説明

壁紙用フィルム及び壁装材

【課題】防汚性及び耐熱性に優れ、短時間で消臭効果を発揮することのできる壁紙用フィルムを提供する。また、該壁紙用フィルムを有する壁装材を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を45〜87重量%、ポリエチレン系樹脂を10〜50重量%、及び、多孔質粒子を3〜15重量%含有する防汚層を有する壁紙用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性及び耐熱性に優れ、短時間で消臭効果を発揮することのできる壁紙用フィルムに関する。また、本発明は、該壁紙用フィルムを有する壁装材に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の壁やクローゼット、家具等に貼り付けて使用される壁紙としては、諸物性に優れ、成形加工性もよく安価であるという理由から塩化ビニル層を含む塩化ビニル壁紙が多用されている。しかし、塩化ビニル壁紙は汚れやすく、また、一度汚れるとその汚れが落ちにくいという問題があった。また、塩化ビニル壁紙は、一般に可塑剤が配合されているため、その可塑剤が表面にブリードして空気中の浮遊物が付着することにより汚れが生じやすいという問題もあった。
【0003】
塩化ビニル壁紙に防汚性を付与する手段の一つとして、防汚性を有する樹脂からなる基材層を有する防汚フィルムを、塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に積層し、接着する方法が知られている。従来、このような基材層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)やアクリル系フィルムが使用されており、特にEVOHフィルムが広く使用されている。また、例えば、特許文献1には、基材層として透明2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた防汚フィルムが開示されており、また、特許文献2には、基材層として共重合ポリエステルフィルムを用いた防汚フィルムが開示されている。
【0004】
一方、生活者の清潔志向が進み、壁紙には、体臭、食品臭、ペット、生ゴミ等の生活臭等の不快感を醸し出す悪臭の消臭機能が求められている。また、壁紙等の建材から発生する微量の揮発性有機化合物が生活者の目、鼻、喉等の粘膜に影響を及ぼす、いわゆるシックハウス症候群の問題も重要視されている。
【0005】
このような生活環境の汚染を低減するために、消臭性に優れた壁紙の開発が行われている。
例えば、特許文献3には、ポリアミンを担持した多孔質二酸化ケイ素、水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト化合物又はハイドロタルサイト焼成物の少なくとも1種類を壁紙に含有させた消臭性壁紙が開示されている。また、例えば、特許文献4には、基材層と表面層からなる壁紙において、表面層の上側に、多孔質無機物質とアミン化合物と金属酸化物からなる消臭剤が、バインダー樹脂により浸透剤とともに固着されている消臭性壁紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−232415号公報
【特許文献2】特開平07−290667号公報
【特許文献3】特開平11−286899号公報
【特許文献4】特開2006−348430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、防汚性及び耐熱性に優れ、短時間で消臭効果を発揮することのできる壁紙用フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該壁紙用フィルムを有する壁装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂を45〜87重量%、ポリエチレン系樹脂を10〜50重量%、及び、多孔質粒子を3〜15重量%含有する防汚層を有する壁紙用フィルムである。以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、壁紙に防汚性と消臭性との両方を付与することを目的として、防汚性を有する樹脂からなる防汚層に、消臭性を有する多孔質粒子を添加することを検討した。その結果、本発明者は、多孔質粒子を添加することによって消臭性に優れた防汚層を得ることはできるものの、防汚層を構成する樹脂及び多孔質粒子の種類又は量によっては、悪臭を除去するまでに時間がかかったり耐熱性が低下したりするという新たな問題を見出した。
この問題に対し、本発明者は、防汚層を構成する樹脂としてポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを併用し、かつ、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び多孔質粒子の配合比を所定範囲内とすることにより、防汚性及び耐熱性に優れ、短時間で消臭効果を発揮することのできる防汚層が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の壁紙用フィルムは、防汚層を有する。
なお、本発明の壁紙用フィルムは、防汚層のみを有する単層フィルムであってもよいし、防汚層に加えて後述するような接着層等を有する2層以上のフィルムであってもよい。
【0011】
上記防汚層は、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とを含有する。
上記ポリプロピレン系樹脂は防汚性及び耐熱性に優れ、低密度であり悪臭の透過性に優れる。従って、上記ポリプロピレン系樹脂を含有することにより、上記防汚層は防汚性、耐熱性及び消臭性に優れたものとなる。
更に、上記ポリプロピレン系樹脂はエンボス追従性にも優れているため、発泡した塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に対してであっても、本発明の壁紙用フィルムを強固に接着させることができる。なお、本明細書中、エンボス追従性とは、壁紙のデザインである凹凸等に壁紙用フィルムが追従することである。エンボス追従性がない壁紙用フィルムを壁紙の表面に接着した場合は、部分的に色が白く見えたり、表面の凹凸等がシャープではなくなったりする。
【0012】
上記ポリエチレン系樹脂は、低密度であり悪臭の透過性に優れる。従って、上記ポリエチレン系樹脂を含有することにより、上記防汚層は消臭性に優れたものとなる。
また、上記防汚層を構成する樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂のみであると、上記防汚層は消臭性には優れるものの、悪臭を除去するまでに時間がかかってしまう。これに対し、上記ポリプロピレン系樹脂と上記ポリエチレン系樹脂とを含有することにより、上記防汚層は、消臭性に優れるだけではなく、短時間で消臭効果を発揮することができる。なお、本明細書中、短時間で消臭効果を発揮することができるとは、例えば、1〜8時間程度、好ましくは1〜3時間程度で消臭効果を発揮することができることを意味する。
【0013】
本明細書中、ポリプロピレン系樹脂とは、主成分がプロピレンに由来する構成成分からなる重合体を意味する。本明細書中、主成分とは、構成成分中の51重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上を占める構成成分を意味する。
上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、ホモのポリプロピレン樹脂、プロピレンと共重合可能なモノマー1種以上とプロピレンとの共重合体等が挙げられる。上記プロピレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
これらのポリプロピレン系樹脂のなかでも、悪臭の透過性により優れ、上記防汚層の消臭性が向上することから、プロピレンと共重合可能なモノマー1種以上とプロピレンとの共重合体が好ましく、プロピレン−エチレンブロック共重合体がより好ましい。
【0014】
本明細書中、ポリエチレン系樹脂とは、主成分がエチレンに由来する構成成分からなる重合体を意味する。本明細書中、主成分とは、構成成分中の51重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上を占める構成成分を意味する。
上記ポリエチレン系樹脂としては特に限定されないが、上記防汚層の防汚性が向上することから、極性基を有していないことが好ましい。上記極性基としては、例えば、エステル基、アセチル基等が挙げられ、このような極性基を有するポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
上記ポリエチレン系樹脂としては、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンと共重合可能なモノマー1種以上とエチレンとの共重合体等が挙げられる。上記エチレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
これらのポリエチレン系樹脂のなかでも、悪臭の透過性により優れ、上記防汚層がより短時間で消臭効果を発揮することができることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
【0015】
上記防汚層中の上記ポリプロピレン系樹脂の含有量は、下限が45重量%、上限が87重量%である。上記ポリプロピレン系樹脂の含有量が45重量%未満であると、壁紙用フィルムの防汚性が低下したり、耐熱性が低下することにより寸法安定性が低下したりしてしまう。上記ポリプロピレン系樹脂の含有量が87重量%を超えると、壁紙用フィルムは、悪臭を除去するまでに時間がかかってしまう。上記防汚層中の上記ポリプロピレン系樹脂の含有量の好ましい下限は55重量%、好ましい上限は81重量%であり、より好ましい下限は60重量%、より好ましい上限は76重量%である。
【0016】
上記防汚層中の上記ポリエチレン系樹脂の含有量は、下限が10重量%、上限が50重量%である。上記ポリエチレン系樹脂の含有量が10重量%未満であると、壁紙用フィルムは、悪臭を除去するまでに時間がかかってしまう。上記ポリエチレン系樹脂の含有量が50重量%を超えると、壁紙用フィルムの防汚性が低下したり、耐熱性が低下することにより寸法安定性が低下したりしてしまう。上記防汚層中の上記ポリエチレン系樹脂の含有量の好ましい上限は40重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0017】
上記防汚層は、多孔質粒子を含有する。
上記多孔質粒子は消臭性を有するため、上記多孔質粒子を含有することにより、上記防汚層は消臭性に優れたものとなる。
【0018】
上記多孔質粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限が0.5μm、好ましい上限が20μmである。上記平均粒子径が上記範囲を外れると、上記多孔質粒子の上記ポリプロピレン系樹脂及び上記ポリエチレン系樹脂に対する分散性が低下して凝集が生じてしまい、製膜できなかったり消臭性を均一に有する防汚層が得られなかったりすることがある。上記多孔質粒子の平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は10μmである。
なお、本明細書中、平均粒子径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(LA−500、堀場製作所社製)等を用いて測定した粒度分布より得られる、最頻粒子径を意味する。
【0019】
上記多孔質粒子は、その内部に金属、有機化合物等を含んでいてもよい。
上記金属としては特に限定されず、金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン又はバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。また、上記金属としては、例えば、鉄、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、ハフニウム等も挙げられる。例えば、これらの金属の一部又は全部を、アンモニウムイオンとのイオン交換により上記多孔質粒子の内部に含有させることができる。なかでも、ジルコニウム、チタン、銀、銅又は亜鉛が好ましい。
【0020】
上記多孔質粒子としては、上記ポリプロピレン系樹脂及び上記ポリエチレン系樹脂に対する分散性が特に良いことから、リン酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物及び金属フタロシアニン錯体からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、リン酸塩及び/又はケイ酸塩を含有することがより好ましい。
これら以外の多孔質粒子を用いる場合には、上記多孔質粒子の上記ポリプロピレン系樹脂及び上記ポリエチレン系樹脂に対する分散性が低下して凝集が生じることがあり、製膜できなかったり消臭性を均一に有する防汚層が得られなかったりすることがある。
【0021】
上記リン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。なかでも、上記ポリプロピレン系樹脂及び上記ポリエチレン系樹脂に対する分散性が向上し、壁紙用フィルムの消臭性が向上することから、リン酸ジルコニウムが好ましい。
【0022】
上記ケイ酸塩としては特に限定されないが、例えば、ゼオライト等が挙げられる。なかでも、壁紙用フィルムの消臭性が向上することから、その内部に金属を含むケイ酸塩が好ましく、銀を含むゼオライトがより好ましい。
【0023】
上記金属酸化物としては特に限定されないが、上記ポリプロピレン系樹脂及び上記ポリエチレン系樹脂に対する分散性が向上することから、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛等が好ましい。なかでも、二酸化ケイ素をアンモニア水、アンモニアガス、アルカリ金属塩水溶液、第4級アンモニウム塩水溶液、アミン等で処理した塩基修飾した酸化ケイ素が好ましい。
上記金属フタロシアニン錯体としては、例えば、コバルト−フタロシアニン化合物、鉄−フタロシアニン化合物等が挙げられる。
【0024】
上記防汚層中の上記多孔質粒子の含有量は、下限が3重量%、上限が15重量%である。上記多孔質粒子の含有量が上記範囲内である場合には、上記多孔質粒子の上記ポリプロピレン系樹脂に対する分散性が良いため、消臭性を均一に有する防汚層を得ることができる。
上記多孔質粒子の含有量が3重量%未満であると、壁紙用フィルムの消臭性が低下してしまう。上記多孔質粒子の含有量が15重量%を超えると、壁紙用フィルムの防汚性が低下したり、耐熱性が低下することにより寸法安定性が低下したりしてしまう。また、上記多孔質粒子の含有量が15重量%を超えると、壁紙用フィルムは、悪臭を除去するまでに時間がかかってしまう。上記防汚層中の上記多孔質粒子の含有量の好ましい下限は4重量%、好ましい上限は12重量%であり、より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0025】
上記防汚層は、本発明の壁紙用フィルムの特性を阻害しない範囲で、難燃剤、防カビ剤、抗菌剤、防湿剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、充填剤、着色剤等の添加剤を含有していてもよい。
また、上記防汚層は、無延伸であっても延伸されていてもよいが、エンボス追従性が向上することから、無延伸であることが好ましい。
【0026】
上記防汚層の厚さは特に限定されず、壁紙用フィルムの性能、価格等を考慮して適宜決定されるが、好ましい下限が1μm、好ましい上限が100μmである。厚さが1μm未満であると、壁紙用フィルムは外部からの衝撃により、容易に破損することがあり、また、充分な防汚性を発揮することができないことがある。厚さが100μmを超えると、製造コストの高騰を招くとともに、塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に表された図柄等の意匠が隠蔽されたり、壁紙用フィルムの可撓性が低下したりすることがある。
【0027】
本発明の壁紙用フィルムは、塩化ビニル壁紙と接着するための接着層を有していてもよい。なお、上記接着層は、上記防汚層とは反対側の表面となるように形成される。
上記接着層は、ポリエステルポリオール−アクリル共重合体とイソシアナートとを含有することが好ましい。
上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体は、塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層に対する接着性を確保する役割を果たす。上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体としては、例えば、公知のポリエステルポリオール系化合物とアクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを主原料として製造されるもの等が挙げられる。
【0028】
上記接着層中の上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は95重量%である。上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体の含有量が10重量%未満であると、塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に対する強固な接着性が得られないことがある。上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体の含有量が95重量%を超えると、上記接着層のアンチブロッキング性が低下することがある。
上記接着層中の上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体の含有量のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は60重量%である。
【0029】
上記イソシアナートは、上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体を架橋させる架橋剤として機能する。上記イソシアナートとしては、例えば、ウレタン樹脂を製造する際に用いられる公知の有機イソシアナートが挙げられる。また、上記イソシアナートは、加熱によりイソシアナートを活性化させるブロック化剤によりブロック化されたブロックイソシアナートであることが好ましい。
上記ブロック化剤としては特に限定されず、例えば、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム系;ε−カプロラクタム等のアミド系;マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン系;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系化合物が挙げられる。その他、フェノール系、アルコール系、イミダゾール系、尿素系等のブロック化剤を使用することもできる。これらのブロック化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記接着層中の上記イソシアナートの含有量としては特に限定されないが、上記イソシアナートのNCO含有率が12%である場合、上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体(固形分100%)100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は30重量部であり、より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は20重量部である。上記イソシアナートの含有量が0.5重量部未満であると、上記ポリエステルポリオール−アクリル共重合体の軟化点が下がらず、また、架橋も充分しないことから、塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に対する低温での強固な接着性が得られないことがある。上記イソシアナートの含有量が30重量部を超えると、イソシアナートの配合量が多くなりすぎ、軟化点が室温近くになって粘着剤化し、ブロッキングが強くなることがある。
【0031】
なお、上記ポリエステルポリオール系化合物、アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物及びイソシアナートは、それぞれ単体として市販されているものを使用してもよく、また、2以上の組み合わせで共重合体として市販されているものを使用してもよい。
【0032】
上記接着層は、上記接着層としての特性を阻害しない範囲であれば、更に、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、充填剤、着色剤等の添加物を含有していてもよいし、目的に応じて他の樹脂を含有していてもよい。
上記他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレンとアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のモノマーとからなる2元共重合体、3元共重合体等が挙げられる。
【0033】
上記接着層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は20μmである。厚さが0.1μm未満であると、壁紙用フィルムの塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に対する接着力が不充分となることがあり、また、その接着力にばらつきが生じやすくなる。厚さが20μmを超えると、製造コストの高騰を招くとともに、上記防汚層に反りが生じたり、塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に表された図柄等の意匠が隠蔽されたり、壁紙用フィルムの可撓性が低下したりすることがある。
【0034】
本発明の壁紙用フィルムを製造する方法としては、上記防汚層を押出法により成形した後、必要に応じて接着剤液を塗工し、乾燥する方法が好ましい。
上記防汚層を押出法により成形する方法としては、例えば、上記防汚層を構成する樹脂及び上記多孔質粒子を押出機に投入し、Tダイよりシート状に押出し、引取ロールにて冷却固定化した後、必要に応じて1軸又は2軸に延伸する方法等を用いることができる。積層フィルムを成形する場合には、それぞれの層を構成する樹脂又は樹脂ペレットを各押出機に投入した後、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法等で積層シートを成形し、引取ロールにて冷却固定化した後、必要に応じて1軸又は2軸に延伸する方法等を用いることができる。
【0035】
本発明の壁紙用フィルムに塩化ビニル壁紙を積層することで、壁装材とすることができる。このような壁装材もまた本発明の1つである。
【0036】
上記塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層としては、公知の塩化ビニル壁紙に使用されるいかなるものも挙げることができ、発泡体であっても非発泡体であってもよい。特に本発明の壁装材においては、高沸点の可塑剤を含有する塩化ビニル壁紙であっても好適に用いることができるため、使用可能な壁紙の種類が大幅に広がる。
また、本発明の壁紙用フィルムを積層した後に上記塩化ビニル層を発泡させてもよい。なお、上記塩化ビニル層に印刷を施す場合、印刷インキは、通常用いられるインキでよい。例えば、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系、セルロース系の樹脂に顔料、染料等の着色剤、分散剤、溶剤等を混合し溶解させたもの等が挙げられる。また、上記印刷は公知の方法により行うことができる。
【0037】
本発明の壁装材を製造する際、本発明の壁紙用フィルムを上記塩化ビニル層の表面に接着する方法としては特に限定されないが、熱圧着法により接着することが好ましい。熱圧着法は有機溶剤を用いないので、有機溶剤に起因する弊害、例えば、自然環境への影響、火災の危険性、作業者の健康面への影響及び資源の浪費等の問題を解決することができる。
【0038】
また、上記熱圧着法により本発明の壁紙用フィルムを塩化ビニル層の表面に接着する場合の処理条件としては特に限定されず、接着層を構成する材料、及び、その配合等より適宜決定される。また、塩化ビニル壁紙にエンボス加工を施す場合、該エンボス加工は、本発明の壁紙用フィルムと塩化ビニル層との熱圧着と同時に行ってもよく、後工程で行ってもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、防汚性及び耐熱性に優れ、短時間で消臭効果を発揮することのできる壁紙用フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該壁紙用フィルムを有する壁装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0041】
実施例及び比較例で使用した樹脂及び多孔質粒子を以下に示した。
(1)ポリプロピレン系樹脂
・プロピレン−エチレンブロック共重合体(b−PP)(三井化学社製:F707V、MFR=6.5g/10分、密度0.9g/cm、融点163℃)
(2)ポリエチレン系樹脂
・低密度ポリエチレン(LDPE)(日本ポリエチレン社製:カーネル KS430、MFR=5.0g/10分、密度0.87g/cm、融点45℃)
(3)多孔質粒子
・銀を含むゼオライト(平均粒子径2μm)
・ジルコニウムリン酸塩(平均粒子径1μm)
【0042】
(実施例1)
二軸混練押出機を用いて、プロピレン−エチレンブロック共重合体(b−PP)85重量%と、低密度ポリエチレン(LDPE)10重量%と、多孔質粒子(銀を含むゼオライト、平均粒子径2μm)5重量%とを200℃で溶融混練して、ストランド状に押出、冷却固化した後、カットして樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを、200℃に調整された押出機に投入し、ダイス温度190℃、キャストロール温度80℃、引取速度7m/minの条件で押出を行い、厚さ20μmの壁紙用フィルムを得た。
【0043】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
使用した樹脂及び多孔質粒子の種類及び配合量を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、壁紙用フィルムを得た。
【0044】
<評価>
実施例及び比較例で得られた壁紙用フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0045】
(1)防汚性
日本ビニル工業会の汚れ防汚商品性能評価規定に準じた方法により、得られた壁紙用フィルムの防汚層に醤油又はクレヨンを塗布し、24時間放置した。次いで、布に水を含ませて醤油を丁寧に拭き取り、又は、布に洗剤を含ませてクレヨンを丁寧に拭き取り、防汚層の表面を目視により以下の基準により評価した。
最も防汚性に優れていた場合(ほとんど汚れが観察できない状態)を5、最も防汚性に劣っていた場合(汚れが全く拭き取られない状態)を1とする5段階評価を行った。
【0046】
(2)消臭効果
2Lのテドラーバッグにレギュレーター排圧0.12MPa、流量計2.0L/min、30秒の条件で1Lの圧縮空気を封入し、メチルメルカプタン溶液5μLをメチルメルカプタン濃度が40ppmとなるように注入した後、常温で1.5時間以上放置した。次いで、このテドラーバッグに、縦10cm×横10cm×厚み20μmの大きさに切断した壁紙用フィルムを投入し、壁紙用フィルムの投入直後及び3時間後のメチルメルカプタンの濃度を測定した。初発濃度を100%としたときの3時間後の除去率(%)を求めた。
【0047】
(3)耐熱性(寸法安定性)
得られた壁紙用フィルムを縦10cm×横10cmの大きさに切断し、80℃の温水中に5分間浸漬した後、壁紙用フィルムの縦、横それぞれの寸法を測定した。下記式(1)から縦、横それぞれの寸法変化率を算出し、縦及び横の寸法変化率の平均値を求めた。
寸法変化率(%)={(L1−L2)/L1}×100 (1)
式(1)中、L1は80℃の温水中に5分間浸漬する前の壁紙用フィルムの寸法を表し、L2は80℃の温水中に5分間浸漬した後の壁紙用フィルムの寸法を表す。なお、縦及び横の寸法変化率の平均値が1.5%以下であった場合を○、1.5%を超えた場合を×とした。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、防汚性及び耐熱性に優れ、短時間で消臭効果を発揮することのできる壁紙用フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該壁紙用フィルムを有する壁装材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を45〜87重量%、ポリエチレン系樹脂を10〜50重量%、及び、多孔質粒子を3〜15重量%含有する防汚層を有することを特徴とする壁紙用フィルム。
【請求項2】
多孔質粒子が、リン酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物及び金属フタロシアニン錯体からなる群より選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1記載の壁紙用フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の壁紙用フィルムと塩化ビニル壁紙とを有することを特徴とする壁装材。

【公開番号】特開2012−201993(P2012−201993A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66138(P2011−66138)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】