説明

壁面造作材の接続構造

【課題】長尺の壁面造作材が収縮することによって、壁面造作材の接続部分における隙間の発生を有効に防止することができる壁面造作材の接続構造を提供する。
【解決手段】部屋のコーナ部における壁面Wの稜線を挟んで左右両側に幅木10、10がそれぞれ取り付けられており、双方の幅木10、10の間には、壁面Wの稜線に沿って、弾性部材20が圧縮状態で挟み込まれている。弾性部材20は、エラストマーまたはエラストマーを含む発泡体によって形成された、厚さ3mm程度の薄板状であり、幅木10の接続端面に対向する面が、幅木10の接続端面と同一形状及び同一寸法に形成されている。弾性部材20は、両面粘着シートを介して、幅木10の接続端面に貼着されており、幅木10、10の接続端面の間に挟み込まれた状態では、約半分の厚み(1.5mm程度)に圧縮されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幅木、周り縁、長押等の壁面に取り付ける壁面造作材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、部屋のコーナ部に幅木を取り付ける場合は、図9に示すように、接続端面の傾斜角度が45゜になるように切断した幅木50、50を、その接続端面同士を相互に突き合わせるようにして壁面Wに取り付けていた。
【0003】
ところで、幅木は通常長尺であるので、伸縮に伴う長手方向の寸法変化も大きく、上述したように、端面同士を相互に突き合わせるようにして接続すると、幅木50、50が長手方向に収縮した場合、図10に示すように、接続端面同士が相互に離反することによって接続部分に隙間Sが形成されるので、見苦しくなるといった問題がある。特に、コーナ部に形成された、幅木50、50間の隙間Sは目立ちやすいので、問題になりやすい。
【0004】
このため、図11(a)に示すように、内面側における長手方向の中央部に2つのV溝51、51が形成された所定長の幅木を、同図に矢印で示す方向に折り曲げることによって専用のコーナ部材50Aを形成し、このコーナ部材50Aを、壁面Wのコーナ部に取り付けることにより、コーナ部に隙間が発生しないようにしている。
【0005】
【特許文献1】特許第3186435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、幅木のコーナ部材は、ストレート部材を折り曲げて形成されているので、その折り曲げ部分において、幅木の外表面を形成している化粧シートが白化したり、掃除機の吸引ヘッド等が衝突することにより、化粧紙が破れやすいという新たな問題が発生する。
【0007】
また、部屋のコーナ部については、上述したような専用のコーナ部材を使用することにより、隙間の発生を防止することができるが、コーナ部材とストレート部材との接続部分やストレート部材同士の接続部分については、幅木の収縮に伴う隙間の発生を防止することはできない。
【0008】
そこで、この発明の課題は、長尺の壁面造作材が収縮することによって、壁面造作材の接続部分における隙間の発生を有効に防止することができる壁面造作材の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、壁面に取り付ける壁面造作材の接続構造であって、接続しようとする前記壁面造作材の間に、薄板状の弾性部材を圧縮状態で挟み込んだことを特徴とする壁面造作材の接続構造を提供するものである。
【0010】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明の壁面造作材において、前記弾性部材における前記壁面造作材の接続端面に対向する面が、前記壁面造作材の接続端面の形状と同一形状を有している点を特徴としている。
【0011】
また、請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明の壁面造作材において、前記弾性部材における前記壁面造作材の接続端面に対向する面が、前記壁面造作材の接続端面の寸法と同一または僅かに大きくなっている点を特徴としている。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1、2または3にかかる発明の壁面造作材において、前記弾性部材が、両面粘着シートを介して、前記壁面造作材の接続端面に貼着されている点を特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、請求項1にかかる発明の壁面造作材の接続構造では、接続しようとする壁面造作材の間に、薄板状の弾性部材が圧縮状態で挟み込まれているので、長尺の壁面造作材が収縮しても、圧縮されている弾性部材が伸張するので、壁面造作材の接続部分に隙間が形成されることがなく、壁面造作材の接続部分が見苦しくなることがない。
【0014】
特に、請求項2にかかる発明のように、壁面造作材の接続端面に対向する面が、壁面造作材の接続端面の形状と同一形状を有している弾性部材を使用すると、壁面造作材を壁面に取り付ける際に、壁面造作材の接続端面の形状にあわせて弾性部材をカットする必要がなく、効率よく施工することができる。
【0015】
また、壁面造作材の間に挟み込まれた弾性部材の周面が壁面造作材の接続端面の周縁よりも内側に窪んでいると、壁面造作材の間に隙間が形成されているかのような印象を受けるが、請求項3にかかる発明のように、壁面造作材の接続端面に対向する面が、壁面造作材の接続端面の寸法と同一または僅かに大きくなっている弾性部材を使用すると、壁面造作材の間に挟み込まれた弾性部材の周面が壁面造作材の接続端面の周縁よりも内側に窪むことがないので、壁面造作材の間に隙間が形成されているかのような印象をうけることがない。
【0016】
また、請求項4にかかる発明のように、弾性部材を、両面粘着シートを介して、壁面造作材の接続端面に貼着するようにしておくと、弾性部材を接着剤によって壁面造作材の接続端面に貼着する場合に比べて施工性がよい。
【0017】
特に、請求項5にかかる発明のように、弾性部材が発泡素材によって形成されている場合、弾性部材を接着剤によって壁面造作材の接続端面に貼着すると、接着剤が弾性部材の空隙部分に進入して、弾性部材の伸縮性能が低下し、壁面造作材が収縮したときに、その収縮に追従して伸張することができなくなり、壁面造作材の接続端面と弾性部材との間に隙間が形成されるおそれがあるが、弾性部材を、両面粘着シートを介して、壁面造作材の接続端面に貼着しておくと、弾性部材が発泡素材によって形成されている場合であっても、弾性部材の伸縮性能が低下することがなく、壁面造作材の接続部分における隙間の発生を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は、壁面造作材である幅木10を部屋のコーナ部において接続する場合の接続構造1を示している。この幅木の接続構造1では、部屋のコーナ部における壁面Wの稜線を挟んで左右両側に幅木10、10がそれぞれ取り付けられており、双方の幅木10、10の間には、壁面Wの稜線に沿って、弾性部材20が圧縮状態で挟み込まれている。
【0019】
前記幅木10は、図3(a)〜(c)に示すように、中質繊維板(MDF)によって形成された基材11と、この基材11の表面に貼着された合成樹脂シートからなる表面シート12とから構成されており、図2に示すように、接続端面ESの傾斜角度が45゜になるように切断されている。
【0020】
この幅木10は、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤によって、壁面Wに貼着されていると共に、前面に形成された長手方向に延びる装飾溝10a部分に隠し釘を打ち込むことによって壁面Wに固定されている。
【0021】
前記弾性部材20は、図4(a)、(b)に示すように、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム等のエラストマーまたはこういったエラストマーを含む発泡体によって形成された、厚さ3mm程度の薄板状であり、幅木10の接続端面ESに対向する面SSが、幅木10の接続端面ESと同一形状及び同一寸法に形成されている。
【0022】
この弾性部材20は、両面粘着シートを介して、幅木10の接続端面ESに貼着されており、幅木10、10の接続端面ES、ESの間に挟み込まれた状態では、同図(c)に示すように、約半分の厚み(1.5mm程度)に圧縮されている。
【0023】
以上のように、この幅木の接続構造1では、接続しようとする幅木10、10の間に、薄板状の弾性部材20が圧縮状態で挟み込まれているので、長尺の幅木10、10が収縮しても、圧縮されている弾性部材20が伸張することにより、幅木10、10の接続部分に隙間が形成されることがなく、幅木10、10の接続部分が見苦しくなることがない。従って、従来のように、幅木のコーナ部材を使用する必要もない。
【0024】
また、弾性部材20は、幅木10の接続端面ESに対向する面SSが、幅木10の接続端面ESと同一形状及び同一寸法に形成されているので、幅木10を壁面Wに取り付ける際に、幅木10の接続端面ESの形状にあわせて弾性部材20をカットする必要がなく、効率よく施工することができると共に、幅木10、10の間に挟み込まれた弾性部材20の周面が幅木10、10の接続端面ES、ESの周縁よりも内側に窪むことがないので、幅木10、10の間に隙間が形成されているかのような印象をうけることがない。
【0025】
また、弾性部材20を、両面粘着シートを介して、幅木10、10の接続端面に貼着しているので、弾性部材20を接着剤によって幅木10、10の接続端面ESに貼着する場合に比べて施工性がよい。
【0026】
特に、弾性部材20が発泡素材によって形成されている場合、弾性部材20を接着剤によって幅木10の接続端面ESに貼着すると、接着剤が弾性部材20の空隙部分に進入して、弾性部材20の伸縮性能が低下し、幅木10が収縮したときに、その収縮に追従して伸張することができなくなり、幅木10の接続端面ESと弾性部材20との間に隙間が形成されるおそれがあるが、この幅木の接続構造1では、弾性部材20を接着剤によって幅木10、10の接続端面ESに貼着していないので、弾性部材20が発泡素材によって形成されている場合であっても、弾性部材20の伸縮性能が低下することがなく、幅木10、10の接続部分における隙間の発生を確実に防止することができる。
【0027】
なお、上述した実施形態では、幅木10を壁面Wの突出したコーナ部において接続する場合の接続構造について説明したが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、幅木10を壁面Wの凹んだコーナ部において接続する場合や、図6及び図7に示すように、幅木10を壁面Wの平面部において接続する場合にも適用することができることは言うまでもない。
【0028】
また、図6及び図7に示すように、幅木10を壁面Wの平面部において接続する場合は、幅木10の接続端面ESが傾斜していないので、幅木10、10の間に挟み込まれる弾性部材20Aは、図8(a)、(b)に示すように、幅木10の接続端面ESに対向する面SSを、幅木10の長手方向に直行する方向の断面と同一形状及び同一寸法に形成しておく必要がある。従って、弾性部材20Aの幅は、上述した弾性部材20の幅よりも小さくなる。なお、幅木10、10の間に挟み込んだときの弾性部材20Aは、上述した弾性部材20と同様に、約半分の厚み(1.5mm程度)に圧縮されている(同図(c)参照)。
【0029】
また、上述した各実施形態では、弾性部材20、20Aを、幅木10の接続端面ESと同一寸法に設定しているが、これに限定されるものではなく、幅木10の接続端面ESよりも僅かに大きい寸法に設定してもよい。
【0030】
また、上述した各実施形態では、弾性部材20、20Aを、初期厚み(3mm)の約半分の厚み(1.5mm)に圧縮しているが、これに限定されるものではなく、弾性部材の初期厚み及び圧縮量は、予想される幅木の伸縮量に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、弾性部材20、20Aを両面粘着シートによって、幅木10の接続端面ESに貼着しているが、これに限定されるものではなく、接着剤等を用いて貼着するようにしてもよく、施工上問題がないのであれば、弾性部材を幅木の接続端面に特に貼着しなくてもよい。弾性部材が発泡素材によって形成されている場合は、上述したように、接着剤を使用すると、接着剤が弾性部材の空隙部分に進入することによって弾性部材の伸縮性能が低下するおそれがあるので、弾性部材を幅木の接続端面に貼着する場合は、両面粘着シートを使用したほうが望ましい。
【0032】
また、上述した実施形態では、幅木の接続構造について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、周り縁や長押等の壁面に取り付ける各種壁面造作材を接続する場合に適用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明にかかる壁面造作材の接続構造の一実施形態である幅木の接続構造を示す平面図である。
【図2】同上の幅木の接続構造を示す分解平面図である。
【図3】(a)は同上の幅木の接続構造に使用されている幅木を示す斜視図、(b)は同上の幅木を示す正面図、(c)は(b)のX−X線に沿った断面図である。
【図4】(a)は同上の幅木の接続構造に使用されている弾性部材を示す側面図、(b)は同上の弾性部材を示す正面図、(c)は同上の弾性部材を幅木の間に挟み込んだ圧縮状態を示す正面図である。
【図5】幅木を壁面の凹んだコーナ部において接続する場合の幅木の接続構造を示す平面図である。
【図6】幅木を壁面の平面部において接続する場合の幅木の接続構造を示す平面図である。
【図7】同上の幅木の接続構造を示す分解平面図である。
【図8】(a)は同上の幅木の接続構造に使用されている弾性部材を示す側面図、(b)は同上の弾性部材を示す正面図、(c)は同上の弾性部材を幅木の間に挟み込んだ圧縮状態を示す正面図である。
【図9】従来の幅木の接続構造を示す平面図である。
【図10】同上の幅木の接続構造の問題点を説明するための説明図である。
【図11】(a)は同上の問題点を解決するために採用されている幅木のコーナ部材を示す平面図、(b)は同上のコーナ部材を壁面におけるコーナ部に取り付けた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 幅木の接続構造
10 幅木
10a 装飾溝
11 基材
12 表面シート
20、20A 弾性部材
ES 接続端面
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付ける壁面造作材の接続構造であって、
接続しようとする前記壁面造作材の間に、薄板状の弾性部材を圧縮状態で挟み込んだことを特徴とする壁面造作材の接続構造。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記壁面造作材の接続端面に対向する面が、前記壁面造作材の接続端面の形状と同一形状を有している請求項1に記載の壁面造作材の接続構造。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記壁面造作材の接続端面に対向する面が、前記壁面造作材の接続端面の寸法と同一または僅かに大きくなっている請求項2に記載の壁面造作材の接続構造。
【請求項4】
前記弾性部材は、両面粘着シートを介して、前記壁面造作材の接続端面に貼着するようになっている請求項1、2または3に記載の壁面造作材の接続構造。
【請求項5】
前記弾性部材が、発泡素材によって形成されている請求項4に記載の壁面造作材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−144401(P2008−144401A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330480(P2006−330480)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)