説明

多層配線構造及びその製造方法

【課題】 エレクトロマイグレーション耐性と、ストレスマイグレーション耐性を同時に向上させる多層配線構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 AlCu膜103Cと、厚みが0〜15nmのTi膜との反応によりAl3 Ti層103DをAlCu膜とTiN膜の界面に形成することにより、界面拡散を抑制し、かつAl3 Ti層形成時に発生する引張り応力を低減し、EM耐性を向上させる。その後のFSG膜104AをHDP−CVD法で成膜する際に、ウェハ裏面に不活性ガスを流してウェハを冷却し、ウェハ温度を450℃以下にすることにより、FSGとAlCuの熱膨張率差に起因するAlCu膜の残留引張り応力の発生を低減し、SM耐性及びEM耐性を向上させる。さらに、FSG膜の上にSiON膜を設けることにより、FSG膜の遊離フッ素の上方への拡散を阻止して、上層配線の剥がれを防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、半導体装置等の電子デバイスにおける多層配線のエレクトロマイグレーション耐性およびストレスマイグレーション耐性の向上対策に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体集積回路装置(LSI)等の電子デバイスにおいては、その構成要素であるトランジスタ等の微細化が進み、トランジスタ等の機能素子に対する電気的接続を行なうための金属配線の断面積も減少を余儀なくされている。そして、金属配線の断面積の減少に伴い、金属配線を流れる電流密度が増加してきている。このため、たとえばアルミニウム(Al)配線においては、電流密度の増大に伴って、配線を構成するAl原子が電子の流れによって移動する現象,つまりエレクトロマイグレーションが生じやすくなっている。そして、Al原子のエレクトロマイグレーションにより、金属配線中にボイドが成長して、金属配線の抵抗が上昇する結果、トランジスタ等の動作不良や発熱・断線などの不良が発生するおそれが顕著になってきている。
【0003】一方、配線の微細化に伴い、絶縁膜との熱膨張係数の違いによる引っ張り応力を受けるAl等からなる金属配線が応力を解放するために膨張することにより、Al原子が移動するストレスマイグレーション(SM)も顕著になっており、ボイドの形成によりエレクトロマイグレーションと同様の問題を生じている。
【0004】以下、Masaya Hosaka 等の文献(“Ti layer Thickness Dependence on Electromigration Performance of Ti/AlCu Metallization”in Proceedings of 36thInternational Reliability Physics Symposium,pp.329-334,1998)に記載されている従来の電子デバイスの多層配線及び多層配線の製造方法について、図11(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0005】まず、図11(a)に示す工程で、Si基板201の上に形成された絶縁膜202の上に、厚みが約20nmのチタニウム(Ti)膜203Aと、厚みが約50nmの窒化チタン(TiN)膜203Bと、アルミニウム(Al)に微量の銅(Cu)が含まれた厚みが約400nmのAlCu膜203Cと、Ti膜(図示せず)と、TiN膜203Eとを順次堆積して、第1の積層膜を形成した後、該第1の積層膜に対してフォトリソグラフィ,ドライエッチングによるパターニングと熱処理とを行なって、下層配線203を形成する。その際、AlCu膜203CとTiN膜203Eとの間に介在していたTi膜が、AlCu膜203Cと反応してAl3 Ti層203Dが生成される。このように、AlCu膜203Cの上下をTiN膜203B,203Eによって保持する構造とすることで、下層配線203と層間絶縁膜との熱膨張率差に起因して発生する熱応力を緩衝して、AlCu膜203Cに作用する引っ張り応力を低減することができるので、AlCu膜203Cのストレスマイグレーション耐性,エレクトロマイグレーション耐性を高めることができる。
【0006】次に、基板上に、高密度プラズマ化学気相成長(HDP−CVD)法により、フッ素を含有する酸化膜(FSG膜)204Aを堆積した後、プラズマCVD法により、TEOSを原料とした酸化膜204Bを成膜し、その後化学機械研磨法(CMP)により、平坦化を行い、FSG膜204A及び酸化膜204Bからなる層間絶縁膜204を形成する。図11(a)は、このCMPを行なった後の基板の断面形状を示している。
【0007】その後、図11(b)に示す工程で、フォトリソグラフィ及びドライエッチングを行ない、層間絶縁膜204を貫通して、TiN膜203Eに達するヴィアホールを形成する。さらに、ヴィアホールの底面上に形成されている自然酸化膜をアルゴン(Ar)プラズマにより除去してから、基板上に、スパッタ法によってTi膜205A及びTiN膜205Bを順次堆積して密着層205を形成する。その後、CVD法により、ヴィアホールの内部及び層間絶縁膜の上にタングステン(W)膜206を堆積する。ここで、ヴィアホールを開口するためのドライエッチングの際や、ヴィアホール内において密着層205を形成するためのスパッタリング前のArプラズマ処理を行なう際に、ヴィアホール底の下層配線203のTiN膜203Eが完全に除去されないように、つまりヴィアホールがTiN膜203Eを貫通しないようにしている。このTiN膜203Eを残存させている理由は、ヴィアホール内にタングステン(W)膜を堆積する際に、原料ガスである6フッ化タングステン(WF6 )が、カバレージの不十分な密着層205を突き抜け、AlCu膜203Cと反応し、高抵抗層を形成するのを防ぐためである。
【0008】その後、CMP法により、W膜206と、TiN膜205Bと、Ti膜205Aとからなる積層膜のうち層間絶縁膜204の上に堆積された部分を除去し、ヴィアホールの内部に堆積された部分を残存させて、Wプラグ207を形成する。
【0009】次に、層間絶縁膜上に、Ti膜208A、TiN膜208B、AlCu膜208C、Ti膜(図示せず)、及びTiN膜208Eを順次堆積して第2の積層膜を形成した後、該第2の積層膜に対してフォトリソグラフィ及びドライエッチングによるパターニングと熱処理とを行なって、第2の積層膜からなる上層配線208を形成する。このときにも、Ti膜とAlCu膜208Cとの反応によってAl3 Ti層208Dが生成される。
【0010】Hosaka等の上記文献によれば、上記配線構造において、EM耐性を向上するためには、AlCu膜203CとTiN膜203Eとの間に形成されるTi膜は5nm以下でなければならないと報告されている。また、Wプラグ207とAlCu膜203CとはTiN膜203Eを介して互いに電気的に接続されているが、製造工程において、TiN膜203Eを形成する際に、その下地にTi膜が存在していないと、TiN膜203Eを堆積している間にAlCu膜203C上に高抵抗なAlN膜が形成される。そして、最終的な製品において、AlCu膜203CとTiN膜203Eとの間にAlN膜が介在することによってヴィア抵抗が増大する。Hosaka等の文献には、ヴィア抵抗を低減するために、AlCu膜203CとTiN膜203Eとの間のTi膜の膜厚は5nm以上必要であることも報告されている。
【0011】従って、Hosaka等の文献によると、EM耐性向上とヴィア抵抗低減とを同時に達成するためには、AlCu膜203CとTiN膜203Eとの間のTi膜の膜厚は5nmでなくてはならないことになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の多層配線構造によると、多層配線の一層の微細化が進むと、以下のような不具合が生じる。
【0013】ドライエッチングを行なって層間絶縁膜204にヴィアホールを形成する際に、図11(b)に示すように、ヴィアホールが下層配線203のTiN膜203Eを貫通しないようエッチングをTiN膜203Eの途中で停止させるためには、TiN膜203Eの膜厚を厚くする必要がある。
【0014】また、層間絶縁膜204の誘電率を低減すべく、層間絶縁膜204の上部を酸化膜204Aではなくフッ素(F)を含有したSiO2 膜(FSG膜)により構成した場合は、フッ素(F)原子が層間絶縁膜204中を拡散してTi膜208Aと層間絶縁膜204との間にパイルアップする結果、上層配線が剥がれるおそれがあった。さらに、下層配線203のTiN膜203E中にもフッ素が(F)が拡散し含有される。一方、層間絶縁膜204のエッチングガス種は一般的にフッ素(F)をベースとして調整されているため、TiN膜203E内にフッ素(F)が含有されることにより、TiN膜203Eのエッチング速度が増大する結果、TiN膜203Eの層間絶縁膜204に対するエッチング選択比も小さくなる。したがって、ヴィアホールがTiN膜203Eを貫通しないようにするには、更にTiN膜203Eを厚膜化する必要がある。例えば層間絶縁膜204が800nmでヴィアホール径0.26μmである場合には、TiN膜203Eの膜厚は100nm以上であることが必要になる。
【0015】ところが、TiN膜203Eを厚膜化すると、配線間容量が増大するため、配線遅延が増大する。また、TiN膜203Eを厚膜化すると、下層配線203の形成のためにドライエッチングを行なう際に、Ti膜203A,TiN膜203B,AlCu膜203C,Ti膜及びTiN膜203Eからなる積層膜のトータル膜厚が厚くなるため、下層配線をパターニングするためのレジストパターンの膜厚をドライエッチングに耐える程度に厚くしなければならない。その結果、微細なレジストパターンが形成し難くなり、多層配線の微細化が困難になるという問題がある。
【0016】本発明の目的は、半導体素子等の微細化に適応したEM耐性及びSM耐性を同時に向上できる多層配線構造を、工程数の増加を招くことなく実現するための多層配線構造及びその製造方法を提供することにある
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の多層配線構造は、基板の下地絶縁膜の上に設けられ少なくともアルミニウム合金膜を含む下層配線と、上記下地絶縁膜及び下層配線を覆う層間絶縁膜と、上記層間絶縁膜を貫通して上記下層配線に到達するヴィアコンタクトを埋める導体材料からなるプラグと、上記プラグに接続されて上記層間絶縁膜の上に延びる上層配線とを備え、上記層間絶縁膜のうち少なくとも上記下層配線間を埋める部分はフッ素を含む酸化膜であり、上記層間絶縁膜のうち上記フッ素を含む酸化膜の上方に位置する部分は、Si及びNを含む絶縁膜である。
【0018】これにより、フッ素を含む酸化膜によって下層配線間が埋められているので、配線容量を小さく維持することができるとともに、Si及びNを含む絶縁膜により、層間絶縁膜内の酸化膜中のフッ素の上方への拡散を阻止することで、上層配線の剥がれを有効に防止することができる。
【0019】上記層間絶縁膜と上記絶縁膜との間にSi及びNを含むもう一つの絶縁膜を備えていることにより、フッ素の下方への拡散に起因する下層配線の剥がれを防止することが可能となる。
【0020】本発明の第2の多層配線構造は、基板上の下地絶縁膜の上に設けられた下層配線と、上記下地絶縁膜及び下層配線を覆う層間絶縁膜と、上記層間絶縁膜を貫通して上記下層配線に到達するヴィアコンタクトを埋める導体材料からなるプラグと、上記プラグに接続されて上記層間絶縁膜の上に延びる上層配線とを備え、上記下層配線は、アルミニウム合金膜の上に設けられたTiN膜を有し、上記プラグは、上記TiN膜を貫通して上記アルミニウム合金膜と接触している。
【0021】これにより、TiN膜によるアルミニウム合金膜の引っ張り応力緩和機能によってストレスマイグレーション耐性を確保しつつ、TiN膜をヴィアコンタクト形成時におけるエッチングストッパーとして用いる必要はないことで、TiN膜の厚みを低減することが可能になる。したがって、段差の低減と配線間容量の低減とを実現することができる。
【0022】上記プラグを、下層膜となるTi膜と上層膜となるTiN膜とを積層してなる密着層と、該密着層に包まれるW層とにより構成することが好ましい。これにより、W層とアルミニウム合金膜との間にカバレッジの良好なTiN膜が介在することで、タングステンとアルミニウムとの反応による高抵抗層の生成が抑制される。
【0023】本発明の第1の多層配線構造の製造方法は、基板の下地絶縁膜の上にアルミニウム合金膜を含む下層配線を形成する工程(a)と、上記下地絶縁膜及び下層配線の上に、層間絶縁膜を形成する工程(b)と、上記層間絶縁膜を貫通して上記下層配線に到達するヴィアコンタクトを形成する工程(c)と、上記ヴィアコンタクトに導体膜を埋め込んでなるプラグを形成する工程(d)と、上記プラグに接続されて層間絶縁膜の上に延びる上層配線を形成する工程(e)とを含み、上記工程(b)において、上記層間絶縁膜のうち少なくとも上記下層配線間を埋める部分を形成する際には、上記基板の裏面に冷却用ガスを吹き付けながら高密度プラズマCVDを行なって、フッ素を含む酸化膜を形成する。
【0024】この方法により、高密度プラズマCVD法によって酸化膜のエッジを削りつつ酸化膜を堆積していくことで、下層配線間にカバレッジよく酸化膜を堆積することができ、かつ、高密度プラズマの照射によってフッ素を高濃度に酸化膜内にドープすることができる。そして、冷却用ガスにより基板を冷却することで、高密度プラズマの照射によって基板温度が上昇するのを抑制できるので、基板の下層配線と層間絶縁膜(フッ素を含む酸化膜)との熱膨張率差に起因する下層配線中の引っ張り応力を緩和することができ、エレクトロマイグレーション耐性,ストレスマイグレーション耐性の向上を図ることができる。
【0025】上記冷却用ガスを吹き付けて高密度プラズマCVDを行なう際には、基板温度を450℃以下にすることが好ましい。
【0026】上記工程(b)では、上記フッ素を含む酸化膜の上方を覆うSiとNとを含む絶縁膜を形成することにより、基板が冷却されていることによって酸化膜中の遊離フッ素の数が増大しても、SiとNとを含む絶縁膜によって遊離フッ素の上方への拡散を阻止することができるので、上層配線の剥がれを防止する機能の高い多層配線構造を得ることができる。
【0027】上記工程(a)の前に、下地絶縁膜の上に、SiとNとを含む絶縁膜を形成することにより、下層配線の剥がれを防止する機能をも高めることができる。
【0028】本発明の第2の多層配線構造の製造方法は、基板の下地絶縁膜の上にアルミニウム合金膜を形成する工程(a)と、上記アルミニウム合金膜の上に、厚みが15nm以下のTi膜を形成する工程(b)と、上記Ti膜の上にTiN膜を形成する工程(c)と、上記アルミニウム合金膜,Ti膜及びTiN膜をパターニングして下層配線を形成する工程(d)と、高密度プラズマCVD法により、上記下地絶縁膜及び下層配線の上に層間絶縁膜を形成する工程(e)と、上記層間絶縁膜及び下層配線中のTiN膜及びTi膜を貫通して上記アルミニウム合金膜に到達するヴィアコンタクトを形成する工程(f)と、上記ヴィアコンタクトに導体膜を埋め込んでなるプラグを形成する工程(g)と、上記プラグに接続されて層間絶縁膜の上に延びる上層配線を形成する工程(h)とを含んでいる。
【0029】この方法により、工程(b)で形成されたTi膜がその後アルミニウム合金膜と反応してAl3 Ti層に変化することで、TiN膜とアルミニウム合金膜との界面を介したAl原子の拡散が抑制され、しかも、Ti膜の厚みが15nm以下であるので、Al3 Tiの生成による体積の収縮量が低く抑制されるので、エレクトロマイグレーション耐性が向上する。さらに、ヴィアコンタクトがTiN膜を貫通してアルミニウム合金膜に達していることで、TiN膜の厚みを薄くして配線容量を低減することが可能になる。
【0030】上記工程(g)では、ヴィアコンタクト内に下層膜となるTi膜と上層膜となるTiN膜とが積層してなる密着層を堆積してから、上記密着層に包まれるW層を形成することにより、W層中のタングステンとアルミニウム合金膜中のアルミニウムとの反応による高抵抗層の生成を防止することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】まず、本発明の実施形態に係る電子デバイスの多層配線構造について、図1を参照しながら説明する。
【0032】図1に示すように、本実施形態の電子デバイスは、複数の機能素子(MOSトランジスタなど)が形成されたSi基板101と、Si基板101の上に設けられた配線層の下地層となる絶縁膜102と、該絶縁膜102の上に設けられた下層配線103とを備えている。この下地層である絶縁膜102は、電子デバイスがCMOSデバイスである場合には、例えば、ゲート電極を覆う保護絶縁膜である。ただし、下地層である絶縁膜102が、下層配線103と、下層配線103よりもさらに下側の配線との間に介在する層間絶縁膜であってもよい。
【0033】下層配線103は、厚みが約20nmのTi膜103Aと、厚みが約20nmのTiN膜103Bと、0.5〜2.0wt%の銅を含むアルミニウム合金からなる厚み約450nmのAlCu膜103Cと、AlCu膜103Cの上に島状に存在するAl3 Ti層103Dと、厚みが約30nmのTiN膜103Eとにより構成されている。このように、AlCu膜103Cを2つのTiN膜103B,103Eによって保持することにより、下層配線103と層間絶縁膜104との熱膨張率差に起因する熱応力を緩衝して、AlCu膜103C中の引っ張り応力を低減することができるので、下層配線103(AlCu膜103C)のEM耐性,SM耐性を向上させることができる。
【0034】また、下層配線103及び絶縁膜102の上には、高密度プラズマ化学気相成長方法(HDP−CVD法)により成膜されたフッ素(F)を含んだ厚み約500nmのSiO2 (FSG)膜104Aと、プラズマSiO2 膜104Bと、厚み約200nmのプラズマSiON膜104Cとが設けられており、これらの3層膜により層間絶縁膜104が構成されている。そして、層間絶縁膜104を貫通して下層配線103に到達するヴィアホールが形成されており、このヴィアホールは、下層配線103中の最上層であるTiN膜103Eを貫通してAlCu膜103Cまで到達している。ヴィアホール内にはWプラグ107が埋め込まれており、このWプラグ107は、W膜106と、W膜−下地層間の密着強度を高めるための密着層105とにより構成されている。密着層105は、ヴィアホールの内壁面に形成された下層膜となるTi膜105Aと、Ti膜105Aの上に形成された上層膜となるTiN膜105Bとにより構成されている。
【0035】Wプラグ107及び層間絶縁膜104の上端面はほぼ共通の平面を構成するように平坦化されていて、Wプラグ107及び層間絶縁膜104の上には、Wプラグ107に電気的に接続され層間絶縁膜104の上に沿って延びる上層配線108が形成されている。上層配線108は、厚みが約20nmのTi膜108Aと、厚みが約20nmのTiN膜108Bと、0.5〜2.0wt%の銅を含むアルミニウム合金からなる厚み約450nmのAlCu膜108Cと、AlCu膜108cの上に島状に存在するAl3 Ti層108Dと、厚み約30nmのTiN膜108Eとにより構成されている。
【0036】すなわち、上層配線108と下層配線103とがWプラグ107を介して電気的に接続された多層配線構造が設けられている。
【0037】ここで、本実施形態の特徴として、下層配線103を構成するAl3 Ti層103Dは、厚みが0〜15nmの範囲内にある(本実施形態では5nm)Ti膜とAlCu膜103Cとの反応により形成されたものである。本実施形態の例では、Ti膜はほぼ消失しているが、元のTi膜の厚みがある程度大きい値であった場合(例えば15nmなど)にはTi膜が残存していてもよい。また、層間絶縁膜104を構成するFSG膜104Aは、HDP−CVD法によって450℃以下の温度条件で堆積された膜である。
【0038】次に、本実施形態に係る多層配線構造の製造方法について説明する。図2(a)〜(c)は、本実施形態における電子デバイスの多層配線の製造工程を示す断面図である。
【0039】まず、図2(a)に示す工程で、複数のMOSトランジスタ等の機能素子が形成されたウェハ状のSi基板101の上に絶縁膜102を形成した後、絶縁膜102の上に、厚みが約20nmのTi膜103Aと、厚みが約20nmのTiN膜103Bと、0.5〜2.0wt%の銅(Cu)を含むアルミニウム合金からなる厚み約450nmのAlCu膜103Cと、厚み0〜15nmのTi膜(本実施形態では厚み5nmとする,図示せず)、と、厚みが約30nmのTiN膜103Eとを順次堆積して第1の積層膜を形成した後、第1の積層膜に対してフォトリソグラフィ及びドライエッチングによるパターニングを行なった後、例えば窒素(N2 )及び水素(H2 )の混合ガス雰囲気中で400℃10分の熱処理を行なって、下層配線103を形成する。この際、上述の熱処理を行うことにより、Ti膜が0〜15nmの範囲で薄いとき(例えば5nm以下)には、Ti膜は全てAlCu膜103Cと反応して島状のAl3 Ti層103Dとなり、Ti膜が0〜15nmの範囲内で厚めのとき(例えば15nm程度)にはTi膜が残存する。図2(a)は、Ti膜が薄いときの状態を示している。
【0040】次に、高密度プラズマ化学気相成長(HDP−CVD)法により、基板上に、フッ素(F)を添加した酸化(FSG)膜104Aを堆積する。この酸化膜104Aの厚みは、下層配線103が存在していない絶縁膜102の上方において約600nmである。この際、原料ガスとして、シラン(SiH4 )ガスと酸素(O2 )ガスとに4フッ化シリコン(SiF4 )を導入することにより、Fを添加したものを用いている。このとき、高密度プラズマを用いることにより、高密度プラズマ中のイオンの衝撃力を利用して、フッ素(F)を酸化膜104A内に比較的高濃度で、かつ、フッ素(F)とSiとの結合を安定化させた状態でドープすることができる。また、CVDを行ないながら、反応室内にアルゴン(Ar)ガスを導入し、堆積されていく酸化膜のエッジをArスパッタイオンによって削りながら成膜させることにより、特に、微細な下層配線間への酸化膜104Aの埋込み性を向上させている。しかも、以下のような装置を用いることにより、ウェハを冷却しながら高密度プラズマCVDを行なっている。
【0041】図3は、本実施形態の多層配線の製造工程のFSG膜の形成時に用いた高密度プラズマCVD装置(HDP−CVD装置)の断面図である、図4は、HDP−CVD装置中の静電チャックステージの平面図である。
【0042】図3に示すように、HDP−CVD装置50は、反応室52を外部空間から遮断するように囲むチャンバー51と、チャンバー51の壁部に埋め込まれ被加工物を加熱するための高周波コイル53と、反応室内に設置され静電チャックステージ55aとステージ支持台55bとからなるたウェハ保持装置60とを備えている。そして、被加工物であるウェハ61はウェハ保持装置60の上に載置されている。
【0043】図4に示すように、ウェハ保持装置60のステージ支持台55bの上面には、各々ガス供給用配管56につながる外側環状溝57aと内側環状溝57bとからなる二重の環状溝が設けられている。また、静電チャックステージ55aにおける各環状溝57a,57bに対応する位置には、それぞれ内側ガス吹き出し口58a,外側ガス吹き出し口58bが形成されている。すなわち、静電チャックステージ55aの上にウェハ61を載置して、CVDを行なう際に、ガス吹き出し口58a,58bからウェハ61の裏面に冷却用ガスを吹き付けることにより、ウェハ61を冷却できるようになっている。なお、冷却用ガスの流量は、周知,慣用の手段により、外側吹き出し口58aと内側吹き出し口58bとで個別に調整できるようになっている。そして、外側吹き出し口58aと内側吹き出し口58bとからウェハ61の裏面にそれぞれ調整された流量の冷却用ガスを吹き付けることにより、ウェハの温度及び温度均一性を制御できるようになっている。冷却用ガスとしては、例えばHeガス,Arガス,N2 ガスなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
【0044】ここで、図5は、本発明者等の実験によって得られた,EM平均故障時間のFSG膜成膜時におけるウェハ温度依存性を示すデータである。同図のデータは、下層配線103の配線幅が0.26μmで、プラグが埋め込まれた径が0.26μmのヴィアホールと、AlCu膜103Cの膜厚が450nmである配線とによってヴィアチェーン構造を形成し、これを利用して耐EM試験を行なった結果得られたものである。耐EM試験は、雰囲気温度200℃、試験電流2mAの下に行ない、故障判定は抵抗の上昇率が20%に達したときを故障発生とすることにより行なっている。
【0045】図12(a),(b)は、耐EM試験に用いたヴィアチェーンの平面図、及びXII-XII 線における断面図である。同図に示すように、本実施形態における耐EM試験に用いたヴィアチェーン構造とは、複数の下層配線と複数の上層配線とが、各下層配線上に設けられた2個のプラグを介して、上層配線−プラグ−下層配線−プラグ−上層配線−…というように直列に接続された構造をいう。言い換えると、プラグとプラグとの間に、上層配線と下層配線とを交互に配置してチェーンを構成したものである。
【0046】図5に示すように、HDP−CVD法により成膜を行う場合、このウェハ温度の上昇がEM耐性に悪影響を与えることがわかった。逆にいうと、ウェハ温度を低くするほどEM耐性が向上することになる。また、本発明者等の実験によると、FSG膜の成膜時に高密度のイオンがウェハの表面に照射されることによりウェハ温度が上昇することがわかった。ウェハ温度の測定方法については、後述する。
【0047】そこで、本実施形態では、HDP−CVD装置に図3,図4に示すようなウェハ61の冷却機能を付加して、ウェハ61の裏面に冷却用ガスとしてHeガスなどを軽く吹き付けることにより、ウェハ61を冷却し、ウェハ61の到達最高温度を450℃以下の温度(例えば400℃)にするよう条件を設定した。本実施形態では、外側ガス吹き出し口58aと内側ガス吹き出し口58bとの2系統からHeガスを流し、ウェハの内側に対して外側の圧力を2倍に設定することにより、ウェハ61の面内の温度均一性、ひいては膜厚・膜質均一性を向上させている。
【0048】ただし、成膜温度を低温化すると、Arスパッタイオンによる絶縁膜の角の削り速度は変らないが、成膜速度が大きくなるため、下層配線間の埋め込み性能が劣化する。そのため、原料ガスであるSiH4 とO2 の流量を下げ、成膜速度を下げることにより、下層配線間の埋め込み性能を向上させる必要がある。一方、原料ガス流量を下げすぎると、今度はArスパッタイオンによる下層配線層の削れが発生するので、Arスパッタイオンによる角の削り速度とのバランスを保ちながら、原料ガス流量を調整する必要がある。
【0049】図6は、ウェハ裏面の内側のHeガス圧力と原料ガス流量に対する埋め込み特性を示す図である。同図において、横軸はウェハ裏面におけるHeガスの圧力(Pa,括弧内はTorr値を示す)を表し、縦軸はSiH4 ガス,O2 ガスの流量の相対値を表している。ここで、縦軸の流量の相対値とは、SiH4 ガスの流量が50sccm,O2 ガスの流量が90sccmのトータル流量を100%として、SiH4 /O2 比を一定(5:9)として両者のトータル流量を変えた場合の相対値である。また、○等の記号は、高さが0.55μm、線間距離が0.23μmの下層配線に対するFSG膜の埋め込み特性と、下層配線の削れの有無とを表示している。この図において、○印のデータが得られている中間の領域が、FSG膜の埋め込み特性がよく、かつ下層配線の削れが発生しない領域である。
【0050】その後、図2(b)に示す工程で、プラズマCVD法により、TEOSを原料とした厚み約1000nmの酸化膜(SiO2 )104Bを形成し(成膜温度350℃)、その後、化学機械研磨法(CMP)により、ウェハ全面の平坦化を行う。このとき、FSG膜104Bのうち下層配線103の上方に位置する部分の厚みが約500nmになるようにCMPを行なう。その後、400℃,10分のアニールを行い、吸湿によってFSG膜104B中に含まれている水分をFSG膜104Bの露出した表面から排出し、FSG膜の誘電率を安定化させる。
【0051】その後、FSG膜104A及び酸化膜104Bの上に、厚みが約300nmのプラズマSiON膜104Cを形成し(成膜温度400℃)、各膜104A〜104Cからなる層間絶縁膜104を形成する。このプラズマSiON膜104Cは、FSG膜104A中の遊離フッ素の上方への拡散を防止し、その後形成される上層配線の剥離を抑制する機能を果たすものである。
【0052】その後、フォトリソグラフィとドライエッチングとを行なって層間絶縁膜を貫通して下層配線に到達するヴィアホールを形成する。そして、ヴィアホールの底面上に形成されている自然酸化膜をアルゴン(Ar)プラズマにより除去した後、ヴィアホールの側面及び底面と層間絶縁膜の上に、密着層105の下層膜となるTi膜105Aをスパッタ法により形成する。また、密着層105の上層膜となるTiN膜105BをCVD法により順次堆積し、その後、ヴィアホールの内部及び層間絶縁膜104の上に、タングステン(W)膜106をCVD法により堆積する。ここで、ヴィアホール開口時のドライエッチングの際、又は密着層105を形成するためのスパッタ前のArプラズマ照射の際のいずれかの時点において、ヴィアホール底のTiN膜103Eを完全に除去して、ヴィアホールによりTiN膜103Eを貫通しておくことが好ましい。TiN膜103EとAlCu膜103との反応によって高抵抗のAlN層が発生しても、ヴィアホールがTiN膜を貫通していれば、AlN層がヴィアチェーンの経路における電気抵抗に影響を与えることはないからである。また、CVD法によって形成されたTiN膜105Bは、従来技術のようなスパッタ法によって形成された密着層中のTiN膜(図11(b)に示すTiN膜205B)とは異なり、カバレッジがよいので、その後W膜を堆積する際の原料ガスである6フッ化タングステンが密着層105を突き抜けてAlCu膜103Cに達するのを有効に阻止することができる。したがって、6フッ化タングステンとAlCu膜103Cとの反応に起因する高抵抗層の発生を防止することができる。以上のことから、本実施形態では、TiN膜103Eを厚くする必要がなく、配線容量の低減を図ることができる。
【0053】その後、CMP法により、層間絶縁膜104上に形成されたW膜106,TiN膜105B,Ti膜105Aを除去して、これらの膜106,105A,105Bをヴィアホールの内部にのみ残置させて、Wプラグ107を形成する。
【0054】次に、層間絶縁膜104上に、ArプラズマによりWプラグ107上の自然酸化膜を除去した後に、厚みが約20nmのTi膜108Aと、厚みが約20nmのTiN膜108Bと、厚みが約450nmのAlCu膜108Cと、厚みが約5nmのTi膜(図示せず)と、厚みが約30nmのTiN膜108Eとを順次堆積して第2の積層膜を形成した後、第2の積層膜に対してフォトリソグラフィ及びドライエッチングを行なって、第2の積層膜からなる上層配線108を形成する。その際又はその後別のチャンバーで、ウェハに対して、例えば窒素(N2)及び水素(H2 )の混合ガス雰囲気中で400℃,10分の熱処理を行なうことにより、厚みが5nmである薄いTi膜は全てAlCu膜108Cと反応し、島状のAl3 Ti層108Dが生成される。
【0055】ここで、密着層105を形成する前のArプラズマの際や、上層配線108を成膜する前のArプラズマの際、あるいはWプラグ107を形成するためのCMPによって、SiON膜104Cは平均100nm程度の厚み分だけ削られるが、その後の厚みがばらつきを含めて最低でも100nm程度はあるように、SiON膜104Cを予め厚めに形成しておく。
【0056】本実施形態によれば、下層配線103のTiN膜103EとAlCu膜103Cの間に、厚みが0〜15nmのTi膜とAlCu膜103Cとの反応により形成されたAl3 Ti膜103Dが存在するため、AlCu膜103Cとの界面における原子間距離のミスマッチが少なく、界面拡散が抑制される。その場合、反応を生じるTi膜の厚みが比較的薄いので、Ti膜とAlCu膜の反応による体積収縮量が少ない。しがたって、AlCu膜103Cに加わる引っ張り応力がほとんど増大することがなく、空孔濃度もほとんど増大しないため、AlCu膜103Cのマイグレーション耐性が向上する。
【0057】この本実施形態の製造方法によるマイグレーション耐性の向上効果について、実験結果に基づいて、以下に説明する。
【0058】図7は、AlCu膜103CとTiN膜103Eとの間に介在させたTi膜の厚み(Al3 Ti膜103Dに変化する前の厚み)とEM平均故障時間との関係を示すデータである。同図のデータは、下層配線103の配線幅が0.26μmで、プラグが埋め込まれた径が0.26μmのヴィアホールと、AlCu膜103Cの膜厚が450nmである配線とによってヴィアチェーン構造を形成し、これを利用してEM試験を行なった結果得られたものである。耐EM試験は、雰囲気温度200℃、試験電流2mAの下に行ない、故障判定は抵抗の上昇率が20%に達したときを故障発生とすることにより行なっている。同図に示すように、Ti膜の厚みが15nmを越えると、Ti膜を設けないときよりもEM耐性が低下する。したがって、EM耐性を向上させるためのTi膜を設ける意義がなくなることがわかる。よって、AlCu膜103CとAlN膜103Eとの間に介在させるTi膜の厚みは、15nm以下であることが好ましい。
【0059】図8は、FSG膜の成膜時におけるウェハ温度と上述のヴィアチェーンの抵抗上昇率との関係を示す図である。同図の縦軸に示す抵抗上昇率は、ウェハを175℃に加熱した状態を500時間の間保持した後のヴィアチェーンの抵抗値の加熱前の抵抗値に対する上昇率である。また、横軸のウェハ温度は、後述するように、ウェハの一部に設けたアモルファス領域(キャリア用不純物イオンが注入された半導体領域)の回復量に基づいて求めた。
【0060】同図に示すように、FSG成膜時のウェハ温度が450℃以上になると、配線(下層配線103)の抵抗が上昇することがわかる。一方、450℃以下のウェハ温度で高密度CVDを行なったときには、配線の抵抗はほぼ一定値を示していることがわかる。その理由は、高密度プラズマCVDを行なっている間の温度上昇を抑制することにより、FSG膜104Aと下層配線103との熱膨張率差に起因する下層配線103中の引っ張り応力が抑制されることから、SM耐性が向上したためと考えられる。
【0061】また、下層配線103における引っ張り応力の低減により、下層配線103に電流を流したときのAlCu膜103C内におけるAl原子の移動が生じにくくなる結果、図5に示すように、高密度プラズマCVD時におけるウェハ温度が低いほどEM耐性も向上すると考えられる。
【0062】そこで、本実施形態においては、高密度プラズマCVDにより、層間絶縁膜104の一部であるFSG膜104Aを成膜する間、ウェハの裏面にHeガスを吹き付けることによってウェハを冷却し、ウェハ温度を450℃以下に保持するようにしている。
【0063】反面、高密度プラズマCVDを行なう際のウェハ温度が低いと、FSG膜104A中に遊離フッ素(F)が増大する傾向がある。そして、この遊離フッ素がFSG膜104AやプラズマSiO2 膜中を拡散して上層配線10との界面に達すると、上層配線108の剥がれを生じるおそれがある。ここで、本実施形態では、層間絶縁膜の最上層としてプラズマSiON膜104Cを形成しているので、遊離フッ素の上方への拡散を確実に阻止することができ、よって、上層配線108の剥がれを確実に防止することができる。
【0064】なお、ウェハ温度の測定は、特願平10−546836号に記載されている方法によって行なった。具体的には、高濃度に不純物(ヒ素やリンなど)が注入された領域(ここでは(100)Si基板領域)をアニールすることによってアモルファス領域が回復して結晶領域に変化した量(アモルファス回復量)(nm)を測定することで、ウェハ温度を求めるのである。このアモルファス量は、分光エリプソメトリ法による光学的測定を行なうことにより、cos Δ,sin Ψなどのスペクトル形状の変化に基づいて求めることができる。この方法によると、ウェハの周辺の温度ではなく実際にCVDが行なわれているウェハ表面の温度を測定することができる利点がある。
【0065】図9は、本実施形態において用いたアモルファス回復量とウェハ温度との相関関係を示す図である。この相関関係は、予め標準的なサンプルについて分光エリプソメトリ法による測定とウェハ断面の構造観察とを併用することなどによって得られる。図10は、成膜時におけるウェハ温度の経時変化を示すデータである。同図に示されているように、成膜の開始(横軸20secの時点)後、約30(sec)が経過したとき、つまり、FSG膜の厚みが約150nmに達したときに相当する時間にウェハ温度が飽和して一定値(ここでは約440℃)に達することがわかる。このような測定を行なうことで、高密度プラズマ処理におけるウェハ温度を測定した結果、一般に考えられていた温度値よりも高い温度でCVDが行なわれていることがわかる。
【0066】従来、高密度プラズマによるCVDの場合は、一般的なプラズマCVDに比べてウェハ温度が上昇することが報告されていなかった。それに対し、本発明者等は、マイグレーション耐性の改善を図るための一連の研究の過程において、図5及び図8に示すように、高密度プラズマCVD時におけるウェハ温度と耐EM特性,耐SM特性との間に相関関係があることを突きとめ、このような観点からマイグレーション耐性の向上を図っているのである。
【0067】ここで、本発明の過程及び従来技術に対する特有の効果について整理すると、以下のようになる。
【0068】第1に、高密度プラズマCVDを行なう際に、ウェハ温度が450℃以下になるように、ウェハを冷却することによって、配線及びプラグを含む経路の抵抗の増大を抑制することができる。これは、CVD後における層間絶縁膜104と下層配線103との熱膨張係数の相違に起因するAlCu膜103C中での引っ張り応力を低減することができ、その結果、SM耐性及びEM耐性が向上するからである。
【0069】第2に、下層配線103におけるAlCu膜103CとTiN膜103Eとの間に介在させるTi膜の厚みを15nm以下にすることで、Ti膜とAlCu膜103Cとの反応によってAl3 Ti層103Dが発生することに起因するAlCu膜103CのEM耐性の悪化を抑制することができる。なお、Al3 Ti層103Dの存在によって、AlCu膜103CとTiN膜103Eとの界面における原子間距離のミスマッチを小さくして、界面の歪を低減することができ、その結果、AlCu膜103CとTiN膜103Eとの界面に沿ったAl原子の移動を抑制でき、EM耐性を向上させることができる。よって、製造工程において、AlCu膜103CとTiN膜103Eとの間にTi膜を介在させておいてAl3 Ti層103Dを生ぜしめておくことが好ましい。上述のように、このTi膜の厚みが薄いときにはすべてのTi膜がAl3 TI層103Dに変化することになり、比較的厚いときには一部にTi膜が残存することになるが、いずれでもよいものとする。すなわち、Ti膜が存在し、かつ、その厚みが15nm以下であれば、Ti膜を設けないときよりもEM耐性が向上するからである。
【0070】第3に、層間絶縁膜104にFSG膜104Aの上方を覆うSiON膜104Cを設けることにより、FSG膜104Aからフッ素(F)が上方に拡散して上層配線108の剥がれを生じるのを確実に防止することができる。本実施形態のように、層間絶縁膜104のうち下層配線103間を埋める部分を、フッ素(F)をシリコン酸化膜の網目構造に組み入れたFSG膜104Aとすることにより、層間絶縁膜104の誘電率を低下させて配線容量の低減を図ることができる。このとき、高密度プラズマCVDによりFSG膜を堆積することで、高濃度のイオンの照射によってフッ素をSiO2 中に押し込んでいくことができ、FSG膜104A中に高濃度のフッ素を含ませることができる。つまり、高濃度プラズマCVDによって、酸化膜のエッジの削りによる下地に対するカバレッジの向上効果とフッ素濃度の増大効果とが得られる。ところが、高密度プラズマCVD処理中のウェハ温度を450℃以下に抑制することにより、FSG膜104A中のSiO2 の網目中に組み込まれないで遊離した状態のフッ素の数が増大する。そこで、層間絶縁膜104の最上部にSiON膜104Cを設けることで、層間絶縁膜104のトータルの誘電率の低下による配線容量の低減と、上層配線の流れの防止とを図ることができる。
【0071】また、本実施形態における下層配線103の下方に、絶縁膜102を挟んでより下層の配線がある場合には、FSG膜104A,下層配線103と、絶縁膜102との間にもSiON膜が存在することにより、下層配線103の剥がれを防止できることになる。よって、層間絶縁膜104のFSG膜104Aの下方にもSiON膜が設けられることが好ましい。
【0072】ただし、本実施形態におけるSiON膜104Cに代えて、フッ素の拡散阻止機能を有する他の材料からなる膜を設けてもよい。
【0073】本実施形態においては、Si基板を利用したトランジスタ等の半導体素子が下層配線の下方に設けられているが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、半導体以外の材料により構成される機能素子が設けられる電子デバイスの多層配線構造全体に適用することができる。その場合にも、本実施形態で説明したのと同様の効果を発揮することができる。
【0074】
【発明の効果】本発明の多層配線構造及びその製造方法によると、高密度プラズマCVD法により、基板を冷却しながら、下層配線を埋めるフッ素含有酸化膜を形成するとともに、その上方にSiとNとを含む絶縁膜を設けることで、SM耐性とEM耐性とを高めつつ、フッ素の上方拡散に起因する上層配線の剥がれを防止することができる。また、下層配線の形成時には、厚みが15nm以下のTi膜とAlCu膜との反応により形成されたAl3 Ti層をアルミニウム合金膜とTiN膜の界面に形成することにより、EM耐性を高めることができる。さらに、工程数の増加を招くことなく確実に製造することができ、コストメリットも大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る多層配線構造の断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係る多層配線構造の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態で用いた高密度プラズマCVD装置の断面図である。
【図4】HDP−CVD装置中の静電チャックステージの平面図である。
【図5】EM平均故障時間のFSG膜成膜時におけるウェハ温度依存性を示すデータである。
【図6】本発明の実施形態に係る多層配線構造の製造方法において、FSG成膜条件を説明する断面図である。
【図7】、AlCu膜とAlN膜との間に介在させたTi膜の厚みとEM平均故障時間との関係を示すデータである。
【図8】FSG膜の成膜時におけるウェハ温度と上述のヴィアチェーンの抵抗上昇率との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態において用いたアモルファス回復量とウェハ温度との相関関係を示す図である
【図10】本発明の実施形態の成膜時におけるウェハ温度の経時変化を示すデータである。
【図11】(a)〜(c)は、従来例に係る多層配線構造の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図12】(a),(b)は、本発明の実施形態における耐EM試験に用いたヴィアチェーンの構造を示す平面図、及びXII-XII 線における断面図である。
【符号の説明】
101 Si基板
102 絶縁膜
103A Ti膜
103B TiN膜
103C AlCu膜
103D Al3 Ti層
103E TiN膜
103 下層配線
104A FSG膜
104B プラズマ酸化膜
104C SiON膜
104 層間絶縁膜
105A Ti膜
105B TiN膜
105 密着層
106 W膜
107 Wプラグ
108A Ti膜
108B TiN膜
108C AlCu膜
108D Al3Ti層
108E TiN膜
108 上層配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の下地絶縁膜の上に設けられ少なくともアルミニウム合金膜を含む下層配線と、上記下地絶縁膜及び下層配線を覆う層間絶縁膜と、上記層間絶縁膜を貫通して上記下層配線に到達するヴィアコンタクトを埋める導体材料からなるプラグと、上記プラグに接続されて上記層間絶縁膜の上に延びる上層配線とを備え、上記層間絶縁膜のうち少なくとも上記下層配線間を埋める部分はフッ素を含む酸化膜であり、上記層間絶縁膜のうち上記フッ素を含む酸化膜の上方に位置する部分は、Si及びNを含む絶縁膜であることを特徴とする多層配線構造。
【請求項2】 請求項1記載の多層配線構造において、上記層間絶縁膜と上記絶縁膜との間にSi及びNを含むもう一つの絶縁膜を備えていることを特徴とする多層配線構造。
【請求項3】 基板上の下地絶縁膜の上に設けられた下層配線と、上記下地絶縁膜及び下層配線を覆う層間絶縁膜と、上記層間絶縁膜を貫通して上記下層配線に到達するヴィアコンタクトを埋める導体材料からなるプラグと、上記プラグに接続されて上記層間絶縁膜の上に延びる上層配線とを備え、上記下層配線は、アルミニウム合金膜の上に設けられたTiN膜を有し、上記プラグは、上記TiN膜を貫通して上記アルミニウム合金膜と接触していることを特徴とする多層配線構造。
【請求項4】 請求項3記載の多層配線構造において、上記プラグは、下層膜となるTi膜と上層膜となるTiN膜とが積層してなる密着層と、該密着層に包まれるW層とにより構成されていることを特徴とする多層配線構造。
【請求項5】 基板の下地絶縁膜の上にアルミニウム合金膜を含む下層配線を形成する工程(a)と、上記下地絶縁膜及び下層配線の上に、層間絶縁膜を形成する工程(b)と、上記層間絶縁膜を貫通して上記下層配線に到達するヴィアコンタクトを形成する工程(c)と、上記ヴィアコンタクトに導体膜を埋め込んでなるプラグを形成する工程(d)と、上記プラグに接続されて層間絶縁膜の上に延びる上層配線を形成する工程(e)とを含み、上記工程(b)において、上記層間絶縁膜のうち少なくとも上記下層配線間を埋める部分を形成する際には、上記基板の裏面に冷却用ガスを吹き付けながら高密度プラズマCVDを行なって、フッ素を含む酸化膜を形成することを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項6】 請求項5記載の多層配線構造の製造方法において、上記冷却用ガスを吹き付けて高密度プラズマCVDを行なう際には、基板温度を450℃以下にすることを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項7】 請求項5又は6記載の多層配線構造の製造方法において、上記工程(b)では、上記フッ素を含む酸化膜の上方を覆うSiとNとを含む絶縁膜を形成することを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項8】 請求項5〜7のうちいずれか1つに記載の多層配線構造の製造方法において、上記工程(a)の前に、下地絶縁膜の上に、SiとNとを含む絶縁膜を形成することを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項9】 基板の下地絶縁膜の上にアルミニウム合金膜を形成する工程(a)と、上記アルミニウム合金膜の上に、厚みが15nm以下のTi膜を形成する工程(b)と、上記Ti膜の上にTiN膜を形成する工程(c)と、上記アルミニウム合金膜,Ti膜及びTiN膜をパターニングして下層配線を形成する工程(d)と、高密度プラズマCVD法により、上記下地絶縁膜及び下層配線の上に層間絶縁膜を形成する工程(e)と、上記層間絶縁膜及び下層配線中のTiN膜及びTi膜を貫通して上記アルミニウム合金膜に到達するヴィアコンタクトを形成する工程(f)と、上記ヴィアコンタクトに導体膜を埋め込んでなるプラグを形成する工程(g)と、上記プラグに接続されて層間絶縁膜の上に延びる上層配線を形成する工程(h)とを含む多層配線構造の製造方法。
【請求項10】 請求項9記載の多層配線構造の製造方法において、上記工程(g)では、ヴィアコンタクト内に下層膜となるTi膜と上層膜となるTiN膜とが積層してなる密着層を堆積してから、上記密着層に包まれるW層を形成することを特徴とする多層配線構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2001−144180(P2001−144180A)
【公開日】平成13年5月25日(2001.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−327735
【出願日】平成11年11月18日(1999.11.18)
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】