説明

報知装置

【課題】車両に後付けで装着可能で、車両システムの起動状態を乗員に案内する報知装置を提供する。
【解決手段】車両の多重通信システムに後付で組み込まれて、電気自動車用の駆動システム又は電気モータとエンジンとを制御するハイブリッド用の駆動システムが起動している状態を乗員に知らせる報知装置1であって、多重通信システムに接続される接続部10と、駆動システムが起動している状態を乗員に知らせる出力部40と、接続部10からの多重通信システムで送信されている信号に基づいて駆動システムの起動に関する情報を取得し、この情報に基づいて出力部40を制御する制御部50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の多重通信システムに後付けで取付可能で、電気自動車用の駆動システム又は電気モータとエンジンとを制御するハイブリッド用の駆動システム(以下、ハイブリッドシステムと呼ぶ。)が起動している状態を乗員に知らせる報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の駆動方式として、電気モータとガソリンエンジンとを制御するハイブリッドシステムを搭載した車両が普及している。
このような車両では、ハイブリッドシステムを起動した後、例えば車両の始動直後や車両停止時にガソリンエンジンが停止している状態が発生する。この状態ではエンジン音や振動がなくシステムが起動したかどうか分かりにくい。また、帰宅時に荷物の積み下ろし等で車外にいるとエンジン音も排ガスも無い為、システムが終了しているのかどうか車外から全く分からない。エンジン音やその振動が発生していないときでも、車両のハイブリッドシステムが起動していること、つまり電気モータだけで動作できる状態であることをドライバに知らせるために、メータ装置のディスプレイにインジケータ、例えばマークを表示する表示手段や、ハイブリッドシステムを起動させた際に所望の音声等をスピーカから流す出力手段が設けられている場合もある。以下、表示手段と出力手段とを報知手段と総称する。
【0003】
特許文献1には電気自動車が開示されており、この電気自動車では起動時に起動音がスピーカから流れるようにしている(特許文献1の段落[0004])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010―252420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の報知手段はハイブリッドシステムを搭載した車両及び電気自動車の起動状態をドライバへ案内するが、別の報知手段を車両に後付けすることができれば、車両のシステムの起動状態の認識率を一層向上させることが期待できる。
【0006】
そこで、本発明は、車両に後付けできて、車両システムの起動状態を乗員に案内する報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、車両の多重通信システムに後付けで組み込まれて、電気自動車用の駆動システム又は電気モータとエンジンとを制御するハイブリッド用の駆動システムが起動している状態を乗員に知らせる報知装置であって、多重通信システムに接続される接続部と、駆動システムが起動している状態を乗員に知らせる出力部と、接続部からの多重通信システムで送信されている信号に基づいて駆動システムの起動に関する情報を取得しこの情報に基づいて出力部を制御する制御部と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両側の駆動システムの起動表示用の報知手段だけでは報知効果が不足する場合であっても、簡単に後付けできるので、ドライバにおける車両の駆動システムの起動状態の認識率を一層向上させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る報知装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る報知装置を組み付けた車両の車室内を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る多重通信システムのブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る照明装置の平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る照明装置の分解図である。
【図6】本発明の実施形態に係る照明装置を取り付けたコンソールにおける図4のA−A線に沿った部分断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る報知装置1のブロック図である。図2は報知装置1を組み付けた車両100の車室R内を示す斜視図である。図2では報知装置1を破線で表している。
【0011】
報知装置1は、電気モータとガソリンエンジンとを制御するハイブリッドシステムが起動している状態を乗員に知らせる。このため報知装置1は図に示すように第1接続部10と第2接続部20と第3接続部30と出力部40と制御部50とスイッチ部60とを備えている。
【0012】
第1接続部10は、多重通信システムに接続されて、多重通信システムに伝送される信号を制御部50へ送る。ここで、図3は本実施形態に係る多重通信システム200のブロック図である。多重通信システム200は、複数の電子計算装置としてのECU(Electronic Control Unit)がバス210を介して連結されている。
【0013】
ECUとして、図に示すように、エアバッグ装置制御用のエアバッグECU221、計器類の表示などを制御するメータECU222、エアコンを制御するエアコンECU223、ハイブリッドシステム用のHV ECU224、ガソリンエンジン制御用のエンジンECU225などがバス210に接続されている。なお、図示を省略するが、多重通信システム200には他のECUも設けられている。
【0014】
これらの各ECUは、伝送信号から必要な情報を取り出し、接続された機器を制御する。例えば、メータECU222は、HV ECU224からのハイブリッドシステムが起動していることを知らせる信号に基づいて、ハイブリッドシステムの起動の状態を表示するようにメータ装置のディスプレイを制御する。ハイブリッドシステムの起動の状態は、インジケータ或いはマーク等として表示される。駆動システムの起動状態用の表示手段と駆動システム起動時にビープ音を出力する出力手段、つまり報知手段が車両100に予め設けられている。各ECUは伝送信号に含まれる情報を識別するIDに基づいて必要な情報であるかを判断する。このような多重通信システム200が予め車両100に搭載されており、既設の多重通信システム200に報知装置1が組み込まれる。
【0015】
本実施形態では、バス210に各ECUを接続するためのコネクタの空きスロット、例えば多重通信システムを伝送する信号を取り出すことができる読み出し専用の空きスロットに第1接続部10が接続される。なお、第2接続部20は給電用のバッテリに接続され、第3接続部30はアースに接続される。
【0016】
出力部40は、ハイブリッドシステムが起動している状態を乗員に報知する。本実施形態では、出力部40はシフトレバー110(図2)の基部を照らす照明装置40Aとして構成されている。ここで、図4は照明装置40Aの平面図で、図5は照明装置40Aの分解図、図6は照明装置40Aを取り付けたコンソール120(図2)における図4のA−A線に沿った部分断面図である。
【0017】
照明装置40Aは、基板41と、複数の光源装置42と、導光板43と、を備えている。基板41は平面視の輪郭が矩形状に形成され、面の中央領域に貫通した開口41Aが形成されている。この開口41Aにはシフトレバー110が通るので、シフトレバー110の移動を許容するように大きさが選定されている。この基板41上の四隅に近接した位置のそれぞれに、光源装置42が配設される。これらの光源装置42と開口41Aとの間の基板41上を覆うように導光板43が配設されている。
【0018】
各光源装置42は、例えば3色のLEDをそれぞれ備えている。これらのLEDは後述する制御部50によって発光時間や色が制御される。制御部50からの配線を束ねたコネクタが図4の破線で示す四角領域Sに固定される。各コネクタは二つの光源装置42に対するワイヤーハーネスを基板上の配線と連結する。つまり、コネクタは基板上に構成された配線(図示を省略する。)を介して各光源装置42に電気的に接続される。
【0019】
導光板43は、中央領域が貫通した開口43Aを有するリング状部材として形成されている。導光板43の開口43Aは、基板41の開口41Aと同様に、シフトレバー110が通るので、シフトレバー110の移動を許容するように大きさが選定されている。開口43Aを形成する内側の縁は円形に平面視の輪郭が形成されている。導光板43は、外側の縁が部分的に外側へ突出して凸部43Bを成す。各凸部43Bは光源装置42と対向する面43C、つまり光入射面を有する。これらの凸部43Bは円形の開口43Aの中心まわりに等角度間隔、つまり90度置きに設けられている。このような導光板43は例えば透光性の樹脂材料によって構成されている。
【0020】
図6に示すように、照明装置40Aは、例えばシフトレバー110を配設したコンソール120(図2)の上面部材121の上に、接着テープ48を介して取り付けられ、さらにカバー部材122で覆われる。この際、導光板43の一部がカバー部材122からシフトレバー110側へ突き出る。この突き出た部分が発光し、乗員に視認される。なお、図6ではコンソール120の上面部材121とカバー部材122とはそれぞれ一部だけを表し、それらの他の構成部分の表示を省略している。
【0021】
制御部50は、多重通信システム200で送信されている信号に基づいて下記の表1に示すように、照明装置40Aを制御する。具体的には、本実施形態に係る報知装置1では、制御部50がインフォメーションモードで照明装置40Aを動作させる場合に下記(1)〜(2−4)の車両使用状況に応じた制御を行い、このようなインフォメーションモードに代えてイルミネーションモードで照明装置40Aを動作させる場合に下記(3)の車両使用状況に依存しない制御を行う。ここで、車両使用状況とは、車両100の駆動システムの起動状態だけでなく、走行状態を含む。
【0022】
以下、照明装置40Aに対する各制御例について詳述する。
【表1】

【0023】
(1)乗降時
ドライバが乗降する際、つまりハイブリッドシステムを起動或いは終了させる際、制御部50はシフトレバー110の基部まわりで光が回転するよう各光源装置42を例えば時計周りに順番に所定時間発光するように制御する。制御部50はHV ECU224からのハイブリッドシステムの起動を表す“Ready”の信号の検出を契機にこの発光モードを実行する。
【0024】
(2)走行時
(2−1)停車時
車両100が停止している状態で、制御部50はシフトレバー110の基部まわりをブルーの光が点滅して照らすよう各光源装置42を制御する。制御部50は、HV ECU224からの“Ready”の信号とメータECU222からの車速0km/hの信号の検出を契機に、この発光モードを実行する。
【0025】
(2−2)モータ走行時
車両100が電気モータを駆動して走行している状態で、制御部50はシフトレバー110の基部まわりをライトブルーの光が回転点灯して照らすよう各光源装置42を制御する。制御部50はHV ECU224からの“Ready”の信号とメータECU222からの車速5km/hの信号の検出を契機にこの発光モードを実行する。
【0026】
(2−3)低速エンジン走行時(低速回転)
車両100がガソリンエンジンを駆動して走行している状態で、制御部50はシフトレバー110の基部まわりをイエローの光が回転点灯して照らすよう各光源装置42を制御する。制御部50は、HV ECU224からの“Ready”の信号と、エンジンECU225からのエンジン回転数、例えば600回転以上の信号と、メータECU222からの車速5km/h以上の信号との検出を契機にこの発光モードを実行する。
【0027】
(2−4)高速エンジン走行時(高速回転)
車両100がガソリンエンジンを駆動して走行している状態で、制御部50は、シフトレバー110の基部まわりで紫色の光が右回りに回転して基部を照らすよう各光源装置42を制御する。制御部50は、HV ECU224からの“Ready”の信号と、エンジンECU225からのエンジン回転数、例えば3000回転以上の信号と、メータECU222
からの車速5km/h以上の信号の検出を契機にこの発光モードを実行する。
【0028】
(3)イルミネーションモード選択時
制御部50は、シフトレバー110の基部まわりを光が変化する、例えばシフトレバー110を照らす色が所定時間毎に9色の内いずれかに変わるように各光源装置42を制御する。制御部50は、イルミネーションモードが選択されているときにこの発光モードを実行する。
【0029】
このような制御を行うため、制御部50は図7に示すように入力部51と電源部52と処理部53とLED駆動部54とを備えている。
入力部51は、第1接続部10及びスイッチ部60からの信号用のインターフェースである。この入力部51を介して受信した信号を処理部53が解析する。具体的には、処理部53は、照明装置40Aのモード、つまりインフォメーションモード、イルミネーションモードの何れかが選択されているかを後述のスイッチ部60からの信号に基づいて判断する。また、処理部53は、多重通信システム200を流れる信号から、所定の信号をそのIDに基づいて抽出して車両100の使用環境等に応じて照明装置40Aを駆動するためのモード、つまり上記(1)〜(3)の何れかの制御を選択する。さらに、処理部53は、判別した車両環境に応じて各光源装置42が所定の発光動作を行うように、当該光源装置42を制御するLED駆動部54へ所望の信号を送る。
【0030】
スイッチ部60をドライバなどの乗員が操作することで、インフォメーションモード、イルミネーションモードの何れかが選択される。
【0031】
第1接続部10と第2接続部20と第3接続部30と出力部40と制御部50とスイッチ部60とは、図1に示すように、それぞれワイヤーハーネスHを介して接続されている。
【0032】
このように構成された報知装置1は、ハイブリッドシステムが起動している状態をメータ装置で表示等を行う報知手段を予め備えた車両に後付けされる。組付手順としては、例えば、制御部50をインストルメントパネル130(図2)裏面側に配置し、スイッチ部60をインストルメントパネル表側、つまり車両室内に現れるように配置し、さらに照明装置40Aをシフトレバー110の基部まわりに配置する。そして、インストルメントパネル130の裏側で、第1接続部10を既設の多重通信システム200、第2接続部20をバッテリ、第3接続部30をアースに接続することで、車両100への取り付けが完了する。なお、組付順序はこれに限定されないことは勿論である。
【0033】
本実施形態に係る報知装置1によれば、報知手段を予め備えた車両100に後付けできるので、ドライバにおける車両100の駆動システムの起動状態の認識率を一層向上させることが期待できる。
【0034】
次に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
A.第1変形例
第1変形例に係る報知装置は、前述の実施形態に係る報知装置1に対して出力部の構成が異なるが、他の構成は同様である。
第1変形例の出力部は、前述の照明装置40Aに代えて、ディスプレイで構成されている。このディスプレイは、例えばカーナビゲーションシステムのディスプレイの脇に設置されて、ハイブリッドシステムが起動している状態を、文字で乗員に案内する。また、ディスプレイは、文字に代えて模様や色の組み合わせで表示してもよい。
【0035】
B.第2変形例
第2変形例に係る報知装置は、前述の実施形態に係る報知装置1に対して出力部の構成が異なるが、他の構成は同様である。
第2変形例の出力部は、前述の照明装置40A及びディスプレイに代えて、スピーカで構成されている。このスピーカは、例えばハイブリッドシステムが起動している状態を、音声で乗員に案内する。また、スピーカは、音声に代えてメロディを奏でてもよい。
【0036】
C.第3変形例
第3変形例に係る報知装置は、前述の実施形態に係る報知装置1に対して出力部の構成が異なるが、他の構成は同様である。
第3変形例の出力部は、前述の照明装置40A、ディスプレイ及びスピーカの組み合わせで構成されている。例えば、照明装置、ディスプレイ及びスピーカの内、少なくとも何れか2つを利用して構成される。
【0037】
以上説明したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施できる。
上記説明では、ハイブリッドシステムの車両100を前提に説明したが、電気モータだけで走行する電気自動車にも本発明を適用することができる。この場合、電気自動車用の駆動システムの起動状態を、車両に既設の多重通信システムから所定の信号を入力して判断し、乗員に駆動システムの起動状態を出力部によって知らせることができる。
【0038】
また、出力部は上記照明装置、ディスプレイ及びスピーカに限定されるものではなく、乗員が五感を使って認識することができる装置を本発明における出力部として利用することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 報知装置
10 第1接続部
20 第2接続部
30 第3接続部
40 出力部
40A 照明装置
41 基板
41A 基板の開口
42 光源装置
43 導光板
43A 導光板の開口
43B 導光板の凸部
43C 導光板の光入射面
50 制御部
51 入力部
52 電源部
53 処理部
54 LED駆動部
60 スイッチ部
100 車両
110 シフトレバー
120 コンソール
122 カバー
200 多重通信システム
210 バス
221〜225 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の多重通信システムに後付けで組み込まれて、電気自動車用の駆動システム又は電気モータとエンジンとを制御するハイブリッド用の駆動システムが起動している状態を乗員に知らせる報知装置であって、
上記多重通信システムに接続される接続部と、
上記駆動システムが起動している状態を上記乗員に知らせる出力部と、
上記接続部からの上記多重通信システムで送信されている信号に基づいて上記駆動システムの起動に関する情報を取得し、上記情報に基づいて上記出力部を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする、報知装置。
【請求項2】
前記多重通信システムから信号を受け取るだけの片方向通信を行うことを特徴とする、請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記接続部が、前記多重通信システムのコネクタの空スロットに接続できることを特徴とする、請求項1又は2に記載の報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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