説明

変圧器用支持脚

【課題】変圧器やドラム缶の曲面に対応し変圧器とドラム缶との間に横置きに設置することにより、確実に変圧器をドラム缶の中に固定することができる変圧器用支持脚を提供することを目的とする。
【解決手段】柱上変圧器とドラム缶の内壁との間に介設する支持脚において、前記柱上変圧器を押圧する変圧器押圧部材1と、前記ドラム缶の内壁を押圧する缶押圧部材4と、前記変圧器押圧部材1と前記缶押圧部材4を支持する脚部材7と、前記脚部材7に介在させた圧縮バネ13を備え、前記脚部8を前記圧縮バネ13に挿通し、前記脚部8を前記変圧器押圧部3の凹部に嵌入させた後、前記調整筒部10を回動させることによりその位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱上変圧器とドラム缶の内壁との間に介設する支持脚であって、ドラム缶内に柱上変圧器を固定するための変圧器用支持脚に関する。
【背景技術】
【0002】
配電部門における一般住宅等への供給方式として,6.6kV/100V・200V柱上変圧器(以下「変圧器」)を使用しており,変圧器内には絶縁油が入っている。この絶縁油は消防法により「第四石油類」と定められており,変圧器に密封されることで運搬容器への格納が省略されている。
【0003】
よって,損傷・発錆等により絶縁油の密封が困難と判断した場合,変圧器をドラム缶に格納し,密閉した状態で運搬している。
【0004】
しかしながら,ドラム缶に変圧器を格納しただけでは,運搬時における振動・揺れ等により,変圧器とドラム缶内壁が接触し,ドラム缶の損傷等が懸念される。そのため,ドラム缶に格納した変圧器を固定する技術が必要とされた。
【0005】
このような場合、従来はドラム缶と変圧器との間に緩衝材としてネットに入れた仮埋め戻し材やタイヤチューブを詰めていた。しかし、ネットに入れた仮埋め戻し材は変圧器の突起物に引っかかり作業性が悪かった。一方、タイヤチューブはエアーコンプレッサがないと膨らませられず、また、変圧器の突起でパンクするおそれもあった。
【0006】
この問題を解決するための技術としては、「床材用支持脚」(特許文献1)がある。本発明は、2枚の木質板の間に衝撃吸収板を介設した支持板と、該支持板の下方に圧縮バネを介在させて設けた脚体とを有し、支持板における衝撃吸収板の制振作用と、脚体と支持板とを独立させて装備させるための圧縮バネの制振作用により確実に振動を吸収して、階下への伝播音の大きさを確実に抑えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−256989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この「床材用支持脚」は、床スラブと床板の間に垂直に立てて用いるものである。よって、変圧器をドラム缶の中に固定するために変圧器とドラム缶との間に横置きに設置しようとしても、変圧器やドラム缶の曲面に対応できず脱落してしまう。
【0009】
したがって、本発明は、変圧器やドラム缶の曲面に対応し変圧器とドラム缶との間に横置きに設置することにより、確実に変圧器をドラム缶の中に固定することができる変圧器用支持脚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る変圧器用支持脚は、柱上変圧器とドラム缶の内壁との間に介設する支持脚において、前記柱上変圧器を押圧する変圧器押圧部材と、前記ドラム缶の内壁を押圧する缶押圧部材と、前記変圧器押圧部材と前記缶押圧部材を支持する脚部材と、前記脚部材に介在させた圧縮バネを備え、前記缶押圧部材は、缶押圧部と、該缶押圧部に固定された缶押圧面を有し、前記脚部材は、前記缶押圧面とは反対側の前記缶押圧部に固定されかつ外周面におねじを設けた脚部と、内周面にめねじを設け前記脚部に螺合された調整筒部を有し、前記変圧器押圧部材は、円筒状の凹部を有する変圧器押圧部と、前記円筒状の凹部とは反対側に固定された凹部を有する変圧器押圧面を有し、前記脚部を前記圧縮バネに挿通し、前記脚部を前記変圧器押圧部の凹部に嵌入させた後、前記調整筒部を回動させることによりその位置を調整することを特徴とする。
【0011】
これによれば、圧縮バネが強い伸張力で変圧器及びドラム缶を押圧し、変圧器とドラム缶の曲面との間に変圧器用支持脚を横置きに設置することができる。
【0012】
請求項2の発明に係る変圧器用支持脚は、請求項1に記載の変圧器用支持脚において、前記脚部が長手方向に縦長形状をした貫通孔を有し、前記変圧器押圧部は一対の孔を有し、ボルトを一方の前記孔から前記貫通孔を経由して他方の前記孔に挿通し、ナット留めすることを特徴とする。
【0013】
これによれば、変圧器押圧部材が脚部より脱落するのを防止することができる。
【0014】
請求項3の発明に係る変圧器用支持脚は、請求項1〜2に記載の変圧器用支持脚において、前記変圧器押圧面が発泡プラスチック材よりなることを特徴とする。
【0015】
これによれば、発泡プラスチック材は軽く丈夫で、変圧器の凸曲面を押圧しても変形やひび割れすることなく、また、滑らない。
【0016】
請求項4の発明に係る変圧器用支持脚は、請求項1〜3に記載の変圧器用支持脚において、前記缶押圧部が高反発性材よりなることを特徴とする。
【0017】
これによれば、缶押圧部が凹曲面に応じて変形することで圧力を均等に分散することができる。
【0018】
請求項5の発明に係る変圧器用支持脚は、請求項1〜4に記載の変圧器用支持脚において、前記缶押圧面が粘着性材よりなることを特徴とする。
【0019】
これによれば、変圧器用支持脚をドラム缶の内壁に粘着させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、凹部を有する変圧器押圧面により変圧器の凸曲面を安定して支持し、調整筒部を回動させることにより圧縮バネの伸張力を調整することができるので、変圧器とドラム缶の曲面との間に変圧器用支持脚を横置きに設置し、確実に変圧器をドラム缶の中に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る変圧器用支持脚の正面図である。
【図2】本発明に係る変圧器用支持脚の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明に係る調整筒部が上昇した変圧器用支持脚の正面図である。
【図5】本発明に係る圧縮バネが圧縮した変圧器用支持脚の正面図である。
【図6】本発明に係る変圧器用支持脚の使用フロー図である。
【図7】本発明に係る変圧器用支持脚の使用方法図1である。
【図8】本発明に係る変圧器用支持脚の使用方法図2である。
【図9】本発明に係る変圧器用支持脚の使用方法図3である。
【図10】本発明に係る変圧器用支持脚の使用方法図4である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は本発明に係る変圧器用支持脚の正面図、図2は本発明に係る変圧器用支持脚の平面図、図3は図2のA−A断面図、図4は本発明に係る調整筒部10が上昇した変圧器用支持脚の正面図、図5は本発明に係る圧縮バネ13が圧縮した変圧器用支持脚の正面図である。
【0024】
図1に示すように、変圧器用支持脚は、変圧器15を押圧する変圧器押圧部材1と、変圧器15を収容するドラム缶16の内壁を押圧する缶押圧部材4と、変圧器押圧部材1と缶押圧部材4を支持する脚部材7と、脚部材7に介在させた圧縮バネ13を備えている。
【0025】
缶押圧部材4は、缶押圧部5と、缶押圧面6とは反対側の缶押圧部5の左右に接着により固定された二つの缶押圧面6を有する。缶押圧部5と缶押圧面6が一定の面積を有し、安定にドラム缶16の内壁を押圧する。なお、缶押圧面6は缶押圧部5の左右に限らず、缶押圧部5一面に接着してもよい。
【0026】
脚部材7は、脚部8と調整筒部10を有する。脚部8は、缶押圧面6とは反対側の缶押圧部5にネジ留めにより固定され、かつ、外周面におねじが設けられている。この調整筒部10は、内周面にめねじが設けられ、脚部8に螺合されている。
【0027】
図1及び図4に示すように、調整筒部10を回動させることにより脚部8における調整筒部10の位置を調整し、変圧器用支持脚を伸縮することができる。なお、脚部8の缶押圧部5への固定方法は、ネジ留めに限らず接着など他の方法でも良い。
【0028】
変圧器押圧部材1は、変圧器押圧部3と変圧器押圧面2を有する。変圧器押圧部3は円筒状の凹部を有する。また、変圧器押圧面2は、変圧器押圧部3の円筒状の凹部とは反対側にネジ留めにより固定されている。変圧器押圧面2が凹部を有することより、変圧器15の凸曲面との密着性を向上させ荷重の分散を図るため、ずれることなく安定に変圧器15を支持する。なお、変圧器押圧面2の変圧器押圧部3への固定方法は、ネジ留めに限らず接着など他の方法でも良い。
【0029】
図1及び図4に示すように、脚部8を圧縮バネ13に挿通し、脚部8を変圧器押圧部3の凹部に嵌入させた後、調整筒部10を回動させることにより圧縮バネ13の伸縮を調整することができる。
【0030】
図1及び図5に示すように、この圧縮バネ13が変圧器押圧部3と調整筒部10に介在し伸縮することにより、変圧器押圧部材1は変圧器を押圧し確実に支持する。
【0031】
図1に示すように、脚部8は長手方向に縦長形状をした貫通孔9を有し、変圧器押圧部3は一対の孔12を有する。そして、図2、3に示すように、ボルト11を一方の孔12から貫通孔9を経由して他方の孔12に挿通し、ナット14留めする。これにより、変圧器押圧部材1が脚部8より脱落するのを防止する。
【0032】
ここで、変圧器押圧面2は、発泡プラスチック材よりなる。発泡プラスチック材は軽く丈夫で、変圧器15の凸曲面を押圧しても変形やひび割れすることなくまた滑らないため、安定に変圧器15を支持する。
【0033】
缶押圧部5は、高反発性材である高反発ウレタンからなる。高反発ウレタンは変圧器用支持脚を伸張してドラム缶16の凹曲面を押圧すると、凹曲面に応じて変形することで圧力を均等に分散するため、安定にドラム缶16を支持する。なお、高反発性があれば高反発ウレタンに限らず、他の高反発性材でもよい。
【0034】
また、缶押圧面6は、粘着性材であるスチレン系ゴムからなる。変圧器用支持脚をドラム缶16の内壁に粘着させることができ、仮取付が可能となる。
【0035】
このように、変圧器用支持脚は圧縮バネ13を脚部8に有し調整筒部10を回動させることにより伸縮できるので、変圧器15とドラム缶16の内壁との間隔に合わせて変圧器用支持脚を設置することができる。変圧器押圧面2が凹部を有し発泡プラスチック材よりなるので、変圧器15を安定に支持することができる。また、缶押圧部材4は、高反発ウレタンからなる缶押圧部5とスチレン系ゴムからなる缶押圧面6を有するので、ドラム缶16の内壁に粘着し変形することで安定にドラム缶16を支持することができる。
【0036】
次に、本発明の実施形態に係る変圧器用支持脚の使用方法を説明する。
【0037】
図6は本発明に係る変圧器用支持脚の使用フロー図、図7〜10は本発明に係る変圧器用支持脚の使用方法図1〜4を示す。
【0038】
まず、図7に示すように、変圧器15をドラム缶16の中央付近に設置する(ステップ601)。
【0039】
次に、図8に示すように、変圧器15の周囲3方向に、変圧器用支持脚の調整筒体を缶押圧部5に寄せた状態で、圧縮バネ13を縮めながらスチレン系ゴムからなる缶押圧面6をドラム缶16の内壁に粘着させる。(ステップ602)。
【0040】
次に、図9に示すように、圧縮バネ13を伸張させて仮取付するとともに,変圧器15の位置を微調整する(ステップ603)。缶押圧面6の粘着性と圧縮バネ13の伸張力により変圧器用支持脚は脱落せず、仮取付することができる。
【0041】
次に、図10に示すように、調整筒体を回動させて変圧器押圧部材1側に寄せ、変圧器15を固定する(ステップ604)。調整筒体を変圧器押圧部材1側に寄せ圧縮バネ13を圧縮するので、圧縮バネ13が強い伸張力で変圧器15及びドラム缶16を押圧する。この圧力により缶押圧部5がドラム缶16の凹曲面に応じて変形し、また、変圧器押圧面2の凹部が変圧器15の凸曲面との密着性を向上させるので、確実に変圧器15をドラム缶16の中に固定することができる。
【0042】
このように、スチレン系ゴムからなる缶押圧面6の缶体への接着性および圧縮バネ13の伸張力により変圧器用支持脚を仮取付することができ,一人の作業でも変圧器15をドラム缶16内に固定することができる。なお、変圧器用支持脚は3個に限らず、4個以上でもよい。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0044】
変圧器用支持脚を試作し、3方向の変圧器用支持脚により変圧器15をドラム缶16内に固定した。そして、変圧器15を固定したドラム缶16をトラックで運搬試験し,揺れ・振動を与えたが,ドラム缶16の破損・変形等なく構造上問題ないことを確認した。
【符号の説明】
【0045】
1 変圧器押圧部材
2 変圧器押圧面
3 変圧器押圧部
4 缶押圧部材
5 缶押圧部
6 缶押圧面
7 脚部材
8 脚部
9 貫通孔
10 調整筒部
11 ボルト
12 孔
13 圧縮バネ
14 ナット
15変圧器
16 ドラム缶

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱上変圧器とドラム缶の内壁との間に介設する支持脚において、
前記柱上変圧器を押圧する変圧器押圧部材と、前記ドラム缶の内壁を押圧する缶押圧部材と、前記変圧器押圧部材と前記缶押圧部材を支持する脚部材と、前記脚部材に介在させた圧縮バネを備え、
前記缶押圧部材は、缶押圧部と、該缶押圧部に固定された缶押圧面を有し、
前記脚部材は、前記缶押圧面とは反対側の前記缶押圧部に固定されかつ外周面におねじを設けた脚部と、内周面にめねじを設け前記脚部に螺合された調整筒部を有し、
前記変圧器押圧部材は、円筒状の凹部を有する変圧器押圧部と、前記円筒状の凹部とは反対側に固定された凹部を有する変圧器押圧面を有し、
前記脚部を前記圧縮バネに挿通し、前記脚部を前記変圧器押圧部の凹部に嵌入させた後、前記調整筒部を回動させることによりその位置を調整することを特徴とする変圧器用支持脚。
【請求項2】
前記脚部は長手方向に縦長形状をした貫通孔を有し、前記変圧器押圧部は一対の孔を有し、ボルトを一方の前記孔から前記貫通孔を経由して他方の前記孔に挿通し、ナット留めすることを特徴とする請求項1に記載の変圧器用支持脚。
【請求項3】
前記変圧器押圧面は、発泡プラスチック材よりなることを特徴とする請求項1〜2に記載の変圧器用支持脚。
【請求項4】
前記缶押圧部は、高反発性材よりなることを特徴とする請求項1〜3に記載の変圧器用支持脚。
【請求項5】
前記缶押圧面は、粘着性材よりなることを特徴とする請求項1〜4に記載の変圧器用支持脚。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−248586(P2012−248586A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117518(P2011−117518)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】