説明

塗膜転写具

【課題】 塗膜転写具を立てる動作と同時に被転写面に対する力を掛けるので、把持している手(指)の塗膜転写具に対する滑りが発生してしまい、その塗膜転写具が不安定な状態になり、塗膜の切断面がギザギザになってしまったり、浮いてしまったり、ややもすると、手から塗膜転写具が離脱してしまったりするなど、種々の問題が発生してしまう危険性がある。
【解決手段】 ケース内に塗膜転写テープが配置された塗膜転写具であって、その塗膜転写テープを前記ケースから露出して配置された転写ヘッドに巻回させると共に、その巻回部と平行であって、かつ、前記ケースの側面に、そのケースを把持した際、親指が当接する第1凹陥部を形成する一方、その第1凹陥部とは反対側の側面に人差し指と親指の指間が当接する第2凹陥部と、中指あるいは薬指が当接する第3凹陥部を形成した塗膜転写具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に塗膜転写テープが配置された塗膜転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材テープに塗膜層を形成している転写テープが、繰出しリールから転写ヘッドを介して巻取りリールに巻回され、また、それら繰出しリールと巻取りリールの連動機構と伴にケース内に配設された自動巻取り式の塗膜転写具が知られている。
具体的に説明すると、基材テープに塗膜を備えた転写テープを繰り出す繰り出しコアと、前記塗膜を被転写面に押圧して転写する転写ヘッドと、転写後の基材テープを巻き取る巻き取りコアを有し、繰り出しコアと巻き取りコアとを連動回転させる伝達手段を備えた塗膜転写具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2004−136605号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、転写テープの転写が終了した際には、転写ヘッドを被転写面から離脱させる。この離脱の際に、塗膜が切断される。この時、使用者は、その塗膜の切断面が一直線上に綺麗に切断されるように、転写ヘッドの先端を被転写面に強く押し付けて、次いで、その転写ヘッドを被転写面から離脱させている。つまり、転写ヘッドを被転写面に、一端、強く押し付けることによって、塗膜の端部を被転写面に対して強固に密着さると共に、押し付ける圧力によって塗膜を切断しているのである。
ところで、前記の押圧動作を行う際、塗膜転写具を被転写面に対して、約80度ほど立ち上げ、押圧動作を行う。ちなみに、通常の塗膜の転写動作は、被転写面に対して約45度〜60度の範囲でなされる。力を掛けやすいように、前記の押圧動作の際には塗膜転写具を立ててしまうのである。
しかし、塗膜転写具を立てる動作と同時に被転写面に対する力を掛けるので、把持している手(指)の塗膜転写具に対する滑りが発生してしまい、その塗膜転写具が不安定な状態になり、塗膜の切断面がギザギザになってしまったり、浮いてしまったり、ややもすると、手から塗膜転写具が離脱してしまったりするなど、種々の問題が発生してしまう危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、ケース内に塗膜転写テープが配置された塗膜転写具であって、その塗膜転写テープを前記ケースから露出して配置された転写ヘッドに巻回させると共に、その巻回部と平行であって、かつ、前記ケースの側面に、そのケースを把持した際、親指が当接する第1凹陥部を形成する一方、その第1凹陥部とは反対側の側面に人差し指と親指の指間が当接する第2凹陥部と、中指あるいは薬指が当接する第3凹陥部を形成したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ケース内に塗膜転写テープが配置された塗膜転写具であって、その塗膜転写テープを前記ケースから露出して配置された転写ヘッドに巻回させると共に、その巻回部と平行であって、かつ、前記ケースの側面に、そのケースを把持した際、親指が当接する第1凹陥部を形成する一方、その第1凹陥部とは反対側の側面に人差し指と親指の指間が当接する第2凹陥部と、中指あるいは薬指が当接する第3凹陥部を形成したので、転写ヘッドの被転写面に対する押圧動作を確実に得ることができ、その結果、綺麗な塗膜切断面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の1例を示す外観図。
【図2】図1の縦断面図。
【図3】蓋部を拡開させた外観図。
【図4】塗膜層を切断する状態を示す動作説明図。
【図5】不使用状態(転写ヘッド保護状態)を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施例においては、誤字などを隠ぺいして再筆記することが可能な修正テープを挙げ説明するが、紙どうしや他のものに接着するのに使用する接着テープ、印刷物や筆記物の特定部分を強調したり、印象付けたりする手段として用いられる蛍光テープ、柄や模様を転写できるマーク転写テープ、暗記したい文字上に転写し、専用シートを被せることで転写した文字を判読しにくくする暗記テープ等、押圧によって基材上の塗膜を被転写体に転写する塗膜転写具に対しても適用が可能である。
ケース1は、本体部2とその本体部2に開閉自在に取り付けられた蓋部3とから構成されている。また、ケース1内には、修正テープ4が配置されたカートリッジ5が着脱自在に配置されている。そのカートリッジ5の先端には、転写ヘッド6が取り付けられると共に、後部には前記修正テープ4が巻回された繰り出しリール7が回転自在に軸支されている。また、カートリッジ5の中間部には、その繰り出しリール7から繰り出された基材テープ4aを巻き取る巻き取りリール8が軸支されている。そして、それら巻き取りリール8と繰り出しリール7は、従動歯車9によって連動しているが、巻き取りリール7の方が、若干、早く回転するようになっている。転写の際に、修正テープ4が弛まないようにしているのである。尚、前記修正テープ4は、繰り出しリール7から繰り出され、前記転写ヘッド6に巻回されて巻き取りリール8に巻き取られるが、修正用塗膜4bが被転写面に転写されるため、巻き取りリール8に巻き取られるのは基材テープ4aのみである。
また、前記転写ヘッド6は、前記修正テープ4の巻回部6aを有するヘラ部6bと、そのヘラ部6bの両側部に形成されたガイド部6cなどから構成されている。また、ヘラ部6bの後部には、そのヘラ部6bが被転写面に対して平行に密着するように揺動部6dが設けられている。
本実施例における転写ヘッド6は、青や緑と言った有彩色の樹脂材質で成形されているが、これに限定されることはなく、白色や透明な樹脂材質で成形しても良い。透明な樹脂材質とすることによって、修正用塗膜4bが直線的に繰り出されているかを確認することができ、文字を正確に隠ぺいすることができる。また、転写ヘッド6を青や緑と言った有彩色の樹脂材質で成形した場合には、被転写面がほとんど白色であるため、転写ヘッド6の先端をはっきりと目視することができるようになる。よれにより、目的の位置で正確に転写ヘッド6を停止させることができる。
【0009】
前記カートリッジ5の後方であって、蓋部3の内部には弾発機構10が配置されている。この弾発機構10は、コイルスプリング11を有していると共に、そのコイルスプリング11が一定距離圧縮されると音が発するようになっている。つまり、転写ヘッド6を被転写面に強く押し当てると、カートリッジ5が前記コイルスプリング11の弾発力に抗してケース1内で後退すると共に、転写ヘッド6が没入する。この転写ヘッド6の没入過程において音が発する。この転写ヘッド6の没入によって塗膜4bが紙面に対して確実に押圧・密着されると共に、当該部分が圧縮され弱部となり、また、音の発生によってその押圧の完了動作を確認することができる。そして、転写ヘッド6を紙面より離脱させることにより塗膜4bを切断する。尚、前述したように、転写ヘッド6がケース1内に没入するが、完全に没入することはなく、多少露出した状態でカートリッジ5の後退動作に規制がかかるようになっている。
また、前記コイルスプリング11の前方には、そのコイルスプリング11によって前方に向けて付勢された押圧部材12が配置されており、その押圧部材12が前記カートリッジ5の後端部に当接している。
前記蓋体3は、本体部2に対して開閉自在に取り付けられ、連結されているが、その連結機構13としては、互いの部材に孔を形成しそれらの孔にピンを貫通させる、所謂、蝶つがいのようなものであっても良く、或いは、本体部2と蓋体3とを一体形成し、それらの連結部を屈折可能な、所謂、ヒンジ機構などとしても良い。一方、本体部2と蓋部3の連結部とは反対側の側面には、蓋部3の本体部2に対する拡開動作を規制する係合機構14が設けられているが、その係合機構としては蓋部3に弾性変形が可能な爪部を形成し、その爪部を本体部2に対して係脱可能に係合させても良いし、或いは、マグネットや面ファスナーなどによって蓋部3を本体部2に対して密着させても良い。
【0010】
本実施例の修正テープ4は、基材テープ4aの片面に離型層が形成され、反対面に離型層と修正用塗膜4bが形成されている。その修正用塗膜4bは、隠ぺい層と接着層から構成されている。
前記離型層は、離型層コーティング液を用いて、グラビアコーターなどによって形成されている。その離型層コーティング液は、シリコン樹脂やフッ素樹脂、その他離型性を有する樹脂から選択でき、これに必要に応じて、添加剤などを混合して作製することによって透明な離型層を形成している。尚、この離型層4の厚さは約0.5〜1μmが好ましい。
また、前記基材テープ4bとしては、厚さが3〜25μmの透明なポリエチレンテレフタレ−トフィルムを用いている。転写する塗膜の性質によっては、ポリエチレンナフタートやポリプロピレンなどのプラスチックフィルムを適宜用いても良い。
さらに、前記隠ぺい層は、隠蔽層コーティング液を用いて、ロールコーターなどによって形成されている。その隠蔽層コーティング液は、白色顔料や充填剤、各種ビヒクルなどからなり、これに必要に応じて、分散剤や添加剤などを混合して作製している。尚、この隠ぺい層の厚さは約15〜25μmが好ましい。
そして、前記接着層は、いわゆる粘着剤を用いて、ロールコーターなどによって形成されている。その粘着剤は、アクリル系やロジン系、ゴム系、ビニルエーテル系樹脂、ポリイソブチレン系などから選択でき、これに必要に応じて、充填剤、調整剤などを混合して作製している。尚、この接着層の厚さは約1〜4μmが好ましい。
【0011】
次に、前記ケース1の外観形状について説明する。前記転写ヘッド6の巻回部6a、並びに、ヘラ部6bと平行な位置であって、かつ、前記ケース1の側面には、そのケース1を把持した際、親指が当接する第1凹陥部15が形成されている。その第1凹陥部15は、緩やかな円弧状の凹部となっており、前方部には尖ったつの部15aが形成されている。
一方、その第1凹陥部15とは反対側の側面には、人差し指と親指の指間が当接する第2凹陥部16が形成されている。その第2凹陥部16は、前記第1凹陥部15と同様に緩やかな円弧状の凹部となっており、前方部には尖ったつの部16aが形成されている。また、その第2凹陥部16の中間部分には、本体部2と蓋部3との連結部13が位置している。即ち、転写する際、人差し指と親指の指間からケース1を把持しようとする力が発せしうるが、その指間からの力は第2凹陥部16を介して本体部2と蓋部3に分散された状態で係ることになる。ここで、本体部2と蓋部3との連結部14がこの第2凹陥部16に位置しているため、前記の力によって蓋部3が本体部2に対して拡開してしまうようなことがない。ちなみに、この第2凹陥部16に本体部2と蓋部3との係合機構14を設けた場合には、蓋部14にも前記の力が作用してしまうため、その力の強さ如何によっては、ややもすると、蓋部3が拡開してしまう危険性がある。
更に、前記第1凹陥部15とは反対側の背面であって、第2凹陥部16の前方部には、中指あるいは薬指が当接する第3凹陥部17が形成されている。この第3凹陥部17は、前記前記第1凹陥部15と同様に緩やかな円弧状の凹部となっているが、第1凹陥部15や第2凹陥部17よりもさらに緩やかな凹部になっている。
尚、これら第1凹陥部15や第2凹陥部16、第3凹陥部17の表面には、シリコーンゴムや天然ゴムなどからなるゴム状弾性体の滑り止め部材を取り付けても良いし、或いは、2色成形などの手段によって一体成形するなどしても良い。また、ケース1を成形する際、当該部分にローレットや微細な凹凸(梨地状)を同時に形成するなどしても良い。それぞれの凹部によってケース1に対する指の滑りが防止されることは勿論、前記の滑り止め手段を施すことによって更に、滑りが防止され、塗膜の転写ミスが防止されると共に、軽い把持力でケース1の押圧動作を行うことができるようになる。
【0012】
次に、動作について説明する。隠ぺいしたい文字(被転写面)が発生してしまった場合には、その文字の上面に修正テープ4の修正用塗膜4bを転写するために、ケース1を手で把持するが、この際、親指を第1凹陥部15に当接させると共に、人差し指と親指の指間を第2凹陥部16に、そして、中指あるいは薬指を第3凹陥部17に当接させる。次いで、使用するユーザーにもよるが、被転写面に対して約45度程度ケース1を傾け、転写ヘッド6を被転写面に対して押し付ける。この押し付けた状態を保ちながら、隠ぺいしたい文字を消去する。この際、ケース1を把持している各指が、各凹陥部に入り込み、ケース1を確実に保持しているため、振れなどが発生することなく、修正用塗膜4bを隠ぺいしたい文字の上面に正確に転写させることができる。隠ぺい完了後、修正用塗膜4bの端面を綺麗に一直線上に切断するために、転写ヘッド6を更に強く被転写面に対して押し付ける。この更なる押圧動作によって転写ヘッド6の巻回部6bを介して修正用塗膜4bに強固な押圧力が付与され、当該部分が切断される。また、この際、転写ヘッド6に対して前記の押圧力を強く付与するために、ケース1をほぼ80度近辺まで立て、鉛直方向に押圧力を掛ける。この時も、ケース1を把持している各指が、各凹陥部に入り込み、ケース1を確実に保持しているため、振れなどが発生することなく、また、各凹陥部の位置関係により、各指が各凹陥部に入り込むとケース1は60〜80度の角度へとやや立った角度となるので、確実に押圧力を転写ヘッド6、並びに、修正用塗膜4bに対して付与することができる。その結果、修正用塗膜4bの端部が一直線上に綺麗に切断することができる。
また、本実施例においては、転写ヘッド6を被転写面に強く押し付けた際、カートリッジ5が弾発機構10のコイルスプリングの弾発力に抗して後退し得るようになっている。このため、前記転写ヘッド6もケース1内に没入し得るようになっている。そして、この転写ヘッド6の没入過程で、音が発生し、修正用塗膜4bの押圧動作を確認することができる。この音の発生手段としては、電気的なものであっても良いが、前記押圧部材12に弾性変形が可能な爪部を形成し、その爪部が弾発機構の段部を乗り越える際、音が発生するようにしても良い。
さらに、本実施例においては、第3凹陥部17は本体部2に対して前後動可能に配置されたスライド部材18に形成されているが、直接、第3凹陥部17を本体部2に形成しても良い。即ち、本実施例において、使用状態においては、図1に示すように第3凹陥部17が形成されたスライド部材18を後退・係止させることによって、薬指が当接し得るものとなっているが、不使用時においては、図5に示すようにスライド部材18を前進させることによって、転写ヘッド6を覆い、保護し得るようになっている。
【符号の説明】
【0013】
1 ケース
2 本体部
3 蓋部
4 修正テープ
5 カートリッジ
6 転写ヘッド
7 繰り出しリール
8 巻き取りリール
9 従動歯車
10 弾発機構
11 コイルスプリング
12 押圧部材
13 連結機構
14 係合機構
15 第1凹陥部
16 第2凹陥部
17 第3凹陥部
18 スライド部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に塗膜転写テープが配置された塗膜転写具であって、その塗膜転写テープを前記ケースから露出して配置された転写ヘッドに巻回させると共に、その巻回部と平行であって、かつ、前記ケースの側面に、そのケースを把持した際、親指が当接する第1凹陥部を形成する一方、その第1凹陥部とは反対側の側面に人差し指と親指の指間が当接する第2凹陥部と、中指あるいは薬指が当接する第3凹陥部を形成した塗膜転写具。
【請求項2】
前記転写ヘッドをケースに対して前後動可能に配置した請求項1記載の塗膜転写具。
【請求項3】
前記塗膜転写テープをケースに対して着脱自在に配置すると共に、そのケースを本体部と蓋部とから構成し、それら本体部と蓋部とを回転可能に連結することによって開閉自在となし、その蓋部の本体部に対する回転支持部を前記第2凹陥部が位置する側面に配置する一方、蓋部の本体部に対する係脱部を前記第1凹陥部が位置する側面に配置した請求項1、或いは、請求項2に記載の塗膜転写具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200965(P2012−200965A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66845(P2011−66845)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】