壁紙

【課題】良好な耐寒性が得られ、低温雰囲気の施工現場であっても良好な作業性が得られる壁紙を提供すること。
【解決手段】合成樹脂層を有する壁紙であって、合成樹脂層は、フタル酸エステル系可塑剤を含有せず、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤を45〜60重量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂層を有する壁紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁紙とは、主に建築物の壁や天井などに内装仕上げとして貼り付けるものであり、意匠性を高めるために種々の印刷や表面への凹凸模様が施されているのが一般的である。
【0003】
壁紙には、基材の紙の裏面に裏打紙を貼着した紙単体からなるものと、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂層と紙層とを積層したものがある。後者の合成樹脂層を有する壁紙の製法は、普通紙などからなる紙層にポリ塩化ビニルの発泡性ペーストゾルをコーティングする方法(ペースト法)と、紙層にカレンダー成形された発泡ポリ塩化ビニルシートを貼着する方法(カレンダー法)が知られている。
【0004】
下記特許文献1には、ポリ塩化ビニル系発泡樹脂層を有する壁紙において、カレンダー成形によって得られるポリ塩化ビニル系発泡樹脂層が、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、フタル酸エステル系可塑剤を30〜100重量部、金属石ケンを1〜6重量部、充填剤を40〜150重量部、酸化チタンを5〜50重量部、発泡剤を1〜7重量部含有するものが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、壁紙におけるポリ塩化ビニル系樹脂層の可塑剤成分として、アジピン酸系可塑剤(A)とフタル酸系可塑剤(B)の混合物を用い、その割合(A/B)を60/40〜10/90としたものなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−301385号公報
【特許文献2】特開2005−29621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂層を有する壁紙においては、合成樹脂層に加えられる可塑剤は大半がフタル酸エステル系可塑剤であり(特許文献1参照)、一部でアジピン酸エステル系可塑剤とフタル酸エステル系可塑剤の混合物が用いられている(特許文献2参照)。このような、フタル酸エステル系可塑剤を用いた従来の合成樹脂層を有する壁紙は、冬場の雰囲気温度が低くなった環境下で施工する場合に、壁紙を糊付けするに際して、壁紙の湾曲(カール)が強くなって貼り付けの作業性が悪化する問題が生じる。これにより、寒冷地での施工や寒い季節での施工では良好な作業性が得られない問題があった。また、アジピン酸系可塑剤を用いた合成樹脂層を有する壁紙は、耐寒性は向上するが、経時での表面へのブルーム(合成樹脂層表面に可塑剤が浮き出る現象)が早く、長期使用時に外観性が悪化しやすい問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、良好な耐寒性が得られ、低温雰囲気の施工現場であっても良好な作業性が得られる壁紙を提供すること、長期使用時にも良好な外観性を維持することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による壁紙は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
合成樹脂層を有する壁紙であって、前記合成樹脂層は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤を45〜60重量部含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の壁紙は、合成樹脂層を有する壁紙であって、合成樹脂層がポリ塩化ビニル100重量部に対してテレフタル酸エステル系可塑剤を45重量部以上含有するので、低温雰囲気での施工において湾曲(カール)が少なく、良好な耐寒性、低温雰囲気での施工における良好な作業性を得ることができる。また、長期の使用時にもブルームによる外観性の悪化が起きにくい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る壁紙は、合成樹脂層を少なくとも1層備えている。より具体的には、本発明の実施形態に係る壁紙は普通紙などの紙層に合成樹脂層を積層することで得ることができる。合成樹脂層の形成は、従来技術と同様に、紙層にポリ塩化ビニルのペーストゾルをコーティングする方法(ペースト法)や、紙層にカレンダー成形されたポリ塩化ビニルシートを貼着する方法を採用することができる。
【0012】
合成樹脂層に用いるポリ塩化ビニルは、塩化ビニルの単独重合体、或いは塩化ビニルと他のビニル化合物との共重合体である。合成樹脂層の成分は、ポリ塩化ビニルとこれに加えられる可塑剤であり、更には、安定剤、充填剤、発泡剤、発泡調整剤、着色剤など、通常の塩ビ壁紙の基材層となる合成樹脂層に添加する各種成分を加えることができる。
【0013】
本発明の実施形態に係る壁紙では、可塑剤としてテレフタル酸エステル系可塑剤を用いる。テレフタル酸エステル系可塑剤は、テレフタル酸と2−エチルヘキサノールとからエステル化反応によって製造することができる。他の製法としては、テレフタル酸と2−エチルヘキサノールとを原料とするエステル化反応による製造方法、テレフタル酸ジメチルと2−エチルヘキサノールとを原料とするエステル交換反応による製造方法、又は、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂と2−エチルヘキサノールとを原料として、解重合を伴うエステル交換反応による製造方法等を挙げることができる。テレフタル酸エステル系可塑剤の一例としては、ジ−2−エチルヘキシルテレフタレート(DOTP)、ジブチルテレフタレート、ジイソブチルテレフタレートが挙げられる。なお、所謂フタル酸エステルは、一般にオルトフタル酸エステルのみを指しており、テレ(パラ)フタル酸エステルを含まない。本明細書はこの定義による。
【0014】
合成樹脂層におけるテレフタル酸エステル系可塑剤の配合割合は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して45〜60重量部が好ましい。テレフタル酸エステル系可塑剤の配合割合が少なすぎると低温施工時のカール抑制効果が低くなり、テレフタル酸系可塑剤の配合割合が多すぎると防火性が悪化し壁紙としての適正に欠けることになる。
【0015】
合成樹脂層の成分に加える安定剤としては、従来技術と同様に、金属石ケンを用いることができる。この金属石ケンは、脂肪族カルボン酸の金属塩で、脂肪酸亜鉛、脂肪酸マグネシウム塩、脂肪酸カルシウム塩又は脂肪酸バリウム塩、或いはこれらの組合せが好ましく、ポリ塩化ビニル100重量部に対し1〜6重量部程度用いることができる。特に、脂肪酸亜鉛と、脂肪酸バリウム、脂肪酸カルシウム及び脂肪酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の脂肪酸塩との組合せが好ましい。ポリ塩化ビニル100重量部に対し、脂肪酸亜鉛を2.0〜4.0重量部、或いは、脂肪酸バリウム、脂肪酸カルシウム及び脂肪酸マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の脂肪酸塩を2.0〜4.0重量部加えるのが好ましい。
【0016】
合成樹脂層の成分に加える充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、マイカ、合成珪酸、珪石粉、硫酸バリウムなどが用いられる。これらの中でも炭酸カルシウムがより好ましい。これらの充填剤はポリ塩化ビニル100重量部に対して40〜150重量部程度、特に、炭酸カルシウムは、難燃性を考慮すると、ポリ塩化ビニル100重量部に対して100〜140重量部用いることが好ましい。
【0017】
合成樹脂層の成分に加える発泡剤は、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)など、或いはこれらの混合物であり、その配合量は、例えば、ポリ塩化ビニル100重量部に対し1〜7重量部程度である。
【0018】
合成樹脂層の成分に加える発泡セル調整剤は、発泡セルの細かさ、均一さを調整するもので、数平均重合度で10〜800の(メタ)アクリル酸エステルポリマーを用いることができる。この(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、例えばアクリル酸イソブチルエステルポリマー、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステルポリマー、アクリル酸イソデシルエステルポリマー、アクリル酸ノニルエステルポリマー、アクリル酸ドデシルエステルポリマー、メタクリル酸イソブチルエステルポリマー、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステルポリマー、メタクリル酸イソデシルエステルポリマー、メタクリル酸ノニルエステルポリマー、メタクリル酸ドデシルエステルポリマーなどである。この発泡セル調整剤は、例えば、ポリ塩化ビニル100部に対して0.6〜1.5重量部程度用いる。
【0019】
合成樹脂層の成分に加える着色剤としては、酸化チタンがあり、これは白色の着色剤であって隠蔽性が良い。そのため光による変色を防ぐとともに、変色してもその変色を分かりにくくするために用いることができる。着色剤はポリ塩化ビニル100重量部に対し5〜50重量部程度用いることができる。また、必要に応じて、着色のために他の顔料を適宜の量で併用してもよい。
【0020】
ポリ塩化ビニル製の壁紙はポリオレフィン系の壁紙に比べ、カールしにくいことが知られている。しかし、ポリ塩化ビニル製の壁紙でも紙層の厚みが薄く、炭酸カルシウムの量が多いとカールしやすくなり、65g/m2程度の紙層では炭酸カルシウム100重量部以上では低温でのカールが問題となる。本発明の実施形態に係る壁紙は、可塑剤としてテレフタル酸エステル系可塑剤を用いることで、耐寒性を向上させることができ、低温雰囲気下で貼り付け作業を行っても、壁紙が強くカールして作業性を悪化させる不具合が生じ難い。このため、紙層が60〜70g/m2、炭酸カルシウム100〜140重量部の難燃性レベルの高い壁紙でも良好なカール性を示す。これによって、冬場や寒冷地域での施工性悪化を抑制することが可能になる。
【0021】
表1に本発明の実施例を示す。例1〜例4が本発明の実施例であり、例5,例6,例7が比較例である。各例は、普通紙に合成樹脂層を形成し、柄印刷、発泡処理(230℃で30秒加熱)、エンボス加工を行って得たサンプルである。各サンプルにおける合成樹脂層の形成は、普通紙に合成樹脂ペーストゾルを塗工する方法と、普通紙にカレンダー成形した合成樹脂シートを熱ラミネートする方法の両方を行った。
【0022】
表1において、着色剤以外の成分は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する重量部(PHR:Parts per Hundred parts of Resin)であり、着色剤は、樹脂への全配合剤を100重量部に対する添加割合(PHC: Parts per Hundred parts of Compound)である。各例の合成樹脂成分は、安定剤(Ba−Zn),充填剤(炭酸カルシウム),着色剤(白トーナー)の配合に関しては全ての例で共通であり、可塑剤の材料及び配合を例毎に変えている。紙層は65g/m2の普通紙を用いた。
【0023】
例1は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤(DOTP)が45重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。例2は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤(DOTP)が50重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。例3は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤(DOTP)が55重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。例4は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤(DOTP)が60重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。例5は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤(DOTP)が65重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。例6は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤(DOTP)が40重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。例7は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、フタル酸エステル系可塑剤(DINP)が50重量部、安定剤が3重量部、充填剤が120重量部、着色剤が10PHCである。
【0024】
例1〜例7に対して、常温23℃雰囲気下でのカール試験、低温5℃雰囲気下でのカール試験を行って試験結果の評価を表1に示した。カール試験は、各例のサンプルを常温23℃又は低温5℃雰囲気の環境下で30分間放置し、カールの度合いを評価した。評価において、「○」はカールしない、「△」はややカールする、「×」はカールする。
【0025】
例1〜例7に対して、発泡状態を面荒れ状態になっているか否かで目視評価した。評価において「○」は面荒れ状態でない、「△」はやや面荒れ状態、「×」は面荒れ状態である。
【0026】
例1〜7に対して、表面状態を接触感覚でヌメリ感が有るか否かで評価した。評価において、「○」はヌメリ感ない、「△」はややヌメリ感ある、「×」はヌメリ感ある。
【0027】
例1〜例7に対して、防火テストを行った。防火テストは、コーンカロリーメーターでの計測を行い、計測結果を表に示した。コーンカロリーメーターでの計測値が基準値(8MJ/m2)を超えないことが評価の対象となる。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の評価結果をみると、例1は発泡状態が「△」である以外は概ね良好な結果であり、例2は全ての評価項目で良好な結果であり、例3は表面状態が「△」である以外は概ね良好な結果であり、例4は表面状態が「△」である以外は概ね良好な結果であった。これに対して、例5は防火テストの計測値が基準値(8MJ/m2)を超えているので防火性に問題がある。例6は低温5℃雰囲気下でのカール試験の評価が「△」であると共に発泡状態の評価結果が「×」になった。例7は、低温5℃雰囲気下でのカール試験の評価が「△」であると共に表面状態の評価結果が「△」になった。
【0030】
合成樹脂層成分として、ポリ塩化ビニル100重量部に対してテレフタル酸エステル系可塑剤を45〜60重量部用い、可塑剤としてフタル酸系可塑剤を用いない例1〜例4は、常温23℃雰囲気下でのカール試験と低温5℃雰囲気下でのカール試験が共に「○」であり、他の評価項目も概ね良好であるから、合成樹脂層を有する壁紙として施工現場での気温が低温であっても良好な施工性を確保することができ、壁紙として高い品質を確保することができる。特に、合成樹脂層成分として、ポリ塩化ビニル100重量部に対してテレフタル酸エステル系可塑剤を50重量部用い、可塑剤としてフタル酸エステル系可塑剤を用いない例2は、良好な施工性が確保できると共に、発泡状態,表面状態,防火性の全ての項目で壁紙として高い品質を確保することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂層を有する壁紙であって、
前記合成樹脂層は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、テレフタル酸エステル系可塑剤を45〜60重量部含有することを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記合成樹脂層は、フタル酸エステル系可塑剤を含有しないことを特徴とする請求項1記載の壁紙。
【請求項3】
前記合成樹脂層は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、充填剤としての炭酸カルシウムを100〜140重量部含有することを特徴とする請求項1又は2記載の壁紙。
【請求項4】
前記テレフタル酸エステル系可塑剤は、ジ−2−エチルヘキシルテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の壁紙。

【公開番号】特開2012−184529(P2012−184529A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49520(P2011−49520)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】