説明

塗料中での白色顔料としてのリン酸アルミニウム二水和物

本発明は、結晶性オルトリン酸アルミニウム二水和物からの白色顔料、塗料中での白色顔料としてのそれらの使用、並びにそれらの製造法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料、ラッカー等において腐食防止特性を有する白色顔料としてのオルトリン酸アルミニウム二水和物の使用、並びにそれらの製造法に関する。
【0002】
白色顔料は、数多くのものが公知である。それらは、染料、ラッカー及びその他の塗料の構成成分として、処理された異なる色の下地を出来る限り高い白色度でコーティングすることが望ましいとされている。その際、当然の事ながら、それらは塗料の残りの成分と相溶性でなければならない。有利な白色顔料に属するのは二酸化チタンであり、それは粉末としてのみならず、塗料中でも並外れた高い白色度を有する。しかしながら、それはまた相応しい純度を得る製造において非常に高価であるので、その他の白色顔料又は充填剤によって完全に又は部分的に代用することが試みられてきた。頻繁に、例えば炭酸カルシウム(石灰)、硫酸カルシウム(ギプス)、ケイ酸アルミニウム(アルミナ、カオリン)、ケイ酸マグネシウム(タルク)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛が使用される。しかしながら、これらの全ての生成物は二酸化チタンの隠ぺい力には達しないので、それらは二酸化チタンより多量に使用されなければならず、これにより耐摩耗性が減少し、且つこのために必要とされるバインダー量が高まる結果となる。それゆえ、高級な塗料中では常に二酸化チタンが使用される。
【0003】
WO2006/024959A2から、特別な製造処理に基づき空孔を取り込んだ非晶質リン酸アルミニウムが、塗料中での白色顔料として、殊に二酸化チタンと一緒に使用され得ることが公知である。しかしながら、この生成物は非晶質構造に基づき非常に高い吸油量を有し、それにより塗料の多くの溶剤と結合するので、そのような塗料は、少量の顔料の使用を除いて、後で強く増粘することから貯蔵安定性ではない。バインダーの消費量が高いと、更に耐摩耗性の減少につながる。
【0004】
更に、DE102006024864.4A1から、非晶質リン酸アルミニウムと結晶性水不含リン酸アルミニウム(Berlinit)とからの混合物が金属表面用塗料中での腐食防止剤として使用され得ることが公知である。この試剤も、高い吸油量ゆえに白色顔料として十分な量では使用可能でない。
【0005】
それゆえ更に、有用な白色顔料の需要及び相応しい顔料を提供するという課題が存在する。
【0006】
ところで意想外にも、オルトリン酸アルミニウムが二水和物として、粉末としてのみならず塗料中でも、ほぼ二酸化チタンの白色度に達する非常に高い白色度を有することが見出された。結晶性構造及びそのことから結論される低い吸油量に基づき、必要とされる溶剤及びバインダーの量はより低くなるので、塗料は増粘せず、且つより高い耐摩耗性を有することになる。二酸化チタンとの組み合わせにおいて、これらの特性は更に一層改善される。
【0007】
従って、上記課題は、結晶性オルトリン酸アルミニウム二水和物からの白色顔料によって解決される。
【0008】
オルトリン酸アルミニウム二水和物は、例えばバリシア石として天然に存在する公知の化合物である。
【0009】
本発明による顔料の製造は、それ自体公知の方法で、アルミニウム化合物とリン酸又はリン酸塩との水溶液中における、高められた温度、殊に80〜120℃の温度での反応によって行われ、その際、難溶性のオルトリン酸アルミニウムが結晶二水和物として発生するか、もしくは先ず発生する非晶質生成物から再結晶によって形成され、且つ分離される。例えば、水酸化アルミニウムをリン酸と又は硫酸アルミニウムをリン酸ナトリウムと反応させてよい。引き続き、乾燥及び所望される場合には必要とされる粒度に粉砕が行われる。
【0010】
得られたオルトリン酸アルミニウムの粒度がまだ十分に微細でない限りにおいて、粉砕もしくは選別又は篩い分けが続けて行われる。好ましくは、該粒度は、D501〜15μm及びD901〜30μmの範囲内にあるのが望ましく、その際、D90はD50より大きい。殊に、D50=10μm及びD90=15μmであるのが望ましい。更に有利なのは、32μmを超えるサイズを有する粒割合が最大でおよそ0.01%存在する場合である。
【0011】
見掛け密度は、好ましくは、300〜1000g/lの範囲内、殊に500〜900g/lの範囲内にある。
【0012】
本発明による白色顔料のオルトリン酸アルミニウム二水和物は、塗料中での二酸化チタンの代用に適しており、且つ下塗りにも上塗りにも使用することが出来る。それは白色顔料としての適性以外に良好な腐食防止作用も有し、且つ、それゆえ金属下地での腐食防止剤としても使用することが出来る。オルトリン酸アルミニウム二水和物が有用である塗料に数えられるのは、水ベース及び溶剤ベースの染料、水ベース及び溶剤ベースのラッカー並びに透明塗料である。
【0013】
そのような塗料の調製物は、当業者にそれ自体公知である。それらは、通常、水又は有機溶剤を液体として含有し、バインダーを不揮発性合成樹脂の形で含有し、流動挙動、固化を制御するための添加剤、光安定剤、防腐剤、消泡剤等、並びに所望の着色を調整するための顔料を含有する。
【0014】
具体的な配合物は、なかでも被覆されるべき下地、塗料の種類、予定される塗布法等に左右される。環境保護理由から、且つ有機溶剤の火災の危険性ゆえに、今日では水性合成樹脂分散液が塗料素地として有利とされる。更なる詳細の開示のために、上記WO2006/024959A2における広範な記載が参照される。
【0015】
オルトリン酸アルミニウム二水和物は、通常は塗料中に含有される構成成分と良好な適合性を示す。概して、約5〜20質量%のオルトリン酸アルミニウム二水和物が塗料中に組み込まれる。しかしながら、塗布前に希釈が予定されている限りにおいて、場合によっては、より高い割合も使用してよい。
【0016】
以下の実施例は、本発明を更に詳述するものであるが、しかしながら、それらは具体的に記載された実施態様に制限するものではない。全ての%記載は、他に記載がない限り、質量に対するものである。
【0017】
実施例1:オルトリン酸アルミニウム二水和物の製造
リン酸(583g 84%、5.0モル)を、水1600ml中に装入し、且つ110℃に加熱し、その後、攪拌下で水酸化アルミニウム(410g、水5%を有する水和物(Feuchthydrat)、5.0モル)を少量ずつ添加し、且つそのつど全てが溶解するまで待機し、その際、反応混合物を約120℃に加熱する。次いで、室温に冷却し、且つ沈殿した結晶性固体を濾紙(S&S Nr.604φ=110mm)により吸引し、水65mlで洗浄し、且つ一晩中110℃で乾燥させた。
収率929g、96.3%に相当。
生成物は、粉末回折図において37°、39°、42°及び66°(4Θ スケール)での二水和物に典型的な反射を有する。
【0018】
実施例2:塗料の製造
比較配合物の製造のために、公知の配合物を、本発明によるオルトリン酸アルミニウム二水和物もしくは公知の非晶質APによって二酸化チタンを部分的に又は完全に代用することによって変性する。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
4)貯蔵安定性
貯蔵安定性を、粘度測定によって算出した。このテストのために、塗料を50℃で4週間貯蔵した。粘度を、製造直後のその日に測定し、次いで1週間毎に測定した。それにより、非晶質オルトリン酸アルミニウムを含有する染料が、高い出発粘度を有するか、又はすでに1週間後には粘度測定がもはや可能ではないほど固くなるかのいずれかであることがわかった。オルトリン酸アルミニウム二水和物を含有する塗料は、試験期間全体にわたって一様な粘度を示していた。
【0024】
【表5】

【0025】
5)白色度の比較
様々な配合物の白色度を、ドクターブレードを用いて300μmの厚さの着色層をPVC黒色シート上に塗布することで算出した。5日間の乾燥期間後、拡散照明によって反射された光を0゜の角度で測定する(Minolta,輝度計(Chromameter) CR−200)。
【0026】
【表6】

【0027】
6)摩擦損失
摩擦損失(耐摩擦性)を、DIN E 規格 13 300に従って測定した。このために、異なる配合物からドクターブレードを用いて300μmの厚さの着色層をPVC黒色シート上に塗布した。4週間の乾燥時間後、コーティングされたサンプルシートを秤量し、且つ摩擦試験装置中で200回の摩擦サイクルに曝した。次いで、サンプルを洗浄し、乾燥させ、且つ再度秤量した。質量損失を測定し、そこから平均的な層厚損失を計算した。
【0028】
【表7】

【0029】
上記の実施例より、塗料中の二酸化チタンを本発明によるオルトリン酸アルミニウム二水和物によって代用することが出来、その際、白色度がいくらか低くなることがわかる。二酸化チタン50%をオルトリン酸アルミニウム二水和物25%のみで代用した場合ですら、白色度は最小限にしか低減しない。塗料の白色度は、二酸化チタンを非晶質リン酸アルミニウムによって代用した配合物と比較可能である。とは言っても、非晶質リン酸アルミニウムが使用される場合、高い吸油量に基づき同じ量の交換は可能ではない。なぜなら、この染料には耐性がなく、且つすでに製造中に又は一週間後には固くなるからである。
【0030】
意想外にも、耐摩擦性は、全ての比較配合物に対して著しく高められる。これはオルトリン酸アルミニウム二水和物のより低い吸油量に拠るものと考えられる。これによって、バインダーの必要量はより低いものとなり、二酸化チタンを含有する染料に対して耐摩擦性が高まることにつながる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルトリン酸アルミニウム二水和物から成る塗料用白色顔料。
【請求項2】
オルトリン酸アルミニウムが1〜15μmの粒度D50及び1〜30μmの粒度D90を有することを特徴とする、請求項1記載の白色顔料。
【請求項3】
オルトリン酸アルミニウムが300〜1000g/lの見掛け密度を有することを特徴とする、請求項1記載の白色顔料。
【請求項4】
屋内領域及び/又は屋外領域用の水性及び溶剤含有塗料中で使用されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の白色顔料。
【請求項5】
他の白色顔料、殊に二酸化チタンとの組み合わせにおける屋内領域及び/又は屋外領域用の水性分散染料中での白色顔料としてのオルトリン酸アルミニウム二水和物の使用。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項記載の白色顔料の製造であって、以下の工程:
a)アルミニウム塩及び/又は水酸化アルミニウムをリン酸及び/又はリン酸塩と水相中で80〜120℃にて反応させる工程
b)結晶形で二水和物としてオルトリン酸アルミニウムを沈殿させる工程
c)オルトリン酸アルミニウムを濾過分離する工程及び
d)オルトリン酸アルミニウムを乾燥させる工程
を包含する、請求項1から3までのいずれか1項記載の白色顔料の製造。
【請求項7】
オルトリン酸アルミニウムを工程f)で粒度D50≦15μm及び粒度D90≦30μmに粉砕し、且つ/又は篩い分けすることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項8】
水酸化アルミニウムをリン酸と反応させることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
アルミニウム塩が硫酸アルミニウムであり、且つリン酸ナトリウムと反応させることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
白色顔料を水性及び溶剤含有中で分散させることを特徴とする、請求項記載の塗料の製造法。

【公表番号】特表2011−511846(P2011−511846A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515380(P2010−515380)
【出願日】平成20年6月28日(2008.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005307
【国際公開番号】WO2009/007030
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(504133899)ベーカー ギウリニ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】BK Giulini GmbH
【住所又は居所原語表記】Giulinistrasse 2,D−67065 Ludwigshafen,Germany
【Fターム(参考)】