説明

塗布具付き化粧料容器

【課題】 使い勝手の向上や、携帯性の向上を図ることができる塗布具付き化粧料容器を提供する。
【解決手段】 塗布具付き化粧料容器10は、栓部15に塗布具16を軸線17方向に移動自在に備え、塗布具16に、塗布具16の表面18を加熱可能なニクロム線19を内蔵し、栓部15に、ニクロム線19を発熱するための電源20を備えるとともに、電源20とニクロム線19とを接続又は非接続状態に切り換えるオン・オフスイッチ22を備え、栓部15で開口部13を閉じた際に、オン・オフスイッチ22が自動的にオフになるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料を容器本体に収納し、容器本体の開口部を開閉する栓部を備え、この栓部に塗布具を備えた塗布具付き化粧料容器に係り、さらに詳しくは、塗布具の内部に発熱体を内蔵することで、使い勝手の向上や、携帯性の向上が図れるように改良した塗布具付き化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料容器のなかには、容器本体に化粧料を入れ、この容器本体の開口部を閉じる栓に塗布具を備えたものがある。
この化粧料容器によれば開口部を栓で閉じたときに、塗布具を化粧料内に漬けた状態に保ち、栓を開口部から外したときに、塗布具に化粧料を付着させた状態で、塗布具を容器本体内から取り出すことができる。
【0003】
ところで、一般的に、化粧料を塗布する場合には、化粧料の粘度は低い方が望ましく、また、化粧料を塗布した後の耐久性(以下、「化粧持ち」と表現する)という点では粘度は比較的高い方が望ましい。
このような化粧料の特性を満たすために、例えば化粧料中に気散成分を配合している。すなわち、化粧料中に気散成分を含ませた状態では、化粧料の低粘度を保つことで塗布のしやすさが確保でき、化粧料を塗布した後は、気散成分が揮発して乾燥するので化粧料が固化して化粧持ちを確保できる。
【0004】
しかし、この方法では、塗布する化粧料の粘度を、塗布性、及び化粧持ち性(耐久性)の両方を満たすように設定するために、それぞれの特性を十分に発揮させることは難しいとされていた。
【0005】
一方、化粧料の塗布具のなかには、塗布具に発熱体を内蔵したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−192037号公報
【0006】
この発熱体を備えた化粧料塗布具は、取っ手にオン・オフスイッチを設け、このスイッチをオンにすることにより、発熱体で塗布具を加熱するものである。
この発熱体を備えた塗布具を使用すれば、塗布具を加熱した状態で、塗布具に化粧料を付着させる際に、化粧料を融解して化粧料を低粘度化してから塗布することができ、塗布後には化粧料を自然冷却して高粘度化にさせることで塗布性と耐久性を満たすことが可能になっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の化粧料塗布具は、化粧料を収納する収納容器(化粧料容器)とは独立したものである。このため、特許文献1の化粧料塗布具を使用する際には、まず化粧料を収納する収納容器(化粧料容器)から栓を外して、化粧料容器の開口部を開ける。つぎに、化粧料塗布具のキャップを外し、塗布具のオン・オフスイッチをオンにして、発熱体で塗布具を加熱する。
【0008】
ついで、加熱した塗布具を開口部から化粧料容器内に差し込み、容器内の化粧料に塗布具を付着させる。そして、付着させた化粧料を塗布具で塗布する。
このように、化粧料塗布具が、化粧料容器と独立しているので、化粧料塗布具を使用するときには、化粧料塗布具と化粧料容器の両方を使用可能状態にする必要があり、そのために使い勝手の観点から改良の余地が残されていた。
また、化粧料塗布具と化粧料容器との両方が必要になり、持ち運びの際に携帯性の観点から改良の余地が残されていた。
【0009】
この発明は、使い勝手の向上や、携帯性の向上を図ることができる塗布具付き化粧料容器を提供して、上述した全ての問題点を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、化粧料を収納し、この化粧料を取り出すための開口部を備えた容器本体と、この開口部を開閉する栓部と、この栓部に備え、開口部を栓部で閉じた際に容器本体内の化粧料に漬かり、開口部から栓部を外した際に前記化粧料を所望箇所に塗布可能な塗布具とからなる塗布具付き化粧料容器において、前記塗布具に、塗布具の表面を加熱可能な発熱体を内蔵し、前記栓部に、前記発熱体を発熱するための電源を備えるとともに、この電源と発熱体とを接続又は非接続状態に切り換えるオン・オフスイッチを備え、前記栓部で前記開口部を閉じた際に、前記オン・オフスイッチが自動的にオフになるように構成したことを特徴とする。
【0011】
化粧料容器の栓部に塗布具を備え、この塗布具に発熱体を内蔵した。よって、化粧料容器に、発熱体を内蔵した塗布具を一体に組み込むことができるので、持ち運びが容易になる。
【0012】
また、化粧料容器の栓部に塗布具を備え、この塗布具に発熱体を内蔵した。
これにより、栓部を開口部から外した際に、塗布具に化粧料を付着させることができるようになる。
さらに、塗布具を化粧料から引き上げる前に、オン・オフスイッチをオンにすると、塗布具に付着した化粧料を融解することができ、化粧料の低粘度化を図ることができる。
これにより、低粘度化された化粧料を、塗布具に容易に付着させることができる。
【0013】
化粧料を低粘度化することで、化粧料の塗布性を高めて睫毛に良好に塗布することもできる。
加えて、睫毛に塗布された化粧料は自然冷却して高粘度化するので、化粧持ち(塗布後の耐久性)を高めることができる。
【0014】
さらに、栓部で前記開口部を閉じた際に、オン・オフスイッチが自動的にオフになるように構成した。すなわち塗布具が未使用の間は、オン・オフスイッチを確実にオフに切り換え、スイッチの切り忘れを防止して、使い勝手をさらに向上させた。
また、万が一、オン・オフスイッチを確実にオフに切り換えることを忘れてしまった場合でも、化粧料を長時間加熱することを防ぎ、長時間の加熱による化粧料の劣化を防ぐことができる。
【0015】
請求項2は、前記オン・オフスイッチは、オンのときには、前記塗布具が前記栓部側から離れる方向に移動し、オフのときには、塗布具が栓部側に近づく方向に移動するように構成され、前記栓部で前記開口部を閉じた際に、開口部で塗布具が栓部側に近づく方向に押圧して、前記オン・オフスイッチが自動的にオフになることを特徴とする。
【0016】
開口部で塗布具を押圧してオン・オフスイッチをオフにするように構成したので、開口部を栓部で閉じたとき、オン・オフスイッチを確実にオフにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、化粧料容器に、発熱体を内蔵した塗布具を一体に組み込むことで、持ち運びが容易になり、携帯性の向上を図ることができるという利点がある。
【0018】
さらに、請求項1に係る発明では、化粧料容器の栓部に塗布具を備え、この塗布具に発熱体を内蔵することで、低粘度化された化粧料を塗布具に簡単に付着させることが可能になり、使い勝手の向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付図に基づいて、本発明に係る棒状化粧料容器の一実施の形態を詳説する。
図1は本発明に係る塗布具付き化粧料容器(第1実施の形態)の蓋部を外した状態を示す断面図、図2は本発明に係る第1実施の形態を示す断面図、図3は本発明に係る第1実施の形態の塗布具本体を示す側面図、図4は本発明に係る第1実施の形態の塗布具本体を示す分解図、図5は本発明に係る第1実施の形態の塗布具本体を示す平面図である。
【0020】
図1〜図2に示すように、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10は、化粧料(以下、「マスカラ」として説明する)12を収納し、このマスカラ12を取り出すための開口部13を備えた容器本体11と、この開口部13を開閉する栓部15と、この栓部15に備え、開口部13を栓部15で閉じた際に容器本体11内のマスカラ12に漬かり、開口部13から栓部15を外した際にマスカラ12を所望箇所(以下、「睫毛」として説明する)に塗布可能な塗布具16とからなる。
【0021】
塗布具付き化粧料容器10は、栓部15に塗布具16を軸線17方向に移動自在に備え、塗布具16に、塗布具16の表面18を加熱可能な発熱体(以下、「ニクロム線」として説明する)19を内蔵し、栓部15に、ニクロム線19を発熱するための電源20を備えるとともに、この電源20とニクロム線19とを接続又は非接続状態に切り換えるオン・オフスイッチ22を備え、栓部15で開口部13を閉じた際に、オン・オフスイッチ22が自動的にオフになるように構成したものである。
【0022】
容器本体11は、内部にマスカラ12を収納可能で、上端に開口部13を備え、開口部13近傍にシール材24を備えており、開口部13の外周には栓部15が螺合するネジ部13aが形成されている。
シール材24は、開口部13を栓部15で閉じた際に、塗布具16の基部外周16aに密着して、容器本体11内のマスカラ12が開口部13側に漏れ出すことを防いでいる。
【0023】
オン・オフスイッチ22は、塗布具16を栓部15から離れる方向に付勢する圧縮ばね26を備えている。
この圧縮ばね26の付勢力で塗布具16を栓部15側から離れる方向に移動することにより、オン・オフスイッチ22がオンとなり、塗布具16が圧縮ばね26の付勢力に抗して栓部15側に近づく方向に移動するで、オン・オフスイッチ22がオフとなる。
【0024】
このオン・オフスイッチ22によれば、栓部15で開口部13を閉じた際に、開口部13で塗布具16が栓部15側に近づく方向に押圧され、オン・オフスイッチ22が自動的にオフになる。
開口部13で塗布具16を押圧してオン・オフスイッチ22をオフにするように構成したので、開口部13を栓部15で閉じたとき、オン・オフスイッチ22を確実にオフにすることができる。
【0025】
塗布具16は、先端部に塗布具本体28を備える。塗布具本体28は、図4に示すように、筒状のカバー29と、カバー29内に内蔵するとともに、先端で折り曲げられたニクロム線19(図3、図5参照)と、折り曲げられたニクロム線19の間の隙間に配置した仕切壁31(図3、図5参照)と、仕切壁31の基部に備えたベース32とを備えている。
【0026】
仕切壁31の両側には、ニクロム線19を折り曲げた状態に配置し、ベース32内にニクロム線19を貫通させ、この状態で、ニクロム線19や仕切壁31をカバー29内に矢印Aのように組み込んで、図3及び図5に示すように、カバー29内にニクロム線19を内蔵している。
【0027】
図3及び図5に示すように、カバー29は、表面18に、半円弧状の溝34を、一定間隔を存して複数個形成することで、溝34にマスカラ12(図1、図2参照)を良好に付着させられるようにしている。
【0028】
溝34と溝34との間には突起部36が備えられており、この突起部36は、マスカラ12を睫毛(図示せず)に塗布する際に、睫毛をガイドする役割を果たす。
これにより、溝34内に睫毛を配置することが可能になり、溝34に付着したマスカラ12を睫毛に良好に塗布することができるようになる。
【0029】
以上説明したように、塗布具付き化粧料容器10の栓部15に塗布具16を備え、この塗布具16にニクロム線19を内蔵したので、化粧料容器10に、発熱体としてのニクロム線19を内蔵した塗布具16を一体に組み込めるようになり、化粧料容器10の持ち運びが容易になる。
【0030】
また、化粧料容器10の栓部15に塗布具16を備え、この塗布具16にニクロム線19を内蔵したので、栓部15を開口部13から外した際に、塗布具16にマスカラ12を自動的に付着させることができる。
【0031】
さらに、塗布具16をマスカラ12から引き上げる前に、オン・オフスイッチ22をオンにすることで、塗布具16に付着したマスカラ12を融解するので、マスカラ12の低粘度化を図ることができる。
これにより、低粘度化されたマスカラ12を塗布具16に容易に付着させることができる。
【0032】
マスカラ12を低粘度化することで、マスカラ12の塗布性を高めて睫毛に良好に塗布することができ、さらに睫毛に塗布されたマスカラ12は自然冷却して高粘度化するので、化粧持ち(塗布後の耐久性)を高めることができる。
【0033】
ついで、栓部15で開口部13を閉じた際に、オン・オフスイッチ22が自動的にオフになるように構成した。
これにより、塗布具16が未使用の間は、オン・オフスイッチ22を確実にオフに切り換えることができるので、使い勝手がさらに向上する。
【0034】
さらに、万が一、オン・オフスイッチ22を確実にオフに切り換えることを忘れてしまった場合でも、マスカラ12を長時間加熱することを防ぐことができ、長時間の加熱によるマスカラ12の劣化を防ぐことができる。
【0035】
つぎに、第2、第3実施の形態の塗布具付き化粧料容器を図6〜図7に基づいて説明する。なお、第2、第3実施の形態の塗布具付き化粧料容器において、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10と同一類似部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図1〜図5に示す、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10のオン・オフスイッチ22に圧縮ばね26を備え、栓部15で開口部13を閉じた際に、圧縮ばね26の付勢力に抗してオン・オフスイッチ22が自動的にオフになり、栓部15を開口部13から外した際には、圧縮ばね26の付勢力でオン・オフスイッチ22が自動的にオンになるように構成したものを例示した。
【0037】
図6(A)に示すように、第2実施の形態の塗布具付き化粧料容器40は、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10の圧縮ばね26に代えて環状の操作部41を備えた。
この環状の操作部41は、栓部15の外周に、軸線17方向に移動自在に設けられている。
【0038】
図6(B)に示すように、操作部41を軸線17に沿って矢印の方向に移動することで、操作部41に連動して塗布具16を栓部15側から離れる方向に移動させるので、オン・オフスイッチ22(図1、図2参照)が自動的にオンとなる。
【0039】
図6(C)に示すように、栓部15で開口部13を閉じた際に、操作部41を軸線17に沿って矢印の方向に移動することで、操作部41に連動して塗布具16が栓部15側に近づく方向に移動するようにした。
これにより、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10と同様に、栓部15で開口部13を閉じた際には、オン・オフスイッチ22(図1、図2参照)が自動的にオフとなるようにした。
【0040】
第2実施の形態の塗布具付き化粧料容器40によれば、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10と同様の効果が得られる。
【0041】
図7に示す、第3実施の形態の塗布具付き化粧料容器50は、第2実施の形態の塗布具付き化粧料容器40に備えた環状の操作部41に代えて、操作片51を備えたものである。
この操作片51を軸線17に沿って移動することで、操作片51に連動して塗布具16(図6(A),(B)参照)を栓部15側から離れる方向に移動すると、オン・オフスイッチ22(図1、図2参照)が自動的にオンとなる。
【0042】
一方、栓部15で開口部13を閉じた際に、操作片51を軸線17に沿って矢印の方向に移動することで、操作片51に連動して塗布具16(図6(A),(B)参照)が栓部15側に近づく方向に移動するようにした。
これにより、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10と同様に、栓部15で開口部13を閉じた際に、オン・オフスイッチ22(図1、図2参照)が自動的にオフとなる。
【0043】
第3実施の形態の塗布具付き化粧料容器50によれば、第1実施の形態の塗布具付き化粧料容器10と同様の効果が得られる。
【0044】
前記実施の形態では、化粧料としてマスカラを例に説明したが、これに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る塗布具付き化粧料容器(第1実施の形態)の蓋部を外した状態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施の形態の塗布具本体を示す側面図である。
【図4】本発明に係る第1実施の形態の塗布具本体を示す分解図である。
【図5】本発明に係る第1実施の形態の塗布具本体を示す平面図である。
【図6】(A)〜(C)は本発明に係る塗布具付き化粧料容器(第2実施の形態)を示す側面図である。
【図7】本発明に係る塗布具付き化粧料容器(第3実施の形態)を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
10,40,50…塗布具付き化粧料容器
11…容器本体
12…マスカラ(化粧料)
13…開口部
15…栓部
15…塗布具
18…塗布具の表面
19…ニクロム線(発熱体)
20…電源
22…オン・オフスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収納し、この化粧料を取り出すための開口部を備えた容器本体と、
この開口部を開閉する栓部と、
この栓部に備え、開口部を栓部で閉じた際に容器本体内の化粧料に漬かり、開口部から栓部を外した際に前記化粧料を所望箇所に塗布可能な塗布具とからなる塗布具付き化粧料容器において、
前記塗布具に、塗布具の表面を加熱可能な発熱体を内蔵し、
前記栓部に、前記発熱体を発熱するための電源を備えるとともに、この電源と発熱体とを接続又は非接続状態に切り換えるオン・オフスイッチを備え、
前記栓部で前記開口部を閉じた際に、前記オン・オフスイッチが自動的にオフになるように構成したことを特徴とする塗布具付き化粧料容器。
【請求項2】
前記オン・オフスイッチは、オンのとき、前記塗布具が前記栓部側から離れる方向に移動し、オフのとき、塗布具が栓部側に近づく方向に移動するように構成され、
前記栓部で前記開口部を閉じた際に、開口部で塗布具が栓部側に近づく方向に押圧して、前記オン・オフスイッチが自動的にオフになることを特徴とする請求項1に記載の塗布具付き化粧料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−34772(P2006−34772A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221808(P2004−221808)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)