説明

変換器用パルス幅整形回路及び渦流量計

【課題】誤計数(誤出力)防止に寄与する変換器用パルス幅整形回路及び渦流量計を提供する。
【解決手段】本発明の変換器用パルス幅整形回路6は、流量検出部1及び流量計数機構3間の更に波形整形装置4と誤出力防止装置5との間に設けられる。変換器用パルス幅整形回路6は、所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力があるとこの高周波数のパルス信号を結合して低周波数のパルス信号に変換した後、ローカット機能を有する誤出力防止装置5へ出力する。本発明では、このような変換器用パルス幅整形回路6を含む変換器2を備えて渦流量計が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換器用パルス幅整形回路と、この変換器用パルス幅整形回路を変換器の構成に含んでなる渦流量計とに関する。
【背景技術】
【0002】
渦流量計は、周知のように、流体の流れの中に渦発生体を配設したとき、所定のレイノルズ数範囲では、渦発生体から単位時間内に発生するカルマン渦の数(渦周波数)が気体、液体に関係なく流量に比例することを利用したもので、この比例定数はストローハル数と呼ばれている。渦検出用の検出センサとしては、熱センサ、歪みセンサ、光センサ、圧力センサ、超音波センサ等が挙げられ、これらは渦による熱変化、揚力変化等を検出することが可能なものになっている。渦流量計は、被測定流体の物性に影響されずに流量を測定できる簡易な流量計であって、気体や流体の流量計測に広く使用されている。渦流量計は、検出センサからのカルマン渦信号をトリガ回路でトリガして流量信号パルスを得るように構成されている。
【0003】
圧縮性流体の流量計測機構においては、流量計の下流又は上流側に設けられた締切弁を閉じて流れを停止する場合にも、気体の如き圧縮性流体によって閉じられた管路内で流体が圧縮・膨張して流体に脈動が生じてしまい、流量検出部が流体の移動を検知して、この流量検出部に接続した信号発信部が信号を発信し、恰も流量を計測したかの如くの状態になるという不都合がある。この流体揺動(脈動)によるノイズ信号以外には、流体の圧縮性にかかわらず、流量停止時において、配管の振動、電気的ノイズ等のノイズ信号が大きく、このノイズ信号がトリガレベルを超えた場合でも流量信号としてパルス化され、正常な計測が阻害される場合がある。この時、渦流量計に警報装置が設置されている場合には、警報が鳴ってしまうことになる。
【0004】
上記の不都合は、渦流量計の如く流量範囲が広く、流体の流速によって流量を積算検出する流量計に顕著に見受けられる。従来の流量計測装置においては、管路内の流量検出部とパルス信号を発生する信号(トリガ)との間に(シグナルコンディショナー)S/N比を高めるため、通常フィルタを配設してあるが、フィルタは流量範囲をカバーするように選定されているので上記の不都合は解消されないという問題点を有している。このような現象は、締切弁を開いて連続的に圧縮性流体を流し、この流量を計測している時には問題とならないが、実際に、締切弁は一日の大半が閉じられていることが多いので、圧縮性流体が管路内の脈動を流量として計数してしまうことになる。トリガレベルを拡大することによって、これらのノイズのトリガをある程度抑制することは可能であるが、トリガレベルの拡大により計測できる流量範囲も抑制されてしまうという弊害が生じてしまうことになる。
【0005】
下記特許文献1には、渦流量計における誤計数を防止するための誤計数防止装置に関する技術が開示されている。また、下記特許文献2には、下記特許文献1の技術を更に改良してなる誤出力防止装置(誤計数防止装置とも云える)に関する技術が開示されている。下記特許文献1及び2に開示される技術は、本願出願人の提案によるものである。
【0006】
下記特許文献1に開示される誤計数防止装置は、管路内の流量検出部に接続してパルス信号を発信する信号発信部と該信号を計数して流量を計数する計数機構との間に蓄積カウンタとタイマを配設することにより、タイマの設定時間内に蓄積カウンタが設定値に達しない場合は、揺動によるパルス信号の発生であるため、この誤パルス信号は遮断されて、計数機構へは送られず、流体の揺動によっては計数機構は積算を開始しないようにして誤計測を防止する、という特徴を有している。下記特許文献1において、誤計数防止装置の信号発信部は、フィルタとトリガとを備えるシグナルコンディショナーを含んでいる。
【0007】
下記特許文献1に開示される誤計数防止装置は、脈動による計数の状況を観察した結果、極短時間に計数範囲にはいるような信号を発生し、例えば10秒位の期間を平均するとフィルタの下限周波以下となるという点に着目して、流体の揺動による誤計数を防止するようにしたものである。
【0008】
一方、下記特許文献2に開示される誤出力防止装置は、流量検出部の渦信号検出センサから出力された信号が所定のトリガレベルを超えた時にパルスを出力するトリガ回路と、該トリガ回路から出力されたパルスを積分する積分回路と、該積分回路で積分された信号を入力信号とし、該入力信号の電圧と予め定めた上限電圧及び下限電圧とを比較しパルス化して出力する2つのコンパレータと、トリガ回路から出力されたパルスを計数するカウンタ回路と、2つのコンパレータからの両出力パルスを入力し論理演算を行い、カウンタ回路における計数値のリセットに係わる信号を出力する論理ICと、カウンタ回路における計数値が所定の値に満たない場合に、トリガ回路からの出力パルスを出力せず、カウンタ回路における計数値が所定の値になった場合に、トリガ回路からの出力パルスを出力するパルス出力手段とを有し、渦流量計はパルス出力手段で出力されたパルスを用いて被測定流体の流量又は流速の演算を行う、という特徴を有している。
【特許文献1】実公昭53−14199号公報
【特許文献2】特許第3564111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術にあっては、一定周波数以下のパルス信号を遮断(ローカット機能)し、且つ、連続して一定数以上のパルスを検出してはじめて流量信号と見なす(メモリー機能)ようになっている。このため、一定周波数以上であれば流量信号でないノイズ信号であっても、流量を計数する計数機構への出力が行われてしまうという問題点を有している。
【0010】
尚、渦流量計における検出センサの持つ固有振動数は、高周波域であることが知られている。従って、渦流量計が例えば配管振動等の影響を受けた場合を考えると、検出センサの持つ高周波域の固有振動数にて発信が行われてしまう恐れがある。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、誤計数(誤出力)防止に寄与する変換器用パルス幅整形回路及び渦流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の変換器用パルス幅整形回路は、流量検出部及び流量計数機構間の更に波形整形装置と誤出力防止装置との間に設けられ、所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力があるとこの高周波数のパルス信号を結合して低周波数のパルス信号に変換した後、ローカット機能を有する前記誤出力防止装置へ出力することを特徴としている。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、誤出力防止装置に入力するためのパルス信号のパルス幅が整形される。パルス幅の整形は、波形整形装置から所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力がある場合にパルスON幅が広くなるような結合が行われ、これ以外の場合には波形整形装置からのパルス信号が、ON幅が変化するものの結合のない状態で出力される。所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力があると、この高周波数のパルス信号は、波形が結合されて1つの低周波数のパルス信号に変換される。変換された低周波数のパルス信号は、ローカット機能を有する誤出力防止装置にて、カット対象となる低周波数となってカットされる。この時の誤出力防止装置によるカットは、実際には高周波数のパルス信号のカットとなることから、変換器全体として考えた場合、ローカット機能の他にハイカット機能も有することになる。
【0014】
請求項2記載の本発明の変換器用パルス幅整形回路は、請求項1に記載の変換器用パルス幅整形回路において、前記波形整形装置及び前記誤出力防止装置間で着脱自在となる装置接続部を有することを特徴としている。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、設置済みとなる既存の渦流量計に対して後付けすることが可能になる。本発明のパルス幅整形回路の汎用性を高めるとともに、既存の渦流量計ユーザの負担を低減することが可能になる。
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明の渦流量計は、請求項1又は請求項2に記載の変換器用パルス幅整形回路を含む変換器を備えることを特徴としている。
【0017】
このような特徴を有する本発明によれば、波形整形装置から所定値以上の高周波数のパルス信号がパルス幅整形回路に連続して入力されると、この高周波数のパルス信号はパルス幅整形回路において結合されて1つの低周波数のパルス信号に変換される。そして、変換された低周波数のパルス信号は、パルス幅整形回路が接続される誤出力防止装置にてカットの対象となりカットされる。ローカット機能を有する誤出力防止装置は、本発明のパルス幅整形回路によりハイカット機能も有することになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誤計数(誤出力)防止に寄与することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の変換器用パルス幅整形回路及び渦流量計の一実施の形態を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は動作説明図である。
【0020】
図1(a)において、渦流量計は、被測定流体が流通する測定管(流管)と、測定管内において流れに対向して配設され、カルマン渦を発生させる渦発生体と、渦発生体により発生したカルマン渦の信号を検出する流量検出部(渦信号検出部)1と、流量検出部1で検出された信号を変換してパルスを出力する変換器2と、変換器2からの出力パルスを計測することにより被測定流体の流量又は流速を演算・測定する流量計数機構3とを備えて構成されている。
【0021】
流量検出部1及び流量計数機構3の間に設けられる変換器2は、流量検出部1に接続される波形整形装置4と、流量計数機構3に接続される誤出力防止装置5と、波形整形装置4及び誤出力防止装置5の間でこれらに接続されるパルス幅整形回路6とを備えて構成されている。パルス幅整形回路6は、特に限定するものではないが、波形整形装置4と誤出力防止装置5との間に着脱自在に設けられている。パルス幅整形回路6は、波形整形装置4及び誤出力防止装置5に対する装置接続部を有している。
【0022】
波形整形装置4は、フィルタ回路7とトリガ回路8とを備えている。フィルタ回路7は、図示しないアンプにより増幅された交番電圧信号を濾波・整形してS/N比を高めるように構成されている。また、トリガ回路8は、流量検出部1から出力されフィルタ回路7を通過した信号が所定のトリガレベルを超えた時にパルスを出力するように構成されている。
【0023】
パルス幅整形回路6は、本形態においてマルチバイブレータICからなるものであって、所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力があるとこの高周波数のパルス信号の波形を、パルスON幅が広くなるように結合して1つの低周波数のパルス信号に変換した後、誤出力防止装置5へ出力することができるように構成されている。所定値とは、マルチバイブレータICで整形されるパルス幅に依存し、具体的な周波数は、その逆数となる。また、パルス幅整形回路6は、所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力以外に関し、ON幅が変化するものの結合がない状態で誤出力防止装置5へ出力することができるように構成されている。パルス幅整形回路6は、誤出力防止装置5へ出力するためのパルス信号のパルス幅を整形する機能を有している。尚、波形を結合して低周波数のパルス信号に変換することに関しては、図1(b)を参照しながら後述するものとする。
【0024】
誤出力防止装置5は、一種のメモリとしての機能を有している。具体的には、流量計数機構3への出力の前に、パルス幅整形回路6を介して入力されるパルス信号を全てメモリする機能を有している。このメモリは、あるメモリパルス数を設定し、設定したパルス数がメモリされるまでパルスを外部へ出力せず、メモリが飽和した段階から外部へ出力するようなものとなっている。また、誤出力防止装置5は、ローカット機能(ローカットフィルタ)を有している。具体的には、パルス幅整形回路6を介して入力されるパルス信号が所定の周波数以下であれば、波形をカットするとともにメモリををリセットするようなものとなっている。
【0025】
誤出力防止装置5は、特に限定するものではないが、本形態において、論理ICからなりローカット機能を有するタイマー回路9と、このタイマ回路9がCLRに接続されるカウンタ回路10と、カウンタ回路10に対して図示のように接続されるANDゲート11、12及びNOTゲート13とを備えている。
【0026】
次に、上記構成に基づき図1(a)及び(b)を参照しながらパルス幅整形回路6及び誤出力防止装置5の動作について説明する。尚、説明中の数値は一例であるものとする。また、説明からも分かるが、実際には高周波数のパルス信号がカットされることになることから、所定値以上の高周波数をハイカット周波数と呼ぶものとする。
【0027】
(1):ハイカット周波数(300Hz)以上のパルスが2つ以上連続で検出された場合には、パルス幅整形回路6により1つのパルスに結合され、この結果、周波数の低いパルスが誤出力防止装置5へ出力される。具体的には、例えば精度保証値としての最大流量時の周波数の時に、パルスON幅が周期に対して50%程度になるように予め設定しておき、ノイズと見なされる周波数(300Hz)以上のパルスが入力された場合には、この入力パルスが、パルスON幅が広くなるような格好で結合されて1つの低周波数のパルスに変換される。変換されたパルスは、誤出力防止装置5へ出力される。
【0028】
正常なパルス(300Hzを下回るパルス)は、パルス幅整形回路6においてパルスON幅が周期に対して50%程度になったとしても結合が生じないようになっている。すなわち、ON幅が変化するものの結合がない状態で誤出力防止装置5へ出力される。
【0029】
(2):(1)の結果、誤出力防止装置5のローカット設定値(図1(b)では70Hz)を下回っていれば誤出力防止装置5のローカットフィルタによりカットされる。つまり、流量計数機構3へは出力がなされず、変換器2からの出力パルスが計測されないことになる。従って、誤計数(誤出力)が防止される。
【0030】
(3):(1)の結果、誤出力防止装置5のローカット設定値(図1(b)では70Hz)以上であった場合には、誤出力防止装置5のローカットフィルタによりカットされることがなく、このままのパルスで流量計数機構3へ出力される。
【0031】
以上、本発明についてまとめると、一定周波数以上のパルス信号を、流量に係る信号でないと判断することができる。具体的には、最大流量時の周波数の時に、パルスON幅が周期に対して50%程度(一例であるものとする)になるように予め設定することで、最大流量の2倍以上の信号を出力させないようにすることができる。
【0032】
本発明は、高周波数域で遮断しきれなかったパルスを、パルス幅整形回路6とローカット機能を有する誤出力防止装置5とにより遮断することができる。仮に、高周波数域で遮断しきれなかったパルスをローカットでも取り除けないケースで考えると、この場合、本発明では従来に比べて格段にオーバートリガを緩和することができる。
【0033】
尚、高周波数域をCPU等にて取り除く手法が考えられる。しかしながら、この場合はCPUの性能をそれなりに高周波に対しても応答できるように設計する必要があることから、負荷が大きく実現性に欠けることになる。従って、本発明は高周波数域をCPU等にて取り除く手法よりも有用な発明であることが分かる。
【0034】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の変換器用パルス幅整形回路及び渦流量計の一実施の形態を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は動作説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 流量検出部
2 変換器
3 流量計数機構
4 波形整形装置
5 誤出力防止装置
6 パルス幅整形回路
7 フィルタ回路
8 トリガ回路
9 タイマー回路
10 カウンタ回路
11、12 ANDゲート
13 NOTゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量検出部及び流量計数機構間の更に波形整形装置と誤出力防止装置との間に設けられ、所定値以上の高周波数のパルス信号の連続入力があるとこの高周波数のパルス信号を結合して低周波数のパルス信号に変換した後、ローカット機能を有する前記誤出力防止装置へ出力する
ことを特徴とする変換器用パルス幅整形回路。
【請求項2】
請求項1に記載の変換器用パルス幅整形回路において、
前記波形整形装置及び前記誤出力防止装置間で着脱自在となる装置接続部を有する
ことを特徴とする変換器用パルス幅整形回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の変換器用パルス幅整形回路を含む変換器を備える
ことを特徴とする渦流量計。

【図1】
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【公開番号】特開2007−298280(P2007−298280A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123883(P2006−123883)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)