説明

外気調和機の制御方法

【課題】外気温度と外気露点温度を測定するだけで、吹き出される給気の温度と露点温度を制御して短時間で安定させることができ、該給気の温度と露点温度の周期的な変動やブレを防止して収束過程でのエネルギロスを最小限に抑制し得、更に、加湿が不要の場合、エアワッシャを停止して消費電力削減を図り得る外気調和機の制御方法を提供する。
【解決手段】外気温度計24で測定された外気温度と、外気露点計25で測定された外気露点温度とに基づき、加熱器3による必要加熱量Qhと最大加熱量Qhmaxとの比で表される加熱制御弁開度指令2aと、冷却器5による必要冷却量Qcと最大冷却量Qcmaxとの比で表される冷却制御弁開度指令4aと、再熱器7による必要再熱量Qrhと最大再熱量Qrhmaxとの比で表される再熱制御弁開度指令6aとを求めて出力すると共に、循環ポンプ停止指令8a或いは循環ポンプ運転指令8bを出力し、フィードフォワード制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気調和機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路、液晶パネル、プラズマパネル、マイクロマシン、或いは医薬品や化粧品の製造工場におけるクリーンルームは、内部の温度と湿度を高精度に制御することが要求される。これらのクリーンルームでは、あまりに乾いた室内空気の場合、在室する製品表面等に静電気が帯電して製品の電気回路の破壊が生じたり、粉塵爆発が生じたり、逆に、あまりに湿った室内空気にした場合、製品表面に空気中の水分が空気中の塵埃等と共に凝縮水として結露し、製品を汚してしまったりする。よって、相対湿度を40〜70[%]間のある状態に精密に保つことがしばしば要求される。室内の発熱負荷が大きい場合、通年で冷房勝手で運転される場合があり、更に、人体からの呼気や汗由来の潜熱の室内発生量が全体の換気量から無視できる場合には、外気を、保持しなければならない室内条件の露点温度に精密に制御し、且つ室内の設定温度より乾球温度を少し下げて供給することもしばしばある。
【0003】
このため、クリーンルームにおける外気の導入には、蒸気加湿又はエアワッシャ加湿による外気調和機が用いられるが、エネルギロスの大きい蒸気加湿方式より低温排熱も利用でき省エネルギ効果もあるエアワッシャ加湿方式が多く用いられるようになっている。従来においては、図17に示される如く、外気が導入されるケーシング1内に、加熱制御弁2にて流量調節される温水又は蒸気等の加熱流体により外気を加熱する加熱器3と、冷却制御弁4にて流量調節される冷水等の冷却流体により外気を冷却する冷却器5と、再熱制御弁6にて流量調節される温水又は蒸気等の再熱流体により外気を再熱する再熱器7と、循環ポンプ8の作動にて前記加熱器3及び冷却器5の間に多量の水を噴射し該水を外気と接触させて気化させることにより外気を加湿する常時稼動式のエアワッシャ9と、前記ケーシング1内に導入された外気を給気として吹き出す送風機10とを配設した外気調和機が用いられている。
【0004】
尚、前記加熱器3、冷却器5、再熱器7としては、鋼管コイル列又は銅管コイル列に直交してアルミフィンが圧着されたクロスフィン型コイルが一般に採用されており、又、前記エアワッシャ9としては、水をスプレーノズルから噴射する形式のものが一般に採用されている。
【0005】
前記外気調和機は、前記送風機10から吹き出される給気の温度(乾球温度)を測定する給気温度計11と、該給気温度計11で測定された給気の温度が設定値となるよう測定値と設定値との偏差に基づいて演算し再熱制御弁開度指令6aを出力する給気温度調節器12と、前記送風機10から吹き出される給気の露点温度を測定する給気露点計13と、該給気露点計13で測定された給気の露点温度が設定値となるよう測定値と設定値との偏差に基づいて演算し制御弁開度指令14を出力する給気露点温度調節器15と、該給気露点温度調節器15から出力される制御弁開度指令14を加熱制御弁開度指令2aに変換する加熱制御弁用変換器16と、前記給気露点温度調節器15から出力される制御弁開度指令14を冷却制御弁開度指令4aに変換する冷却制御弁用変換器17とを備えている。
【0006】
前記外気調和機においては、外気がケーシング1内に導入され、加熱器3、エアワッシャ9、冷却器5、再熱器7を通過して、送風機10により給気として吹き出されるが、このとき、前記送風機10から吹き出される給気の温度が給気温度計11によって測定され、該給気温度計11で測定された給気の温度が設定値となるよう測定値と設定値との偏差に基づいて演算し給気温度調節器12から再熱制御弁開度指令6aが再熱制御弁6へ出力され、再熱器7に供給される温水又は蒸気等の再熱流体の流量調節が行われる。
【0007】
同時に、前記送風機10から吹き出される給気の露点温度が給気露点計13によって測定され、該給気露点計13で測定された給気の露点温度が設定値となるよう測定値と設定値との偏差に基づいて演算し給気露点温度調節器15から制御弁開度指令14が出力され、該給気露点温度調節器15から出力される制御弁開度指令14が、加熱制御弁用変換器16によって加熱制御弁開度指令2aに変換されると共に、冷却制御弁用変換器17によって冷却制御弁開度指令4aに変換され、前記加熱制御弁用変換器16で変換された加熱制御弁開度指令2aが加熱制御弁2へ出力され、加熱器3に供給される温水又は蒸気等の加熱流体の流量調節が行われ、前記冷却制御弁用変換器17で変換された冷却制御弁開度指令4aが冷却制御弁4へ出力され、冷却器5に供給される冷水等の冷却流体の流量調節が行われる。
【0008】
尚、前記エアワッシャ9の循環ポンプ8は、常時稼働されており、該循環ポンプ8の作動にて前記加熱器3及び冷却器5の間に多量の水が噴射され、該水が外気と接触して気化することにより、外気の加湿が行われる。前記エアワッシャ9を常時稼働するのは、ノズルでの微細液滴噴霧のために循環ポンプ8のポンプ圧を一定とすることが要求される理由により循環ポンプ8の変流量の採用が無理であり、しかも、気液接触機会の確保のためノズル段階制御も難しいことから、エアワッシャ9全体をON−OFFすることとなり、仮にフィードバック制御によってエアワッシャ9をON−OFFすると、加湿の立ち上がり立ち下がりが急激であり、そのオーバーシュートのあばれを制御範囲に吸収することが難しいためである。
【0009】
即ち、前記加熱器3に供給される温水又は蒸気等の加熱流体の流量調節と、前記エアワッシャ9による外気の加湿と、前記冷却器5に供給される冷水等の冷却流体の流量調節と、前記再熱器7に供給される温水又は蒸気等の再熱流体の流量調節とによって、前記送風機10から吹き出される給気の温度と湿度(絶対湿度又は露点温度)が要求される状態に制御されるようになっている。要求される状態とは、外気を保持しなければならない室内条件の露点温度に精密に制御し、且つ室内の設定温度と同じか或いは乾球温度を少し下げて供給する状態である。
【0010】
尚、前述の如き外気調和機と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−288390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述の如く、吹き出される給気の温度と露点温度に基づいて、いわゆるその前段の再熱器7、冷却器5、加熱器3各々の熱搬送流体の制御を行うフィードバック制御を行うのでは、給気の温度と露点温度を安定させるまでに時間がかかるという欠点を有していた。
【0013】
又、前記給気温度調節器12、給気露点温度調節器15に予め設定するPID設定値(比例帯、積分時間、微分時間設定値)によっては、給気の温度と露点温度がそれぞれの設定値を基準としてオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返し、周期的に波を打つように変動してしまい、温水又は蒸気、並びに冷水の消費量が増え、収束過程でのエネルギロスが増加したり、或いは、給気の温度と露点温度それぞれの設定値に対するブレが残ってしまうという問題をも有していた。特に、前記給気露点温度調節器15から一つの信号として制御弁開度指令14を出力し、二つの変換器(加熱制御弁用変換器16と冷却制御弁用変換器17)で同じ信号から別の信号へ変換し、加熱と冷却とを制御するので、周期的に波を打つような変動がたびたび生じる虞がある。とは言っても、高価な給気露点計13及び給気露点温度調節器15をもう一基追加しても、根本の解決には至らないものであった。
【0014】
更に又、前記エアワッシャ9は、空気中の微量ガスの水への吸収要請が、製造製品の変化で少なくなったにもかかわらず、常時稼働しなければならないため、循環ポンプ8の消費電力が増加し、省エネルギの観点から改善が望まれていた。
【0015】
本発明は、斯かる実情に鑑み、外気温度と外気露点温度を測定するだけで、吹き出される給気の温度と露点温度を制御して短時間で安定させることができ、該給気の温度と露点温度の周期的な変動やブレを防止して収束過程でのエネルギロスを最小限に抑制し得、更に、加湿が不要の場合、エアワッシャを停止して消費電力削減を図り得る外気調和機の制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、外気が導入されるケーシング内に、加熱制御弁にて流量調節される加熱流体により外気を加熱する加熱器と、循環ポンプの作動にて水を噴射し該水を外気と接触させて気化させることにより外気を加湿するエアワッシャと、冷却制御弁にて流量調節される冷却流体により外気を冷却する冷却器と、再熱制御弁にて流量調節される再熱流体により外気を再熱する再熱器と、前記ケーシング内に導入された外気を給気として吹き出す送風機とを配設した外気調和機の制御方法において、
前記加熱器の最大能力である最大加熱量を、冬季外気最低温度設定値から加熱器出口温度最大値点における加熱器出口温度最大値までの加熱量として求め、前記冷却器の最大能力である最大冷却量を夏季外気最大エンタルピ設定値から冷却器出口空気エンタルピ設定最小値までの冷却量として求め、前記再熱器の最大能力である最大再熱量を給気吹出露点温度設定最小値と等しいエアワッシャ出口最低温度から給気吹出温度設定最大値までの再熱量として求めておき、
外気温度と外気露点温度を測定した測定値から演算して外気状態をT−X空気線図上の状態点として算出し、
前記外気露点温度が給気吹出状態設定点の露点温度設定値より高く前記冷却器による冷却除湿と前記再熱器による再熱とが必要となる領域Aと、前記外気露点温度が給気吹出状態設定点の露点温度設定値以下で且つ前記外気温度と外気露点温度から求まる外気絶対湿度とに基づくT−X空気線図上の点が前記エアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線より低温側に位置し前記加熱器による加熱と前記エアワッシャによる加湿と前記再熱器による再熱とが必要となる領域Bと、前記外気露点温度が給気吹出状態設定点の露点温度設定値以下で且つ前記外気温度と外気露点温度から求まる外気絶対湿度とに基づくT−X空気線図上の点が前記エアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線上或いは該直線より高温側に位置し前記エアワッシャによる加湿と前記冷却器による冷却と前記再熱器による再熱とが必要となる領域CとのうちいずれのT−X空気線図上の領域に外気の状態点が存在しているかを判定し、
前記領域Aに外気の状態点が存在している場合、給気吹出状態設定点の露点温度設定値上の冷却器出口空気エンタルピと外気の状態点における外気エンタルピとの差分に比例する前記冷却器による必要冷却量を算出して該必要冷却量と前記最大冷却量との比で表される冷却制御弁開度指令を前記冷却制御弁へ出力し、給気吹出状態設定点の乾球温度設定値と冷却器出口温度との差分に比例する前記再熱器による必要再熱量を算出して該必要再熱量と前記最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令を前記再熱制御弁へ出力し、循環ポンプ停止指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力するようにし、
前記領域Bに外気の状態点が存在している場合、エアワッシャの飽和効率及び外気露点温度から求まる加熱器出口温度と外気温度Tとの差分に比例する前記加熱器による必要加熱量を算出して該必要加熱量と前記最大加熱量との比で表される加熱制御弁開度指令を前記加熱制御弁へ出力し、循環ポンプ運転指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力し、給気吹出状態設定点の乾球温度設定値とエアワッシャ出口温度との差分に比例する前記再熱器による必要再熱量を算出して該必要再熱量と前記最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令を前記再熱制御弁へ出力するようにし、
前記領域Cに外気の状態点が存在している場合、循環ポンプ運転指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力し、給気吹出状態設定点の露点温度設定値上の冷却器出口空気エンタルピと外気の状態点における外気エンタルピとの差分に比例する前記冷却器による必要冷却量を算出して該必要冷却量と前記最大冷却量との比で表される冷却制御弁開度指令を前記冷却制御弁へ出力し、給気吹出状態設定点の乾球温度設定値と冷却器出口温度との差分に比例する前記再熱器による必要再熱量を算出して該必要再熱量と前記最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令を前記再熱制御弁へ出力するようにしたことを特徴とする外気調和機の制御方法にかかるものである。
【0017】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0018】
測定した外気温度と外気露点温度に基づくフィードフォワード制御となるため、従来のように、再熱器の出口側の温度を測定しつつ、吹き出される給気の温度と露点温度に基づいて、いわゆるフィードバック制御を行うのとは異なり、給気の温度と露点温度を安定させるまでに時間がかからなくなる。
【0019】
又、測定した外気温度及び外気露点温度の測定値から演算した外気状態のT−X空気線図上の状態点と、設定した給気吹出温度設定値、給気吹出露点温度設定値及びエアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線との関係から区分されるT−X空気線図上の領域A,B,Cのうちいずれの領域に外気の状態点が存在しているかを判定し、該領域に応じて、加熱器による必要加熱量と最大加熱量との比で表される加熱制御弁開度指令、冷却器による必要冷却量と最大冷却量との比で表される冷却制御弁開度指令、並びに再熱器による必要再熱量と最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令のうちの必要となる開度指令を対応する制御弁へ出力すると共に、循環ポンプ停止指令或いは循環ポンプ運転指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力するようにしているため、従来のような、給気温度調節器、給気露点温度調節器は不要となり、これらの調節器に、測定値と設定値との偏差に基づく比例帯や、急激な変動応答によるオーバーシュートやズレであるオフセットを無くす積分時間や微分時間であるPID設定値を予め設定する必要もなく、一義で決まる比信号なので、給気の温度や露点温度がそれぞれの設定値を基準としてオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返し周期的に波を打つように変動してしまうことが避けられ、温水又は蒸気、並びに冷水の消費量が減り、収束過程でのエネルギロスが増加しなくなると共に、給気の温度や露点温度それぞれの設定値に対するブレが残ってしまう心配もなくなる。
【0020】
更に又、前記エアワッシャは、外気露点温度が給気吹出露点温度設定値より高い場合、停止させることができ、常時稼働しなくて済むため、循環ポンプの消費電力が低減され、省エネルギ化を図ることが可能となる。
【0021】
前記外気調和機の制御方法においては、T−X空気線図上で給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値と冬季外気状態設定点における冬季外気最低絶対湿度設定値との差をエアワッシャの飽和効率η[%]と対応させた場合に、100−η[%]に見合う絶対湿度を前記給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値に上乗せした絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を、エアワッシャの飽和効率ηが100[%]であると仮定した場合の給気吹出露点温度設定最大値に対応する最大加湿時飽和点とし、該最大加湿時飽和点を通る等湿球温度線と前記冬季外気最低絶対湿度設定値を示す線との交点を給気吹出露点温度設定最大値に対応する加熱器出口温度最大値点とし、該加熱器出口温度最大値点における加熱器出口温度最大値を求めるようにすることができる。
【0022】
又、前記外気調和機の制御方法においては、T−X空気線図上で給気吹出状態設定点における給気吹出状態設定点絶対湿度と冬季外気状態設定点における冬季外気最低絶対湿度設定値との差をエアワッシャの飽和効率η[%]と対応させた場合に、100−η[%]に見合う絶対湿度を前記給気吹出状態設定点絶対湿度に上乗せした絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を、エアワッシャの飽和効率ηが100[%]であると仮定した場合の給気吹出露点温度設定値に対応する最大加湿時飽和演算点とし、該最大加湿時飽和演算点を通る等湿球温度線と前記冬季外気最低絶対湿度設定値を示す線との交点を給気吹出露点温度設定値に対応する加熱器出口温度最大値演算点とし、前記給気吹出状態設定点絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を加湿時飽和点とし、該加湿時飽和点と加熱器出口温度最大値演算点とを結ぶ直線をエアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線として求めるようにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の外気調和機の制御方法によれば、外気温度と外気露点温度を測定するだけで、吹き出される給気の温度と露点温度を制御して短時間で安定させることができ、該給気の温度と露点温度の周期的な変動やブレを防止して収束過程でのエネルギロスを最小限に抑制し得、更に、加湿が不要の場合、エアワッシャを停止して消費電力削減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における装置構成を示す全体概要図である。
【図2】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御系統の一部を示す制御ブロック図である。
【図3】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御系統の一部を示す制御ブロック図である。
【図4】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御系統の一部を示す制御ブロック図である。
【図5】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御系統の一部を示す制御ブロック図である。
【図6】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御系統の一部を示す制御ブロック図である。
【図7】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御系統の一部を示す制御ブロック図である。
【図8】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において給気吹出状態設定点が設定される範囲を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図11】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において最大冷却量を算出する手順を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図12】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において、給気吹出露点温度設定値まで加湿するために加熱とエアワッシャ加湿が必要な領域Bと、加熱をせずエアワッシャ加湿と冷却器除湿が必要な領域Cとを区分する線についての説明を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図13】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において、エアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線の求め方、並びに区分された外気の存在領域を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図14】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において領域Aに外気が存在している場合の操作手順(冷却→再熱)を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図15】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において領域Bに外気が存在している場合の操作手順(加熱→加湿→再熱)を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図16】本発明の外気調和機の制御方法の実施例において領域Cに外気が存在している場合の操作手順(加湿→冷却→再熱)を示すT−X空気線図(湿り空気線図)である。
【図17】従来の外気調和機の制御方法の一例における装置構成を示す全体概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1〜図16は本発明の外気調和機の制御方法の実施例であって、図中、図17と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図17に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1〜図16に示す如く、ケーシング1の入側に、該ケーシング1に導入される外気の温度(乾球温度)を測定する外気温度計24と、外気の露点温度を測定する外気露点計25とを設け、前記外気温度計24で測定された外気温度と、前記外気露点計25で測定された外気露点温度とをコントローラ26に入力し、該コントローラ26において、前記外気温度と外気露点温度とに基づき、加熱器3による必要加熱量Qhと最大加熱量Qhmaxとの比で表される加熱制御弁開度指令2aと、冷却器5による必要冷却量Qcと最大冷却量Qcmaxとの比で表される冷却制御弁開度指令4aと、再熱器7による必要再熱量Qrhと最大再熱量Qrhmaxとの比で表される再熱制御弁開度指令6aとを求めて出力すると共に、循環ポンプ停止指令8a或いは循環ポンプ運転指令8bを出力し、フィードフォワード制御を行うようにした点にある。
【0027】
尚、前記コントローラ26には、加熱器3の最大能力を示す最大加熱量Qhmaxと、冷却器5の最大能力を示す最大冷却量Qcmaxと、再熱器7の最大能力を示す最大再熱量Qrhmaxとを算出する最大制御量算出器27を接続し、該最大制御量算出器27で算出される最大加熱量Qhmaxと最大冷却量Qcmaxと最大再熱量Qrhmaxとをコントローラ26へ入力するようにしてある。これは、対象となるクリーンルーム等の設置地域や、室内空気設定条件、及びハードとしての外気調和機が決まった時点で、一度算出すれば固定値として扱えるものであり、その都度、演算する必要がないからである。
【0028】
本実施例の場合、先ず、
fmax:給気吹出状態設定点の乾球温度設定最大値(給気吹出温度設定最大値とも表す)
DPfmax:給気吹出状態設定点の露点温度設定最大値(給気吹出露点温度設定最大値とも表す)
DPfmin:給気吹出状態設定点の露点温度設定最小値(給気吹出露点温度設定最小値とも表す)
φcd:冷却器出口相対湿度設定値
gmax:夏季外気最大エンタルピ設定値
gmin:冬季外気最低温度設定値(乾球温度)
gmin:冬季外気最低絶対湿度設定値
η:エアワッシャ9の飽和効率
とし、これらの値を、図2に示す如く、前記最大制御量算出器27(図1参照)における入力処理部に入力し、予め、後述する冬季外気最低温度設定値Tgminから加熱器出口温度設定最大値Thdmax0までの加熱量である前記最大加熱量Qhmaxと、後述する夏季外気最大エンタルピ設定値Hgmaxから冷却器出口空気エンタルピ設定最小値Hcdminまでの冷却量である前記最大冷却量Qcmaxと、後述するエアワッシャ出口温度設定最小値Twdminから給気吹出温度設定最大値Tfmaxまでの再熱量である前記最大再熱量Qrhmaxとを求めておき、該最大制御量算出器27における出力処理部から前記コントローラ26へ出力する。尚、前記最大加熱量Qhmaxと、前記最大冷却量Qcmaxと、前記最大再熱量Qrhmaxとが装置容量として既に分かっている場合は、前記最大制御量算出器27を用いず、直接、コントローラ26へ入力しても良い。
【0029】
続いて、
g:外気温度(測定値)
DPg:外気露点温度(測定値)
f:給気吹出状態設定点の乾球温度設定値(給気吹出温度設定値とも表す)
DPf:給気吹出状態設定点の露点温度設定値(給気吹出露点温度設定値とも表す)
とし、これらの値と、前記最大制御量算出器27の出力処理部から出力される値(最大加熱量Qhmax、最大冷却量Qcmax、最大再熱量Qrhmax、及び最大制御量算出器27への入力値そのままの二つの設定値であって、そのうちの一つは、冷却器5の有限なコイル列数やフィンピッチの粗さから生じるコイルに全く触れないで冷却器5を素通りする空気があるために、理論値である飽和空気線まで到達できない、いわゆるバイパスファクターで表現される冷却器5の性能を相対湿度で示す冷却器出口相対湿度設定値φcdであり、もう一つは、エアワッシャ9の飽和効率ηである)とを、図3に示す如く、前記コントローラ26(図1参照)における入力処理部に入力し、前記外気露点温度DPg並びに外気温度Tgに基づき、領域Aと、領域Bと、領域Cとのうちいずれの領域に外気が存在しているかを判定する。
【0030】
前記給気吹出温度設定値Tfと給気吹出露点温度設定値DPfは、図10に示すT−X空気線図(湿り空気線図)において、通常、エアワッシャ9が狭い空間で速い気流中に水噴射を行うという構造上、水噴射方式の違い等による飽和効率の大小はあるが、エアワッシャ9の飽和効率ηがたとえ高性能な場合である95[%]以上であっても、後述の冬季外気最低絶対湿度設定値Xgminでの加熱器出口温度最大値Thdmaxとの最大絶対湿度差における、該飽和効率ηでの到達相対湿度から導かれ規定される上限値である給気吹出相対湿度設定最大値φfmaxを結んだ線と、室内精密湿度制御のための外気露点制御に関係し且つ室内で設定可能な最低相対湿度にも関係する給気吹出状態設定点絶対湿度設定最小値Xfminを表す線と、室内精密湿度制御のための外気露点制御に関係し且つ室内で設定可能な最高相対湿度にも関係する給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値Xfmaxを表す線と、室内設定温度及び室内還気との混合性から規定される給気吹出温度設定最大値Tfmaxを表す線とで囲まれる範囲(図10では斜線を付してある)内に設定される点であって、この点が給気吹出状態設定点Fとなる。尚、図10中、Tfminは給気吹出温度設定最小値、DPfminは給気吹出露点温度設定最小値、DPfmaxは給気吹出露点温度設定最大値を示し、それぞれ給気吹出相対湿度設定最大値φfmaxを結んだ線と他の線との交点で表現されている。又、外気露点制御に関係し且つ室内で設定可能な最低相対湿度にも関係する給気吹出状態設定点絶対湿度設定最小値Xfminを表す線と、外気露点制御に関係し且つ室内で設定可能な最高相対湿度にも関係する給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値Xfmaxを表す線は、その建設したクリーンルームで取り得る室内設定値から導かれても良く、又、ユニット化した外気調和機ハードで取り得る値でも良いが、給気吹出状態設定点絶対湿度設定最小値Xfminを表す線については、最終的に冷却器5の性能によって決まってしまう。
【0031】
前記最大冷却量Qcmaxは、図10及び図11に示す如く、夏季外気状態設定点Sにおける夏季外気最大エンタルピ設定値をHgmaxとした場合、
[数1]
cmax=C1×風量×(Hgmax−Hcdmin
但し、C1:定数
cdmin:冷却器出口空気エンタルピ設定最小値
と表され、冷却器出口空気エンタルピ設定最小値Hcdminは、
[数2]
cdmin=1.006・Tcdmin+(1.085・Tcdmin+2501)・Xcdmin
但し、Tcdmin:冷却器出口温度設定最小値(乾球温度)
cdmin:冷却器出口絶対湿度設定最小値
と表され、冷却器出口絶対湿度設定最小値Xcdminは、
[数3]
cdmin=Xfmin=F1(DPfmin
但し、Xfmin:給気吹出状態設定点絶対湿度設定最小値
F1:関数
と表され、給気吹出状態設定点絶対湿度設定最小値Xfminと給気吹出露点温度設定最小値DPfminは一対一の関係があり、下記の[表1]の値より内挿(補間)で求まるが、前記冷却器出口温度設定最小値Tcdminが未知となるので、これを求める。前記冷却器5がクロスフィン型コイルの場合、該コイル列数によりバイパスファクターが決まり、これによって冷却器5を通過する外気の相対湿度は、95〜100[%]の間で一定となる。この相対湿度を冷却器出口相対湿度設定値φcdとすると、この相対湿度の範囲では、冷却器出口相対湿度設定値φcdは冷却器出口飽和度ψcdと略等しいので、図11に示す如く、
φcd≒ψcd
となる。又、飽和度の定義は、絶対湿度をXとし、同じ温度における飽和空気の絶対湿度をXSとした場合、
ψ=X/XS×100
であるから、XSが求まれば、該飽和空気絶対湿度に対応する露点温度が冷却器出口温度設定最小値Tcdminとなる。つまり、冷却器出口温度設定最小値Tcdminと同じ温度における飽和空気の絶対湿度をXScdminとすると、
[数4]
XScdmin=Xcdmin/ψcd×100
≒Xcdmin/φcd×100(=Xfmin/ψcd×100)
となり(図2における「冷却器出口温度設定最小値Tcdminでの飽和空気の絶対湿度XScdmin算出」参照)、
[数5]
cdmin=DPcdmin´
=G1(XScdmin
但し、G1:関数
となる(図2における「冷却器出口温度設定最小値Tcdmin算出」参照)。絶対湿度と露点温度は前述した通り一対一の関係があり、下記の[表1]の値より内挿(補間)で求まるため、[数3]、[数5]を[数2]に代入すれば、冷却器出口空気エンタルピ設定最小値Hcdminが求まり(図2における「冷却器出口空気エンタルピ設定最小値Hcdmin算出」参照)、該冷却器出口空気エンタルピ設定最小値Hcdminと夏季外気最大エンタルピ設定値Hgmaxを[数1]に代入すれば、最大冷却量Qcmaxを求めることができる。
【表1】


【0032】
前記最大加熱量Qhmaxは、図10に示す如く、
[数6]
hmax=C2×風量×(Thdmax0−Tgmin
但し、C2:定数
hdmax0:加熱器出口温度最大値(乾球温度)
と表される。ここで、エアワッシャ9の飽和効率ηと冬季外気最低絶対湿度設定値Xgminとが与えられ、T−X空気線図上で外気が冬季外気状態設定点Wにある場合、該外気を加熱器3で給気吹出露点温度設定最大値DPfmaxに対応する加熱器出口温度最大値点L0における加熱器出口温度最大値Thdmax0まで加熱し、該加熱器出口温度最大値点L0からエアワッシャ9で加湿を行うと、該エアワッシャ9の飽和効率ηが仮に100[%]であれば、等湿球温度線に沿って絶対湿度が上昇し、該等湿球温度線と飽和空気線との交点である給気吹出露点温度設定最大値DPfmaxに対応する最大加湿時飽和点M0まで到達するが、前記エアワッシャ9の飽和効率ηは現実には100[%]未満となり、最大加湿時飽和点M0までは到達しない。このため、等湿球温度線の延長線上で飽和空気線と交差する点(最大加湿時飽和点M0)の絶対湿度をXfmax´とし、給気吹出状態設定点Fの想定される給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値をXfmaxとすると、
[数7]
(Xfmax´−Xgmin):(Xfmax−Xgmin)=100:η
(Xfmax´−Xfmax):(Xfmax−Xgmin)=(100−η):η
という関係が成り立ち(図10参照)、Xfmax、Xgmin、ηが既知の値であることからXfmax´は求まり(図2における「給気吹出露点温度設定最大値DPfmaxにおける最大加湿時の等湿球温度線と飽和空気線との交点M0での絶対湿度Xfmax´算出」参照)、該Xfmax´に相当する露点温度DPfmax´が前記最大加湿時飽和点M0の乾球温度TM0となり、該最大加湿時飽和点M0が求まる。尚、図10中、Twd0は最大加湿時におけるエアワッシャ出口温度である。前記最大加湿時飽和点M0におけるエンタルピHM0は、
[数8]
M0=1.006・TM0+(1.085・TM0+2501)・XM0
但し、TM0=DPfmax´
=G1(Xfmax´)
M0=Xfmax´
と表され(図2における「交点M0での乾球温度TM0、エンタルピHM0算出」参照)、Xfmax´が算出されているので、HM0は求まる。加熱器出口温度最大値点L0は最大加湿時飽和点M0と等湿球温度線上にある点であるが、等湿球温度線≒等エンタルピ線とみなせるので、加熱器出口温度最大値点L0でのエンタルピは最大加湿時飽和点M0でのエンタルピと等しいと考えることができる。このため、加熱器出口温度最大値点L0でも同様に、
[数9]
M0=HL0=1.006・TL0+(1.085・TL0+2501)・XL0
但し、XL0=Xgmin
と表され、HL0(=HM0)、XL0(=Xgmin)が既知の値であれば、前記加熱器出口温度最大値点L0の乾球温度TL0即ち加熱器出口温度最大値Thdmax0は求まる(図2における「加熱器出口温度最大値Thdmax0算出」参照)。
【0033】
前記最大再熱量Qrhmaxは、図10に示す如く、
[数10]
rhmax=C2×風量×(Trhdmax−Twdmin
但し、C2:定数
rhdmax:再熱器出口温度設定最大値(乾球温度)
wdmin:エアワッシャ出口温度設定最小値(乾球温度)
と表される。ここで、再熱器出口温度設定最大値Trhdmaxは給気吹出温度設定最大値Tfmaxと等しく、エアワッシャ出口温度設定最小値Twdminは給気吹出露点温度設定最小値DPfminと等しいため、該再熱器出口温度設定最大値Trhdmaxとエアワッシャ出口温度設定最小値Twdminとを[数10]に代入すれば、最大再熱量Qrhmaxを求めることができる。
【0034】
ここで、給気吹出露点温度設定値DPfまで加湿するために加熱とエアワッシャ加湿が必要な領域Bと、加熱をせずエアワッシャ加湿と冷却器除湿が必要な領域Cとを区分する線について図12を用いて説明する。T−X空気線図上で外気が冬季外気状態設定点Wにある場合、該外気を加熱器3で給気吹出露点温度設定値DPfに対応する加熱器出口温度最大値演算点Lにおける加熱器出口温度最大値Thdmaxまで加熱し、該加熱器出口温度最大値演算点Lからエアワッシャ9で加湿を行うと、該エアワッシャ9の飽和効率ηが仮に100[%]であれば、等湿球温度線に沿って絶対湿度が上昇し、該等湿球温度線と飽和空気線との交点である給気吹出露点温度設定値DPfに対応する最大加湿時飽和演算点Mまで到達するが、前記エアワッシャ9の飽和効率ηは現実には100[%]未満となり、最大加湿時飽和演算点Mまでは到達しない。このため、等湿球温度線の延長線上で飽和空気線と交差する点(最大加湿時飽和演算点M)の絶対湿度をXf´とし、給気吹出状態設定点Fにおける絶対湿度を給気吹出状態設定点絶対湿度Xfとすると、
[数11]
(Xf´−Xgmin):(Xf−Xgmin)=100:η
(Xf´−Xf):(Xf−Xgmin)=(100−η):η
という関係が成り立ち、Xf、Xgmin、ηが既知の値であることからXf´は求まり(図3における「給気吹出露点温度設定値DPfにおける最大加湿時の等湿球温度線と飽和空気線との交点Mでの絶対湿度Xf´算出」参照)、該Xf´に相当する露点温度DPf´が前記最大加湿時飽和演算点Mの乾球温度TMとなり、該最大加湿時飽和演算点Mが求まる。同様に図12のT−X空気線図上で外気が任意のI点、II点、III点にあって各点における外気絶対湿度をXgI、XgII、XgIIIとし、[数11]と同様の関係に基づいて求められる絶対湿度をXfI´、XfII´、XfIII´とする時、該各絶対湿度XfI´、XfII´、XfIII´を示す線と飽和空気線との交点を通る等湿球温度線を引き下ろして、前記各外気絶対湿度XgI、XgII、XgIIIを示す線と交わる点が、給気吹出状態設定点絶対湿度Xfまで外気を加湿するのに必要な加熱器3の出口のポイントO、P、Q(加熱器出口温度ThdI、ThdII、ThdIII)となる。又、領域B内で外気のポイントを絶対湿度でIII点より更に上げて行くと、前記給気吹出状態設定点絶対湿度Xfを示す線と飽和空気線との交点N(加湿時飽和点)に漸近して行き、該交点Nでエアワッシャ加湿を行った場合、加湿も冷却も起こらず外気は前記交点Nに留まる。つまり、交点Nが領域Bにおける絶対湿度の最も高い状態である。図12より、点L、O、P、Q、Nは一直線となることがわかるので、領域Bと領域Cを隔てる線は一次直線で近似できる。
【0035】
よって前記二点L、Nが求まれば、該二点L、Nを結ぶ直線の一次関数は決定することができるので、その求め方について図13を用いて説明する。前記最大加湿時飽和演算点Mにおけるエンタルピは、
[数12]
M=1.006・TM+(1.085・TM+2501)・XM
但し、TM=DPf´
M=Xf´
と表され(図3における「交点Mでの乾球温度TM、エンタルピHM算出」参照)、加熱器出口温度最大値演算点Lは最大加湿時飽和演算点Mと等湿球温度線上にある点であるが、等湿球温度線≒等エンタルピ線とみなせるので、加熱器出口温度最大値演算点Lでのエンタルピは最大加湿時飽和演算点Mでのエンタルピと等しいと考えることができる。このため、加熱器出口温度最大値演算点Lでも同様に、
[数13]
M=HL=1.006・TL+(1.085・TL+2501)・XL
但し、XL=Xgmin
と表され、HL(=HM)、XL(=Xgmin)が既知の値であれば、前記加熱器出口温度最大値演算点Lの乾球温度TL即ち加熱器出口温度最大値Thdmaxは求まる(図3における「加熱器出口温度Thdmax算出」参照)。又、前記給気吹出状態設定点絶対湿度Xfを示す線と飽和空気線との交点を加湿時飽和点Nとすると、該加湿時飽和点Nと前記加熱器出口温度最大値演算点Lとを結ぶ直線がエアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線となる(図3における「一次関数T=J(X)算出」参照)。つまり、T−X空気線図上でと給気吹出状態設定点Fにおける給気吹出状態設定点絶対湿度Xfと冬季外気状態設定点Wにおける冬季外気最低絶対湿度設定値Xgminの差(Xf´−Xf)をエアワッシャ9の飽和効率η[%]と対応させた場合に、100−η[%]に見合う絶対湿度(Xf´−Xf)を前記給気吹出状態設定点絶対湿度Xfに上乗せした絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を、エアワッシャの飽和効率ηが100[%]であると仮定した場合の最大加湿時飽和演算点Mとし、該最大加湿時飽和演算点Mを通る等湿球温度線と前記冬季外気最低絶対湿度設定値Xgminを示す線との交点を加熱器出口温度最大値演算点Lとし、前記給気吹出状態設定点絶対湿度Xfを示す線と飽和空気線との交点を加湿時飽和点Nとし、該加湿時飽和点Nと加熱器出口温度最大値演算点Lとを結ぶ直線をエアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線として求めることができる(図3の「一次関数T=J(X)算出」参照)。因みに、前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線の方程式は、例えば、給気吹出露点温度設定値DPfが12[℃](乾球温度)でエアワッシャ9の飽和効率ηが以下のように設定されているとき、
[数14]
T=J(X)=−2955X+37.9(η=90[%]の場合)
と表される。
【0036】
前記領域Aと、領域Bと、領域Cは、図13に示すT−X空気線図(湿り空気線図)において、相対湿度φと飽和度ψとが共に100[%]となる飽和空気線と、給気吹出露点温度設定値DPf即ち給気吹出状態設定点絶対湿度Xfを示す線と、前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線とによって区分され、前記給気吹出温度設定値Tfを示す線と給気吹出露点温度設定値DPfを示す線との交点が給気吹出状態設定点Fとなり、前記領域Aは、前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPfより高い領域で、前記冷却器5による冷却除湿と前記再熱器7による再熱とが必要となり、前記領域Bは、前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPf以下で且つ前記外気温度Tgと外気露点温度DPgから求まる外気絶対湿度Xgとに基づく前記T−X空気線図(湿り空気線図)上の点が前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線より低温側に位置する領域で、前記加熱器3による加熱と前記エアワッシャ9による加湿と前記再熱器7による再熱とが必要となり、前記領域Cは、前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPf以下で且つ前記外気温度Tgと外気露点温度DPgから求まる外気絶対湿度Xgとに基づく前記T−X空気線図(湿り空気線図)上の点が前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線上或いは該直線より高温側に位置する領域で、前記エアワッシャ9による加湿と前記冷却器5による冷却除湿と前記再熱器7による再熱とが必要となる。
【0037】
次に、前記領域Aに外気が存在している場合について、図4及び図14を用いて説明する。前述した通り、領域Aは、前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPfより高い領域で、前記冷却器5による冷却除湿と前記再熱器7による再熱とが必要となる。尚、この場合、前記加熱器3による加熱とエアワッシャ9による加湿は必要ない。
【0038】
図4及び図14に示す如く、外気絶対湿度Xgを、
[数15]
g=F1(DPg
より算出し、外気エンタルピHgを、
[数16]
g=1.006・Tg+(1.085・Tg+2501)・Xg
より算出する。前記冷却器5による必要冷却量Qcは、
[数17]
c=C1×風量×(Hg−Hcd
と表され、この式に[数16]の外気エンタルピHgと冷却器出口空気エンタルピHcdを代入すれば、必要冷却量Qcの算出が可能となる。因みに、冷却器出口空気エンタルピHcdは、
[数18]
cd=1.006・Tcd+(1.085・Tcd+2501)・Xcd
但し、Tcd:冷却器出口温度(乾球温度)
cd:冷却器出口絶対湿度
と表され、冷却器出口絶対湿度Xcdは、
[数19]
cd=Xf=F1(DPf
但し、Xf:給気吹出状態設定点絶対湿度
1:関数
と表され、給気吹出状態設定点絶対湿度Xfと給気吹出露点温度設定値DPfは一対一の関係があり、前記[表1]の値より内挿(補間)で求まるが、前記冷却器出口温度Tcdが未知となるので、これを求める。前記冷却器5がクロスフィン型コイルの場合、該コイル列数によりバイパスファクターが決まり、これによって冷却器5を通過する外気の相対湿度は、95〜100[%]の間で一定となる。この相対湿度を冷却器出口相対湿度設定値φcdとすると、この相対湿度の範囲では、冷却器出口相対湿度設定値φcdは冷却器出口飽和度ψcdと略等しいので、図14に示す如く、
φcd≒ψcd
となる。又、飽和度の定義は、絶対湿度をXとし、同じ温度における飽和空気の絶対湿度をXSとした場合、
ψ=X/XS×100
であるから、XSが求まれば、該飽和空気絶対湿度に対応する露点温度が冷却器出口温度Tcdとなる。つまり、冷却器出口温度Tcdと同じ温度における飽和空気の絶対湿度をXScdとすると、
[数20]
XScd=Xcd/ψcd×100
≒Xcd/φcd×100(=Xf/ψcd×100)
となり、
[数21]
cd=DPcd´
=G1(XScd
但し、G1:関数
となる。絶対湿度と露点温度は前述した通り一対一の関係があり、前記[表1]の値より内挿(補間)で求まるため、[数19]、[数21]を[数18]に代入すれば、冷却器出口空気エンタルピHcdが求めることができる。ここで、冷却制御弁4の開度は、最大冷却時を全開とし、リニア特性のバルブを使用することで、前記必要冷却量Qcと前記最大冷却量Qcmaxとの比、即ち、
[数22]
c/Qcmax×100[%]
として算出できるため、これを図7に示す如く前記コントローラ26の出力処理部から冷却制御弁開度指令4aとして前記冷却制御弁4(図1参照)へ出力すれば良い。
【0039】
同時に、前記再熱器7による必要再熱量Qrhは、
[数23]
rh=C2×風量×(Trhd−Tcd
=C2×風量×(Tf−Tcd
但し、Trhd:再熱器出口温度(乾球温度)
と表され、この式に給気吹出温度設定値Tfと[数21]の冷却器出口温度Tcdを代入すれば、必要再熱量Qrhの算出が可能となる。ここで、再熱制御弁6の開度は、最大再熱時を全開とし、リニア特性のバルブを使用することで、前記必要再熱量Qrhと前記最大再熱量Qrhmaxとの比、即ち、
[数24]
rh/Qrhmax×100[%]
として算出できるため、これを図7に示す如く前記コントローラ26の出力処理部から再熱制御弁開度指令6aとして前記再熱制御弁6(図1参照)へ出力すれば良い。
【0040】
尚、前記領域Aでは、エアワッシャ9の運転が不要となるので、図7に示す如く、前記コントローラ26の出力処理部から循環ポンプ停止指令8aが前記エアワッシャ9の循環ポンプ8(図1参照)へ出力される。
【0041】
又、前記領域Bに外気が存在している場合について、図5及び図15を用いて説明する。前述した通り、領域Bは、前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPf以下で且つ前記外気温度Tgと外気露点温度DPgから求まる外気絶対湿度Xgとに基づく前記T−X空気線図(湿り空気線図)上の点が前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線より低温側に位置する領域で、前記加熱器3による加熱と前記エアワッシャ9による加湿と前記再熱器7による再熱とが必要となる。尚、この場合、前記冷却器5による冷却は必要ない。
【0042】
図5及び図15に示す如く、前記加熱器3による必要加熱量Qhは、
[数25]
h=C2×風量×(Thd−Tg
但し、Thd:加熱器出口温度(乾球温度)
と表され、エアワッシャ9の飽和効率ηと、測定される外気露点温度DPgに基づいて[数15]から算出される外気絶対湿度Xgとが与えられ場合、前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線の方程式を示す[数14]から加熱器出口温度Thdが求まり、該加熱器出口温度Thdと外気温度Tgとを[数25]に代入すれば、必要加熱量Qhの算出が可能となる。ここで、加熱制御弁2の開度は、最大加熱時を全開とし、リニア特性のバルブを使用することで、前記必要加熱量Qhと前記最大加熱量Qhmaxとの比、即ち、
[数26]
h/Qhmax×100[%]
として算出できるため、これを図7に示す如く前記コントローラ26の出力処理部から加熱制御弁開度指令2aとして前記加熱制御弁2(図1参照)へ出力すれば良い。
【0043】
前記領域Bでは、加湿のためにエアワッシャ9の運転が必要となるので、図7に示す如く、前記コントローラ26の出力処理部から循環ポンプ運転指令8bが前記エアワッシャ9の循環ポンプ8(図1参照)へ出力され、前記加熱器出口温度Thdまで加熱された外気をエアワッシャ9で加湿した場合、絶対湿度は、図15に示す如く、前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線上の外気絶対湿度Xgを示す点から、この点と交差する等湿球温度線上を給気吹出状態設定点絶対湿度Xfまで上昇し、乾球温度は、前記加熱器出口温度Thdからエアワッシャ出口温度Twdまで低下する。
【0044】
同時に、前記再熱器7による必要再熱量Qrhは、
[数27]
rh=C2×風量×(Trhd−Twd
=C2×風量×(Tf−Twd
但し、Twd:エアワッシャ出口温度
と表され、エアワッシャ9の飽和効率ηと、給気吹出露点温度設定値DPfに基づいて[数19]から算出される給気吹出状態設定点絶対湿度Xfとが与えられた場合、外気絶対湿度Xgと、前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数T=J(X)から求まる加熱器出口温度Thdと、前記外気絶対湿度Xg及び加熱器出口温度Thdから求まる加熱器出口エンタルピHhdとを用いて、等湿球変化(≒等エンタルピ変化)であることを利用し、エアワッシャ出口温度Twdを求める。即ち、エアワッシャ出口エンタルピをHwdとすると、
[数28]
hd=J(Xg
hd=1.006・Thd+(1.085・Thd+2501)・Xg
hd≒Hwd=1.006・Twd+(1.085・Twd+2501)・Xf
より、エアワッシャ出口温度Twdが求まり、該エアワッシャ出口温度Twdと給気吹出温度設定値Tfとを[数27]に代入すれば、必要再熱量Qrhの算出が可能となる。ここで、再熱制御弁6の開度は、前記領域Aに外気が存在している場合と同様、[数24]に示すように、前記必要再熱量Qrhと前記最大再熱量Qrhmaxとの比として算出できるため、これを図7に示す如く前記コントローラ26の出力処理部から再熱制御弁開度指令6aとして前記再熱制御弁6(図1参照)へ出力すれば良い。
【0045】
又、前記領域Cに外気が存在している場合について、図6及び図16を用いて説明する。前述した通り、領域Cは、前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPf以下で且つ前記外気温度Tgと外気露点温度DPgから求まる外気絶対湿度Xgとに基づく前記T−X空気線図(湿り空気線図)上の点が前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線上或いは該直線より高温側に位置する領域で、前記エアワッシャ9による加湿と前記冷却器5による冷却と前記再熱器7による再熱とが必要となる。尚、この場合、前記加熱器3による加熱は必要ない。
【0046】
前記領域Cでは、加湿のためにエアワッシャ9の運転が必要となるので、図7に示す如く、前記コントローラ26の出力処理部から循環ポンプ運転指令8bが前記エアワッシャ9の循環ポンプ8(図1参照)へ出力される。外気温度Tgで外気露点温度DPgの外気をエアワッシャ9で加湿した場合、絶対湿度は、図16に示す如く、外気絶対湿度Xgを示す点から、この点と交差する等湿球温度線上を上昇し給気吹出状態設定点絶対湿度Xfを超えて領域Aに入り、乾球温度は、前記外気温度Tgからエアワッシャ出口温度Twdまで低下する。湿球温度一定の前記等湿球温度線上では、エンタルピも略一定とみなすことができるので、エアワッシャ出口エンタルピHwdは、
[数29]
wd≒Hg
となり、外気エンタルピHgは既知の値であるため、この後の冷却に関しては、前記領域Aの場合と同様、外気エンタルピHgを[数16]より算出し、前記冷却器5による必要冷却量Qcを、[数17]並びに[数18]〜[数21]を用いて求め、冷却制御弁4の開度を[数22]から算出し、これを図7に示す如く前記コントローラ26の出力処理部から冷却制御弁開度指令4aとして前記冷却制御弁4(図1参照)へ出力すれば良い。又、再熱に関しても、前記領域Aの場合と同様、前記再熱器7による必要再熱量Qrhを[数23]を用いて求め、再熱制御弁6の開度を[数24]から算出し、これを図7に示す如く前記コントローラ26の出力処理部から再熱制御弁開度指令6aとして前記再熱制御弁6(図1参照)へ出力すれば良い。
【0047】
そして、前述した本発明の外気調和機の制御方法の実施例における制御の流れをフローチャートとしてまとめると、図8及び図9に示すように、給気吹出温度設定値Tf、給気吹出露点温度設定値DPfの設定が行われ、外気調和機の運転が開始されると共に、給気吹出温度設定最大値Tfmax、給気吹出露点温度設定最小値DPfmin、冷却器出口相対湿度設定値φcd、夏季外気最大エンタルピ設定値Hgmax、冬季外気最低温度設定値Tgmin、冬季外気最低絶対湿度設定値Xgmin、エアワッシャ9の飽和効率ηの前記最大制御量算出器27への設定読み込みが行われ、前記冷却器5の最大能力である最大冷却量Qcmax、前記加熱器3の最大能力である最大加熱量Qhmax、前記再熱器7の最大能力である最大再熱量Qrhmaxの算出が行われた後、エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線が求められ、外気温度Tg、外気露点温度DPgの測定が行われ、外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPfより高い場合、領域Aに外気が存在していると判定され、必要冷却量Qc、必要再熱量Qrhの算出が行われ、冷却制御弁4、再熱制御弁6へそれぞれ、冷却制御弁開度指令4a、再熱制御弁開度指令6aが出力され、循環ポンプ停止指令8aが前記エアワッシャ9の循環ポンプ8へ出力される。前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPf以下で且つ前記外気温度Tgと外気露点温度DPgから求まる外気絶対湿度Xgとに基づく前記T−X空気線図(湿り空気線図)上の点が前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線より低温側に位置する場合、領域Bに外気が存在していると判定され、必要加熱量Qh、必要再熱量Qrhの算出が行われ、加熱制御弁2、再熱制御弁6へそれぞれ、加熱制御弁開度指令2a、再熱制御弁開度指令6aが出力されると共に、循環ポンプ運転指令8bが前記エアワッシャ9の循環ポンプ8へ出力される。前記外気露点温度DPgが給気吹出露点温度設定値DPf以下で且つ前記外気温度Tgと外気露点温度DPgから求まる外気絶対湿度Xgとに基づく前記T−X空気線図(湿り空気線図)上の点が前記エアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線上或いは該直線より高温側に位置する場合、領域Cに外気が存在していると判定され、必要冷却量Qc、必要再熱量Qrhの算出が行われ、冷却制御弁4、再熱制御弁6へそれぞれ、冷却制御弁開度指令4a、再熱制御弁開度指令6aが出力されると共に、循環ポンプ運転指令8bが前記エアワッシャ9の循環ポンプ8へ出力される。外気調和機が停止していなければ、一定時間(例えば、一分程度)経過後に、前記外気温度Tg、外気露点温度DPgの測定が再び行われて、前述と同様の操作が繰り返し行われる形となる。尚、外気調和機が停止している場合は制御が終了する形となる。
【0048】
因みに、前記給気吹出温度設定値Tf、給気吹出露点温度設定値DPf、冷却器出口相対湿度設定値φcd、夏季外気最大エンタルピ設定値Hgmax、冬季外気最低温度設定値Tgmin、冬季外気最低絶対湿度設定値Xgmin、エアワッシャ9の飽和効率ηの具体的数値の一例を示すと、
f=23[℃]
DPf=12[℃]
φcd=95[%]
gmax=85[kJ/kg]
gmin=−2[℃]
gmin=0.0016[kg/kg(DA)]
η=90[%]
となる。尚、前記夏季外気最大エンタルピ設定値Hgmaxの85[kJ/kg]という値は、例えば、図11のT−X空気線図(湿り空気線図)において、夏季の外気絶対湿度Xgを0.0202[kg/kg(DA)]、夏季の外気温度Tgを33[℃]と仮定した場合のものであって、この場合、夏季外気相対湿度φgmaxは63[%]に相当する。又、図10のT−X空気線図(湿り空気線図)において、前記冬季外気最低温度設定値Tgminを−2[℃]、前記冬季外気最低絶対湿度設定値Xgminを0.0016[kg/kg(DA)]とした場合、冬季外気相対湿度は50[%]に相当する。
【0049】
上記実施例のように外気調和機の制御を行うと、測定した外気温度Tgと外気露点温度DPgに基づくフィードフォワード制御となるため、従来のように、再熱器7の出口側の温度を測定しつつ、吹き出される給気の温度と露点温度に基づいて、いわゆるフィードバック制御を行うのとは異なり、給気の温度と露点温度を安定させるまでに時間がかからなくなる。
【0050】
又、測定した外気温度Tg及び外気露点温度DPgと、設定した給気吹出温度設定値Tf、給気吹出露点温度設定値DPf及びエアワッシャ9の飽和効率ηに基づく一次関数で近似される直線との関係から区分される領域A,B,Cのうちいずれの領域に外気が存在しているかを判定し、該領域に応じて、加熱器3による必要加熱量Qhと最大加熱量Qhmaxとの比で表される加熱制御弁開度指令2a、冷却器5による必要冷却量Qcと最大冷却量Qcmaxとの比で表される冷却制御弁開度指令4a、再熱器7による必要再熱量Qrhと最大再熱量Qrhmaxとの比で表される再熱制御弁開度指令6a、のうちの必要となる開度指令を対応する制御弁へ出力すると共に、循環ポンプ停止指令8a或いは循環ポンプ運転指令8bを前記エアワッシャ9の循環ポンプ8へ出力するようにしているため、従来のような給気温度調節器12、給気露点温度調節器15(図17参照)は不要となり、これらの調節器にPID設定値を予め設定する必要もなく、給気の温度や露点温度がそれぞれの設定値を基準としてオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返し周期的に波を打つように変動してしまうことが避けられ、温水又は蒸気、並びに冷水の消費量が減り、収束過程でのエネルギロスが増加しなくなると共に、給気の温度や露点温度それぞれの設定値に対するブレが残ってしまう心配もなくなる。
【0051】
こうして、外気温度Tgと外気露点温度DPgを測定するだけで、吹き出される給気の温度と露点温度を制御して短時間で安定させることができ、該給気の温度と露点温度の周期的な変動やブレを防止して収束過程でのエネルギロスを最小限に抑制し得、更に、加湿が不要の場合、エアワッシャ9を停止して消費電力削減を図り得る。
【0052】
尚、本発明の外気調和機の制御方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 ケーシング
2 加熱制御弁
2a 加熱制御弁開度指令
3 加熱器
4 冷却制御弁
4a 冷却制御弁開度指令
5 冷却器
6 再熱制御弁
6a 再熱制御弁開度指令
7 再熱器
8 循環ポンプ
8a 循環ポンプ停止指令
8b 循環ポンプ運転指令
9 エアワッシャ
10 送風機
24 外気温度計
25 外気露点計
26 コントローラ
27 最大制御量算出器
DPg 外気露点温度
DPf 給気吹出状態設定点の露点温度設定値(給気吹出露点温度設定値)
gmax 夏季外気最大エンタルピ設定値
cdmin 冷却器出口空気エンタルピ設定最小値
g 外気エンタルピ
0 加熱器出口温度最大値点
L 加熱器出口温度最大値演算点
0 最大加湿時飽和点
M 最大加湿時飽和演算点
N 加湿時飽和点
cmax 最大冷却量
hmax 最大加熱量
rhmax 最大再熱量
c 必要冷却量
h 必要加熱量
rh 必要再熱量
g 外気温度
hdmax0 加熱器出口温度最大値
fmax 給気吹出温度設定最大値
f 給気吹出状態設定点の乾球温度設定値(給気吹出温度設定値)
gmin 冬季外気最低温度設定値
cd 冷却器出口温度
g 外気絶対湿度
f 給気吹出状態設定点絶対湿度
gmin 冬季外気最低絶対湿度設定値
η 飽和効率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気が導入されるケーシング内に、加熱制御弁にて流量調節される加熱流体により外気を加熱する加熱器と、循環ポンプの作動にて水を噴射し該水を外気と接触させて気化させることにより外気を加湿するエアワッシャと、冷却制御弁にて流量調節される冷却流体により外気を冷却する冷却器と、再熱制御弁にて流量調節される再熱流体により外気を再熱する再熱器と、前記ケーシング内に導入された外気を給気として吹き出す送風機とを配設した外気調和機の制御方法において、
前記加熱器の最大能力である最大加熱量を、冬季外気最低温度設定値から加熱器出口温度最大値点における加熱器出口温度最大値までの加熱量として求め、前記冷却器の最大能力である最大冷却量を夏季外気最大エンタルピ設定値から冷却器出口空気エンタルピ設定最小値までの冷却量として求め、前記再熱器の最大能力である最大再熱量を給気吹出露点温度設定最小値と等しいエアワッシャ出口最低温度から給気吹出温度設定最大値までの再熱量として求めておき、
外気温度と外気露点温度を測定した測定値から演算して外気状態をT−X空気線図上の状態点として算出し、
前記外気露点温度が給気吹出状態設定点の露点温度設定値より高く前記冷却器による冷却除湿と前記再熱器による再熱とが必要となる領域Aと、前記外気露点温度が給気吹出状態設定点の露点温度設定値以下で且つ前記外気温度と外気露点温度から求まる外気絶対湿度とに基づくT−X空気線図上の点が前記エアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線より低温側に位置し前記加熱器による加熱と前記エアワッシャによる加湿と前記再熱器による再熱とが必要となる領域Bと、前記外気露点温度が給気吹出状態設定点の露点温度設定値以下で且つ前記外気温度と外気露点温度から求まる外気絶対湿度とに基づくT−X空気線図上の点が前記エアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線上或いは該直線より高温側に位置し前記エアワッシャによる加湿と前記冷却器による冷却と前記再熱器による再熱とが必要となる領域CとのうちいずれのT−X空気線図上の領域に外気の状態点が存在しているかを判定し、
前記領域Aに外気の状態点が存在している場合、給気吹出状態設定点の露点温度設定値上の冷却器出口空気エンタルピと外気の状態点における外気エンタルピとの差分に比例する前記冷却器による必要冷却量を算出して該必要冷却量と前記最大冷却量との比で表される冷却制御弁開度指令を前記冷却制御弁へ出力し、給気吹出状態設定点の乾球温度設定値と冷却器出口温度との差分に比例する前記再熱器による必要再熱量を算出して該必要再熱量と前記最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令を前記再熱制御弁へ出力し、循環ポンプ停止指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力するようにし、
前記領域Bに外気の状態点が存在している場合、エアワッシャの飽和効率及び外気露点温度から求まる加熱器出口温度と外気温度Tとの差分に比例する前記加熱器による必要加熱量を算出して該必要加熱量と前記最大加熱量との比で表される加熱制御弁開度指令を前記加熱制御弁へ出力し、循環ポンプ運転指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力し、給気吹出状態設定点の乾球温度設定値とエアワッシャ出口温度との差分に比例する前記再熱器による必要再熱量を算出して該必要再熱量と前記最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令を前記再熱制御弁へ出力するようにし、
前記領域Cに外気の状態点が存在している場合、循環ポンプ運転指令を前記エアワッシャの循環ポンプへ出力し、給気吹出状態設定点の露点温度設定値上の冷却器出口空気エンタルピと外気の状態点における外気エンタルピとの差分に比例する前記冷却器による必要冷却量を算出して該必要冷却量と前記最大冷却量との比で表される冷却制御弁開度指令を前記冷却制御弁へ出力し、給気吹出状態設定点の乾球温度設定値と冷却器出口温度との差分に比例する前記再熱器による必要再熱量を算出して該必要再熱量と前記最大再熱量との比で表される再熱制御弁開度指令を前記再熱制御弁へ出力するようにしたことを特徴とする外気調和機の制御方法。
【請求項2】
T−X空気線図上で給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値と冬季外気状態設定点における冬季外気最低絶対湿度設定値との差をエアワッシャの飽和効率η[%]と対応させた場合に、100−η[%]に見合う絶対湿度を前記給気吹出状態設定点絶対湿度設定最大値に上乗せした絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を、エアワッシャの飽和効率ηが100[%]であると仮定した場合の給気吹出露点温度設定最大値に対応する最大加湿時飽和点とし、該最大加湿時飽和点を通る等湿球温度線と前記冬季外気最低絶対湿度設定値を示す線との交点を給気吹出露点温度設定最大値に対応する加熱器出口温度最大値点とし、該加熱器出口温度最大値点における加熱器出口温度最大値を求めるようにした請求項1記載の外気調和機の制御方法。
【請求項3】
T−X空気線図上で給気吹出状態設定点における給気吹出状態設定点絶対湿度と冬季外気状態設定点における冬季外気最低絶対湿度設定値との差をエアワッシャの飽和効率η[%]と対応させた場合に、100−η[%]に見合う絶対湿度を前記給気吹出状態設定点絶対湿度に上乗せした絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を、エアワッシャの飽和効率ηが100[%]であると仮定した場合の給気吹出露点温度設定値に対応する最大加湿時飽和演算点とし、該最大加湿時飽和演算点を通る等湿球温度線と前記冬季外気最低絶対湿度設定値を示す線との交点を給気吹出露点温度設定値に対応する加熱器出口温度最大値演算点とし、前記給気吹出状態設定点絶対湿度を示す線と飽和空気線との交点を加湿時飽和点とし、該加湿時飽和点と加熱器出口温度最大値演算点とを結ぶ直線をエアワッシャの飽和効率に基づく一次関数で近似される直線として求めるようにした請求項2記載の外気調和機の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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