説明

塗布方法、該方法により製造された複合材および該方法に用いられる塗料

【課題】
現場塗装において基材表面に塗り残し、または塗りむらがなく、しかも、基材表面の色や模様等の特徴を損なうことないクリアー塗布液、塗布方法および、該塗布方法を用いた光触媒坦持構造体を提供すること。
【解決手段】
基材表面に無色透明な塗膜を形成する塗布方法において、塗布液として塩基性領域で発色し中性領域で無色になる色素、光触媒酸化チタンからなる塩基性分散体、pH調整剤を含み、塩基性領域にpHを設定するにより塗布液の発色が鮮やかとなり塗装時の塗装ムラ・塗装抜けを視認し易く、塩基性分散体由来のポーラスな膜が、pH調整剤の揮発を妨げず、塗装後の脱色が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場塗装において透明な塗布膜を塗装ムラ、塗装抜け無く塗布することのできるクリア塗料および塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、光の作用により表面の汚れ等を分解する光触媒機能を有する基材が幾つか提案されている。しかし、基材の外観等を損なうことなく光触媒機能を持たせるためには、光触媒機能を有する塗膜は透明性が高く、更に膜厚が薄いので、塗布済み部と未塗布部分の区別が付かず、塗り残し部分の発生、および重ね塗り部分が多く薬剤使用量の増加からくる塗りムラ等の問題が生じていた。
【0003】
これに対して、液中に発色染料と光触媒機能を有する物質を共存させることにより、塗布時は発色染料の着色程度を確認することで塗り残し、塗りムラを防ぎ、塗布後は光触媒分解作用により染料を分解させ、無色透明な膜を形成させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また一般的なクリアの視認性を高める技術として、液中にpHに依存して発色、脱色をする染料を添加し、塗布時は発色しpHの変化と共に経時で脱色する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3598274号公報
【特許文献2】特開平2−187484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の染料を光触媒分解により脱色する方法は、日当たりの良い場所と、日陰で光量が異なるので光触媒効果に差が生じ、消色程度に差ができ、塗装部分がムラに見える等の問題があった。
【0007】
また、特許文献2においては、液pHを使用しているエマルションに依存しているため、染料が十分に発色するpH領域には入らず視認性がかならずしも良好とはいえない。さらにアミン等の塩基性物質を添加しpHを染料が十分な発色領域に設定した場合、形成膜中にアミンが取り込まれ染料の脱色領域までpHが到達するのに長時間を有してしまう。加えて脱色後においても降雨等により水が塗膜に接触した場合、塗膜に残存したアミンが再発色を引き起こすこともあった。
【0008】
本発明は、特に、現場塗装において基材表面に塗り残りし、または塗りムラがなく、しかも基材表面の色や模様等の特徴を損なうことない塗布液、塗装方法および当該塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、pH指示薬と分散体を組み合わせることにより、上記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明では、基材表面に無色透明な塗膜を形成する塗布方法において、pHに依存して呈色する色素、金属酸化物微粒子、マトリックス成分、pH調整剤を含み、該色素の発色領域にpH調整することにより塗布液の発色が鮮やかとなり、塗布時の塗装ムラ・塗装抜けを視認し易く、金属酸化物微粒子由来のポーラスな膜がpH調整剤の揮発を妨げず塗装後の脱色が容易になる塗布液および塗装方法を可能にした。
【0011】
前記色素が塩基性領域で発色し、中性領域で無色になることで、鮮やかに発色し、また、塗装後の脱色が容易となる塗布液を得ることができ、視認性を向上することができる。 本発明の塗布液は、マトリックス成分量を50%以下にすることでpH調整剤の揮発を妨げないことができる。
【0012】
また本発明では金属酸化物微粒子として酸化チタンなどの光触媒粒子とを用いることで、塗り残し、塗り継ぎムラのない光触媒防汚性能を有する塗布液を得ることができる。また、本発明の好ましい態様によれば、前記pH調整剤を安定に水に溶解するアミンやアンモニアにすることで、塗布液をより安定して発色させ、視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法を用いることにより、塗布液の発色がはっきりと確認できることで、基材の外観を損なうことな、塗装ムラ・塗装抜け無く塗装をすることができる。更に塗布液の発色は直ちに消失することから塗装後外観不良、降雨時の発色の不具合も回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用される塗布液はいかなる目的で基材表面に塗布される塗布液でも使用することができる。その目的として、具体的には、有機または無機系の被膜を形成するための液状被膜形成材料、各種プライマー処理(フィルム/シート類の積層、あるいは多層コートにおいて層間の密着性向上などの目的で下層表面を処理すること)、抗菌、生体親和化などの表面改質・活性化・機能化処理、を例示することができる。中でも、基材表面に光触媒機能を持たせるための処理において好適に使用することができる。
【0015】
本発明において、塗布液はpHに依存して呈色する色素を含有する必要がある。具体的には酸性〜中性色が無色で塩基性色が有色であるpH指示薬、例えばフェノールフタレイン、チモールフタレイン、ブロムカルボキシチモールフタレイン、o−クレゾールフタレイン、シアニン、α―ナフトールフタレイン、p−ニトロフェニール、それらの混合物等を使用することができ、好ましくはフェノールフタレイン、ブロムカルボキシチモールフタレインである。フェノールフタレインおよびブロムカルボキシチモールフタレインは、pH9以上で発色し、pH9未満で無色となるので、塗装後の外観不良が起こりにくい。
【0016】
塗布液中、膜形成後にpH調整剤の揮発を妨げないポーラスな構造となるように、金属酸化物微粒子を用いる。金属酸化物微粒子としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニオブ、および酸化鉄などが挙げられ、1種または2種以上が使用できる。本発明においては、金属酸化物微粒子として後述するような光触媒酸化物を好適に利用することができる。光触媒酸化物と二酸化ケイ素(すなわちシリカ)との組み合わせは、塗布後に形成される膜に防汚機能を付与させることができるので、より好適に利用することができる。
【0017】
光触媒酸化物としては、光触媒活性を有するものであれば特に制限はないが、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、三酸化ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられ、アナタース型酸化チタンが好ましい。
【0018】
シリカとしては、コロイダルシリカを好適に利用することができる。コロイダルシリカには、水に分散させたもの、あるいは、アルコールなどの非水系の有機溶媒に分散したものがあり、両方とも使用可能ではあるが水に分散させたものが望ましい。コロイド粒子の作製方法としては、媒体中でコロイドを形成するものであれば、とくに限定されるものではない。
【0019】
金属酸化物微粒子として、シリカと光触媒酸化物とを配合する場合、シリカと光触媒酸化物の配合比([シリカ]/[光触媒酸化物])は、質量比で0〜100、好ましくは0.5〜50、より好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜30である。100を超えると光触媒の量が少なすぎて十分な防汚効果を発揮できなくなる。
【0020】
前記金属酸化物微粒子の平均粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)での測定における個数平均粒径が0.005〜0.1μm、より好ましくは0.01〜0.05μmであるようにする。0.005μm未満では凝集が激しく均一な分散体を得ることができない。また0.1μm以上では塗膜のバインディング力が低下し塗膜の耐久性を得ることができない。また、塗膜のクリアー性が低下する。
【0021】
前記金属酸化物微粒子成分は塗布液の固形分に対して、50質量%以上100質量%以下であるようにする。好ましい下限値は、60質量%、より好ましくは70質量%、特に好ましくは80質量%である。50質量%未満になるとpH調整剤が揮発するようなポーラスな膜構造とならない。
【0022】
マトリックス成分としては、アクリル、ウレタン、エポキシ等の有機樹脂、シリコーン樹脂、シリコンアルコキシドやチタンアルコキシドなどの金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解縮合物などが挙げられ、溶剤系、水系を問わず1種または2種以上が使用できる。
【0023】
前記マトリックス成分は塗布液の固形分に対して0質量%以上50質量%以下であり、好ましい上限値は40質量%、より好ましくは30質量%である。50%質量を超えるとマトリックス成分がpH調整剤の揮発を阻害し、塗装後の速やかな脱色を妨げることになる。
【0024】
pH調整剤としては水溶液中で塩基性を示すものであれば特に制限が無いが、代表例としてアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられ、トリエタノールアミンが好ましい。
【0025】
塗布液の全固形分濃度は1質量%〜30質量%、より好ましくは2〜10質量%であるようにする。1質量%以下になると塗装時に所定の膜厚とならない。30質量%以上になると形成膜厚が厚くなるためpH調整剤が塗膜中に残りやすくなる。また、塗装時に液だれ、液だまりをおこすことになる。
【0026】
分散媒としては、特に限定されないが、水や有機溶剤を単独で、または、水と有機溶剤との混合溶媒を用いることができる。ここで、好適に利用可能な有機溶剤としては、低級脂肪族アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロパノール、n−ブタノール等、エチレングリコール誘導体としてエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等、ジエチレングリコール誘導体として、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等、が挙げられる。
【0027】
本発明の塗布液は、任意成分として、塗膜や塗布液自体に抗微生物性を付与するための抗菌剤、防カビ剤、防藻剤などの抗微生物剤、塗布液の基材への濡れ性を改善するための界面活性剤、塗膜に耐候性や耐光性を付与するための紫外線吸収剤やラジカル補足剤などを添加しても良い。
【0028】
塗布方法としては、特に限定されず、具体的には、印刷法、シート成形法、スプレー吹き付け法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、刷毛塗装方法、ローラー塗装方法等を例示することができる。形成される被膜の厚さは特に制限されないが、好適に使用できるのは通常0.05μm〜50μmの範囲であり、特に0.1μm〜10μm範囲の厚さが好ましい。
【0029】
本発明の方法により塗布される基材は特に制限がされない。具体的には、建築物や構造物や車輌の外装や内装などが挙げられ、より具体的には、屋根材、瓦、カラートタン、カラー鉄板、窯業系建材、サイディング材、ケイカル板、セメント壁、アルミサイディング、カーテンウォール、塗装鋼板、石材、ALC、タイル、ガラスブロック、サッシ、ビルサッシ、網戸、雨戸、門扉、出窓、天窓、窓枠、トップライト、カーポート、サンルーム、ベランダ、ベランダ手すり、屋根樋、板ガラス、着色ガラス、ガラス用フィルム、太陽熱温水器等の集熱器用カバ−、エアコン室外機、店舗看板、サイン、広告塔、ショーケース、ショーウィンドウ、冷蔵・冷凍ショーケース、シャッタ−、屋外ベンチ、自動販売機、遮音壁、防音壁、道路化粧板、ガードフェンス、桁美装板、トンネル内装板、道路反射鏡、標識板、碍子、保護板、保護膜、料金所、料金ボックス、街灯、道路、舗装路、舗道、プラント外壁、プラント内壁、石油貯蔵タンク、煙突、機械装置、農業用ガラス、ガラス温室、ビニールハウス、テント、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オ−トバイ、自動車用ガラス、キッチン設備部材、浴室設備部材、衛生陶器、陶磁器、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ−ド、換気扇、フィルム、ワッペンなどが挙げられる。
【0030】
これらの基材に、本発明の方法を用いて、先に示した、塗布液を用いて光触媒機能を付加した構造体は、紫外線等により表面の光触媒が励起され、有機物等の汚れ、汚染物質、菌等を分解する能力を有することから、抗菌、防汚、脱臭等の効果を必要とする多くの場面に使用することができる。また、紫外線等の光励起により親水性を呈する構造体も、防汚、防曇等の効果を必要とする多くの場面で使用することできる。この場合、親水性は、表面における水の接触角を指標に計られ、接触角が20度以下、更には10度以下のものが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限られるものでない。用いたpHメーターはメトラートレド社のMP120を使用した。
【0032】
(実施例1)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)を、水を用いて固形分6質量%になるように調整した。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(1)を得た。pHは10.2であった。
【0033】
(実施例2)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア、固形分30%)、水を混合して、光触媒酸化チタンの固形分量が6質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は8質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(2)を得た。pHは10.6であった。
【0034】
(実施例3)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア、固形分30%)、水を混合して、光触媒酸化チタンの固形分量が6質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は9質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(3)を得た。pHは10.5であった。
【0035】
(比較例1)
アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア、固形分30%)に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%添加し塗装液(4)を得た。pHは8.9であった。
【0036】
(比較例2)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア、固形分30%)、水を混合して、光触媒酸化チタンの固形分量が6質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は15質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(6)を得た。pHは10.1であった。
【0037】
塗布液(1)〜(5)をそれぞれ、アクリルシリコン樹脂塗膜の表面にローラーブラシにより塗布し、塗布面の視認性および塗装液の発色消失時間を調べた。塗布後2時間乾燥させ発色が完全に消失したのを確認した後、噴霧器で水を塗装面に噴霧し、塗装面の再発色の確認を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】



【0039】
(実施例4)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で10.0になるように調整し、水を用いて固形分6質量%になるように混合した。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(6)を得た。
【0040】
(実施例5)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で5.0になるように調整し、水を用いて固形分6質量%になるように混合した。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(7)を得た。
【0041】
(実施例6)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で5.0になるように調整し、アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア)を配合液中に液として5%混合し、水を用いて、光触媒酸化チタンとシリカの合計固形分量が6質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は8質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(8)を得た。
【0042】
(実施例7)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で5.0になるように調整し、アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア、固形分30%)を配合液中に液として10%混合し、水を用いて、光触媒酸化チタンとシリカの合計固形分量が6質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は9質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(9)を得た。
【0043】
(実施例8)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で9.0になるように調整し、水を用いて固形分25質量%になるように混合した。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(10)を得た。
【0044】
(実施例9)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で100になるように調整し、水を用いて固形分2質量%になるように混合した。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(11)を得た。
【0045】
(実施例10)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をコロイダルシリカ由来のシリカ/酸化チタンが質量比で8.0になるように調整し、マトリックス成分としてテトラメトキシシランの重縮合物(多摩化学工業社製、Mシリケート51)を最終濃度(シリカ換算)が塗布液の全固形分に対して10質量%となるように混合し、水を用いて、光触媒酸化チタンとコロイダルシリカの合計固形分量が5質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は約6質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(12)を得た。
【0046】
(比較例3)
光触媒酸化チタンの水ゾル(pH10)、コロイダルシリカ(日産化学社製、ST50、pH9)をシリカ/酸化チタンが質量比で5.0になるように調整し、アクリルエマルションクリア(スズカファイン(株)社製、ラフトンEMクリア、固形分30%)を配合液中に液として30%混合し、水を用いて、光触媒酸化チタンとシリカの合計固形分量が6質量%となるように調整した。塗布液の全固形分濃度は15質量%であった。同液に1%ブロムカルボキシチモールフタレイン水溶液を1%、トリエタノールアミン0.5%添加し塗布液(13)を得た。
【0047】
塗布液(6)〜(13)をアクリルシリコン樹脂塗膜の表面に中毛ローラーにより020g〜30g/m2塗布し(塗布量をこの範囲とすると、常温1日乾燥後、塗膜の膜厚は0.5〜1.0μmとなる。)、塗布面の視認性および塗装液の発色消失時間を調べた。塗布後2時間乾燥させ発色が完全に消失したのを確認した後、噴霧器で水を塗装面に噴霧し、塗装面の再発色の確認を行った。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に無色透明な塗膜を形成する塗布方法において、
pHに依存して呈色する色素、金属酸化物微粒子、マトリックス成分、pH調整剤、および分散剤を含み、前記色素の発色領域にpHが調整されてなる塗布液を用いて塗布する、塗布方法。
【請求項2】
前記色素は塩基性流域で発色して、中性領域で無色となる、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子が光触媒酸化物を含有する、請求項1または2に記載の塗布方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法を用いて製造された、光触媒を含有してなる複合材。
【請求項5】
請求項1に記載の方法にて用いられる塗布液であって、
pHに依存して呈色する色素、金属酸化物微粒子、マトリックス成分、pH調整剤、および分散媒とを含んでなり、
前記pH指示薬の発色領域にpHが調整され、
前記マトリックス成分が塗布液の固形分に対して50質量%以下である、
塗布液。
【請求項6】
前記pHに依存して呈色する色素が塩基性領域で発色して中性領域で無色となる、請求項5に記載の塗布液。
【請求項7】
前記金属酸化物微粒子が光触媒酸化物を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の塗布液。
【請求項8】
前記光触媒酸化物が酸化チタンであることを特徴とする請求項7に記載の塗布液。
【請求項9】
前記金属酸化物微粒子がさらにシリカを含み、前記シリカと前記光触媒酸化物の配合比([シリカ]/[光触媒酸化物])が、質量比で0〜100であることを特徴とする請求項7または8に記載の塗布液。
【請求項10】
前記pH調整剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンより選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の塗布液。

【公開番号】特開2010−94677(P2010−94677A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295839(P2009−295839)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2007−128614(P2007−128614)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【出願人】(501343721)TOTOオキツモコーティングス株式会社 (7)
【出願人】(000103677)オキツモ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】