多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ
多孔ブロックナノファイバー複合体(110)、濾過システム(10)、及びこれらを用いた方法が開示されている。具体例としての多孔ブロックナノファイバー複合体(110)は、1つまたは複数の孔(200)を備えた多孔ブロック(100)を有している。多孔ブロックナノファイバー複合体(110)はまた、少なくとも1つの孔(200)内に形成された複数の無機ナノファイバー(211)を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔ブロックナノファイバー複合フィルタに関する。
契約上の起源
合衆国政府は、合衆国エネルギー省と、全米再生可能エネルギー研究所の管理機関及び執行機関である持続可能エネルギー同盟との間の契約番号DE−AC36――08GO28308に基づき、本発明における権利を有する。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプのナノスケール材料が開発され、種々の目的に用いられている。比較的小径(例えば、ナノメートルなどのような)で、長さはそれよりも長い異方性ナノスケールファイバーが製造されてきており、そのため、そのようなナノスケールファイバーは「高い縦横比」材料となっている。これらのナノスケールファイバーの多くは、これらを、例えば、濾過媒体などの広範囲の適用例の有望な候補にできる独特の特性を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に濾過効用を有することのできるナノスケールアルミナ粒子を製造するための方法がある。例えば、直径が約25〜約500nmで、対応する表面積が約10〜約70m2/グラムの球状アルミナ粒子は、とりわけ、約200m2/グラム〜約600m2/グラムもの範囲の好適な表面積を有するガンマ及び/またはアルファ・アルミナのナノファイバーを生成するために処理される解決法となり得る。別の例では、粗ベーマイト・ナノファイバーが熱水処理により製造され、アニーリングされることにより、似た特性を持つナノファイバーを得る。アニーリングにより、一般的に粒子が成長し、表面積が小さくなる。
【0004】
上記の関連技術例及びそれに関連する限定例は、説明を目的とするものであり、排他的なものではない。関連技術の他の限定例は、明細書の解釈及び図面の検討により、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
以下の実施例及び態様は、例示的なもの、および説明的なものであることを意図するシステム、装置及び方法に関連して、記載及び説明されるが、範囲を限定するものではない。種々の実施例において、上述の問題点の1つまたは複数が軽減または排除されるが、他の実施例は他の改良を目的としている。
【0006】
上記に鑑みて、ここに記載する発明の全般的な特徴は、1つまたは複数の孔を有する多孔ブロックと、前記多孔ブロックの孔の少なくとも1つ内に形成された複数の無機ナノファイバーとを含む多孔ブロックナノファイバー複合体製品を提供することにある。非限定的な例として、特にカーボン多孔ブロック及びベーマイト・ナノファイバーを挙げることができる。
【0007】
本発明の別の特徴は、加工チャンバーの水中に多孔ブロックとアルミニウム前駆材料を供給することと、多孔ブロックナノファイバー複合体製品を熱水処理で製造することを含む、多孔ブロックナノファイバー複合体を生成する方法にある。本発明で作られる基本ファイバーはベーマイトである。他の可能な前駆物質には、同様にして加工される酸化チタン(TiO2)や酸化鉄が含まれる。さらに別の特徴は、ベーマイトを温度に応じてガンマまたはアルファ・アルミナにアニーリングするようなアニーリングにある。さらに別の特徴は、多孔ブロックナノファイバー複合体製品を、濾過媒体としての活性要素として組み入れることにある。
【0008】
上述した具体例としての特徴や実施例に加えて、さらなる特徴及び実施例が、図面を参照し、以下の明細書を検討することによって、明らかになるであろう。
【0009】
具体的な実施例を図面に示している。ここに開示される実施例および図面は、限定的ではなく、説明的なものとして考慮されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本明細書に記載されている実施例による具体例としてのフィルタシステムの概略図である。
【図2】図2A及び2Bは、1つまたは複数の概略的に示した孔を強調した多孔ブロックの概略図である。
【図3】図3は、多孔ブロックナノファイバー複合体の1つの孔の概略図である。
【図4】図4は、方法のフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の一例のX線回析(XRD)グラフである。
【図6】図6A及び6Bからなる図6は、本発明の一例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7】図7A,7B、7Cからなる図7は、本発明の別の例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図8】図8は、本発明のさらに別の例のX線回析(XRD)特性である。
【図9】図9A,9Bからなる図9は、本発明のさらに別の例の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図10】図10は、本発明のさらに別の例の、さらに別の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図11】図11は、本発明のさらに別の例の、さらに別の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図12】図12は、チタン酸塩ナノチューブ及びアナターゼTiO2ナノロッドのX線回析(XRD)走査データである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
ここに挙げるものは、良好な濾過特性を有する濾過媒体として利用可能な1つまたは複数の複合体製品を提供するために、多孔ブロックの孔上に蒸着または孔内に形成されたナノファイバー材料に関係するシステム、装置、組成物及び/またはそれらの製造方法または用途である。より詳細には、いくつかの実施形態においてここに提供されるものは、例えば、いくつかの例において、多孔カーボンの多孔濾過ブロックの孔で成長するベーマイト(Al(O)OH)を一例として含む、例えばアルミナや類似の物質などの無機ナノファイバー、及び、それらの濾過工程または用途である。具体例としてのナノファイバー多孔ブロック組成物及びその製造方法及び用途は、図面及び以下の説明を参照することにより、よりよく理解されるであろうが、種々の代替多孔ブロック、無機ナノファイバー、及び製造方法を用いることができることが理解されるであろう。
【0012】
まず、図1に関して、流通濾過システム10の概略図が示されており、これには、本発明の展開例を適用する、または用いることができる。より詳細には、濾過システム10は、多孔濾過ブロック100または以下に記載するよう改変された改変ブロック110を備えていてもよい。ブロック100または110は、システム10の流通チャンバー101内に図示されているように設けられている。このようなシステム10においては、流体が取入口102を介して導入され(例えば取入れフロー矢印を参照)、多孔フィルタブロック100または110を流れ(点線のフロー矢印)、排出口103を介して出る(排出口のフロー矢印)。本発明の展開例による多くの例では、流体は、多孔フィルタブロック100/110を介してそこから濾過される1つまたは複数の汚染物質または不純物を含む水である。ブロック及びシステムは図1に概略のみ示しており、図1の物理的形状に制限されない多くの可能な改変実施例が、大きさ、規模、形状、作用形態に関わらず、本発明に挙げる1つまたは複数の特徴を組み込むことができる。
【0013】
図2は、多数の孔200を備えたブロック100のより詳細な概略図であり、図2Aの上図から下図に移動すると、本発明に記載された改変例として、以下に記載するように、その上でまたはその中でナノファイバーが成長した改変された孔構造210を備えた改変ブロック110となる。中に多くのナノファイバー211が設けられた概略孔構造210の拡大図を図2Bに示す。図3は、流体300の流れが、基材250とともに、1つまたは複数のナノファイバー211と接触する孔210を通過して中に入る様子を示す概略機能図である。以下にさらに詳述する多孔カーボンブロックを通す水の濾過の例では、水と炭素の接触によって周知の有利な効果がもたらされ、さらに、ナノファイバーによってもたらされる利点もある。つまり、炭素は、例えば、望ましくない有機物及び/または塩素やクロラミンなどの成分または分子などの汚染物質や不純物を除去することができるが、本発明のナノファイバーを追加することにより、例えばウイルスや細菌などの生物病原体や、他の微粒子、有機または無機成分、あるいは重金属などの毒性成分をさらに除去することに、さらなる機能性を見出すことができる。図3の例に示す外側の基材250は、その孔の内部で成長したナノファイバー構造を備えた外側多孔膜であってもよい。従って、本発明の多孔基材内の孔は、多孔ブロックまたは多孔膜、あるいはその両方の中にある孔であってもよいが、いずれの場合も、その中にナノファイバーが形成されている。外側多孔膜はまた、例えば、このような膜が、ナノファイバー211及び/またはナノファイバーの支持体110を含むよう機能するように、多孔ブロック基材とともに用いることもできる。そして、多孔ブロックは、例えば、本発明に記載する炭素などの第1機能属性、多孔ブロックの孔内に設けられたナノファイバーにおける第2属性、及び、孔内にナノファイバーを形成する外側の外部多孔膜及び多孔ブロック、あるいは該外部多孔膜単独における第3属性を有する。
【0014】
具体例としての多孔ブロックナノファイバー複合体製品は以下のように製造される。ある具体的な実施形態においては、多孔ブロックナノファイバー複合体110は、まだ改変されていない多孔ブロック100の存在下で、ナノファイバー211の直接的な熱水合成によって製造される。多孔ブロック100を備えた適切な反応容器(「加工チャンバー」とも称される)に入った溶液に前駆材料が供給される。その後、加工チャンバーは、加熱、加圧されて、加工チャンバー内の多孔ブロックで形成または「成長」するナノファイバーを合成して、多孔ブロックナノファイバー複合体製品110を製造する。図4は、この方法400の要約図であり、第1工程又は操作401では多孔ブロックが得られ、次の工程又は操作402では、多孔基材の少なくとも1つの孔内にナノファイバー又は複数のナノファイバーが形成される。
【0015】
ナノファイバー211の直接熱水合成は、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、Al(Ac)(OH)2から選択されるアルミニウム前駆材料を供給する工程を有していてもよい。以下に記載する例では、ベーマイトが、約5時間約200℃の温度に加熱された水にAl(OH)3前駆材料を用いて合成されたナノファイバーの材料であり、多孔基材ブロックの1つまたは複数の孔上または孔内にほぼ白色の固体ナノファイバーを製造する。
【0016】
この方法は再生可能性が高く、得られた製品の形態は、濾過媒体中の活性要素として、または直接的に濾過媒体として用いるのに特に有利である。例えば、熱水処理工程は、より良質の複合濾過媒体を製造するために、ナノファイバーを他の多孔材料でも直接成長させるために用いることもできる。本来必ずしも熱水処理でないファイバー形成反応を実行することもでき、例えば、ファイバー成長は、基礎材料の孔において核形成されるものであってもよい。
【0017】
より詳細には、ナノファイバーの小径(平均2nm)とナノファイバーの全体の縦横比(平均nmの100’s)とナノファイバーの大きな表面積が、基礎となる多孔ブロックとともに、濾過の用途に伝導性であるジオメトリーを提供する。さらに、ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体が水などの溶液と接触する能力によって、ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体が、容易に濾過媒体として機能する。ナノファイバー及び/または多孔ブロックナノファイバー複合体は、これらと接触しながら流れる流体から汚染物質または不純物を集めて、濾過媒体として有益な除去を行う。多孔ブロック及び/またはナノファイバーと接触する流体の流れは、図4において工程又は操作403として示している(ただし、点線のつながりは、製造作業工程401及び402に対して分離した作用性を示している)。ナノファイバーは、多孔ブロックの孔上/内で凝集するのではなく、濾過適用例に対してより伝導性をもつ母材及び足場構造を促進するものである。
【0018】
ナノファイバーフィルタは、多様な濾過適用例に用いることができる。例えば、アルミナ、特にベーマイト相の、ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体の特性は、以下に記載する細菌や重金属の除去において有益である。ベーマイトは、ウイルスや重金属に対する化学的親和性もつことが実証されている。ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体の大きな表面積はまた、病原体の濾過にも非常に適している。
【0019】
他の実施形態では、多孔ブロックナノファイバー複合体110は、追加及び/または代替要素、例えば、ナノファイバー母材に埋設されたTiO2、Fe2O3、ZnOなどの活性要素または他の無機酸化物を用いた多孔ブロック100の存在下でのナノファイバー211の熱水合成によって、あるいは、微量の(NH4)2SO4を含有する水にアルミニウム前駆材料を供給することによって、製造することができる。追加及び/または代替活性要素は、濾過される要素を、直接に、または光酸化または還元によって、酸化させる、または還元すべく機能する。このような実施例をさらに以下に記載する。
【0020】
ベーマイト・アルミナの例で紹介されたように、アルミニウム前駆材料は、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、Al(Ac)(OH)2から選択され、また必須ではないが、前駆材料は粒状で供給される。加工チャンバーは、反応を起こすために加熱され、一般的に、アニーリングまたはそれに類似する加工のために約125℃〜約200℃の範囲またはそれ以上、例えば400℃まで加熱される。加工チャンバーはまた、通常は約50psi〜約100psi(ゲージ圧)の範囲で加圧される。ある代表的な方法においてある多孔ブロックナノファイバー複合体製品が製造され、そのナノファイバー形成は、前駆材料がAl(OH)2Acを含む実施形態によると等式(1)によって表される。
(1)Al(OH)2Ac+水+(NH4)2SO4(微量)=ナノファイバー
【0021】
バランスのとれた化学反応はAl(OH)2Ac=Al(O)OH+HAcである。アニーリング工程を加えると(下記参照)、ベーマイトは、ベーマイトからガンマ・アルミナへと相変化を経験して作られる。その化学作用の一例を等式(2)に示す。
(2)AlOOH=ガンマ−Al2O3+H2O
【0022】
また、明白なことであるが、この方法は通常は塩を用いず、ナノファイバー211を製造するための「クリーンな」方法にする。さらに、ナノファイバー211は、ここでは容易に多孔ブロック基材100に、及び/または多孔ブロック基材100内に核形成される、あるいは付着するが、容易に互いにバラバラになることができ、さらに、容易に溶液(例えば水)中に分散することができる。
【0023】
適切な加工チャンバーでは、本明細書に記載されるように温度及び圧力が制御される。ある実施形態によると、加工チャンバーは、Parr社製型式4761、300ml圧力反応容器またはParr社製型式4642、2L圧力反応容器である。しかし、現在知られている、または後に開発された加工チャンバーも、本発明での使用に適切であると考えられる。
【0024】
本発明によって製造されたナノファイバー211は、X線回析などの種々の周知の技術のいずれかを用いて分析することができる。X線回析(XRD)は、固体の組成を検査するために一般的に用いられるものである。X線は、反復原子構造を有するサンプルに当てられ、X線を分散または回析させる。分散したX線は、互いに構造的に干渉して、回析光線を作り出す。データは一般的には一連の回析パターンとして表され、周知の材料の回析パターンと比較することができる。本発明の方法によって製造されたアルミナ・ナノファイバー製品211は、X線回析で判定されたように、約100%ベーマイトである。ナノファイバー製品211は、ベーマイトを空気中で400℃に加熱することによって、アルミナのガンマ相へとさらに加工される。
【0025】
ある実施形態では、多孔ブロックナノファイバー複合体製品110は、まだ改変されていない多孔ブロック100を加工チャンバーに供給することによって、ナノファイバー211の合成の間に製造される。このような方法は、ある実施形態によると以下の等式(3)によって表される。
(3)Al(OH)2Ac+水+(NH4)2SO4(微量)+多孔ブロック←複合体材料
【0026】
この実施形態によると、ナノファイバー211は、多孔ブロック100と単に機械的に混合されるのではない。その代わりに、多孔ブロック100は、ナノファイバー複合体ブロック110を製造すべく、合成中にナノファイバー211が「成長」または結晶化する媒体として機能するのである。ナノファイバー211は、形態に欠陥を生じさせることなく、あるいはナノファイバー211の表面積を減らすことなく、合成中に多孔ブロック100に結合されることが好ましい。
【0027】
さらに、多孔ブロック100は、あらゆる適切な多孔材料であって、ほんの少し例を挙げるなら、例えば、カーボン、金属酸化物、シリコーン、セルロース、及び/または有機重合体などである。基材多孔ブロック100の製造は、なんらかの特定の方法に限定されるものではなく、当業者によってよく理解されるような適切な方法で製造することができる。また、ブロックや他の基材は、1つまたは複数の孔を有していればよく、特定の大きさや形状が要求されるものではない。
【0028】
本発明の教示内容によって製造された多孔ブロックナノファイバー複合体製品110はまた、すでに簡単に述べたように、X線回析などの種々の周知の技術を用いて分析することができる。本発明の方法によって製造された複合体110は、図5のX線回析結果に示されるように、約100%ベーマイトのナノファイバーを有することができる。複合体110のナノファイバーはさらに、上述したように、ガンマ・アルミナ相に加工することができる。製造された後、ナノファイバー複合体10は、最も高いナノファイバー製品表面積(つまり、約500〜650m2/g)を得るために、約250℃〜400℃の範囲の温度までアニーリングされるが、これは、本発明の組成物を特定の範囲の温度に限定することを意図するものではない。この相変化は、一般的に、形態または縦横比を変更することなく生じる。
【0029】
図6及び7は、下記の実施例1及び2によって製造されたナノファイバー多孔ブロック複合体材料の画像である。これらの画像は、一般的に走査電子顕微鏡法(SEM)と称される方法において、走査型電子顕微鏡によって撮られたものである。図6A及び6Bに示すSEM画像から容易にわかるように、複合体ブロック110は、多孔カーボンブロックの孔内で結晶化された複数のナノファイバーを有している。図6Aは、ベーマイト成長前の市販のカーボンブロックのSEM画像であり、図6Bは、ベーマイト成長後の同じ市販のカーボンブロックのSEM画像である。同様に、図7A、7B、7CのSEM画像は、図6の例よりも大きな孔サイズを持つ多孔カーボンブロックで結晶化したナノファイバーを有するナノファイバー多孔ブロック複合体を示している。図7Aは、ベーマイト成長前の大径孔の市販のカーボンブロックのSEM画像であり、図7Bは、ベーマイト成長後の同じ大径孔の市販用のカーボンブロックのSEM画像であり、図7Cは、ベーマイト成長後の同じ大径孔の市販のカーボンブロックの別のSEM画像であり、図7Cは倍率が高い。
【0030】
本発明の教示内容によって製造されたナノファイバー211は、通常、その長さに対して非常に小さな直径(例えば平均2nm)を有しており、高い縦横比を有するものである。従って、大きな表面積と組み合わさったこの特有の形態によって、ナノファイバー多孔ブロック複合体製品110が、濾過などの多くの適用例での使用のために伝導性になる。さらに、ナノファイバー211のベーマイト相もまた、以下に述べるように、製品の生体作用能力及び重金属濾過能力を改善する。
【0031】
加えて、ナノファイバー211及び多孔ブロックナノファイバー複合体110は、他の材料や装置と容易に一体化させることができ、高性能の濾過製品を製造できる。従って、ある実施形態では、製品110は、図1のシステム10などの濾過システム内に濾過媒体として容易に組み込むことができる。ナノファイバー211及び/またはナノファイバー複合体110は、濾過媒体に望ましい除去特性を与えるものである。
【0032】
ナノファイバー211及び/または多孔ブロックナノファイバー複合体110の特有の形態及び他の特徴によって、本発明の製品は、限定はされないが、空気用フィルタ及び水用フィルタの両方を含む広い可能性のある範囲の濾過適用例に特に適したものになる。ベーマイト相もまた、化学的親和性があるために、生体に作用する適用例に有用である。これらの製品は、化学的及び/または静電親和性及び/またはウイルスや病原体が付着することができる大きな表面積を有しており、これらの製品を、生体に作用する濾過適用例において特に有利なものとしている。ベーマイトファイバーの具体例としての生体的親和性を、下記の表1に、製品特徴によって示す(これらの特徴は、実施例1及び2のようなカーボンブロック基材孔上/内にではないが、本発明に記載されたような方法によって成長したベーマイトナノファイバーに生じるものである)。
【0033】
【表1】
【0034】
初期検査は、20〜70重量%のベーマイトナノファイバーを有するとともに約1.0mm〜1.5mm厚さ範囲の他のフィルタ基材を用いて行われた。細菌性ウイルス(バクテリオファージ)PRD−1及びMS−2(ヒトウイルスの代用物)を用いて、このようなフィルタによるウイルスの減衰を調べた。除去効率は、99.9999%以上であった。
【0035】
このようなナノファイバー211は多孔ブロックナノファイバー複合体製品110内に用いることができるため、その特有の形態及び他の特徴によっても、本発明の製品は、金属イオン化学吸着を介して重金属を濾過するのに特に適したものになる。本発明に記載されていないような方法で形成され重金属濾過に用いられるベーマイトナノファイバーは、このようなベーマイトナノファイバー0.1gを水(10ml)に分散させて、その分散液をフィルタを通過させることによって準備したゲルマン・アクロディスク(Gelman Acrodisc)シリンジフィルタ上に支持されたベーマイトマットを有している。このような重金属フィルタを、下記の重金属:亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、銅(Cu)、金(Au)、及び銀(Ag)を水から除去する能力について検査した。検査結果を以下の表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
これらの検査結果は、重金属フィルタにおける、または重金属フィルタとしての、多孔ブロックナノファイバー複合体製品110上/内で用いる本発明の方法によって製造されたベーマイトナノファイバーの適用の可能性を示しており、そのような重金属フィルタは、他の適用例の中でも特に、飲料水処理及び工業廃水処理に使用可能なものである。
【0038】
従って、ナノファイバーフィルタブロック110は、機械的及び/または化学的吸着及び/または静電気引力メカニズムによって、生体的及び/または無機的濾過の適用例に用いることができる。ナノファイバーフィルタ110は、特定の材料の吸着のために最適化された複合構造である。さらに、ナノファイバーフィルタ110は、流量の多い状態下で用いることができる。別の実施例では、吸着された材料をフィルタから溶離させることもできる。
【0039】
基礎のフィルタ材料、ここでは例えば、多孔ブロックは、複合体フィルタ製品形状で品質を上げることができる。一例では、標準的な多孔ブロックは、大腸菌やクリプトスポリジウム属のような大きな細菌の濾過に有効である(例えば、大きさが4〜7μのクリプトスポリジウム属有機体(原虫類)形態の保護オーシスト;ジアルディアもオーシスト形態であるが、わずかに大きく、6〜10ミクロンの大きさである。これらのオーシストは、有機体が、水流において宿主の体外で生存することを可能にし、塩素処理や紫外線照射などの殺菌方法からこれらの有機体を保護する)。しかし、実際の非オーシスト細菌は、もっと小さく、例えば約0.2〜0.5ミクロンであり、ここに記載したナノファイバーは、基材の有効孔サイズをもっと小さく減らすとともに化学的活性を加えて、従来の多孔ブロックで捉えることのできたオーシストだけでなく、細菌有機体そのものも、もっと小さいウイルスや化学汚染物質とともに捕捉するものである。
【0040】
本発明の製品は、生体に作用する、及び/または重金属水の濾過適用に限定されるものではない。他の実施形態では、本発明の製品は、アルコールやエステルやケトンなどの溶液から放出される極小粒子を除去するためのフィルタで用いることができる。他の実施形態では、本発明の製品は、電子機器製造における高純度の化学物質や水の濾過に用いることができる。さらに新たな適用例は、有機、無機、あるいはそれ以外に関わらず、ナノ材料からの濾過におけるものである(ナノ材料の毒性についての関心が深まりつつあるため。合衆国エネルギー省、公示456.1による)。他の具体例としての適用例には、空気または他の気体フィルタがある。さらに別の濾過適用例も、本発明の教示内容に精通した後の当業者にとって容易に明らかになるように、本発明の範囲内として意図するものである。
【0041】
本発明の範囲内であると意図されるさらに別の適用例は、ほんの少し例を挙げるなら、例えば、吸着パッド(例えば、医療用検知キット用)に用いることのできる本発明に記載された方法によって製造されたナノファイバー211及び/または複合体ブロック110、及び、生物学的物質(生物テロ兵器を含む)の濃縮/除去などである。
【実施例1】
【0042】
この実施例では、前駆材料は、広範囲の供給業者から容易に一般入手できるタイプの研究室グレードの顆粒状のAl(OH)3を含むものであった。この実施例においては、ベーマイトナノファイバーが、約5時間、約200℃の温度まで加熱された約200mlの水に約25.5gのAl(OH)3を用いて合成され、一般入手可能な多孔カーボン基材ブロック上、またはその1つまたは複数の孔上または孔内に、ほぼ白色の固体ナノファイバーができた。ここにおけるカーボン基材ブロックは、直径1.5インチ、厚さ0.5インチの4カーボンリングである(上述したように、多孔ブロックという用語はその形状を問うものではない)。加工チャンバーは、総圧で約150psi(ゲージ圧)で維持された。加工チャンバーは、約200℃に維持され、反応温度は約180℃であると評価された。反応の結果製造されたのは、約19.0グラムのナノファイバーであった。この製品を、5時間約100℃で乾燥させた。
【0043】
この実施例によって製造されたナノファイバーは、上記に簡単に記載するとともに図5に示したX線回析法を用いて分析された。このナノファイバーは、約100%のベーマイトを含み、平均表面積が、比表面積分析で、約285m2/gであった。このナノファイバーはまた、多孔カーボンブロックに閉じ込めることにより、上述したように、すぐに次の濾過の使用に用いることができる。すでに紹介したように、この実施例の工程の前後のSEM画像を図6A及び6Bにそれぞれ示す。
【実施例2】
【0044】
この実施例では、前駆材料は、広範囲の供給業者から容易に一般入手できるタイプの実質的に同じ研究室グレードのAl(OH)3を含むものであった。この実施例においては、ベーマイトナノファイバーが、同じく、約5時間、約200℃の温度まで加熱された約200mlの水に約25.5gのAl(OH)3を用いて合成され、一般入手可能な多孔カーボン基材上、またはその1つまたは複数の孔上または孔内に、ほぼ白色の固体ナノファイバーができた。ここにおける多孔ブロック材料はカーボン基材材料を有しており(ここでも、直径1.5インチ、厚さ0.5インチの4カーボンリングである)、実施例1の基材より大きな孔構造を有するものであった。図7A、7B、7C参照。
【0045】
加工チャンバーは、総圧で約150psiで維持された。加工チャンバーは、約200℃に維持され、反応温度は約180℃であると評価された。反応はこのように約5時間行われ、その結果製造されたのは、約19グラムのナノファイバー多孔ブロック複合体材料であった。この複合体製品を、5時間約100℃で乾燥させた。
【0046】
本実施例によって製造されたナノファイバー複合体は、上記に簡単に記載したX線回析法を用いて分析された。このナノファイバー複合体は、約100%のベーマイトを含んでいた。このナノファイバー多孔ブロック複合体の平均表面積は、比表面積分析で、約195m2/gであった。
【0047】
上述した実施例1及び2は、説明目的で提供されたものであり、限定する意図のものではない。さらに他の実施態様及び改変例も考慮される。
【0048】
すでに紹介したように、種々の代替前駆物質のうちの1つは、酸化チタン(TiO2)である。酸化チタンの化学作用の形態は、以下に示すように、チタン酸ナトリウムナノチューブを生成するために、強塩基性溶液中におけるTiO2粉末の熱水消化を伴うものである。
(4)3TiO2+2NaOH → Na2Ti3O7ナノチューブ+H2O
【実施例3】
【0049】
具体的な調剤では、5.0gのTiO2粉末を、テフロン(登録商標)のビーカーにおいて50mlの10NNaOHと混合し、300mlのParr社製圧力反応容器に載置した。反応容器は、5時間180℃で加熱され、室温まで冷却された。内容物は濾過され、100mlの水で洗浄され、30分間100℃で乾燥され、図8に示すXRD、及び図9に示す透過電子顕微鏡法(TEM)によってチタン酸ナトリウムナノチューブとして特徴づけられる白色の粉末を得た。より詳細には、図8は、そこに示す種々の温度で合成されたチタン酸塩製品のX線回析(XRD)の特徴づけである。180℃で合成された材料のトレースは、相純Na2Ti3O7ナノチューブである。図9は、図9A及び9Bのそれぞれにおいて、180℃で合成されたチタン酸塩ナノチューブの(TEM)画像を示すものである。
【0050】
チタン酸塩ナノチューブを、続けて、3〜24時間、約150〜約250℃の温度で水中で加熱すると、材料は、アナターゼTiO2ナノロッドに変換される。以下の実施例では、0.5gのチタン酸ナトリウムナノチューブを、テフロン(登録商標)の裏地のついた300mlParr社製圧力反応容器において25mlの水中に載置した後、特定の時間、特定の温度で維持した。これらの製品を回収し、水(100ml)で洗浄し、30分間100℃で乾燥させ、図10及び11に示すようにXRD及びTEMによって特徴づけた。図10は、チタン酸塩ナノチューブから、24時間、150℃で加工されたTiO2ナノロッドへの熱水変換の製品を示し、チタン酸塩ベルトのTiO2スパイクへの中間変換を示している。図11は、チタン酸塩ナノチューブから、5時間、230℃で加工されたTiO2ナノロッドへの熱水変換の製品を示し、TiO2ナノロッドへの完全変換を示している。
【0051】
チタン酸塩ナノチューブのTiO2への熱水変換は、上述した2つのTEM画像(図10及び図11)によって示すように、異なる製品形態を生成する反応時間と温度を用いて制御することができる。図12のXRDは、生成されたTiO2が結晶アナターゼ相であることを確認するものである。
【0052】
上述した実施例3の酸化チタンの例は、説明目的で提供されたものであり、限定する意図のものではない。さらに他の実施態様及び改変例も考慮される。
【0053】
本発明で用いられるカーボン材料は、限定はされないが、特に、れき青炭、木またはココナツの殻等の多くの材料源から得ることができる。いくつかの例では、粉末状のカーボンを、バインダーを用いて多孔ブロックに形成し、所望の特定の大きさ及び/または形状を作り出し、その後、バインダーを燃焼させてもよい。例えば圧縮成形などの他のブロック形成法も同様に、あるいは代わりに、用いることができる。
【0054】
本発明のブロック及びシステムは、図1に概略的に示すだけであって、非常に多くの考えられる代替案が、大きさ、規模、形状または作用形態に関わらず、本発明の特徴を組み込むことができる。本発明のブロックは多角形である必要はなく、末端用途によって、多くの形状を採ることができる。末端用途は、個人使用の水用ボトルサイズのブロックであってもよいし、例えばトラックや航空機によって輸送可能な輸送システムまで、自治体規模の実行までの大規模なものであってもよい。
【0055】
上述した実施例は、説明目的で提供されたものであり、限定する意図のものではない。さらに他の実施態様及び改変例も考慮される。
【0056】
多くの具体例及び実施例を記載したが、当業者は、そのある程度の改変、変更、追加及び下位の組合せを認識できるであろう。従って、以下の添付の請求の範囲は、これらのすべての改変、変更、追加及び下位の組合せを、それらの真の範囲内にあるものとして含むと解釈されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔ブロックナノファイバー複合フィルタに関する。
契約上の起源
合衆国政府は、合衆国エネルギー省と、全米再生可能エネルギー研究所の管理機関及び執行機関である持続可能エネルギー同盟との間の契約番号DE−AC36――08GO28308に基づき、本発明における権利を有する。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプのナノスケール材料が開発され、種々の目的に用いられている。比較的小径(例えば、ナノメートルなどのような)で、長さはそれよりも長い異方性ナノスケールファイバーが製造されてきており、そのため、そのようなナノスケールファイバーは「高い縦横比」材料となっている。これらのナノスケールファイバーの多くは、これらを、例えば、濾過媒体などの広範囲の適用例の有望な候補にできる独特の特性を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に濾過効用を有することのできるナノスケールアルミナ粒子を製造するための方法がある。例えば、直径が約25〜約500nmで、対応する表面積が約10〜約70m2/グラムの球状アルミナ粒子は、とりわけ、約200m2/グラム〜約600m2/グラムもの範囲の好適な表面積を有するガンマ及び/またはアルファ・アルミナのナノファイバーを生成するために処理される解決法となり得る。別の例では、粗ベーマイト・ナノファイバーが熱水処理により製造され、アニーリングされることにより、似た特性を持つナノファイバーを得る。アニーリングにより、一般的に粒子が成長し、表面積が小さくなる。
【0004】
上記の関連技術例及びそれに関連する限定例は、説明を目的とするものであり、排他的なものではない。関連技術の他の限定例は、明細書の解釈及び図面の検討により、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
以下の実施例及び態様は、例示的なもの、および説明的なものであることを意図するシステム、装置及び方法に関連して、記載及び説明されるが、範囲を限定するものではない。種々の実施例において、上述の問題点の1つまたは複数が軽減または排除されるが、他の実施例は他の改良を目的としている。
【0006】
上記に鑑みて、ここに記載する発明の全般的な特徴は、1つまたは複数の孔を有する多孔ブロックと、前記多孔ブロックの孔の少なくとも1つ内に形成された複数の無機ナノファイバーとを含む多孔ブロックナノファイバー複合体製品を提供することにある。非限定的な例として、特にカーボン多孔ブロック及びベーマイト・ナノファイバーを挙げることができる。
【0007】
本発明の別の特徴は、加工チャンバーの水中に多孔ブロックとアルミニウム前駆材料を供給することと、多孔ブロックナノファイバー複合体製品を熱水処理で製造することを含む、多孔ブロックナノファイバー複合体を生成する方法にある。本発明で作られる基本ファイバーはベーマイトである。他の可能な前駆物質には、同様にして加工される酸化チタン(TiO2)や酸化鉄が含まれる。さらに別の特徴は、ベーマイトを温度に応じてガンマまたはアルファ・アルミナにアニーリングするようなアニーリングにある。さらに別の特徴は、多孔ブロックナノファイバー複合体製品を、濾過媒体としての活性要素として組み入れることにある。
【0008】
上述した具体例としての特徴や実施例に加えて、さらなる特徴及び実施例が、図面を参照し、以下の明細書を検討することによって、明らかになるであろう。
【0009】
具体的な実施例を図面に示している。ここに開示される実施例および図面は、限定的ではなく、説明的なものとして考慮されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本明細書に記載されている実施例による具体例としてのフィルタシステムの概略図である。
【図2】図2A及び2Bは、1つまたは複数の概略的に示した孔を強調した多孔ブロックの概略図である。
【図3】図3は、多孔ブロックナノファイバー複合体の1つの孔の概略図である。
【図4】図4は、方法のフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の一例のX線回析(XRD)グラフである。
【図6】図6A及び6Bからなる図6は、本発明の一例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7】図7A,7B、7Cからなる図7は、本発明の別の例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図8】図8は、本発明のさらに別の例のX線回析(XRD)特性である。
【図9】図9A,9Bからなる図9は、本発明のさらに別の例の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図10】図10は、本発明のさらに別の例の、さらに別の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図11】図11は、本発明のさらに別の例の、さらに別の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図12】図12は、チタン酸塩ナノチューブ及びアナターゼTiO2ナノロッドのX線回析(XRD)走査データである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
ここに挙げるものは、良好な濾過特性を有する濾過媒体として利用可能な1つまたは複数の複合体製品を提供するために、多孔ブロックの孔上に蒸着または孔内に形成されたナノファイバー材料に関係するシステム、装置、組成物及び/またはそれらの製造方法または用途である。より詳細には、いくつかの実施形態においてここに提供されるものは、例えば、いくつかの例において、多孔カーボンの多孔濾過ブロックの孔で成長するベーマイト(Al(O)OH)を一例として含む、例えばアルミナや類似の物質などの無機ナノファイバー、及び、それらの濾過工程または用途である。具体例としてのナノファイバー多孔ブロック組成物及びその製造方法及び用途は、図面及び以下の説明を参照することにより、よりよく理解されるであろうが、種々の代替多孔ブロック、無機ナノファイバー、及び製造方法を用いることができることが理解されるであろう。
【0012】
まず、図1に関して、流通濾過システム10の概略図が示されており、これには、本発明の展開例を適用する、または用いることができる。より詳細には、濾過システム10は、多孔濾過ブロック100または以下に記載するよう改変された改変ブロック110を備えていてもよい。ブロック100または110は、システム10の流通チャンバー101内に図示されているように設けられている。このようなシステム10においては、流体が取入口102を介して導入され(例えば取入れフロー矢印を参照)、多孔フィルタブロック100または110を流れ(点線のフロー矢印)、排出口103を介して出る(排出口のフロー矢印)。本発明の展開例による多くの例では、流体は、多孔フィルタブロック100/110を介してそこから濾過される1つまたは複数の汚染物質または不純物を含む水である。ブロック及びシステムは図1に概略のみ示しており、図1の物理的形状に制限されない多くの可能な改変実施例が、大きさ、規模、形状、作用形態に関わらず、本発明に挙げる1つまたは複数の特徴を組み込むことができる。
【0013】
図2は、多数の孔200を備えたブロック100のより詳細な概略図であり、図2Aの上図から下図に移動すると、本発明に記載された改変例として、以下に記載するように、その上でまたはその中でナノファイバーが成長した改変された孔構造210を備えた改変ブロック110となる。中に多くのナノファイバー211が設けられた概略孔構造210の拡大図を図2Bに示す。図3は、流体300の流れが、基材250とともに、1つまたは複数のナノファイバー211と接触する孔210を通過して中に入る様子を示す概略機能図である。以下にさらに詳述する多孔カーボンブロックを通す水の濾過の例では、水と炭素の接触によって周知の有利な効果がもたらされ、さらに、ナノファイバーによってもたらされる利点もある。つまり、炭素は、例えば、望ましくない有機物及び/または塩素やクロラミンなどの成分または分子などの汚染物質や不純物を除去することができるが、本発明のナノファイバーを追加することにより、例えばウイルスや細菌などの生物病原体や、他の微粒子、有機または無機成分、あるいは重金属などの毒性成分をさらに除去することに、さらなる機能性を見出すことができる。図3の例に示す外側の基材250は、その孔の内部で成長したナノファイバー構造を備えた外側多孔膜であってもよい。従って、本発明の多孔基材内の孔は、多孔ブロックまたは多孔膜、あるいはその両方の中にある孔であってもよいが、いずれの場合も、その中にナノファイバーが形成されている。外側多孔膜はまた、例えば、このような膜が、ナノファイバー211及び/またはナノファイバーの支持体110を含むよう機能するように、多孔ブロック基材とともに用いることもできる。そして、多孔ブロックは、例えば、本発明に記載する炭素などの第1機能属性、多孔ブロックの孔内に設けられたナノファイバーにおける第2属性、及び、孔内にナノファイバーを形成する外側の外部多孔膜及び多孔ブロック、あるいは該外部多孔膜単独における第3属性を有する。
【0014】
具体例としての多孔ブロックナノファイバー複合体製品は以下のように製造される。ある具体的な実施形態においては、多孔ブロックナノファイバー複合体110は、まだ改変されていない多孔ブロック100の存在下で、ナノファイバー211の直接的な熱水合成によって製造される。多孔ブロック100を備えた適切な反応容器(「加工チャンバー」とも称される)に入った溶液に前駆材料が供給される。その後、加工チャンバーは、加熱、加圧されて、加工チャンバー内の多孔ブロックで形成または「成長」するナノファイバーを合成して、多孔ブロックナノファイバー複合体製品110を製造する。図4は、この方法400の要約図であり、第1工程又は操作401では多孔ブロックが得られ、次の工程又は操作402では、多孔基材の少なくとも1つの孔内にナノファイバー又は複数のナノファイバーが形成される。
【0015】
ナノファイバー211の直接熱水合成は、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、Al(Ac)(OH)2から選択されるアルミニウム前駆材料を供給する工程を有していてもよい。以下に記載する例では、ベーマイトが、約5時間約200℃の温度に加熱された水にAl(OH)3前駆材料を用いて合成されたナノファイバーの材料であり、多孔基材ブロックの1つまたは複数の孔上または孔内にほぼ白色の固体ナノファイバーを製造する。
【0016】
この方法は再生可能性が高く、得られた製品の形態は、濾過媒体中の活性要素として、または直接的に濾過媒体として用いるのに特に有利である。例えば、熱水処理工程は、より良質の複合濾過媒体を製造するために、ナノファイバーを他の多孔材料でも直接成長させるために用いることもできる。本来必ずしも熱水処理でないファイバー形成反応を実行することもでき、例えば、ファイバー成長は、基礎材料の孔において核形成されるものであってもよい。
【0017】
より詳細には、ナノファイバーの小径(平均2nm)とナノファイバーの全体の縦横比(平均nmの100’s)とナノファイバーの大きな表面積が、基礎となる多孔ブロックとともに、濾過の用途に伝導性であるジオメトリーを提供する。さらに、ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体が水などの溶液と接触する能力によって、ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体が、容易に濾過媒体として機能する。ナノファイバー及び/または多孔ブロックナノファイバー複合体は、これらと接触しながら流れる流体から汚染物質または不純物を集めて、濾過媒体として有益な除去を行う。多孔ブロック及び/またはナノファイバーと接触する流体の流れは、図4において工程又は操作403として示している(ただし、点線のつながりは、製造作業工程401及び402に対して分離した作用性を示している)。ナノファイバーは、多孔ブロックの孔上/内で凝集するのではなく、濾過適用例に対してより伝導性をもつ母材及び足場構造を促進するものである。
【0018】
ナノファイバーフィルタは、多様な濾過適用例に用いることができる。例えば、アルミナ、特にベーマイト相の、ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体の特性は、以下に記載する細菌や重金属の除去において有益である。ベーマイトは、ウイルスや重金属に対する化学的親和性もつことが実証されている。ナノファイバー及び多孔ブロックナノファイバー複合体の大きな表面積はまた、病原体の濾過にも非常に適している。
【0019】
他の実施形態では、多孔ブロックナノファイバー複合体110は、追加及び/または代替要素、例えば、ナノファイバー母材に埋設されたTiO2、Fe2O3、ZnOなどの活性要素または他の無機酸化物を用いた多孔ブロック100の存在下でのナノファイバー211の熱水合成によって、あるいは、微量の(NH4)2SO4を含有する水にアルミニウム前駆材料を供給することによって、製造することができる。追加及び/または代替活性要素は、濾過される要素を、直接に、または光酸化または還元によって、酸化させる、または還元すべく機能する。このような実施例をさらに以下に記載する。
【0020】
ベーマイト・アルミナの例で紹介されたように、アルミニウム前駆材料は、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、Al(Ac)(OH)2から選択され、また必須ではないが、前駆材料は粒状で供給される。加工チャンバーは、反応を起こすために加熱され、一般的に、アニーリングまたはそれに類似する加工のために約125℃〜約200℃の範囲またはそれ以上、例えば400℃まで加熱される。加工チャンバーはまた、通常は約50psi〜約100psi(ゲージ圧)の範囲で加圧される。ある代表的な方法においてある多孔ブロックナノファイバー複合体製品が製造され、そのナノファイバー形成は、前駆材料がAl(OH)2Acを含む実施形態によると等式(1)によって表される。
(1)Al(OH)2Ac+水+(NH4)2SO4(微量)=ナノファイバー
【0021】
バランスのとれた化学反応はAl(OH)2Ac=Al(O)OH+HAcである。アニーリング工程を加えると(下記参照)、ベーマイトは、ベーマイトからガンマ・アルミナへと相変化を経験して作られる。その化学作用の一例を等式(2)に示す。
(2)AlOOH=ガンマ−Al2O3+H2O
【0022】
また、明白なことであるが、この方法は通常は塩を用いず、ナノファイバー211を製造するための「クリーンな」方法にする。さらに、ナノファイバー211は、ここでは容易に多孔ブロック基材100に、及び/または多孔ブロック基材100内に核形成される、あるいは付着するが、容易に互いにバラバラになることができ、さらに、容易に溶液(例えば水)中に分散することができる。
【0023】
適切な加工チャンバーでは、本明細書に記載されるように温度及び圧力が制御される。ある実施形態によると、加工チャンバーは、Parr社製型式4761、300ml圧力反応容器またはParr社製型式4642、2L圧力反応容器である。しかし、現在知られている、または後に開発された加工チャンバーも、本発明での使用に適切であると考えられる。
【0024】
本発明によって製造されたナノファイバー211は、X線回析などの種々の周知の技術のいずれかを用いて分析することができる。X線回析(XRD)は、固体の組成を検査するために一般的に用いられるものである。X線は、反復原子構造を有するサンプルに当てられ、X線を分散または回析させる。分散したX線は、互いに構造的に干渉して、回析光線を作り出す。データは一般的には一連の回析パターンとして表され、周知の材料の回析パターンと比較することができる。本発明の方法によって製造されたアルミナ・ナノファイバー製品211は、X線回析で判定されたように、約100%ベーマイトである。ナノファイバー製品211は、ベーマイトを空気中で400℃に加熱することによって、アルミナのガンマ相へとさらに加工される。
【0025】
ある実施形態では、多孔ブロックナノファイバー複合体製品110は、まだ改変されていない多孔ブロック100を加工チャンバーに供給することによって、ナノファイバー211の合成の間に製造される。このような方法は、ある実施形態によると以下の等式(3)によって表される。
(3)Al(OH)2Ac+水+(NH4)2SO4(微量)+多孔ブロック←複合体材料
【0026】
この実施形態によると、ナノファイバー211は、多孔ブロック100と単に機械的に混合されるのではない。その代わりに、多孔ブロック100は、ナノファイバー複合体ブロック110を製造すべく、合成中にナノファイバー211が「成長」または結晶化する媒体として機能するのである。ナノファイバー211は、形態に欠陥を生じさせることなく、あるいはナノファイバー211の表面積を減らすことなく、合成中に多孔ブロック100に結合されることが好ましい。
【0027】
さらに、多孔ブロック100は、あらゆる適切な多孔材料であって、ほんの少し例を挙げるなら、例えば、カーボン、金属酸化物、シリコーン、セルロース、及び/または有機重合体などである。基材多孔ブロック100の製造は、なんらかの特定の方法に限定されるものではなく、当業者によってよく理解されるような適切な方法で製造することができる。また、ブロックや他の基材は、1つまたは複数の孔を有していればよく、特定の大きさや形状が要求されるものではない。
【0028】
本発明の教示内容によって製造された多孔ブロックナノファイバー複合体製品110はまた、すでに簡単に述べたように、X線回析などの種々の周知の技術を用いて分析することができる。本発明の方法によって製造された複合体110は、図5のX線回析結果に示されるように、約100%ベーマイトのナノファイバーを有することができる。複合体110のナノファイバーはさらに、上述したように、ガンマ・アルミナ相に加工することができる。製造された後、ナノファイバー複合体10は、最も高いナノファイバー製品表面積(つまり、約500〜650m2/g)を得るために、約250℃〜400℃の範囲の温度までアニーリングされるが、これは、本発明の組成物を特定の範囲の温度に限定することを意図するものではない。この相変化は、一般的に、形態または縦横比を変更することなく生じる。
【0029】
図6及び7は、下記の実施例1及び2によって製造されたナノファイバー多孔ブロック複合体材料の画像である。これらの画像は、一般的に走査電子顕微鏡法(SEM)と称される方法において、走査型電子顕微鏡によって撮られたものである。図6A及び6Bに示すSEM画像から容易にわかるように、複合体ブロック110は、多孔カーボンブロックの孔内で結晶化された複数のナノファイバーを有している。図6Aは、ベーマイト成長前の市販のカーボンブロックのSEM画像であり、図6Bは、ベーマイト成長後の同じ市販のカーボンブロックのSEM画像である。同様に、図7A、7B、7CのSEM画像は、図6の例よりも大きな孔サイズを持つ多孔カーボンブロックで結晶化したナノファイバーを有するナノファイバー多孔ブロック複合体を示している。図7Aは、ベーマイト成長前の大径孔の市販のカーボンブロックのSEM画像であり、図7Bは、ベーマイト成長後の同じ大径孔の市販用のカーボンブロックのSEM画像であり、図7Cは、ベーマイト成長後の同じ大径孔の市販のカーボンブロックの別のSEM画像であり、図7Cは倍率が高い。
【0030】
本発明の教示内容によって製造されたナノファイバー211は、通常、その長さに対して非常に小さな直径(例えば平均2nm)を有しており、高い縦横比を有するものである。従って、大きな表面積と組み合わさったこの特有の形態によって、ナノファイバー多孔ブロック複合体製品110が、濾過などの多くの適用例での使用のために伝導性になる。さらに、ナノファイバー211のベーマイト相もまた、以下に述べるように、製品の生体作用能力及び重金属濾過能力を改善する。
【0031】
加えて、ナノファイバー211及び多孔ブロックナノファイバー複合体110は、他の材料や装置と容易に一体化させることができ、高性能の濾過製品を製造できる。従って、ある実施形態では、製品110は、図1のシステム10などの濾過システム内に濾過媒体として容易に組み込むことができる。ナノファイバー211及び/またはナノファイバー複合体110は、濾過媒体に望ましい除去特性を与えるものである。
【0032】
ナノファイバー211及び/または多孔ブロックナノファイバー複合体110の特有の形態及び他の特徴によって、本発明の製品は、限定はされないが、空気用フィルタ及び水用フィルタの両方を含む広い可能性のある範囲の濾過適用例に特に適したものになる。ベーマイト相もまた、化学的親和性があるために、生体に作用する適用例に有用である。これらの製品は、化学的及び/または静電親和性及び/またはウイルスや病原体が付着することができる大きな表面積を有しており、これらの製品を、生体に作用する濾過適用例において特に有利なものとしている。ベーマイトファイバーの具体例としての生体的親和性を、下記の表1に、製品特徴によって示す(これらの特徴は、実施例1及び2のようなカーボンブロック基材孔上/内にではないが、本発明に記載されたような方法によって成長したベーマイトナノファイバーに生じるものである)。
【0033】
【表1】
【0034】
初期検査は、20〜70重量%のベーマイトナノファイバーを有するとともに約1.0mm〜1.5mm厚さ範囲の他のフィルタ基材を用いて行われた。細菌性ウイルス(バクテリオファージ)PRD−1及びMS−2(ヒトウイルスの代用物)を用いて、このようなフィルタによるウイルスの減衰を調べた。除去効率は、99.9999%以上であった。
【0035】
このようなナノファイバー211は多孔ブロックナノファイバー複合体製品110内に用いることができるため、その特有の形態及び他の特徴によっても、本発明の製品は、金属イオン化学吸着を介して重金属を濾過するのに特に適したものになる。本発明に記載されていないような方法で形成され重金属濾過に用いられるベーマイトナノファイバーは、このようなベーマイトナノファイバー0.1gを水(10ml)に分散させて、その分散液をフィルタを通過させることによって準備したゲルマン・アクロディスク(Gelman Acrodisc)シリンジフィルタ上に支持されたベーマイトマットを有している。このような重金属フィルタを、下記の重金属:亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、銅(Cu)、金(Au)、及び銀(Ag)を水から除去する能力について検査した。検査結果を以下の表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
これらの検査結果は、重金属フィルタにおける、または重金属フィルタとしての、多孔ブロックナノファイバー複合体製品110上/内で用いる本発明の方法によって製造されたベーマイトナノファイバーの適用の可能性を示しており、そのような重金属フィルタは、他の適用例の中でも特に、飲料水処理及び工業廃水処理に使用可能なものである。
【0038】
従って、ナノファイバーフィルタブロック110は、機械的及び/または化学的吸着及び/または静電気引力メカニズムによって、生体的及び/または無機的濾過の適用例に用いることができる。ナノファイバーフィルタ110は、特定の材料の吸着のために最適化された複合構造である。さらに、ナノファイバーフィルタ110は、流量の多い状態下で用いることができる。別の実施例では、吸着された材料をフィルタから溶離させることもできる。
【0039】
基礎のフィルタ材料、ここでは例えば、多孔ブロックは、複合体フィルタ製品形状で品質を上げることができる。一例では、標準的な多孔ブロックは、大腸菌やクリプトスポリジウム属のような大きな細菌の濾過に有効である(例えば、大きさが4〜7μのクリプトスポリジウム属有機体(原虫類)形態の保護オーシスト;ジアルディアもオーシスト形態であるが、わずかに大きく、6〜10ミクロンの大きさである。これらのオーシストは、有機体が、水流において宿主の体外で生存することを可能にし、塩素処理や紫外線照射などの殺菌方法からこれらの有機体を保護する)。しかし、実際の非オーシスト細菌は、もっと小さく、例えば約0.2〜0.5ミクロンであり、ここに記載したナノファイバーは、基材の有効孔サイズをもっと小さく減らすとともに化学的活性を加えて、従来の多孔ブロックで捉えることのできたオーシストだけでなく、細菌有機体そのものも、もっと小さいウイルスや化学汚染物質とともに捕捉するものである。
【0040】
本発明の製品は、生体に作用する、及び/または重金属水の濾過適用に限定されるものではない。他の実施形態では、本発明の製品は、アルコールやエステルやケトンなどの溶液から放出される極小粒子を除去するためのフィルタで用いることができる。他の実施形態では、本発明の製品は、電子機器製造における高純度の化学物質や水の濾過に用いることができる。さらに新たな適用例は、有機、無機、あるいはそれ以外に関わらず、ナノ材料からの濾過におけるものである(ナノ材料の毒性についての関心が深まりつつあるため。合衆国エネルギー省、公示456.1による)。他の具体例としての適用例には、空気または他の気体フィルタがある。さらに別の濾過適用例も、本発明の教示内容に精通した後の当業者にとって容易に明らかになるように、本発明の範囲内として意図するものである。
【0041】
本発明の範囲内であると意図されるさらに別の適用例は、ほんの少し例を挙げるなら、例えば、吸着パッド(例えば、医療用検知キット用)に用いることのできる本発明に記載された方法によって製造されたナノファイバー211及び/または複合体ブロック110、及び、生物学的物質(生物テロ兵器を含む)の濃縮/除去などである。
【実施例1】
【0042】
この実施例では、前駆材料は、広範囲の供給業者から容易に一般入手できるタイプの研究室グレードの顆粒状のAl(OH)3を含むものであった。この実施例においては、ベーマイトナノファイバーが、約5時間、約200℃の温度まで加熱された約200mlの水に約25.5gのAl(OH)3を用いて合成され、一般入手可能な多孔カーボン基材ブロック上、またはその1つまたは複数の孔上または孔内に、ほぼ白色の固体ナノファイバーができた。ここにおけるカーボン基材ブロックは、直径1.5インチ、厚さ0.5インチの4カーボンリングである(上述したように、多孔ブロックという用語はその形状を問うものではない)。加工チャンバーは、総圧で約150psi(ゲージ圧)で維持された。加工チャンバーは、約200℃に維持され、反応温度は約180℃であると評価された。反応の結果製造されたのは、約19.0グラムのナノファイバーであった。この製品を、5時間約100℃で乾燥させた。
【0043】
この実施例によって製造されたナノファイバーは、上記に簡単に記載するとともに図5に示したX線回析法を用いて分析された。このナノファイバーは、約100%のベーマイトを含み、平均表面積が、比表面積分析で、約285m2/gであった。このナノファイバーはまた、多孔カーボンブロックに閉じ込めることにより、上述したように、すぐに次の濾過の使用に用いることができる。すでに紹介したように、この実施例の工程の前後のSEM画像を図6A及び6Bにそれぞれ示す。
【実施例2】
【0044】
この実施例では、前駆材料は、広範囲の供給業者から容易に一般入手できるタイプの実質的に同じ研究室グレードのAl(OH)3を含むものであった。この実施例においては、ベーマイトナノファイバーが、同じく、約5時間、約200℃の温度まで加熱された約200mlの水に約25.5gのAl(OH)3を用いて合成され、一般入手可能な多孔カーボン基材上、またはその1つまたは複数の孔上または孔内に、ほぼ白色の固体ナノファイバーができた。ここにおける多孔ブロック材料はカーボン基材材料を有しており(ここでも、直径1.5インチ、厚さ0.5インチの4カーボンリングである)、実施例1の基材より大きな孔構造を有するものであった。図7A、7B、7C参照。
【0045】
加工チャンバーは、総圧で約150psiで維持された。加工チャンバーは、約200℃に維持され、反応温度は約180℃であると評価された。反応はこのように約5時間行われ、その結果製造されたのは、約19グラムのナノファイバー多孔ブロック複合体材料であった。この複合体製品を、5時間約100℃で乾燥させた。
【0046】
本実施例によって製造されたナノファイバー複合体は、上記に簡単に記載したX線回析法を用いて分析された。このナノファイバー複合体は、約100%のベーマイトを含んでいた。このナノファイバー多孔ブロック複合体の平均表面積は、比表面積分析で、約195m2/gであった。
【0047】
上述した実施例1及び2は、説明目的で提供されたものであり、限定する意図のものではない。さらに他の実施態様及び改変例も考慮される。
【0048】
すでに紹介したように、種々の代替前駆物質のうちの1つは、酸化チタン(TiO2)である。酸化チタンの化学作用の形態は、以下に示すように、チタン酸ナトリウムナノチューブを生成するために、強塩基性溶液中におけるTiO2粉末の熱水消化を伴うものである。
(4)3TiO2+2NaOH → Na2Ti3O7ナノチューブ+H2O
【実施例3】
【0049】
具体的な調剤では、5.0gのTiO2粉末を、テフロン(登録商標)のビーカーにおいて50mlの10NNaOHと混合し、300mlのParr社製圧力反応容器に載置した。反応容器は、5時間180℃で加熱され、室温まで冷却された。内容物は濾過され、100mlの水で洗浄され、30分間100℃で乾燥され、図8に示すXRD、及び図9に示す透過電子顕微鏡法(TEM)によってチタン酸ナトリウムナノチューブとして特徴づけられる白色の粉末を得た。より詳細には、図8は、そこに示す種々の温度で合成されたチタン酸塩製品のX線回析(XRD)の特徴づけである。180℃で合成された材料のトレースは、相純Na2Ti3O7ナノチューブである。図9は、図9A及び9Bのそれぞれにおいて、180℃で合成されたチタン酸塩ナノチューブの(TEM)画像を示すものである。
【0050】
チタン酸塩ナノチューブを、続けて、3〜24時間、約150〜約250℃の温度で水中で加熱すると、材料は、アナターゼTiO2ナノロッドに変換される。以下の実施例では、0.5gのチタン酸ナトリウムナノチューブを、テフロン(登録商標)の裏地のついた300mlParr社製圧力反応容器において25mlの水中に載置した後、特定の時間、特定の温度で維持した。これらの製品を回収し、水(100ml)で洗浄し、30分間100℃で乾燥させ、図10及び11に示すようにXRD及びTEMによって特徴づけた。図10は、チタン酸塩ナノチューブから、24時間、150℃で加工されたTiO2ナノロッドへの熱水変換の製品を示し、チタン酸塩ベルトのTiO2スパイクへの中間変換を示している。図11は、チタン酸塩ナノチューブから、5時間、230℃で加工されたTiO2ナノロッドへの熱水変換の製品を示し、TiO2ナノロッドへの完全変換を示している。
【0051】
チタン酸塩ナノチューブのTiO2への熱水変換は、上述した2つのTEM画像(図10及び図11)によって示すように、異なる製品形態を生成する反応時間と温度を用いて制御することができる。図12のXRDは、生成されたTiO2が結晶アナターゼ相であることを確認するものである。
【0052】
上述した実施例3の酸化チタンの例は、説明目的で提供されたものであり、限定する意図のものではない。さらに他の実施態様及び改変例も考慮される。
【0053】
本発明で用いられるカーボン材料は、限定はされないが、特に、れき青炭、木またはココナツの殻等の多くの材料源から得ることができる。いくつかの例では、粉末状のカーボンを、バインダーを用いて多孔ブロックに形成し、所望の特定の大きさ及び/または形状を作り出し、その後、バインダーを燃焼させてもよい。例えば圧縮成形などの他のブロック形成法も同様に、あるいは代わりに、用いることができる。
【0054】
本発明のブロック及びシステムは、図1に概略的に示すだけであって、非常に多くの考えられる代替案が、大きさ、規模、形状または作用形態に関わらず、本発明の特徴を組み込むことができる。本発明のブロックは多角形である必要はなく、末端用途によって、多くの形状を採ることができる。末端用途は、個人使用の水用ボトルサイズのブロックであってもよいし、例えばトラックや航空機によって輸送可能な輸送システムまで、自治体規模の実行までの大規模なものであってもよい。
【0055】
上述した実施例は、説明目的で提供されたものであり、限定する意図のものではない。さらに他の実施態様及び改変例も考慮される。
【0056】
多くの具体例及び実施例を記載したが、当業者は、そのある程度の改変、変更、追加及び下位の組合せを認識できるであろう。従って、以下の添付の請求の範囲は、これらのすべての改変、変更、追加及び下位の組合せを、それらの真の範囲内にあるものとして含むと解釈されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の孔を有する多孔ブロックと、前記多孔ブロックの孔の少なくとも1つ内に形成された複数の無機ナノファイバーとを含む多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項2】
前記多孔ブロックが、カーボン、金属酸化物、シリコーン、セルロース、及び無機重合体のうち少なくとも1つである請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項3】
前記無機ナノファイバーが、アルミン酸塩、チタン酸塩、及び無機酸化物のうち少なくとも1つから形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項4】
前記無機ナノファイバーが、ベーマイト、ガンマ・アルミナ、アルファ・アルミナのうち少なくとも1つである請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項5】
前記無機ナノファイバーが、TiO2、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、及びAl(Ac)(OH)2のうち少なくとも1つを有する前駆材料を用いて形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項6】
前記無機ナノファイバーが、熱水処理を用いて形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項7】
生物製剤及び病原体のうち少なくとも1つを吸着するためのフィルタとして用いられるよう構成された請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項8】
少なくとも1つの重金属を吸着するためのフィルタとして用いられるよう構成された請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項9】
前記無機ナノファイバーが、
加工チャンバーの水中に多孔ブロックと無機前駆材料を供給することと、
前記加工チャンバーを加熱及び加圧して、多孔ブロックナノファイバー複合体製品を製造することと、
前記多孔ブロックナノファイバー複合体製品を、濾過媒体としての活性要素として組み入れることを含む熱水処理を用いて形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項10】
多孔ブロックナノファイバー複合体を製造する方法であって、
加工チャンバーの水中に多孔ブロックと無機前駆材料を供給する工程と、
多孔ブロックナノファイバー複合体製品を熱水処理で製造する工程とを包含する方法。
【請求項11】
さらに、前記多孔ブロックナノファイバー複合体製品を、濾過媒体としての活性要素として組み入れる工程を包含する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱水処理製造の工程が、加熱と加圧のうち少なくとも一方を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔ブロックが、カーボン、金属酸化物、シリコーン、セルロース、及び無機重合体のうちの1つである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記無機ナノファイバーが、アルミン酸塩、チタン酸塩、及び無機酸化物のうち少なくとも1つから形成される請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記無機ナノファイバーが、ベーマイト、ガンマ・アルミナ、及びアルファ・アルミナのうち少なくとも1つである請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記前駆材料が、TiO2、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、及びAl(Ac)(OH)2のうち少なくとも1つである請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記加工チャンバーを、約125℃〜約200℃の範囲の温度に加熱する請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記加工チャンバーを、約50psi〜約100psiの範囲の圧力に加圧する請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノファイバーが、約200m2/g〜約300m2/gの乾燥表面積を有する請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノファイバーが、X線回析によると約100%ベーマイトである請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノファイバー製品が、約5時間で前記加工チャンバー内で製造される請求項10に記載の方法。
【請求項22】
請求項10の方法によって製造される、細菌フィルタまたは無機フィルタに適用するための多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ。
【請求項23】
生物製剤及び病原体のうち少なくとも1つを吸着するための請求項22に記載の多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ。
【請求項24】
少なくとも1つの重金属を吸着するための請求項22に記載の多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ。
【請求項25】
取入口と排出口とを備えた流通チャンバー、及び、
前記流通チャンバー内に設けられるとともに、1つまたは複数の孔を有する多孔ブロックと、前記多孔ブロックの孔の少なくとも1つ内に形成された複数の無機ナノファイバーとを含む多孔ブロックナノファイバー複合濾過媒体を有する濾過システム。
【請求項1】
1つまたは複数の孔を有する多孔ブロックと、前記多孔ブロックの孔の少なくとも1つ内に形成された複数の無機ナノファイバーとを含む多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項2】
前記多孔ブロックが、カーボン、金属酸化物、シリコーン、セルロース、及び無機重合体のうち少なくとも1つである請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項3】
前記無機ナノファイバーが、アルミン酸塩、チタン酸塩、及び無機酸化物のうち少なくとも1つから形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項4】
前記無機ナノファイバーが、ベーマイト、ガンマ・アルミナ、アルファ・アルミナのうち少なくとも1つである請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項5】
前記無機ナノファイバーが、TiO2、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、及びAl(Ac)(OH)2のうち少なくとも1つを有する前駆材料を用いて形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項6】
前記無機ナノファイバーが、熱水処理を用いて形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項7】
生物製剤及び病原体のうち少なくとも1つを吸着するためのフィルタとして用いられるよう構成された請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項8】
少なくとも1つの重金属を吸着するためのフィルタとして用いられるよう構成された請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項9】
前記無機ナノファイバーが、
加工チャンバーの水中に多孔ブロックと無機前駆材料を供給することと、
前記加工チャンバーを加熱及び加圧して、多孔ブロックナノファイバー複合体製品を製造することと、
前記多孔ブロックナノファイバー複合体製品を、濾過媒体としての活性要素として組み入れることを含む熱水処理を用いて形成される請求項1に記載の多孔ブロックナノファイバー複合体。
【請求項10】
多孔ブロックナノファイバー複合体を製造する方法であって、
加工チャンバーの水中に多孔ブロックと無機前駆材料を供給する工程と、
多孔ブロックナノファイバー複合体製品を熱水処理で製造する工程とを包含する方法。
【請求項11】
さらに、前記多孔ブロックナノファイバー複合体製品を、濾過媒体としての活性要素として組み入れる工程を包含する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱水処理製造の工程が、加熱と加圧のうち少なくとも一方を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔ブロックが、カーボン、金属酸化物、シリコーン、セルロース、及び無機重合体のうちの1つである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記無機ナノファイバーが、アルミン酸塩、チタン酸塩、及び無機酸化物のうち少なくとも1つから形成される請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記無機ナノファイバーが、ベーマイト、ガンマ・アルミナ、及びアルファ・アルミナのうち少なくとも1つである請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記前駆材料が、TiO2、Al(OH)3、Al(Ac)2OH、及びAl(Ac)(OH)2のうち少なくとも1つである請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記加工チャンバーを、約125℃〜約200℃の範囲の温度に加熱する請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記加工チャンバーを、約50psi〜約100psiの範囲の圧力に加圧する請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノファイバーが、約200m2/g〜約300m2/gの乾燥表面積を有する請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノファイバーが、X線回析によると約100%ベーマイトである請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノファイバー製品が、約5時間で前記加工チャンバー内で製造される請求項10に記載の方法。
【請求項22】
請求項10の方法によって製造される、細菌フィルタまたは無機フィルタに適用するための多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ。
【請求項23】
生物製剤及び病原体のうち少なくとも1つを吸着するための請求項22に記載の多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ。
【請求項24】
少なくとも1つの重金属を吸着するための請求項22に記載の多孔ブロックナノファイバー複合フィルタ。
【請求項25】
取入口と排出口とを備えた流通チャンバー、及び、
前記流通チャンバー内に設けられるとともに、1つまたは複数の孔を有する多孔ブロックと、前記多孔ブロックの孔の少なくとも1つ内に形成された複数の無機ナノファイバーとを含む多孔ブロックナノファイバー複合濾過媒体を有する濾過システム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公表番号】特表2012−509169(P2012−509169A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537406(P2011−537406)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/084434
【国際公開番号】WO2010/059165
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(510119681)アライアンス フォア サステイナブル エナジー エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/084434
【国際公開番号】WO2010/059165
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(510119681)アライアンス フォア サステイナブル エナジー エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】
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