説明

変位観測方法および変位観測システム

【課題】橋桁に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行う。
【解決手段】変位観測方法は、観測対象である橋桁2ないし床版7の側面をデジタルビデオカメラ200により撮影する工程と、前記撮影で得た映像から所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中に画像が含まれている部材がH型鋼4であり、鉛直方向の寸法が判明している所定箇所であるフランジ5に関し、各静止画像においてフランジ5を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う工程と、二値化処理された前記所定範囲の画像においてフランジ端部6を特定し、フランジ端部6の各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいてフランジ5の変位量を算定する工程とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位観測方法および変位観測システムに関するものであり、具体的には、橋梁の橋桁や床版に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種構造物は様々な外力によって変形を生じることがある。構造物に劣化、損傷などが生じている場合、そうした変形は大きくなる傾向にある。従って構造物の健全性を把握するために変形の観測は重要となる。従来の手法としては、構造物の観測箇所に達する仮設の足場を組み、該当観測箇所に測定子を当接させたダイヤルゲージを設置し、このダイヤルゲージの表示値を観測する手法があるが、観測に際し設置する仮設構造物が大がかりとなり計測が容易でなかった。別の手法として、構造物に振動センサや加速度計を取付け、その計測値の積分処理等を行って変位量を観測するといった技術も提案されている。また他にも、予め観測箇所の画像を撮影しておき、この画像と以後撮影した画像とのずれを観測箇所の変位量として求める手法などもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平1−36976号公報
【特許文献2】特開平5−339909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観測箇所に計測器具等を直接据え付けて目視観測を行うといった技術に比べ、いわゆる遠隔観測を可能にする点で、撮影画像に基づく変位観測の技術は優れているが、いくつかの課題が残されている。
【0005】
例えば、画像撮影の対象であり、撮影画像間での変位量比較の対象とする観測箇所について、その選定が難しいという課題がある。撮影画像間での変位を確実にとらえるためには、撮影可能な相応のサイズの部材を観測箇所として選定しておく必要があるが、そのような観測箇所の選定が出来ない場合、撮影画像間における画素変位と、実際の観測箇所の移動距離すなわち変位量との対応関係を考慮することが非常に難しくなる。この場合、良好な精度の変位量も得られないことになる。更に、従来技術において、観測箇所を正面から捉えた撮影を行えば、撮影画像間の変位量と実際の変位量との対応関係も単純であり、変位量算定も実行可能であるが、撮影時における撮影手段の視準方向が、観測箇所に正対していない場合、撮影画像間の変位量と実際の変位量との対応関係を定めることが難しく、変位量を求めること自体難しくなる。特に、所定スパンで橋脚間に渡された橋桁やそこに架設された床版においては、自動車や鉄道等の移動物体による変位が生じやすく、効率的で確実な変位観測の技術が求められていた。
【0006】
そこで本発明では、橋梁に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行う技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の変位観測方法は、観測対象である橋梁の橋桁ないし床版の側面をデジタルビデオカメラにより撮影する工程と、前記撮影で得た映像から所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中に画像が含まれている部材であり、鉛直方向の寸法が判明している所定箇所に関し、各静止画像において前記所定箇所を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う工程と、二値化処理された前記所定範囲の画像において前記所定箇所の端部を特定し、該特定した端部の各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいて前記所定箇所の変位量を算定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明では、鉛直方向の寸法が設計図書等から予め判明している部分を含み、その変位方向も垂直方向となる部材、すなわち橋桁や床版について画像を撮影し、その撮影画像の解析処理を行うとしているため、撮影画像中の画素の寸法方向と実際の観測箇所での変位方向が元々一致しており、撮影画像における画素の変位量と観測箇所における実際の変位量との関係も明らかで、視準方向が観測箇所に対し正対していなくとも、実際の変位量を精度良好に求めることが可能となる。その結果、該当部材の鉛直方向の変位が撮影できる範囲内であれば、視準方向に囚われずデジタルビデオカメラの設置と、該当部材の撮影を行えるため、観測対象の周囲に障害物が多く存在するといった状況であっても、大がかりな仮設等を伴うことなくそうした状況に柔軟に対応して変位観測を実現することができる。
【0009】
したがって、橋梁に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【0010】
なお、前記変位観測方法において、前記所定箇所についての所定時間毎の変位量についてフーリエ変換を実行し、前記所定箇所における変位の振動数を算定する工程を含むとしてもよい。本発明によれば、観測箇所に関して生じる変位がどのような振動数で生じているものか特定可能となり、例えば振動数に応じた変位対策なども考慮出来ることになる。
【0011】
また、本発明の変位観測システムは、観測対象である橋梁の橋桁ないし床版の側面を撮影するデジタルビデオカメラと、前記撮影でデジタルビデオカメラが得た映像データを取得し、該映像データから所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中に画像が含まれている部材であり、鉛直方向の寸法が判明している所定箇所に関し、各静止画像において前記所定箇所を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う処理と、二値化処理された前記所定範囲の画像において前記所定箇所の端部を特定し、該特定した端部の各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいて前記所定箇所の変位量を算定する処理を実行する情報処理装置と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、橋梁に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における変位観測システムの説明図である。
【図2】本実施形態における変位観測システムを構成する各装置類のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の変位観測方法の処理手順例を示す説明図である。
【図4】本実施形態の二値化画像例を示す説明図である。
【図5】本実施形態の変位例を示す説明図である。
【図6】本実施形態の処理結果例1を示す説明図である。
【図7】本実施形態の処理結果例2を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
−−−システム等の構成例−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態における変位観測システム10の説明図である。本実施形態の変位観測システム10(以下、変位観測システム10とする)は、橋梁に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行うものであり、図1に示すように、情報処理装置100およびデジタルビデオカメラ200で構成されている。変位に関する観測対象となるのは橋梁1の橋桁2ないし床版7となる。橋梁1を車両や鉄道など所定の重量を持った移動体が通行すれば、移動体の自重や移動速度の大きさ等に応じて橋桁2や床版7が振動したり沈み込んだりすることとなる。つまり橋桁2や床版7は鉛直方向に変位することになる。橋梁1の健全性を診断する場合、こうした橋桁2や床版7の変位を観測し変位量を得ておくことは重要である。
【0015】
橋梁1を構成する部材のうち、橋桁2については、例えばH型鋼4が構成に含まれることが多い。H型鋼4は仕様が規格化された部材であり、予め各箇所の寸法は判明している。H型鋼4は橋脚間に渡されて、その側面であるフランジ5の端部6を橋桁2の側面3に露出している。このフランジ端部6の厚みは仕様に応じて決まっており、つまり、鉛直方向の寸法が判明していると言える。
【0016】
そこで本実施形態では、一例としてH型鋼4のフランジ5の端部6について、その変位量を算定することとする。勿論、橋桁2を構成するH型鋼以外の部材、或いは床版7の構成部材であって、予め鉛直方向の寸法が判明している部分であれば、変位量の算定対象として採用できる。
【0017】
続いて、本実施形態の変位観測システム10を構成する各装置について、そのハードウェア構成を詳述する。図2は、本実施形態における変位観測システム10を構成する各装置らのハードウェア構成例を示す図である。本実施形態の変位観測システム10を構成する情報処理装置100は、コンピュータとして備えるべき、ハードディスクドライブなど不揮発性記憶装置たる記憶部101、RAMなど揮発性記憶装置たるメモリ103、記憶部101のプログラム102をメモリ103に読み出して実行するCPUたる演算部104、ユーザからの指示を受け付けるキーボードやマウス等の入力部105、処理結果を出力するディスプレイ装置やスピーカーといった出力部106、他装置とデータ授受を行うためのインターフェイス部107を備えている。
【0018】
また、変位観測システム10を前記情報処理装置100と共に構成するデジタルビデオカメラ200は、所定レベルのフレームレートで動画撮影が可能なビデオカメラであり、ビデオカメラとして備えるべき一般的構成は勿論具備している。このデジタルビデオカメラ200は、撮影用の光学系装置209や映像データの格納用媒体210(各種記録媒体とそのリーダライタ、ハードディスクドライブ等)の他に、映像データのデジタル処理など各種情報処理を実行するためのコンピュータチップが備わっている。このコンピュータチップは、不揮発性記憶装置たる記憶部201、揮発性記憶装置たるメモリ203、記憶部201からプログラム202をメモリ203に読み出して実行するCPUたる演算部204、および他装置とデータ授受を行うためのインターフェイス部207を含んでいる。
【0019】
続いて、変位観測システム10を構成する情報処理装置100の演算部104が、プログラム102の実行により実現する処理について説明する。情報処理装置100は、前記フランジ端部6を含む所定領域に対する撮影でデジタルビデオカメラ200が得た映像データを、例えば、デジタルビデオカメラ200のインターフェイス部207から取得し、該映像データから所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中に画像が含まれている部材であり、鉛直方向の寸法が判明している所定箇所、すなわちH型鋼4のフランジ端部6に関し、各静止画像において前記フランジ端部6を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う処理を実行する。
【0020】
画像の二値化処理は、例えば、画素の濃淡情報が一定閾値より小さければ白色、一定閾値より大きければ黒色といった具合に、各画素を黒白二色に振り分ける処理となる。こうした二値化処理の手法自体は従来手法を採用すればよい。また、こうした二値化処理を実行するためのプログラムが前記プログラム102には含まれている。
【0021】
なお、デジタルビデオカメラ200は、情報処理装置100からの映像データ取得要求をインターフェイス部207にて受け付け、この要求に応じて格納用媒体210から映像データを読み出し、これをインターフェイス部207を介して情報処理装置100に送信する。或いは、情報処理装置100のインターフェイス部107に接続された所定の読み取り装置に対し、ユーザがデジタルビデオカメラ200の格納用媒体210をセットし、前記読み取り装置が格納用媒体210から読み取った映像データを情報処理装置100に送るとしてもよい。
【0022】
また、前記情報処理装置は、二値化処理された前記所定範囲の画像において前記所定箇所の端部すなわちフランジ端部6を特定し、該特定したフランジ端部6の各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいて前記フランジ端部6の変位量を算定する処理を実行する。
【0023】
二値化処理された前記所定範囲の画像においてフランジ端部6を特定する処理は、情報処理装置100が、例えば入力部105にてユーザから該当画像の指定を受けて特定する場合があげられる。或いは、情報処理装置100が、フランジ端部6の形状パターンのデータ(例:フランジ端部6を描画する際の各線分の長さと描画角度等のデータ)を記憶部101に保持していて、その形状パターンに合致する黒色画素の集合体をフランジ端部6と認識するといった画像認識処理を行う場合もあげられる。
【0024】
また、特定したフランジ端部6の各静止画像間での画素数単位の変位は、例えば、各静止画像の座標平面上における、前記フランジ端部6に対応した画素の座標値を、一定時間間隔の静止画像間で比較し、各静止画像の前記座標値の間の距離を算定することで得られる。当然、画素の変位量がそのまま実際のフランジ端部6の変位量とならないから、その場合、画素の単位変位量(例:1ピクセル)あたりのフランジ端部6の実際の変位量(例:0.2mm)を示す係数値を情報処理装置100が記憶部101等に予め保持しておき、各静止画像の前記座標値の間の距離すなわち画素の変位量に前記係数値を乗算し、フランジ端部6の変位量を算定するとすればよい。
【0025】
ここで、CPU等の演算部によりプログラムを実行することで、必要な機能を実装する例をあげたが、必要な機能を実現する電子回路等を前記情報処理装置100やデジタルビデオカメラ200が備えていて、同様の処理を実行するとしても勿論問題ない。
【0026】
−−−変位観測方法の手順例−−−
次に、本実施形態における変位観測方法の処理手順について説明する。図3は、本実施形態における変位観測方法の処理手順例を示す説明図である。まず、変位観測対象である橋桁2の側面にレンズを向け、デジタルビデオカメラ200を設置する(s100)。橋桁2とデジタルビデオカメラ200との間の距離は、デジタルビデオカメラ200の望遠撮影機能において所定解像度で前記フランジ端部6を撮影できる距離となる。また、当然ではあるが、橋桁2におけるH型鋼4のフランジ端部6が撮影範囲に収まるよう、デジタルビデオカメラ200の設置高さ、上下左右のレンズ角度は調整される。
【0027】
上述のように設置がなされたデジタルビデオカメラ200のインターフェイス部207と、情報処理装置100のインターフェイス部107とは所定の通信ケーブル、ないし無線通信手段でデータ授受可能に接続しておくと好適である。
【0028】
デジタルビデオカメラ200は、観測担当者からの指示を例えばリモコンからの赤外線通信等を介して受信し、撮影を開始する(s101)。或いは、デジタルビデオカメラ200が、自身で備えるタイマー機能206等で予めセットされた一定時刻の到来を検知して、自律的に撮影を開始するとしてもよい。
【0029】
デジタルビデオカメラ200は、撮影の進行と共に、得られた映像データを格納用媒体210に格納している。或いは、デジタルビデオカメラ200はインターフェイス部207を介して接続された情報処理装置100に対し、映像データを一定時間毎またはリアルタイムにアップロードするとしてもよい。
【0030】
一方、情報処理装置100は、映像データ取得要求をデジタルビデオカメラ200に通知する(s102)。他方、デジタルビデオカメラ200は、情報処理装置100からの映像データ取得要求をインターフェイス部207にて受け付け、この要求に応じて格納用媒体210から映像データを読み出し、これをインターフェイス部207を介して情報処理装置100に送信する(s103)。或いは、情報処理装置100のインターフェイス部107に接続された所定の読み取り装置に対し、ユーザがデジタルビデオカメラ200の格納用媒体210をセットし、前記読み取り装置が格納用媒体210から読み取った映像データを情報処理装置100に送るとしてもよい。
【0031】
こうして情報処理装置100は、前記フランジ端部6を含む所定領域に関する映像データを、前記デジタルビデオカメラ200から取得し(s104)、記憶部101に格納する。また情報処理装置100は、前記ステップで取得した映像データを即座に或いは一定期間毎に記憶部101から読み出し、1/30秒といった所定時間毎すなわち各フレームの静止画像を抽出する(s105)。動画からの静止画像の抽出処理については既存の技術を適用すればよい。
【0032】
次に情報処理装置100は、前記ステップで抽出した各静止画像において、前記H型鋼4のフランジ端部6を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う(s106)。画像の二値化処理は、例えば、画素の濃淡情報(コントラスト情報)が示す値と一定閾値とを比較し、濃淡値が閾値より小さければ白色、逆に濃淡値が閾値より大きければ黒色といった具合に、各画素を黒白二色に振り分ける処理となる。こうした二値化処理の手法自体は従来手法を採用すればよい。また、こうした二値化処理を実行するためのプログラムが前記プログラム102には含まれている。
【0033】
続いて情報処理装置100は、前記ステップで二値化処理された前記所定範囲の画像において、前記所定箇所の端部すなわちフランジ端部6を特定する(s107)。二値化処理された前記所定範囲の画像(図4参照)においてフランジ端部6を特定する処理は、情報処理装置100が、例えば入力部105にてユーザから該当画像の指定(範囲指定や要素指定など)を受けて特定する場合があげられる。或いは、情報処理装置100が、フランジ端部6の形状パターンのデータ(例:フランジ端部6を描画する際の各線分の長さ、線分間の距離、描画角度等のデータ)を記憶部101に保持していて、その形状パターンに合致する黒色画素の集合体をフランジ端部6と認識するといった画像認識処理を行う場合もあげられる。
【0034】
情報処理装置100は、前記ステップで特定したフランジ端部6の、各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいて前記フランジ端部6の変位量を算定する(s108)。フランジ端部6の各静止画像間での画素数単位の変位は、例えば、各静止画像の座標平面上における、前記フランジ端部6に対応した画素の座標値を、一定時間間隔の静止画像間で比較し、各静止画像の前記座標値の間の距離を算定することで得られる。当然、画素の変位量がそのまま実際のフランジ端部6の変位量とならないから、その場合、既知の寸法値に対する画素数から単位画素あたりの変位量を示す係数値を情報処理装置100が記憶部101等に予め保持しておき、各静止画像の前記座標値の間の距離すなわち画素の変位量に前記係数値を乗算し、フランジ端部6の変位量を算定するとすればよい。
【0035】
例えば、図5の例で示すように、時刻Aの静止画像におけるフランジ端部6の所定画素xの座標値(10,10)、時刻Aから1/30秒後の時刻Bの静止画像における前記所定画素xの座標値(10,12)、とする。この場合、画素xは1/30秒の間に、“12−10”=2ピクセルだけ鉛直方向に移動したことがわかる。前記フランジ端部6の鉛直方向の寸法、すなわちフランジ端部6の実際の厚みが例えば20mmであり、静止画像中での該当箇所を示す画素の数が100ピクセルであった場合、画素1ピクセルあたりのフランジ端部6の実際の寸法値は0.2(mm)となる。これは鉛直方向における単位画素変位あたりの実際の変位量に相当する値であり、情報処理装置100はこの値を係数値として記憶部101に予め保持している。この場合、情報処理装置100は、前記画素xの変位量たる2ピクセルに対し、前記係数値である0.2を乗算し、前記時刻A−B間でのフランジ端部6の変位量を“2×0.2”=0.4(mm)と算定する。上述のように、画像中での画素変位とフランジ端部6での実際の変位は両者とも鉛直方向で一致し、前記単位画素変位あたりのフランジ端部6の実際の変位量も特定されているから、フランジ端部6に正対せず例えば斜め横方向からの撮影がなされた場合であっても、得られた画像に基づいた誤差の無い変位量算定が行えることになる。
【0036】
勿論、上述のように各フレーム毎にフランジ端部6の変位量を算定するのではなく、沈み込みなど比較的長いタイムスパンでの変位に着目して、例えば0.5秒間隔での変位量算定を行うといった処理形態を採用してもよい。
【0037】
情報処理装置100は、映像データから得られた各静止画像間に関して、上述したステップs108の処理を実行し、例えば、前記映像データから得ている全ての静止画像について処理を行って、その処理結果を出力部106に表示処理し(s109)、フローを終了することになる。処理結果としては図6に示すグラフのように、経過時間毎のフランジ端部6の変位量を示す折れ線グラフといったものがあげられる。
【0038】
なお、前記情報処理装置100は、図6に例示したような経過時間毎の変位量データについてフーリエ変換を実行し、前記フランジ端部6における変位の振動数を算定する(s110)としてもよい。この場合、前記情報処理装置100は、記憶手段101にてフーリエ変換のプログラムを予め備えており、これを呼び出して実行することとなる。フーリエ変換の実行によって、前記経過時間毎の変位量データから、例えば図7に示すような振動数特性のグラフが得られる。図7のグラフにおいては、フランジ端部6での変位が振動数30Hzで生じている例を示している。このように、観測箇所における変位の振動数が判明することで、例えばその振動数に関する共振対策を橋梁に施すなど、橋梁の管理をより効果的なものとすることも出来る。
【0039】
以上のような本実施形態によれば、橋梁に関する精度良好な変位観測を簡便かつ低コストで行うことが可能となる。
【0040】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 橋梁
2 橋桁
3 橋桁の側面
4 H型鋼
5 フランジ
6 フランジ端部
7 床版
10 変位観測システム
100 情報処理装置
101 記憶部
102 プログラム
103 メモリ
104 演算部
105 入力部
106 出力部
107 インターフェイス部
200 デジタルビデオカメラ
201 記憶部
202 プログラム
203 メモリ
204 演算部
206 タイマー機能
207 インターフェイス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象である橋梁の橋桁ないし床版の側面をデジタルビデオカメラにより撮影する工程と、
前記撮影で得た映像から所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中に画像が含まれている部材であり、鉛直方向の寸法が判明している所定箇所に関し、各静止画像において前記所定箇所を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う工程と、
二値化処理された前記所定範囲の画像において前記所定箇所の端部を特定し、該特定した端部の各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいて前記所定箇所の変位量を算定する工程と、
を含むことを特徴とする変位観測方法。
【請求項2】
前記所定箇所についての所定時間毎の変位量についてフーリエ変換を実行し、前記所定箇所における変位の振動数を算定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の変位観測方法。
【請求項3】
観測対象である橋梁の橋桁ないし床版の側面を撮影するデジタルビデオカメラと、
前記撮影でデジタルビデオカメラが得た映像データを取得し、該映像データから所定時間毎の静止画像を抽出し、該静止画像中に画像が含まれている部材であり、鉛直方向の寸法が判明している所定箇所に関し、各静止画像において前記所定箇所を含む所定範囲の画像について二値化処理を行う処理と、
二値化処理された前記所定範囲の画像において前記所定箇所の端部を特定し、該特定した端部の各静止画像間での画素数単位の変位と前記判明している寸法とに基づいて前記所定箇所の変位量を算定する処理を実行する情報処理装置と、
を含むことを特徴とする変位観測システム。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−7624(P2013−7624A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139711(P2011−139711)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】