説明

塗料組成物とそれを用いた塗装物と、塗膜の形成方法

【課題】従来より高い鏡面性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物と、それを用いた塗装物と、塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】塗料組成物は、平均粒子径(D50)が10μm以上12.5μm以下かつ厚みが0.02μm以上0.05μm以下である蒸着金属箔と、樹脂と、溶媒とを含み、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を100重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度が300以上かつ可視光領域における正反射率が40%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物とそれを用いた塗装物と、塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被塗装物上に塗料組成物を塗装することによって、塗装物の外観を金属調に仕上げることが可能な塗料組成物が提案されている。このような塗料組成物には、光輝性顔料として金属箔や蒸着金属箔を含むものがある。これらの塗料組成物は、例えば携帯電話の外装等、主にプラスチック材料や金属材料で形成された被塗装物上に塗装することによって塗装物に高意匠性を付与するための塗料やインクとして用いられている。
【0003】
例えば、特開2003−82258号公報(特許文献1)には、アルミニウム粉末を有機溶媒中で磨砕して得られる、平均厚みが0.025μm〜0.08μmの範囲にあり、平均粒子径(D50)が8μm〜30μmの範囲にあるアルミニウムフレーク顔料を含む塗料組成物等が記載されている。
【0004】
また、特開2001−104872号公報(特許文献2)には、被塗物に、厚さが0.08μm以下で、かつ平均粒径が5〜40μmである微小金属箔を配合してなるメタリックベースコートおよびクリヤーコートの2層を順次塗装することを特徴とする塗膜形成方法が記載されている。微小金属箔としては、蒸着法、無電解法およびスパッター法等により製造されたものが挙げられている。
【0005】
特開2006−299200号公報(特許文献3)には、レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径が50μm以下である鱗片状の金属箔(A)とバインダーとなる硬化性樹脂組成物(B)を必須成分として含有する塗料において、金属箔(A)と樹脂組成物(B)との含有質量比率が、A:B=1:0.01〜1:10の範囲であり、かつ上記樹脂組成物(B)の乾燥温度における初期粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする塗料が記載されている。鱗片状の金属箔として好ましくは、アルミニウムを主体とした金属蒸着膜を粉砕して得られる蒸着金属箔が用いられることが記載されている。
【0006】
特開2005−144338号公報(特許文献4)には、被塗面上に、光輝性顔料を含有するメタリックベース塗料を塗装し、次いでクリアー塗料を塗装する方法であって、当該メタリックベース塗料が、光輝性顔料として、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム片を含むことを特徴とする塗装方法が記載されている。リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム片は、厚さが0.01〜0.2μm、好ましくは0.01〜0.1μm、アスペクト比が100〜300、好ましくは150〜250の形状、大きさを有し、また、長手方向の寸法は5〜20μmであることが好ましいことが記載されている。
【0007】
特開2003−211594号公報(特許文献5)には、光が透過するベース材の片面に鱗片状の厚さ1μm以下の蒸着アルミ箔を含む塗料を塗装し、溶剤蒸発後の塗膜中の蒸着アルミ箔がベース材に対し並列に重なり合い、ベース材の非塗装面側から見た時にメッキ調の金属外観となることを特徴とする塗装によりメッキ調の金属外観を有する装飾板が記載されている。蒸着アルミ箔については、樹脂性フィルム基材にアルミニウムを蒸着し、この基材からアルミ蒸着膜を剥ぎ取り、この剥ぎ取ったアルミ蒸着膜をカットしたものが使用できることが記載されている。
【0008】
特開2003−113348号公報(特許文献6)には、着色された蒸着アルミニウムフレーク顔料およびビヒクルを含有する光輝性塗料組成物が記載されている。また、蒸着アルミニウムフレークの平均粒子径(μm)をX軸、粒子平均厚み(μm)をY軸としたX−Y直交座標系において、A(3.5,0.01),B(6,0.01),C(60,0.1),D(35,0.1)の各点を結ぶ直線で囲まれた範囲に調整されたことが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−82258号公報
【特許文献2】特開2001−104872号公報
【特許文献3】特開2006−299200号公報
【特許文献4】特開2005−144338号公報
【特許文献5】特開2003−211594号公報
【特許文献6】特開2003−113348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開2003−82258号公報(特許文献1)のように、金属箔粒子として汎用アルミニウム粒子を用いると、塗装物の仕上がりはいわゆるメタリック調になるものの、より光沢のある、金属調やメッキ調の外観にはならない。これは、汎用アルミニウム粒子の表面には蒸着アルミニウム粒子と比較して大きな凹凸があるので、粒子表面に当たった光が乱反射して粒子が白く見えたり、粒子の粒が目立ったりするためであると考えられる。
【0011】
特開2001−104872号公報(特許文献2)、特開2006−299200号公報(特許文献3)、特開2005−144338号公報(特許文献4)、特開2003−211594号公報(特許文献5)、特開2003−113348号公報(特許文献6)に記載されているように蒸着アルミニウムを用いることによって、塗装物の仕上がりは、ある程度、いわゆる金属調やメッキ調になる。これは、蒸着アルミニウム粒子の表面は汎用アルミニウム粒子の表面と比較して滑らかであるため、粒子表面における光の乱反射が少なく、粒子の粒が目立ちにくいためであると考えられる。しかし、従来の塗料組成物では、塗装物にある程度の金属調やメッキ調のような意匠性を付与することはできても、塗装物に、より高い意匠性、すなわち、従来よりも高い鏡面性を与えることはできない。
【0012】
そこで、この発明の目的は、従来よりも高い鏡面性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物と、それを用いた塗装物と、塗膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、塗装物に従来よりも高い鏡面性を与えるため、種々の検討を行った。その結果、塗料組成物中の微小金属箔として用いる微小金属箔の平均粒子径(D50)と厚みを所定の範囲内の値に調整し、さらに、塗膜を所定の範囲内の厚みにしたときの鏡面光沢度を所定の値以上にすることによって、塗装物に従来よりも高い鏡面性を与えることができることを見出した。
【0014】
本発明者らは、まず、塗料組成物に含まれる微小金属箔の種類、微小金属箔粒子の厚みと、樹脂100重量部に対するアルミニウム顔料の重量部の値を変えて塗料組成物を作製した。
【0015】
(顔料A)
微小金属箔を含む顔料として、平均粒子径D50が約25μm、厚みが約0.15μm、固形分64重量%の汎用アルミニウムペーストを用いた。
【0016】
(顔料B)
微小金属箔を含む顔料として、平均粒子径D50が約9μm、厚みが約0.4μm、固形分65重量%の汎用アルミニウムペーストを用いた。
【0017】
(顔料C)
微小金属箔を含む顔料として、平均粒子径D50が約10μm、厚みが約0.05μm、固形分18重量%の蒸着アルミニウム箔を用いた。
【0018】
(顔料D)
微小金属箔を含む顔料として、平均粒子径D50が約11μm、厚みが約0.04μm、固形分10重量%の蒸着アルミニウム箔を用いた。
【0019】
(顔料E)
微小金属箔を含む顔料として、平均粒子径D50が約12μm、厚みが約0.03μm、固形分10重量%の蒸着アルミニウム箔を用いた。
【0020】
(顔料F)
微小金属箔を含む顔料として、平均粒子径D50が約10μm、厚みが約0.02μm、固形分10重量%の蒸着アルミニウム箔を用いた。
【0021】
次に、樹脂として固形分10重量%のシリコーン樹脂と、上述の顔料A〜Fとを、固形分重量対比で50(樹脂):50(顔料)、40:60、30:70、20:80、10:90、5:95、または、3:97になるように混合して攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.5重量%になるように調整して、塗料組成物を作製した。
【0022】
被塗装物としてステンレス鋼(SUS430)基材上に、上記の塗料組成物を塗装後、180℃で20分間焼付乾燥して、塗装物を得た。塗膜の膜厚について本発明者らが検討したところ、膜厚が2μm以上の塗膜では良好な付着性が得られなかった。そこで、塗膜の膜厚が約0.5μm、約1.0μm、約1.5μmになるようにエアースプレーで塗装した。得られた塗装物について、塗膜の付着性、光沢度、正反射率、放射率、耐熱性を評価した。
【0023】
(付着性)
JIS K5600−5−6に準拠して評価した。JIS K5600−5−6の分類0である場合に合格、それ以外の場合には不合格とした。
【0024】
(光沢度)
20°鏡面光沢度を、JIS K5600−4−7に準拠して測定した。測定には日本電飾株式会社製の光沢計(型番VG−2000)を用いた。グロス300以上である場合に合格とし、グロス300未満の場合に不合格とした。
【0025】
(正反射率)
可視光領域の正反射率を測定した。測定には、コニカミノルタ センシング株式会社製の分光測色計(型番CM−3600d)を使用した。鏡面性・耐熱鏡面性については、正反射率が40%以上である場合に合格とし、40%未満である場合に不合格とした。光反射性と熱反射性については、正反射率が50%以上である場合に合格とし、50%未満である場合に不合格とした。
【0026】
(放射率)
80℃における3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率を測定した。測定には昭和電工株式会社製のD and S AERD放射率計を使用した。放射率が0.1以下である場合に合格とし、0.1より大きい場合に不合格とした。
【0027】
(日射熱取得率)
日射熱取得率は、放射率と日射反射率とに基づいて、JIS R3106に規定の方法で算出した。日射反射率は、JIS R3106に準拠して測定した。日射反射率の測定には、株式会社島津製作所製の分光測色計(型番MPC−3100)を使用した。日射熱取得率が0.4未満である場合に合格とし、0.4以上の場合に不合格とした。
【0028】
(耐熱性)
塗装板を300℃で16時間加熱した後、上述の光沢度と正反射率とを測定した。加熱前の付着性、光沢度、正反射率の値が合格であって、かつ、加熱後の光沢度、正反射率が、加熱前のそれぞれの値の90%以上である場合に合格とし、90%未満の場合に不合格とした。
【0029】
微小金属箔として汎用アルミニウムペーストを含む顔料Aまたは顔料Bを用いた塗料組成物については、まず全体的な傾向を調べるために、シリコーン樹脂と顔料の固形分重量対比が50:50、30:70、10:90の塗料組成物について、付着性を評価した。その結果、これらの塗料組成物のすべてにおいて、付着性の評価が不合格であることがわかった。付着性は、固形分中の顔料の割合が大きくなるほど低くなる。そこで、顔料Aまたは顔料Bを用いた塗料組成物のうち、シリコーン樹脂と顔料の固形分重量対比が40:60、20:80、5:95、3:97の塗料組成物については、上述の付着性、光沢度、正反射率、放射率、日射熱取得率、耐熱性の評価を行わなかった。
【0030】
また、顔料C、顔料D、顔料Eを用いた塗料組成物については、シリコーン樹脂と顔料の固形分重量対比が5:95の塗料組成物の付着性の評価が不合格であったため、シリコーン樹脂と顔料の固形分重量対比が3:97の塗料組成物については、上述の付着性、光沢度、正反射率、放射率、日射熱取得率、耐熱性の評価を行わなかった。
【0031】
上述の付着性、光沢度、正反射率、放射率、耐熱性の評価に基づいて、塗装物の鏡面性・耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性を評価した。
【0032】
(鏡面性・耐熱鏡面性A)
鏡面性・耐熱鏡面性Aは、上述の付着性と光沢度のいずれもが合格であった場合に、合格とした。付着性と光沢度のいずれか1つでも不合格であった場合には、鏡面性・耐熱鏡面性Aが不合格であるとした。また、合格の評価が得られた塗装物については、合格の評価が得られた最大膜厚において上述の耐熱性の評価を行った。鏡面性・耐熱鏡面性Aと、鏡面性・耐熱鏡面性Aの耐熱性についての評価を表1に示す。
【0033】
表1においては、すべての膜厚、すなわち、膜厚0.5〜1.5μmで合格であればA、膜厚0.5〜1.0μmで合格であればB,膜厚0.5μmで合格であればC、すべての膜厚、すなわち、膜厚0.5〜1.5μmで不合格であればD、測定していない場合(未評価)には「−」を記入した。また、耐熱性について不合格であれば×を記入した。表中の記号は、後述の表2〜表5においても同様である。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示すように、微小金属箔として汎用アルミニウムペーストを含む塗料組成物を用いて形成された塗装物では、評価を行ったすべての塗装物において、鏡面性・耐熱鏡面性Aについて合格の評価が得られなかった。一方、微小金属箔として蒸着アルミニウム箔を含む塗料組成物を用いて形成された塗装物では、蒸着アルミニウム箔の厚みが0.02〜0.05μmであり、樹脂100重量部に対し、蒸着アルミニウム箔を100〜900重量部含む塗料組成物を用いて形成された塗装物であって、塗膜の膜厚が0.5〜1.5μmである場合に、比較的よい評価が得られた。また、鏡面性・耐熱鏡面性Aについて合格の評価が得られた塗装物の外観を観察したところ、従来のいわゆるメタリック調や金属調のものよりも高い鏡面性を有していることが確認された。
【0036】
(低放射性A)
低放射性Aは、上述の付着性と放射率のいずれもが合格であった場合に、合格とした。付着性と放射率のいずれか1つでも不合格であった場合には、低放射性Aが不合格であるとした。また、合格の評価が得られた塗装物については、合格の評価が得られた最大膜厚において上述の耐熱性の評価を行った。低放射性Aと、低放射性Aの耐熱性についての評価を表1に示す。表中の記号は、表1と同様である。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示すように、微小金属箔として汎用アルミニウムペーストを含む塗料組成物を用いて形成された塗装物では、評価を行ったすべての塗装物において、低放射性について合格の評価が得られなかった。一方、微小金属箔として蒸着アルミニウム箔を含む塗料組成物を用いて形成された塗装物では、樹脂100重量部に対し、蒸着アルミニウム箔を100〜900重量部含む塗料組成物を用いて形成された塗装物のすべてにおいて、よい評価が得られた。
【0039】
(光反射性A)
光反射性Aは、上述の付着性と正反射率のいずれもが合格であった場合に、合格とした。付着性と正反射率のいずれか1つでも不合格であった場合には、光反射性Aが不合格であるとした。また、合格の評価が得られた塗装物については、合格の評価が得られた最大膜厚において上述の耐熱性の評価を行った。光反射性Aと、光反射性Aの耐熱性についての評価を表3に示す。表中の記号は、表1と同様である。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示すように、微小金属箔として汎用アルミニウムペーストを含む塗料組成物を用いて形成された塗装物では、評価を行ったすべての塗装物において、光反射性Aについて合格の評価が得られなかった。一方、微小金属箔として蒸着アルミニウム箔を用いて形成された塗装物では、微小金属箔の厚みが0.02〜0.04μmであり、樹脂100重量部に対し、蒸着アルミニウム箔を150〜900重量部含む塗料組成物を用いて形成された塗装物であって、塗膜の膜厚が0.5〜1.5μmである場合に、比較的よい評価が得られた。
【0042】
(熱反射性A)
熱反射性Aは、上述の付着性、正反射率、放射率、日射熱取得率のいずれもが合格であった場合に、合格とした。付着性、正反射率、放射率、日射熱取得率のいずれか1つでも不合格であった場合には、熱反射性Aが不合格であるとした。また、合格の評価が得られた塗装物については、合格の評価が得られた最大膜厚において上述の耐熱性の評価を行った。熱反射性Aと、熱反射性Aの耐熱性についての評価を表4に示す。表中の記号は、表1と同様である。
【0043】
【表4】

【0044】
表4に示すように、微小金属箔として汎用アルミニウムペーストを含む塗料組成物を用いて形成された塗装物では、評価を行ったすべての塗装物において、熱反射性Aについて合格の評価が得られなかった。一方、微小金属箔として蒸着アルミニウム箔を用いて形成された塗装物では、微小金属箔の厚みが0.02〜0.04μmであり、樹脂100重量部に対し、蒸着アルミニウム箔を150〜900重量部含む塗料組成物を用いて形成された塗装物であって、塗膜の膜厚が0.5〜1.5μmである場合に、比較的よい評価が得られた。
【0045】
次に、本発明者らは、塗料組成物中の固形分の割合が塗装物の性能に及ぼす影響について、次のように検討した。
【0046】
上述の顔料C〜Fと、樹脂として固形分10重量%のシリコーン樹脂とを、固形分重量対比で10:90になるように混合して攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.2重量%、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%になるように調整して、塗料組成物を作製した。
【0047】
得られた塗料組成物を、被塗装物としてステンレス鋼(SUS430)基材上に、塗装膜厚、すなわち、塗膜の膜厚が約0.5μm、約1.0μm、約1.5μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間焼付乾燥して、塗装物を得た。得られた塗装物について、上述のように塗膜の付着性、光沢度、正反射率、放射率、耐熱性に基づいて、鏡面性・耐熱鏡面性A、低放射性A、光反射性A、熱反射性Aを評価した。また、合格の評価が得られた塗装物については、合格の評価が得られた最大膜厚において上述の耐熱性の評価を行った。
【0048】
塗装物の鏡面性・耐熱鏡面性A、低放射性A、光反射性A、熱反射性Aと、それらの耐熱性についての評価を表5に示す。表中の記号は、表1と同様である。
【0049】
【表5】

【0050】
表5に示すように、塗料組成物中の固形分が0.2〜1.5重量%である場合には、鏡面性・耐熱鏡面性Aと低放射率とについては、塗膜の膜厚が0.5〜1.5μmのいずれであっても合格であった。また、光反射性Aと熱反射性Aについては、塗料組成物中の固形分が0.5重量%である場合には、塗膜の膜厚が0.5〜1.5μmのいずれであっても合格であった。塗料組成物中の固形分が0.2重量%である場合には、膜厚0.5〜1.0μmで合格であった。塗料組成物中の固形分が1.0〜1.5重量%である場合には、膜厚0.5μmで合格であった。また、塗料組成物中の固形分が0.2〜1.5重量%である場合には、耐熱性も合格であった。
【0051】
次に、本発明者らは、塗膜の膜厚が塗装物の性能に及ぼす影響について、次のように検討した。
【0052】
微小金属箔として、平均粒子径D50が約10μm、厚みが約0.02μm、固形分10重量%の蒸着アルミニウムペーストを用いた。樹脂として、固形分50重量%のメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。この蒸着アルミニウムペーストとメチルフェニルシリコーン樹脂とを、固形分重量対比で10:90になるように混合し、攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.5重量%になるように調整して塗料組成物を得た。
【0053】
被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の塗料組成物をエアースプレーで塗装した。塗料組成物を被塗装物上に塗装するとき、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約0.5μm、約1.0μm、約1.5μm、約2.0μm、約3.0μm、約4.0μmになるようにした。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて塗装物を得た。得られた塗装物について、上述のように付着性、光沢度、正反射率、放射率を評価した。得られた評価を表6に示す。表6においては、合格を○、不合格を×で示す。
【0054】
【表6】

【0055】
表6に示すように、塗装物の塗膜の厚みが0.5〜1.5μmである場合には、付着性、光沢度、正反射率、放射率のすべてにおいて合格であった。一方、塗膜の厚みが1.5μmを超えると、付着性、光沢度、正反射率においてよい評価が得られなかった。
【0056】
本発明者らのこのような知見に基づいて、本発明は以下のように構成される。
【0057】
この発明に従った塗料組成物は、平均粒子径(D50)が10μm以上12.5μm以下かつ厚みが0.02μm以上0.05μm以下である蒸着金属箔と、樹脂と、溶媒とを含み、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を100重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度が300以上かつ可視光領域における正反射率が40%以上である。
【0058】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0059】
この発明に従った塗料組成物においては、樹脂が耐熱性材料によって形成され、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の80℃における3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率が0.1以下であることが好ましい。
【0060】
このようにすることにより、従来よりすぐれた低放射性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0061】
この発明に従った塗料組成物においては、耐熱性材料はシリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0062】
このようにすることにより、当該塗料組成物によって塗装された塗装物の耐熱性をより高めることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0063】
この発明に従った塗料組成物においては、蒸着金属箔の厚みが0.02μm以上0.04μm以下であり、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を150重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の可視光領域における正反射率が50%以上であることが好ましい。
【0064】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性を有し、さらに、高い光反射性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0065】
この発明に従った塗料組成物においては、蒸着金属箔の厚みが0.02μm以上0.04μm以下であり、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を150重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の日射熱取得率が0.4以下であることが好ましい。
【0066】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性を有し、さらに、高い熱反射性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0067】
この発明に従った塗料組成物においては、蒸着金属箔は、蒸着アルミニウム箔であることが好ましい。
【0068】
このようにすることにより、いわゆる金属調の銀色の外観の塗装物を得ることができる塗料組成物を提供することができる。
【0069】
この発明に従った塗料組成物においては、固形分が当該塗料組成物全体の0.2重量%以上1.5重量%以下であることが好ましい。
【0070】
このようにすることにより、当該塗料組成物によって塗装された塗装物の鏡面性と耐熱性を高め、放射率を低くすることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0071】
この発明に従った塗装物は、被塗装物と、上記のいずれかの塗料組成物によって被塗装物上に形成される塗膜とを備えることが好ましい。
【0072】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性、および/または、従来よりすぐれた低放射性を有する塗装物を得ることができる。
【0073】
この発明に従った塗装物においては、当該塗装物を300℃の温度で所定時間の加熱した後に測定される20°鏡面反射における鏡面光沢度、可視光領域における正反射率、3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率、または、日射熱取得率が、加熱する前の当該塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度、可視光領域における正反射率、3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率、または、日射熱取得率の値と比較して維持されるように構成されていることが好ましい。
【0074】
このようにすることにより、塗装物を、耐熱性が必要とされる部材として用いることができる。
【0075】
この発明に従った塗装物においては、被塗装物は、筐体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0076】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に従来より高い鏡面性、および/または、従来よりすぐれた低放射性を有する筐体を提供することができる。
【0077】
この発明に従った塗装物においては、被塗装物は、物品の外周面の少なくとも一部を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0078】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に従来より高い鏡面性を有する物品を提供することができる。
【0079】
この発明に従った塗装物においては、被塗装物は、耐熱性体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0080】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性が必要な筐体や物品の外周面に用いるための耐熱性体を提供することができる。
【0081】
この発明に従った塗装物においては、被塗装物は、断熱性体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0082】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性が必要な筐体や物品の外周面に用いるための断熱性体を提供することができる。
【0083】
この発明に従った塗装物においては、被塗装物は、光反射体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0084】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性を必要とする環境で使用するための光反射体を提供することができる。
【0085】
この発明に従った塗装物においては、被塗装物は、熱反射体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0086】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性を必要とする環境で使用するための熱反射体を提供することができる。
【0087】
この発明に従った塗膜の形成方法においては、被塗装物上に、上記のいずれかの塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、塗膜上にクリアー塗料を塗装してトップクリアー塗膜を形成することが好ましい。
【0088】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性を有する塗装物を提供することができる。
【発明の効果】
【0089】
以上のように、この発明によれば、従来より高い鏡面性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物と、それを用いた塗装物と、塗膜の形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0090】
この発明の一つの実施形態の塗料組成物は、平均粒子径(D50)が10μm以上12.5μm以下かつ厚みが0.02μm以上0.05μm以下である蒸着金属箔と、樹脂と、溶媒とを含み、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を100重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度が300以上かつ可視光領域における正反射率が40%以上である。
【0091】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0092】
蒸着金属箔としては、例えば、蒸着アルミニウム箔が用いられる。蒸着アルミニウム箔を用いることによって、いわゆる金属調の銀色の外観の塗装物を得ることができる塗料組成物を提供することができる。
【0093】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−エポキシ樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0094】
溶媒としては、樹脂と蒸着金属箔とを分散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、水を用いてもよいし、キシレン等の有機溶剤を用いてもよい。
【0095】
この発明の一つの実施形態の塗料組成物においては、樹脂が耐熱性材料によって形成され、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.0μm以下である場合に、塗装物の80℃における3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率が0.1以下であることが好ましい。このようにすることにより、従来よりすぐれた低放射性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0096】
この発明の一つの実施形態の塗料組成物においては、樹脂の耐熱性材料はシリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂であることがより好ましい。シリコーン樹脂系の樹脂や変性シリコーン樹脂は、高い耐熱性を有する。そこで、このようにすることにより、当該塗料組成物によって塗装された塗装物の耐熱性をより高めることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0097】
この発明に従った塗料組成物においては、蒸着金属箔の厚みが0.02μm以上0.04μm以下であり、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を150重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の可視光領域における正反射率が50%以上であることが好ましい。このようにすることにより、従来より高い鏡面性、および、従来よりすぐれた低放射性を有し、さらに、高い光反射性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0098】
この発明に従った塗料組成物においては、蒸着金属箔の厚みが0.02μm以上0.04μm以下であり、樹脂100重量部に対し蒸着金属箔を150重量部以上900重量部以下含み、当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、塗装物の日射熱取得率が0.4以下であることが好ましい。このようにすることにより、従来より高い鏡面性、および、従来よりすぐれた低放射性を有し、さらに、高い熱反射性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0099】
この発明の一つの実施形態の塗料組成物は、固形分が塗料組成物全体の0.2重量%以上1.5重量%以下であることが好ましい。このようにすることにより、当該塗料組成物によって塗装された塗装物の鏡面性と耐熱性を高め、放射率を低くすることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0100】
この発明のもう一つの実施形態の塗料組成物は、固形分が塗料組成物全体の0.2重量%以上0.5重量%以下であることが好ましい。このようにすることにより、当該塗料組成物によって塗装された塗装物の光反射性と熱反射性とを高めることが可能な塗料組成物を提供することができる。
【0101】
この発明の一つの実施形態の塗装物は、被塗装物と、上記のいずれかの塗料組成物によって被塗装物上に形成される塗膜とを備えることが好ましい。
【0102】
このようにすることにより、従来より高い鏡面性、および/または、従来よりすぐれた低放射性を有する塗装物を提供することができる。
【0103】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、塗膜は、厚みが0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。このようにすることにより、塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度を300以上にすることができる。
【0104】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、当該塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度が300以上であることが好ましい。このようにすることにより、従来より高い鏡面性を有する塗装物を提供することができる。
【0105】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、当該塗装物の可視光領域における正反射率が40%以上であることが好ましい。このようにすることにより、より高い鏡面性を有する塗装物を提供することができる。また、より高い耐熱性を有する塗装物を提供することができる。
【0106】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、当該塗装物の80℃における3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率が0.1以下であることが好ましい。このようにすることにより、塗装物の放射率を低くし、また、塗装物の熱反射性を高めることができる。
【0107】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、当該塗装物の可視光領域における正反射率が50%以上であることが好ましい。このようにすることにより、塗装物の光反射性と熱反射性とを高めることができる。
【0108】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、当該塗装物の日射熱取得率が0.4以下であることが好ましい。このようにすることにより、塗装物の熱反射性を高めることができる。
【0109】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、当該塗装物を300℃の温度で所定時間の加熱した後に測定される20°鏡面反射における鏡面光沢度、可視光領域における正反射率、3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率、または、日射熱取得率が、加熱する前の当該塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度、可視光領域における正反射率、3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率、または、日射熱取得率の値と比較して維持されるように構成されていることが好ましい。このようにすることにより、塗装物を、耐熱性が必要とされる部材として用いることができる。
【0110】
例えば、加熱前の上述の鏡面光沢度と正反射率が、加熱後にもそれぞれ90%以上保たれている場合には、同等に保たれている、すなわち、維持されているといえる。
【0111】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、被塗装物は、筐体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0112】
例えば、自動車や家庭用電気製品の筐体は、筐体の一例である。自動車や家庭用電気製品の筐体には、高い意匠性が必要とされる場合がある。
【0113】
そこで、このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に従来より高い鏡面性を有する筐体を提供することができる。
【0114】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、被塗装物は、物品の外周面の少なくとも一部を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0115】
例えば、自動車や家庭用電気製品の外周面の少なくとも一部を構成する部品は、高い意匠性を必要とする物品の一例である。
【0116】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に従来より高い鏡面性を有する物品を提供することができる。
【0117】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、被塗装物は、耐熱性体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0118】
本願明細書においては、耐熱性を必要とする物体を耐熱性体とする。耐熱性体は、耐熱性を必要とする環境において使用される。例えば、自動車を構成する部品は、耐熱性を必要とする耐熱性体の一例である。また、2輪用マフラー、4輪用マフラー、シリンダーブロック、高意匠を必要とする物品の外装、調理器の外装、キッチン周りのステンレス鋼の代替部材、家庭用電気製品の外装、暖房器具の部品等は耐熱性体の一例である。
【0119】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性が必要な筐体や物品の外周面に用いるための耐熱性体を提供することができる。また、従来の真空蒸着法やメッキ法と比べて容易に塗膜を形成できるので、耐熱性体の製造にかかるコストを低減することができる。
【0120】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、被塗装物は、断熱性体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0121】
本願明細書においては、断熱性を必要とする物体を断熱性体とする。断熱性体は、断熱性を必要とする環境において使用される。例えば、保温ボトルは断熱性を必要とする断熱性体の一例である。また、断熱材を使用することができない小型機器、例えば、保温ボトルのステンレス鋼の代替部材、ボイラーの構成部材、温水タンク等の内面を構成する部材は、断熱性体の一例である。
【0122】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性が必要な筐体や物品の外周面に用いるための断熱性体を提供することができる。また、従来の真空蒸着法やメッキ法と比べて容易に塗膜を形成できるので、断熱性体を製造または使用するときに必要なエネルギーの省エネルギー化を可能にすることができる。さらに、約1μmという薄い塗膜によって断熱効果を実現できるため、断熱性体のコンパクト化を可能にすることができる。
【0123】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、被塗装物は、光反射体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0124】
本願明細書においては、光反射性を必要とする物体を光反射体とする。光反射体は、光反射性を必要とする環境において使用される。例えば、光反射板やハーフミラーは、高い光反射性を必要とする光反射体の一例である。また、アルミニウム蒸着膜の代替部材が用いられる自動車等のバックライト、ダウンライト、照明として用いられる発光ダイオード(LED)等の付属部品、その他、光反射部材として用いられる光反射板は光反射体の一例である。
【0125】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性を必要とする環境で使用するための光反射体を提供することができる。また、従来の真空蒸着法やメッキ法と比べて容易に塗膜を形成できるので、光反射体を製造または使用するときに必要なエネルギーの省エネルギー化、コストの低減を可能にし、光反射の効率を高めることができる。
【0126】
この発明の一つの実施形態の塗装物においては、被塗装物は、熱反射体を構成するための被塗装物であることが好ましい。
【0127】
本願明細書においては、熱反射性を必要とする物体を熱反射体とする。熱反射体は、熱反射性を必要とする環境において使用される。例えば、暖房機の筐体や部品、加熱器の筐体や部品は、高い熱反射性を必要とする熱反射体の一例である。また、石油ストーブ等の反射板、遮熱建材、熱を反射させるために調理器のレンジやグリルの庫内に配置される部材は、熱反射体の一例である。
【0128】
このようにすることにより、被塗装物に塗料組成物を塗装して、簡単に、従来より高い鏡面性を必要とする環境で使用するための熱反射体を提供することができる。また、従来の真空蒸着法やメッキ法と比べて容易に塗膜を形成できるので、熱反射体を製造または使用するときに必要なエネルギーの省エネルギー化、コストの低減を可能にし、熱反射の効率を高めることができる。
【0129】
この発明の一つの実施形態の塗膜の形成方法は、被塗装物上に、上記のいずれかの塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、塗膜上にクリアー塗料を塗装してトップクリアー塗膜を形成することが好ましい。
【0130】
被塗装物としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム基材等が用いられる。
【0131】
上記のいずれかの塗料組成物は、蒸着金属箔と樹脂とを混合攪拌し、溶媒を用いて所定の固形分に調整されることによって製造される。塗料組成物は、公知の塗装方法、例えば、エアースプレーで被塗装物に塗装される。
【0132】
トップコートに用いるクリアー塗料としては、特に限定されず、例えば、メチルフェニルシリコーン樹脂等の樹脂が用いられる。
【0133】
上記のいずれかの塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、塗膜上にクリアー塗料を塗装してトップクリアー塗膜を形成することによって、従来より高い鏡面性を有する塗装物を提供することができる。
【実施例】
【0134】
本発明の塗料組成物と塗装物の効果として、従来より高い鏡面性を有することを以下のようにして確認した。さらに、低放射性、耐熱鏡面性、光反射性、熱反射性という他の機能をさらに有するかどうかということについても確認した。
【0135】
(光輝性塗料A)
微小金属箔として、平均粒子径D50が約10μm、厚みが約0.02μm、固形分10重量%の蒸着アルミニウムペーストを用いた。樹脂として、固形分50重量%のメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。この蒸着アルミニウムペーストとメチルフェニルシリコーン樹脂とを、固形分重量対比が10(樹脂):90(蒸着アルミニウム)になるように混合し、攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.5重量%になるように調整した。得られた塗料組成物を光輝性塗料Aとした。
【0136】
(光輝性塗料B)
微小金属箔として、光輝性塗料Aと同様に、平均粒子径D50が約10μm、厚みが約0.02μm、固形分10重量%の蒸着アルミニウムペーストを用いた。樹脂として、固形分100重量%の無溶剤アクリル樹脂を用いた。この蒸着アルミニウムペーストと無溶剤アクリル樹脂とを、固形分重量対比が10(樹脂):90(蒸着アルミニウム)になるように混合し、攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.5重量%になるように調整した。得られた塗料組成物を光輝性塗料Bとした。
【0137】
(光輝性塗料C)
微小金属箔として、平均粒子径D50が約11μm、厚みが約0.04μm、固形分10重量%の水系塗料用蒸着アルミニウムペーストを用いた。樹脂として、固形分45重量%のアクリル−ウレタン複合エマルジョンを用いた。この水系塗料用蒸着アルミニウムペーストとアクリル−ウレタン複合エマルジョンとを、固形分重量対比が10(樹脂):90(蒸着アルミニウム)になるように混合し、攪拌した。さらに、溶媒として水を加え、固形分が0.5重量%になるように調整した。得られた塗料組成物を光輝性塗料Cとした。
【0138】
(光輝性塗料D)
微小金属箔として、平均粒子径D50が約25μm、厚みが約0.15μm、固形分64重量%の汎用アルミニウムペーストを用いた。樹脂として、光輝性塗料Aと同様に、固形分50重量%のメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。この汎用アルミニウムペーストとメチルフェニルシリコーン樹脂とを、固形分重量対比が10(樹脂):90(汎用アルミニウム)になるように混合し、攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.5重量%になるように調整した。得られた塗料組成物を光輝性塗料Dとした。
【0139】
(光輝性塗料E)
微小金属箔として、平均粒子径D50が約9μm、厚みが約0.4μm、固形分65重量%の汎用アルミニウムペーストを用いた。樹脂として、光輝性塗料Aと同様に、固形分50重量%のメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。この汎用アルミニウムペーストとメチルフェニルシリコーン樹脂とを、固形分重量対比が10(樹脂):90(汎用アルミニウム)になるように混合し、攪拌した。さらに、溶媒としてキシレンを加え、固形分が0.5重量%になるように調整した。得られた塗料組成物を光輝性塗料Eとした。
【0140】
上述の光輝性塗料A〜Fを被塗装物に塗装して、塗装物を作製した。
【0141】
(実施例1)
被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の光輝性塗料Aを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Aを得た。
【0142】
(実施例2)
基材として脱脂処理したアルミニウム板を基材として用いた。光輝性塗膜のプライマーとして、基材上に、ポリエステル変性シリコーン樹脂によって形成される黒色塗料を塗装膜厚が約15μmになるように塗装した。その後、180℃で20分間加熱硬化させた。得られた基材を被塗装物とし、この被塗装物上に、さらに上述の光輝性塗料Aを、光輝性塗料Aの塗装膜厚が約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Bを得た。
【0143】
(実施例3)
被塗装物としてガラス板上に、上述の光輝性塗料Aを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Cを得た。実施例3の塗装板Cが実施例1の塗装板Aと異なる点は、被塗装板としてガラス板を用いた点である。
【0144】
(実施例4)
実施例1と同様に、被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の光輝性塗料Aを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて塗装板Aを得た。さらにその上に、トップコートのクリアー塗料として固形分50重量%のメチルフェニルシリコーン樹脂を、クリアー塗料の塗装膜厚が約5μmとなるように塗装した。その後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Dを得た。
【0145】
(実施例5)
被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の光輝性塗料Bを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Eを得た。
【0146】
(実施例6)
被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の光輝性塗料Cを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Fを得た。
【0147】
(比較例1)
被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の光輝性塗料Dを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Gを得た。
【0148】
(比較例2)
被塗装物として脱脂処理したステンレス鋼板(SUS430)に、上述の光輝性塗料Eを、塗装膜厚、すなわち、塗膜の厚みが約1μmになるようにエアースプレーで塗装した。塗装後、180℃で20分間加熱硬化させて、塗装物として塗装板Hを得た。
【0149】
実施例1〜6の塗装板A〜Fと比較例1〜2の塗装板G〜Hの構成を表7に示す。
【0150】
【表7】

【0151】
(性能評価試験)
実施例1〜実施例6と比較例1〜2で得られた塗装板A〜Gの鏡面性、耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性を評価した。これらの性能を評価するために、まず、それぞれの塗装板について、付着性、光沢度、正反射率1、正反射率2、放射率、日射熱取得率、耐熱性1、および、耐熱性2を次のようにして評価した。
【0152】
(付着性)
JIS K5600−5−6に準拠して評価した。JIS K5600−5−6の分類0である場合に合格、それ以外の場合には不合格とした。
【0153】
実施例1〜6の塗装板A〜Fでは分類0であった。比較例1の塗装板Gと比較例2の塗装板Hでは、分類5であった。
【0154】
(光沢度)
20°鏡面光沢度を、JIS K5600−4−7に準拠して測定した。測定には日本電飾株式会社製の光沢計(型番VG−2000)を用いた。グロス300以上である場合に合格とし、グロス300未満の場合に不合格とした。
【0155】
実施例1の塗装板Aの光沢度はグロス1000より大きかった。実施例2の塗装板Bの光沢度はグロス698であった。実施例3の塗装板Cの光沢度はグロス348であった。実施例4の塗装板Dの光沢度はグロス338であった。実施例5の塗装板Eの光沢度はグロス559であった。実施例6の塗装板Fの光沢度はグロス463であった。比較例1の塗装板Gの光沢度はグロス393であった。比較例2の塗装板Hの光沢度はグロス515であった。
【0156】
(正反射率1)
可視光領域の正反射率を測定した。測定には、コニカミノルタ センシング株式会社製の分光測色計(型番CM−3600d)を使用した。正反射率が40%以上である場合に合格とし、40%未満である場合に不合格とした。
【0157】
実施例1の塗装板Aの正反射率は63であった。実施例2の塗装板Bの正反射率は43であった。実施例3の塗装板Cの正反射率は50であった。実施例4の塗装板Dの正反射率は40であった。実施例5の塗装板Eの正反射率は55であった。実施例6の塗装板Fの正反射率は42であった。比較例1の塗装板Gの正反射率は31であった。比較例2の塗装板Hの正反射率は37であった。
【0158】
(正反射率2)
正反射率1の測定と同様に、可視光領域の正反射率を測定した。正反射率が50%以上である場合に合格とし、50%未満である場合に不合格とした。
【0159】
(放射率)
80℃における3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率を測定した。測定には昭和電工株式会社製のD and S AERD放射率計を使用した。放射率が0.1以下である場合に合格とし、0.1より大きい場合に不合格とした。
【0160】
実施例1の塗装板Aの放射率は0.06であった。実施例2の塗装板Bの放射率は0.10であった。実施例3の塗装板Cの放射率は0.07であった。実施例4の塗装板Dの放射率は0.65であった。実施例5の塗装板Eの放射率は0.07であった。実施例6の塗装板Fの放射率は0.08であった。比較例1の塗装板Gの放射率は0.18であった。比較例2の塗装板Hの放射率は0.12であった。
【0161】
(日射熱取得率)
放射率と日射反射率とに基づいて、JIS R3106に規定の方法で算出した。日射反射率は、JIS R3106に準拠して測定した。日射反射率の測定には、株式会社島津製作所製の分光測色計(型番MPC−3100)を使用した。日射熱取得率が0.4未満である場合に合格とし、0.4以上の場合に不合格とした。実施例2の塗装板Bと実施例4の塗装板Dについては、正反射率や放射率について合格の評価が得られなかったので、日射熱取得率を評価しなかった。
【0162】
実施例1の塗装板Aの日射熱取得率は0.26であった。実施例3の塗装板Cの日射熱取得率は0.19であった。実施例5の塗装板Eの日射熱取得率は0.24であった。実施例6の塗装板Fの日射熱取得率は0.24であった。比較例1の塗装板Gの日射熱取得率は0.21であった。比較例2の塗装板Hの日射熱取得率は0.24であった。
【0163】
(耐熱性1)
塗装板を300℃で、所定時間として16時間加熱した後、上述の付着性、光沢度、正反射率、放射率を測定した。加熱前の付着性、光沢度、正反射率の値が合格であって、かつ、加熱後の光沢度、正反射率が、加熱前のそれぞれの値の90%以上である場合に合格とし、90%未満の場合に不合格とした。
【0164】
(耐熱性2)
塗装板を300℃で所定時間として16時間加熱した後、上述の付着性と放射率を測定した。加熱後の塗装板の付着性と放射率について、加熱前の付着性と放射率と同様の基準で、合格であるか不合格であるかを判断した。
【0165】
耐熱性を有する樹脂を用いていない実施例5と実施例6の塗装板Eと塗装板Fについては、耐熱性を評価しなかった。
【0166】
各塗装板の付着性、光沢度、正反射率、放射率、日射熱取得率、および、加熱後の付着性、光沢度、正反射率、放射率を表8に示す。
【0167】
【表8】

【0168】
表8に示す試験結果に基づいて、実施例1〜6の塗装板A〜Fと比較例1〜2の塗装板G〜Hの鏡面性、耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性を評価した。
【0169】
(鏡面性)
鏡面性は、上述の付着性、光沢度、正反射率1のすべてが合格であった場合に、合格とした。付着性、光沢度、正反射率1のいずれか1つでも不合格であった場合には、鏡面性が不合格であるとした。鏡面性についての評価を表9に示す。表9においては、合格を○、不合格を×で示す。
【0170】
【表9】

【0171】
表9に示すように、鏡面性については、実施例1〜6の塗装板A〜Fは合格、比較例1〜2の塗装板G〜Hは不合格であった。
【0172】
(耐熱鏡面性)
耐熱鏡面性は、上述の付着性、光沢度、正反射率1、耐熱性1のすべてが合格であった場合に、合格とした。付着性、光沢度、正反射率1、耐熱性1のいずれか1つでも不合格であった場合には、耐熱鏡面性が不合格であるとした。なお、耐熱鏡面性を評価するための耐熱性1の評価においては、正反射率の合否の基準としては正反射率1の基準を用いた。耐熱鏡面性についての評価を表10に示す。表10においては、合格を○、不合格を×で示す。
【0173】
【表10】

【0174】
表10に示すように、耐熱鏡面性については、実施例1〜4の塗装板A〜Dは合格、比較例1〜2の塗装板G〜Hは不合格であった。
【0175】
(低放射性)
低放射性は、上述の付着性、放射率、耐熱性2のすべてが合格であった場合に、合格とした。付着性、放射率、耐熱性2のいずれか1つでも不合格であった場合には、低放射性が不合格であるとした。低放射性についての評価を表11に示す。表11においては、合格を○、不合格を×で示す。
【0176】
【表11】

【0177】
表11に示すように、低放射性については、実施例1の塗装板Aと実施例2の塗装板Bと実施例3の塗装板Cは合格、実施例4の塗装板Dは不合格、比較例1〜2の塗装板G〜Hは不合格であった。
【0178】
(光反射性)
光反射性は、上述の付着性、光沢度、正反射率2のすべてが合格であった場合に、合格とした。付着性、光沢度、正反射率2のいずれか1つでも不合格であった場合には、光反射性が不合格であるとした。光反射性についての評価を表12に示す。表12においては、合格を○、不合格を×で示す。
【0179】
【表12】

【0180】
表12に示すように、光反射性については、実施例1の塗装板Aと実施例5の塗装板Eは合格、実施例2の塗装板B、実施例4の塗装板D、実施例5の塗装板E、実施例6の塗装板F、比較例1〜2の塗装板G〜Hは不合格であった。
【0181】
(熱反射性)
熱反射性は、上述の付着性、光沢度、正反射率2、放射率、日射熱取得率、耐熱性1、耐熱性2のすべてが合格であった場合に、合格とした。付着性、光沢度、正反射率2、放射率、日射熱取得率、耐熱性1、耐熱性2のいずれか1つでも不合格であった場合には、熱反射性が不合格であるとした。なお、熱反射性を評価するための耐熱性1の評価においては、正反射率の合否の基準としては正反射率2の基準を用いた。熱反射性についての評価を表13に示す。表13においては、合格を○、不合格を×で示す。
【0182】
【表13】

【0183】
表13に示すように、熱反射性については、実施例1の塗装板A、実施例3の塗装板C、実施例5の塗装板E、実施例6の塗装板Fは合格、実施例2の塗装板B、実施例4の塗装板D、実施例5の塗装板E、比較例1〜2の塗装板G〜Hは不合格であった。
【0184】
鏡面性、耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性の評価をまとめて表14に示す。
【0185】
【表14】

【0186】
表14に示すように、本発明の実施例1〜6の塗装板A〜Fは、少なくとも、比較例1〜2の塗装板G〜Hと比較して、高い鏡面性を有することがわかった。なお、上述の光沢度と正反射率1の値が高ければ高いほど、鏡面性が高いものとする。実施例1〜実施例6の塗装板A〜塗装板Fでは、実施例1の塗装板Aにおいてもっとも鏡面性が高く、次に実施例5の塗装板E、実施例2の塗装板B、実施例6の塗装板F、実施例3の塗装板Cの鏡面性が高く、そして、これらの塗装板の中では、実施例4の塗装板Dの鏡面性が最も低いと言える。
【0187】
さらに、本発明の実施例1〜4の塗装板A〜Dは、鏡面性、耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性のうちの複数の性能を有することがわかった。特に、実施例1の塗装板Aでは、鏡面性、耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性のすべての性能について合格の評価が得られた。一方、比較例1の塗装板Gと比較例2の塗装板Hは、鏡面性、耐熱鏡面性、低放射性、光反射性、熱反射性のうちのいずれの性能も有していなかった。
【0188】
このように、本発明によれば、従来より高い鏡面性を有する塗装物を得ることが可能な塗料組成物と、それを用いた塗装物と、塗膜の形成方法を提供することができることがわかった。
【0189】
また、実施例3の塗装板Cのように、被塗装物としてガラス板を用いた場合にも、良好な付着性、高い光沢度、すぐれた低放射性を有する塗装物を得ることができることがわかった。さらに、被塗装面から見たときに鏡のような外観を有するので、ミラー等に応用可能である。また、被塗装物をガラス板にすることにより、塗装物をハーフミラー等にも使用することができる。
【0190】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径(D50)が10μm以上12.5μm以下かつ厚みが0.02μm以上0.05μm以下である蒸着金属箔と、
樹脂と、
溶媒とを含み、
前記樹脂100重量部に対し前記蒸着金属箔を100重量部以上900重量部以下含み、
当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、前記塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度が300以上かつ可視光領域における正反射率が40%以上である、塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂が耐熱性材料によって形成され、
当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、前記塗装物の80℃における3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率が0.1以下である、塗料組成物。
【請求項3】
前記耐熱性材料はシリコーン樹脂または変性シリコーン樹脂である、請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記蒸着金属箔の厚みが0.02μm以上0.04μm以下であり、
前記樹脂100重量部に対し前記蒸着金属箔を150重量部以上900重量部以下含み、
当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、前記塗装物の可視光領域における正反射率が50%以上である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記蒸着金属箔の厚みが0.02μm以上0.04μm以下であり、
前記樹脂が耐熱性材料によって形成され、
前記樹脂100重量部に対し前記蒸着金属箔を150重量部以上900重量部以下含み、
当該塗料組成物を被塗装物に塗装して形成される塗装物の塗膜の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下である場合に、前記塗装物の日射熱取得率が0.4以下である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記蒸着金属箔は、蒸着アルミニウム箔である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
固形分が当該塗料組成物全体の0.2重量%以上1.5重量%以下である、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
被塗装物と、
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の塗料組成物によって前記被塗装物上に形成される塗膜とを備える、塗装物。
【請求項9】
当該塗装物を300℃の温度で所定時間の加熱した後に測定される20°鏡面反射における鏡面光沢度、可視光領域における正反射率、3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率、または、日射熱取得率が、前記加熱する前の当該塗装物の20°鏡面反射における鏡面光沢度、可視光領域における正反射率、3μm以上30μm以下の赤外線波長域の放射率、または、日射熱取得率の値と比較して維持されるように構成されている、請求項8に記載の塗装物。
【請求項10】
前記被塗装物は、筐体を構成するための被塗装物である、請求項8または請求項9に記載の塗装物。
【請求項11】
前記被塗装物は、物品の外周面の少なくとも一部を構成するための被塗装物である、請求項9から請求項10までのいずれか1項に記載の塗装物。
【請求項12】
前記被塗装物は、耐熱性体を構成するための被塗装物である、請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載の塗装物。
【請求項13】
前記被塗装物は、断熱性体を構成するための被塗装物である、請求項8から請求項12までのいずれか1項に記載の塗装物。
【請求項14】
前記被塗装物は、光反射体を構成するための被塗装物である、請求項8から請求項13までのいずれか1項に記載の塗装物。
【請求項15】
前記被塗装物は、熱反射体を構成するための被塗装物である、請求項8から請求項14までのいずれか1項に記載の塗装物。
【請求項16】
被塗装物上に、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、前記塗膜上にクリアー塗料を塗装してトップクリアー塗膜を形成する、塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2012−77198(P2012−77198A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223661(P2010−223661)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000103677)オキツモ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】