説明

変形印字媒体矯正機構を備えた印字装置

【課題】印字媒体の曲がり癖等の変形を矯正する変形媒体矯正機構を備えた印字装置を提供する。
【解決手段】磁気ストライプ40と印字欄とを有する冊子状の印字媒体11を取り扱う印字装置において、磁気ストライプ40に対し磁気データの読み書きを行う磁気データ処理部と、印字媒体11を印字ヘッドがプラテンに押圧しながら印字欄に印字を行う印字処理部とを有し、磁気データ処理部による磁気ストライプ40の磁気データに対する読み取り不良が発生したとき、読み取り不良発生部に対応する位置に印字媒体11の変形41が在ると判断し、読み取り不良発生部に対応する位置の印字欄に対し、印字処理部による空印字を行って、プラテンと印字ヘッドによる印字媒体11への押圧により変形を矯正する。その後、磁気データ処理部による磁気ストライプ40の磁気データの読み取りを再度行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ストライプと印字欄とを有する帳票等の印字媒体に磁気情報の読み書きと印字情報の印刷とを行う印字装置において、印字媒体の曲がり癖等の変形を矯正する変形媒体矯正機構を備えた印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ATM(automated teller [telling] machine)等において、通帳挿入口に挿入された磁気ストライプ付きの通帳の磁気ストライプに対し磁気データの読み書きする磁気ヘッドと、通帳の金額記載欄に金額を印刷する印字ヘッドとを備えた通帳プリンタ装置、通帳取扱い装置、磁気ストライプ処理装置等がある。(例えば、特許文献1、2、3参照。)
特許文献1は、通帳上の磁気ストライプの位置が顧客毎に変わっていても、同一の装置で対応することが可能な通帳プリンタ装置を提供するというものである。
【0003】
この特許文献1は、磁気ヘッドと印字ヘッドが一体化され、検知された媒体の厚さに応じて印字ヘッドと媒体間のギャップを安定させるトルクリミッタと、カムシャフトに支持されて媒体を印字ヘッドに一定の圧力で押し付けるプラテンを備えている。
【0004】
特許文献2は、通帳の変形、特に綴じ部の変形を機械的に修正し、ストライプとヘッドの接触性能を高め、情報の読み書きの信頼性上げることができる通帳取扱い装置を提供するというものである。
【0005】
この特許文献2は、通帳をはさんで印字ヘッドと反対側にある通帳搬送路面に、通帳綴じ部を押付けるアーム又はカムなどから成る押付け機構を設け、更に、通帳搬送路面の通帳綴じ部が位置する場所に通帳の厚さと同等又はそれ以上の段差をつける構成が示されている。
【0006】
特許文献3は、通帳の厚さや紙質、綴じ目の折り癖に違いがあっても、その変形量に応じて磁気ヘッドを確実に磁気ストライプに当接できるようにして、磁気ヘッドによる磁気データの書込み読込みが不良となることを低減する磁気ストライプ処理装置を提供するというものである。
【0007】
この特許文献3は、厚さ測定機構により通帳の厚さを測定し、測定された厚さに応じてMSガイドという押圧部材により通帳を押圧して、通帳と磁気ヘッド間のギャップを一定に安定させ、磁気ヘッドによる磁気データの書込み読込みを行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−230626号公報
【特許文献2】特開平05−046795号公報
【特許文献3】特開2007−335041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1、2、3は、いずれも通帳の頁の移動による通帳の厚さの変化や、綴じ目の折り癖による通帳の厚さの変化に対応して、通帳と磁気ヘッド間のギャップが一定になるように通帳を押圧して、磁気ヘッドによる磁気データの書込み読込みを行うというものである。
【0010】
ところで、磁気ヘッドによって磁気データを読み書きされる磁気ストライプと磁気ヘッドとの関係は、通帳の頁の移動や綴じ目の折り癖による通帳の厚さの変化によって変動するばかりではない。
【0011】
通常、磁気ストライプ付きの通帳の磁気ストライプは、通帳の綴じ目に沿って形成されることはなく、通帳の縁部に沿って形成されている。ところが、顧客によっては、通帳の取扱いが丁寧でないために、通帳の縁部に曲がり癖が付いているものが有る。
【0012】
このような曲がり癖が付いている縁部に沿って磁気ストライプが形成されている通帳の場合、磁気ストライプにも通帳の縁の曲がり癖に応じた曲がり癖が付いているので、その通帳がATM等の通帳挿入口に挿入されると、曲がり癖が付いている部分で磁気ストライプと磁気ヘッドとの間にギャップ差が生じる。
【0013】
磁気ストライプと磁気ヘッドとの間にギャップ差が生じると、磁気ヘッドによる磁気ストライプの磁気データを読み取る読取出力が低下し、磁気データ読み取り不良となって、通帳の印字処理ができず顧客に通帳を返却して、再度挿入し直すことを促すことになる。
【0014】
顧客は、ATM側の故障であると考えるのが一般的であるから、通帳を返却されて再度挿入し直す手間は、顧客の不満を招くことになって好ましくない。
ところが、上記の特許文献1、2、3は、いずれも通帳の頁の移動による通帳の厚さの変化や綴じ目の折り癖による通帳の厚さの変化に磁気ヘッドが対処できるとの記載はあるものの、縁部の曲がり癖による磁気ストライプと磁気ヘッド間のギャップ差による磁気データの読取不良についてまでは考慮されていない。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、磁気ストライプと印字欄とを有する帳票等の印字媒体に磁気情報の読み書きと印字情報の印刷とを行う印字装置において印字媒体の曲がり癖等の変形を矯正する変形媒体矯正方法及びその方法を有する印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の変形媒体矯正機構を備えた印字装置は、磁気ストライプと印字欄とを有する冊子状の印字媒体に磁気情報の読み書きと印字情報の印刷とを行う印字装置において、上記印字媒体の上記磁気ストライプに対し磁気データの読み書きを行う磁気データ処理部と、上記印字媒体を印字ヘッドがプラテンに押圧しながら上記印字欄に印字を行う印字処理部と、制御部と、を有し、上記制御部は、上記磁気データ処理部による上記磁気ストライプの上記磁気データに対する読み取り不良が発生したとき、該読み取り不良発生部に対応する位置に上記印字媒体の変形が在ると判断し、上記読み取り不良発生部に対応する位置の上記印字欄に対し、上記印字処理部による空印字を行って、該空印字による前記プラテンと前記印字ヘッドでの前記印字媒体の押圧により上記印字媒体の変形を矯正して、上記磁気データ処理部による上記磁気ストライプの上記磁気データの読み取りを再度行う、ように構成される。
【0017】
上記制御部は、例えば、再度行われた上記磁気データの読み取りにおいて、読み取り不良が発生したとき、上記印字欄の位置を変更して、上記変形の矯正と上記磁気データの読み取りを更に行う。この場合、上記制御部は、更に行われる上記変形の矯正と上記磁気データの読み取りを所定回数繰り返すようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、磁気の読み取りが正常でない変形した通帳等の媒体の変形部分に印字部で空印字して圧力を掛けて変形を矯正し、その後、磁気の読み取りを行うので、変形した媒体の磁気の読み取り率が向上し、これにより、顧客へ通帳を返却する通帳返却率が低減する。したがって、顧客の満足度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る印字装置の主要部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す印字装置の主要部の構成における付勢機構の第1のスプリングを説明するための一部を省略した側面図である。
【図3】図1に示す印字装置の制御ブロック図である。
【図4】図3の制御部による制御処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】図1ないし図3の印字処理部による印字媒体の変形矯正処理の具体的動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る印字装置を示す斜視図である。
図2は、実施例1に係る印字装置の一部を省略した側面図であり、付勢機構の第1のスプリングを説明するための図である。なお、図2には図1と同一の構成部分には図1と同一に番号を付与して示している。
【0022】
図1に示す印字装置1は、印字ヘッド2と、ギャップガイド3と、キャリッジ4と、ギャップ調整機構5(図24参照)と、ヘッド移動部6と、プラテン7と、付勢機構8と、付勢力調整機構9と、フレーム10と、を備えている。
【0023】
図1に示すように、印字ヘッド2は、下方に突出したヘッドピン2aの底面である印字面2bにおいて、図2に示す印字媒体11に印字する。なお、本例の印字装置1は、印字媒体11として、通帳、単票などの紙媒体を用いるのに適しているが、その他の印字媒体を用いてもよい。
【0024】
ギャップガイド3は、例えば金属からなり、印字ヘッド2の下方で印字ヘッド2及びキャリッジ4と相互に連結されている。また、ギャップガイド3は、印字媒体11の搬送方向D1よりも搬送幅方向D2に長い皿状を呈し、平面視において略矩形状をなしている。
【0025】
ギャップガイド3の底面には、図2に示すように、平面部3b、3cが形成されている。これら平面部3b,3cは、図1に示す印字ヘッド2の印字面2bを挟んで互いに反対側に位置して搬送幅方向D2において、印字ヘッド2の印字面2bの底面両側に形成されている。
【0026】
平面部3b、3cは、ギャップガイド3の最下端に位置し、例えばゴム系の樹脂からなるプラテン7とで印字媒体11を挟み込む。これにより、印字ヘッド2とギャップガイド3との相対位置によって、印字ヘッド2と印字媒体11とのギャップが決定される。
【0027】
ギャップガイド3には、長い皿状の長手方向中央部において、対向する2辺の周縁のうち図1において後部となる周縁の上面から、図2に示すように、上方に突出するブラケット部3dが形成されている。
【0028】
ブラケット部3dには、搬送方向のD1方向にブラケット部3dを貫通する2つの連結用孔(不図示)が形成されている。これら2つの連結用孔は、印字ヘッド2の連結用孔(不図示)と共に、キャリッジ4との連結に用いられる。
【0029】
なお、ブラケット部3dには、ギャップ調整機構5が係合する係合部(不図示)が形成されている。この係合部は、本例では、ブラケット部3dの根元部分において、ギャップガイド3の皿状の長手方向中央部において、搬送方向のD1方向にブラケット部3dを貫通するように形成されている。
【0030】
キャリッジ4は、図1に示すように、フレーム10のガイドシャフト12が、同軸に形成された2つの貫通孔4a,4b(4bは図1の斜視図では陰になって見えない)を搬送幅方向のD2方向に貫通するように配置されている。
【0031】
キャリッジ4には、搬送方向のD1方向に延びる2つの連結用ピン(不図示)が設けられている。これら2つの連結用ピンは、上述のギャップガイド3の2つの連結用孔及び印字ヘッド2の2つの連結用孔に挿入される。連結用ピンに、その挿入方向と反対側から連結用ネジがねじ込まれることで、印字ヘッド2とギャップガイド3とキャリッジ4とが一括して相互に連結される。
【0032】
ギャップ調整機構5は、本例では板バネである。ギャップ調整機構5は、ギャップガイド3のブラケット部3dの係合部に下端が係止している。
ギャップ調整機構5は、ブラケット部3dの係合部からギャップガイド3の内周面側を鉛直上方に延びる鉛直部5aと、ブラケット部3dの上端からキャリッジ4側に水平に延びる水平部5bと、下方斜めに折り返されてブラケット部3dの手前まで延びる折り返し部5cとから成る。
【0033】
ギャップ調整機構5は、印字ヘッド2とギャップガイド3とキャリッジ4とが一括して相互に連結される際に、折り返し部5cが、キャリッジ4の内部に設けられた窪み(不図示)の底面により上方に押し上げられる。これにより、ギャップガイド3も上方に押し上げられる。
【0034】
これにより、ギャップガイド3は、印字ヘッド2に対し、連結用ネジの挿入方向に直交する高さ方向に突き当てられる。また、ギャップガイド3は、連結用ネジによって、連結用ネジの挿入方向にも印字ヘッド2に突き当てられるため、互いに交差する2方向に印字ヘッド2に突き当てられることになる。
【0035】
このように、ギャップ調整機構5は、印字ヘッド2とギャップガイド3との相対位置を規定位置に調整することで、図1に示す印字ヘッド2の印字面2b(印字ヘッド2)と、図2に示すギャップガイド3の平面部3b,3c(印字媒体11)とのギャップを規定量に調整する。
【0036】
次に、図1に示すヘッド移動部6は、モータ13と、歯付きプーリ14(14a、14b)と、歯付きベルト15とを備えている。モータ13は、例えばステッピングモータであり、モータ軸歯付きプーリ14bと他の歯付きプーリ14aの間に掛け渡された歯付きベルト15を往復回転させることにより、キャリッジ4をガイドシャフト12に沿って搬送幅方向のD2方向に往復移動させる。
【0037】
これにより、キャリッジ4に連結された印字ヘッド2及びギャップガイド3も、搬送幅方向のD2方向に往復移動し、印字ヘッド2は、ギャップガイド3によってヘッドピン2aの底面である印字面2bと搬送媒体11との間に所望のギャップを確保した状態で、搬送方向のD1方向に搬送されてくる図2に示す印字媒体11に対し印字する。
【0038】
図2に示す印字媒体11は、ギャップガイド3の平面部3b,3cとプラテン7との間に挟まれるように配置される。プラテン7は、図1に示す搬送幅方向のD2方向において、フレーム10のサイドフレーム16(16b、16a)の間の略全域に亘って延在している。
【0039】
なお、プラテン7は例えばゴム系の樹脂からなり、ギャップガイド3は例えば金属からなるため、平面部3b,3cの摩擦係数(動摩擦係数及び静摩擦係数)は、プラテン7のうち平面部3b,3cに対向する部分の摩擦係数よりも低い。
【0040】
図1に示す付勢機構8は、プラテン7及びギャップガイド3のうち、一方(本例ではプラテン7)を、プラテン7とギャップガイド3とが相対的に互いに接近する方向、即ち上方に付勢する。
【0041】
付勢機構8は、図1及び図2に示す第1のリンク17と、図1に示す第2のリンク18と、第3のリンク19と、複数の弾性部材としての図1及び図2に示す第1のスプリング21及び図1に示す第2のスプリング22とを備えている。
【0042】
第1のリンク17は、サイドフレーム16bを貫通する支点シャフト23を回動軸として図2の両方向矢印R1で示すように回動(揺動)可能に設けられている。第1のリンク17には、プラテン7の一端を保持する保持板24の端部が固定されている。
【0043】
第2のリンク18は、支点シャフト23を回動軸として回動(揺動)可能に設けられている。第2のリンク18には、プラテン7の他端を保持する保持板25の端部が固定されている。
【0044】
このようにプラテン7の両端は、保持板24及び25を介して第1のリンク17と第2のリンク18とに連結されているため、第1のリンク17及び第2のリンク18が支点シャフト23を回動軸として回動することで、プラテン7も、保持板24及び25を介し、支点シャフト23を回動軸として回動する。
【0045】
なお、第1のリンク17及び第2のリンク18の回動角度は一定範囲に限られており、プラテン7は支点シャフト23と同程度の高さに配置されるため、実際には、プラテン7が回動しても、プラテン7は、搬送方向のD1方向にはほとんど移動せず、上下方向に移動するのと同様の動きをする。
【0046】
なお、プラテン7は、プラテン7の回動軸26を介して保持板24及び25に保持されている。つまり、プラテン7は、回動軸26、保持板24及び25を介して第1のリンク17及び第2のリンク18に固定されている。
【0047】
そして、回動軸26を支点として、図2の両方向矢印a及びbで示すように回転動作するように構成されている。そして、印字媒体11の厚みが変化した場合、リンク17及び18が支点シャフト23を支点にして回動動作し、プラテン7の上下位置が変化する。
【0048】
プラテン7は、回動軸26、保持板24及び25を介して第1のリンク17及び第2のリンク18に固定されて、回動軸26を支点に回動するので、印字媒体11に対してプラテン7が押し付けられても、常にプラテン7の上面はギャップガイド3の平面部3b,3cと平行を保つことが可能な構造となっている。
【0049】
第1のスプリング21は、上端側が、サイドフレーム16bの外側の面から搬送幅方向のD2方向に延びるスタッド27に固定され、下端側が、第1のリンク17に固定されている。
【0050】
第1のスプリング21は、プラテン7とギャップガイド3の平面部3b,3cとが印字媒体11を挟み込んだ状態で、自由長よりも長くなるように引き伸ばされて固定されている。
【0051】
そのように、第1のスプリング21は、自由長に戻ろうとする引き付勢力を有している。その引き付勢力により、第1のリンク17が図2に示す支点シャフト23を支点にして時計回り方向に回動し、プラテン7を持ち上げる。このように、第1のスプリング21は、プラテン7を、ギャップガイド3と互いに接近する方向(上方)に付勢する。
【0052】
図1に示す第3のリンク19(図2では図示を省略)は、一端側において、第1のリンク17から外側に搬送幅方向のD2方向に延びるように設けられたスタッド28を回動軸として回動(揺動)可能である。
【0053】
また、第3のリンク19は、第1のリンク17に設けられたストッパ17aにより、通常ではロックされている。また、第2のスプリング22は、一端を第3のリンク19の自由端側に固定され、他端を第1のリンク17に固定されている。
【0054】
図1に示す付勢力調整機構9は、カム31と、図1及び図2に示すモータ32と、小径ギア33とを備えている。カム31は、大径ギア34に固定され、大径ギア34は小径ギア33に噛合している。
【0055】
モータ32は、例えばステッピングモータから成り、小径ギア33を正逆両方向に回転駆動する。これにより、大径ギア84が正逆両方向に回転し、カム31は、サイドフレーム16bのスタッド27を支点にして正逆両方向に回動する。
【0056】
カム31には、レバー部31aが設けられている。このレバー部31aは、カム31が図1における反時計回りに回転することにより、第3のリンク19をストッパ17aによりロックされた位置から押し上げ、ストッパ17aのロックを解除する。
【0057】
第3のリンク19が押し上げられると、この第3のリンク19に固定された第2のスプリング22が引き伸ばされる。すなわち、第2のスプリング22に引き付勢力が発生し、この引き付勢力は、第1のリンク17を時計回り方向に回動するよう付勢する。
【0058】
これにより、プラテン7には、第1のスプリング21による付勢力のみならず、第2のスプリング22による付勢力が加えられる。このように、付勢力調整機構9は、少なくとも1つの弾性部材として第2のスプリング22を、プラテン7を付勢する位置と、そこから退避した位置(第3のリンク19がストッパ17bによりロックされた位置)とに移動させる。
【0059】
なお、付勢力調整機構9が、第2のスプリング22を、プラテン7を付勢する複数の位置に移動させるようにし、第2のスプリング22のプラテン7に対する付勢力を複数段階に調整可能としてもよい。
【0060】
例えば、印字媒体11が単票(厚さの薄い媒体)の場合、第2のスプリング22による付勢を行わず、印字媒体11が通帳(分厚くなる根元部分を除く)の場合、第2のスプリング22を少し引き伸ばして付加的に小さな付勢力を得るようにし、印字媒体11が通帳の根元部分の場合、第2のスプリング22を大きく引き伸ばして付加的に大きな付勢力を得るようにすることで、最適な付勢力を得ることができる。
【0061】
このように、本例における付勢力調整機構9は、複数のスプリングのうち、少なくとも1つのスプリングとして第2のスプリング22を、プラテン7を付勢する位置と、そこから退避した位置(第3のリンク19がストッパ17bによりロックされた位置)とに移動させる。このように、必要に応じてプラテン7を付勢するスプリングの数を変化させて、印字媒体11に対し付勢力を大きく変化させることができる。
【0062】
図3は、本例における上記構成の印字装置1の制御ブロック図である。図3に示すように、制御ブロックは、制御部35、媒体搬送部36、磁気データ処理部37、印字処理部38が、バス39を介して相互に接続されている。
【0063】
媒体搬送部36は、図1及び図2では図示を省略した複数のローラ対、ガイド部、位置検知センサ等を備えて、これらの装置を制御し、図2に示した印字媒体11を、図1にD1で示した搬送方向に進退させ、所望の位置で印字媒体11を停止させる。
【0064】
また印字媒体11の進退搬送を行う主たるローラ対の駆動を行う不図示のモータには、ステッピングモータが使用される。制御部35は、ステッピングモータの駆動パルス信号によって、印字媒体11の基準位置からの搬送量を常に知ることができる。
【0065】
磁気データ処理部37は、これも図1及び図2では図示を省略したが、印字媒体11の印字面とは反対側、綴じ込みのある帳票であれば表表紙または裏表紙側に付加されている磁気ストライプに対し磁気データの読み書きを行う磁気ヘッドを備えている。
【0066】
磁気データ処理部37は、印字装置1の不図示の印字媒体挿入口から挿入される印字媒体11の磁気ストライプに対応する位置において、印字媒体11の搬送路内に摺動自在に配置されている磁気ヘッドに対し、印字媒体11の磁気ストライプに対して磁気データの読み書きを行うよう磁気ヘッドを制御する。
【0067】
印字処理部38は、図1及び図2に示した構成を備えている。印字処理部38は、搬送路内を搬送され、所望の位置で停止した印字媒体11の印字面に、印字ヘッド2の印字面2bにより、金額や摘要等の所定の印字を行う。
【0068】
また、印字処理部38は、詳しくは後述するが、印字媒体11の磁気ストライプが付加されている部分に対応する位置に折れや曲がり等の変形が生じていて、磁気ストライプの磁気データの読み取りに支障があるとき、所定の空印字処理を行って、印字媒体11の変形を矯正する。
【0069】
制御部35は、特には図示しないが、内部回路に、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(electrically erasable programmable ROM)等の記憶装置を備えており、ROMに格納されている制御プログラムに従って、上記の各部を制御する。
【0070】
図4は、図3の制御部35による制御処理の動作を示すフローチャートである。
図5は、図3のフローチャートに示す制御処理の動作において、印字処理部38による印字媒体11の変形矯正処理の具体的動作の例を示す図である。
【0071】
図4において、制御部35は、先ず、不図示の印字媒体挿入口から挿入された印字媒体11を印字装置1の内部に吸入(搬入)する(ステップS1)。
続いて、制御部35は、いま搬入した印字媒体11を停止させ、磁気ストライプを読み取る位置に設定する(ステップS2)。
【0072】
そして、制御部35は、磁気ヘッドに対し、印字媒体11の磁気ストライプに対して磁気データの読み取りを行うよう磁気ヘッドを制御する(ステップS3)。
続いて、制御部35は、磁気ヘッドからの出力信号が、一定の強さで安定したパルス信号ではない、すなわち、読み取り不良を示しているか、つまり、NGを示しているか否かを判別する(ステップS4)。
【0073】
そして、制御部35は、磁気ヘッドからの出力信号が読み取り良好を示していれば(S4の判別がNo)、磁気ストライプに対する磁気データの読み取りが正常に終了したと判断して、印字処理等の次の動作へ移行する(ステップS10)。
【0074】
一方、制御部35は、印字媒体11の磁気ストライプが付加されている部分に対応する位置に折れや曲がり等の変形が生じていて、磁気ストライプの磁気データの読み取りに支障があり、磁気ヘッドからの出力信号が読み取り不良「NG」を示していれば(S4の判別がYes)、続いて、そのNGは予め定められている指定回数以下であるか否か判別する(ステップS5)。
【0075】
この処理では、制御部35は、RAMまたはEEPROMに、予めNG回数設定領域とNG発生フラグ領域を設定し、NG回数設定領域には許容可能なNG回数nを予め設定し、NG発生フラグ領域の値mとして、ステップS1の印字媒体11の搬入の際に「0」を設定する。
【0076】
そして、NGが発生すると、NG発生フラグ領域の値mを「1」インクリメントして、その「1」インクリメントした値mと、NG回数設定領域に設定されている値nとを比較し、m≦nであるか否かを判別する。
【0077】
そこで、m≦nであるならば(S5の判別がYes)、制御部35は、媒体搬送部36を制御して、印字媒体11を、先のステップS2の処理において停止させた磁気ストライプ読み取り位置から、変形修正位置(本例ではプラテン位置)に移動させる(ステップS6)。
【0078】
続いて、制御部35は、発したNGが2回目以上のNGであるか否かを判別する(ステップS7)。この処理では、m≧2であるか否かを判別する処理であり、且つNG回数nの値は予めn≧3に設定されている必要がある。
【0079】
上記の判別で、m≧2なら(S7の判別がYes)、制御部35は、変形修正位置(プラテン位置)に移動させて停止させる停止位置(停止箇所)を、前回のNGのときに停止させた位置と異なる位置に変更する(ステップS8)。
【0080】
その後、制御部35は、印字処理部38を制御して、キャリッジ4を移動させ、但し印字ヘッド2による印字は行わない、いわゆる空印字を実行して、変形修復動作を実施する(ステップS9)。空印字とは、印字処理を行なわずに、印字媒体11を印字ヘッド2とプラテン7で挟み込み押圧(加圧)しながら、印字ヘッドを往復移動させることを言う。
【0081】
また、上記ステップS7の判別で、m≧2ではない、つまり1回目のNGの場合は(S7の判別がNo)、制御部35は、直ちにステップS9に移行して、変形修復動作を実施する。
【0082】
ここで、図5について説明する。図5は、印字媒体11の磁気ストライプ40が付加されている部分に対応する位置に折れや曲がり等の変形41が生じていることを示している。尚、変形41は折れや曲がり等の中心位置を示している。
【0083】
矢印cは、印字媒体11が磁気ストライプ読み取り位置から変形修正位置(プラテン位置)に移動してきた搬送方向を示している。また、矢印dはキャリッジ4の移動方向を示し、加圧ライン42は、キャリッジ4と共に移動するギャップガイド3とプラテン7とにより印字媒体11に加圧する領域を示している。
【0084】
本例では、このギャップガイド3とプラテン7とによる印字媒体11の変形部分への加圧処理によって、印字媒体11の変形を矯正し、磁気ストライプ40の磁気データの読み取りが正常に行われるように修復しようとするものである。
【0085】
図5に示す範囲Aは、図5の加圧ライン42の位置における空印字、つまり、ギャップガイド3とプラテン7とによる印字媒体11への最初の加圧では変形41が矯正されず、矢印cの反対方向にある磁気ストライプ読み取り位置に印字媒体11が搬送されて再度磁気ストライプの読み取りが実施されたとき、読み取り不良が再度発生し、つまりm≧2のとき、ステップS8の処理において、前回のNGのときに停止させた位置(図5の加圧ライン42)と異なる位置に変更すべき領域を示している。
【0086】
上記ステップS9における変形修復動作を実施処理、すなわち上述したギャップガイド3とプラテン7とによる印字媒体11への加圧処理が終了すると、制御部35は、ステップS2に戻り、ステップS2〜S9の処理を繰り返す。
【0087】
このように複数回(m回)の変形矯正処理で、印字媒体11の変形部分が少なくとも磁気ヘッドで磁気ストライプ40の磁気データを正しく読み取れるようになったとき、ステップS4の判別がNoとなって、磁気ストライプ40の磁気データの読み取りが正常に終了する。
【0088】
一方、ステップS5の判別で、NGの出現回数mが、所定の許容値nを越えていたときは、制御部35は、媒体搬送部36を制御して印字媒体11を印字媒体挿入口に送り戻し、印字媒体11を顧客に返却する(ステップS11)。
【0089】
尚、許容値nの設定は、変形修復動作を含む全体の処理動作時間が、顧客が待ち時間に不満を感じない範囲に経験的に設定される。
このように、本実施例によれば、磁気ストライプの部分が変形している印字媒体が、磁気ストライプの読取不良となった場合、予め設定されている磁気ストライプの位置を印字部のプラテン上に移動させ、印字媒体の変形部をキャリッジが移動して、ギャップガイドとプラテンとの圧力で変形部を矯正する。
【0090】
変形部矯正のための印字媒体の停止位置として、複数位置を設定するとさらに広範囲の変形を矯正可能となる。また、キャリッジの移動も印字媒体の変形部の同じ位置を複数回移動させることでさらに矯正力を高めることができる。
【0091】
このように変形部矯正処理を通常の印字装置に付け加えることにより、たとえ変形した通帳の場合であっても、磁気ストライプの磁気データの読み取り率を向上させ、変形通帳を顧客へ返却する通帳返却率を低減させ、顧客の不満感を取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、磁気ストライプと印字欄とを有する帳票等の媒体に磁気情報の読み書きと印字情報の印刷とを行う印字装置において印字媒体の曲がり癖等の変形を矯正する変形媒体矯正機構を備えた印字装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 印字装置
2 印字ヘッド
2a ヘッドピン
2b 印字面
3 ギャップガイド
3b、3c 平面部
3d ブラケット部
4 キャリッジ
4a 連結用孔
5 ギャップ調整機構
5a 鉛直部
5b 水平部
5c 折り返し部
6 ヘッド移動部
7 プラテン
8 付勢機構
9 付勢力調整機構
10 フレーム
11 印字媒体
12 ガイドシャフト
13 モータ
14(14a、14b) 歯付きプーリ
15 歯付きベルト
16(16b、16a) サイドフレーム
17 第1のリンク
17a ストッパ
18 第2のリンク
19 第3のリンク
21 第1のスプリング
22 第2のスプリング
23 支点シャフト
24、25 保持板
26 回動軸
27、28 スタッド
31 カム
32 モータ
33 小径ギア
34 大径ギア
35 制御部
36 媒体搬送部
37 磁気データ処理部
38 印字処理部
39 バス
40 磁気ストライプ
41 折れや曲がりの変形箇所の中心
42 加圧ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ストライプと印字欄とを有する冊子状の印字媒体に磁気情報の読み書きと印字情報の印刷とを行う印字装置において、
前記印字媒体の前記磁気ストライプに対し磁気データの読み書きを行う磁気データ処理部と、
前記印字媒体を印字ヘッドがプラテンに押圧しながら前記印字欄に印字を行う印字処理部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記磁気データ処理部による前記磁気ストライプの前記磁気データに対する読み取り不良が発生したとき、該読み取り不良発生部に対応する位置に前記印字媒体の変形が在ると判断し、前記読み取り不良発生部に対応する位置の前記印字欄に対し、前記印字処理部による空印字を行って、該空印字による前記プラテンと前記印字ヘッドでの前記印字媒体の押圧により前記印字媒体の変形を矯正して、前記磁気データ処理部による前記磁気ストライプの前記磁気データの読み取りを再度行う、
ことを特徴とする変形媒体矯正機構を備えた印字装置。
【請求項2】
前記制御部は、再度行われた前記磁気データの読み取りにおいて、読み取り不良が発生したとき、前記印字欄の位置を変更して、前記変形の矯正と前記磁気データの読み取りを更に行う、ことを特徴とする請求項1記載の変形媒体矯正機構を備えた印字装置。
【請求項3】
前記制御部は、更に行われる前記変形の矯正と前記磁気データの読み取りを所定回数繰り返す、ことを特徴とする請求項2記載の変形媒体矯正機構を備えた印字装置。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−28073(P2013−28073A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165674(P2011−165674)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】