板Wの回転によるリンス水Rの基板W上の移動に伴う静電気の発生が異物を誘引し得るところ、リンス水Rの導電率を上昇させて帯電を抑制する観点からは炭酸ガス溶解水を用いるのがよい。リンス水流Rfは、基板Wの表面WAの面積に対して細い。処理される基板Wとしては直径が200mm〜300mm〜450mmのものがあり、リンス水流Rfを形成することとなるリンス水ノズル20の内径は、1mm〜10mm、あるいは3mm〜8mmのうちの適切なものを用いるとよい。リンス水ノズル20から吐出されて基板Wの表面WAに衝突するリンス水流Rfの直径(リンス水流Rfの断面直径)は、リンス水ノズル20の内径と略同じになる。
【0030】
乾燥気体ノズル30は、基板Wの表面WAを覆うリンス水Rの膜に対してIPAを供給すると共にリンス水Rの膜を押しのける乾燥気体Gを、基板Wに気体流(乾燥気体流Gf)の状態で供給するノズルである。乾燥気体Gは、典型的にはキャリアガスとして機能する窒素やアルゴン等の不活性ガスに対してIPAの蒸気を混合させたものであるが、IPA蒸気そのものであってもよい。乾燥気体流Gfは、基板Wの表面WAの面積に対して細い。処理される基板Wとしては直径が200mm〜300mm〜450mmのものがあり、乾燥気体流Gfを形成することとなる乾燥気体ノズル30の内径は、3mm〜10mm、あるいは4mm〜8mmのうちの適切なものを用いるとよい。乾燥気体ノズル30の径は、リンス水ノズル20の径と同じであっても異なっていてもよい。乾燥気体ノズル30から吐出されて基板Wの表面WAに衝突する乾燥気体流Gfの直径(乾燥気体流Gfの断面直径)は、乾燥気体ノズル30の内径と略同じになる。乾燥気体流Gfは、枚葉IPA乾燥を行うのに適した細さに設定される。また、基板Wの表面WAに対して、リンス水流Rfが衝突する位置と乾燥気体流Gfが衝突する位置との関係は、枚葉IPA乾燥を適切に行うことができるようにする観点から決定される。ここで、表面WAに対してリンス水流Rfあるいは乾燥気体流Gfが衝突する位置とは、流体の流れが表面WAに衝突する範囲の重心をいうこととする。典型的には、リンス水流Rf及び乾燥気体流Gfが移動する際においても、乾燥気体流Gfがリンス水流Rfよりも中心側にある状態が維持される。
【0031】
乾燥気体Gを生成する装置は、本実施の形態では以下のように構成されている。例えばステンレス等の金属からなる円筒状の容器(不図示)内に密閉された状態でIPAの液が貯留される。そして、円筒状の容器の上端面には、不活性ガスを容器内に流入する流入管(不図示)と、IPA蒸気が含有した不活性ガスを容器内から乾燥気体ノズル30へと導く導出管(不図示)とが貫通している。容器内にある流入管の端部は、液体のIPAの中に没入している。他方、容器内にある導出管の端部は、液体のIPAより上方の、気体が充満した部分に位置し、液体のIPAの中には没入していない。また、容器内には、容器内のIPA液の液位を所定の範囲内に維持するための、接触式の液面センサが設けられている。液面センサは、容器内のIPA液の高位及び低位を検出し、低位を検出したときにポンプ(不図示)を起動してIPA液を容器内に供給し、高位を検出したときにポンプを停止してIPA液の容器内への供給を停止する。乾燥気体ノズル30から吹き出される乾燥気体流GfにIPA蒸気を含有するには、流入管から不活性ガスをIPA液の中に吹き込みバブリングする。すると、IPA蒸気が不活性ガスに飽和されてIPA液より上方の容器内に溜まり、これが導出管によって容器から導出されて乾燥気体ノズル30へと導かれる。乾燥気体ノズル30から吹き出される不活性ガスへのIPA蒸気の含有量を調整するには、典型的には、乾燥気体ノズル30へと導かれるIPA蒸気が飽和した不活性ガスに、別のラインから不活性ガスを混入して希釈することにより実現される。
【0032】
ここで図2を参照して、乾燥気体Gを生成する装置の具体例を説明する。図2は、乾燥気体生成装置60まわりの模式的系統図である。乾燥気体生成装置60は、IPAの液が貯留された気密な容器61を有しており、窒素ガスN2を容器61内に流入させる流入管62と、IPA蒸気が含有した窒素ガスN2を容器61から導出する導出管63とが、容器61の上端面を貫通している。容器61内において、流入管62の端部は液体のIPAの中に没入しており、導出管63の端部は液体のIPAの中には没入していない。流入管62にはマスフローコントローラ(以下「MFC」という。)62cが、導出管63にはMFC63cが、それぞれ挿入配置されている。MFC62c、63cは、流体の流量を調節する装置であり、応答性及び安定性に優れ、瞬時に所定の流量値へコントロールできるように構成されている。MFC63cよりも上流側の導出管63には、バルブ63vが挿入配置されている。MFC62cよりも上流側の流入管62と、バルブ63vよりも上流側の導出管63とは、バイパス管64を介して連通している。バイパス管64には、MFC64cが挿入配置されている。MFC62c、63c、64cは、それぞれIPA濃度検出部69に信号ケーブルで接続されており、乾燥気体ノズル30へ供給される乾燥気体Gの流量及びIPA濃度が所望の値となるように、流入管62、導出管63、及びバイパス管64を通過する流体の流量を調節できるように構成されている。
【0033】
容器61内には、容器61内のIPA液の液位を所定の範囲内に維持するための液面センサ68が設けられている。また、容器61の上端面には、IPA液を容器61内に導入するIPA供給管65と、容器61内上部のガスを抜くためのガス抜き管66とが貫通している。IPA供給管65及びガス抜き管66共に、容器61内では端部がIPA液面の上方に位置している。IPA供給管65にはIPA供給バルブ65vが、ガス抜き管66にはガス抜きバルブ66vが、それぞれ挿入配置されている。IPA供給バルブ65v及びガス抜きバルブ66vは、それぞれ液面センサ68に信号ケーブルで接続されており、液面センサ68が低液位を検出したときにIPA供給バルブ65vが開かれて容器61内にIPA液が供給され、液面センサ68が高液位を検出したときにIPA供給バルブ65vが閉じられて容器61内へのIPA液の供給が停止されるように構成されている。IPA供給バルブ65vの開閉に連動してガス抜きバルブ66vも開又は閉とされ、容器61内へのIPA液の供給が円滑になされるように構成されている。
【0034】
上述のように構成された乾燥気体生成装置60では、乾燥気体Gが生成される際、IPA供給バルブ65v及びガス抜きバルブ66vが閉じた状態で、窒素ガスN2が流入管62及び/又はバイパス管64に導入される。流入管62を介して容器61内に導入された窒素ガスN2は、容器61内のIPA液中に吹き込まれてIPA液をバブリングし、IPA液を気化させ、IPA液面の上方にIPA蒸気と窒素ガスN2との混合ガスが生成される。混合ガスは、乾燥気体ノズル30に向かって導出管63を流れ、途中、必要に応じてバイパス管64から窒素ガスN2が合流し、IPA濃度が調節された乾燥気体Gとなって、乾燥気体ノズル30に供給される。このようにして、乾燥気体G中のIPA濃度は、応答性よく所望の濃度に調節される。再び図1に戻って基板乾燥装置1の構成の説明を続ける。
【0035】
移動機構40は、可動アーム41と、可動軸42と、駆動源43とを含んで構成されている。可動アーム41は、基板Wの半径よりも大きな長さを有し、リンス水ノズル20及び乾燥気体ノズル30が取り付けられる部材である。可動軸42は、駆動源43の動力を可動アーム41に伝達する棒状の部材であり、その長手方向が可動アーム41の長手方向に対して直交するようにその一端が可動アーム41の一端に接続されており、その他端は駆動源43に接続されている。駆動源43は、可動軸42を軸線まわりに回動させる装置である。可動軸42は、基板Wの外側で鉛直方向に延びるように設置されている。可動アーム41は、可動軸42との接続端の反対側に取り付けられた乾燥気体ノズル30から吐出された乾燥気体流Gfが、基板Wの回転中心に衝突することができるように構成されている。移動機構40は、駆動源43を稼働させると可動軸42を介して可動アーム41が基板Wの半径方向に移動し、可動アーム41の移動に従ってリンス水ノズル20及び乾燥気体ノズル30も基板Wの半径方向に移動するように構成されている。
【0036】
制御装置50は、回転機構10の回転駆動軸12と信号ケーブルで接続されており、回転駆動軸12の回転速度を調節することにより基板Wの回転速度を調節することができるように構成されている。また、制御装置50は、リンス水ノズル20から吐出されるリンス水流Rfの流量を調節することができるように構成されている。また、制御装置50は、乾燥気体ノズル30から吐出される乾燥気体流Gfの流量を調節することができると共に、乾燥気体Gに含有され得るIPAの濃度を調節することができるように構成されている。また、制御装置50は、移動機構40の駆動源43と信号ケーブルで接続されており、駆動源43による可動軸42の回転速度を調節することにより可動アーム41の移動速度を調節することができるように構成されている。
【0037】
引き続き図1を参照して、基板乾燥装置1の作用を説明する。基板乾燥装置1の作用は、本発明の実施の形態に係る基板乾燥方法の1つの態様であるが、本発明の実施の形態に係る基板乾燥方法は、基板乾燥装置1以外で実行されるように構成されていてもよい。以下の説明における各部材の動作は、制御装置50により制御される。前工程において、CMPが行われ、薬液等で湿式洗浄が行われた基板Wが、回転機構10のチャック爪11に把持されている。乾燥工程前の湿式洗浄処理は、これから乾燥処理が行われる際に用いられるのと同じ回転機構10上で行われてもよい。乾燥処理が行われる基板Wが回転機構10に保持されると、リンス水ノズル20の吐出口が基板Wの表面WAの回転中心Wcよりやや外れた部分に対向する位置に至るまで可動アーム41を移動させる。このとき、乾燥気体ノズル30は、乾燥気体流Gfが表面WAに衝突する範囲である衝突範囲内に表面WAの回転中心Wcが存在しつつ、衝突範囲の重心が表面WAの回転中心Wcよりもノズル移動方向Dnの上流側となる場所に位置することとなる。なお、「衝突範囲」は、表面WA上にリンス水Rが存在しないと仮定した場合に乾燥気体流Gfが表面WAに衝突する範囲(乾燥気体流Gfの軸直角断面を軸線方向で表面WAに投影したときの当該断面の外縁)である。また、ノズル移動方向Dnは、表面WAを乾燥させる際に乾燥気体流Gfが移動する基板Wの回転中心Wc側から外周側へ向かう方向である。
【0038】
可動アーム41が上述の位置まで移動したら、リンス水Rが基板Wの表面WAに供給されるように、リンス水流Rfをリンス水ノズル20から吐出させる。表面WAへのリンス水流Rfの供給を開始したら、回転駆動軸12を回転させ、これにより基板Wが水平面内で回転する。このとき、基板Wの回転速度を徐々に上げていくことになるが、表面WAが疎水性であってもリンス水Rが飛散することなくリンス水Rの膜で表面WAを覆うことができるようにする観点から、加速度を1秒当たり300rpm以下とすることが好ましい。他方、スループットを向上させる観点から、表面WAをリンス水Rの膜で覆うことができる範囲内で極力大きな加速度とするとよい。
【0039】
表面WAがリンス水Rで覆われ、基板Wの回転速度が所定の値まで上昇したら、乾燥気体ノズル30から表面WAへ乾燥気体流Gfが供給される。表面WAへの乾燥気体流Gfの供給が開始されても、表面WAへのリンス水流Rfの供給は継続している。表面WAへ乾燥気体流Gfが供給されることにより、表面WA上のリンス水Rに働く遠心力が小さい回転中心Wc付近についても、乾燥気体Gが供給された部分のリンス水Rが除去されて、表面WAに乾燥した領域が現れる。表面WAへの乾燥気体流Gfの供給が開始されたら、可動アーム41をノズル移動方向Dnに移動させ、これに伴い表面WAに対してリンス水流Rfが衝突する位置及び乾燥気体流Gfが衝突する位置がノズル移動方向Dnに移動する。可動アーム41が稼働を始める前の乾燥気体ノズル30は、乾燥気体流Gfの衝突範囲の重心が表面WAの回転中心Wcよりもノズル移動方向Dnの上流側となる場所に位置していたため、可動アーム41の移動によって衝突範囲の重心は回転中心Wcを通り過ぎることとなる。
【0040】
リンス水流Rf及び乾燥気体流Gfが表面WAに供給されながら可動アーム41が回転中心Wcから基板Wの外周まで移動することにより、リンス水Rと乾燥気体Gとの境界が同心円状に徐々に広がり、表面WA上の乾燥した領域が徐々に拡大していく。このとき、リンス水Rと乾燥気体Gとの境界では、リンス水Rに乾燥気体Gが吹き付けられることによって乾燥気体G中のIPAがリンス水Rに溶解し、リンス水Rの表面張力の低下が生じている。リンス水R中に溶解したIPA濃度は、乾燥気体流Gfの接触位置から離れるほど低くなるため、リンス水Rの表面張力に、ノズル移動方向Dnの上流側ほど低く下流側ほど高い勾配が生じる。この表面張力の勾配により、リンス水Rが表面張力の小さな方から大きな方へ引き寄せられるマランゴニ力が作用する。これに加えて、基板Wの回転により、リンス水Rが回転中心Wc側から基板Wの外周側に引き寄せられる遠心力が加わる。これらの力の相互作用により、リンス水Rが表面WA上から適切に除去される。上述した枚葉IPA乾燥によれば、疎水性の表面WAに対してもウォーターマーク等の不都合の発生を抑制して効果的に乾燥処理を行うことができる。なお、上述した枚葉IPA乾燥は、親水性の面に対しても適用することができることはいうまでもない。
【0041】
可動アーム41が基板Wの外周に到達したら、表面WAへのリンス水流Rf及び乾燥気体流Gfの供給を停止する。このとき、表面WAに対するリンス水流Rfの供給の停止が先に行われ、次いで乾燥気体流Gfの供給の停止が行われる。その後、基板Wの回転速度を上昇させ(本実施の形態では約800〜2000rpmに上昇させる)、基板Wの外周端部(エッジ部分)及び裏面に残存している液滴を遠心力により除去する。以上で乾燥工程が終了し、基板Wの回転が停止された後、基板Wが回転機構10から搬出される。
【0042】
枚葉IPA乾燥において、従来は、乾燥気体流が基板の回転中心から基板の半径の約半分に至るまで乾燥気体流中のIPA含有量は一定とされ、基板の回転中心付近においてもリンス水の表面張力を極力下げようとしていた。さらに、遠心力が比較的小さい基板の回転中心付近においては、リンス水の表面張力をより低下させる観点から、リンス水に供給されるIPAが増加するように、ノズルの外周側へ向かう移動速度を遅くしてIPAを含有する乾燥気体流にリンス水が比較的長時間接するようにすることが行われることもあった。また、基板の回転速度も、基板の外周側ほど遠心力が大きくなってリンス水の膜が形成しやすくなることを考慮して、リンス水流が基板の外周側に適切な距離分移動したときに基板の回転速度を低下させることが行われていた。従来は、このように種々の制御を行うことで、ウォーターマーク等の欠陥の発生を抑制していた。
【0043】
ところが、近年の半導体デバイスの微細化あるいは半導体技術の進歩に伴い、より小さな欠陥サイズにおける検証が要求され、評価基準をより厳しくして、許容される欠陥の上限がより小さくなると、従来の制御で乾燥処理された基板ではより厳しい基準が満たされなくなることを本発明者は突き止めた。例えば、従来の制御で乾燥処理された基板では、欠陥サイズ0.15μm以上を検出対象とした場合は検出されない欠陥であっても、0.15μm未満の欠陥サイズである例えば0.10μmの欠陥をも検出対象とした場合は検出される欠陥となってしまい、最終的に発生する欠陥の数が莫大なものとなることが判明した。
【0044】
近年の半導体基板は、配線材料としてより抵抗の小さい銅が用いられるようになってきている。銅配線は、一般に、基板の表面に形成された絶縁膜に溝を掘り、その溝に銅を埋め込んだ後、余分な銅をCMPで削ることで形成される。銅が埋め込まれる絶縁膜は、配線間に形成されるコンデンサ容量を低減させる観点からk値(比誘電率)の低い材料(Low−k膜)が用いられる。一般に、Low−k膜は疎水性であるため、研磨後の洗浄において基板W上のリンス水膜が分断されやすく、リンス水膜が分断された状態で乾燥が行われるとウォーターマークや亀裂等の欠陥が発生するおそれがある。Low−k膜(典型的にはSiOC膜)は、現状ではk値が概ね3.0以下であり、今後採用されるものについてはk値が2.5以下となることも予想されており、k値を抑えるためにPore構造(多孔質)のタイプのものの採用も検討されている。PoreタイプのLow−k膜は、多孔質の孔部分に物質が溜まりやすい構造であると考えられる。
【0045】
上述のような事情の下、本発明者は、鋭意研究の結果、以下のような要領で枚葉IPA乾燥を行うことにより、評価基準を厳しくしても欠陥の発生を抑制できることを見いだした。さらに好ましいことに、その要領によれば、処理能力を低下させることなく、むしろ向上させることができるのである。その手順を説明するのに先立って、基板Wの領域を、乾燥が行われる順番に、便宜上、以下のように区別することとする。
【0046】
図3は、基板Wの表面WAの区別した範囲を示す平面図である。表面WAは、まず、中心エリアW1と外側エリアWOとに区別される。中心エリアW1は、衝突範囲(乾燥気体流Gfが表面WAに衝突する範囲)に基板Wの回転中心Wcが存在する範囲である。中心エリアW1は、典型的には、回転中心Wcを中心とし、衝突範囲の直径の長さを半径として描かれた仮想円の内側の範囲である。外側エリアWOは、中心エリアW1よりも外側の領域である。外側エリアWOは、さらに、基板Wの回転中心Wc側から外周端部側に向けて順に、内周エリアW2、外周エリアW3、周縁エリアW4に区別される。内周エリアW2は、回転中心Wcを中心とし、基板Wの半径の約半分の長さを半径として描かれた仮想円の内側で、中心エリアW1の外側の範囲である。外周エリアW3は、内周エリアW2の外側で、周縁エリアW4の内側の範囲である。周縁エリアW4は、リンス水流Rf(図1参照)及び乾燥気体流Gf(図1参照)が基板Wの半径方向(ノズル移動方向Dn)に移動している状況で、リンス水流Rfの表面WAへの供給が停止される位置に至ったとき(典型的には外周端部に至ったとき)の乾燥気体流Gfの位置を回転中心Wcまわりに回転させたときの軌跡よりも外側の範囲である。
【0047】
次に図4を参照して、本発明の実施の形態に係る枚葉IPA乾燥を説明する。図4は、枚葉IPA乾燥における、乾燥気体流Gf中のIPA濃度の変化、基板Wの回転速度の変化、可動アーム41の移動速度の変化を示すタイムチャートである。横軸に記載されている符号W1〜W4は、便宜上区別された表面WAの領域を示している。図4では、理解を容易にするために、W1〜W4が等分となっているが、各エリアの乾燥に要する時間が等しくなっていることを意味するものではない。図4(a)中、実線が本実施の形態の制御を示したものであり、破線は参考例として従来の制御の代表例を示したものである。以下の説明では図1及び図3も適宜参照することとする。
【0048】
まず、乾燥気体流Gf中のIPA濃度の制御について説明する。本実施の形態では、乾燥気体流Gf中のIPA濃度が、中心エリアW1を乾燥させる中心エリア乾燥工程中は2mol%未満を維持するようにし、内周エリアW2〜周縁エリアW4を乾燥させるときは中心エリア乾燥工程中よりも高濃度としている。ここでモル分率(mol%)は、単位時間当たりの乾燥気体流Gfの流量における、IPAの物質量の、IPAを含む乾燥気体流Gfを構成する物質の物質量の総和に対する比(IPA/乾燥気体流Gf)である。中心エリア乾燥工程中のIPA濃度は、0mol%(IPAが含有されていない)であってもよい。本実施の形態では、乾燥気体流Gf中のIPA濃度を、中心エリア乾燥工程中は状況に応じて0mol%以上2mol%未満(好ましくは1mol%未満)、内周エリアW2〜周縁エリアW4を乾燥させるときは中心エリアW1でのIPA濃度よりも高く概ね2mol%以上の一定値としている。なお、外側エリアWOの乾燥中は、状況に応じて20mol%程度まで上昇させてもよい。
【0049】
上述のようなIPA濃度の制御を行うことで、ウォーターマーク等の欠陥を抽出する基準を0.10μm以上とした場合、抽出された欠陥の数が、従来の制御(図4に破線で示す態様)に比べて激減する。この事実から、以下の原因が推測される。つまり、IPAは、所定の濃度(一般的に60%程度)に至るまでは濃度が上昇するのに応じて粘度が上昇する特性を有するが、従来リンス水の表面張力を低下させるために乾燥気体流中のIPA濃度を比較的高くしていたことは、裏を返せばリンス水の粘度を上昇させる要因となり、遠心力が比較的小さい中心エリアは特にリンス水が基板上に残存しやすい状態になっていたことが考えられる。これまでは、IPA乾燥では、IPA濃度が2mol%以上でウォーターマークの発生がほとんど見られなくなることから、IPA濃度が2mol%以上でマランゴニ効果が現れると認識されていたが(図7参照)、この認識は欠陥サイズ0.15μm以上を対象としていた状況下でのものであり、0.10μmの欠陥をも検出対象とする本発明の実施の形態では、マランゴニ効果を創出するよりもリンス水Rの粘度の上昇を抑制する方が欠陥発生の抑制に資すると推定し、中心エリアW1で、マランゴニ効果を創出しにくい2mol%未満の濃度に設定している。特に、今後採用が検討されているPoreタイプのLow−k膜は、多孔質の孔部分にリンス水Rが入り込むと乾燥気体流Gfで除去しようとしても孔内に溜まりやすく、孔部分にIPAが溶解したリンス水Rが残ると、後にリンス水Rが蒸発したときに残渣が析出するおそれがある(なお、図7はPoreタイプではないk値が2.9のパターンウェハに対して、図4(a)に破線で示すIPA濃度、基板回転速度及びアーム移動速度の条件で枚葉IPA乾燥を行った結果を示したものである。)。IPAは有機物であるため、IPAが溶解したリンス水が表面WA上に残存することで、リンス水が蒸発した後に有機物の残渣が析出しやすくなってしまうと考えられる。
【0050】
本発明者はこのような点に着目し、中心エリアW1乾燥工程中に、乾燥気体流Gf中のIPAを2mol%未満(マランゴニ効果が現れる濃度未満)とすることで、中心エリアW1の欠陥数を劇的に低減することができることを見いだしたのである。中心エリアW1の外側では、中心エリアW1よりも遠心力が大きくなるので、乾燥気体流Gf中のIPA濃度を上昇させてリンス水Rの表面張力を低下させることで表面WAを覆うリンス水Rの膜厚を薄くすることができ、乾燥負担が軽減すると共に、マランゴニ力と遠心力とが相互に作用し、効果的にリンス水Rを排除することができて効率的に乾燥させることができる。なお、本発明者は、中心エリア乾燥工程中に乾燥気体流Gf中のIPAを2mol%未満にする際、基板Wの回転速度を低速(例えば100rpm以下)にしなくても、例えば500rpm程度の回転速度であっても欠陥数低減の効果を得ることができるという知見を得ている。したがって、中心エリア乾燥工程から周縁エリアW4の乾燥が完了するまで、比較的高速(例えば500rpm程度)の回転速度とすることも可能である。
【0051】
次に基板Wの回転速度の制御について説明する。本実施の形態では、中心エリア乾燥工程前の、リンス水Rの膜を表面上に形成する工程(図4に不図示)において、中心エリア乾燥工程での回転速度と同じ値まで基板Wの回転速度を上昇させる。乾燥開始前に上昇させる基板Wの回転速度は、400rpm以下とすることが好ましく、本実施の形態では300rpmとしている。基板Wの回転速度が所定の速度(本実施の形態では300rpm)になったら、中心エリア乾燥工程を開始し、以後周縁エリアW4の乾燥が完了するまでその回転速度を維持する。特に単位面積に対するリンス水Rの液量が不足しがちな外周エリアW3において、疎水面上での表面張力が強いリンス水Rの表面の乱れを抑制するためには基板Wの回転速度を高くすることが好ましい。そして、本発明者は、中心エリアW1でIPA濃度が2mol%未満で基板Wを高速回転(例えば500rpm)させても欠陥数が増加しないことを確認している。本実施の形態では、中心エリア乾燥工程において、乾燥気体流Gf中のIPA濃度を2mol%未満にしているためにIPAの残渣が析出しにくく基板Wの回転速度を比較的高くすることが可能になるので、比較的高い回転速度で中心エリア乾燥工程から周縁エリアW4の乾燥まで行うことができ、従来に比べてリンス水Rの膜を薄くすることができて、乾燥負担を軽減することができる。
【0052】
なお、従来は、枚葉IPA乾燥における基板の回転速度を、当初から比較的低い回転速度(例えば100rpm)としていたのにもかかわらず、基板の外周側ほど半径方向の単位長さ当たりの乾燥させる表面積が増加することを考慮して、乾燥気体流が基板の半径の半分当たりに達したところで、さらに回転速度を低下させていた。典型的には、便宜上区別した内周エリアW2から外周エリアW3に移行する際に基板の回転速度を低下させていた。しかし、本発明者は、枚葉IPA乾燥中に基板の回転速度を低下させると、欠陥数が増加するおそれがあるという知見を得ている。このおそれは、厳しい評価基準の下で特に顕著である。これは、初速から維持されていた基板の回転速度によってリンス液の表面張力と遠心力とがバランスしていたところ、回転速度を低下させることによって遠心力が減少して相対的に表面張力が大きくなり、その結果リンス水の膜が厚くなる方向に作用してリンス水の膜の表面を乱し、乾燥にムラが生じるおそれがあることに起因するものと考えられる。このことは、枚葉IPA乾燥では、基板の表面を覆うリンス液の膜の表面が乱れていると、欠陥の発生を抑制する効果が限定的となることを示唆している。
【0053】
他方、枚葉IPA乾燥中に基板Wの回転速度を上昇させることは行ってもよい。基板Wの回転速度の上昇は、リンス水Rに作用する遠心力が増加する方向に働き、これはリンス水Rの膜を薄くする方向に作用することとなるため、リンス水Rの膜の表面が乱れる可能性は低いと考えられる。基板Wの回転速度を上昇させると、これに応じて可動アーム41の移動速度を上昇させることができ、スループットを向上させることができる。基板Wの回転速度を上昇させる場合、回転速度を上昇させるタイミングは、内周エリアW2から外周エリアW3に移行する際とするとよい。また、基板Wの回転速度を上昇させる際の加速度は、リンス水Rの膜の表面の乱れを抑制する観点から、1秒当たり50rpm以下とするのが好ましい。例えば、内周エリアW2から外周エリアW3に移行する際に、基板Wの回転速度を、1秒当たり50rpmの加速度で400rpmまで上昇させることとしてもよい。また、周縁エリアW4の乾燥中に、基板Wの回転速度を上昇させることも許容することができる。このとき、回転速度の上限は、装置の能力の最大値とすることができるが、リンス水の膜の乱れを抑制する観点から、加速度は所定値(例えば1秒当たり50rpm)以下とすることが好ましい。
【0054】
次に可動アーム41の移動速度の変化について説明する。本実施の形態では、中心エリア乾燥工程前の、リンス水Rの膜を表面上に形成する工程(図4に不図示)が終了した後に、乾燥気体流Gfの表面WAへの供給を開始したら可動アーム41の移動を開始し、周縁エリアW4まで一定の移動速度を維持している。換言すると、可動アーム41の移動速度は、中心エリアW1から周縁エリアW4まで変化しない。本発明者は、乾燥工程中における可動アーム41の移動速度の変化が大きいと、その速度切替え部分でリンス水Rの膜の表面が乱れて欠陥の発生が高まる傾向にあるという知見を得ているところ、可動アーム41の移動速度が変化しないようにすることで欠陥の発生を抑制することができる。また、中心エリア乾燥工程中における乾燥気体流Gf中のIPA濃度を2mol%未満とすることで、IPAの粘性に起因してIPAが溶解したリンス水Rが中心エリアW1にとどまることが少なくなるので、可動アーム41の移動速度を従来よりも大きく設定することが可能となる。可動アーム41の移動速度が速いほど乾燥処理能力が高いこととなり、スループットの向上に寄与することとなる。本実施の形態では、可動アーム41の移動速度を、従来の約2mm/sec以下(例えば1mm/sec)に対して、3mm/sec以上としている。
【0055】
なお、図4(b)に示すように中心エリア乾燥工程が終了した直後に、あるいは図4には示されていないが中心エリア乾燥工程中を含む中心エリア乾燥工程が終了した直後までに、可動アーム41の移動速度を所定の範囲内で上昇させてもよい。ここでの所定の範囲は、枚葉IPA乾燥を適切に行うことができる範囲内である。なお、図4(b)中の二点鎖線は、図4(a)中の実線に相当するものである。中心エリアW1では、遠心力がほとんどないために可動アーム41の移動速度を5mm/sec程度以下とすることが好ましいが、表面張力と協働してリンス水Rを外周側に寄せる作用に寄与する遠心力が生じる内周エリアW2では、基板Wの半径方向の単位長さ当たりの表面積が周縁エリアW4に比べて小さいので、可動アーム41の移動速度を上昇させる余地がある。外側エリアWOの乾燥途中に可動アーム41の移動速度を変化させると欠陥が発生しやすくなるが、中心エリア乾燥工程が終了した直後までに可動アーム41の移動速度を変更することとすれば、欠陥の発生を引き起こすことが少なくなる。上述のように、可動アーム41の移動速度を上昇させることで、スループットを向上させることができる。中心エリア乾燥工程が終了した直後までに可動アーム41の移動速度を変化させた場合は、可動アーム41が周縁エリアW4に近づくにつれて単位移動距離当たりの乾燥させる表面積が大きくなることに鑑み、図4(b)に示すように、中心エリア乾燥工程中の移動速度で可動アーム41が周縁エリアW4に到達するように、徐々に可動アーム41の移動速度を低下させることが好ましい。
【0056】
なお、中心エリア乾燥工程が終了した直後までに可動アーム41の移動速度を上昇させる技術は、中心エリア乾燥工程中における乾燥気体流Gf中のIPA濃度を2mol%未満とする場合以外でも適用することが可能である。中心エリア乾燥工程中における乾燥気体流Gf中のIPA濃度を2mol%以上とする場合に適用するときは、中心エリア乾燥工程における可動アーム41の移動速度を、従来と同等の約2mm/sec以下とすると、発生する欠陥の増加を抑制することができる。
【0057】
以上のように、本実施の形態に係る基板乾燥方法によれば、評価方法を厳しくした場合でも、処理時間を増加させずに欠陥の発生を抑制することができる。換言すれば、パフォーマンスを向上させながらスループットを落とさない(又はスループットも向上させる)ことができる。特に、中心エリア乾燥工程中における乾燥気体流Gf中のIPA濃度を2mol%未満(マランゴニ効果が現れる濃度未満)とすることは中心エリアW1の欠陥発生の抑制に寄与し、基板の回転速度を中心エリアW1の乾燥から周縁エリアW4の乾燥まで変化させない、あるいは乾燥が内周エリアW2から外周エリアW3に移行する際又は外周エリアW3から周縁エリアW4に移行する際に所定の範囲内で上昇させることは外側エリアWOの欠陥発生の抑制に寄与し、可動アーム41の移動速度を速めることはスループットの向上に寄与する。
【0058】
図5に、乾燥処理を行った後に検出された欠陥の状況を示す。図5(a)は本実施の形態に係る基板乾燥方法(レシピ)による処理の結果を示す図、図5(b)は従来の乾燥方法(レシピ)による処理の結果を示す図である。両者の、乾燥気体流Gf中のIPA濃度、基板Wの回転速度、可動アーム41の移動速度の変化は、図4(a)に示したとおりである。なお、図5に示す結果は、基板Wとしてk値が約2.5のPoreタイプのSiOC膜が表面WAに形成されたシリコン基板(一般にパターンウェハよりも欠陥無しの洗浄が難しいとされているブランケットウェハ)を用い、リンス水Rとして純水を、乾燥気体流Gf流として窒素ガスにIPAを混合させたものを用いたものである。図5(a)の結果を得た乾燥気体流Gf中のIPA濃度は、中心エリアW1では1mol%以下、外側エリアWOでは3〜4mol%としたものである。また、図5(a)の結果を得た基板Wの回転速度は、中心エリアW1から周縁エリアW4まで一定としたものである。そして、両者を、上述のレシピでそれぞれ乾燥処理を行った後、UVレーザーを用いて所望の大きさの欠陥を検出する欠陥検出器で0.10μm以上の欠陥数を検出した。なお、図5で示した欠陥には、洗浄残渣、基板表面の傷、ウォーターマークのいずれをも含む。また、図5(a)の欠陥は、図5(b)の欠陥よりも大きく示されているが、これは把握を容易にする便宜のためであり、実際に両者において検出された各欠陥の大きさ(0.10μm以上が対象)は、同等である。
【0059】
図5に示すように、(a)に示す本実施の形態に係るレシピで処理した結果では、欠陥は特定の場所に集中せずに散見される程度であるが、(b)に示す従来のレシピで処理した結果では、中心エリアW1並びに外周エリアW3及び周縁エリアW4に多数の欠陥が検出されている。また、欠陥検出器によって検出された欠陥の数は、実験を繰り返した結果、(a)に示す本実施の形態に係るレシピで処理した結果では200個未満で安定していたのに対し、(b)に示す従来のレシピで処理した結果では数千個〜数万個(3万個以下)と多数の値でばらつきがあった。このような実施結果は、単発的な検証結果ではなく、数十回に及ぶ実施経験により裏付けされている。このように、本実施の形態に係るレシピによれば、評価基準を厳しくした場合に、検出される欠陥数を概ね1/140に激減させることができるという極めて優れた効果を奏することが確認できた。
【0060】
以上の説明では、基板Wが円盤状であるとしたが、表面が円形以外の四角等であってもよく、つまり回転中心を有していて回転により乾燥できるものであればよい。また、基板Wが、一般的にはシリコンから形成される半導体基板であるとしたが、石英基板等のシリコン基板以外の基板に対しても適用可能な乾燥方法である。
【0061】
以上の説明では、移動機構40がリンス液ノズル移動機構と乾燥気体ノズル移動機構とを兼ねているとしたが、リンス液ノズル移動機構と乾燥気体ノズル移動機構とが別体として構成されていてもよい。
【0062】
以上の説明では、回転機構10がチャック爪11で基板Wを保持することしたが、ローラーチャックで基板Wを保持することとしてもよい。
【0063】
以上の説明では、中心エリア乾燥工程ではIPA濃度が2mol%未満(マランゴニ効果が現れる濃度未満)とし、中心エリア乾燥工程以外ではIPA濃度をマランゴニ効果が得られる濃度まで上昇させるとしたが、内周エリアW2の乾燥中も中心エリア乾燥工程と同じIPA濃度としても欠陥の発生が抑制される場合があり、この場合は中心エリアW1及び内周エリアW2を乾燥させている間IPA濃度を2mol%未満に維持してもよい。
【0064】
内周エリアW2を乾燥させる際に乾燥気体G中のIPA濃度を2mol%未満(マランゴニ効果が現れる濃度未満)とする場合において、基板Wの乾燥領域が内周エリアW2から外周エリアW3に移行する際に乾燥気体G中のIPA濃度を急激に上昇させると当該IPA濃度を急上昇させた部分に欠陥が生じる場合は、基板Wの乾燥領域が内周エリアW2と外周エリアW3との境界に向かって広がるにつれて徐々にIPA濃度を上昇させることとしてもよい。
【0065】
図6(a)は、本発明の実施の形態の変形例に係る基板乾燥方法である、内周エリアW2と外周エリアW3との境界に向けて徐々に乾燥気体G中のIPA濃度を上昇させる方法における乾燥気体G中の各ガスの流量及びIPA濃度の変化を示すタイムチャートであり、図6(b)は、図6(a)に示す方法におけるIPA濃度変化の開始点と欠陥の発生状況(90nm以上の欠陥増加数をSP−2(KLA−Tencor製)で測定した)との関係を示すグラフである。図6(a)に示す方法では、乾燥気体Gは、窒素ガスN2にIPAガス(IPAの蒸気)が混合されて生成されている。本実施の形態では、乾燥気体GのIPA濃度を、中心エリアW1で0.2mol%、外周エリアW3以降で4mol%としている。内周エリアW2では、内周エリアW2と外周エリアW3との境界(以下「内外エリア境界」という。)でIPA濃度が4mol%となるように、位置Lxから比例的にIPA濃度を上昇させている。本実施の形態では、乾燥気体G中のIPA濃度がこのような濃度となるように、乾燥気体Gの流量を変化させずに窒素ガスN2及びIPAガスの流量を配分している。
【0066】
乾燥気体G中のIPA濃度の上昇を開始させる位置Lxは、内外エリア境界よりも、基板Wの半径方向で回転中心Wc側の所定の位置である。本発明者は、位置Lxの変化が基板Wの乾燥処理後に発生する欠陥数に影響を及ぼすことを見いだし、位置Lxを変えて図6(a)に示す基板乾燥方法を複数のパターンで行った。その結果を図6(b)に示している。図6(b)中、位置L0に対応する欠陥増加数は、乾燥気体G中のIPA濃度の上昇を開始させる点(以下「濃度上昇開始点」という。)が内外エリア境界である場合、すなわち内外エリア境界で急激にIPA濃度を上昇させた場合の結果である。位置L1に対応する欠陥増加数は、濃度上昇開始点を内外エリア境界から5mm回転中心Wc寄りとした場合の結果である。位置L2に対応する欠陥増加数は、濃度上昇開始点を内外エリア境界から10mm回転中心Wc寄りとした場合の結果である。位置L3に対応する欠陥増加数は、濃度上昇開始点を内外エリア境界から30mm回転中心Wc寄りとした場合の結果である。基板Wの乾燥領域の単位移動距離当たりのIPA濃度の上昇率(傾き)は、位置L1、位置L2、位置L3の順に小さくなっている。濃度上昇開始点が位置L0の場合は、図6(a)に示す比例的にIPA濃度を上昇させる方法とは異なるものであるが、位置L1、L2、L3との比較の便宜のために示したものであり、これを基準として考察する。
【0067】
図6(b)に示すように、濃度上昇開始点を位置L0とした場合の乾燥処理後の欠陥増加数を1.00とした場合、濃度上昇開始点を位置L1とした場合の乾燥処理後の欠陥増加数は約0.88、濃度上昇開始点を位置L2とした場合の乾燥処理後の欠陥増加数も約0.88、濃度上昇開始点を位置L3とした場合の乾燥処理後の欠陥増加数は約0.72となった。なお、「A.U.」はArbitrary Unit(任意単位)である。この結果は、乾燥気体G中のIPA濃度を変化させる際は、比較的緩やかに(所定の勾配で)行うことが好ましいことを示している。この事実から、以下の原因が推測される。つまり、乾燥気体G中のIPA濃度の変化は、その乾燥気体Gが接触するリンス水Rの表面張力の変化をもたらすところ、リンス水Rの表面張力を急激に変化させるのではなく徐々に変化させることで、基板Wの乾燥状態を安定させることができ、欠陥の発生をより抑制することができると考えられる。本実施の形態では、乾燥気体G中のIPA濃度を、位置Lxから比例的に上昇させることとしたが、リンス水Rの表面張力を徐々に変化させることが好ましいという上記知見に照らし、リンス水Rの表面張力の変動を許容できる範囲で、例えば位置Lxから指数関数的に上昇させる等、種々の上昇のさせ方を適用することができ、このような上昇も「徐々に上昇する」ことに含まれる。
【0068】
なお、これまでの説明では、内周エリアW2の外縁が、基板Wの回転中心Wcを中心に基板Wの半径の約半分の長さを半径として描かれた仮想円の外周であるとしたが、内周エリアW2の外縁は、マランゴニ効果を発揮させたい位置の状況に応じて適宜設定することができ、例えば基板Wの大きさ(直径300mm、450mm等)にかかわらず、基板Wの回転中心Wcを中心に半径110mmの仮想円の外周を内周エリアW2の外縁としてもよい。このとき、濃度上昇開始点は、状況に応じて設定された内外エリア境界を基準として、回転中心Wc側にオフセットさせればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 基板乾燥装置
10 回転機構
20 リンス水ノズル
30 乾燥気体ノズル
40 移動機構
50 制御装置
Gf 乾燥気体流
R リンス水
Rf リンス水流
W 基板
Wc 回転中心
W1 中心エリア
W3 外周エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内で回転する基板に、リンス液流及びIPAを含有し得る乾燥気体流を供給しつつ、前記回転する基板の中心側から外周側へ前記リンス液流及び前記乾燥気体流を移動させて前記基板を乾燥させる方法であって;
前記乾燥気体流が前記基板に衝突する範囲である衝突範囲に前記基板の回転中心が存在する前記基板の範囲である中心エリアを乾燥させる中心エリア乾燥工程と;
前記基板の前記中心エリアの外側に存在する外周エリアを乾燥させる外周エリア乾燥工程とを備え;
前記乾燥気体流に含有し得る前記IPAが、前記中心エリア乾燥工程中は2mol%未満を維持し、前記外周エリア乾燥工程では前記中心エリア乾燥工程中よりも高濃度とする;
基板乾燥方法。
【請求項2】
水平面内で回転する基板に、リンス液流及びIPAを含有し得る乾燥気体流を供給しつつ、前記回転する基板の中心側から外周側へ前記リンス液流及び前記乾燥気体流を移動させて前記基板を乾燥させる方法であって;
前記乾燥気体流が前記基板に衝突する範囲である衝突範囲に前記基板の回転中心が存在する前記基板の範囲である中心エリアを乾燥させる中心エリア乾燥工程と;
前記基板の前記中心エリアの外側に存在する外周エリアを乾燥させる外周エリア乾燥工程とを備え;
前記乾燥気体流に含有し得る前記IPAが、前記中心エリア乾燥工程中はマランゴニ効果が実質的に生じない濃度であり、前記外周エリア乾燥工程中はマランゴニ効果が生じる濃度である;
基板乾燥方法。
【請求項3】
前記乾燥気体流に含有し得る前記IPAの濃度が、前記中心エリア乾燥工程における濃度から前記外周エリア乾燥工程における濃度まで上昇する際に、徐々に上昇するように構成された;
請求項1又は請求項2に記載の基板乾燥方法。
【請求項4】
前記中心エリア乾燥工程及び前記外周エリア乾燥工程を含む前記基板の回転中心から外周端まで前記基板を乾燥させる工程において、前記リンス液流及び前記乾燥気体流の移動速度が変化しないように構成された;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板乾燥方法。
【請求項5】
前記中心エリア乾燥工程中又は前記中心エリア乾燥工程が終了した直後に、前記リンス液流及び前記乾燥気体流の移動速度を上昇させる;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板乾燥方法。
【請求項6】
前記中心エリア乾燥工程及び前記外周エリア乾燥工程を含む前記基板の回転中心から外周端まで前記基板を乾燥させる工程において、前記基板の回転速度を減少させないように構成された;
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の基板乾燥方法。
【請求項7】
基板乾燥装置に接続されたコンピュータにインストールされ、前記コンピュータが前記基板乾燥装置を制御する制御プログラムであって;
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の基板乾燥方法を実行する前記基板乾燥装置を制御する;
制御プログラム。
【請求項8】
基板に供給するリンス液を吐出するリンス液ノズルと;
前記リンス液ノズルを移動させるリンス液ノズル移動機構と;
前記基板に供給する乾燥気体流を吐出する乾燥気体ノズルと;
前記乾燥気体ノズルを移動させる乾燥気体ノズル移動機構と;
前記基板を水平面内で回転させる回転機構と;
請求項7に記載の制御プログラムがインストールされたコンピュータを有する制御装置とを備える;
基板乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−192967(P2011−192967A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9074(P2011−9074)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】