説明

基板処理装置

【課題】 処理液の濃度を直接検出できるため、独立した濃度制御が行え、しかも、レンズの温度変化による測定誤差が生じにくいため、基板の薬液処理を精度良く行うことができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】 燐酸と希釈液を混合してなる処理液中に基板を浸漬して処理を行う基板処理装置において、処理液の吸光特性を測定することで処理液の濃度を検出する濃度検出手段7を備え、濃度検出手段7は、処理液を内部に導入して流通させる光透過部151と、それに所定の波長の光を照射する発光部152と、そこからの光を光透過部151を介して受光する受光部153と、発光部152から発光された光を光透過部151に集光させる第1のレンズ154と、光透過部151を通過した光を受光部153に集光する第2のレンズ155と、これらの少なくともいずれかを冷却する冷却機構160と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板等の基板(以下、単に「基板」と称する)を処理液で処理する基板処理装置に関し、特に高温度に加熱された処理液中に基板を浸漬して処理を施す際に、高い精度で処理液の濃度を検出しながら濃度制御する技術として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板処理装置としては、例えば基板表面の窒化珪素膜(SiN)を高温度の燐酸(HPO)溶液を用いてエッチング処理する基板処理装置が知られている。
【0003】
例えば半導体ウエハプロセスで、窒化珪素膜を燐酸溶液でエッチングする場合、基板表面には、窒化珪素膜の他にシリコン酸化膜(SiO)が存在するのが一般的である。そのような場合、エッチング対象は窒化珪素膜のみであり、シリコン酸化膜は処理液によりほとんどエッチングされないことが一般に求められる。
【0004】
窒化珪素膜とシリコン酸化膜が燐酸溶液でエッチングされるメカニズムとして、窒化珪素膜は燐酸溶液中の水によりエッチングされ、シリコン酸化膜は燐酸溶液中の燐酸によりエッチングされることが知られている。
【0005】
このため、窒化珪素膜のエッチング量を精度よく管理するためには処理液の濃度、すなわち薬液と希釈液の混合比率と、処理液の温度が非常に重要である。また一般的に高温中の燐酸溶液においては、希釈液である水の蒸発量は多く、水の補充による濃度制御が重要である。処理液の温度又は濃度を一定に保持する手段を備える基板処理装置としては、下記の特許文献1〜2に記載された装置が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、燐酸浴の濃度制御を水の補充により行う際に、燐酸浴の沸騰温度を設定温度として、現在温度とこれを比較した結果に応じて、水の補充レートを自動制御する基板処理装置が開示されている。この装置では、実際に制御しているのは処理液の温度のみであり、処理液の濃度は沸騰濃度以下にはならないという物理現象に頼った希釈液の補充手段となっている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載された装置の場合、燐酸浴の沸騰温度に対応する燐酸浴濃度が一定であるため、窒化珪素膜のエッチングレートが決定されると、処理液の濃度と温度とが同時に決定され、各々を独立して調整できないという問題がある。また、希釈液の補充量は本来の蒸発量よりも僅かに多く補充する必要があるが、補充量が過剰になると処理液の温度低下、あるいは処理液が突沸する原因となる。
【0008】
また、特許文献2には、処理液の温度を設定温度にするために加熱手段を操作する温度制御手段と、処理液の濃度を調整するために処理槽に希釈液を補充する補充手段と、処理液の比重等によって処理液の濃度を検出する濃度検出手段と、検出した処理液の濃度が沸点温度より少し高くなるように、希釈液の補充量を調整する濃度制御手段と、を備える基板処理装置が開示されている。
【0009】
しかし、特許文献2に記載された装置の場合、濃度検出手段が処理槽内の検出端から供給される気体の圧力を処理液の比重に換算しているため、処理液の温度、処理槽内の液量、処理槽内の処理液の流れにより検出端より供給される気体の圧力は変化する。したがって、処理液の温度、処理槽内の液量、処理槽内の流れが一定の下で検出する必要がある。しかし、実際の運用上、処理液の濃度を制御するために処理液に希釈液を補充する際には処理液の温度も変化するため、処理液の温度が設定温度に復帰するまで正確な濃度が測定できないという問題がある。
【0010】
また、特許文献3には、燐酸水溶液中の金属イオンの濃度を測定する方法として、水溶液の温度を徐々に低下させて、不溶成分の析出による透過率変化を光学的に検出し、析出温度をから金属イオンの濃度を算出する濃度測定方法、並びにそれを利用した再生システム付きのエッチング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−200072号公報
【特許文献2】特開2004−221540号公報
【特許文献3】特開2009−58306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載された濃度測定方法の場合、水溶液の温度を徐々に低下させる工程が必要になるため、光学的な検出方法であるにも係わらず、リアルタイムで濃度測定を行うことができなかった。
【0013】
そこで、本出願人等は、光学的な検出方法により処理液の濃度を直接検出できるため、独立した濃度制御が行える基板処理装置を開発し、特許出願を行った(特願2010−166288、本願出願時に未公開)。
【0014】
しかし、本発明者等の検討によると、高温の燐酸溶液でエッチングを行う基板処理装置では、光学的な検出方法により処理液の濃度を検出する際に、測定用セルからの輻射熱により、近傍に配置したレンズが温度変化し、その影響を受けて、測定誤差が生じることが判明した。
【0015】
なお、光学的な検出方法による濃度測定装置において、測定用セルからの輻射熱により、近傍に配置したレンズが温度変化し、その影響を受けて、測定誤差が生じることや、その対策は、現在まで知られていなかった。
【0016】
そこで、本発明の目的は、処理液の濃度を直接検出できるため、独立した濃度制御が行え、しかも、レンズの温度変化による測定誤差が生じにくいため、基板の薬液処理を精度良く行うことができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
すなわち、本発明の基板処理装置は、燐酸と希釈液を混合してなる処理液を貯留しつつ、この処理液中に基板を浸漬して処理を行う処理槽と、処理液を加熱する加熱手段と、処理液に希釈液を補充する補充手段と、処理液の吸光特性を測定することで処理液の濃度を検出する濃度検出手段と、その濃度検出手段による検出濃度が設定濃度に近づくように前記補充手段を操作する濃度制御手段と、を備えた基板処理装置であって、前記濃度検出手段は、前記処理液を内部に導入して流通させる光透過部と、前記光透過部に所定の波長の光を照射する発光部と、前記発光部からの光を前記光透過部を介して受光する受光部と、前記発光部と前記光透過部との間に設けられ、前記発光部から発光された光を前記光透過部に集光させる第1のレンズと、前記光透過部と前記受光部との間に設けられ、前記発光部から発光され前記光透過部を通過した光を前記受光部に集光する第2のレンズと、前記第1レンズ又は第2レンズの少なくともいずれかを冷却する冷却機構と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の基板処理装置によると、濃度検出手段が処理液の吸光特性を測定することで処理液の濃度を直接検出するため、処理液の温度の影響を殆ど受けずに独立した濃度制御が行える。更に、濃度検出手段がレンズを冷却する冷却機構を備えるため、レンズの温度変化による測定誤差が生じにくくなり、より高い精度で処理液の濃度を検出することができるため、基板の薬液処理を精度良く行うことができる。また、例えば基板ウエハの浸漬により処理液の温度が低下した場合などでも、処理液の濃度を維持するための水の補充、停止が可能であり、結果として窒化珪素膜のエッチングが安定することになる。また、本発明によると、薬液と希釈液の混合比率を、薬液の沸点濃度以上の範囲で自由に制御することが可能となり、例えば燐酸溶液の濃度を沸点濃度に対して高くすることで、窒化珪素膜のエッチング量を少なくし、シリコン酸化膜のエッチング量を多くすることも可能である。
【0019】
上記において、前記第1のレンズを保持する第1レンズ保持部と、前記第2のレンズを保持する第2レンズ保持部とを備えると共に、前記冷却機構が、前記第1レンズ保持部又は第2レンズ保持部の少なくともいずれかを介して、前記冷却を行うことが好ましい。この構成により、レンズ保持部を介して間接的にレンズの冷却を行うことができるため、冷却の効率や均一性を高めることができる。また、第1、第2のレンズ保持部に冷却機構を設けているため、レンズのみならず、第1、第2のレンズ保持部そのものを冷却できるようになっている。その結果、レンズ保持部が熱により変形膨張することを防止できるため、レンズの保持位置を一定の位置に維持できるようになり、高い精度で燐酸濃度を測定できるようになる。
【0020】
また、前記冷却機構は、前記第1レンズ保持部又は第2レンズ保持部に設けられた流路と、その流路に冷却用流体を供給する手段と、を備えることが好ましい。この構成により、レンズ保持部に供給する冷却用流体によって、レンズの冷却を効率良く行うことができる。
【0021】
その際、前記第1レンズ又は第2レンズの周囲の全部又は一部を囲むように、前記第1レンズ保持部又は第2レンズ保持部に設けられていることが好ましい。この構成により、レンズ保持部のレンズを囲む部分に冷却用流体を供給することができるため、冷却の効率や均一性をより高めることができる。
【0022】
また、前記第1レンズ保持部と第2レンズ保持部とを支持するベース部を備えると共に、そのベース部に冷却機構が設けられていることが好ましい。ベース部を冷却することにより、ベース部の熱による変形の影響を防止できるとともに、フローセル部からベース部を介して直接的レンズ保持部に伝達する熱の影響を小さく出来るため、より高い精度で濃度測定を行なうことが出来るようになる。
【0023】
また、前記処理液の温度を検出する温度検出手段と、その温度検出手段による検出温度が設定温度に近づくように前記加熱手段を操作する温度制御手段と、を更に備えることが好ましい。この構成により、温度検出手段が処理液の温度を検出して、温度制御手段が加熱手段を操作することで、濃度制御とは別に温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の基板処理装置の一例を示す概略構成図
【図2】本発明の基板処理装置の要部の一例を示す概略構成図
【図3】燐酸溶液の濃度および温度と、シリコン窒化膜エッチングレートとの関係を示すグラフ
【図4】マイクロプロセッサのデータ処理のフローチャート
【図5】マイクロプロセッサのデータ処理のフローチャート
【図6】本発明の基板処理装置の要部の一例を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は右側面図
【図7】実験例1で測定された濃度の変化を示すグラフ
【図8】実験例2で測定された濃度の変化を示すグラフ
【図9】実験例3で測定された濃度及び温度の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の基板処理装置は、例えば、燐酸と希釈液を混合してなる処理液を加熱し、この処理液中に基板を浸漬して処理を行う場合に使用される。本実施形態では、処理液が薬液としての燐酸と希釈液としての水とを含有する燐酸溶液であり、これを加熱しつつ、この燐酸溶液中に基板(例えば半導体用シリコンウエハ)を浸漬してエッチング処理する装置を例に採って説明する。
【0026】
この基板処理装置は、燐酸と希釈液を混合してなる処理液を貯留しつつ、この処理液中に基板を浸漬して処理を行う処理槽1を備えている。本実施形態では、図1に示すように、処理槽1の周囲には、処理槽1から溢れ出た燐酸溶液を回収するための回収槽1aが設けられている例を示す。回収槽1aで回収された燐酸溶液は、循環配管1bを介して処理槽1に戻される。
【0027】
上記の循環配管1bには、循環ポンプ9、加熱手段3、およびフィルタ10が設けられており、処理槽1の底部に設けられた噴出管に接続されている。
【0028】
加熱手段3は、電気ヒータなどが使用される。フィルタ10は、処理槽1に戻される燐酸溶液からパーティクルを除去するために設けられている。フィルタ10としては、フッ素系樹脂等からなる多孔質膜等が用いられる。
【0029】
処理槽1と回収槽1aには、槽内の燐酸溶液を加熱するための加熱手段2が設けられ、電気ヒータなどが使用される。循環配管1bの加熱手段3および槽用の加熱手段2は、本発明における加熱手段に相当する。加熱手段による加熱は、例えば110℃以上で行われる。
【0030】
処理槽1の上部には開閉自在のカバーを設けてもよい。処理対象である複数枚の基板は昇降自在の保持アームに等間隔に直立姿勢で保持され、保持アームが槽外にあるとき、カバーは閉じられる。基板群を保持アームに保持して槽内に投入するとき、カバーが開けられる。基板群が槽内に投入されてエッチング処理を施している間、カバーは再び閉じられる。
【0031】
回収槽1a等には燐酸を供給する燐酸供給部が配設されている(図示省略)。また、処理槽1には純水等の水を補充するための水補充部6aが配設されている。水補充部6aは、処理槽1の縁近傍に配設されたノズルと、このノズルを水供給源に連通接続する配管と、この配管に介在する流量調整弁6bとを備えている。これらは、本発明における補充手段に相当する。
【0032】
本実施形態では、処理槽1内には燐酸溶液の温度を検出する温度検出手段4が設けられている例を示す。温度検出手段4としては、熱電対等を用いた温度センサなどが使用される。温度検出手段4の検出信号は温度制御手段5に送られる。温度制御手段5は、この検出信号に基づいて、検出温度が設定温度に近づくように加熱手段2,3を操作する。その際の制御としては、PID(比例・積分・微分)制御、又はON/OFF制御などが可能である。具体的には、例えば燐酸溶液の温度が159〜161°Cの範囲に入るように加熱手段2,3を操作して制御する。
【0033】
本発明の基板処理装置は、図1に示すように、処理液の吸光特性を測定することで処理液の濃度を検出する濃度検出手段7を備えている。この濃度検出手段7は、図2又は図6に示すように、処理液を内部に導入して流通させる光透過部151と、光透過部151に所定の波長の光を照射する発光部152と、発光部152からの光を光透過部151を介して受光する受光部153と、発光部152と光透過部151との間に設けられ、発光部152から発光された光を光透過部151に集光させる第1のレンズ154と、光透過部151と受光部153との間に設けられ、発光部152から発光され光透過部151を通過した光を受光部153に集光する第2のレンズ155と、第1レンズ154又は第2レンズ155の少なくともいずれかを冷却する冷却機構160と、を備えている。
【0034】
本実施形態では、図6に示すように、第1レンズ154および第2レンズ155が、第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165によって保持されると共に、第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165を冷却することで、間接的に第1レンズ154および第2レンズ155を冷却する冷却機構160を設ける例を示す。本発明では、このように冷却機構160が、第1レンズ保持部164又は第2レンズ保持部165の少なくともいずれかを介して、冷却を行うものであることが好ましい。
【0035】
第1レンズ保持部164又は第2レンズ保持部165の材質としては、これに冷却機構160を設ける場合、熱伝導性の観点から、無機材料を使用することが好ましく、アルミ、銅、ステンレス鋼、インバー(ニッケル−鉄合金)などの金属を使用することがより好ましい。
【0036】
図示した例では、冷却効率を高めるために、第1レンズ154および第2レンズ155は、第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165によって、直接保持されている。ゴム、樹脂等の熱伝導性が悪い材料が介在すると、レンズの温度が上昇し易くなるためである。なお、冷却効率を高めながら、レンズを精度良く保持する観点から、レンズ全体の表面積に対して、5〜30%の面積、特に10〜30%の面積で、第1レンズ154と第1レンズ保持部164とが接触していることが好ましい。この点は、第2レンズ155と第2レンズ保持部165との関係についても同様である。
【0037】
第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165には、流路164a,165aが設けられており、冷却機構160は、流路164a,165aに冷却用流体を供給する手段を備えている。冷却用流体を供給する手段としては、単に水道水、イオン交換水、純水等を供給する手段(この場合、冷却用流体は使用後に系外に排出される)でもよいが、一定温度以下に冷却した液体を循環させる手段を設けてもよい。冷却用流体の温度としては、レンズの温度を低下させられる温度であればよいが、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
【0038】
循環を行うタイプの冷却機構160としては、ポンプ等の送液手段と、循環配管と、冷却用流体を冷却するための熱交換器(通常は冷凍サイクルを構成する熱交換器)とを備えるものが例示される。循環配管等は、第1レンズ保持部164の流路接続部164bに接続される。第2レンズ保持部165についても同様である。
【0039】
本発明において、冷却用流体を流動させる流路164a,165aは、第1レンズ154又は第2レンズ155の周囲の全部又は一部を囲むように、第1レンズ保持部164又は第2レンズ保持部165に設けられていることが好ましい。図示した例では、レンズ全周の50%以上が流路164a,165aに囲まれているが、80%以上が流路164a,165aに囲まれていることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態では、第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165が、ベース部161に支持されて一体化されており、このベース部161が分岐配管1cを介して光透過部151を保持している例を示す。ベース部161には、第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165と同じ材料を用いてもよいが、分岐配管1cからの熱を断熱するためには、樹脂、セラミックス等を用いるのが好ましい。ベース部161として、金属を用いる場合には、図示した例のように、ゴム、樹脂等からなる断熱材162を介して、分岐配管1cを保持する構造が好ましい。
【0041】
第1レンズ154又は第2レンズ155としては、熱による影響を受けにくい材質のものが好ましく、例えば石英、サファイア、ガラスなどが挙げられる。光透過部151としては、石英、サファイア、ガラス、透明樹脂などからなるセルが何れも使用できるが、石英セルが好ましい。第1レンズ154と第2レンズ155による集光の度合いは、測定対象となる処理液への光照射の面積によって決定される。
【0042】
第1レンズ保持部164および第2レンズ保持部165を、ベース部161に固定する際に、レンズの焦点距離又は焦点位置を調整するための固定位置調整機構を設けてもよい。同様に、光透過部151又は分岐配管1cをベース部161に保持する際に、光透過部151又は分岐配管1cの固定位置を調整するための固定位置調整機構を設けてもよい。
【0043】
濃度検出手段7は、処理液の吸光特性を測定することで処理液の濃度を検出するものである。吸光特性は、処理液の透過光の強度値により測定できるが、具体的には、測定対象の燐酸溶液を光透過部に導入し、光透過部に対して異なる波長の光を透過させ、透過光の強度値を測定し、強度値から吸光度を演算し、吸光度と検量線式を用いて、上記燐酸溶液中の酸の濃度を決定することができる。
【0044】
検量線式は、既知濃度の燐酸溶液のサンプルを光透過用のセル等に導入し、セル等に対して赤外線波長域の異なる波長の光を透過させ、透過光の強度値を測定し、この測定を複数のサンプルについて繰返し、上記の複数のサンプルの強度値から吸光度を演算することで、吸光度と燐酸溶液中の酸濃度の間の検量線式として求めることができる。
【0045】
さらに、検量線式を特定のセルを用いて作成するのではなく、使用する光透過部に導入して作成することにより、光透過部に固有の性状に関する情報を検量線に組み込む事が可能になり、処理液の循環経路あるいはその分岐経路において直接濃度を測定して、時間差や温度差を生じることなく、連続的に処理液の濃度を検出することが可能となる。
【0046】
本発明では、濃度検出手段7の測定部を、処理槽1に接続された循環配管1b又はその循環配管1bから分岐された分岐配管1cに設けた光透過部151に、測定部が設置されることが好ましい。本実施形態では、濃度検出手段7の測定部が、循環配管1bから分岐された分岐配管1cの光透過部151に設置されている例を示す。
【0047】
濃度検出手段7の測定部が、処理槽1に接続された循環配管1b又はその循環配管1bから分岐された分岐配管1cに設けた光透過部151に前記処理槽に接続された循環配管又はその循環配管から分岐された分岐配管の光透過部に設置されている場合、光透過部151の材質の制限などを少なくすることができ、また、サンプルを濃度測定装置内部のセルにバイパスする場合に比べて、測定の時間差と温度差の両方の観点からリアル性を増すことができ、処理槽1内を循環中の処理液の濃度検出制度をより高めることができる。これにより、基板の薬液処理をより精度良く行うことができる。
【0048】
濃度検出手段7は、例えば図2に示すように、測定対象の燐酸溶液が導入される光透過用の光透過部151と、赤外波長域の光を照射する光源と、光源からの光を照射して得られる透過光の異なる波長での光強度を検出する受光手段と、燐酸溶液中の酸の濃度と吸光度との関係を示す検量線式を記憶する記憶手段と、上記受光手段が出力する光強度信号から吸光度を演算し、上記吸光度から上記検量線式に基づいて燐酸溶液中の酸の濃度を決定する濃度演算手段とを備えることが好ましい。
【0049】
光源としては800〜1600nm近辺の波長の赤外光を発生するタングステンランプ、ハロゲンランプ等のランプ100を用い、測定には、800〜2000nm、より好ましくは800〜1600nmの赤外光を用いる。この波長域を使用するのは、燐酸溶液中の水分濃度の変化と水分温度の変化に対する吸収量の変化が、精度良く測定できるためである。例えば980nm付近の水の吸収バンドは、水分濃度の変化に対してはその吸収の大きさの変化として観測され、水分温度の変化に対しては吸収ピークのシフトとして観測されるので、980nm付近の波長と1100nm付近の波長における吸収特性を同時に測定することで、水分濃度による吸光特性と水分温度による吸光特性が区別できる。
【0050】
赤外線ランプ100から放射された赤外線は、第1凸レンズ102によって集光され、第1凸レンズ102の焦点位置に配置された絞り104と干渉フィルタ106を通過する。回転円板108は、複数(たとえば、8枚)の干渉フィルタ106を、円周方向に等角度間隔で保持し、駆動モータ110により所定の回転数(たとえば1000rpm)で回転駆動される。ここで、干渉フィルタ106は、絞り104を通過した赤外線を上記の波長域内の所定の波長の赤外線に分光する。干渉フィルタ106によって分光された赤外線は、第2凸レンズ112によって集光され、投光用光ファイバ113の入口端に導入される。
【0051】
光ファイバを用いた赤外線分光装置については、特開平6−11442号公報にその詳細が記載されている。投光用光ファイバ113は、光ファイバ113bの出口側に投光ヘッド113a(発光部152に相当する)を備えている。また、受光用光ファイバ114は、光ファイバ114bの入口側に受光ヘッド114a(受光部153に相当する)を備えている。
【0052】
光透過部151は、配管に接続したフローセルでもよいが、光透過性の配管をそのまま使用することも可能である。セルの材料として一般に使用される石英は、処理液がリン酸である場合にエッチングされたり、処理液中に溶解したケイ素化合物が付着して曇りが生じ易いため、本発明では、光透過性の樹脂からなる配管を使用するのが好ましい。このような配管を構成する光透過性の樹脂としては、耐薬品性、耐熱性、ケイ素化合物の付着性などの観点から、PFAなどのフッ素系樹脂が好ましい。光透過部151として、光透過性の樹脂からなる配管を使用する場合、レンズによる集光の度合いは、セルとなる配管直径の半分程度の直径であることが好ましい。
【0053】
本発明では、光透過部151として、フローセルや配管を用いることにより、インラインで連続的に濃度測定が行える。光透過部151に照射された赤外線の一部は燐酸溶液によって吸収され、残部は光透過部151を透過する。光透過部151を透過して、受光用光ファイバ114に導入された赤外線は、受光用光ファイバ114の出口端から導出される。導出された光は、第3凸レンズ116により集光され、受光素子118に入射される。
【0054】
駆動モータ110により回転円板108が回転駆動されると、受光素子118は、回転円板に保持されている複数の干渉フィルタ106の透過波長に対応する各赤外線の、燐酸溶液に対応する透過度に比例する信号を生成する。受光素子118は、入射された赤外線を、その強度に対応する光電流に変換する。
【0055】
回転円板108に保持される各干渉フィルタ106は、測定対象に応じた、互いに異なる透過波長を有している。回転円板108が回転すると、各干渉フィルタ106が、第1凸レンズ102と第2凸レンズ112の光軸に順次挿入される。そして赤外線ランプ100から放射された赤外線が、干渉フィルタ106によって分光された後、光透過部151内のサンプルを透過し(一部は吸収され)、第3凸レンズ116により集光され、受光素子118に入射される。
【0056】
これにより、受光素子118は、各波長の赤外線の光強度に応じた電気信号を出力する。増幅器120は、受光素子118から出力された、光透過部151の透過光強度信号を増幅し、A/D変換器122は、増幅器120から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0057】
次に、データ処理部130の具体的な構成を説明する。データ処理部130は、A/D変換器122からデジタル信号である透過光強度信号を受け取り、それから各波長の赤外線の吸光度を演算する。そして、演算した各波長の赤外線の吸光度と、あらかじめ記憶されている検量線式とに基づいて、燐酸溶液の水又は燐酸の濃度を演算する。
【0058】
検量線式は、それらの濃度が既知の複数のサンプルについて複数波長の光の吸光度を測定して、吸光度と各成分の濃度との間の定数項を含む吸光度の多次多項式を用いて多変量解析法により予め求められて、記憶装置(RAM136)に保持されている。
【0059】
受光素子118が生成する各々の信号は、増幅器120で増幅された後、A/D変換器122でデジタル信号に変換され、データ処理部130のマイクロプロセッサ132に入力される。データ処理部130は、たとえばマイクロプロセッサ132を備えるパーソナルコンピュータである。マイクロプロセッサ132には、プログラム等を記憶するROM134、ワークエリアであるRAM136、データや各種命令を入力するキーボード、マウスなどの入力装置138および外部に信号を出力する出力装置140などが接続されている。ROM134は、マイクロプロセッサ132を動作させるためのプログラム等を格納している。RAM136は、検量線式や各種データを記憶している。マイクロプロセッサ132は、入力されたデジタル信号から各波長での吸光度を演算し、演算した各波長の光の吸光度から検量線式を用いて、燐酸溶液の濃度を演算する。出力装置140は、データ処理の結果を出力するプリンタ、ディスプレイ、データ出力インタフェース等である。
【0060】
図4及び図5は、マイクロプロセッサ132の処理のフローを示す。まず、既知濃度のサンプルの測定が開始されると(S10)、回転円板108の回転に同期して光測定系のA/D変換器122から複数波長での光強度データを入力する(S12)。そして、光強度データから吸光度を演算して記憶する(S14)。次の既知濃度のサンプルがあれば(S16でYES)、上述の処理を繰返す。次の既知濃度のサンプルがなければ(S16でNO)、吸光度と濃度との間の検量線式を演算し(S18)、RAM136に記憶する(S20)。
【0061】
未知濃度のサンプルの測定が開始されると(S22)、回転円板108の回転に同期して光測定系のA/D変換器122から複数波長での光強度データを入力する(S24)。そして、光強度データから吸光度を演算する(S26)。そして、吸光度と検量線式から濃度を演算し(S28)、RAM136に記憶する(S30)。ここで測定終了か否かを判断し(S32)、終了でなければ、ステップ24に戻り、濃度測定を続ける。
【0062】
図4に示すマイクロプロセッサ132の処理における光強度データの処理の手法は、近赤外波長域での分光測定に用いられた、本出願人による特開平6−265471号公報に記載されたものと同様である。データ処理の具体的な内容を以下に説明する。
【0063】
まず、入力された光強度のデジタル信号に対して、次の式(1)による演算処理を実行し、吸光度Aを演算する。
【数1】

この式において、iは、分光された複数の赤外線波長の順番ないし番号(たとえば、1〜8)であり、Rは、測定対象である燐酸溶液のi番目の波長の赤外線の透過強度値であり、Bは、光透過部151内に導入された基準濃度の燐酸溶液の、i番目の波長の赤外線の透過強度値であり、Dは、光透過部151を遮光したときのi番目の波長の赤外線の透過強度値である。なお、BおよびDは、あらかじめ測定されているデータであり、データ処理装置のRAM136に格納されている。
【0064】
次に、式(1)による演算処理により得られた吸光度Aに、次の式(2)の変換を行う。
【数2】

式(2)の変換を行う理由は以下のとおりである。式(1)により演算される吸光度Aは、赤外線ランプ100の発光強度の変動や、受光素子11の感度変動や、光学系のひずみなどにより変化する。しかし、この変化はあまり波長依存性はなく、各波長の赤外線についての各吸光度データに同相、同レベルで重畳する。したがって、式(2)のように、各波長の間の差をとることにより、この変化を相殺できる。
【0065】
吸光度Aは、燐酸溶液自体の温度変動や劣化とともに、屈折率変動や濁りの増加によって、変動など発生するが、これらの変動は、公知の方法で除去することができる。本発明では、処理液の温度に基づいて、濃度検出手段7が検出濃度の温度補正を行うことが好ましいが、特に、濃度検出手段7が、複数の波長における吸光特性を測定することで、処理液の温度による誤差変動を除去した濃度を検出するのが好ましい。温度補正を行う際の温度に関する情報は、検量線式に反映させておけば別途必要としないが、濃度検出手段7の測定部の付近などに、別に温度検出手段を設けて、これを利用して温度補正を行うことも可能である。
【0066】
濃度検出手段7で得られた燐酸溶液の検出濃度に関する信号は、濃度制御手段8に送られる。濃度制御手段8は、濃度検出手段7による検出濃度が設定濃度に近づくように補充手段6の流量調整弁6bを操作して、水の補充量を調整する。具体的には、濃度制御手段8は、燐酸溶液の検出濃度に基づいてPID(比例・積分・微分)制御によって流量調整弁6bを操作する。例えば、処理液の検出濃度が設定濃度を上回るときは希釈液を補充し、処理液の検出濃度が設定濃度を下回るときは希釈液の補充を停止するように制御される。
【0067】
本発明では、基板処理装置の全体を管理するために主制御部を設けてもよい。具体的には、主制御部は、温度制御手段5に対する燐酸溶液の設定温度の指令、濃度制御手段8に対する燐酸溶液の目標濃度の指令、および燐酸の流量調整弁の操作指令などを与えることができる。
【0068】
次に基板処理装置の動作について説明する。まず、燐酸の流量調整弁が開けられて、回収槽1aに燐酸が供給される。回収槽1aに供給された燐酸は、循環配管1bを介して処理槽1に送られる間に加熱手段3によって加熱され、処理槽1に導入された燐酸は加熱手段2によっても加熱される。
【0069】
処理槽1内の燐酸の温度は温度検出手段4によって検出されて、その信号が温度制御手段5に送られる。温度制御手段5は、設定温度160°Cに対して、例えば±1°Cの範囲内で温度管理している。具体的には、液温度が159°C未満のときは、加熱手段2,3による加熱を継続する。液温度が161Cを超えるときは、加熱手段2,3による加熱を停止して自然冷却によって液温度を下げる。
【0070】
処理槽1内から循環配管1bと分岐配管1cにより導かれた処理液の濃度は、濃度検出手段7によって逐次検出される。濃度制御手段8は、この検出濃度が予め設定された目標濃度に近づくように、PID制御などにより流量調整弁6bを操作して処理槽1に水を補充する。この目標濃度は、燐酸溶液の設定温度に対応した沸点濃度よりも少し高くなるよう設定されるか、又はその濃度よりも高い濃度に設定される。
【0071】
処理槽1内の燐酸溶液の検出濃度が目標濃度範囲を超える場合は、水の補充が継続され、検出濃度が目標濃度範囲を下回る場合は、水の補充が停止される。水の補充が停止されると、燐酸溶液の加熱により燐酸溶液中の水が蒸発して、燐酸溶液の濃度は自然に上昇する。
【0072】
処理槽1内の燐酸溶液が目標濃度範囲に入って安定すると、保持アームに保持された基板群が処理槽1内に投入されて、基板群のエッチング処理が始まる。予め定められた処理時間が経過するまで、温度制御および濃度制御が繰り返し行なわれる。処理時間が経過すると基板群が槽内から引き上げられて、次の処理槽へ移送される。
【0073】
次に本発明における燐酸溶液の温度制御と濃度制御との関係を、図3を参照して説明する。図3は、燐酸溶液の濃度および温度と、シリコン窒化膜エッチングレートとの関係を示すグラフである。この図では、各温度でのエッチングレートがエッチングレート曲線として実線で、また濃度変化により変化する沸点が、沸点曲線として点線で示されている。この図に示すように、燐酸溶液の沸点は、燐酸溶液の濃度が高くなるにつれて高くなる性質を有する。
【0074】
また、本発明では、温度制御手段5が燐酸溶液の温度を一定に保つように制御していることから、シリコン窒化膜のエッチングレートは、濃度の変動に応じて、温度ごとのエッチングレート曲線に沿って移動することになる。ここでは、温度150℃、温度160℃、温度170℃の場合を示している。先の制御では、燐酸溶液の設定温度は160℃であるので、濃度の設定値を変化させることで、対応する曲線に沿ってエッチングレートを変化させることができる。
【0075】
その際、燐酸溶液の濃度の設定値を、設定温度における沸点より高めておくことで、水の補充による燐酸溶液の突沸を未然に防止することができる。また、窒化珪素膜と同時にシリコン酸化膜もエッチングするような技術に対して、窒化珪素とシリコン酸化膜のエッチング選択比を自由に制御することが可能になる。
【0076】
[別の実施形態]
本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように実施形態を変更することが可能である。
【0077】
(1)前記の実施形態では、冷却機構をレンズ保持部に設けて間接的に冷却を行う場合の例を示したが、本発明では、レンズを直接冷却することも可能である。その場合、冷却用気体を用いて行うことが可能である。冷却用気体としては、レンズに冷風(低温の空気)や低温の窒素ガスなどを供給することができ、供給のためのノズル等が、冷却機構としてレンズの近傍に設けられる。
【0078】
(2)前記の実施形態では、冷却機構をレンズ保持部に設ける場合の例を示したが、ベース部に冷却機構を設けたり、レンズ保持部とベース部に冷却機構を設けることも可能である。ベース部に冷却機構を設ける場合、その材質としては金属を使用することが好ましい。ベース部に設ける冷却機構としては、レンズ保持部と同様なものを採用できる。なお、冷却機構をレンズ保持部に設ける場合、第1又は第2レンズ保持部の何れか一方のみに、冷却機構を設けてもよい。
【0079】
(3)前記の実施形態では、冷却用流体を供給して冷却を行う冷却機構の例を示したが、ペルチェ素子などの冷却用部材を用いて、冷却用流体を使用せずに冷却を行っても良い。その場合、冷却用部材は、レンズの周囲部に直接設けてもよく、また、レンズ保持部に設けてもよい。
【0080】
(4)前記の実施形態では、処理槽に接続された循環配管から分岐された分岐配管の光透過部に、濃度検出手段の測定部が設置される例を示したが、処理槽に接続された循環配管に光透過部を設けて、測定部を設置してもよい。
【0081】
(5)前記の実施形態では、投光用光ファイバと受光用光ファイバを用いて、濃度検出手段の光学系から離れた位置に、濃度検出手段の測定部を配置する例を示したが、光学系を配管の光透過部の付近に配置することも可能である。
【0082】
(6)前記の実施形態では、濃度検出手段が、温度情報を反映した検量線式を利用することにより、処理液の温度に影響されずに検出濃度の測定を行う場合の例を示したが、濃度制御手段が、処理液の温度に基づいて検出濃度の温度補正を行うようにしてもよい。その場合、例えば、予め各温度での検出濃度に対する補正値を記録したテーブルを記憶させておき、そのテーブルを利用して、検出温度に基づいて補正値を算出する演算を行うようにすればよい。また、予め作成した補正用の関数を用いて、検出温度における検出濃度の補正値を算出することも可能である。
【0083】
(7)前記の実施形態では、濃度検出手段が、測定部が設置される光透過部の性状に基づいて、検出濃度の性状補正を行う場合の例を示したが、濃度制御手段が、光透過部の性状に基づいて、検出濃度の性状補正を行うようにしてもよい。その場合、例えば、予め各材質(材質、厚み等)での検出濃度に対する補正値を記録したテーブルを記憶させておき、そのテーブルを利用して、性状に基づいて補正値を算出する演算を行うようにすればよい。また、予め作成した補正用の関数を用いて、各性状に対する検出濃度の補正値を算出することも可能である。
【0084】
(8)前記の実施形態では、温度検出手段が、熱電対を用いた温度センサによって行う場合の例を示したが、温度検出手段として処理液の吸光特性を利用することも可能である。その場合、処理液の吸光特性を測定することで処理液の温度を検出する温度検出手段を別に設けてもよいが、濃度検出手段によって、温度検出手段を兼用することが好ましい。その場合には、あらかじめ温度の異なる既知の濃度の処理液の吸光度を測定して検量線に加えておき、処理液の濃度と温度の両方を算出するようにすればよい。
【実施例】
【0085】
本発明の効果を検討・確認するために次のような実験を行った。
【0086】
実験例1(レンズの温度上昇による光学特性変化の影響)
図6に示す光学系を有する実験装置を用いて、測定用のセルを使用せずに、25℃に設定した恒温室内で、濃度ゼロ%の測定値が、25℃からのレンズ温度の変化でどのように変化するか調べた。光学系の光軸の調整は、レーザーを用いて2m離れたところで軸ズレ1mm以下になるように調整した。測定の際、流路に供給(流量1.9L/分)する温水の温度を30℃〜50℃に5℃づつ変化させて、このときのレンズの温度を測定すると共に、各温度に対応する濃度(%)の変化を図2に示す装置で測定した。その結果を図7に示す。
【0087】
この結果から明らかなように、レンズ温度が室温(25℃)から10℃以上高くなると、測定誤差が大きくなることが確認できた。このため、レンズ又はレンズ保持部の温度上昇による濃度変動を0.03wt%以内に抑えるためには、レンズの温度上昇を15℃以下に抑制することが好ましい。
【0088】
実験例2(レンズ保持部の温度上昇による光軸変化の影響)
図6に示す光学系を構成することができ、更に一方のレンズ保持部に対して、固定位置調整部(XYZステージ)を有する実験装置を用いて、測定用のセルを使用せずに、25℃に設定した恒温室内で、濃度ゼロ%の測定値が、25℃からの温度変化でどのように変化するか調べた。光学系の光軸の調整は、レーザーを用いて2m離れたところで、基本位置における軸ズレが1mm以下になるように調整した。測定の際、基準位置(XYZが何れも0mmとなる位置)から、光軸に垂直な水平方向X(−0.2mm〜0.2mm)、高さ方向Y(−0.2mm〜0.2mm)、光軸に平行な水平方向Z(−1.0mm〜12.5mm)に、それぞれ固定位置を調整し、各位置に対応する濃度(%)の変化を図2に示す装置で測定した。その結果を図8
に示す。
【0089】
この結果から次の点が明らかになった。基準位置から、光軸がずれることによる濃度変動が0.02wt%に至るには、光軸のズレがXY平面内で0.2mm以上必要となる。 レンズ保持部の高さ(Y方向)10cm、アルミの線膨張係数(23×10−6[1/℃])の場合、1℃あたりの変動は0.0023mm/℃となり、上記の濃度変動が生じるには温度上昇が85℃以上必要となる。従って、抑えるべき誤差要因は、軸ズレよりも、レンズの温度特性と判断できた。
【0090】
実験例3(冷却水による冷却の影響)
図6に示す光学系を有する実験装置を用い、測定用の石英セルを使用して、温度120℃、濃度67.80重量%の燐酸水溶液を流通(流量1.5L/分)させながら、濃度の測定値が、冷却水の有無でどのように変化するか調べた。光学系の光軸の調整は、レーザーを用いて2m離れたところで軸ズレ1mm以下になるように調整した。測定の際、各部の温度を連続して測定すると共に、各時間における濃度(%)の変化を図2に示す装置で測定した。その結果を図9に示す。ここで、図中のドットは濃度の測定値を示している。各部の温度として、第1レンズ保持部164の内側(セル側)と外側(光ファイバ側)、ベース部161のセル保持部分、セルの出口部の測定値を示した。
【0091】
この結果から明らかなように、冷却水を止めることでレンズの温度が25℃程度上昇し、それによって濃度が0.2重量%程度変化することが確認された。また、水冷を再開すると、濃度はほぼ元の値に戻ることが確認できた。このため、レンズの冷却が、温度変化による測定誤差を抑制する上で重要なことが分かった。
【符号の説明】
【0092】
1 処理槽
1b 循環配管
2 ヒーター(加熱手段)
3 ヒーター(加熱手段)
4 温度検出手段
5 温度制御手段
6 補充手段
7 濃度検出手段
8 濃度制御手段
9 循環ポンプ
10 フィルタ
151 光透過部
152 発光部
153 受光部
154 第1レンズ
155 第2レンズ
160 冷却機構
164 第1レンズ保持部
165 第2レンズ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燐酸と希釈液を混合してなる処理液を貯留しつつ、この処理液中に基板を浸漬して処理を行う処理槽と、
処理液を加熱する加熱手段と、
処理液に希釈液を補充する補充手段と、
処理液の吸光特性を測定することで処理液の濃度を検出する濃度検出手段と、
その濃度検出手段による検出濃度が設定濃度に近づくように前記補充手段を操作する濃度制御手段と、
を備えた基板処理装置であって、前記濃度検出手段は、
前記処理液を内部に導入して流通させる光透過部と、
前記光透過部に所定の波長の光を照射する発光部と、
前記発光部からの光を前記光透過部を介して受光する受光部と、
前記発光部と前記光透過部との間に設けられ、前記発光部から発光された光を前記光透過部に集光させる第1のレンズと、
前記光透過部と前記受光部との間に設けられ、前記発光部から発光され前記光透過部を通過した光を前記受光部に集光する第2のレンズと、
前記第1レンズ又は第2レンズの少なくともいずれかを冷却する冷却機構と、を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記第1のレンズを保持する第1レンズ保持部と、前記第2のレンズを保持する第2レンズ保持部とを備えると共に、前記冷却機構が、前記第1レンズ保持部又は第2レンズ保持部の少なくともいずれかを介して、前記冷却を行うものである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記第1レンズ保持部又は第2レンズ保持部に設けられた流路と、その流路に冷却用流体を供給する手段と、を備える請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記流路は、前記第1レンズ又は第2レンズの周囲の全部又は一部を囲むように、前記第1レンズ保持部又は第2レンズ保持部に設けられている請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1レンズ保持部と第2レンズ保持部とを支持するベース部を備えると共に、そのベース部に冷却機構が設けられている請求項2〜4いずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理液の温度を検出する温度検出手段と、その温度検出手段による検出温度が設定温度に近づくように前記加熱手段を操作する温度制御手段と、を更に備える請求項1〜5いずれかに記載の基板処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51334(P2013−51334A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189159(P2011−189159)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】