説明

壁仕上げ工法及び壁面

【課題】下地板の継目痕が目立たない壁仕上げ工法及び部分タイル張り壁面を提供する。
【解決手段】柱1に対し複数枚の下地板2がビス、釘等により固定され、壁下地3が構築されている。この壁下地3に対し、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材(例えば、顔料を含んだ弾性接着剤)を塗着して塗着層4を形成する。次いで、この塗着層4が硬化する前に、下地板2,2同士の継目に沿ってピン付き工具7のピン6を掃引し、筋5をつける。その後、筋5に沿ってタイル10を張り付ける。水糸を張ることなく各タイル5を効率よく水平に揃えて張り付けることができる。タイルが張り上がった壁面にあっては、筋5がタイル10の辺に沿うため殆ど目立たない。タイル10を張り付けなかった領域では、塗着層4の硬化物よりなる塗り仕上げ面11が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材を用いてタイル張り及び塗り仕上げを行う壁仕上げ工法及び壁面に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイルを壁面に接着するための接着剤として、下地追従性が高く、タイルにひび割れ等の欠陥を起こし難いことから、弾性接着剤が用いられている。このタイル張り用弾性接着剤としては、一般に変性シリコーン系弾性接着剤が知られている(特開平10−159304号公報、特開平11−349916号公報)。
【特許文献1】特開平10−159304号公報
【特許文献2】特開平11−349916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来より、壁の一部をタイル張り仕上げとし、他の部分をコテ等により塗り仕上げとする部分タイル張り壁面が知られている。この塗り仕上げ材料としても、下地追従性に優れることから、顔料やフィラーを添加した弾性接着剤が用いられている。
【0004】
従来の部分タイル張り壁面にあっては、タイル張り用弾性接着剤と塗り仕上げ用弾性接着剤とに別々の弾性接着剤を用いているため、異なる弾性接着剤を塗布するための作業工程が煩雑となる;異なる弾性接着剤同士の境界の継ぎ目部分に汚れが付着し易い;2種の弾性接着剤を準備するための資材管理に手間がかかる;という問題があった。
【0005】
また、従来、複数枚の下地板を並設して構築した壁面に塗り仕上げを施した場合、下地板同士の継目に沿って塗り仕上げ層に段差や凹条よりなる筋目が生じ、見栄えが悪くなることがあった。これは、部分タイル貼り壁面の塗り仕上げ面についても同様に生じていた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、下地板の継目痕が目立たない壁仕上げ工法及び部分タイル張り壁面を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の壁仕上げ工法は、タイルが壁面の一部に張り付けられ、該壁面のうちタイル張り部分に隣接した部分は塗り仕上げ材料にて塗り仕上げされている部分タイル張り壁面を構築する壁仕上げ工法において、複数枚の下地板を並設することにより形成された壁下地に対し、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材を塗着して塗着層を形成する工程と、該下地板同士の継目に沿ってピンを掃引し、該塗着層に筋をつける工程と、該筋に沿ってタイルを塗着層に押し付けて張り付ける工程と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の壁仕上げ工法は、請求項1において、タイルを個別に、タイルの辺を前記筋に沿わせて張り付けることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の壁仕上げ工法は、請求項1において、複数枚のタイルがそれらの前面側に貼着されたシートによって連結されてなるタイルユニットを用い、該タイルユニットの端部に配置されたタイルの辺を前記筋に沿わせて各タイルを前記塗着層に押し付けて張り付け、その後、該シートをタイルから剥すことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の壁仕上げ工法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、壁面における下地板同士の略すべての継目に沿って前記筋をつけ、すべての筋に沿ってタイルを張り付けることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の壁面は、タイルが壁面の一部に張り付けられ、該壁面のうちタイル張り部分に隣接した部分は塗り仕上げ材料にて塗り仕上げされている部分タイル張り壁面において、複数枚の下地板が並設されて形成された壁下地と、該壁下地に塗着された、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材よりなる塗着層と、該塗着層の一部に張り付けられた前記タイルとを有し、少なくとも一部のタイルは該下地板同士の継目に沿って張り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の壁面は、請求項5において、該継目に沿って筋が設けられ、この筋に沿ってタイルが張り付けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の壁面は、請求項5又は6において、壁面における下地板同士の略すべての継目に沿ってタイルが張り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって得られる壁面にあっては、下地板同士の継目に沿ってタイルが張り付けられているため、仮にこの継目に沿って塗り仕上げ層に段差や凹条よりなる継目痕が生じても、殆ど目立たず、外観上の見栄えが極めて良好となる。
【0015】
本発明方法によると、塗着層に筋をつけてタイル張りを行うため、水糸を張ることなく、タイルの辺を揃えてタイル張りすることができ、タイル張り作業効率が良好である。
【0016】
この筋は、ピンによってつけられるものであるから、極めて細く、殆ど目立たない。
【0017】
本発明では、タイルの辺をこの筋に沿わせることが好ましく、これにより各タイルの辺を筋に沿って一直線状に正確に揃えることができる。
【0018】
このタイルは、1枚ずつ個別に張り付けられてもよく、タイルユニットを用いて行われてもよい。このタイルユニットは、複数枚のタイルが例えば桝目状など規則的に配列され、各タイルの前面に紙などのシートを貼着して各タイルが一体化されたものである。シートとしては、紙が広く用いられており、この場合タイルユニットは紙貼りタイルユニットと称されている。
【0019】
このタイルユニットを用いてタイル張りする場合は、タイルユニットの端部に配置されたタイルユニットの辺を筋に沿わせるのが好ましい。これにより、タイルユニットの各タイルが一度に規則的に壁面に張り付けられる。
【0020】
本発明では、下地板同士の略すべての継目に沿ってタイルを張ることにより、壁面全体で継目が目立たないものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図〜第5図は本発明の実施の形態に係る壁仕上げ工法を示すものであり、このうち第5図は仕上げが完了した壁面を示している。
【0022】
第1図の通り、柱1に対し複数枚の下地板2がビス、釘等により固定され、壁下地3が構築されている。この実施の形態では、第4図(a)に拡大して示す通り、下地板2には下縁及び上縁に実部2a,2bが設けられており、これらの実部2a,2bを係合させるようにして各下地板2同士が並設されている。
【0023】
第2図の通り、この壁下地3に対し、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材(例えば、顔料を含んだ弾性接着剤)を塗着して塗着層4を形成する。
【0024】
次いで、この塗着層4が硬化する前に、好ましくは塗着層4を形成した後、直ちに、第3図及び第4図(a)のように、下地板2,2同士の継目に沿ってピン付き工具7のピン6を掃引し、筋5をつける。この実施の形態では、上下に隣接する下地板2,2の継目にピン6の先端を係合させ、該継目に沿ってピン6を掃引することにより、水平に延在する筋5が形成される。
【0025】
なお、下地板2,2同士の継目にあっては、両者の前面側の角縁の間に微小ながら隙間ないし凹みが生じるので、ピン6の先端をこの隙間ないし凹みに係合させ、ピン6を継目に沿って移動させることにより細い筋5が形成される。
【0026】
ただし、ピン6を掃引し易くするために、第4図(b)の下地板2Aのように前面側の下縁及び上縁にそれぞれ面落し部8を設けておき、下地板2A,2Aの継目にV字状の溝を形成してもよい。
【0027】
また、第4図(c)の下地板2Bのように、下縁の実部2aの垂下長さを上縁の実部2bの起立高さよりも小さくし、下地板2B,2Bの継目に、前面側に露呈する凹溝9が形成される場合には、この凹溝9に臨む下地板下端面9a又は下地板上端面9bに沿ってピンを掃引することにより筋5が形成される。なお、第4図(c)の凹溝9は、パテの如き充填材料を充填した後、塗着層が形成される。パテの如き充填材料を用いる代りに、塗着層形成用の塗り仕上げ材を塗着層4の形成時に凹溝9に充填してもよい。
【0028】
このように筋5を形成した後、第5図の通り、筋5に沿ってタイル10を張り付ける。この際、タイル10の上辺又は下辺(この実施の形態では上辺)を筋5に沿わせる。これにより、水糸を張ることなく各タイル5を効率よく水平に揃えて張り付けることができる。
【0029】
タイルが張り上がった壁面にあっては、筋5がタイル10の辺に沿うため殆ど目立たない。タイル10を張り付けなかった領域では、塗着層4の硬化物よりなる塗り仕上げ面11が形成される。
【0030】
また、下地板2同士の継目に沿って塗り仕上げ面11に段差や凹条などの継目痕が生じても、これらはタイル10の辺に沿うものとなるため、殆ど目立たず、塗り仕上げ面11の美観も良好なものとなる。
【0031】
上記実施の形態では、筋5に沿って1列だけタイル10が張られているが、第6図(a)あるいは第7図の如く2列以上張られてもよい。
【0032】
第6図(a)では、図中の上側の筋5に沿ってはタイル12が水平方向に1列だけ張られているが、それよりも下側の筋5に沿っては、上下方向にも複数枚のタイル12が張られている。
【0033】
このように上下左右に複数枚のタイル12を張る場合、第6図(b),(c)に示す紙張りタイルユニット14を用いると、施工効率が向上する。この紙張りタイルユニット14は、複数枚(この実施の形態では5×5=25枚)のタイル12を正方桝目状に配列し、それらの前面に紙13を水溶性糊によって張り付けて一体化させたものである。なお、図では紙13は正方形状となっているが、複数枚の短冊状や環状等の紙を付着させてタイル12同士を連結してもよい。
【0034】
この紙張りタイルユニット14を用いてタイル張りするには、前記塗着層4を形成し、筋5を形成した後、タイルユニット14の最上段の各タイル12の上辺を筋5に沿わせて該タイルユニット14の各タイル12を塗着層4に押し付けて張り付ける。塗着層4が硬化した後、タイルユニット14の紙13に水を付けて紙13を剥す。このようにすれば、タイルユニット14の最上段のタイル12が筋5に沿い、それよりも下段側の各タイル12がそれに平行に揃ったタイル張り壁面を簡単に形成することができる。
【0035】
第7図の実施の形態では、筋に沿って上下2段にタイル15を張り付けている。筋は、図中のa,b,cのいずれの位置に存在していてもよい。
【0036】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。例えば、筋に沿うタイルの枚数は図示以外であってもよい。また、上記実施の形態では下地板を水平横長に張っているところから筋5を水平に引いているが、下地板を縦長に張った場合には、筋5は上下方向に引くことになり、タイルはこの上下方向の筋に沿って張られることになる。この場合、当然ながら、タイルの側辺を上下方向の筋に沿わせることになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】壁下地を示す斜視図である。
【図2】壁下地に塗り仕上げ材を塗着して塗着層を形成した状態を示す斜視図である。
【図3】塗着層に筋を引いた状態を示す斜視図である。
【図4】上下の下地板同士の継目部分の縦断面図である。
【図5】タイル張りされた壁面の斜視図である。
【図6】(a)図はタイル張りされた別の実施の形態に係る壁面の正面図である。(b)図は紙張りタイルユニットの断面図であり、(c)図のB−B断面を示す。(c)図は紙張りタイルユニットの正面図である。
【図7】タイル張りされたさらに別の実施の形態に係る壁面の正面図である。
【符号の説明】
【0038】
2,2A,2B 下地板
3 壁下地
4 塗着層
5 筋
6 ピン
10,12,15 タイル
11 塗り仕上げ面
14 紙張りタイルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイルが壁面の一部に張り付けられ、該壁面のうちタイル張り部分に隣接した部分は塗り仕上げ材料にて塗り仕上げされている部分タイル張り壁面を構築する壁仕上げ工法において、
複数枚の下地板を並設することにより形成された壁下地に対し、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材を塗着して塗着層を形成する工程と、
該下地板同士の継目に沿ってピンを掃引し、該塗着層に筋をつける工程と、
該筋に沿ってタイルを塗着層に押し付けて張り付ける工程と、
を有することを特徴とする壁仕上げ工法。
【請求項2】
請求項1において、タイルを個別に、タイルの辺を前記筋に沿わせて張り付けることを特徴とする壁仕上げ工法。
【請求項3】
請求項1において、複数枚のタイルがそれらの前面側に貼着されたシートによって連結されてなるタイルユニットを用い、
該タイルユニットの端部に配置されたタイルの辺を前記筋に沿わせて各タイルを前記塗着層に押し付けて張り付け、
その後、該シートをタイルから剥すことを特徴とする壁仕上げ工法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、壁面における下地板同士の略すべての継目に沿って前記筋をつけ、すべての筋に沿ってタイルを張り付けることを特徴とする壁仕上げ工法。
【請求項5】
タイルが壁面の一部に張り付けられ、該壁面のうちタイル張り部分に隣接した部分は塗り仕上げ材料にて塗り仕上げされている部分タイル張り壁面において、
複数枚の下地板が並設されて形成された壁下地と、
該壁下地に塗着された、タイル接着機能を有した塗り仕上げ材よりなる塗着層と、
該塗着層の一部に張り付けられた前記タイルとを有し、
少なくとも一部のタイルは該下地板同士の継目に沿って張り付けられていることを特徴とする壁面。
【請求項6】
請求項5において、該継目に沿って筋が設けられ、この筋に沿ってタイルが張り付けられていることを特徴とする壁面。
【請求項7】
請求項5又は6において、壁面における下地板同士の略すべての継目に沿ってタイルが張り付けられていることを特徴とする壁面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−37563(P2006−37563A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220433(P2004−220433)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】