説明

多チャンネル通話録音システム

【課題】複数の通話を同時に、かつ簡単に録音できる多チャンネル通話録音システムを提供する。
【解決手段】外線電話網と接続されたSIP対応のPBX1には、内線電話機2a,2bが接続されると共に、LANなどのIPネットワーク3を介してSIP電話機4および通話録音UA(User Agent)装置5が接続されている。SIP対応PBX1は、複数の宛先をグルーピングして、グループ内から空き端末を選んで発信したり、同報発信したりする振り分け機能部11と、三者以上の会議通話を制御する会議通話機能部12とを備えている。通話録音UA装置5は、OS上で動作する複数のSIPソフトフォンと、各SIPソフトフォンが受信した音声データを蓄積する記憶装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多チャンネル通話録音システムに係り、特に、SIPを利用してセッションを確立する多チャンネル通話録音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット・プロトコルを利用したIP電話システムが普及し、コンピュータ上で動作するVoIP(Voice Over IP)アプリケーション・ソフトウェア・プログラムとしてソフトフォンが利用されている。ソフトフォンは、汎用のオペーレーティングシステムの下で動作するVoIPクライアントソフトウェアであり、コンピュータ装置に備えられるサウンド装置やネットワーク装置を使用して、IPパケットによる音声通信を処理する。また、呼制御にSIP(RFC3621“Session Initiation Protocol")を用いたソフトフォンは、特にSIPソフトフォンと呼ばれている。
【0003】
このようなソフトフォンを利用した通話音声を録音する技術として、特許文献1には、ネットワーク上に音声呼制御管理装置および通話録音サーバを配置し、2つの電話端末A,B間の通話を音声呼制御管理装置の制御下で通話録音サーバに録音する技術が開示されている。
【0004】
この従来技術では、電話端末A,B間で通話が開始されると、音声呼制御管理装置から通話録音サーバへ録音開始が指示され、音声呼制御管理装置は、電話端末A,Bの通話相手を通話録音サーバへ切り替える呼制御を行う。通話録音サーバは、前記録音開始の指示に応答して、電話端末Aから受信した音声パケットを電話端末Bへ転送する一方、電話端末Bから受信した音声パケットを電話端末Aへ転送すると同時に、各音声パケットを記憶装置に蓄積する。
【特許文献1】特開2003−46646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術では、電話端末間の通話を録音、転送する通話録音サーバや、電話端末の通話相手を通話録音サーバへ切り替えるための音声呼制御管理装置を、新規に構築してネットワーク上に配置しなければならなかった。また、上記した従来技術において、複数の通話を同時に録音する多チャンネル化を実現するためには、音声呼制御管理装置および通話録音サーバを複数組用意するか、あるいは複数の通話データを一つの通話録音サーバで齟齬無く録音するための振り分け制御機能を別途に構築しなければならない。そのため、システムが大型化してしまい、その導入も容易ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、複数の通話を同時に、かつ簡単に録音できる多チャンネル通話録音システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、IPネットワークに接続されたSIP対応交換機および通話録音UA装置を含む多チャンネル通話録音システムにおいて、前記通話録音UA装置が、相互に独立した複数のソフトフォンと、各ソフトフォンの通話を録音する記憶手段とを含み、前記SIP対応交換機が、発信端末と着信端末との間に確立された通話の録音を各ソフトフォンへ要求する手段と、これに応答したソフトフォンとの間にSIPセッションを確立する手段と、前記SIPセッションを利用して前記ソフトフォンへ通話データを送信する手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一つの通話録音UA装置に複数のソフトフォンが実装され、電話端末間に確立された音声通話の録画を通話録音UA装置へ要求すると、これに応答したソフトフォンとの間にSIPセッションが確立されて録音が開始される。そして、このような複数のソフトフォンへの音声通話の振り分け制御は、SIP対応交換機に実装されている振り分け機能で実現でき、また、通話当事者以外の第三者への通話の転送は会議通話機能を利用して実現できるので、複数の通話を同時に、かつ簡単に録音できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明が適用される多チャンネル通話システムの主要部の構成を示したブロック図であり、外線電話網と接続されたSIP対応交換機(PBX1)には、内線電話機2a,2bが接続されると共に、LANなどのIPネットワーク3を介して、SIP電話機4および通話録音UA(User Agent)装置5が接続されている。
【0010】
前記SIP対応PBX1は、複数の宛先をグルーピングし、グループ内で空いている端末に宛先を割り当てたり、全ての端末に同報発信したりする振り分け機能部11と、三者以上の会議通話を制御する会議通話機能部12とを備えている。
【0011】
図2は、前記通話録音UA装置5の主要部の構成を示した機能ブロック図であり、汎用のオペレーティングシステム(OS)51と、このOS51上で動作する複数のSIPソフトフォン52(52a,52b…)と、各SIPソフトフォン52が受信した音声データを蓄積するハードディスクドライブ装置(HDD)53とを備えている。各SIPソフトフォン52には全てのSIPソフトフォン52に共通の識別情報(代表番号)と共に、各SIPソフトフォン52に固有の識別情報(内線番号)が割り当てられている。
【0012】
次いで、図3、4のフローチャートおよび図5、6、7のシーケンスフローを参照して、本実施形態の動作を詳細に説明する。図3は、前記SIP対応PBX1の動作を示し、図4は、前記通話録音UA装置5の動作、特に各SIPソフトフォンの動作を示している。
【0013】
SIP対応PBX1では、図3のステップS1において、録音開始の契機となる何らかのイベントが検知されるとステップS2へ進む。本実施形態では、発信端末と着信端末との間に通話が確立されたことを契機として、あるいは所定の録音開始操作が検知されたことを契機としてステップS2へ進む。
【0014】
ステップS2では、SIP対応PBX1から通話録音UA装置5へinviteが送信される。このinviteは、SIP対応PBX1に実装されている振り分け機能部11により、通話録音UA装置5に実装されている全てのSIPソフトフォン52、あるいは空き状態のソフトフォン52へ送信される。ステップS3では、いずれかのSIPソフトフォン52からの応答に備えて待機する。なお、所定の待機時間が経過しても応答を受信できないと、ステップS9でタイムアウトと判定されて当該処理を終了する。
【0015】
通話録音UA装置5は、図4のステップS21で前記inviteを受信すると100 Trying(暫定応答)を返信する。ステップS22では、HDD53の容量不足が判定される。本実施形態では、HDD53に記憶可能な音声データ量の上限値および音声ファイル数の上限値が予め設定されており、HDD53に既登録の音声データ量および音声ファイル数の少なくとも一方が上限値を超えていると、容量不足と判定される。
【0016】
容量不足でなければステップS23へ進み、応答したSIPソフトフォンが200OK(成功)を返信してACKの受信に備える。これに対して、容量不足であればステップS33へ進む。ステップS33では、図6に示したように、4xx(クライアントエラー)が返信され、通話録音UA装置5からACKを受信して当該処理を終了する。これ以降は、受信した全てのinviteに対して同様に4xxが返信される。
【0017】
図3へ戻り、SIP対応PBX1は、ステップS3で応答を受信すると、ステップS4では、その送信元のSIPソフトフォンを宛先としてACKを送信し、このSIPソフトフォンとの間にSIPセッションを確立する。ステップS5では、二者の通話音声が前記会議通話機能部12により合成されてRTPパケット化され、前記SIPソフトフォン52へ送信される。ステップS6では、録音終了の契機となるイベントが検知されたか否かが判定される。本実施形態では、終話あるいは所定の録音終了操作が録音終了の契機とされ、これらが検知されるまでは、ステップS5へ戻って通話データの送信が継続される。
【0018】
前記応答したSIPソフトフォンは、図4のステップS24で自身宛のACKを受信すると、ステップS25へ進んでRTPのrecvonly(受信のみ)での受信に備える。RTPが受信されるとステップS26へ進み、当該RTPのペイロード部に登録されている通話データを抽出してファイル化し、これをステップS27で前記HDD53へ蓄積する。本実施形態では、通話データをファイル化する際のコーデック方式として、mp3,PCM,QuickTime,AACなどが選択可能であり、これらのコーデック方式は予め選択することができる。ステップS28では、HDD53の容量不足が再び判定される。容量が不足していなければ、ステップS25へ戻ってRTPの受信および音声データファイルの蓄積が繰り返される。
【0019】
図3へ戻り、SIP対応PBX1では、ステップS6において録音終了の契機が検知されるとステップS7へ進む。ステップS7では、bye(セッション切断要求)が前記SIPソフトフォンへ送信される。SIPソフトフォンは、これを図4のステップS31で受信するとステップS32へ進み、200OKを返信する。SIP対応PBX1は、この200OKを図3のステップS8で受信すると、SIPセッションを切断して当該処理を終了する。
【0020】
なお、SIP対応PBX1において録音終了の契機が検知される前であっても、通話録音UA装置5において、前記図4のステップS28でHDD53の容量不足が検知されると、図7に示したように、ステップS29においてbyeが送信される。そして、SIP対応PBX1から200OKが返信され、これがステップS30で検知されると、当該処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用される多チャンネル通話システムのブロック図である。
【図2】通話録音UA装置(5)の機能ブロック図である。
【図3】SIP対応PBX(1)の動作を示したフローチャートである。
【図4】通話録音UA装置(5)の動作を示したフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態の動作を示したシーケンスフローである。
【図6】録音容量不足によるエラー処理時の動作を示したシーケンスフローである。
【図7】録音容量不足による録音終了処理の動作を示したシーケンスフローである。
【符号の説明】
【0022】
SIP対応PBX1…,2a,2b…内線電話機,3…IPネットワーク4…SIP電話機,5…通話録音UA装置,11…振り分け機能部,12…会議通話機能部,51…オペレーティングシステム,52…SIPソフトフォン,53…ハードディスクドライブ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークに接続されたSIP対応交換機および通話録音UA装置を含む多チャンネル通話録音システムにおいて、
前記通話録音UA装置が、
相互に独立した複数のソフトフォンと、
各ソフトフォンの通話を録音する記憶手段とを含み、
前記SIP対応交換機が、
発信端末と着信端末との間に確立された通話の録音を各ソフトフォンへ要求する手段と、
応答したソフトフォンとの間にSIPセッションを確立する手段と、
前記SIPセッションを利用して前記ソフトフォンへ通話データを送信する手段とを含むことを特徴とする多チャンネル通話録音システム。
【請求項2】
前記通話録音UA装置がさらに、
前記記憶手段に記憶されている通話量を検知する手段と、
前記録音要求を受信した際に、前記通話量が所定の上限値を超えているとエラーメッセージを返信する手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の多チャンネル通話録音システム。
【請求項3】
前記通話録音UA装置がさらに、
前記記憶手段に記憶されている通話量を検知する手段と、
前記SIPセッションの確立後に、前記通話量が所定の上限値を超えると前記SIPセッションを切断する手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の多チャンネル通話録音システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−212908(P2009−212908A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54759(P2008−54759)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】